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リストラ日記アーカイブ 2013年3月

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日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです

691 就活では大企業を目指すべき3つの理由 2013/3/2(土)
692 2月の後半の読書 2013/3/6(水)
693 引きこもりが長期化する前にすべきこと 2013/3/9(土)
694 履歴書の中の嘘はすぐバレる 2013/3/13(水)
695 3月前半の読書 2013/3/17(日)
696 五輪競技除外候補とスポーツ競技人口 2013/3/20(水)
697 非正規雇用拡大の元凶が人材派遣だって? 2013/3/23(土)
698 世界と日本の書籍ベストセラーランキング 2013/3/27(水)
699 大学へ奨学金で行くということ 2013/3/30(土)



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就活では大企業を目指すべき3つの理由 2013/3/2(土)

691
大学生の就活が話題になると、識者と呼ばれている人がこのように言います。

 就職は大企業にこだわるな
 「大企業でも30年後40年先に安泰とは言えない
 「中小企業やベンチャー企業でやりがいのある仕事を探そう


しかしそのようなもっともらしい嘘を真に受けてはダメです。

そのようなことを言う人は、おそらく新卒後に大企業や役所(教師や学者含む)に就職した人がほとんどでしょう。中には大学卒業後まもなくベンチャー企業を立ち上げて成功した人もいるでしょうけど、決して学校卒業後に誰も名を知らない中小零細企業に就職して、そこで何年も苦労して叩き上げて成功してきた人でないことは確かです。そのような当たり前に大企業に入社してきた人が言う「大企業ばかり目指すな」という言葉を決して信用してはいけないのです。

ちなみに新聞の社説や記事を書く編集委員や記者、テレビ局出身のニュースキャスター、多くの識者と言われるコメンテーターなども、学校卒業と同時に大企業である新聞社やテレビ局、あるいは大企業や官公庁に就職した人達ばかりで、それを後悔して書いたり喋っているわけではないのです。そういう人達がもっともらしく喋っているのをみると怒りさえ覚えます。

よく引き合いに出されるのが「60年前には学生に人気だった大企業の石炭開発企業や紡織メーカーは、今では消えたか吸収されたかそれとも事業を変えたりしています」という例。そして「昔より今はもっと社会の変化が激しいから、大企業はいずれにしても消え去る運命」とバッサリ言ってのけます。

では問いたいのですが、現時点で可能な予測として、現在の大企業が30年後に消えてなくなる確率と、現在の中小企業やベンチャー企業が同じ30年後に消えている確率を比べるとどちらが高いでしょう?

つまり例えばNHKや三菱商事、日本生命、ソニー、ホンダ、読売新聞社が30年後に企業として跡形もなく消えてなくなっている確率は0%だと私は予測していますが、現在社員200名以下の中小企業やベンチャー企業の場合、今後30年のあいだにつぶれたり、どこかの企業に吸収されたりしてなくなっている可能性は低く見ても50%ぐらいだろうと経験値から予測します。社会の荒波は決して大企業だけに襲いかかってくるわけではないのです。

今回は別にそういう自称「就職事情に詳しい評論家やジャーナリスト」の嘘を糾弾するのが目的ではなく、なぜ「今でも大手企業に入るべき」なのかという持論を書いておきます。

まず1番目の理由は入社時の充実した研修です。

新卒で企業に入ると、中堅以上の会社では入社研修をおこなうのが普通です。大手になるほど長い期間、内容の充実した研修を受けさせてもらえます。零細企業だと、良くて研修会社主催の新入社員研修にほりこまれて2〜3日の研修、ひどいところでは1〜2日人事担当者や役員が自前で研修してハイ終わり。「明日から現場へ行って先輩について指導を受けてね」って言われます。大企業だと長いところでは1年間、短くても数ヶ月に渡る研修が当たり前です。新人一人ごとに先輩社員のチューターがついて親身に様々な相談に乗ってくれるところもあります。

たかが研修と言うなかれ。大企業出身者は「研修など受けさせてもらえて当たり前」の感覚ですから、零細企業へ入社した人の惨めな扱いが理解できていないだけです。同じ研修でも大企業と中小企業ではその中身、つまりお金のかけ方には雲泥の差があります。

大手企業の場合、入社時に業務に関係する専門的な教育が受けられること以外にも、複数の語学研修やIT系、プレゼン能力、カウンセリング能力、ビジネス交渉力、ビジネス文書、コンプライアンス、リーダーシップなど幅広い研修機会を与えてくれます。業種にもよりますが、社内に数カ国語の講師が常駐していてマンツーマンで教えてくれるなんて中小企業には絶対に不可能でしょう。郊外の静かな場所に研修施設があり、環境にも恵まれています。それよりも周囲にいる同僚達がみな必死で勉強をするので、自分もその中にあって必死にならざるを得ません。これってものすごく大事なことです。中小企業だとよくありがちな先輩社員や上司に安い飲み屋に連れて行かれ、しょうもない説教や自慢話など聞いている暇はありません。

第2には入社後の研修機会の違いです。

大企業と中小企業ではまず入社時の教育や人間形成で大きな差がついてしまい、さらに大企業では入社後も語学留学や海外研修、資格取得、大学院への派遣など、会社がかかりっきりで面倒をみてくれる場合があります。

「会社の教育制度の違いぐらい」と思ってはいけません。重要な資格を取ったり大学院へ通うのに数百万円かかることは珍しくありませんし、欧米の著名な大学院へ毎年何名か派遣しているのも大企業や中央官庁だけです。そして知識を身につけ資格を取ってしまえば、そのほとんど個人の所有物です。もちろん全員ではありませんが、条件を満たせばそれらを太っ腹に会社が全部面倒見てくれるのです。

常に人手不足でなかなか休めない中小企業に勤め、周囲の同僚に気を遣いながら、残業時間をやりくりして、疲れた身体に鞭を打ち自腹で外の学校に通うのと、会社が提携している学校や、社内で開かれている講座に昼間の時間に仕事として出席するぐらいの差があるわけです。「教育は自腹を切ってこそ身につくんだ」という人がいるでしょうけど、職場環境が厳しい中小企業で無理をすればたいていは疲れて翌日の仕事に影響したり、身体を壊して挫折したりすることになります。

第3は、大企業や中央官庁でしか得られない人脈という資産です。

同期入社の同僚達や先輩・後輩などの人脈は「同じ釜の飯を食った仲間」ということで、やがて自分の資産となっていきます。と、同時にどのクラスの会社や役所に入社、入庁するかで、自動的にその人にもランクがついてしまうのです。プライベートにおいても大企業の社員は大企業の人とつき合う傾向があり、自然と大企業の社員の周りには大企業の知り合いが増えていくのです。

「大企業だけ目指すな!」と言っている人の自己紹介欄を見てください。きっと有名大学や大企業、出身官公庁の名が誇らしげに書いてあるでしょう。自己紹介欄なんてものは基本自分で書きますので、自分はそのランクの人間なんだということをアピールしているわけです。

この選ばれた人だけの人脈や感性というものは、今後の人生の中で大いに役立ちます。交友関係も結婚相手も大企業同士というのが普通です。ついでに言うと会社の福利厚生も大企業と中小企業とでは大きな差があります。

東京電力が原発事故の後、売却できそうな資産を公表しましたが、その中に都内にあるサッカー場がいくつもとれそうな広大な専用グラウンドや、社員専用総合病院、数多くのレジャー施設など驚いた人も多かったのではないでしょうか。

最近でこそ各企業とも福利厚生施設は縮小傾向にありますが、大企業ならこれぐらいは別に普通です。少し以前には公金というか税金で救ってもらった都市銀行の福利厚生施設が紹介されましたが、それはもう東電なんかとは比べものにならないぐらいに見事なものです。驚くのは知らなかった中小零細企業の人達ばかりです。

最初に「30年後に今の大企業が安泰かどうか怪しい」ような意見があると書きましたが、私もなにも30年40年間、同じ会社に勤めることが必須で素晴らしいと言っているわけではありません。将来独立をするにも転職するにも、大企業で得られた教育や人脈という資産はなにものにも代え難く、そして大いに役立つのです。中小企業から大企業へ正社員として転職するのは至難の業ですが、逆は簡単です。世の中はそのようにできているのです。

だからこそ無理をしてでも、わずかなチャンスがあれば、最初から中小企業など狙わずに大企業へ潜り込むために全力投球するべきです。公務員でも赤字財政が続き市町村合併や財政再建団体指定になる可能性がある地方の公務員などではなく、巨額赤字でも絶対につぶれない国家公務員それもまずは総合職試験を目指すべきでしょう。

私は学校の成績が悪かった上に、始終アルバイトに明け暮れていて就職活動をまったくと言っていいほどしてこなかったので、結局は社員30数名ほどの零細企業にしか入れませんでした。それを今でも大層後悔しています。しかしその入った会社は何度かの倒産危機を乗り越え、自ら転職を決意して辞める20年後には社員も二千名を超え、幸運にも上場していて大企業の仲間入りをしていました。

そういう幸運は極めて珍しいことで、もしかすればという偶然を期待して、好んで小さなベンチャー企業へいきなり飛び込むことは決してお勧めしません。後悔先に立たずです。

【関連リンク】
 退職勧奨・強要にあった場合の対処法
 転職のキモは履歴書だ
 若者の大企業志向を非難する前に
 若いビジネスマンへ告ぐ
 就職人気企業ランキングの意味するところ
 新卒就職活動に思うこと
 失われた世代と雇用問題 
 私のリストラ激闘記
 年越し派遣村と就業支援
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2月の後半の読書 2013/3/6(水)

692
対岸の彼女 (文春文庫) 角田光代

2004年に発刊(文庫は2007年)された直木賞受賞作品です。小説のスタイルとしては二人の主人公がいて、そのうちのひとりは高校生だった頃と現在、もうひとりの主人公は現在だけで、それぞれの視点で過去と現在が交互にいったりきたりします。

女子高生の葵は中学校時代からどうも同級生同士の人間関係に不安があり、横浜の中学校ではいじめに遭い、高校へ進学するときには両親に頼み、母親の実家がある群馬県の高校へ入学することにします。そこで魚子(ななこ)といういたってマイペースな同級生と知り合い、親友になっていきます。

その葵は東京の大学卒業後に旅行会社を起業しますが、新規事業として家庭向けの清掃サービスを立ち上げるため従業員を募集します。その従業員に応募してきたのが来たのがもうひとりの主人公小夜子です。

小夜子は結婚してまだ小さな子供を抱えていますが、同じような子供を抱える母親同士のつき合いなど人間関係が苦手で、それが子供にも影響していくことを日々恐れています。夫や姑の反対を押し切って、清掃の仕事を覚え、開拓していきますが、やがて葵との関係に亀裂が入り始めます。

女性の感性で書かれているので、なかなか男、特に古い男には理解しがたい感覚のところが多々ありますが、そういうものなのかぁとあらためて結婚した女性の悩みを知ることにも。主人公二人ともいつうつ病になってもおかしくなさそうな、よく言えば繊細、悪く言えば神経質っぽいところで、読み進めていくのが重くつらかったりしますが、最後の展開で救われた思いをしました。


発火点 (講談社文庫) 真保裕一

真保氏の作品は過去に数多くを読んでいますが、テーマとする幅が広く、また想定される読者層にも偏ったものではなく、しかも長編が多いので読み応えを感じます。この「発火点」も560ページを超える長編です。

デビュー作の「連鎖」は公務員を、「ボーダーライン」ではロサンゼルスの日系人探偵、映画にもなった「ホワイトアウト」はダムの運転員を、「奇跡の人」は脳死から復活した記憶喪失の男、「奪取」は偽札作り、「朽ちた樹々の枝の下で」は森林作業員を、「黄金の島」ではベトナム難民と日本のヤクザを、「アマルフィ」では外交官をと、バラエティにとんでいて、どの作品をどこから読んでも飽きません。私にとっては「読みたい本がないときの真保頼み」となっています。

「発火点」は2002年に初出(文庫は2005年)の小説です。主人公は21歳の若者で過去に父親を父親の幼なじみに殺されるという過去を持っています。その父親を失った経緯や理由が、本文中ではずっとチラみせだけで、なかなか本題に入ってこないので、ちょっとイラっときてしまいます。

ストーリーは家を出てアルバイトを転々としすさんだ生活をおくる現在と、父親が殺された12歳の頃の話しが行ったり来たりするのは上記角田光代氏の「対岸の彼女」と同じような構成です。

著者自身、高校を卒業後、志望していた企業に落ち、その後多くの仕事を転々とした経験があり、21歳の鬱積した青春をおくっている主人公には、著者のその頃の思いや考え方が反映されているのかなと勝手に判断しています。と書いたあとで文庫の「あとがき」を読んだらそのようなことが書かれていました。


泥棒は詩を口ずさむ (ハヤカワ・ミステリ文庫) ローレンス・ブロック

初出は1979年というからかなり前に書かれた作品(文庫は1994年刊ですが現在は廃刊?)です。著者ローレンス・ブロックはチャンドラー、パーカー亡き後、私が認める数少ない読ませるハードボイルダーですが、この作品は欠かさず読むアル中探偵「マット・スカダー・シリーズ」や切手収集が趣味の殺し屋「ケラーシリーズ」ではなく、コメディタッチで軽めの「泥棒バーニイ・シリーズ」の3番目の作品です。

古書店「バーネガット書店」を営む天才的泥棒のバーニーは、来店客から稀覯本を高価で手に入れたいが、それがいまどこにあるかということを聞かされます。つまり彼が泥棒だということを知っていて、高額を支払うから盗んできてほしいと頼まれるわけです。

高性能なセキュリティをかいくぐり、無事大富豪の家に忍び込み、他の宝石や現金には一切手をつけず、その稀覯本を手に入れますが、その後、いざ引き渡しをするところで見事に騙され、稀覯本は奪われてしまいます。おまけに薬で眠らされている間に拳銃を握らされ、銃殺された死体と一緒に置き去りにされているところに警察官が押しかけてくるという絶体絶命のピンチに陥ります。

ま、ちょっと設定には無理がありすぎるのと、コメディと絡めながら妙に推理小説っぽく書かれているのがちょっとどうかと思いますが、元々推理小説家というジャンルではないので仕方がないかなと。なぜ「マット・スカダーシリーズ」が大ヒットして、こちらのシリーズがイマイチなのかがわかる作品でもあります。このシリーズを読むのはこれで2冊目ですが、もういいかな。

ちなみにマット・スカダーシリーズでは「八百万の死にざま」「死者との誓い」、殺し屋ケラーシリーズでは短編連作の「殺し屋」と長編「殺しのリスト」がお勧めです。


【関連リンク】
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引きこもりが長期化する前にすべきこと 2013/3/9(土)

693
先月兵庫県加古川市で起きた「金属バット殺人事件」は、詳しくは定かではありませんが、41才の無職男性が、70才と65才の両親と38才の弟(会社員)を自宅で殺傷するという悲惨な事件で、これは十数年前から繰り返し起きている典型的な「手遅れになった引きこもり殺人事件」と考えられます。

金属バットで殴り、父と弟死なす 殺人未遂容疑で逮捕
兵庫県加古川市尾上町養田の無職Hさん(70)の近所の人から「Hさんの息子が人を殺したと言っている」と110番通報があった。県警加古川署員が駆けつけたところ、男性2人が家の中で倒れており、無職の長男(41)が家族3人を金属バットで殴ったと認めたため、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。Hさんと、逮捕された長男の弟の会社員Tさん(38)が病院に運ばれたが死亡が確認され、県警は容疑を殺人に切り替えて調べている。
加古川署によると、Hさんは1階居間付近で、Tさんは2階の部屋で倒れていたという。Hさんの妻のMさん(65)は1階トイレに逃げていたが、頭などを殴られて重傷。長男は「家族から死ねと言われて腹が立った。3人とも殺してやろうと思った」と供述しているという。(2012年2月8日)

参考までに無職の中年男性が同居している家族に殺意をいだく事件は毎年あちこちで起きています。

「働け」に激怒…兄と弟を包丁で襲い、自殺か
東京都杉並区宮前の無職男性(75)方から、「息子が刃物を振り回し、兄弟を刺した」と119番があった。
警視庁高井戸署員が駆けつけたところ、男性の長男(45)と三男(42)が包丁で頭などを切られ、長男は意識不明の重体、三男も重傷。次男(45)は風呂場で首をつっており、搬送先の病院で死亡が確認された。
同署では、次男が長男と三男に切りつけた後、自殺を図ったとみて調べている。
同署幹部によると、会社員の長男が、職に就かず引きこもり状態だった次男に「働け」と説教をしたところ、口論になり、次男は自宅2階で長男を襲った後、様子を見に来た三男も刺したという。1階にいた母親が気付き、通報した。長男は頭や首を、三男は胸や腹を刺されており、包丁は風呂場で発見された。(2012年1月30日)

引きこもりの果ての事件?金属バットで両親殺害容疑、40歳の長男逮捕
島根県東出雲町揖屋(いや)町の無職男性(72)の親族から、「男性の長男から親を殺したと連絡があった」と松江署に通報が あった。署員が男性宅に駆けつけたところ、男性と妻(68)が木造2階建て住宅の1階居間で頭から血を流して死亡しているのを発見した。室内にいた無職長男(40)が「金属バットで頭をたたいて殺した」と話したことから、殺人容疑で緊急逮捕した。
同署によると、男性は妻と長男の3人暮らし。金属バットは台所で見つかり、長男は「今月8日に殺害した」と供述しているという。(2010年10月12日)

普通に考えると「無職で収入がない中年男性が、年老いた両親や働いている兄弟に衣食住を与えてもらっているのに、なにか言われて逆ギレ」と流れですが、いずれも時間の問題だっただけで、起こるべくして起きているわけです。

さらには、逆に高齢の親(元エリート銀行員)が、自分の身体が動くあいだに決着をつけておこうと、30年近くずっと引きこもりだった息子(と言っても50才)を金属バットで殺害するというやるせない事件もありました。

長男をバットで殴る 78歳父親を逮捕 秋田
同居する無職の長男(50)の頭を殴り殺害したとして秋田県警秋田中央署は13日、秋田市千秋中島町、T容疑者(78)を殺人容疑で逮捕した。同署によるとT容疑者は妻、長男と3人暮らしで「金属バットで頭を殴った」「以前から長男とトラブルがあった」と供述しているという。T容疑者は12日午後に自宅で、同居する長男の頭を殴り死亡させたとしている。
同署によると午後11時40分ごろ、T容疑者の妻が「夫が息子を殴ったようだ。帰宅したら息子は冷たくなっている」と119番。署員らが駆け付けたところ、長男が階段付近でうつぶせに倒れ、頭から血を流して死亡していた。T容疑者は1階廊下に横たわり、近くに金属バットが置かれていた。近所の人によると、長男は大学を卒業したころからほとんど家に引きこもり、自宅から時々激しく言い争う声が聞こえたという。(2010年11月13日)

CARPE・FIDEM(カルぺ・フィデム)」という不登校や引きこもりになった人を、再び学校や社会へ送り出すための教育をおこなっている会社があります。

そこのサイトの中に「不登校・引きこもり相談問答集7」というのがあり、読むと引きこもりに対するQ&Aにユニークというか、ストレートに本音の回答で応えていて興味深いので紹介しておきます。引きこもり問題のQ&Aは家庭内の微妙な問題でもあり、一般的にはオブラートで包み、よくわからない歯切れの悪いものが多いのですが、こちらはいたってクールです。

CARPE・FIDEM
不登校・引きこもり相談問答集7
不登校になったときに知っておくこと

上記のサイトの問答集には数多くのQ&Aが掲載されていますので、全部を読みたい方はぜひそちらをご覧ください。

その中でも、私が重要だと思うこと、あるいは、気になったり、思わずうなったりしたものをいくつかピックアップして引用させていただきます。
※一部に内容は変えず文字の修正(全角を半角にとか)を加えたものがあります。
※もし引用部分が多く著作権上問題があればすぐに削除等対応させていただきます。


Q1:子供の引きこもりに、親の責任ってありますか?

A1:きっかけ自体には特にないことが多いです。しかし長期化は親の責任であることが多いです。
Q9:中学生の頃から不登校で、高校も行っていない18歳の子供がいるのですが、今後自立させる上でどうしたら良いでしょうか?

A9:その場合には、まず「まともな仕事は無い」という現実を知っておいて下さい。厳しいようですが、今の時代、無教育層の若者は社会から必要とされていませんし、今後も必要とされないでしょう。勉強し直すか何かで、再度まともな教育のルートに戻らないことには、自立への道はほぼゼロです。
Q13:「引きこもりの親殺し」などの殺人事件などがニュースになりますが、うちの子供もそのような危険人物になるのでしょうか?

A13:何もせずに放っておき、完全に詰んでから強引に外に出そうとすればなるでしょう。
Q16:「詰む」の基準ってありますか?

A16:大体、何もしないまま30歳を過ぎると、まともな仕事の受け入れ先が消滅するので、9割方詰みます。20代の間にどれだけ行動したかで、大体が決まります。
Q19:子供が40歳等の中年になるまで、何もせず引きこもっていた場合どうなるのですか?

A19:どうにもなりません。
Q20:どうにもならないとは?

A20:そのままの意味で「社会に出るルートが完全に閉ざされる」ということです。残念ですが、各家庭の優劣が表面化しただけのことです。
Q23:引きこもりの親の会で、国が何とかすべきだという意見もありましたが……。

A23:親の会は複数ありますので、どこかは分かりませんが、それは「手遅れになった引きこもり当事者の親の会」でしょう。
Q24:「手遅れの親の会」なんてあるのですか?

A24:表面的には標榜しませんが「事実上手遅れ」というものがあります。手遅れになってどうしようもないから国の支援を当てにせざる得ない状況であり、ある意味「手遅れの最前線」です。ただ、現実的有効策はほとんど出ていませんので、そういった歪んだ主張をしなくて済むよう、事前対策を講じておいて下さい。
Q25:「手遅れの親の会」には、何か特徴などはあるのですか?

A25:会によって違う部分もあるかと思いますが、各会に関与した人々の話をまとめると、大筋以下のような特徴があります。
 A:親が60歳過ぎ、子供が30歳過ぎが目立つ
 B:家庭の責任や親の責任よりも、国や社会状況に責任転嫁する話が中心になる
 C:変なところで妙に団結しており、政治活動に結びつける傾向がある
 D:支援サイドに福祉関係者が多い
 E:国や地方公共団体からの補助金の話がしばしば出て来る
 などの様子が見える場合には「手遅れの親の会」のことが多いです。
Q33:経済的要素が引きこもりを生んでいる気がしますが?

A33:例えば「中卒 35歳 職歴なし」で「親が年金生活に入って金もなく、どうしようもない。これは経済的困窮が原因だ!」のように主張する当事者がいましたが、中には、アルバイトで学費を稼ぎ、大学に進学して専門教育を受けて社会に出ていく人達も普通にいます。若ければ手段はいくらでもあるのですから、若いうちから貧困を理由にするのはおかしな話ですし、手遅れになってから「金がない!」などと主張するのは、単に無思慮に生きてきた報いがやってきただけのことでしょう。
Q44:だとすると、30代の引きこもりの子供を持つ親はどうしたら良いのですか?

A44:まず、親が期待するようなまっとうな道は既に消滅している、と見ておくことです。「子供がアルバイトで食いつなげるだけの存在になれれば、それだけで100点満点」というのが現実的でしょう。

※A13やA16にある「詰む」という表現に違和感を覚える人が多いらしく、本文の最後にそれを使った理由等が追記されています。


資本主義も社会主義も関係なく、働かざる者食うべからずは世の法則で、10代の頃から成人後も親のすねをかじり続けていれば、やがて道は狭くなり、親と子双方とも問題を先送りして年を重ねるにつれ、最後には社会へ出る道が完全に閉ざされてしまうことを明確に答えています。国や自治体からの補助金をもらって福祉事業をやっている人や、現実を直視しない学者先生だと「単に無思慮に生きてきた報い」のようなキレのよい回答はできないでしょう。

では引きこもりが長期化しそうな時に親はどうすればいいか?

上記のサイトにも繰り返し書かれていましたが、本人と話し合い、期限を決めて家から追い出すぐらいのことをする必要があるそうです。期限がきたら、仕事が決まっていなくても家から追い出すぐらいの強硬手段を使わないと結局はズルズルと先延ばしに終わってしまうそうです。といいながらもその場ではなかなかそれができないのでしょうね。

あとここでは書かれていませんでしたが、引きこもりが長期化する大きな要因として私が考えるのは「外へ出掛けて一緒に遊んだり、スポーツしたり、旅行に出掛けたりする親しい友人がいないこと」がまず第一に起きることではないかと考えています。

親しい友人ができない理由としては外因として「いじめ」や「差別」「生活環境」「親の過保護」などがあり、内因としては「内向的性格(非社交的)」「消極的態度」「非活動的」「面倒ぐさがり」「自分勝手」「わがまま」などがあります。また「身体的特徴」は外因としての「差別」という場合と、「障害」や「肥満」「不衛生」など内因による場合の双方で考えられます。

もし親しい仲のいい友人がいて、誘われて一緒に買い物や映画、ボーリング、テニス、旅行に出掛ける機会があれば、まず引きこもりなど起こるはずがありません。そういう機会がなくなれば徐々に引きこもりへの道へ近づきます。まずは外へ引っ張り出してくれる友人がいないのは外因の理由なのか、内因の理由なのかという気づきが親には必要だろうと考えます。特に両親が忙しく働いていて家族で一緒に出掛けたり旅行する機会もないとさらに拍車がかかるでしょう。

難しいのは家で一人で勉強や読書をするのが好きな子供の場合、それが引きこもりの序章なのか、それとも単なる一時的なものかの判断がつきにくいことでしょう。一見するとおとなしくよく勉強して手のかからないいい子のようにも見えたりします。

引きこもりになる外因を取り除くことは親だけでは難しいでしょうから、学校の教師やカウンセラーの力を借りる必要があります。内因については親が早く気づいてあげて、マナーや協調性を厳しくしつけたり、可愛い子には旅をさせよで、自立心を身につけさせるしかないでしょう。ところがどうもこれが最近の親は苦手で、自分のことで忙しい上に「甘やかすこと」=「愛情」と勘違いしています。

内閣府が2010年におこなった初の引きこもり全国実態調査(15〜39歳対象)では、引きこもりに該当する人は69.6万人いるとされていますが、報道などでは稀に外出もする準引きこもりの人を含めると全国に300万人ぐらいと言われています。

もし今後なにも手を打たずこれらの人が高齢化していけば、親が相当裕福で多くの遺産を残せない限り、やがて行き詰まり金欲しさに安易に犯罪を起こすか、生活保護を受けるしか生きていく術がなくなってしまいます。

働きたくても仕事が見つからない人や、障害があって働けない人とは違い、心身に異常がなくても自ら進んで外へ出て働こうとはしない引きこもりの人に生活保護費を支給すべきかどうかは今後国民に問われていくことになるでしょう。

それにこうした家庭の問題、個人の問題に国が積極的に関わると「国が強制労働をさせようとしている」とか「弱いものいじめで人権問題だ」とか精神疾患の問題にすり替えたりと非難し糾弾する論者やマスコミが必ず出てきますので、できれば誰も触れたくはない難しい問題であることには違いありません。


 【関連リンク(過去の日記)】
 ニート対策ひとつの考え方
 ニートって言うな!と言われても
 リストラと生活保護と自己破産
 私のリストラ激闘記
 労働紛争解決法
 リストラはまだまだ続いている
 引きこもりについて
 失業保険の初認定


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履歴書の中の嘘はすぐバレる 2013/3/13(水)

694
1年前に「転職のキモは履歴書だ」を書きましたが、そこでは触れなかったことで、ひとつ重要なことがあります。

それは「虚偽の記載」についてです。

大学を中退したのに学歴のところに卒業とか、簿記は二級しかとっていないのに一級とか書くのは問題外ですが、本人は虚偽という認識はなく軽く考えてつい書いてしまうようなことがあります。

例えば、退職後にしばらく無職の期間があったり、アルバイト期間があると、面接を受けるとその期間中は「なにをしていたか」「なぜ就職せずにアルバイトをしていたのか?」と聞かれます。

そういう質問に「仕事が嫌になってしばらく羽を伸ばしていた」と本当のことは言えず、かと言って「転職活動をしていた」とか「生活費を稼ぐため就職活動に支障がない程度にアルバイトをしていた」と事実を正直にも言えず、後ろめたい気持ちや、あまり格好がよくないからと、ブランクの期間をなくすため、前職を退職した時期を勝手に延長したり、アルバイトだったのに、正社員で勤務していたように書いてしまうことがあります。本人は悪気があってとは思えません。

しかしこれも程度によりますが、履歴書の虚偽記載と言われても仕方なく、そんなことばれないだろうと思っていても、意外と簡単にばれてしまいます。それはプロの面接官ならば、前職の退職時の話しや仕事の説明を求める際、そのときの表情や説明内容で怪しいかどうかわかりますし、餅は餅屋であの会社はここ数年中途で正社員は採っていなかったハズというような情報を持っています。そして怪しければ裏をとります。つまり前職の会社の人事部に尋ねることです。

人事部が元社員のことについて外部の質問に返答するのか?という疑問を持つ人がいると思いますが、例え商売上はライバル企業同士でも、人事部同士はお互い持ちつ持たれつの関係です。さすがに個人情報に触れることは回答しないまでも「当社の求人募集に応募されている○○さんという方は、貴社に1月末まで正社員として勤務をされて、円満退社されたというのは事実でしょうか?」という質問にはほとんど普通にYESかNoで回答するでしょう。

そこでもし履歴書に書かれていることが虚偽だとわかったら、どんなに評価が高い応募者でも採用されることはありません。入社する時から嘘をつく人をまともな企業なら信用せず雇いません。入社してからも顧客や上司に平気で嘘をつく可能性があると判断されるからです。

昔面接を担当していたとき、女性の場合で特に多かったのは複数の職歴が一流の会社ばかりで、それはあり得ないだろうと思って聞くと「全部派遣社員として」というもの。履歴書にはそういうことは一切書かず、もし相手が勝手に誤解してくれたらそれでOKとでも思っていたのでしょうか。採用担当者をなめているとしか思えません。同じ職歴でも大企業の正社員だった人と、派遣で大企業へ行き仕事をしていた人ではその評価は違って当たり前です。

就活では大企業を目指すべき3つの理由

あと、自分の転職経験で言うと、採用が内定した後に、大学の卒業証明書と健康診断書、前年の源泉徴収書の提出を求められました。健康診断書は、本当なら新たに受けにいく必要があるそうですが、聞くと前年に受けたものでもいいと言われ、それを提出しました。

大学を卒業したのは、その転職時にはもう20年ほど経過していたので、すぐに卒業証明書を発行してくれるのかな?とまず電話で問い合わせをしました。説明通りに郵便で申請し、取り寄せできましたが、新卒の場合はともかく、厳格な企業は、直接仕事とは関係がないのに、そういうことまでするのだなと知りました。

最近では無資格医師が何十年と病院や診療所に勤務していたと問題となっていますが、卒業証明書や資格の証明書などの提出は転職するときには求められることを覚悟しておくほうがよさそうです。なので大学中退後もう20数年経っているからわからないだろうとか、資格を更新せず切れているのに持っているように書くと、入社が決まってから虚偽と判明し、採用取り消しになることもありますから注意です。

履歴書の健康状態欄には「良好」または「きわめて良好」と書くのが通例ですが、前年度の健康診断書を出してと言われ、その中に不良箇所が何カ所もあると、健康の問題は主観的要素も多いので虚偽とは言い切れないものの、やはりあとで気まずい思いをすることになります。履歴書には「良好」でも面接時の質問で聞かれたら、長く煩っている持病があり病院へ通院しているのであれば、仕事には支障がないと断って、少しハンデにはなるでしょうけど正直に話しておく方が後々のことを考えるといいかもしれません。

中途入社の際、内定となり給料を決める際に参考にされるのが、前職時代の給料額です。転職する際には今までもらっていた給料と入社後の給料は大事な要素になりますから、少しでも多くもらおうと、実際の給料額より多めに伝えたりすると、あとで前年の源泉徴収票を見られ嘘がバレることに。面接時には前職での支給額と手取りがどれぐらいだったかは把握しておく必要があります。

その他、社会保険の手続きで就職先に提出する年金手帳には、過去に厚生年金を支払ってきた履歴と、退職したあとに国民年金に切り替わった期間等が記載されていますので、履歴書と合致しないと問題になる可能性があります。ただ会社によっては、出向など在籍先が実際の勤務先の名称とが違っているケースもままありますので、それは必要に応じて説明する必要があります。

いずれにしても、自分の履歴書の虚偽記載は刑法上の私文書偽造には該当しないらしいですが、それでも採用後に発覚した場合、最悪は懲戒解雇される可能性もある重大な違反行為です。確信犯的な虚偽記載はもちろんですが、履歴書のように後に残る文書は、軽い気持ちで相手に誤解を与えてしまうようなあやふやな書き方をしないに越したことはありません。

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 転職のキモは履歴書だ
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 面接と読書の関係
 製造業の行く末は、、、
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 中高年者の採用基準
 中高年齢者の再就職について


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3月前半の読書 2013/3/17(日)

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アリアドネの弾丸(上)(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ) 海堂尊

 
チーム・バチスタの栄光」から始まる東城大学医学部付属病院シリーズ(不定愁訴外来 田口公平シリーズ)の第5弾作品で2010年(文庫は2012年)の発刊です。

現役医師が医療を扱った作品を書くというのは過去にも例が多く、それは医師になる人というのは、多彩な才能をもった人が多いということなのでしょうか、森鴎外や手塚治虫をはじめとして渡辺淳一氏、帚木蓬生氏など、最近では「神様のカルテ」で夏川草介氏も大ヒットを飛ばしています。

医療の世界というのはまだまだ学閥や師弟関係が重要視される閉鎖的で保守的な世界ですが、海堂氏は小説の中で厚労省との関係、製薬や医療機器会社との癒着、医療事故の責任問題など多くの話題を提供してきました。

しかし現実の社会において、つい行き過ぎたところもあり、Ai(エーアイ:死亡時画像診断)の理解促進に力を注ぐあまりに東大教授から訴えられ名誉毀損で敗訴しています。古い慣習にとらわれない医療界の中では異端児とも言える医師ですが、そう言う人達が、硬直化しているように見える医療の現場を少しずつ変えていくのかも知れません。

物語は、主人公田口公平医師が病院長に呼び出され「エーアイセンター長」に任命されたところから始まります。このエーアイセンター、その運用主導権を巡って診療側と警察など司法側が激しく主導権を巡り争っていて、その混乱必至の中へほりこまれるという構図です。

なぜ司法が死亡時画像診断において主導権を得たいのかというと、原因が明らかでない死亡者所見は、9割は司法の検死官の状況判断、1割だけ司法解剖をおこない、警察と法医学側がすべての権限を握っていました。

しかし最近流行し始めたDNA鑑定など新技術により、誤認逮捕だったことが明らかになる例が出てきたり、死亡原因が後に問題になってきたりして警察の自信と信頼が揺らいできています。

もし原因が不明の死亡者全員分のエーアイを実施しておけば、後々問題になったときの証拠として利用できると同時に、不可解な死因や警察が捜査上隠しておきたい場合でも、隠蔽されることなく診療側が行えば公正にオープンにできるということです。

そこで診療側主導で導入されてしまうと、今後司法捜査がやりにくくなるのではという危惧があり、その運用を司法側で押さえておき、あわよくばつぶしてしまおうという目論見があるからです(もちろん小説です)。

一方では診療界としては、本当の死因を究明しデータを蓄積することで医療の発展につながります。また遺族のことを考えると、原因が特定されていなくとも現状ではわずか1割しか解剖されず、証拠も残さないまま葬られてしまうケースをなくし、絶対的な権力を握る司法の暴走を食い止めることができると考えています。

このシリーズのオールスターキャストとまではいかないものの、田口公平と同級生の島津吾郎、火喰い鳥厚労省の白鳥圭輔、医師資格と弁護士資格も持つ才媛姫宮、元碧翠院桜宮病院医師だった桜宮小百合など過去のシリーズや、シリーズ外からもチラッと登場する場面もあって楽しめます。


パルテノン (実業之日本社文庫) 柳広司

トーキョー・プリズン」(2006年)「ジョーカー・ゲーム」(2008年)で完全にブレークした柳広司氏のこの作品は、それらの発表前、2004年に刊行、2010年に文庫化された古代ギリシアを舞台にした小説で、プロローグでも触れられていますが、柳氏が若い頃にギリシアをひとりで訪れた時この構想を考えついて一気に書き上げたもののようです。

巻末の解説で宮部みゆき氏も書いていますが、この著者柳氏の作品は、様々な時代をまるで見てきたかのように小説の中で再現して見せます。「トーキョー・プリズン」は終戦直後、「ザビエルの首」は400年前の戦国時代、そしてこの「パルテノン」は紀元前4世紀のギリシアと、その歴史考察力と創造力は見事です。

物語は「巫女」「テミストクレス案」「パルテノン」の三つの物語にわかれていて、書かれた時期は別々のようですが、それぞれに少しずつ関係する連作ともいえるものです。

時は紀元前5世紀から4世紀にかけてのギリシアの話しで、三度にわたるペルシア軍が襲ってくるペルシア戦争と、その後栄華を極めた都市アテナイ(首都アテネの古名)が誇るパルテノン神殿の建築、アテナイとスパルタの内戦などを中心とした歴史ストーリーで、いずれにしても日本人には馴染みの薄いギリシア古代史が、相当脚色されているとはいえ面白く読むことができます。

著者も脂がのった40代半ば、まだ大きな賞には恵まれていませんが(「ジョーカー・ゲーム」で吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞は受賞されていますが)、近いうちにきっと大物を釣り上げるそうなのは間違いないでしょうから、ますます楽しみな作家さんです。


ニライカナイの語り部―作家六波羅一輝の推理 (中公文庫) 鯨統一郎

2008年に発表、2010年に文庫化された「作家六波羅一輝シリーズ」の二作目です。同シリーズ第1作目の「白骨の語り部 - 作家六波羅一輝の推理」と第3作目「京都・陰陽師の殺人―作家六波羅一輝の推理」はテレ朝系土曜ワイド劇場でそれぞれ2010年と2012年にドラマ化がされていますのでそちらを先に見て知った方も多いのではないでしょうか。

物語の主人公はデビュー作こそヒットしたものの、次作がなかなか書けずに出版界からも忘れ去られそうになっているミステリー作家で(決して著者そのものを反映しているというわけではないでしょう)、このシリーズは筆者お得意の歴史もの+西村京太郎氏や内田康夫氏らが得意とする紀行ものを合わせた推理小説と言っていいでしょう。

「ニライカナイ」という言葉、普通の関東在住関西人にとっては初めて聞く言葉で、Wikipediaによると「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。」「遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。」とのことで、よくわかりませんが、なんとなくロマンがありそうです。

その伝承が残る地域にリゾート施設を作ろうとする人と、建設に反対をする住人の対立があります。主人公達がその地に取材に訪れたあと、関係者が何者かに殺害されるという事件が起き、「ニライカナイ」の伝承とリゾート施設建設に絡む利権を暴き出し、主人公の作家と相棒の新人編集者が謎を解いていくこととなります。

物語の中には、ジュースの中の氷を紙ナプキンで釣り上げる方法やスパムメールの語源など、ストーリーとは関係がないうんちく話しが盛り込まれていて、そういうところもこの作者の作品ならではの楽しみ方です。特にデビュー作「邪馬台国はどこですか?」は一番のお勧めです。


そして、警官は奔る (講談社文庫) 日明恩

昨年読んだ「鎮火報」が、たいへん面白かった日明恩(たちもりめぐみ)氏の作品で、2004年(文庫は2008年)発刊されています。あとで知りましたが、この作品はシリーズ化されていてこの本が第2作目です。シリーズ1作目は「それでも、警官は微笑う」が2002年に発刊されています。

しまったなと思うのは、登場人物などその1作目からの流れに関係すると思われることが結構でてきますので、この2作目から読むとなにのことを言っているのか意味不明の箇所がいくつかあります。シリーズものの場合、どれから読んでも影響がない作品もありますが、そういうところを気をつけて読まなければいけませんね。

寡黙な警視庁蒲田署の刑事武本と、武本を慕う元部下で現在は退官している潮崎の二人を主人公としたこの作品は、外国人の不法滞在とその子供達がテーマとなっています。

おそらくシリーズ1作目でなにかが起きて警視庁を退官してしまったらしい潮崎が、この作品では国家I種試験に合格し、いわゆるキャリアとして警察庁入庁をほぼ決めてから先輩武本の前に現れます。ところがこのコンビがどうして生まれてどういう関係なのかは2作目から読むとわかりません。つまり1作目から読み直せということなのかしら。

多くの警察物小説にも共通しますが、警察内部のことが詳しく書かれていて、よく調べたなと感心します。特に女性作家でこのような男の刑事を主役とする小説を書いている人は少ないでしょう。

ちなみに国家I種試験でキャリアの道を歩むのと、通常、高卒・大卒で巡査から入るのとでどれだけの差があるかというと、I種合格者が入庁し7年経つと自動的に階級で言うと上から5番目の警視になります。大学卒業と同時に22歳で入庁すれば29歳で一般的に各地の警察署長に多い警視の階級になれるわけです。一方でもっとも下の9番目の階級で巡査から入れば警視まで上がるのは難しく(キャリアも含め警察官全体のわずか2.5%)、しかも順調に昇任したとしても45歳以上となります。実務能力があろうとなかろうと関係なく、入るときに大きな格差があるわけです。

読み進めていると、堂場瞬一氏の警察小説「刑事・鳴沢了シリーズ」と雰囲気が共通するところがあります。同シリーズは全部を読みましたが、いま思うと昇進や権力には興味がなく、勧善懲悪、クールだが心の中は温かいと理想に近い刑事で、ちょっと現実的にはあり得ねぇと思ったり。

正直に言うと「鎮火報」の主人公のような軽いノリの軽快なストーリーを期待していたのですが全然違っていて、どちらが本当の日明恩氏の作風なのかよくわからなくなりました。まぁ両方っていう答えなのでしょうけれど。

しかしこの手の刑事を主人公とした小説は数多くあり、デビュー作からのシリーズとは言え、厳しく言えばこの作者のものでなければならない特徴も理由も特に見つけられません。それゆえにこの作者には刑事以外を主人公とした作品を強く望みたいところです。


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五輪競技除外候補とスポーツ競技人口 2013/3/20(水)

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レスリングがオリンピック種目から除外されるかもしれないと関係者は大慌てですが、私はそれも仕方なしかなと思っています。

レスリングは第一回オリンピックの種目にもあった伝統ある競技だからとか、一部の国々で人気があるからと言って、既得権益のように五輪の種目に永遠にあり続けるかと言えばそれは無理な話しで、ビジネス上のことも考え、さらに競技日程や競技会場の制限もあり、時代と共に競技種目が変わっていくのが筋ではないでしょうか。

そうしないと五輪のような世界でもっとも注目される競技会で披露できないと、新しいスポーツは、例え世界中で人気が急上昇してきても、空き枠がなければ新たに五輪に加わえられず、なかなかグローバルな競技となりません。

いっそ、毎回競技を1/4ずつ入れ替えていくという方法もいいかも知れません。それによって今までメダルと縁の無かった小国でもメダルの可能性が高くなりますし、オリンピックのような晴れの舞台に縁がなかったマイナー競技にも陽の目があたります。

スポーツ実施人口と言っても競技人口との区別が難しいところですが、SSF笹川スポーツ財団が「スポーツライフ・データ2010」で、国内の「種目別スポーツ実施人口」を調査したものがあります。順位は推計実施人口(10歳以上、年1回以上実施者の多い順に表示)です。年1回以上ですから競技人口を含むその他大勢の愛好家というところでしょうか。



世界基準で見ると国内1位の「ウォーキング」は散歩などと同様、スポーツとみなされないところもあるでしょうけど、日本ではスポーツ実施人口にカウントされています。2位以下は概ね実感値と一致します。見るのが好きなスポーツや、協会などに登録しておこなう本格的な競技人口とは違い、実施人口ですので、少し変に思うところもあります。

しかしこうしてみるとスポーツも日本人の高齢化を感じさせるようになってきました。2006年と2010年で比較するとランクが上昇したスポーツでは「フットサル」は除き、「登山」「グラウンドゴルフ」「太極拳」などいかにも中高年から高齢者向きのスポーツが目立ちます。

4位の「バドミントン」は、五輪など競技用の鳥の羽を使ったシャトルを用いる競技人口は、さほど多くないように思われますが、一般レジャーとしてよく使われるナイロン製の軽量な羽根を使った「バドミントン」実施人口を入れるとこうなるのでしょう。

8位の「卓球」は2006年調査の時は6位でしたので2ランクダウン、同じく11位の「スキー」も2ランクダウンしています。意外なのは2006年15位だった「スノーボード」は2010年調査ではランク外で、スキーよりも増えているかと思っていたら案外そうでもなさそうです。最近はスキー場へ行くとスキーよりもスノボやっている人のほうが多いように見えるのですがねぇ、、、

2006年より2ランク以上上がったのは9位の「登山」、15位のグラウンドゴルフ、17位フットサル、24位太極拳など。「登山」は最近の山ガールブームや中高年登山者の増加で、今後もっと上位進出を果たすかも知れません。しかしこれも一種の「ウォーキング」と同じで、果たして正式なスポーツと言えるかという疑問があります。人工的な岩場を手足だけの力で登りそのタイムで勝敗がつく「ボルダリング」など「フリークライミング」の競技とはまったく違います。

私が高校生の頃は、体育で「柔道」が必須でしたから、「柔道」が25位までに入らず、「剣道」や「太極拳」にも及ばないのにはちょっと意外です。いま世界でもっとも「柔道」人口が多い国はフランスですが、フランスでは本格的な競技というよりも礼節を身につけるために柔道を習う愛好家が多いようです。全世代でマナーが悪くなってきたと感じる日本人にもぜひ聞かせたい話しです。

今回除外される可能性が高いレスリングの国内での実施人口は、ランク外ですが、想定で1万人ぐらいとされています。オリンピック競技ではない空手や合気道、それに今回脱落候補として争ったテコンドーの国内実施人口1.5万人にも及びません。なので、なぜこれほど日本のマスコミが懸命に報道しているのか理解できません。オリンピックってメダルを取ることに意義があるのでしたっけ?

ついでに根拠がやや薄弱ですが、世界規模でスポーツ競技人口ベスト10は、
 1)サッカー
 2)クリケット
 3)バスケットボール※
 4)テニス
 5)モータースポーツ
 6)競馬
 7)野球
 8)陸上競技
 9)ゴルフ
 10)ボクシング
 ※バスケットが世界一競技人口が多いというデータもあり

のようです。但し正確な統計データはどこにもなく、おおよその推計値です。

というのも、日本の「ウォーキング」が日本ではスポーツ実施人口としてカウントされるように、各国のスポーツ実施・競技という認識が違うのと、そのカウント方法も統一されてなく、この国では人口比で概ねこれぐらいだろうみたいな大雑把な数字の寄せ集めしかないからです。

特に「サッカー」や「バスケットボール」は、いわゆるストリートプレーヤーが多く、統計とはあまり縁がない貧しい国(人口は多い)で、ボールがひとつあればできるスポーツとして特に人気が高く、それらを足し合わせるとさてどちらが多い?となり諸説あるようです。

2位の「クリケット」は人口が多いインドで大人気スポーツなので上位にきていますが、そんなことを言えばアジア大会の正式種目となっている「太極拳」も、人口が多い中国と欧米のアジアブームで上位にランクされていても不思議ではありません。

そう言えばアニメ「巨人の星」をインドで放映する際に、主人公がおこなう競技を野球からクリケットに作り替えたというのは有名です。クリケットの素養(運動神経)があれば野球選手としての才能もあるでしょうから、近い将来日本のプロ野球にもインド選手が加わってくる可能性がありそうです。プロ球団も今のうちにインドに若手養成所を設立して選手を発掘すれば、将来はいいビジネスができると思うのですが。

それにしても競馬の競技人口が6位と乗馬競技を入れてもこれほど多いとはとても信じられず、競馬場に通う観客を入れての数のような気がします。競馬ではなく乗馬と置き換えても江戸時代ならともかくこの順位は高すぎます。

特徴的なのは上位にランクされるスポーツの多くは英国発祥のスポーツで、その他の国の発祥は少ないことです。スポーツ大国アメリカ発祥と言えば「バスケットボール」と「野球」ぐらいです。ま、英国とアメリカとで歴史の長さが違うので仕方がないでしょうが、フランスやイタリア、スペイン発祥のスポーツが出てこないのはなぜでしょう。

アメリカの4大スポーツと言えば「野球」「アメフト」「アイスホッケー」「バスケットボール」ですが、今の五輪ではそのうち二つは入っていないことになります。

「野球」は世界の競技人口数で堂々7位、世界的にメジャーなスポーツとも思えるのですが、競技人口が東アジアと北中米に偏っていて、それらの国の競技者だけで世界の競技者の95%以上を占めているという実態があるそうです。なのでオリンピック発祥の地ヨーロッパや、国が多くそれだけ発言力があるアフリカ諸国では「野球」は支持されず、オリンピックの競技から外された経緯があります。その他専用球場の建設にコストがかかる、試合時間が長いなどの理由もありましたが。

いずれにしても五輪など国際競技においては「近代スポーツの発祥や主体は欧州」という、やや地域差別的な慣行があるようで、欧州で人気のないスポーツは商業的にもオリンピックから除外されていくという傾向がありそうです。


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非正規雇用拡大の元凶が人材派遣だって? 2013/3/23(土)

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ここ何年かの非正規(雇用)社員が増加している元凶が、小泉政権時代におこなわれた「人材派遣の自由化にある」と思っている人が困ったことにいまだ多くいます。

たぶんそのように言うとマスコミからも注目され「労働者の権利を迫害する業者や政治家を叩く俺って格好いい」と思ってのことでしょうが、まったく非正規雇用問題の本質を理解していないふざけた話しです。別に派遣会社やその業界団体からなにかの恩恵を受けている私ではありませんが、コロッと騙される人も多いかなと思って解説しておきます。

2008年年末に「年越し派遣村」という話題が一気に噴騰し、あたかも「派遣労働→派遣切り→ホームレス→可哀想→糾弾しなければ」と、派遣労働を目の敵にしてきた労働組合系組織や、それに同調し表向き「弱い者の味方」と称するマスコミによって、意図的な情報操作で悪評が広められてきました。

「派遣業者・派遣という就業形態=悪者」と断じて、「悪者(人材派遣業界や自由化を支持をしてきた政治家)を叩け」とばかりに、もっともらしく書くジャーナリストや評論家が後を絶たず、人材派遣の業界団体もまったく聞く耳を持たない労組やマスコミに手を焼いていました。

なぜ労組が人材派遣を目の敵にするかといえば、労組は誰でもが加入できる組織化されていない小規模なところを除き、基本は大企業や業界ごとに正規雇用者が主体となり組織されています。つまりパートやアルバイトならともかく社員と同等の仕事をする派遣社員が職場に増えることで、正社員の既得権が侵され、組合員が減り、相対的に労組が弱体化してしまうことを一番恐れているからです。

正社員以外で働く人のことを一般的に非正規(雇用)社員と言いますが、それには明確な区分があるものとないものが混在しています。一般的にはアルバイト、パート、フリーター、契約社員、嘱託、季節労働者(期間工など)、日雇い労働者、派遣、個人請負(個人事業主の場合は曖昧)などが非正規(雇用)社員と位置づけられています。

非正規社員の中でそれぞれが占める割合と推移をみてみましょう。

全雇用者に占める非正規社員の割合推移と2010年非正規社員の内訳(総務省統計局/労働力調査より抜粋)


非正規社員は1990年と2010年で比べると確かに全年代で増加しています。しかし思い出してください。1990年といえばバブル絶頂時代で、完全な売手市場の中、失業率も低い時代でした。そのような時代と現在を比べて「正規雇用者数の割合が減ったのはけしからん」と言ってもあまり説得力はありません。

解決するには最低でも80年代後半のように企業が超人手不足で、猫も杓子も正社員として採用してくれるよう景気をよくする必要があります。それは今の時代どう考えても難しいでしょう。

この20年間の非正規雇用の増加は、派遣労働者の増加というだけではなく、働き方が多様化したり、バブルが弾け長引く不況の中、業績も停滞し、その結果企業が正社員雇用を絞っってきたからに他なりません。別に労働組合つぶしで正社員を減らしてきたわけではありません。

特に1990年頃までは雇用数が多かった製造業の現場で、1990年前半のバブル崩壊以降、円高と激しい国際競争にさらされ、それに対応すべく非正規社員(派遣社員ということではなく)を多く使うようになってきたからなのです。

それを証明するために、下記のグラフを見てみましょう。

2000年、2005年、2010年の非正規社員内訳比較(総務省統計局/労働力調査より抜粋)


小泉純一郎氏が政権についたのが2001年、それから5年後の2006年まで総理大臣の座にいました。その間で労働者派遣法が改正されたのが、2003年の要件緩和と退任後の2007年から実施された派遣期間の緩和です。果たしてそれが今の非正規雇用問題の元凶だといえるのでしょうか?

派遣職種が過去一番ドラスティックに変更され緩和されたのは1999年小渕恵三内閣時代の改正で、この時に派遣業種が原則自由化され、製造業派遣なども認められました。いわゆる派遣禁止職種のネガティブリスト化ということで、それまでは制限されていた派遣可能職種から、やってはいけない職種の制限に置き換えられました。百歩譲ってもし派遣法改正が元凶だというのなら、この時の改正を言うべきでしょう。

次に非正規雇用者を年齢別にみるとどうでしょう。

年代別全雇用者数に占める非正規雇用の割合(2000/2005/2010年)(総務省統計局/労働力調査より抜粋)


顕著なのは、2000年から2010年の10年間で、55歳〜64歳の非正規雇用者数の割合が増大しているのがわかります。これは数百万人もの団塊世代が2007年頃から続々と60歳定年を迎え、61歳以降は嘱託や契約社員として、あるいはパートとして働くようになりました。

一方では、15〜24歳の層は、いったん2005年には急増したものの、その後2010年にかけては非正規雇用者割合が減ってきています。その他の層も55歳以上以外は2005年と2010年を比較すると横ばい傾向と言っていいでしょう。

もしどうしても非正規雇用急増の問題を指摘するなら、減ってきている若年層ではなく、定年後も働き続けなければならない、あるいは一度退職すると次に正社員としては採用してもらえない55歳以降の非正規雇用の問題を真っ先に取り上げるべきなのです。

実際には60歳以上の高齢者は、すでに年金支給の対象となり、多くの人には規定の退職金も支払われて、他の年代と比べると裕福と言われています。そのためこの年代の非正規雇用自体に大きな問題があるかというと、ちょっと疑問符がついてしまいますが増えているのは実はその層なのです。

話しは横道へそれてしまいましたが、派遣労働者の数は、2010年でわずか96万人に過ぎず、全就業者数6256万人に占める割合はわずか1.5%です。非正規社員全体の1755万人の中でもたった5.5%に過ぎないのです。

それなのに「非正規社員≒派遣労働者」の扱いをするとはまったく無能としかいいようがありません。住むところを追われ、年越し派遣村に来ざるを得なかった人達の中に、いったい何人の派遣労働者がいたのか、実際のところを教えてもらいたいものです。統計上で推定すると、年越し派遣村が「無職の人と生活が不安定な非正規雇用の人達向け」ということであれば、20名の中に派遣社員が1名いるかいないかという程度なのです。それだけにわざわざ「派遣村」と名付けたのは誰かが意図した悪意としか言いようがありません。

非正規雇用が増えたため、その分収入が減りデフレが起きたという意見にも賛同ができません。2000年以降、日本経済は円高の影響などにより国際競争に負けて多くの仕事を失い、物価変動の影響を考慮した名目GDPも1997年以降下がっています。給料が下がったのは非正規雇用の人だけではなく公務員以外の一般的な正社員勤労者平均が下がっています。

1997年と2009年比較で約13%も平均給料が下がっているのです(国税庁:民間給与実態統計調査)。非正規雇用者の2倍近くいる正規雇用者の給料が下がれば、それに引きずられ全体に与える影響のほうが大きいことは明かでしょう。なのでデフレが起きたのはなにも非正規雇用が増えたためではありません。これも非正規雇用問題を大きくするために作られた嘘です。

さらに、人口統計で明かですが、少子化と高齢化の影響で、進学や結婚、実家から独立などで多くのお金を使ってくれる若い人が90年代後半から減り続けています。逆に裕福な高齢者は将来の年金不安や医療制度不安でしっかり貯金をして支出しません。そのような流れが10数年続いている中では景気が改善するわけがありません。

それでも非正規雇用の問題を取り上げるのであれば、まずは一番数的インパクトの大きいパート労働者で、その問題を解決すれば半分、さらにアルバイトの問題を解決すればそれで非正規雇用問題の7割が解決することになります。転勤はできない、フルタイムでは働けない、残業もダメ、重い責任や部下のマネジメントの責任は負いたくないという一般的なパート労働者を、それでも正規雇用に切り替えさせようというのは、労使共に無茶な話しで、希望があれば社員登用の道を作るぐらいしか、対策はないと思われますがどうなのでしょう。


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世界と日本の書籍ベストセラーランキング 2013/3/27(水)

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世界の書籍三大ベストセラーは「聖書」、マルクスの「資本論」、サン・テグジュペリの「星の王子さま」と塩澤実信著「ベストセラーの風景」には書かれていますが、「コーラン」や「毛主席語録」は推定では聖書に次ぐ数十億冊が出版されているそうです。無料で配布されることもある宗教本や政治本はベストセラーとは言えないという理屈であれば、上記のベストセラーからも「聖書」を外さなければなりません。

その世界のベストセラー本は果たして日本でも売れているのだろうか?と思って調べてみました。出典はWikipedia(2013年3月20日時点)を基本としていますが、調査年度や調査方法等にばらつきがあり、中には発行元が自主的に発表している信用のおけないデータも混じっているのでその点はあしからず。

聖書など宗教や思想、政治関連書籍および漫画は除き、単一本での発行部数で多かったとされる書籍ベスト10は、

(1)チャールズ・ディケンズ著「二都物語」 2億部
(2)J・R・R・トールキン著「指輪物語」 1億5000万部
(3)曹雪芹著「紅楼夢」 1億部
(4)J・R・R・トールキン著「ホビットの冒険」 1億部
(5)アガサ・クリスティ著「そして誰もいなくなった」 1億部



(6)パウロ・コエーリョ著「アルケミスト - 夢を旅した少年」 1億部
(7)C・S・ルイス「ライオンと魔女」 8500万部
(8)ヘンリー・ライダー・ハガード「洞窟の女王」 8300万部
(9)アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ「星の王子さま」 8000万部
(10)ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」 8000万部
  ※部数は推定(以下同)



とされています。この中で読んだのは「星の王子さま」「そして誰もいなくなった」と「ダ・ヴィンチ・コード」だけです。たぶん平均的な50代日本人とほぼ一致しているのではないでしょうか。

日本人が書いたベストセラーでは、太宰治著「人間失格」と村上春樹著「ノルウェイの森」が共に1200万部となっています。「ノルウェイの森」などは多国語に訳されてはいますが、やはり日本語の壁は厚いようです。日本国内では50万部もでれば大ベストセラーですが、人口が日本の10倍の中国では50万部ぐらいでは果たしてどうでしょうか。人口が10倍でも熱心な読者人口も10倍いるかどうかはわかりませんが。

シリーズもの、あるいは定期刊行される書籍の累計ベストセラーは、

(1)J・K・ローリング著「ハリー・ポッターシリーズ」 4億5000万部
(2)R・L・スタイン著「グースパンプス」 3億5000万部
(3)E・S・ガードナー著「弁護士ペリーメイスン」 3億部
(4)スタン&ジャン・ベレンスティン「ベレンスティン・ベアーズ」 2億6000万部
(5)子供向けゲームブック「きみならどうする?」 2億5000万部

などとなっていますが、1位の「ハリー・ポッターシリーズ」は私も数巻読みましたが、それ以外は日本ではあまり知られていません。「グースバンプス」は今でもそこそこ売れていたりするのでしょうかね?

さて日本の書籍(シリーズもの累計)では、

(1)吉川英治著「宮本武蔵」 1億2000万部
(2)細木数子著「細木数子の六星占術あなたの運命」 9300万部
(3)池田大作著「人間革命/新・人間革命」 4000万部
(4)山岡荘八著「徳川家康」 3000万部

などとなっています。おそらく累計だと1億部はいっているはずのJTB時刻表などはカウントされないのですね。定期刊行物なのに。

「宮本武蔵」全8巻は読みましたが、元々は太平洋戦争前の1930年代に新聞連載小説として連載され、その後単行本や文庫になっています。映画化やドラマ化でも定番の作品ですが、最近の若い人には同作品を原作としたコミック「バガボンド」のほうがよく知られているのでしょう。

8巻計1億2000万部が売れたと言うことは、単純計算すると、(発売開始後80年近く経っていることを考慮しなければ)全国民の8人に1人が8巻すべてを買ったか、赤ちゃん含め全国民が一人1巻を持っているという計算になりますから想像するとものすごい数です。余談ですが、この吉川武蔵は巌流島の決闘で終わります。巌流島の決闘以降を描いた小山勝清著「それからの武蔵(全6巻)」も意外と知られていない武蔵の晩年が描がかれていて面白かったです。

細木数子氏の占い本(シリーズ)がこれほど売れていたとは驚きです。私は読んだことはありませんが、占い本として9300万部というのはギネス記録に認定されているそうです。これだけ売れるともう完全に左うちわの印税生活でしょう。1冊552円として著者に入る印税が1割の55.2円×9300万部=51億3千万円ですからね。ホントか?

「人間革命/新・人間革命」は創価学会第2代会長・戸田城聖、第3代会長山本伸一の半生を描いたノンフィクション大河小説とのことですが、私は読んでいませんのでなんとも、、、実際に書いた人にはそれ相応の謝礼がちゃんと渡っているのかが唯一の関心事です。

4位の山岡荘八著の「徳川家康」(全26巻)とランク外の吉川英治著「新書太閤記」(全11巻)の超長編小説は、そのうちいつか読もうと思いつつ、まだ実現できていません。仕事を引退してからか、大病を患い長期療養するなど、暇な時間がたっぷりとできてからゆっくりと味わうことになりそうです。

次に日本がお得意分野と思われる漫画作品(シリーズ累計)で見るとどうなるでしょうか?

世界の漫画(シリーズ含む)発行部数ランキング

(1)「クラシックス・イラストレイテッド」 アルバート・ルイス・カンター作 10億部
(2)「X-メン」 マーベル・コミック作 5億部
(3)「タンタンの冒険旅行」 エルジェ作 3億5000万部
(4)「アステリックス」 ルネ・ゴシニ(原作)、アルベール・ユデルゾ(作画) 3億5000万部
(5)「ラッキー・ルーク」 ルネ・ゴシニ(原作)、モリス(作画) 3億部
(6)「ピーナッツ」 チャールズ・M・シュルツ作 3億部

と、意外にも上位6位に日本漫画は出てきません。やはりここにも日本語の壁があるのでしょうか。

が、しかし7位以下は、

(7)「ONE PIECE」 尾田栄一郎作 2億8000万
(8)「ドラゴンボール」 鳥山明作 2億3000万
(9)「キャプテン・アメリカ」 マーベル・コミック作 2億1000万
(10)「スーパーマン」 DCコミック作 2億
(11)「ゴルゴ13」 さいとう・たかを作 2億

と、ようやくお馴染みの作品が登場してきます。

今後の活躍次第ですが、まだ連載中の「ONE PIECE」や「ゴルゴ13」などは十分ベスト5入りの可能性もありそうです。ドラゴンボールは連載は終わっていますが今なお人気は高く、日本はもちろん海外でも人気があります。

もうひとつ意外に思ったのは、アニメの世界では圧倒的に強いウォルト・ディズニーものがないこと。コミックから早く抜け出して映画やテレビのアニメへとシフトしたせいでしょうか。あと下記を見てもわかりますが女性漫画(ベルバラとかガラスの仮面、花より男子とか)の販売数は意外と伸びていません。

11位以降、日本の漫画だけを抜粋すると、

 ブラック・ジャック 手塚治虫作 1億7600万部
 ドラえもん 藤子・F・不二雄作 1億7000万部
 こちら葛飾区亀有公園前派出所 秋本治作 1億5527万部
 名探偵コナン 青山剛昌作 1億4000万部
 NARUTO -ナルト- 岸本斉史作 1億2650万部
 SLAM DUNK 井上雄彦作 1億1897万部
 美味しんぼ 雁屋哲(原作)、花咲アキラ(作画) 1億1120万部
 鉄腕アトム 手塚治虫作 1億部
 タッチ あだち充作 1億部
 北斗の拳 武論尊(原作)、原哲夫(作画) 1億部
 金田一少年の事件簿 天樹征丸(原案・原作)、金成陽三郎(原作)、さとうふみや(作画) 9000万部
 サザエさん 長谷川町子作 8600万部
 キャプテン翼 高橋陽一作 8000万部
 はじめの一歩 森川ジョージ作 7550万部

となり、13作品がシリーズで1億部を超えています。シリーズものの日本の小説で1億部を超えているのは「宮本武蔵」だけですから、やはり漫画の人気はさすがと言えます。もう何十年間も若者の読書離れが言われ続けていますが、要は難しい文学や哲学、ビジネス書から漫画本へ移行しただけではないのか?とちょっと思ったり。

私はといえば、上記の漫画の中ではブラック・ジャックは昨年の夏休みに全巻一気読みしましたが、あとは読んでいないか1〜2巻程度を喫茶店で暇つぶしで読んだぐらいです。子供の頃は漫画よりもアニメが好きであまり漫画本を読んだ記憶はありません。今も小説と比べるとやっぱり小説をとってしまいます。


 【関連リンク】
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大学へ奨学金で行くということ 2013/3/30(土)

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テレビの情報番組で大学生の奨学金について、様々な問題が起きていると特集が組まれていました。

東大写真
元々奨学金制度はそれぞれの大学独自におこなわれているものと、独立行政法人日本学生支援機構(旧 財団法人日本育英会)らが国の支援を受けておこなっているものがあります。ここでは主に日本学生支援機構で借りる奨学金をイメージしています。

一言で奨学金と言っても、返還義務がない「給付型」と、卒業後に返還する「貸与型」の2種類があり、全体の約9割が「貸与型」となっています。また「貸与型」の多くは無利子ではなく、有利子で借りる奨学金(いわゆる学資ローン)と言うことです。

大学の入学金、授業料、教材費の他にも、大学への通学を考えて家を出ると、アパートや寮住まいの費用、食費、生活費などで多額の費用が必要となり、それらをすべて親が負担できる家庭が少なくなってきています。

アメリカでは既に奨学金制度を使い大学へ進学するのは普通になっていて、現在52歳のオバマ大統領も、実家がそれほど裕福でなかったためかどうかは知りませんが、大学時代は奨学金をもらい、最近まで教育ローンを返済していたという話しは有名ですが、国内でも学生自身が奨学金を借り、卒業後に返済をしていく学生が、なんと全体の半数近くに増えてきているそうです。もうここまでくれば奨学金というより、官製教育ローンビジネス(国や政府から毎年数百億円の交付金や補助金が出ていて、当然のように文科省の役人が数多く天下っている)と言ってもいいでしょう。

そしてこの有利子奨学金でどうのような問題が起きているかというと、

 1)近年学費が高騰していて借りる金額も高額となってきている
 2)大学生の親は中高年者が多く、不況のため給与減やリストラの対象となっている
 3)返済義務のない、または無利子の奨学金が年々減少し、有利子で借りざるを得ない
 4)卒業後安定した就職先が決まらない学生にも返済期限がすぐにせまる
 5)社会に出てゼロからのスタートではなくマイナスからのスタートというハンデを背負う
 6)結婚したくとも、借金返済が障害になってできない

というもの。

「甘い考えで大学など行くから」と言ってしまえばそれまでなのかも知れませんが、大学全入時代(お金があり希望さえすればどこかの大学に全員が入れる時代)と言われている昨今、勉強が特に嫌いでなければ、就職や将来のことを考えると大学は出ておきたいと考えるのも自然なことです。

そして一人っ子の場合だと、親がやりくりをして学費から生活費まですべて面倒をみてくれるでしょうが、これが二人三人となると、今のご時世では普通のサラリーマン世帯では相当苦しいでしょう。実感として「子供の教育費は親の責任」と、親がすべてをまかなえるのは私立の場合だとせいぜい一人までで、二人、三人となると高校も大学も国公立以外は難しくなるでしょう。

子供の教育費の負担を覚悟しているか

まず大学の授業料ですが、世の中のインフレ率とはまったくリンクせず、学費はここ何十年間ずっと右肩上がりです。学費というのは初年度に入学金と授業料を支払うと、卒業するまで変更ありませんが、デフレや不況だからと言って牛丼や地価のように安くなることもありません。

私立大学4年間の授業料と入学金全国平均推移と2010年を100とした時の消費者物価指数推移(出典は文科省及び総務省統計局データから作成)


デフレのおかげで学校運営費が大幅に削減でき、教職員の給料も民間企業並みにカットし、その結果授業料も下げますと言う大学があってもよさそうですが、そのようなことは行われず、逆に施設や教員の充実、情報化の促進などというわけのわからない理由で、ずっと上げ続けてきました。

また授業料以外に「教育充実費」「施設費」「在籍基本料」「教育活動料」などの名目で年間数万円から数十万円余分に支払わなければなりません(青山学院大学2013年入学の場合、授業料以外に毎年約23万4千円が必要)。

少子化で子供の数は大きく減っているものの、その代わりに進学率が高まり、そして国の制度に守られ、教育界の常識は世間の非常識となり、いつまでも自分たちの言い分が通用する聖域とでも思っているのでしょう。

私立高校・大学の場合、一部の名門校や特殊な教育をおこなっているところを除き、これからは少子化と不景気に合わせ、学校の合併、企業からの出資・提携の他、不要な土地を売却・賃貸をしたり、別の新たな事業を起こし、事務員た教職員は臨時パート雇いにし、教育機材はメーカーとタイアップして安く借り上げ、授業料の格安化を実現したところだけしか生き残れなくなるでしょう。私のイメージでは授業料とその他費用の年間合計は私立高校で30万円以下、大学で50万円以下が適当と見積もっています。

奨学金を得ながら進学するというのは、私の世代ではあまり実感としてありませんでした。それは親が負担できないなら進学しないという選択肢が普通にあったのと、授業料が国公立大学とさほど変わらない安価な私立大学がいくつもあったためです。

30数年前に私が入学した私立大学は年間授業料が年間14万円で現在のおよそ1/6、当時大学卒初任給が12万円ぐらいでしたから物価は現在の半分だったとしてもその安さは際だってます。もちろんその頃でも、おぼちゃま大学と言われているような著名な私大だと平気で50万円以上の学費のところもありました。しかし最近はどこの大学の学費もほぼ似たり寄ったりで大きな差はありません。

そのせいで周囲を見ると「数百万円の授業料は全額自分で出した」「親がリストラに遭って途中で仕送りが途絶え余儀なく退学した」などの話しは結構あり、私も数年前親戚の子供が大学に入学する際、奨学金を借りたいのでその保証人になってほしいと頼まれ、断れずサインしました。来年は卒業予定なので、ちゃんと就職してくれることを願うばかりです

例えば大学文系入学金+4年間の授業料・教育充実費合計約420万円(例として2011年度法政大学文系学部)をローン(固定利子3%)で借りた場合、卒業後から20年間毎月約2万5千円ずつ返済することになります。

授業料以外に生活費として月8万円の奨学金を得ていれば、4年間で384万円、授業料など含め合計804万円の借金となり、返済は月々4万8千円近くになります。新入社員で年収が手取り300万円があったとしても、そのうちの約20%(58万円)がローン返済で消えることになるのです。これは特に入社後数年間の低収入の間はとてもつらいと思います。

そして奨学金が完済するのは卒業して20年後、もう結婚して子供ができて、その子供が中学校に入っていても不思議ではない42歳です。しかし「愛はお金を超越する」とドラマのような展開ならともかく、数百万円の借金というハンデを抱えたまま、相手や相手の両親を説得して結婚できるという保証はありません。

果たしてそれだけの教育投資をして投資効果があるのかという疑問に対しては、実力主義、成果主義の導入にともない、近年急速に差は縮まっていますが、高卒と大卒の平均では生涯賃金の差が現在でもおよそ3〜4000万円あると言われています。それを見る限り少々無理をしても大学へ進学したいと思うのは無理ならぬことです。

もし親が年金生活や失業中などで、一切の援助が得られなければ、食費や生活費の一部はアルバイトをして稼ぐとしても、学校へ納める400万円+教材+通学費は借りるしかありません。テレビの特集でも月8万円の生活費を得るため、夜と休日の二つのバイトを掛け持ちし、睡眠時間は3時間、通学にバスを使うのがもったいないと、最寄り駅から片道30分を歩いて通学している女子学生がテレビに出ていました。一人っ子でぬくぬくと親に頼り切って学生生活をエンジョイしている人がいる一方で、衝撃的でもあります。

次に卒業後に安定した職場へ就職できればいいのですが、大学生でも正社員としての就職内定率は決して高くありません。テレビでは卒業時に就職が決まらず、とりあえず工場のパートで働き、まずはお金を貯めてから就職活動をすると語っている若者が出ていました。

しかし厳しいことを言うようですが、卒業して1年以上コンビニ弁当を作る工場のパートをしている既卒者(≒中途採用)を積極的に採りたいと思うまともな会社があるとは思えません。そういう社会の常識や仕組みをちゃんとアドバイスする親や知人が周りにいないのがこの人の不幸です。

またせっかく就職できてもおよそ3割が3年以内に辞めてしまうという現実があります。もちろん若者にも辞める理由があり、その後すぐに第2新卒としてうまく着地できる人もいるでしょうけど、辞めた後、とりあえずと始めたフリーター生活が妙に心地よく、すぐに就職しないまま安住していると、すぐに30歳を過ぎてしまい、もうそうなるとまともな企業へ正社員として入社することができなくなってしまいます。

決して現実の社会では、何年も続けたいい加減なフリーター生活から立ち直り、正社員になって両親のために家まで買っちゃう小説「フリーター、家を買う 」の主人公のようにはいかないのです。


 【関連リンク】
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 664 本当に中高年者は豊かで若者だけが貧しいのか?
 660 40〜50歳代プチ高所得者がハマる罠
 655 10月後半の読書(含むフリーター、家を買う。) 
 635 英語の憂鬱
 563 国立大学、私立大学の国庫負担比較
 560 若者の大企業志向を非難する前に
 427 学校ビジネスの暗く長い闇
 349 しらけ世代と団塊世代ジュニア
 272 子供の教育費というものは


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