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---------------------------------------------------------- 4月後半の読書と感想、書評 2025/5/3(土) 1836 それをお金で買いますか 市場主義の限界(早川書房) マイケル・サンデル
原題は「What Money Can't Buy: The Moral Limits of Markets」で直訳すれば「お金で買えないもの:市場の道徳的限界」となります。日本語タイトルはややあおり気味ですが売れそうなうまいやりかたです。 過去に「ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業」(2010年早川書房)を読みましたが、理解はできるが、結局どうすりゃいいの?と、私なんかは古い日本人の典型で、すぐにハッキリした回答を求めてしまいますが、そうした明確な方向や判断は示されず、「自分で考えなさい」という話なのでモヤモヤが残ったまま早々に頭の中から消し去るようになってしまいます。 現代の市場経済で、「それは道徳的にどうなの?」「法律違反ではないけど汚らわしい」というような問題点をいくつも例に出して、賛否双方の言い分を解説してくれます。 日本でも遊園地の人気アトラクションやいつも行列が絶えない人気レストランで優先的に案内されるファストパスが堂々と高額で売られています。また注目裁判の傍聴券を得るために金で雇われて並ぶのはOKで、人気コンサートのチケットを転売目的で購入して欲しい人に高額で転売する(ダフ行為)のはダメというのはどうして?すべてお金で目的を達することに変わりはないはずです。 余命数ヶ月という重病人の生命保険(死亡保険)を買い取り、生きている間に現金を手に入れられるようにする生命保険の売買(米国では普通にある)では、生命保険を購入した投資家は人の死が自分の大きな利益になるというのは是か非か? 薬物中毒やアルコール中毒の女性が出産すると高い確率で障害をもった赤ちゃんが生まれて大きな社会負担につながることから、そうした女性にかなりの一時金が支払われる代わりに避妊手術を受けるというサービスは是か非か? などなど、面白い実例がいっぱい出てきます。 確かに市場経済で考えさせられる様々な問題提起ですが、それぞれに考え方がみな立場や人種、宗教観、年齢、所得水準などで違ってくることが多く、「これ!」という回答はなさそうです。 それにしてもこうした道徳問題を得意とする著者に、道徳などゴミくず同然の著者の国のトップ(大統領)に対してどういう感想を持っているのか聞きたいものです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(マイケル・サンデル) メインテーマは殺人(創元推理文庫) アンソニー・ホロヴィッツ
原題は「The Word Is Murder」で直訳すると「言葉は殺人」で、「The Word」には言葉以外に発言や命令、知らせなど様々な意味がありますが、日本語訳に付けられた「メインテーマ」という意味はなさそうです。 この作品は「ホーソーン&ホロヴィッツ」シリーズの第1作目となり、すでに続編が4作出ています。 「カササギ殺人事件」が大変面白かったので、今回は多大な期待をして読みましたが、その期待を裏切らない面白い推理小説でした。 一人称で語る主人公は本著の作家ホロヴィッツで、探偵ホームズに対してちょっと的外れな相棒のワトソン役です。その探偵ホームズ役は、刑事だった頃にあることがきっかけで辞めざるを得なかった中年男ホーソーンで、ホームズと同様に鋭い観察力の持ち主です。 その探偵役の男は警察を辞めた後も、警察上層部からその特筆すべき才能を惜しまれ、難しい事件が起きると警察顧問として協力を求められ、今回の謎多き殺人事件で声がかかり、さらにその捜査から解決までを小説にしてお互い利益を得ようと、当時多くの警察ドラマの脚本を手がけていた主人公の作家に声をかけることになります。 事件は、あるひとり住まいの裕福な老婦人が、葬儀屋を訪れるところから始まり、その葬儀屋で自分の葬儀の依頼を細かく指示したあと、その夜に自宅で何者かに絞殺されてしまいます。警察は単なる物取り強盗と判断しますが、、、、 「カササギ殺人事件」と比べると至極真っ当な探偵ミステリー小説ということになりますが、事件を追う二人の関係が名声と金で結ばれユニークで面白く、その後の続編も読みたくなりました。 ★★★ ◇著者別読書感想(アンソニー・ホロヴィッツ) 漱石先生ぞな、もし(文春文庫) 半藤一利
「日本のいちばん長い日」や「レイテ沖海戦」など太平洋戦争の戦記物小説が多い作家さんですが、その他のエッセイやノンフィクションなども多くあります。 タイトルに使われている夏目漱石は、著者の妻が漱石の孫という関係があり、著者の義理の祖父ということになります。それゆえ、義理の祖父のことや残した作品についてのことをいろいろ調べて書こうと思ったそうです。 漱石が残した小説や手紙、俳句などから、その時代や思想などがよくわかってそれと小説が書かれた時期を合わせると「なるほど」と思えることもありそうです。 漱石が生きた時代は、日清戦争や日英同盟、日露戦争などが起き、日本が富国強兵に力を入れ、まだ文学にはそれほど影響はなかったものの、軍部が政治にも影響を及ぼしつつある時代です。 このエッセイ集では「坊っちゃん」「吾輩は猫である」「草枕」「二百十日」「三四郎」など有名な小説に関するうんちくが取り上げられています。 また「漱石」という雅号の由来や、作家の友人や門下生などの話なども面白く読めました。 ただ、夏目漱石の小説をほとんど読んでない人には、理解できないことが多く、私も漱石の小説の多くは何十年も前の中高生の頃に読んだきりで、もうすっかり記憶になく、意味がよくわからないというものも多かったです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(半藤一利) 何もかも憂鬱な夜に(集英社文庫) 中村文則
犯罪容疑者は逮捕されるとまずは警察の留置所に留置され、その後裁判で結審するまでは裁判所に近い拘置所で拘置され、裁判で実刑が決まれば刑務所へ送られることになります。3段階があるのは知りませんでした。 この小説の主人公は、親に捨てられ施設で育ち、現在はこの中間の拘置所で刑務官として勤務する男性です。 親と親の愛情を知らず世捨て人のような感情を持ちながら働いている主人公ですが、中学校卒業まで暮らした児童養護施設の施設長の暖かなサポートや、今までまるで縁がなかった音楽や書物などの芸術を教えてもらい、生きていく意味を教えてもらった恩が忘れられません。 そして自分と同じように親に捨てられ、その反動で殺人事件を起こし、遺族やマスコミから「死刑は当然」と決めつけられ、第1審の判決でも死刑を言い渡された収容者のかたくなな心を解きほどいていくようになります。 日本の死刑制度について、死刑を実施する刑務官の厳しさ、死刑の判決が世論などで左右される問題点などの社会問題を鋭く突いています。 一方では、1948年に起きた「一家四人殺傷事件」で死刑が確定したものの、1983年に無罪が確定した免田栄氏や、この小説は2012年出版なので、まだその時点では無罪が決まっていませんでしたが、1966年に起きた一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌氏の再審が実り、2023年に無実が確定し48年間の拘留から解放されたケースなど、えん罪で死刑や長期拘留となる場合があります。 無実で死刑が言い渡されるのは、これ以上ない非道なことですが、過去にはえん罪事件は数多く発生しています。 ★★★ ◇著者別読書感想(中村文則) 【関連リンク】 4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト 3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長 3月前半の読書 もう過去はいらない、短劇、神秘(上)(下)、つやのよる ---------------------------------------------------------- 2025年3〜4月に見た映画 2025/5/10(土) 1837 大日本帝国 1982年 東映 監督 舛田利雄 出演者丹波哲郎、三浦友和、西郷輝彦、関根恵子、夏目雅子
第1部は「シンガポールへの道」、第2部は「愛は波濤をこえて」というサブタイトルがついています。 1980年公開の「二百三高地」(東映)が大ヒットしたことで、柳の下のドジョウを狙った戦記物の大作です。 もう少し史実を掘り下げた歴史検証的な内容かなと思っていたら、まったく違って大衆に受けそうな派手な戦闘シーンとその対照的なラブシーンの二つをたっぷり盛り込んだエンタメ作品でした。 「日本のいちばん長い日」(1967年)や「連合艦隊司令長官 山本五十六」(1968年)など、ライバルの東宝の戦争シリーズ「東宝8.15シリーズ」には、ラブシーンの入る余地はなく、女性俳優の出演もほとんどありませんでした。 しかし大衆迎合のエンタメ映画では戦争物でもメロドラマは必要と東映は考えていたのでしょう。そのせいで関根恵子や夏目雅子がドラマに花を添えて良い演技でした。 この頃の映画ではCGなどは当然ないので、その時点にある戦車やトラック、飛行機などを使って撮影するしかなく、また戦闘機や艦船の戦闘シーンはミニチュア模型の特撮で、近年の映画と比べるとリアリティや迫力に欠けるのは仕方ありません。 しかし大人向けの映画とはいえ1本で180分という長い映画で、時短やタイパが優先される現代では180分の映画というのは理解に苦しむでしょう。 そう言えばひとつの映画で過去に見た一番長かった作品は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」(1984年)で、オリジナル版269分の大作でした。香港の映画館で見ましたが、当然途中に休憩時間が2回ありました。その映画からすると約1時間半も短いです。 ★☆☆ 飛べ!フェニックス(原題:The Flight of the Phoenix) 1965年 米(日本公開1966年) 監督 ロバート・アルドリッチ 出演者 ジェームズ・ステュアート、リチャード・アッテンボロー
パイロットがリーダーとなり救助を待ち厳しいサバイバルを続けますが、予定航路を外れていたこともあり、救援機は来ません。 偶然近くを通りがかった地元商人に見える男に救援を依頼しようと近づいた乗員の軍人は無残に殺されてしまい、絶望の中に追い込まれていきます。 乗員の中に変わり者の航空機のエンジニアが乗っていて、独自の設計図を描き、双発エンジンのうち無事なほうを使って単発機を作って飛ばそうと提案します。 最初は誰も相手にしませんでしたが、なにもしないでただ死を待つより何かをしている方がマシということで飛行機の改造を始めます。 飲み水が残りわずかになった頃、ようやくつぎはぎの機体が完成しますが、最後の難関は、限りある爆薬カートリッジでエンジンを発動させようとしますが、、、 戦後20年頃の輸送機のエンジンはまだ単純なレシプロで、今の電子機器類もほとんどないアナログだからとりあえず飛ばすことは可能ということでしょうけど、パイロット以外は座席などなく、翼の上につかまったままで飛行するという離れ業には笑いました。 軽くするためパイロットだけが乗って救援を求めればいいのにと思いましたが、食料や飲料水がなくなりもう一時も不時着地では待てないという瀬戸際の状況だったと考えれば仕方がないかも知れません。 ★★☆ 必殺スペシャル・春 世にも不思議な大仕事 主水と秀 香港・マカオで大あばれ 1991年 ABC・松竹 監督 原田雄一 出演者 藤田まこと、三田村邦彦、中川安奈
長いタイトルに概ね内容が込められていますが、江戸時代の中村主水と同じ仕事人仲間の飾り職人の秀が、タイムスリップして香港・マカオで誘拐された王女を救うために活躍するというたわいもない話です。 なぜそんなものを見たかって?それは、1991年というと、まだ香港やマカオは中国に返還されてなく、私が働いていた頃(1985年頃)の、まだ英国領、ポルトガル領だった時代の懐かしい街が見られと思ったからです。 しかし残念ながら私が主にいたビジネス街やカジノの風景が映ることはなく、ドラマで出てくるのは古い教会や路地裏っぽいところばかりで、多くの場面は日本でロケやセットで撮られたもののようです。 ちょっと変わっているのは、中村主水や秀の子孫が香港マカオ旅行に来ていて、時代が江戸時代と現代とが交差していること。ちょっとややこしいっていうか、かなり無理があって無茶苦茶です。バブル時代だからこそ作れたドラマです。 ★☆☆ 15時17分、パリ行き(原題:The 15:17 to Paris) 2018年 米 監督 クリント・イーストウッド 出演者 スペンサー・ストーン、アンソニー・サドラー、アレク・スカラトス
「タリス銃乱射事件」とは、乗客554名を乗せたアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリス車内で、AK-47(機関銃)で武装したイスラーム過激派の男が乗っ取りを企てましたが、偶然乗り合わせた乗客4人がテロリストを取り押さえ、二人が負傷しただけで済みました。 犯人を取り押さえたお手柄の乗客4人のうち3人はアメリカ人の幼なじみの友人同士で、3人でヨーロッパを旅行中でした。そのうち二人は現役の軍人だったことが、機関銃を持った犯人にもひることなく制圧につながったようです。またテロリストがひとりだけだったことも幸いしました。 映画では、その3人の幼なじみの子供時代から、やがて学校を経て社会に出てからも友人関係のままで、仕事の休暇を合わせてヨーロッパをグルッと回る観光旅行をすることにします。 そして楽しくあちこちを旅行しつつ、オランダのアムステルダムからパリへ向かおうとしているとき事件に遭遇します。 そのアメリカ人の二人は軍人、ひとりはビジネスマンの3人の役を俳優ではなく本人達が演じています。また他の乗客の一部も本人役として素人が演じています。 それが素人とは思えないほど堂に入っていて驚きました。監督のイーストウッドの力もあるのでしょう。 日本ではほとんど知られていない事件ですが、アメリカでは自国民が活躍したこともあり大きく話題になり、帰国後はヒーロー達を称えるパレードがおこなわれましたが、映画の興行はあまりうまくいかなかったようです。 ★★☆ 君がいた夏(原題:Stealing Home) 1988年(日本公開1989年) 米 監督 スティーヴン・カンプマン 出演者 マーク・ハーモン、ジョディ・フォスター
主人公の少年時代に憧れていた年上の従姉妹とひと夏の思い出を作りますが、大人になってからは疎遠となります。 幼なじみ同士や、少年と女性教師とかの甘く切ない恋を描いた映画はよくありますが、相手が従姉妹というのは珍しいです。 そしてある日、結婚して外国に住んでいた従姉妹が自殺したという連絡を受け、その遺灰の処分は一番よくわかっているはずだからとその主人公に任せたいとの遺書があり、遺族から受け取りますが、どこへ埋葬すれば一番喜ぶのかわからず、あちこち思い出の地を巡りながら考え続けます。 昔、従姉妹と一緒に行った古い別荘のプールの排水口が好きだったからと、そこへ行ってみるともうプールはなく埋められていました。そして様々な過去の行動を思い出していき、やがてある結論へ確信していきます。 美しいフィラデルフィアの街や海岸が最大の見どころで、それ以外は、、、って感じです。 ★☆☆ ラーゲリより愛を込めて 2022年 映画「ラーゲリより愛を込めて」製作委員会 監督 瀬々敬久 出演者 二宮和也、北川景子、松坂桃李
ラーゲリとはロシア語で収容所のことです。辺見じゅん氏の作品と言えば、映画にもなった「男たちの大和」(1983年)を思い出します。 実在した主人公の山本氏は戦前に東京外国語学校(東京外大)でロシア語を学んでいたことから、シベリア抑留中は通訳としての役割も担っていました。 厳しい捕虜生活の中で、仲間達を励まし、誠実さを貫く性格は、荒々しい他の収容者からも慕われますが、長引く収容所生活で喉頭癌を患い、余命わずかと診断されてしまいます。 家族に宛てた遺書をしたためますが、持ち物検査で書き物はスパイ行為としてすべて破棄されることがわかっていたので、仲間達が遺書を分担して内容を記憶することにします。 アイドルが主演する映画で、映画のセットと出演者全般の演技に軽さはゆがめませんが、ストーリー的には泣かされる映画だと聞いていました。その通り終盤には主人公の家族への思いと無念が涙を誘います。歳をとるということは涙腺が緩まるってこともあります。 結局主人公と一緒に収容されていた捕虜達が日本に帰国できたのは1956年(昭和31年)で、戦後11年も経ってからのことです。 「もはや戦後ではない」という言葉が経済白書に載ったのが1956年ですが、その時代にもまだ戦争を引きずり帰国が果たせなかった多くの人がいたということに驚かされます。私はその翌年生まれです。 そう言えば幼い頃、町へ出掛けると、白い服を着た手足のない傷痍軍人らしき人が物乞いをしていたことはよく記憶に残ってますから、まだ昭和30年代というのはそういう時代だったということでしょう。 あと以前、シベリアに抑留されそのご帰国を果たした小熊英二著「生きて帰ってきた男―ある日本兵の戦争と戦後」を読みましたが、その著者は「日本軍従軍時よりソ連軍捕虜の時のほうがずっとマシ」と言うように、この映画でもシベリア抑留中に死亡するのは脱走を試みた数名のみで、食料のひどさや待遇(鉄拳制裁など)、傷病者への自殺強要など日本軍はひどかったけど、ソ連軍はそれと比べるとずっと人道的で常識的なことがこの映画でもわかります。 ★★★ クライ・マッチョ(原題:Cry Macho) 2021年(日本公開2022年) 米 監督 クリント・イーストウッド 出演者 クリント・イーストウッド、エドゥアルド・ミネット
妻と子を交通事故で亡くした後、自暴自棄に陥っていたときに助けてくれた恩人の頼みということもあり引き受けます。 メキシコに入り別れた富豪の妻の元を訪れると、酒浸りで、用心棒が周りを固めているような状態で、息子はそんな母親の家には寄りつかず、盗みや闘鶏で生活費を稼いでいる不良少年ということがわかります。 それでも父親が会いたがっていることや、牧場を経営している金持ちだということで説得し、連れ出すことに成功しますが、侮辱された母親が用心棒を使い、少年を取り戻そうとします。 危機に陥ると助けてくれるのが、少年が飼っていていつも連れ回している闘鶏用の鶏のマッチョです。少年は強くたくましい男性になることに憧れていて、自分の鶏に「マッチョ」と名付けました。 アメリカへ向かう途中、クルマを盗まれたため、別のクルマを盗み旅を続けている途中、保安官の取り調べを受けそうなときに助けてくれた食堂のママさんと仲良くなり、しばらくそこで父親の仕事を助けるため少年に牧童の仕事を教えます。 この辺り、ロバート・B・パーカーの小説で、スペンサーシリーズの名著「初秋」を思い出します。不幸な目に遭っている不良少年に対し、生きていく術をアカの他人が慈愛を持って教えていくというのが同じです。 主人公のご老体は、少年を父親に引き渡した後はメキシコへUターンし、仲良くなったママさんのところへ戻り、ちゃっかり一緒に暮らすというラストは容易に想像が付きました。 ★★★ 野良犬 1949年 新東宝 監督 黒澤明 出演者 三船敏郎、志村喬、淡路恵子
当時まだ20代だった三船敏郎は若手の刑事役で、スリに遭って拳銃を盗まれてしまいます。その拳銃が強盗事件で使われ、ベテランの刑事とともに犯人を追いかけるストーリーです。 1949年の公開なので、撮影は終戦後3〜4年の1948年〜1949年に撮影されていると思いますが、東京にはまだ闇市が建ち並び、舗装されていない道路をトラックが走り、後楽園球場でおこなわれていた巨人対南海の熱狂するプロ野球の試合などが出てきて当時の世相や風俗がよくわかります。 野球好きの犯人が後楽園球場に来ているはずと網を張っているシーンでは、実際の試合が使われていて、川上哲治や川崎徳次、青田昇など往年の名選手が出場しています。 エアコンなどのない真夏の風景で、扇風機や団扇であおぎながら、汗を拭くシーンが多くあり、ムッとした蒸し暑い空気が映像からも沸き立ってくるようです。 また松竹歌劇団の学生だった淡路恵子は、黒澤監督に見いだされ、この映画がデビュー作になります。出演当時まだ若干16歳だったにも関わらず、犯人の恋人でダンスホールのダンサーで、色気も必要な難しい役です。 戦後の日本で刑事ドラマや映画は、その後数え切れない数の作品が制作されますが、この映画がその原点と言ってよいでしょう。 ★★★ 【関連リンク】 2025年1〜2月に見た映画 TAXY NY(2004年)、LIFE!/ライフ(2013年)、ある兵士の賭け(1970年)、恐怖のメロディ(1971年)、トランボ ハリウッドに最も嫌われた男(2015年)、かくしごと(2024年)、居眠り磐音(2019年) 2024年11〜12月に見た映画 網走番外地 北海篇(1965年)、首(2019年)、駅 STATION(1981年)、張込み(1958年)、博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(1964年)、フィラデルフィア(1993年) 2024年9〜10月に見た映画 弾を噛め(1975年)、スノーデン(2016年)、ハプニング(2008年)、ひとよ(2019年)、エアフォース・ワン(1997年)、放浪記(1962年) ---------------------------------------------------------- 5月前半の読書と感想、書評 2025/5/17(土) 1838 月神(角川文庫) 葉室麟
幕末が小説に取り上げられると、そのほとんどは薩摩や長州、新撰組などを中心にするのが定番ですが、この小説では薩摩と長州に挟まれ、尊皇攘夷派と維新派の中で翻弄される福岡藩の武士が前半の「月の章」の主人公です。 そして後半の「神の章」がとても面白いのですが、前半の「月の章」ではチラッと登場する前半の主人公の甥が主人公で、明治政府の官僚として北海道に渡り、新たに北海道開拓に従事させる目的で国内の受刑者を収監する樺戸集治監を設立します。 以前、網走監獄博物館へ行ったとき、明治時代、収監された罪人は過酷な環境で、道路建設などに従事させられ、多くの人が亡くなったという話を知りました。 網走監獄は明治23年(1890年)に釧路集治監の分監として網走囚徒外役所ができたのが最初ですが、樺戸集治監はその9年前の明治14年(1881年)に石狩川の上流部に新たに開拓して建設され、この小説の主人公月形潔の名前からとって月形町として現在も残っています。 その後半の舞台となる樺戸集治監は現在は月形樺戸博物館として残されています。 ★★★ ◇著者別読書感想(葉室麟) 潔白の法則 リンカーン弁護士(上)(下)(講談社文庫) マイクル・コナリー
裁判の弁護が成功し、そのお祝いのパーティをおこなったあと、事務所兼移動用として使っている愛車のリンカーンに乗って帰宅していた時、パトカーに停められトランクを開けると中から射殺された死体が見つかり逮捕されるところから始まります。 殺されたのは過去に弁護を担当したことがある詐欺師の男で、主人公ハラーの自宅駐車場で犯行がおこなわれたものとわかります。そしてその殺された男から弁護士費用が支払われず、強い督促をしていたことも犯行の動機だとみなされます。 そして刑務所に収監されますが、裁判では自分の弁護をするために、様々な対策を練ることになります。 面白いのは、単に無罪判決を受けても、それが有罪の疑いが残るような判決ではその後の仕事が成り立たなくなります。 そこで、誰が自分を陥れようとしているのか?実際に殺人の実行犯や指示したのは誰か?など事件の背景を調べ、さらに機密であるはずの弁護方針が漏洩するのはなぜか?など、数々の障害を乗り越えていくことになります。 レギュラー陣の調査員シスコとともに、すでに警察を引退した腹違いの兄弟ハリー・ボッシュも脇役ですが登場し、お得意の推理と行動力で無罪の証明を手助けしていきます。 そして物語の時代設定が、執筆された時と同じ2019年から2020年頃とされ、当時まだ対策がよくわからない新型コロナが徐々に拡がっていく背景が描かれていて、それも敵の正体がわからない不気味さを増大させています。 こうしたリーガル・サスペンスは、日本の司法制度とも違っていて複雑で退屈になりがちですが、展開が早く、細かなところはうまく端折ってテンポ良く読めるのが著者の優れたところです。とても面白く読めました。 ★★★ ◇著者別読書感想(マイクル・コナリー) 歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ(中公新書) 磯田道史
埋もれている古書を探し出して解読するのが仕事でもあり趣味でもある著者が、図書館や古書店、由緒ある家の蔵などから発掘してきた古文書を手がかりに、あまり知られてなかった歴史の新しい解釈や発見を披露しています。 我々一般人は、学校の教科書で習う歴史の他、歴史小説や映画、大河ドラマなどで一定の歴史観を持っていますが、教科書に載っている歴史は時代と共に変わっていくのと、歴史小説やそれを原作とする映画やドラマはあくまで著者の想像が多く含まれるフィクションです。 その点、著者など歴史学者は、残された遺物や古い文献、交わされた手紙や命令書などを元に歴史の出来事を解明、推理していくのが仕事です。 特に古文書が多く残っている戦国時代以降は、それまで常識とされてきたことがそうした遺物で解釈が大きく変わってしまうことも珍しくありません。 さらにこの新書が書かれたのが東日本大震災直後ということもあり、歴史学者としては、過去に起きた震災について書かれたものを探しだし、それを未来の災害対策に役立てようとの試みも書かれています。 江戸時代にも過去の経験から津波の恐ろしさがわかっていて、住人が逃げ込める現代で言うところの津波タワーに相当する場所を作ったことが書かれた文書なども紹介されています。 そうした過去に起きた巨大地震、東南海地震を調べるため、2012年には震源地に近い浜松にある大学へ勤務先を変えるなどその行動力には驚かされます。 ★★★ ◇著者別読書感想(磯田道史) 怪物の木こり(宝島社文庫) 倉井眉介
2019年に単行本、2020年に文庫化され、2023年にはこの小説を原作とする三池崇史監督、亀梨和也、菜々緒出演の映画が公開されています。 タイトルは、童話(絵本)で出てくる斧を持った木こりが、突然怪物に変わり次々と話し相手を殺して食べていくことを模倣したような怪物の面を付けた殺人鬼が連続殺人事件を起こすところから来ています。 そのシリアルキラーは殺した相手の頭を割り、脳みそだけを奪っていくという習性があり、警察はその謎に迫っていきます。 と、同時に、悪徳弁護士で、自分がそのシリアルキラーに狙われていることがわかった主人公も、その殺人鬼の正体を暴こうと反撃に出ます。 ストーリーは警視庁の女性刑事と、自分自身がサイコパスだと理解している悪徳弁護士の二人の視点で進んでいきます。 日本でも時々サイコパスと思える犯人が起こすシリアルキラー事件がありますが、この小説では殺して脳みそを持ち去るというかなり残虐で突飛な犯行だけに、警察の力を持ってすれば犯人の目的などは容易に調べが付きそうです。しかし殺人鬼と先に対決することになったのは、、、 サイコパス対警察という図式のストーリーは数多くありますが、もうひとつ、サイコパスの弁護士(と友人のサイコパスの医者)が絡んでいるのがユニークで面白いサイコサスペンスでした。 ★★☆ 【関連リンク】 4月後半の読書 それをお金で買いますか、メインテーマは殺人、漱石先生ぞな、もし、何もかも憂鬱な夜に 4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト 3月後半の読書 サイコパス、高慢と偏見(上)(下)、少女 湊かなえ、寝ぼけ署長 ---------------------------------------------------------- 多死社会にどこのお墓に入るのか 2025/5/24(土) 1839
私には関西に住む長男の兄がいて、実家のお墓や菩提寺を親から引き継いでいるので、関東に長く住んでいる次男の私は原則的にはそれとは別のお墓、または埋葬方法を選ぶ必要があります。 なにもしないで先に亡くなってしまうと、妻や子は、私の実家の長男(永代使用権者)に頭を下げて実家のお墓へ埋葬してもらうか、独自でお墓を建てるか、樹木葬などを独自に探してくるか、悩むことになりそうです。 両親が眠る関西にある実家のお墓に入るのも嫌ではないですが、最近は諸般の事情で親戚の骨壺も次々に納められているらしく、カロート(納骨室)がすでにいっぱいになっていると聞いていたので、できれば家族が気軽に来られ、それぞれの死後のことを考えなくても良い新しい墓を建てたいものです。 まずお墓のある霊園ですが、その種類には公営、民営、寺院の3つがあり、その名の通り、市町村が運営する公営、民間の社団法人や宗教法人等が運営する民営、お寺が運営する寺院です。 一番手軽に使えるのが、民営の霊園墓地で、毎週のように「見学バスツアー」の新聞チラシが入ってきます。ただ、都市部は土地代が高いため、郊外や隣県の山を切り開いた遠い場所が多いです。 同じ民営でも納骨堂の施設は、交通の便が良い大きなビルの中に作られていることが多く、まるでホテルかと思うような豪華なロビーや、お参りの時には電子カードで遺骨がコンテナで自動で運ばれてくるシステムなど様々あります。 私は古い人間なので、どうもそういった営利企業の都合でいつ閉鎖になってしまうかわからない、民営の霊園や納骨堂という施設は信用ができず、昔からある霊園の中にあるお墓を求めたいです。 そしてクルマがないとお墓参りに行けないような不便で遠い場所というのもちょっとどうかなと思っています。お墓参りというと春秋のお彼岸と、夏のお盆に集中するため、大きな霊園だとその周辺の道路がたいへん道路や駐車場が渋滞することにもなります。 次に寺院が運営管理する霊園や墓地は、お墓の種類としては、すでにお寺の檀家になっている場合は問題ないですが、私のように20歳過ぎに都会へ出てきている人の多くは、決まったお寺や教会と特に関係がない場合が多いでしょう。もっと言うと特定の宗教宗派を持たない人も多いように思います。 お墓を持つために、仏教系だと新たに入檀料、護持会費、お布施などを支払い、よく知らない特に親しくもないお寺の檀家になってお墓を建てるというのはあまり現実的ではありません。礼拝日や祝祭にほとんど通っていない熱心でないクリスチャンの場合も同様です。 ところで、今後20年ほどは多死社会と言われていて、団塊世代を中心に毎年多くの人(約160万人)が亡くなっていきます。毎年160万人分のお墓や納骨堂などが必要ということです。 2024年1年間の日本人の出生者数は70万人を切っていますからその2倍以上の人が毎年亡くなっています。そしてその多死社会のピークは20年後の2045年頃と言われています。 死亡者数推移(1980年〜2024年の紺色は実績、2025年〜2065年のオレンジは推定) ![]() 上記のグラフは、2024年までは年間死亡者数の実績、2025年以降は「国立社会保障・人口問題研究所」が2023年(令和5年)に発表した将来人口推計の死亡者数推移です。 その発表時点では、2022年以降もっと緩やかに推移すると予想していましたが、2022年以降の実績は想定を大きく上回る死亡者数で、昨年2024年時点ですでに想定では9年先の2033年の推定値(1,615,619人)を上回っています。 つまり、これだけ多くの人が急速に毎年亡くなるのはわかっていたことですが過去になかった緊急事態で、すでに都市部では火葬場の予約がとれず、順番待ちで火葬できるのが死後2週間先とか言われていますが、埋葬先の確保についても年々競争が激しくなっています。 私の場合、結局一番望ましいのは、家から徒歩圏にあり、朝のウォーキングで時々そこを歩いている公営の霊園に埋葬してもらうのがベストだろうと考えています。 そこの公営霊園には、個々人が建てる「一般墓」と、「合葬型の納骨堂」の二種類があり、年1回、希望する墓や納骨堂の公募と抽選がおこなわれています。 一番安く済み、しかも比較的数が多いため当選しやすいのは「合葬型の納骨堂」です。最後の手段としてはここだと思っています。 「合葬型の納骨堂」の場合、使用料と永代管理料合計10万550円がすべての必要経費で、その後費用は発生しません。個別の墓石はないので、その費用はかかりません。 おそらくすべての埋葬方法の中で一番安上がりな埋葬方式でしょう。逆に言えば、誰かを丁重に埋葬するには最低でも10万円はかかると言うことです。 もうひとつの個別の「一般墓」には、1平米、4平米、6平米の広さの区画があり、それぞれに使用料(最初に1回のみ)と管理料(毎年)がかかります。 「一般墓」の使用料は、1平米25万円、4平米100万円、6平米150万円で、管理料は毎年それぞれ、710円、2,840円、4,260円です。これらは公営霊園なので民間霊園と比べるとかなり割安です。 これとは別に墓石は別途自分で業者に頼み、好みのお墓を建てる必要があります。墓石は一応の規格はありますが原則自由で好きな業者に依頼でき、宗教は問いません。 ![]() 墓石は、調べてみると想像していたよりも高額で、標準的なお墓を建てるとしたら、1平米で60〜120万円、4平米の場合、120〜180万円、6平米の場合、150〜240万円ほど(2023年時点)です。値段は墓石(国内産や外国産、石種)の種類、囲いの大きさや種類などで大きく変わってきます。 さらに昨今の人件費や物価の高騰で、現在はさらにそこから2〜3割は上昇していそうです。 公営霊園のメリットは、まず民間霊園や納骨堂と違って倒産や事業撤退のリスクはありません。それに古くからあるため比較的交通の便が良い場所が多く、売店や公園などの周辺環境も整備されていて広大な公有地の中にゆったりと作られているので、遺族にとっても優しいのです。 それとなんと言っても、使用料や管理料が民営よりはずっと安いこと、寺院管理のように、使用料、管理料と別にお布施や檀家の費用、それに人間関係が不要なこと、どんな宗教宗派でも構わないことなどメリットがあります。 調べると民営のクルマでしか行けない郊外地域の新しい霊園の使用料は、上記の公営墓地の専有面積に応じそれぞれ2〜3倍はかかります。 駅近など便利な場所(というのは実際にはほとんどありませんが)だと4〜5倍以上になりそうです。また年間管理料も民営と公営では5〜10倍ぐらいの開きがあります。 さらに、民営霊園や寺院の霊園では、墓石は霊園側で決めた業者でしか購入できない(指定業者)場合があり、その時は自由競争とはいかず、おのずと墓石の費用も割高になります。 公営霊園の一番のネックは、希望者が多く、しかもすでに亡くなった人の遺骨が手元にあったり、年齢が70歳以上の人が申し込む場合だけ当選優先権があり、私のような「遺骨なし」「70歳未満」の場合はほとんど当たらないことです(川崎市営の場合)。 結構広くゆったりとしている人気の4平米の一般墓(民営霊園では1〜2平米の墓地が主流))だと抽選の競争率は50倍以上、比較的当たりやすい1平米の一般墓でも20倍以上です(2024年)。まるでバブル時の人気マンション購入抽選みたいな感じです。 それでも、もし当たればラッキーですから、もう何年も毎年11月下旬になると、申請用紙をもらいに行き、抽選申し込みをしています。 【関連リンク】 1494 墓じまいと公営墓地 1461 多死社会はなにをもたらすか 896 多死社会と葬儀ビジネス ---------------------------------------------------------- 5月後半の読書と感想、書評 2025/5/31(土) 1840 花の鎖(文春文庫) 湊かなえ
3人の主人公の女性のことについて書いてしまうと、ひとつの大きな謎に触れてしまうので書きませんが、美雪、紗月、梨花の3人の20代女性を中心に、地方都市の商店街を舞台に起きる人間関係ミステリーです。 主人公が3人いるという事は、その周囲にも関係者がそれぞれ数名ずついるので、登場人物がやたらと多いのが難です。集中して読まないと誰が誰の関係者かわからなくなってしまいます。 デビュー作の「告白」でも度肝を抜かされましたが、この著者の作風としては超弩級の意外な結末が待っていることを期待されてしまいます。そしてこの作品でもその期待は裏切られません。 ストーリー展開は軽い感じですが、壮大な人間ドラマが内包されていて、面白い小説でした。 ★★☆ ◇著者別読書感想(湊かなえ) 世界インフレの謎 そして、日本だけが直面する危機とは?(講談社現代新書) 渡辺努
本著は今から3年前の2022年に出版されましたが、ちょうど新型コロナ禍騒動が沈静化し、社会が元に戻ろうとしている時期で、タイトルにもあるとおり世界中でインフレが急速に進む中で書かれたものです。 今から思えば、このインフレは2022年頃を起点にしてその後3年経つ現在もジワジワと続き、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ侵攻が長引いていることで政情の不安定化、さらにサイコパス的なアメリカファーストの自由貿易を破壊する大統領が吠えることで、その後の世界の行方も混沌としています。 本著では、なぜコロナ禍後に世界同時インフレが発生したのか?、日本は90年代からずっとデフレから脱せなかったのか?、日本だけ世界同時インフレの波を受けずに「安いニッポン」となったのか?世界の金融政策はそうしたインフレにどう対応したのか?などを消費者動向や企業経営の特に賃金施策の統計データを見ながらわかりやすく解説してくれます。 本著では触れられませんでしたが、日本のような高齢者が4割近くを占める老成化した国と、移民など含め平均年齢が若い国ととでは、消費動向は大きく違っているはずなのと、賃金ではなく年金が主を占める社会など、国や地域によって条件の違いはありそうです。 ★★☆ 蝉かえる(創元推理文庫) 櫻田智也
著者は1977年生まれ、ライターからの転身で、作家デビュー作は「サーチライトと誘蛾灯」(2017年刊)で、本著と同じ主人公の連作短篇集です。 またこの作品は「日本推理作家協会賞」と「本格ミステリ大賞」を受賞しています。 賞の主宰者を考えると、この作品は一般読者や評論家よりも、同業先輩の推理作家に特にウケが良いようです。 タイトルからもわかる通り、昆虫好きの青年が主人公で、様々な事件や謎を解き明かしていきます。 どの作品も、昆虫はもちろん、薬品や風土病などにも深い知見が必要で、よく勉強されていると思います。そうした難しい知識を寝転びながら気軽に読めて吸収できるのですから感謝しかありません。 「蝉かえる」に出てくる昆虫食に関しては、イナゴや蜂の子の佃煮などは古くからあり、またコオロギの粉末などももう珍しいことではないので触れて欲しかったです。 ★★☆ 氷の闇を越えて(ハヤカワ文庫) スティーヴ・ハミルトン
この作品は、私立探偵の「アレックス・マクナイト (Alex McKnight) シリーズ」の第1作目です。 私は過去にシリーズ2作目の「ウルフ・ムーンの夜」と、シリーズ外の「解錠師」(2009年)という二つの作品を読んでいますが、外れのない面白い作品ばかりです。 シャーロック・ホームズ、フィリップ・マーロウ、サム・スペード、スペンサーなど私立探偵ものの多くは、それが元々本業のようなものですが、このシリーズの主人公は、警察官時代にサイコパスに銃撃され重傷を負いそれがトラウマになって警察を辞めます。 その後は父親から引き継いだ山小屋の管理を本業にしていたときに、富豪の友人がトラブルに巻き込まれたことで、その友人の弁護士から半ば強引に友人の警護を頼まれ、私立探偵の免許を取得することになりますが本人はあまり乗り気ではありません。 そして警官時代の自分に3発の銃弾を撃ち込み、また相棒の警察官を射殺して終身刑を言い渡されたはずの異常者から、彼しか知らないはずの内容を書いた手紙が届き、電話がかかってきます。 刑務所から脱獄したのか?と疑心暗鬼となり、眠れぬ夜が続き、周囲では関係者が次々と殺されていきます。 果たしてこの連続殺人事件の犯人は?というクライマックスへと向かいますが、この手の小説は数多く読んできたので、半分ぐらいのところで裏で糸を引く真犯人がわかってしまいました。ただそこへ主人公がどうやってたどり着くかという楽しみがあります。 ★★☆ ◇著者別読書感想(スティーヴ・ハミルトン) 【関連リンク】 5月前半の読書 月神、潔白の法則(上)(下)、歴史の愉しみ方 忍者・合戦・幕末史に学ぶ、怪物の木こり 4月後半の読書 それをお金で買いますか、メインテーマは殺人、漱石先生ぞな、もし、何もかも憂鬱な夜に 4月前半の読書 43回の殺意、汝の名、ジーヴズの事件簿才智縦横の巻、シクラメンと見えない密室、ゴースト |
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