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著者別読書感想INDEX

海堂尊 KAIDO TAKERU 既読書籍

010 アリアドネの弾丸(上)(下) 009 ひかりの剣
008 ブラックペアン1988 007 ジーン・ワルツ
006 イノセント・ゲリラの祝祭(上)(下) 005 夢見る黄金地球儀
004 ジェネラルルージュの凱旋 上・下 003 螺鈿迷宮 上・下
002 ナイチンゲールの沈黙 上・下 001 チーム・バチスタの栄光 上・下

読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


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1961年千葉県生まれ。千葉大学医学部医学科卒業。現在は国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所・放射線医学総合研究所病院勤務。2005年に『チーム・バチスタの崩壊』で、第4回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。2006年『チーム・バチスタの栄光』と改題して出版。代表作に『チーム・バチスタの崩壊』、『ジェネラル・ルージュの凱旋』『ブラックペアン1988』など。(Wikipediaより引用 2022年)
010 アリアドネの弾丸 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

チーム・バチスタの栄光」から始まる東城大学医学部付属病院シリーズ(不定愁訴外来 田口公平シリーズ)の第5弾作品で2010年(文庫は2012年)の発刊です。

現役医師が医療を扱った作品を書くというのは過去にも例が多く、それは医師になる人というのは、多彩な才能をもった人が多いということなのでしょうか、森鴎外や手塚治虫をはじめとして渡辺淳一氏、帚木蓬生氏など、最近では「神様のカルテ」で夏川草介氏も大ヒットを飛ばしています。

医療の世界というのはまだまだ学閥や師弟関係が重要視される閉鎖的で保守的な世界ですが、海堂氏は小説の中で厚労省との関係、製薬や医療機器会社との癒着、医療事故の責任問題など多くの話題を提供してきました。

しかし現実の社会において、つい行き過ぎたところもあり、Ai(エーアイ:死亡時画像診断)の理解促進に力を注ぐあまりに東大教授から訴えられ名誉毀損で敗訴しています。古い慣習にとらわれない医療界の中では異端児とも言える医師ですが、そう言う人達が、硬直化しているように見える医療の現場を少しずつ変えていくのかも知れません。

物語は、主人公田口公平医師が病院長に呼び出され「エーアイセンター長」に任命されたところから始まります。このエーアイセンター、その運用主導権を巡って診療側と警察など司法側が激しく主導権を巡り争っていて、その混乱必至の中へほりこまれるという構図です。

なぜ司法が死亡時画像診断において主導権を得たいのかというと、原因が明らかでない死亡者所見は、9割は司法の検死官の状況判断、1割だけ司法解剖をおこない、警察と法医学側がすべての権限を握っていました。

しかし最近流行し始めたDNA鑑定など新技術により、誤認逮捕だったことが明らかになる例が出てきたり、死亡原因が後に問題になってきたりして警察の自信と信頼が揺らいできています。

もし原因が不明の死亡者全員分のエーアイを実施しておけば、後々問題になったときの証拠として利用できると同時に、不可解な死因や警察が捜査上隠しておきたい場合でも、隠蔽されることなく診療側が行えば公正にオープンにできるということです。

そこで診療側主導で導入されてしまうと、今後司法捜査がやりにくくなるのではという危惧があり、その運用を司法側で押さえておき、あわよくばつぶしてしまおうという目論見があるからです(もちろん小説です)。

一方では診療界としては、本当の死因を究明しデータを蓄積することで医療の発展につながります。また遺族のことを考えると、原因が特定されていなくとも現状ではわずか1割しか解剖されず、証拠も残さないまま葬られてしまうケースをなくし、絶対的な権力を握る司法の暴走を食い止めることができると考えています。

このシリーズのオールスターキャストとまではいかないものの、田口公平と同級生の島津吾郎、火喰い鳥厚労省の白鳥圭輔、医師資格と弁護士資格も持つ才媛姫宮、元碧翠院桜宮病院医師だった桜宮小百合など過去のシリーズや、シリーズ外からもチラッと登場する場面もあって楽しめます。

3月前半の読書 2013/3/17(日)

009 ひかりの剣 (文春文庫)
東城大学病院田口シリーズに登場する「ジェネラル・ルージュの凱旋」の天才外科医速水晃一(映画では堺雅人が好演しましたね)と、シリーズ外で代理母問題に一石を投じた小説「ジーン・ワルツ」に出てくる清川吾郎の二人を主役にした2008年に発刊された小説(文庫は2010年)です。この本を読む前には先に両者が描かれていた2つの本を読んでおくとイメージが湧きやすいのでお勧めします。

時はまだ速水も清川も大学の医学生だった1988年(「ジェネラル・ルージュの凱旋」の20年前)、勉強よりも部活に力を入れていた頃の話しです。

医学生だけの剣道大会「医鷲旗大会」というのがあり、東城大速水と帝華大清川との主将同士の闘いがメーンとなりますが、シリーズでお馴染みの速水と同期生の田口公平や島津吾郎も同じ学生としてチラッと登場してくるところが笑わせます。

「ジェネラル・ルージュの凱旋」では速水が勤務する東城大学医学部付属病院病院長として登場する、つかみ所がない高階権太もこの小説では帝華大から東城大学医学部へちょうど赴任し、剣道部の顧問に就任するという設定で、重要な役どころとなっています。

ストーリーとしては先に書かれた小説での主人公の原点がよく描かれていて、もしかすると最初からこのような設定があってから書いたのでは?と思わせるほど論理矛盾もなくよくできたものでした。

最後の決着の仕方には私的にはちょっと?でしたが、まぁ無難な収め方だったのでしょう。「ジェネラル・ルージュの凱旋」の速見ファンならぜひ読むべき小説かも知れませんね。

12月前半の読書 2012/12/19(水)

008 ブラックペアン1988 (講談社文庫)
昭和から平成と変わる直前の1988年(昭和63年)の東城大学医学部付属病院を舞台とする小説で、初出は2007年9月です。つまり同氏の「チーム・バチスタの栄光(2006年)」「ジェネラル・ルージュの凱旋(2007年4月)」よりも後に書かれていますが、物語の舞台はそれらの事件が起きる約20年前の設定です。

ブラックペアンのペアンとはなにか?といえば、本の表紙を飾る手術のときに、器官や組織などを挟み、牽引したり圧迫したり、止血したりするのに用いるハサミに似た形状のもので、これが今回の小説ではキーとなります。普通はステンレスで作られるペアンが、なぜ黒いのか?最後にその謎が判明します。

内容は、新しく研修でやってきた外科医師の卵達の視点で、大学病院の中で起きる様々な人間模様や確執に翻弄されていくところが描かれていきます。そして講師として中央の権威ある大学から派遣されてきた有能な外科医師が新しく開発した器具を使った手術を広めていきますがそこで事故が起きます。

ちなみにこの派遣されてきた講師が、20年後の「チーム・バチスタの栄光」などでは病院長に、医学部に在籍中で実地研修にやって来たメンバーが「チーム・バチスタの栄光」や「ジェネラル・ルージュの凱旋」では主人公になっていたりします。

小説としても、また医学界が抱える様々な問題や製薬会社の利権などについても、わかりやすく書かれていますので、雑学を仕入れるのにも有効です。しかし大学病院の職場というエリートばかりが集う世界というのも大変ですね。霞ヶ関の官庁の中も似たようなものかも知れません。

最初はなんの小説かもまったく予備知識なしで読みましたが、ストーリーもよく練られ、たいへん面白い小説に仕上がっています。こちらもぜひ映画化をしてもらいたいものです。

1月上旬の読書 2012/1/18(水)

007 ジーン・ワルツ(新潮文庫)
チーム・バチスタの栄光」や「ジェネラル・ルージュの凱旋 」など医療・医学小説を得意とする現役医師の海堂尊氏の小説です。この小説では「代理母出産」がテーマになっていて、主人公は大学医学部産婦人科学教室助教です。

日本では倫理的観点から認められていない代理母ですが、すでに人工授精は普通におこなわれている現状からすると、その延長線上にある代理母は技術的には問題がないところまで来ています。なかなか重いテーマですが、知識のない人でもわかりやすく書かれていて、エンタテーメントとして読むことができます。

海堂尊は歯に衣着せぬ物言いで、医学界のみならず厚労省に対しても批判を続けている方ですが、その中で今年には東大教授に名誉棄損で敗訴しています。しかしいまもまだ意気軒昂で、今後も引き続き楽しみな方です。

本職が医者でありながら小説を書いていたというのは、森鴎外や齋藤茂吉、北杜夫、渡辺淳一、帚木蓬生(敬称略)など過去にも多くいらっしゃいますが、医学という自然科学と、創造力と表現力の文学の両方をものにできるとはまったくすごい才能です。

12月前半の読書 2011/12/17(土)

006 イノセント・ゲリラの祝祭(上)(下)(宝島社文庫)
イノセント・ゲリラの祝祭 」は、海堂尊著の「チーム・バチスタの栄光(上) 」「ナイチンゲールの沈黙 」「ジェネラル・ルージュの凱旋 」に続くシリーズ第四弾です。

前三作同様大学病院の不定愁訴外来担当の田口医師が活躍する医療小説ですが、今回の舞台は病院ではなく霞ヶ関の厚生労働省です。

お役所の話しと聞くとお堅い内容かというとそんなことはまったくなく、前三作にも劣らずエンタテーメントとして十分に楽しめる仕上がりになっています。

海堂尊氏と言えば小説の中でも何度も出てきますが「Ai(死亡時画像診断)導入」についての自身のブログの内容で東大大学院教授から名誉毀損で訴えられおり、先日東京地裁で敗訴しました。まぁ学者同士で足の引っ張り合いをすることはよくあることなのでしょうが、小説家としても十分な実績を残せている著者としてはもう怖いものなしって感じです。

その後どうするのかは知りませんが、つまらないことでムキにならずもういい加減にしておいたほうがいいのではと思います。

「チーム・バチスタ」の海堂氏に110万円賠償命令 ブログで名誉毀損

それとも小説や今後映画化されるはずのPR効果を狙ってのことだとしたら、損害賠償額110万円(+弁護士、裁判費用)は安いモノだったかもしれません。

この「イノセント・ゲリラの祝祭」ではそのAi導入に関しての役所や学者の抵抗や嫌がらせを著者流にデフォルメして表現されたものです。その強い想いがちょっと鼻につく感じではあります。

2月後半の読書 2010/3/3(水)

005 夢見る黄金地球儀 (創元推理文庫)
2009/12/01読了

「夢見る黄金地球儀」は「チーム・バチスタの栄光」以来医学モノ小説で売れっ子になった作者が、その勢いで別の方向へ踏み出した小説ですが、残念ながら駄作です。できればもう本業に専任して欲しいところだけど、飛ぶ鳥の勢いの著者に誰も注意できないのでしょう。

12月前半の読書 その1 その2

「BOOK」データベースより
1988年、桜宮市に舞い込んだ「ふるさと創生一億円」は、迷走の末『黄金地球儀』となった。四半世紀の後、投げやりに水族館に転がされたその地球儀を強奪せんとする不届き者が現れわる。物理学者の夢をあきらめ家業の町工場を手伝う俺と、8年ぶりに現われた悪友・ガラスのジョー。二転三転する計画の行方は?新世紀ベストセラー作家による、爽快なジェットコースター・ノベル。

004 ジェネラル・ルージュの凱旋 上巻・下巻 (宝島社文庫)
2009/01/27読了

「BOOK」データベースより
大人気“田口・白鳥シリーズ”みたび登場!伝説の歌姫が東城大学医学部付属病院に緊急入院した頃、不定愁訴外来担当の田口公平の元には匿名の告発文書が届いていた。“将軍(ジェネラル)”の異名をとる、救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着しているという。高階病院長から依頼を受けた田口は調査に乗り出す。

高階病院長の特命で、速水部長の収賄疑惑を調べ始めた田口だったが、倫理問題審査委員会による介入や、新人看護師と厚生労働省のロジカル・モンスターの登場でさらに複雑な事態に巻き込まれていく。悲願のドクター・ヘリ導入を目前に、速水は病院を追われてしまうのか。切り捨てられゆく不良債権部門・救急医療を守る男の闘いと、医療の理想と現実をダイナミックに描き出した傑作エンターテインメント。

003 螺鈿迷宮 (上)(下) (角川文庫)
2008/12/11読了

「BOOK」データベースより
医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから1年半。東城大学の劣等医学生・天馬大吉はある日、幼なじみの記者・別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。「碧翠院桜宮病院に潜入してほしい」。この病院は、終末医療の先端施設として注目を集めていた。だが、経営者一族には黒い噂が絶えなかったのだ。やがて、看護ボランティアとして潜入した天馬の前で、患者が次々と不自然な死を遂げた!彼らは本当に病死か、それとも…。

医学生・天馬大吉が潜入した不審死の続く桜宮病院に、奇妙な皮膚科の医者がやって来た。その名も白鳥。彼こそ、“氷姫”こと姫宮と共に病院の闇を暴くべく厚生労働省から送り込まれた“刺客”だった。だが、院長の桜宮巌雄とその双子の娘姉妹は、白鳥さえ予測のつかない罠を仕掛けていた…。終末医療の先端施設に隠された光と影。果たして、天馬と白鳥がそこで見たものとは?現役医師が描く、傑作医療ミステリー。

002 ナイチンゲールの沈黙 (上)(下)(宝島社文庫)
2008/10/03読了

「BOOK」データベースより
第4回「このミス大賞」受賞作で300万部を突破した大ベストセラー『チーム・バチスタの栄光』の続編が登場します。大人気、田口・白鳥コンビの活躍再び! 今度の舞台は小児科病棟。病棟一の歌唱力を持つ看護師・浜田小夜の担当患児は、眼の癌――網膜芽腫の子供たち。眼球摘出をせざるをえない彼らに心を痛めた小夜は、患児のメンタルケアを不定愁訴外来担当の田口公平に依頼し、小児愚痴外来が始まった。

手術前で精神的に不安定な子供たちのメンタルサポートを、不定愁訴外来担当の田口公平が行なうことになった。時同じくして、小児科病棟の問題児・瑞人の父親が殺され、警察庁から出向中の加納達也警視正が病院内で捜査を開始する。緊急入院してきた伝説の歌姫・水落冴子と、厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔も加わり、物語は事件解決に向け動き出す。読者を魅了する、海堂尊のメディカル・エンターテインメント。

001 チーム・バチスタの栄光(上) (下) (宝島社文庫)
2008/03/11読了

「BOOK」データベースより
東城大学医学部付属病院の“チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。

東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行なっていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開をみせる。とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め…。医療小説の新たな可能性を切り拓いた傑作。



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