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中村文則 NAKAMURA FUMINORI 既読書籍
007 | 王国 | ||
006 | A | 005 | 掏摸 |
004 | R帝国 | 003 | 最後の命 |
002 | 土の中の子供 | 001 | 教団X |
1977年愛知県生まれ。福島大学行政社会学部応用社会学科卒業。フリーターを経て、2002年に「銃」で第34回新潮新人賞を受賞しデビュー。2004年『遮光』で第26回野間文芸新人賞、2005年『土の中の子供』で第133回芥川龍之介賞、2010年『掏摸<スリ>』で第4回大江健三郎賞を受賞。(Wikipediaより引用 2022年) |
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007 | 王国(河出文庫) | |
昨年に読んだ「掏摸」(2009年)の続編というか姉妹編に近いクライムノベルで、2011年に単行本、2015年に文庫化されています。 「掏摸」では器用でスリを生業としていた若い男性が主人公で、怪物と言われていた犯罪の元締め的な男との絶望的な関係が描かれましたが、今回の主人公は娼婦のフリをして男性を籠絡し、スキャンダルの脅しになる証拠や機密情報を奪うことを依頼されて生業としている若い女性です。その女性に怪物が近づいてきます。 「掏摸」の主人公にはなぜか感情移入してしまい、裏切ったことで最後に刺されたところで終わり、死んだのだろうか?と思わされましたが、今回、怪物が女性に接触を図ってきたあとに、ハンドバッグに隠していたナイフを鮮やかに奪い、その後ナイフを返しながら「ヤツとは関わるな、怪物だ」と密かに忠告を与えていますから彼は死んでいなかったんだと少しホッとします。 結局は、それまで女性に犯行を指示していた組織と、新たに関わることになった怪物が率いる組織との対立まで発展していき、女性の過去や、怪物に操られ行き止まりになってしまった絶望感が再び描かれます。 「掏摸」では暴力や陰謀など重苦しい内容が延々と続きますが、それと比べると割と軽快に進んでいくので安心して読めます。 ★★☆ 5月後半の読書と感想、書評 2023/6/3(土) |
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006 | A(河出文庫) | 2014年に発刊、2017年に文庫化された13篇からなる短篇集で、それぞれ「糸杉」「嘔吐」「三つの車両」「セールス・マン」「体操座り」「妖怪の村」「三つのボール」「信者たち」「晩餐は続く」「A」「B」「二年前のこと」のタイトルがつけられています。 内容はと言うと、なかなか難しく、簡単には表せません。私にとっては意味不明という意味も込めてです。 特に人物がまったく登場しない「三つのボール」などは読むのが面倒で、ほとんど読み飛ばしました。 この作家さんの小説は過去に4作品を読んでいますが、いずれも長編でそれなりに楽しめましたが、今回のような短篇集はもう結構という思いです。 ★☆☆ 12月後半の読書と感想、書評 2023/1/4(水) |
005 | 掏摸(河出文庫) | 2009年に単行本、2013年に文庫化された小説で、タイトル通り掏摸(スリ)を生業としている男が主人公の物語です。 そのどんどんと追いつめられていく場面がなんとも重苦しく、主人公の悩みに深く感情移入してしまいました。 元々はフリーで仕事をしていましたが、あるとき筋者と仕事で関わることになってしまい、そのボスから見込まれて無理難題を突きつけられることになっていきます。 スリのテクニックについてはおそらく取材しているのでしょう、かなり具体的に紹介されています。一種のマジシャンのようなものです。 私は20年ぐらい前、新幹線の中で、帽子掛けにかけておいた上着のポケットの中から、サイフをすられたことがあります。本を読んでいたので寝てはいなかったのですが、ガラガラの前の席にすっと座ったスリに新大阪から京都間の20分間のあいだにすられ、京都駅を発車した時にハッと気がついたら上着の向きが変わっていて、前に座った人はいなくなっていました。 しかしその上着の内ポケットにサイフが入っているとよくわかったものです。新大阪駅で土産物を買いサイフを取り出した時から、目をつけられていたのかも知れません。 小説の中でも、サイフや、奪いたい目的物が、内ポケットやズボンのポケット、バッグの中など、どこにあるかというのが決行する際の最大ポイントだということがわかります。そのためスリはしばらく様子を見て、あるいは偶然を装ってぶつかって、どこに目的物があるのかを確かめるようです。 小説の最後はフリーのスリ師の小悪は、ずっと大きな巨悪からは逃れられず、切ない結末でしたが、その巨悪を主人公にした続編「王国」があるそうですので読んでみたいと思います。 ★★☆ 11月前半の読書と感想、書評 2022/11/16(水) |
004 | R帝国(中公文庫) | 讀賣新聞に連載され2017年に単行本、2020年に文庫化された長編小説です。 近未来の日本のような架空の島国「R帝国」が隣国から突然侵略攻撃を受けますが、それは実はR帝国の政府が密かに仕組んだ謀略だった?といったノリのSF的政治小説です。 主人公は、野党議員の秘書ですが、どうして秘書ごときが、与党政府の重鎮に呼ばれて頼み事をされるのかやや無理な設定もいっぱいありますが、要は国家権力を一部の人間が握るとなんでもできちゃうと言う警告をやんわりとしているのでしょう。 地下に潜って綿々と続く反政府活動組織や、一握りの上級国民と、その他大勢の貧しい国民を支配するため、他国に蹂躙される地域を見せることで戦争を肯定的にとらえさせようとする政府との駆け引きなど、よく考えられています。 そういう意味では2月に読んだ山田宗樹著の「百年法」(2012年)も、独裁者が国家権力を握った闇が主に描かれるポリティカルSFミステリーで、なんとなく似た感じを受けました。 現在の日本はと言えば、隣国の共産党一党支配体制を厳しく批判しておきながら、ほぼ同様に圧倒的な一党支配体制が続く自国のことはすっかり忘れ、それをなんの疑問も持たずに受け入れているマスメディアや国民へ恐ろしさを感じます。 強い一党独裁体制になれば、本来は国民の僕たる役人は党の支配下に置かれ、政府や大臣に忖度するのが当たり前となり、マスメディアは太平洋戦争時の報道規制や検閲を忘れ、政府発表をそのまま垂れ流し、政府や党の有力者に近い人物や、選挙の時に支援してくれるならば反社会勢力であろうとなかろうと関係なく、様々な点で特別に優遇されます。 そういった思想や信条などはこの小説では露わにしていませんので、誰が読んでも政治スペクタルを楽しめます。ただ最後はあまりハッピーな終わり方ではないので、消化不良のままで終わってしまいますが。 ★★☆ 8月後半の読書と感想、書評 2022/8/31(水) |
003 | 最後の命 (講談社文庫) | 2007年に単行本、2010年に文庫化された小説で、2014年には松本准平監督、柳楽優弥主演で映画も公開されています、見ていませんが。 どんなあらすじなのか知らずに読み始めましたが、一人称で語られる仕事を辞めたばかりの男性主人公が事件に巻き込まれていくのをドキドキしながら読みました。 最初にこの本のタイトルを見たとき、筒井康隆著「最後の伝令」をふと思い出しましたが、内容は全然違っていて、シリアスでミステリアスな自己精神分析チック小説でした。 子供の時に友人と一緒に見てしまったことがトラウマとなっていてその友人とは長く疎遠にしていたところ、突然連絡が来て会うところから物語は進んでいきます。 そのトラウマというのが思わせぶりでなかなか出てこないのでイラッとしますが、それでも同じ男性として主人公に共感したり感情移入したりしながら読めてなかなかおもしろかったです。 ただ、小説やドラマでは当たり前になっている、偶然で事故や事件が起きて・・・というのはどうもリアリティがなさ過ぎて、そういう箇所だけは遠い場所から冷ややかに眺めているという感情が出てきます。 自分にも小説の主人公のように人の生き死にではないものの、子供の頃に受けた強烈なトラウマがいくつかあり、50年以上経った今でも頭をよぎることがありますが、それがその後の人生に影響を受けたということはたぶんなく良かったと思います。 ★★☆ 10月後半の読書と感想、書評 2021/10/30(土) |
002 | 土の中の子供 (新潮文庫) | 2005年に単行本が、2008年に文庫化された中短編小説で、2005年に「土の中の子供」で芥川賞を受賞されています。同書にはもうひとつ短編「蜘蛛の声」が収録されています。 著者の作品の中では今年3月に「教団X」(2014年)を読んでいます。 この小説の主人公は、親からの激しいDVを受け、トラウマが消えていない男性です。 子供の頃には、土の中に埋められて殺されかけた後に、施設で育てられ、現在はタクシー運転手をしながら生計を立てています。 自ら公園にたむろしている暴走族に対し喧嘩を売り、こっぴどく痛めつけられたりと、自傷や被暴力に対してコンプレックスを抱えているという暗く重苦しい精神が全体に流れています。 この小説が出た2005年にはこうした家庭内DVや、それららがトラウマになったまま生きていく人達のことはすでに社会問題化していましたが、2019年の今になっても、子供が親から殺され、虐待される事件はなくなりません。 最後の最後で、ひどい目に遭わせた父親との訣別を決意し、トラウマから脱する可能性をわずかに示した主人公に、明るい未来を感じることができる良い小説でした。 ★★☆ 9月後半の読書と感想、書評 2019/10/2(水) |
001 | 教団X (集英社文芸単行本) | 2005年に「土の中の子供」で芥川賞を受賞した著者の2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説です。 この著者の作品は過去に読んだと思っていましたが、勘違いで読むのは初めてです。書店で名前をよく目にしていたためか読んだとばかり思っていました。 単行本で570ページ、文庫で600ページを超える長編ですが、話の流れやテンポはよく、苦になりません。訳あって単行本で読んだので、その本の重さを支え続けるのには辟易しましたが、、、 最終的にはオーム真理教のように若者を取り込みながら拡大していくカルト集団の暴走が描かれていますが、そうした宗教はいつの時代でもどこの国でも起きうることで、ありえねぇと一笑に付してしまうことは出来ませんでした。 また同時に、まともな集会や団体でも、そうしたカルトの疑いをかけられてしまうと、国家権力やマスメディアに一方的に叩かれ存続すらできなくなってしまうという見本でもあるでしょう。難しいですね。 オーム事件では多くの人が犠牲となり現在でも後遺症に苦しむ人がいます。この教団Xのように、現役の自衛隊員を洗脳して取り込み、他国へ攻撃を仕掛けるようなことが起きると、国内問題で済まなくなってきます。逆のケース(他国の軍人が暴走して日本を攻撃する)も考えられます。 わかりやすい国際テロリストはもちろん、そうした洗脳などによる想定外の出来事が起きる可能性があることを国際社会の中で共有し、互いに冷静な判断と対応をおこなう取り決めが必要なんだろうなと思った次第です。 宗教関係の小説には、常になにか重苦しい雰囲気がつきまといますが、そうした悪意的に決めつけもどうかとは思いますが、今はそれが社会の通念になっているのでしょう。 気持ち悪さと、そんな単純なことではないだろう?という思いなどが混ざり合って、考えさせられる小説でした。 ★★☆ 3月後半の読書と感想、書評 2019/3/30(土) |
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