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鯨統一郎 KUJIRA TOUICHIRO 既読書籍

009 浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話
008 邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿 007 幕末時そば伝
006 新・日本の七不思議 005 努力しないで作家になる方法
004 新・世界の七不思議 003 ニライカナイの語り部 作家六波羅一輝の推理
002 九つの殺人メルヘン 001 邪馬台国はどこですか?


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年齢や出身地など不明の覆面作家。國學院大學文学部国文学科卒。デビュー作である「邪馬台国はどこですか?」は、1996年の第3回創元推理短編賞の最終選考に残ったものの受賞せず、1998年に文庫での書き下ろしという変則的な形のデビュー作となった。代表作に「早乙女静香シリーズ」「桜川東子シリーズ」「タイムスリップシリーズ」「作家六波羅一輝の推理シリーズ」など。(Wikipediaより引用 2022年)

009 浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話(光文社文庫)

2007年に単行本、2010年に文庫化された、著者が得意とする昔話をテーマにした謎解きの短篇作品集で、9年前に読んだ桜川東子シリーズ「九つの殺人メルヘン」の続編です。

著者の小説としては2021年に「邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿」を読んで以来なので2年ぶりです。

今回の昔話は誰もがよく知っている日本の童話を元にして、探偵に依頼された事件の謎を解決していくというワンパターンの短篇集となっています。

バーに集まる還暦オヤジ3人衆が、昭和時代の話しをした流れで、不思議な事件について話しをすると、その謎解きをひとりで日本酒を飲んでいる美人大学院生の桜川東子が推理していきます。

その童話とは「浦島太郎の真相」「桃太郎の真相」「カチカチ山の真相」「さるかに合戦の真相」「一寸法師の真相」「舌切り雀の真相」「こぶとり爺さんの真相」「花咲爺の真相」の8篇です。

童話はいずれも子供の頃に絵本で読んだり、読み聞かせしてもらったりした懐かしい記憶が思い浮び、まだ純真な心だった時代に戻って気分がとても良くなってきます。それだけでもこの小説を読む意味があります。

★★☆

9月前半の読書と感想、書評 2023/9/16(土)

008 邪馬台国殺人紀行 歴女学者探偵の事件簿 (実業之日本社文庫)
2013年に書き下ろし文庫化された連作短編集で、邪馬台国はどこ?をモチーフとして、他のシリーズ作品も出てくる歴史学者の早乙女静香、女子大生の桜川東子、そして静香のライバルとして登場する歴史学者翁ひとみの美女三人組が旅をする内容です。

旅先は、邪馬台国九州説の吉野ケ里遺跡、畿内説の箸墓遺跡、そして青森の三内丸山遺跡で、それぞれ三人が行くとそこで殺人事件が起き、誰がどういう目的で事件を起こしたのか?それぞえの遺跡と邪馬台国の関係は?と推理をしていく漫画的なストーリーです。

そう言えば10年前の2011年に読んだ「邪馬台国はどこですか?」(1998年)は、九州説、畿内説をひっくり返し、岩手県の八幡平説が書かれていましたが、斬新で面白かったことを思い出しました。

その「邪馬台国はどこですか?」を読んでから、今回で著者の小説を読むのは9作目で、概ね1年に1冊のペースで読んでいることになります。

最近では2019年に「幕末時そば伝」を読んでいます。

どれも発想が斬新で、古代史ながら小難しいこともなく、頭の切り替えなど軽く読書をするのに最適な作品が多く、今後も時々手に取って読みたいと思います。多作な作家さんで、まだ読んでいない小説がざっと百冊ぐらいはありますので。

★★☆

4月前半の読書と感想、書評 2021/4/14(水)

007 幕末時そば伝 (実業之日本社文庫)
2007年に「異譚・千早振る」として出版され、その後2011年に「幕末時そば伝」と改題されて文庫版が出ました。

この著者の作品はいくつか読みましたが、古代史ミステリーの解釈などでは目からうろこで、専門家ウケは悪そうですけど、素人に対してはそれなりに説得力があって楽しく読めます。

守備範囲も相当に広く、日本史だけではなく世界史ミステリーもあり、そうしたネタ探しはどうやっているのか、次はなにが出てくるのかと興味津々です。
今回のは少し前に書かれた作品ですが、有名な古典落語をベースにして、「もし、こうだったら」「あの真実はこうだった」など、コミカル路線で時代の新解釈の内容となっています。

そのためには、元の落語を多少なり知ってないと、面白くないかも知れません。それだけに、興味をひいてこの作品を読むのは古典落語に馴染みのあるかなり年配に限る?という気もします。

出てくる落語は、いずれも有名な古典落語、「粗忽長屋」、「千早振る」、「湯屋番」、「長屋の花見」、「まんじゅう怖い」、「道具屋」、「目黒のさんま」、「時そば」です。

最近は古典落語をテレビで見ることもすっかり減ってしまい、週に1回ある「NHK日本の話芸」の中に時々古典落語が登場するぐらいです。

若い人には、うるさいだけのドタバタコント芸のほうがウケが良いらしく、若い落語家も古典よりも新作落語で動きの激しいコント的な落語をするようになり、静かにしっとりと聞かせる古典落語はもう高齢者にしか需要はなさそうなのが残念です。

★★☆

11月前半の読書と感想、書評 2019/11/16(土)

006 新・日本の七不思議 (創元推理文庫)
著者の実質のデビュー作でもある「邪馬台国はどこですか?」(1998年)の早乙女静香シリーズ第三作目で、2011年に文庫で刊行されました。

上記の「早乙女静香シリーズ」は、いずれも面白く、登場人物の話しに引き込まれるように読めました。ただいずれも短編集でライトな雑学の範囲を超えるには至りませんでしたが。

今回の謎解きをおこなうのは、下記の7つです。( )は私の一言あらすじです。

「原日本人の不思議」(日本人はどこからやって来た?日本語のルーツは?)
「邪馬台国の不思議」(皆既日食が起きたため、卑弥呼が亡くなった?)
「万葉集の不思議」(飛鳥時代の歌人、柿本人麻呂は実在しなかった?)
「空海の不思議」(空海は日本人ではなかった?)
「本能寺の変の不思議」(能の敦盛を好んだ織田信長は予定通り50年で幕を閉じた?)
「写楽の不思議」(写楽は誰か?わずか10ヶ月で消えた理由)
「真珠湾攻撃の不思議」(

残念ながら前2作からすれば、全体に新鮮味とパワー不足がゆがめませんが、「原日本人」や「空海」についての謎は、ミステリーとしても十分読み応えがあります。前にも書いたけど、そうしたテーマでもう少し深掘りした歴史ミステリー小説も読みたいものです。

また本作に含まれる「邪馬台国」や「本能寺の変」については前作の延長戦みたいなところがありますので、前作を読んでからこの短編を読むことをお勧めします。

★★☆

4月前半の読書と感想、書評 2016/4/13(水)

005 努力しないで作家になる方法 (光文社文庫)
著者は数多くのミステリー系シリーズ小説を出しておられますが、ミステリーでもなく、またシリーズでもない独立した単発の作品で、2011年に単行本、2014年に文庫化されています。

小説の主人公は大学を中退した後、様々な仕事を渡り歩きながら小説を書き、雑誌に投稿しながら作家デビューを夢見ていますが、一方では子供が生まれて、このまま作家デビューもできず、サラリーマンとしても中途半端という困窮した状況に追い詰められていきます。

著者の作家デビューに至るまでの奮闘を小説にしたって感じですが、そこはベテランの書き手さん、半分ぐらいが実話でもう半分は創作だろうと思っていましたが、なんとこの小説の内容の9割は実話だと「作家・柴田よしきのブログ」に著者へのインタビューに書かれていました。著者のファンならこれを読まずしてって感じですね。

なので、この本は決して「努力しないで作家になれる」ノウハウ本でもなければ、「努力したから報われる」という美談の話しではありません。ただ文章を書くことが好きで好きで、それを生活の一部にしたい、できればそれでメシを食いたいという執念めいた男の姿を描いたものです。

投書とか投稿、懸賞への応募というのは習慣化されやすく、結果が出たりするともう病みつきになったりします。新聞の読者投書、俳句や短歌の投稿、クイズ懸賞の応募など、身近なところでもよく起きる現象です。私も小学生の頃は新聞のクロスワードクイズのファンで、毎週応募していて、何度か図書券が当たり大喜びしていました。

さすがに雑誌へ小説を投稿するような能力も経験ありませんが、作家志望の多くの人は、それが習慣化している人達ということなのでしょう。

著者が投稿していた雑誌へは他に常連だった人として、貫井徳郎氏など、映画雑誌への投稿では佐々木譲氏の名前が挙がっていたのには、なるほどと思いました。

そうした他人が小説家へと次々デビューしていくのに、なかなか自分にはお鉢が回ってこないと焦り、一度は貯めてきたアイデアノートも破り捨てて作家をあきらめようともしますが、30歳を過ぎてから再び思い立ってチャレンジをするところは泣かせどころでしょう(泣きませんでしたが)。

著者は当初は大きな出版社の懸賞小説などへ投稿を続けていましたが、最終的にデビュー作となる「邪馬台国はどこですか?」の短編に目にとめてもらえたのが創元社という老舗ながら出版社としては小さく、メインは海外SF翻訳本が多いところ。

そう言えば百田尚樹もその後500万部を超える記録的な大ヒット作「永遠のゼロ」を大手出版社に持っていった時は、まったく取り合ってもらえず、それまで聞いたことがなかった小さな出版社の太田出版からデビューすることになったと言っていました。まだデビューもしていない作家への大手出版社の扱いってそういうものなのでしょうね。

著者自身は覆面作家で、年齢等も不明ですが、本小説の中の主人公の年齢が著者と同じであれば、私とほぼ同年齢ということになります。それだけに、行動力旺盛でやんちゃな団塊世代が散々荒らし回った後の、ややしらけた社会の中で、傲慢な彼らに頭を押さえられ、ぺんぺん草も生えない中をひたすら実直に歩んできたと共感がわきました。

でもその難しい時代に無事に作家デビューでき、しかも実力通りに売れっ子?になれて結果オーライ、よかったじゃないですかね。

★★☆

10月前半の読書と感想、書評 2015/10/14(水)

004 新・世界の七不思議 (創元推理文庫)
邪馬台国はどこですか?」や「作家六波羅一輝の推理シリーズ」など数多くの作品を出し続けている著者の2005年初出の作品です。著者の本名は源氏名で覆面作家さんです。

以前読んだ「邪馬台国はどこですか?」でちょっとした衝撃と感銘を受けて、その後著者の本を数冊読みましたが、どれもなかなかユニークな視点と発想で、他にはあまりみかけない意外性ある面白い作品が多いのが特徴です。

この作品は「早乙女静香シリーズ」の2作目で、すでに3作目の「新・日本の七不思議」も出ています。このシリーズは新宿にあるあまり流行っていない場末のバー「スリーバレー」の中で、歴史学者の早乙女静香や雑誌ライター宮田、バーのマスター松永などが、古代の謎を披露し、それを斬新な手法で解いていくという古代ミステリー小説なのですが、いずれも酒の席での軽目の話しとなっていて、あまり深掘りされることがないのが少し残念なところ。

「邪馬台国はどこですか?」についても従来の学者の説をすべて否定してしまう独自の論を展開しますが、やや納得するには材料が物足りない感じがあり、いつかまた続編が出てくるのでは?と勝手に期待しています。

しかしその名前や由来こそ知っていても、それにまつわる謎や背景を詳しく知らない一般の人にとっては、本文中で丁寧に解説をしてくれていますので、お酒のうんちく話しとともに、雑学的知識の勉強になります。

さて、一般的に世界の七不思議(古代)といえば、紀元前二世紀にビザンチウムのフィロンが記したという「7つの驚異的な建造物」が元になった

 1.ギザの大ピラミッド
 2.バビロンの空中庭園
 3.エフェソスのアルテミス神殿
 4.オリンピアのゼウス像
 5.ハリカルナッソスのマウソロス霊廟
 6.ロドス島の巨像
 7.アレクサンドリアの大灯台(フィロンが書いた時は「バビロンの城壁」)

が定番となったようです。

その他にも「中世の七不思議」や「コットレルによる世界七不思議」、「自然の七不思議」、「自然現象七不思議」など様々な人や団体、言い伝えなどがあります。

最近になってからは、スイスに本部を置く「新世界七不思議財団」が定めた「新・世界七不思議」ができ、

 1.チチェン・イッツァのピラミッド(メキシコ)
 2.イエス・キリスト像(ブラジル)
 3.万里の長城(中国)
 4.マチュ・ピチュ(ペルー)
 5.ペトラ(ヨルダン)
 6.コロッセオ(イタリア)
 7.タージ・マハル(インド)

が選ばれているそうです(wikipedia)が、この本で取り上げられる新・世界の七不思議は、
 
 1.アトランティス大陸
 2.ソールズベリのストーンヘンジ(英国)
 3.ギザのピラミッド(エジプト)
 4.ノアの方舟
 5.始皇帝(中国)
 6.ナスカの地上絵(ペルー)
 7.イースター島のモアイ(チリ)

が選ばれています。

これらの謎解きにずっとつき合わされた古代史の世界的権威、ペンシルベニア大学のハートマン教授は、念願だった早乙女静香との京都旅行が、延期に次ぐ延期となりますが、果たして来日中の間に京都へ行くことができたのか?は謎のままです。

ストーンヘンジと神社の鳥居、ピラミッドと盛り塩、ノアの箱船と桃太郎の童話、モアイ像と大仏など、意外な組み合わせ満載で、今回の謎解きもなかなか新鮮且つユニークで面白く読めました。まだ買っていないけど「新・日本の七不思議」も楽しみです。

10月後半の読書と感想、書評 2013/11/2(土)

003 ニライカナイの語り部 作家六波羅一輝の推理 (中公文庫)
2008年に発表、2010年に文庫化された「作家六波羅一輝シリーズ」の二作目です。同シリーズ第1作目の「白骨の語り部 作家六波羅一輝の推理 」と第3作目「京都・陰陽師の殺人 作家六波羅一輝の推理 」はテレ朝系土曜ワイド劇場でそれぞれ2010年と2012年にドラマ化がされていますのでそちらを先に見て知った方も多いのではないでしょうか。

物語の主人公はデビュー作こそヒットしたものの、次作がなかなか書けずに出版界からも忘れ去られそうになっているミステリー作家で(決して著者そのものを反映しているというわけではないでしょう)、このシリーズは筆者お得意の歴史もの+西村京太郎氏や内田康夫氏らが得意とする紀行ものを合わせた推理小説と言っていいでしょう。

「ニライカナイ」という言葉、普通の関東在住関西人にとっては初めて聞く言葉で、Wikipediaによると「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。」「遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。」とのことで、よくわかりませんが、なんとなくロマンがありそうです。

その伝承が残る地域にリゾート施設を作ろうとする人と、建設に反対をする住人の対立があります。主人公達がその地に取材に訪れたあと、関係者が何者かに殺害されるという事件が起き、「ニライカナイ」の伝承とリゾート施設建設に絡む利権を暴き出し、主人公の作家と相棒の新人編集者が謎を解いていくこととなります。

物語の中には、ジュースの中の氷を紙ナプキンで釣り上げる方法やスパムメールの語源など、ストーリーとは関係がないうんちく話しが盛り込まれていて、そういうところもこの作者の作品ならではの楽しみ方です。特にデビュー作「邪馬台国はどこですか?」は一番のお勧めです。

3月前半の読書 2013/3/17(日)

002 九つの殺人メルヘン (光文社文庫)
鯨統一郎氏の小説は、早乙女静香シリーズの「邪馬台国はどこですか?」(1998年)に続き2冊目です。この「九つの殺人メルヘン」は2004年刊で、バーの中で謎を解くスタイルは「邪馬台国はどこですか?」と似ていますが、シリーズとしてはこちらは「桜川東子シリーズ」ということで別のものとなります。

タイトル通り九つのグリム童話に関連した不思議な殺人事件をテキパキと解決していくメルフェンを専攻する女子大生桜川東子と、バーのマスター、刑事、犯罪心理学者の三人の厄年トリオのうんちく話しが中心です。

童話の話し以外にも厄年トリオが、日本酒の話しや少年時代の思い出話し等、数々の雑学を披露してくれますので、飽きることがありません。しかし、デビュー作「邪馬台国はどこですか?」でも感心しましたが、鯨統一郎氏の守備範囲の広さには驚かされます。

すでによく知られていることですが、グリム童話の本当のストーリーは、絵本やディズニー映画で描かれているのとは大きく違い、かなり残酷かつ、非道な内容であると解釈されていますが、その解釈をうまく利用しながら、身近で起きた殺人事件の謎解きをおこなっていきます。

登場する童話と新解釈は、
  ヘンデルとグレーテル→口減らしのための子捨て
  赤ずきん→不良娘の夜遊びと視覚失認症
  ブレーメンの音楽隊→死ぬ前の一瞬の夢
  シンデレラ→ガラスの靴は性の相性
  白雪姫→父親との近親相姦
  長靴をはいた猫→悪漢ネコのピカレスクロマン
  いばら姫(眠れる森の美女)→エクスタシーと性交渉禁止
  狼と七匹の子ヤギ→母親の愛人による子への虐待
  小人の靴屋→怠け者の願望

童話の新解釈本は今ではいろいろとありますが、本書の参考書籍にもなっている「メルヘンの深層―歴史が解く童話の謎」森義信著あたりを読んでみたくなりました。

2月前半の読書 2012/2/18(土)

001 邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)
著者は変わった名前(ペンネーム)だな思ったらしっかり覆面作家とのことです(wikiより)。先般読んだ2002年デビューの坂木司氏もそうでしたが、2000年前後は覆面にすることでなにかメリットがあったのでしょうかね?実名でアピールし、サイン会、講演会、テレビコメンテーターなど幅広く商機を拡げていくほうが、売り出し中の作家としては望ましいのではと思うのですが。

ま、芸者作家、茶坊主作家、太鼓持ち作家にはなりたかねぇとお高くとまるのもひとつの見識ではありますが。

今回の本のタイトルにも使われている「邪馬台国」を扱った小説は数々ありますが、私は高木彬光氏の「邪馬台国の秘密」ぐらいしか読んでなく、テーマ的にはあまり関心はなかったのですが、今から40年近く前に書かれた「邪馬台国の秘密」以降にも新しい発見や新説が登場していますので、最近ではどのような説が一般的になっているのか、知っておくのもいいかなという軽い気持ちで読み始めました。

ちなみに近所の大型書店では「ここまでわかった!邪馬台国」が平積みされていて、これも近いうちに読んでみたいなと思っていますが、これは全国にある邪馬台国の候補地の紹介みたいな感じで、小説としての謎解きの面白さは当然ありません。

そんな、なにも先入観なく読み始めましたが、この文庫はタイトル名にもなった「邪馬台国の謎解き」だけでなく、下記のように、現在の常識や謎を、新宿にあるバーの常連さんのひとりが解き明かし覆していくという短編でした。

その概略は、

 ・聖徳太子は実在しなかった
 ・お釈迦様は悟りをひらかなかった
 ・邪馬台国は東北にあった
 ・明智光秀は謀反人ではなかった
 ・倒幕の黒幕は幕府側の勝海舟?

などです。

ちょっと考察に甘いところがあるんじゃないのか?都合のいい部分だけ抜き出して解釈してないか?と思うところもありますが、しかし現在の通説や常識を、軽いノリで次々と覆していくスリリングで無駄のないテンポの良さは読んでいてもスッキリします。

これらの元ネタは文庫の後書きにありますが、著者自身の発想ではなく、ある別人の解釈を元にして、著者が小説化したものです。そういうことをちゃんと明示しているところは、論文や小説などで盗作疑惑や著作権問題がこじれることが多い中で誠実さを感じます。

本書の中に出てくる解釈では、「日本書紀はいくつか流れのある天皇家の中でも勝ち組の一派が書かせたものなので、負け組のことについての記述は曖昧で信用がおけない(聖徳太子の実在しない)」とか、また地図上の方角について、目の前に方角の誰でもわかる太陽がありながら「当時の公文書に北と南を間違えて記載をする(邪馬台国は東北にあった)」というのは、にわかには信じがたいように思います。

本来なら短編のそれぞれの項目が、大きなテーマでもあり、そのテーマだけで上・中・下巻の長編小説になりそうですが、それを短編としてサクッとまとめてしまうところがなんともこころ憎いなと思います。

せっかくですから、当然予想されるそれぞれの反論や通説の根拠となっている様々な証拠に対して、また今回、通説を覆した推察に対する反論も加え、もっと深く掘り下げた小説にしてみてはどうでしょう。

高木彬光氏の「成吉思汗の秘密」では「義経は成吉思汗ではない」という論拠からスタートさせ、最終的にはその論拠をことごとくつぶしていくというストーリーでしたが、歴史物はそうやって見ていくと説得力が増すように思います。

ちょうど、いまは歴史に興味を持つ若い女性(歴女)と、仕事を辞め暇を持てあまして歴史書を読みふけり遺跡の見学に大挙押しかけている団塊世代がいますので、この歴史ブームをうまくつかむことができれば、このようなテーマは大ヒットすると思います。

ま、いずれにしても、この推理小説は軽くできていますので、満員の通勤電車の中で集中して読むのには、最適な小説でした。

8月前半の読書 2011/8/20



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