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リストラ日記アーカイブ 2012年5月

読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。
日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです

602 ついに変形性股関節症の診断下る 2012/5/2(水) 
603 4月後半の読書 2012/5/5(土) 
604 ニート対策ひとつの考え方 2012/5/9(水) 
605 5月のDVD  2012/5/12(土) 
606 正社員の解雇には2千万円かかる!それホント? 2012/5/16(水) 
607 5月前半の読書 2012/5/19(土) 
608 あちらを立てるとこちらが立たず 2012/5/23(水) 
609 メジャーベースボールとビーンボール 2012/5/26(土) 
610 労働者派遣法改正 2012/5/30(水) 



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ついに変形性股関節症の診断下る 2012/5/2(水)

602
2001年頃から徐々に痛みはじめ、ここ数ヶ月は右足と股関節の痛みがあまりにも酷いので、変形性股関節症(および股関節唇損傷)だという自覚はあるものの、一応X線かMRIでキチンと症状を把握しておくために4月に整形外科病院へ行きました。

なぜいままで病院へ行かなかったかと言うと、

(1)2004年に整形外科へ行きX線を撮りながら「どこも異常はないので筋肉痛でしょう」と診断され、整形外科医が信用できなくなった
(2)自覚症状と書籍やネットの情報にて自分の症状が概ね理解できている
(3)「変形性股関節症」という事実がわかっても治療するには手術しか方法はなく、そのために1ヶ月も仕事を休めないから対応できない

からです。

このうち(3)ですが、この変形性股関節症の初期または進行期だと

A)保存療法
B)骨切り手術
C)人工股関節置き換え手術

の治療法がありますが、A)保存療法はこれ以上悪くならないよう進行を抑えるためのもので、治療や快復するためのものではありません。そしてB)C)の手術は初期症状でも1ヶ月近くの入院とリハビリ期間が必要となります。現状痛くて我慢ができなかったり、ほとんど歩けなくなれば仕方ないですが、普通のサラリーマンではその選択は現実的に難しいでしょう。

つまり私の場合、治療するため手術を受けるなら仕事を長期間休職する覚悟が必要となりますが、現状では痛みを我慢すれば歩けないことはないので、手術を受けるという選択肢はありません。

そんなわけで、あえて診察を受けて「変形性股関節症」と判明したところで、その治療が容易にできないのなら、意味がないと考えていました。

自覚症状は2003年頃から日記に何度か書いていますが、そのうち割と最近の日記です。

424 股関節唇損傷? 2010/8/28(土)

433 股関節唇損傷についての続編 2010/10/1(金)

589 股関節痛の時に読む本 2012/3/20(火)

592 社会的弱者の立場になると 2012/3/29(木)

597 足(股関節)を痛めてできなくなったこと 2012/4/14(土)

一般的に変形性股関節症は一次性(加齢によるものや、長い間重量物を持ち上げて足への負担が大きな職業など)と二次性(遺伝性のものや臼蓋形成不全、発育性股関節形成不全等)があり、日本人の場合は9割が二次性変形性股関節症に該当するそうで、しかも患者の多くは女性とのことです。

私の場合は比較的男性では珍しい二次性なのか、欧米の男性に多いと言われている一次性なのか、原因はハッキリしません。思えば一次性を疑う理由がふたつ、二次性を疑う理由がひとつあります。もし遺伝性のものだとすると、自分の子供達にも発症する可能性が残るので、そうでないことを願うばかりです。

整形外科を選ぶ際、股関節外科など股関節の専門科のあるところや、スポーツ整形外科があるところが望ましいと思って調べてみたのですが、残念ながら家の近くにはなく、遠隔地にある病院だと、それでなくても歩くのがつらいので何度も通院するのは困難です。今回は実質的に最初の検査と言う割り切りで、近所のMRI診断装置がある整形外科(個人病院)へ行くことにしました。

初診なのでまず受付で問診票に症状等を記入します。問診票の空いたところに「自覚症状は変形股関節症だと思う」と書いておき、8年前にリウマチかなと思って受けた血液の精密検査や、直近3年間の人間ドック(35歳以上健康診断)検査データなども参考までに添付しておきました。しかしこういうところでは例え自覚症状を訴える本人からのものであっても、素人の言うことはまったく信用してもらえません。

長く待った後、忙しそうな医師の診断の前にベテラン風の看護師?の問診を受けます。その(女性)看護師さんも変形性股関節症を患っているとのことでしたが、私が説明する症状を聞いて「それは変形性股関節症ではなく腰の病気でしょう」と勝手に決めつけてくれます。私の説明が悪いのかも知れませんが、正直に過去からの症状を説明をしたつもりです。

その後整形外科医の診察(同じことを繰り返しての問診と触診、足の可動範囲の確認など)を受けましたが、やはり「股関節ではなく腰が悪いんじゃないかな?」とのこと。正直言って腰はすごく丈夫でいままで一度も腰が痛いとか違和感を感じたことはなく、それを伝えた上で「いろいろと文献や経験者の情報を調べると私の症状はたぶん変形性股関節症です」と私も譲りません。

「それでは股関節と腰椎のレントゲンを撮ってみましょう」ということになり、私もそれが第一の目的で来たわけで、さらに言えばX線だけではなくMRIも撮って細かく検査して欲しかったのですが、長く待たされて閉院時間が迫ってきたこともあり、それは言い出せませんでした。

あとで医師から言い訳気味に言われましたが、「右足全体がしびれる感じがする」と言ったことにより「腰が悪い」と決めつけられたようです。でも実際に股関節付近だけでなく右足全体がしびれて時にはしばらく感覚がなくなってしまうようなこともあり、それを伝えたつもりだったのですが。

X線撮影をおこない再度診察室へ。股関節の写真を見ながら「明らかに変形性股関節症ですね」と医者。私も書籍やネットで変形性股関節症のX線写真をいくつも見てきましたが、まったく想像通りの酷い状態でした。同時撮影した腰椎のほうは加齢による多少の変形と思われるもの以外特に悪くはありませんでした。「私の最初の見立てが違っていましたね」と医師も認めてくれました。

写真上 正常な股関節のX線写真


写真下 私の股関節(写真左側が悪い側の右股関節)


ほぼ正常に近い左側の股関節(写真右)と比べると関節(軟骨部分)が真っ白になっていて、臼蓋(大腿骨の受け皿になる屋根の部分)と大腿骨頭(頭頂部の丸くなっているとこと)の隙間がほとんどありません。またCE角(Center-Edge Angle:大腿骨頭を臼蓋がどれぐらい覆っているかがわかる角度)が正常の場合は25°以上あるべきところ、13°しかありませんでした(左側のCE角は35°で正常)。

上記の写真はX線写真のモニター画像を医師に断ってデジカメで撮影したものなので、あまり鮮明ではありません。実際にはハッキリと左右の股関節の違いがわかります。さらに股関節唇も正常な左側(写真右)と比べると、異常な右側(写真左)はほとんどつぶれたようになっています。

なお右と左の股関節の中間部分をザックリとカットしている(本来は1枚の写真)のは諸般の事情からです(笑)。いや、しかしレントゲン写真は精巧なのでハッキリクッキリと恥ずかしい部分も写るものです。

このX線写真から医者は「54才だと人工関節への置き換え術はまだ早いので(人工股関節の寿命は約20年間で60才以上の患者に勧める場合が多い)、保存療法(温存療法)で様子をみることにしましょう」と想定通りの回答でした。

医師からの保存療法のアドバイスとしては、
1)減量(股関節に負担を少しでも減らすため)
2)筋トレ(中殿筋を中心に鍛え、股関節に負担をかけないようにする)
3)杖の利用
でした。洋式トイレやベッドなどを使い股関節に負担の少ない洋式にするというのは当然のことです。つまりわかりやすく言えば「現状で症状を改善させられる治療法はない」ということです。それにこの変形性股関節症は将来的にさらに悪化することはあっても、よくなることはありません。つまり不治の病と言えます。

診察の後、別のリハビリのトレーナーに、股関節の近くにある中殿筋(中臀筋)を鍛えるため、自宅でおこなえる筋トレの方法を教わりました。さらにリハビリ用の磁気加振式温熱治療器ネオマグトロン(NEO MAGTRON)を装着し、患部を15分間温めながら磁気と低周波振動を与えて終わりです。



今回の診察と検査(X線撮影)は全部で2時間半ぐらいかかりましたが、そのうち待ち時間が約8〜9割です。まったくTime is Moneyの現代において病院(整形外科や内科、耳鼻咽喉科など)ほど時間を無駄にするサービスはありません。わかっていたので文庫本を持ち込み退屈はしませんでしたが。

救急患者は仕方ないとしても、通常の通院ならば最近の歯医者のように予約時間をお互い決めるとかすればいいだけなのに、なぜそんな簡単なことができないのでしょうかね。もし感染症の患者がいる場合、病院は病気を治すところではなく何時間も狭い待合室で同席すれば病気をもらう一番危険な場所となってしまいます。それって身体が弱っている高齢者にとっては自殺行為に近いでしょう。

あと薬は別に欲しくはなかったのですが、内服薬として非ステロイド系消炎・鎮痛剤と胃粘膜を保護・修復剤、痛むときに貼る湿布薬として非ステロイド系鎮痛消炎剤の3種類が二週間分処方されていました。痛み止めのため薬を服用したり湿布を貼るのは好きではないので、どうしようかと考えましたが、保険適用の処方薬は安い(3割のみ自己負担)ので、内服薬はともかく湿布は膝の関節痛の時など他でも使えるし、もらっておいても損はないでしょう。

帰ってから気がついたのですが、次回いつ頃通院するかといった話はまったくなく、医師としても定期的に通院されてもなにかができるわけではなく、患者に任せるってところなのでしょう。


その後手術をおこないました 2016年7月】

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)初診編

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(2)手術前検査編

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(3)入院手術編

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(4)リハビリ、退院編


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4月後半の読書 2012/5/5(土)

603
パイレーツ―掠奪海域― (ハヤカワ文庫NV) マイケル・クライトン

この作品は2008年に亡くなったマイケル・クライトン氏が亡くなった後にパソコンの中から発見されたものだそうです。もう一作未完の作品「マイクロワールド」という作品も同じパソコンに残されていて、それが本当の遺作となります。未完の原稿は「ホット・ゾーン」の作家リチャード・プレストンが未完部分を仕上げて完成させたそうです。

同氏の名を一躍高めたのは映画にもなった「ジュラシック・パーク」ですが、医学博士号を持つ秀才で、テレビドラマで有名な「ER 緊急救命室 」など医学関連の小説もいくつか出しています。そんな中でこの「パイレーツ」は、SFを得意とする彼の作品としてはちょっと異例な1665年のジャマイカなどイギリスとスペインが植民地争いでにらみ合うカリブ海を舞台とした冒険小説です。

内容はかなり映像化されるエンタテーメントが意識されたもので、インディジョーンズのような、いわゆるノンストップアクションです。1600年代後半、周辺はすべて大スペインが支配しているカリブ海の中にあって唯一のイギリスの植民地(ジャマイカ島)に住むエリート私掠船船長が、スペインが支配する難攻不落の要塞を攻め、そこに停泊中の商船を奪取しようとする物語です。

「私掠(しりゃく)英語:privateer」とは、「戦争状態にある一国の政府からその敵国の船を攻撃しその船や積み荷を奪うこと(wikipedia)」で、私掠船はその国から私掠免許をもらった船長が乗る船という、あまり日本では知られていない言葉です。いわば政府公認の海賊のようなもので、敵対する国の財宝を奪う職業です。

その私掠船船長で新大陸アメリカにできたばかりのハーバード大を出た英国人ハンターは、スペインの軍艦との戦い、要塞攻撃、ハリケーン、伝説の怪物クラーケンとの死闘、人食い族からの女性救出など次々と困難を乗り越え、奪った商船をジャマイカへ持ち帰ってきます。しかし上陸すると新しく赴任してきた英国人官僚達がクーデターを起こしていて、いきなり逮捕、監禁され、死刑が言い渡されることに。

なんともはや冒険譚のすべてがここに凝縮されているといえるストーリーですが、もしクライトンが長生きしていたら、この船長を主人公にして続編も考えられたでしょうに、それが読めないのが残念です。


太平洋の盃―ソロモンの賦 豊田穣

帝国海軍で戦闘機パイロットだった著者は、九九艦上爆撃機でガダルカナル島を攻撃中、米軍に撃墜され捕虜となり、終戦後に帰還して多くの小説や歴史書を残しています。その中で「長良川」「蒼空の器―若き撃墜王の生涯」「撃墜 ―太平洋航空戦記」「『玉砕』―日米陸戦記」「激戦地」などを過去に読みました。

この「太平洋の盃」は、今から33年前、1979年に書かれた小説で、表題作のほか、いくつかの短・中編集として構成されています。そのいくつかには太平洋戦争中の軍人と庶民の生活ぶりが小説として描かれていますが、途中からは史実や実体験に基づいた軍人の生き様、死に様など特定個人に関するドキュメンタリーに変わります。したがって、どこまでがフィクションの小説で、どこからがノンフィクションなのかその区別がつきにくくちょっと混乱します。

表題作の「太平洋の盃」は明らかにフィクションで、ハワイに住む日本人移住者(移民一世)が住む近くに真珠湾攻撃で傷ついたゼロ戦が不時着し、負傷したパイロットを救出し手当をします。その一家には年頃の娘がいて、そのパイロットを世話するうちに関係ができてしまいます。

しかしハワイの地元住人に日本人パイロットを匿っていることが知られ、当然敵国人として米軍に通報されそうになります。そこでそのパイロットを逃がすために一家は船で無人島に移そうとします。その船の中でパイロットと娘は簡単な祝言(夫婦の盃)をあげることになります。しかしその漁船はやがて米軍の哨戒艇に発見されます。

そのような表題作の他に、艦隊司令長官だった南雲忠一大将や、上海事件の後中国軍の捕虜となった空閑昇(くがのぼる)陸軍少佐の不運な戦いと悲劇について史実に基づき書かれています。


獄窓記 (新潮文庫) 山本譲司

元衆議院議員で、秘書給与流用の詐欺で実刑を受けた著者が、その刑務所内の生活を主に、判決を受けるまでと、出所した後について書き下ろし、2004年に出版したのがこの「獄窓記」です。同じように自分の刑務所体験を描いた佐藤優氏の「国家の罠」(2005年)や、ジェフリー・アーチャー氏の「獄中記 地獄篇」(2003年)などがあります。今後ホリエモンも出てきたらきっとその体験談を書くのでしょう。

同氏の著作では少し前に、障がい者と犯罪について書かれた問題作「累犯障害者(2006年)」を読みましたが、この刑務所の中で多くの障がい者と接してきた実体験が、今までほとんど知られていなかった隠された社会の問題点について取り上げるきっかけとなったのでしょう。

私は前作「累犯障害者」を読んだ後、著者をものすごく応援したい気になりましたが、この「獄窓記」では、自分が犯した犯罪について一方的な解釈や都合のいい取り上げ方をして、片方では深く反省していると何度も繰り返すことで、著者の性格には極端な裏表がありそうで、どうも好きになれません。

誰でも性格に裏表があるのは仕方がないにしても、きれい事を並べた後に、深く反省の弁を述べ、自分より偉そうな人に対しては必死に持ち上げてみたり、逆に若造にはけしからんという態度を見せたりし、特に現場で働く刑務官や他の囚人に対しては「俺は君たちとは違って博学だしエリートなんだぜ」という意識がみられこれぞ政治家の正直な姿といわんばかりです。現在は違いますが「選ばれた人間なんだぜ」と勘違いしている政治家が発する政治家臭と言い換えられるかもしれません。

誰でも極限状態に置かれると、その人の本性が現れるといいますが、出所後まもなく書かれたこの本では、より強くその傾向が出てしまったようで、その2年後に書かれた名著「累犯障害者」はそういう臭いがしなかっただけに、本当に同じ人が書いたものかと疑ってしまいそうです。あるいは編集者がベテランに代わったのかもしれませんね。

それはそうと、刑務所の中には健常者ばかりがいるわけではなく、医療刑務所に入れない身体障害者、精神薄弱者、痴呆の高齢者なども多く服役しているというのがこの本を読むとよくわかります。そのような健常者でない囚人は一般社会と同様に刑務所の中でも差別され、場合によっては同じ囚人同士で酷い仕打ちを受けることもあります。

また予算削減と犯罪者の増加でどこの刑務所も定員を大きく上回っている中で、人員不足の刑務官の仕事の厳しさとストレスは相当なものがあるようで、そのストレス発散の矛先が囚人に向かってしまうという悪循環も無視できません。そして時々その一端がマスメディアに報道されますが、刑務官が任務に乗じて抵抗できない囚人に対して、嫌がらせや暴力をふるう事件が、実態として多くありそうです。


最後の証人 (宝島社文庫) 柚月 裕子

著者の柚月(ゆづき)氏は43歳、2008年のデビュー作品「臨床真理」で「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞されています。この「最後の証人」(2010年)は、いわゆるヤメ検と呼ばれる元検事だった弁護士佐方貞人を主人公とする法廷ミステリー小説です。

本のタイトルに「最後の証人」とあるので、読み始めてすぐに「最後に登場する証人が判決をひっくり返すのだろう」というのが容易に想像でき、それまではその伏線ということになります。

ストーリーは飲酒運転事故により亡くなった子供の仇を討とうする両親が中心になって展開されますが、その中で起きる殺人事件の被告から弁護の依頼を受けたのが上述の佐方弁護士です。

この佐方弁護士がなぜ検事を辞めたのかという理由も出てきますが、警察や検察局の隠蔽体質については昨今のよく報道されている通りでまったく変わっていません。

この小説に書かれているような、警察や検察の身内かわいさによるもみ消しなどは全国どこでも起きていて不思議ではありません。佐々木譲氏の北海道警シリーズにもそのような警察内部の犯罪がよく書かれています。

この小説の場合、よく考えて構成が作られているものの、ちょっと内容自体が現実的ではなく、ネタバレするのでここでは書けませんが、かなり無理をしているところがあります。そうしたところがちょっと惜しいかな。

このような法廷ドラマ(小説)は特に海外モノでよく見掛けますが、有名なところでは「十二人の怒れる男」「評決のとき」「推定無罪」「告発の行方」などヒット映画にも多いです。それらの中でも私の一番のお気に入りは「スリーパーズ」で、これも最後に登場する証人の発言が一発逆転のキーとなります。その最後の証人であるダスティン・ホフマン演じる牧師はたいへんよかったです。


あぽやん (文春文庫) 新野 剛志

デビューから9作目にして、2008年上半期の直木賞候補(受賞は逃した)となった作品です。読むまではなんの知識もなく「あぽやん」というタイトルから大阪が舞台のコテコテの作品かなと思っていたら、全然違いました。

「あぽやん」の「あぽ」は「APO」でairport(空港)の略称。そこで勤務するいわゆる地上旅客対応要員のことだとか。一般的には国際空港勤務といえばエリートのような感じがしますが、大手の旅行会社では、空港勤務というのは左遷と同じで、キャリアアップにもつながらず、営業から頼まれたムチャ振りを含め、旅行客の無事に送り出すだけの雑用係とか。

大手航空会社子会社の海外旅行専門旅行代理店の本社に勤務する独身男性が、上司の不評をかってしまうことになり、成田空港事務所へ飛ばされ、そこであれやこれやのトラブルに見舞われます。

当初は適当にしのいでいればまたすぐに本社へ戻れるだろうぐらいの安易な気持ちでやっていたところ、意識がだんだんと変わってきて、やがては「あぽやん」として一人前になろうとする前向き青春ドラマです。

いずれにしても著者の新野剛志氏は大学卒業後6年間は旅行代理店に勤務していたそうで、そこでの経験や、同じ旅行代理店の知り合いなどから聞いた実話に近い話しがコメディタッチにまとめられています。続編の「恋する空港―あぽやん〈2〉も出ているらしいので、それも楽しみです。

こういうたぐいの小説は比較的テレビドラマになりやすいので、そのうちきっと制作されることになるのでしょう。そのとき果たして小説の中では主人公が勤務する企業の想定とされるジャルパックが全面協力するかどうかは微妙なところです。お堅そうな会社ですからね。主人公役はなんとなく妻夫木聡って感じがします。


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ニート対策ひとつの考え方 2012/5/9(水)

604
先般、「ニートって言うな!と言われても」でニートの対象となる無職者数や年齢などについて少し書きました。

様々な文献やネットの議論を読んでみて、あらためて知らされたのは、ひと言にニートと言っても幅が広すぎてそれをひとくくりにしては考えられないということです。

これは例えば東北大震災での「被災者」と言っても、フクイチ原発爆発の直接の避難被災者だったり、津波の被災者、液状化や地震による家屋損壊の被災者、その他にも放射能物質の拡散・残留による農業や水産・家畜生産者の被災者など多岐にわたり、一概に「被災者」とひとつにはくくれないのと同じことです。

ではニートになる人にはどういう人がいるのか調べてみました。これまた非常に多岐にわたるのですべてがそれに該当するわけではないでしょう。ニートの定義は簡単に言えば「仕事をせず、学校にも通っていない無職の34歳以下の若者」です。

ただ、この無職というのが曖昧で、例えば定職といえるものには就いていないものの、ネットのアフィリエイトで収入があったり、親が遺した土地やマンションからあがってくる収益、株や債権取引の収益や利子・配当など、パチンコやギャンブルで収入を得ているとか、配偶者や同居者の収入だけで生活している人までも無職と言えるかどうかは?です。おそらく現在の基準では、家事手伝いは除き、定職に就いていない人はすべてニートに分類されるのでしょう。

今回は無職でも自分1人が食っていける程度の平均収入がある人は除いて分類をしてみました。

【働く意志】
・学校で学ぶことや、就職して働く意志はあるが、なんらかの理由でそれが実行できない人
・学校で学ぶことや、就職して働く意志はなく、誰かの支援で食べられればそれでいいと思う人


【コミュニケーション】
・人と会って話すのは苦にならないが、働くことは受け付けられない人
・人と話すのは苦手で、できれば話などしたくない人


【社会とのつながり】
・学生時代に不登校となり、社会経験のないまま実家または別の場所に住み、主に親から生活費をもらい無職の人
・いったん社会に出て働くもその後退職し、実家または別の場所に住み、生活費は貯金や遺産、保険金、親の支援、生活保護受給などの人
・結婚や共同生活をしているが、家事や育児を含め労働はせず、配偶者やパートナーの援助で生活費をまかなっている人


確かにこれら様々な立場や考え方の人を十把一絡にした決め撃ちで「ニート対策」をおこなってもその効果は極めて限定的でしょう。

国や役所がおこなうニート対策と言えば「ジョブカフェ」「ヤングハローワーク」などがありますが、ニート対策に効果があったという話しは聞きません。単になにかやっていると見せかけだけで、役人天下り先に予算をつけるためだと理解しています。

ではどうすればいいのか?

独断と偏見がかなり交じりますが、下記の分類に分けてそれぞれで対応します。

1)仕事を希望しないで、親やパートナーが面倒みている →放置(=無駄な予算は使わない)
2)仕事を希望しないで、公的支援を受けず自活できている →放置
3)仕事を希望しないで、公的支援を希望する →公的支援を受けたいのなら自衛隊や医療・福祉施設、刑務所などでの就労義務化
4)仕事希望 →民間の就職支援サービスを提供し、不誠実だったり半年以内に就職が決まらなければ3)を強制適用
5)病気や高齢により通常勤務に耐えられない人は手厚い社会福祉制度の活用


ま、1)や2)の人は将来年金がもらえず、生活保護に頼ることになってしまう可能性が高いですが、現状の生活保護者の増加をみると今後は支給要件が厳しくなり、場合によっては現金ではなく現物支給に変わったりと、現在の生活保護天国のままとは思えません。それよりも働く気のない人にいくらお金と時間をつぎ込んでも無駄なだけと早く気がつくべきでしょう。

3)と4)に関して言えば、こと社会保障に至っては、社会主義国家の政策である「働かざる者食うべからず」を実践するしか方策は思い当たりません。働く同世代間での不公平感をなくす意味でも半ば強制的な職業訓練や就労経験は必須です。システム化がうまくできれば予算削減で苦しむ公共サービスに新たな働き手を集められ効果的になるでしょう。

「希望する仕事がない」「自分にあう仕事がわからない」「なにをやってもうまくできない」「働く気力がない」などと言い続けて、就業を拒否しながら、しかし生活費は行政からいただこうとする人には、労働力が不足している産業や、働きながら資格が取れる仕事に、強制力を持って半人前として就いてもらうしかありません。それを強制することで困る人は周囲には誰もいないでしょう。もちろん心身の病気と判断された人や、65歳以上の人は5)に該当します。

国家の強制的な就労と言えば、リベラル派や護憲派からは相当の反発を食いますが、反対派で対案を出してもらって、国民投票や選挙をおこなって決めればいいことです。このままなにもせずに放置し、無意味な予算を机上の空論につぎ込む政策をおこなっても今後に大きなツケと禍根を残すだけです。

あとは、親が資産家であれば、その親からの支援と遺産で一生働かずに暮らせるという人と、一般の人の格差を縮めるため、やはり贈与税や相続税には相当高い累進課税(5千万円以上の相続税は9割とか)を課し、そこで集めた税金は、上記で言えば3)〜5)の支援やサポートに回すべきでしょう。

     

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5月のDVD  2012/5/12(土)

605
日輪の遺産 2011年角川映画 監督:佐々部清、出演:堺雅人、中村獅童

浅田次郎原作の「日輪の遺産 」の映画版です。小説では壮大な仕掛けがたいへん面白かったのですが、2時間の映画になるとかなりの部分を端折らざるを得ないので、ちょっと不完全燃焼かなと。しかも低予算で作ったとみえて主演級の俳優はともかく、そのほかの出演者のレベルが低く、舞台セットもお粗末な限りです。

その中でも主演の堺雅人や助演の中村獅童、八千草薫はたいへんいい味を出しています。堺雅人は「南極料理人」や「武士の家計簿」のようなコミカルな役から、この映画での陸軍少佐のようなシリアスなものまで表情豊かにうまく役を作れるのがいい感じです。ちょっと陸軍将校というには小粒で頼りない感じはしましたが。

ストーリーは太平洋戦争でマッカーサーが日本軍にフィリピンを追われたあとに残した金塊900億円(現在の貨幣価値で2千兆円)を敗戦が濃厚な日本に運び込み、進駐軍から隠してしまおうと政府が画策します。その任を命ぜられたのが堺雅人演じる真柴少佐と主計官(中尉)、その護衛役として中国戦線で負傷した曹長の三人。

計画では戦時動員されている女学生20人に山の中の洞窟の中に運び込ませ、終わったら口を封じるためにその女学生と教師に毒を飲ませて殺すことになっていたが、それはできないと上官に交渉しにいくと、ちょうどポツダム宣言受諾の反乱軍との混乱に遭ってしまいます。

やがてマッカーサーは厚木に降り立ち、フィリピンから奪われた金塊を取り戻すべき調査を始め、そしてようやく洞窟に隠してあることが判明してその洞窟に入っていきます。そこで見たものは、、、

浅田流の涙を誘う悲しいストーリーですが、先に小説を読んでいたので、映画では涙は浮かんできませんでした。

お勧め度★☆☆


ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT 2006年米 監督:ジャスティン・リン 出演:ルーカス・ブラック、千葉真一

ワイルドスピードのシリーズはややこしくて、いくつか先に出ていますが、このX3は3本目という意味ではなさそうです。サブタイトルに「TOKYO DRIFT」とあるように日本がメインの舞台となっている作品です。

この映画、ストーリーや場面設定はかなり無茶苦茶ですが、クルマファンにはたまらない一品でしょう。中でも主人公が乗るランエボ(IX)よりも、敵役や仲間が乗るフェアレディZやRX-7、シルビア(S15)などの改造車がとても決まっていてかっちょいいです。ただアメリカ人好みなのか、やたらとボディペインティングが施されていてそれだけはいただけません。

たっぷりと入っているボーナストラックを見るとわかりますが、市街地での暴走シーンは本当に都内で撮影したのかと思っていたら、街並みをしっかりロサンジェルスに作ってそこで撮影し、一部を合成したとか。いやーよくできています。

この映画はアメリカ制作映画で、主要な登場人物も多くは外国人(アメリカ、中国・韓国の俳優)で、そのあたりはせっかく日本で多くを撮影しながら日本人俳優が選ばれなかったというのはちょっと残念ですね。そういえば実写版の「頭文字<イニシャル>D THE MOVIE<イニシャル>D THE MOVIE [DVD]」もそうでしたが、なにかワケでもあるのかな。

お勧め度★★☆


ヤバい経済学 2011年米 監督:アレックス・ギブニー、モーガン・スパーロック等

シカゴ大学教授の経済学者スティーヴン・レヴィットとジャーナリストのスティーヴン・J・ダブナー共著による「ヤバい経済学」が原作です。

「不動産業者が他人の家と自分の家を売る時にはなにが違う」「ルーザー(負け犬)とウィナー(勝ち馬)と名づけられた双子が送った人生とは?」「大相撲の八百長はデータで証明できた?」「勉強嫌いの高校生に成績が上がれば毎月50ドルのご褒美を与えるキケンな実験!」など収録されています。

不動産業者は他人の家を売るときには売却希望値より少し安いオファーがあれば「これはいい提案だから決めた方がいい」と顧客に言うが、自分の不動産であれば希望値になるまでじっくり待つことが多く、他人の家と自分の家では明らかに自分の家の方が高く売っていうることが統計上もハッキリしています。

これはその不動産業者が受け取るインセンティブの違いから来るもので、つまり他人の不動産を売ってもその10数パーセントが手数料で入ってくるに過ぎず、少しの割引ならそのインセンティブも極めてわずかなので、早く売ってしまいたいという意識が働き、自分の不動産なら例えわずかな値引きでもその影響が大きいからすぐには売らないということ。言われてみると当たり前なんですね。

私がよく電気量販店で経験し目にすることとして、各社とも同じような性能の製品(例えばテレビや冷蔵庫)を買う場合、店員さんのお勧めを聞くと、店員さんは実際の売れ筋や性能の優劣ではなく、どの製品がその店にとって一番利益が出るかを考えて客に勧めます。それとは知らずに買ってしまう人が多いので、店員さんはそれが普通だと思って指名買いをする客にまで店や自分の成績に一番都合がいい製品に翻そうと必死に説得してきます。これも結局はインセンティブというものが働いているのでしょう。

ま、普通に面白いけれど、いまさらねぇという思いもします。お暇ならどうぞってところかな。その点ではマイケル・ムーア監督作品のほうがもっと毒が効いていて楽しめますが、棚の配列が変わってしまってどこへいったか発見できなかったのですよ。

お勧め度★☆☆


太平洋の奇跡 −フォックスと呼ばれた男 2011年「太平洋の奇跡」製作委員会 監督:平山秀幸 出演:竹野内豊、井上真央

太平洋戦争のDVDが2本続きますが、この作品の原作は元海兵隊員のドン・ジョーンズが書いた『タッポーチョ 太平洋の奇跡 「敵ながら天晴」玉砕の島サイパンで本当にあった感動の物語』。なんとベタなタイトルだろう。

要は実在した大場栄という陸軍大尉が、玉砕や自決が普通だったサイパン島で、うまく米軍の攻撃をかわしながら、民間人は早めに降伏させ、兵隊も終戦までゲリラ活動を続け、最後まで戦い抜いた実話を元にして描かれています。

原作も読みましたが、原作ではもう少し大場栄氏が英雄のように描かれていましたが、映画ではそういうエピソードを入れる時間がなかったのか、どちらかといえば迷い、部下達に言われて考え直すというような場面があり、優柔不断という印象を持ってしまいました。

玉砕にしても当初は当然と思っていて一緒に突撃するも生き残ってしまい、その後米軍の攻撃が終わった後、隠れていたところ同じように生き残った兵隊達に見つかり、ともに民間人が隠れている安全な場所へ向かいます。また自決しようとする部下の前では固まってしまい、なにも声をかけられなかったりと、当時の陸軍将校としてどうなのよと思わせる場面がありました。

お勧め度★☆☆


マネーボール 2011年米 監督:ベネット・ミラー 出演者:ブラッド・ピット

実在のオークランドアスレチックスのゼネラルマネージャービリー・ビーンがメジャーリーグの経営に新たに持ち込んだセイバーメトリクスという新たな統計学を使い手法で、ヤンキースなどお金持ち球団に対抗できることを証明した実話を元に作られています。ちなみに現在でもビリー・ビーンはアスレチックスのGMとして活躍しています。

この手法が導入されるまでのスカウトやトレードというのは、一般的に打者なら打率・打点・本塁打数・盗塁数・守備エラー数、投手ならば球速、勝率、勝利数、防御率、失点、自責点と、打者と投手に共通して性格、スター性、年俸などを元に決められることが普通です

新たな手法というのは簡単に言えば打者ならば出塁率と年俸、投手なら奪三振率と被ホームラン率と年俸だけに重点を置くことによって、正当に評価されていないイコール年棒の安い優良な選手を獲得し効率よく強いチームを作っていくというものです。

打者で言えばヒットを打つのと選球眼がよく四球を選んで塁に出るのは価値として等しいという判断になりますし、投手は味方のチームの攻撃力や守備力により勝率も失点数も変わってくるからです。確かに得点力の弱かったり、エラーが多いチームの投手っていうのはつらいですよね。

この映画を観て、メジャーリーグというのはスポーツと言うよりまったくビジネスなんだなということが実感できます。GMが電話一本でライバルチームとトレードを成立させ、選手には紙一枚を渡して明日からライバルのチームへ移ってくれと通告します。

人情や和を以て貴しとなすを意識する日本人の感情からするとなかなか理解できない面もありますが、日本人選手がメジャーへ行くことが増えていくことで、このようなスポーツビジネスが日本でも当たり前になる日がくるのかも知れません。

メジャーリーグ好きであれば見て損はない楽しめるいい映画です。

お勧め度★★☆


神様のカルテ 2011年東宝 監督:深川栄洋 出演:櫻井翔、宮崎あおい

先般小説を読んで、こりゃ見なくちゃと借りてきた新作DVDです。内容はほぼ小説通りですが、当然時間の関係で省略されている部分もあり、やはり小説のほうが細部に行き届いていていいなぁと思った次第です。
http://restrer.atgj.net/Entry/278/

主演の医師にアイドルの中でも慶応卒のインテリ櫻井翔を用い、なにか雲をつかむようなボヤーとした近年の若者には珍しいタイプのいい雰囲気を醸し出しています。ただ普段から使い慣れていないことがすぐわかる夏目漱石の文体風の会話がぎこちないところがあるのは演劇などを経験したプロの俳優ではないからご愛敬か。

またぼそぼそと小声で喋るシーンが多く、これが私の年齢ではほとんど聞き取れない。これは聴力の老化が原因だと思うけど、会話が聞き取れない映画ほどつまらないものはなく、この超高齢化社会において、制作側ももうちょっと配慮してもらいたいものだ。

なので会話の場面だけボリュームを思い切り高くするのだけど、場面が変わっていきなり爆音のような効果音が鳴り響いたりして鬱陶しくてかなわない。

小説では松本城が何度か登場したけれど、本編の中には登場せず、ちょっと残念。その代わり写真のような北アルプスなど美しい自然が堪能できます。

小説ではこの原作の続編が出ているので、映画もまた次回作に期待。

お勧め度★★☆


岳 -ガク- 2011年「岳 -ガク-」製作委員会 監督:片山修 出演:小栗旬、長澤まさみ

原作は石塚真一氏の山岳救助を題材とした漫画作品です。5月のゴールデンウィーク中に多くの遭難者を出した日本アルプスですが、その山をこよなく愛し、民間ボランティアとして遭難者の救助にあたる主人公が活躍するドラマです。

なんと言っていいのか、最初はアイドルを必要以上に持ち上げた若い二人のラブラブ映画かなと思っていましたが、そうではなくそこそこに迫力のあるいい映画でした。

ただ現地ロケのシーンは見ていてもすがすがしくいいとしても、いかにも「スタジオで撮影しました」という場面が多くあり、しかも後半のクライマックスシーンではそれがほとんどで、緊迫感もなくちょっと残念。

本格的な山登りを経験したことがない私でも、一度登山をやってみたかったなぁと思える映画ですが、残念ながら右足を傷めてそれはかないません。

小栗旬、長澤まさみに興味のない人でも、この映画も見て損はないかな。

お勧め度★★☆


キャピタリズム~マネーは踊る 2009年米 監督:マイケル・ムーア

華氏911など皮肉たっぷり効かせたドキュメンタリー映画を制作する同監督の作品です。

この映画ではアメリカ国内で資本主義経済がいかに疲弊し破綻しているかをリーマンブラザーズの破産を始め、国から税金がつぎ込まれる巨大な金融資本と、わずかな借金で先祖代々継いできた土地を奪われ追い出されていく個人の姿などいくつもの事例を追いかけていきます。

アメリカの憲法にも「資本主義」という言葉はどこにもなく、逆に国民が等しく公平に暮らせるようにとまるで社会主義的な文言を紹介しますが、これで同監督は共産主義者というアメリカ人にとっては屈辱的なレッテルを貼られるのでしょう。でも一向に気にするふうではありませんでした。

この映画を見ていると、常にアメリカの後を追いかけてきた日本にとって他人事ではなく、およそ10〜20年遅れて同じことが起きても不思議ではありません。デトロイトの広大な自動車工場の跡地に雑草が生えている姿が、そのまま日本の製造工場に置き換わることになるのでしょう。

単に変人映画監督が作った金儲けのための映画だと切り捨ててしまうのは簡単ですが、どうすれば国や権力に騙されないようにするかなど、自己防衛策として知っておくこともいいかも知れません。

お勧め度★★☆


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正社員の解雇には2千万円かかる!それホント? 2012/5/16(水)

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経営者向けのダイヤモンドonlineに「正社員の解雇には2千万円かかる!」という記事が出ていました。弁護士の向井蘭氏が書いたシリーズのひとつで、要約すると「社員を解雇し、その後、訴訟沙汰になって負けると数千万出費することがありますよ」というものです。

その2千万円の内訳とは、

 1)賃金仮払いの仮処分(例では14カ月分420万円)
 2)本裁判で敗訴した場合の賃金支払い(19カ月分570万円)
 3)控訴して敗訴した場合の仮処分分と賃金支払い(6カ月分360万円)
 4)最終的な割増退職金など和解金(150〜650万円)

と言うことです。

不思議なのは、賃金仮払いが認められて仮処分で支払われる金額(上記の1や3)と、本裁判で雇用主側が負けて支払うことになる未払い賃金(上記2と3)は、その期間が重なっているのに相殺されず、雇用主側は裁判の期間中、給料をダブルで労働者側に支払わなければならないケースがあると言うこと。知りませんでした。

この点は、不思議に思っていましたが、やはり各所から反論や指摘があり、著者が実例を元に後で追記されていました。それによると著者が関わった1審の判例にそのような事例があり、ただしそれが最高裁で争われたわけではないので、確定的な話しではないそうですが、そういう解釈をされるリスクもあるよと言うことらしいです。なので通常は仮払いと未払い給与をダブルで支払われることはまずないそうです。

話は変わって、私の知っている人で、勤務先の役員から暴言をかけられ、退職を強要された人が、会社を訴え、未払い分の賃金を含め、和解金1千万円近くを勝ち取ったケースがありました。この人は役員のその暴言を隠し持っていたレコーダーで録音していた(計画的ですね)ことが、裁判を決定的に有利にしたそうです。

これらのことから、理不尽な退職を強要されたときは、早く決着をつけてすぐに次の就職先をと考えるのもいいですが、あきらめず解雇は無効であると訴え、抵抗することで多少なりとも生活費を得ることができるかも知れません。

但し、表には出てきませんが、上記の知人の例では個人で加入できる労働組合に相談をして裁判に持っていったため、裁判費用や組合活動費として和解金の半分以上を組合へ納めたと聞きました。そうなると、金銭的な面だけ考えると、おとなしく会社の指示に従い、温情で割り増し退職金などを得たり、転職サポートサービスの提供を受けたりし、次の仕事探しに早く取りかかったほうが結果的にはよかったかも知れません。

もちろん組合に依頼をしなくても、個人で弁護士を雇い、裁判をする方法もありますが、供託金や弁護士費用は相当かかり、最悪裁判に負けてそれに使った費用すら回収できないというリスクもあります。そういうことが個人が企業相手に裁判をする時に一番迷う点でしょう。

上記の知人はまだ若く転職にもそれほど困ることはなく、裁判に打って出たのは「会社と暴言を吐いた役員に思いっきり反省させてやる」との一念がありましたから、お金がすべてではなかったのですが、中高年者の場合だと再就職が厳しいのがわかっているだけに、難しい選択となるでしょう。

いずれにしても民事の裁判というのは「儲かるのは弁護士だけ」と言われるように、勝っても負けてもそれに使う費用や時間、労力、それに精神的な重圧など、むやみにやると双方ともに傷つき、疲労が溜まるだけのケースが多いようです。相手側に明かな違法行為があった場合や訴訟マニアは別として、できれば一生涯そういうことに関わらず、できるだけ話し合いでの決着を望みたいものです。

一般的に解雇規制と言われている法律
 旧条項 労働基準法第18条の2
 現条項 労働契約法第16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

整理解雇する場合は、次の4要件を充たす必要があるとされています。 
整理解雇の4要件 
 (1)人員削減の必要性
 (2)整理解雇をすることの必要性
 (3)解雇対象の人選の妥当性
 (4)解雇手続きの妥当性

解説
(1)整理解雇をおこなうには、相当の経営上の必要性が認められなければならない。一般的に、企業の維持存続が危うい程度に差し迫った必要性が認められる場合は、もちろん、そうでない場合でも、企業が客観的にみて経営危機下にある場合、人員整理の必要性は認められる傾向にある。
(2)期間の定めのない雇用契約においては、解雇は最後の選択手段であることを要求される。役員報酬の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等によって、整理解雇を回避するための相当の経営努力がおこなわれてから着手することがやむを得ないと判断される。
(3)人選基準が合理的であり、あわせて、具体的人選も合理的かつ公平でなければならない。
(4)説明・協議、納得を得るための手順を踏んでいない整理解雇は、他の要件を満たす場合であっても無効とされるケースがある。


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5月前半の読書 2012/5/19(土) 

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睡蓮の長いまどろみ (文春文庫) 宮本輝

 
長い小説ですが、ヨーロッパの田舎町と日本が登場し、何十年と長く会っていなかった親子が再会し、それまでの紆余曲折の人生を語るといういかにも宮本輝流の小説です。

宮本輝氏ぐらいの大物作家になると、小説を書くために取材旅行をと言えば、海外渡航費などを出版社が喜んで負担してくれるので、こういう日本人が滅多に行かないような海外の地が出てくる小説が多いのではないかと勝手に想像しています。失礼ながら西村賢太氏にこのようなイタリアの聞いたこともないような片田舎の街を舞台にしてストーリーを描けといってもそりゃ無理ですものね。

で、そのイタリアの風景がこの小説にどうしても必要かと言えばそれはまったくないわけで、主人公を生んですぐに消息を絶った母親と何十年ぶりかで再会する場所は、別に軽井沢でも沖縄でも熱海でもよかったわけです。

タイトルになっている睡蓮と蓮の違いを含め、うんちくについては雑学として勉強になりますが、発酵食品を取り上げた「にぎやかな天地」ほどは役には立ちそうもありません。こういううんちく雑学を語らせると天下一品です。

そして特に驚きとか感動とかはなく、主人公とその母親の生い立ちについてまるで蓮の花がひとつふたつとはがれ落ちていくようにして深い事情がわかっていくという暗示をタイトルに込めているのかもしれません。


プレイメイツ (ハヤカワ文庫) ロバート・B・パーカー

日本では1990年に発刊されたスペンサーシリーズ16作目です。タイトルからすると一見綺麗な女性がいっぱい登場してきそうですが、そのような期待は大きく裏切られ、アメリカでは4大人気スポーツの一つであるバスケットボールの将来有望な若手選手が今回の相手です。

大学のバスケットチームに所属し、プロのスカウト間違いなしと言われている選手に八百長疑惑が起きたことで、その大学が私立探偵スペンサーに調査を依頼するところから始まります。

八百長をおこなったかどうかの調査なら、すぐに終わってしまいますが、パーカーの理想とする探偵像はそれだけにとどまらず、依頼者である大学を裏切ってでも、将来のスター選手の芽をつみ取ってしまうだけのことに満足せず、殺し屋を送り込んでくる八百長を仕組んだマフィアを敵に回しながら、スキャンダルに発展しないよう落ち着き先を考えます。

またその生意気で自信過剰で、そそのかされて八百長に手を染め道を外そうとしているスター選手を心身両面で支え、賢明に助けようとするガールフレンドの誠実な対応に報いてやろうとするところが、スペンサーのスペンサーたる所以でもあるでしょう。

スポーツの世界を舞台としたこのシリーでには他に「失投」があります。こちらはメジャーリーグ、地元のボストンレッドソックス所属選手のやはり八百長問題についての調査でした。スペンサー自身レッドソックスのファンでもあり、その他の小説の中にもホームグラウンドのフェンウェイ・パークや、メジャー中継をテレビで観戦しているシーンが登場しています。中にはレッドソックスのライバル球団として「ヤンキースに入団した風変わりな日本人」と当時悪役のイメージがあった伊良部投手のことを書いたものもありました。


冬の童話 (ポプラ文庫) 白川 道

白川氏のファンなのでそれほど多くはない文庫本はほとんど読んでいますが、これは2010年(文庫は2011年)発刊の長編恋愛小説です。映画タイタニックやプライベートライアンのように、プロローグとしてまず現在の結果が描かれ、それが終わると一気に過去へ飛んで結果に向けての長いストーリーが始まるという仕掛けです。

主人公は、生まれてすぐ捨て子にされたものの、里親に恵まれ、大学を出て大手出版社に勤務、そこから人一倍努力を重ね自分で文芸書出版社を起業し社長にまで上り詰めます。しかし幼い頃の悪夢が時々よみがえり、自分の捨て子だった過去を繰り返してはいけないと、結婚もしません。

またもう一人の主役は、幼い頃に父親を亡くし、義父に虐待を受けながらも美しく成長した女性です。その二人の運命的な出会いと再会、そして永遠の別離を描いています。

主人公が起業した新興出版社のモデルは、すぐにわかってしまう出版界の風雲児「幻冬舎」ですが、この小説はポプラ社から出版されています。なにかちょっと不思議な感じ。

白川氏の小説は「流星たちの宴」から続く一連の「病葉流れて」「朽ちた花びら―病葉流れて 2」「崩れる日なにおもう―病葉流れて〈3〉」など麻雀などギャンブルや強引な株取引などの男臭い日本的ハードボイルドものが多いと感じていましたが、この小説ではそういったギャンブルや暴力、ヤクザなどは一切出てこないタイトル通り大人の男と女が夢見るベタなおとぎ話です。

昨年白川氏が最初に就職して確か数ヶ月で辞めてしまったという三洋電機が解体されました。できればその三洋電機が舞台の小説を書いて欲しいなと思っています。三洋電機がきしみながら壊れていく姿を、最後まで見届けた男達の物語を単なる経済観点ではなく白川タッチで読んでみたいものです。


FLY (文春文庫) 新野 剛志

白状すると、私は寝る前に自宅のベッドの中で読む本と、片道1時間の通勤中に読む本と、だいたいふたつの本を並行して読んでいます。この「FLY」と同じ時期に並行して読んでいたのが、上記の「冬の童話」でした。そしてどちらにも歌がうまくて、歌手としてプロデビューしようとする薄幸な美少女が重要な役割として登場するではないですか。しかもFLYには二人も。

寝る前に読む本と通勤中に読む本は意図してまったく違うジャンルの本を読むように気をつけていますが、今回はまったく無自覚で内容が一部分ダブってしまうことになりました。そして読んでいるうちに内容や登場人物がごっちゃになってしまい、混乱してしまったことを認めます。

こちらの小説は、2004年に初出で、文庫は2007年発刊です。著者の新野剛志氏と言えば少し前に読んだ「あぽやん」がとてもスマートで面白かったので、今回続けて読んでみることにしました。この「FLY」は「あぽやん」と同じ作者とは思えない本格的なクライムノベルで、コミカルな部分は皆無、子供への虐待や殺人など犯罪が次々と起きていきます。

登場人物はかなり複雑です。将来は飛行機パイロットになろうと目標を決めていた高校生が、ある日偶然に指名手配されている殺人事件の容疑者を見つけてしまい、それを警察に通報したことから、容疑者の恨みを買ってしまい一番大事なものを目の前で失ってしまうという流れがひとつ。

その事件から十数年が経ち、将来は物書きになりたいと思っているフリーターの若い男性が、仲のよいバイト仲間の女性につきまとうストーカーになぜか興味を惹かれ、調べていくうちにその女性の父親とストーカー男の間に横たわる暗い闇が次第に判明していくというふたつめの流れ。

さらに過去に暴力的な父親から逃れ、歌手になる野心のため犯した犯罪と、それをネタに強請ろうとする実母のヒモに苦しめられる売れっ子ミュージシャンの不幸な生い立ちからの流れ。

それぞれの視点で物語が展開し複雑に絡み合っていきますので、誰が主人公というのではなく、複数の登場人物が主人公と言えます。登場人物は多くはないものの、それでも視点(語り手)がコロコロと変わりますので、しっかりと読んでいかないと途中で混乱してしまいそうです。

そして最後になってわかる最初に起きた殺人の意味や伏線がしっかりとあとになってから効いてくる、なかなかトリッキーな小説です。ただタイトルがこの「FLY」だと、よほどの売れっ子作家で作者名で買っていく人が多くないと、読み手にはまったく意味不明なだけに、そこがちょっと損をしたかな。


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あちらを立てるとこちらが立たず 2012/5/23(水)

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若者のワーキングプアや就職難からその攻撃の先は中高年者と相場は決まっているようで「中高年者の雇用を守るために若者がそのとばっちりを受けている」という評論家や学者がいます。でも本当にそうなのでしょうか?

そしてそれに関連し、非正規社員の多い若者のため、労働法の労働契約法16条にある「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権濫用として無効」を改正し、企業はいつでも簡単に社員を解雇ができるようにするべきだという主張をする人もいます。

その人達の主張としては、

 ・正社員の既得権益をなくすことで非正規社員などの弱者を救済する
 ・解雇規制をなくすと企業は正社員を採用しやすくなり失業率が下がる
 ・人件費を柔軟にカットできることで、国際市場において企業競争力が上がる

などがありますが、それってつまり、企業側、使用者側の論理で、激しい労働者間の弱肉強食の世界と、低賃金と長時間労働に文句も言わず黙って社畜になれる人だけの世界を作ろうというのと同じではないでしょうか?つまり使用者(経営者)側にとってたいへん都合のいい政策です。

雇用者側にとっては、正社員が簡単に解雇されると言うことは、現在非正規社員の人は正社員になれるチャンスがあると同様、正社員になってもすぐに解雇される可能性があるってことです。つまり使用者側にとっては正社員であろうと非正社員であろうと会社(あるいは経営者)にとって最善の人だけを残すという非常にありがたい仕組みなわけです。

失業率の問題も、正規でも非正規でも働いているならば失業者ではなく失業率には反映されません。つまり非正規社員が正社員になったからと言って失業率が下がるわけではないのです。失業率が高いのは、製造業を中心として多くの生産拠点が海外へ移ったのと、日本を含む先進国の景気の低迷で国内の需給バランスがおかしくなっているからに他なりません。

国際市場での競争力を上げるために、働きが悪く賃金の高い中高年はビシビシと解雇していこうというのも、それによって残った労働者の賃金が上がるってことはなく、本気で競争するなら若い人の賃金も国際平均並みに下げない限り競争力はつきません。日本の労働者の平均賃金が中国のそれと同じまで下がれば競争力はつくかも知れませんが、経営者と株主以外誰もハッピーにはならないでしょう。

すでに多くの企業では完全年功序列賃金制度というのは少なくなり、実際に公務員ぐらいにしか残っていません。つまり年功序列賃金と成果主義、実力主義をうまくバランスをさせた賃金体系になっているところがほとんどなのです。年代別の平均賃金を見ると、すでに40代が一番高くなっていることからもそれがわかります。完全年功序列賃金が生きていたのはいま65歳前後の団塊世代が現役だった頃までの話しです。



上記のグラフは総務省統計局の資料から抜粋してグラフ化したものです。

まだ50代前半の年収が一番高く出ていますが、これは全体の10%近くを占める完全年功序列に近い公務員(含む準公務員や公的企業)を含んでいます。ほとんどの民間企業では役員以外はとっくに40代のほうが収入が高くなっているのが一般的です。

いまやり玉に挙がっている現在の50歳代というのは、学校を卒業して入社したときは上司から「年功序列賃金でいまは少ないけど段々と増えていきあとが楽になるから我慢して働け」とずっと言われ続けてきました。しかし40代になった頃、つぶれないと言われてきた山一証券や北海道拓殖銀行など大手金融機関までがつぶれ、企業が一斉にリストラを始めるようになり、給料は実力主義の成果報酬に変更と一方的に告げられ、それに甘んじざるを得なくなります。

そりゃ30代、40代の頃と比べると、体力、忍耐強さ、発想力、記憶力、勤務に使える時間など50代は明らかに劣っていきます。そしてその多くの人は、家族を抱え、親の介護や子供の教育など、仕事に集中しにくい環境下にあることも若い人と比べ不利な点です。

勝てるとしたら培ってきた経験と判断力でしょうが、スピードが速く移ろいやすい時代において、果たしてそのような過去の経験が十分に生かせられるかというと、これもまた厳しい状況です。したがっていまの50代の給料は30代40代の頃と比べると民間企業勤務の場合10〜20%下がっているというのが実情なのです。

一般的な家庭の話しをすると、30歳前後で結婚、子供が大きくなってきて30代半ばから後半に自宅を購入、40代後半から50代前半にかけて子供の教育費(塾や私立高校、大学の学費等)と、20代、30代前半までと比べると段違いにお金が必要となります。

最初から50代で収入が下がると知っていたならば、あらかじめその分を計画的に貯金しておくこともできますが、40代になって急に「年功序列は廃止です、明日からは実力主義の成果主義なのでよろしく」と言われたいまの50代はとてもつらい目に遭っています。そのような50代に対し「もらいすぎだろ?」「解雇規制などなくして上からきっちまえ」と言われるのは「おい、ちょっと待て」となるわけです。

そして、いま解雇規制をなくしてしまうと、若く元気でしかも優秀な人にとってはあと数年から十数年は天下をとれるでしょうけれど、当然自分達も年齢を重ねることによって、もっと若くて元気で優秀な人達に追い出されるという悲哀を迎えることになります。しかしそういうことは人生でもっとも華やかな我が世の春を迎えている今の若い人には考えたくもないし、また考えられないことでしょう。

もし「オレは優秀だから将来もずっと追い出されることはない」「オレなら追い出される前に独立して成功する」と安易に思っているならば、まったく笑止千万です。そのような根拠もない、何十分の一か何百分の一の可能性に賭けるほど愚かなことはありません。誰も20年先、30年先の社会や経済の状況なんて想定できるわけがありません。

私は現在の「年功+成果報酬」のスタイルは悪くないと思っています。それは日本の社会がまだ大企業中心で転職や起業することが少数派で異端であるという社会だからです。

もし40代50代が経験や人脈を生かして個人事業主や零細企業が簡単に作れ、一度や二度失敗しても一家離散や個人破産するようなことがなく、やる気さえあれば何度でもやり直しが効く社会に変われば、その時は完全成果報酬制度も大いにアリでしょう。

ところが、一般的には大会社に勤めていることがその人のステータスであり、福利厚生も退職金も年金も、細かなところでは住宅ローン金利までも大企業従業員(や公務員)が優位になっている以上、それを捨てて積極的に外へ飛び出す人は少ないはずです。そのような大企業中心経済から脱皮していくことが、今後日本経済を変えていく方向性であって、単に今の中高年を非難してもなんの解決にもならないというお話です。


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メジャーベースボールとビーンボール 2012/5/26(土)

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メジャーリーグの試合を見ていると、時々出くわすのがビーンボール(正確には故意ではない場合「hit by pitch」故意の場合「brush-back ball」または「beanball」)。日本では死球のことです。日本でも死球を巡っては両チームが飛び出してエキサイトする場面がありますが、メジャーの場合は、それだけではなく、必ずといっていいほど後で仕返しが待っています。

例えばチームの四番に当ててしまった場合、それが故意であるかどうかは別として、相手チームの四番に当てて返すという返礼が待っています。これはプロといえども怖い。

日本のプロ野球でもこのような仕返しで当てるというのはなくはありませんが、そこはやはり日本人の礼儀正しさというか真面目さがあり、投手が当ててしまった後、申し訳なさそうに帽子をとって軽く頭を下げれば、その後問題になることはまずありません。

しかしメジャーでは相手に当ててしまった場合、投手はそれが故意であるかないにかかわらず絶対に謝るような態度は見せません。逆に「あれぐらい避けろよ、ボケ!」ぐらいの態度です。世界中からトップ選手が集まってきて、それこそ食うか食われるかの厳しい世界ですから、自尊心も高く、そして相手に油断や隙、弱みを見せてはいけないのでしょう。

中には気の弱い投手や、わざとビーンボールを投げるのを嫌がる投手もいるでしょうけど、そこはチームとしての態度を明確にしておく必要性から、誰かに命ぜられるまでもなく「やられたらやり返す」というのが暗黙のルールとなってしまっているようです。ま、アメリカ人らしいと言えばその通りです。

ダルビッシュも6試合を投げて死球は3個出しています。以前テレビで見ていたら、ダルビッシュが当てた後、明らかにその仕返しと思える死球を味方チームの選手が受けてました。いやマジで怖いですね。アメリカンリーグは指名打者制なので当てたピッチャーが当てられることはありませんが、それでもチームメイトに申し訳ない気持ちになるでしょう。その時は故意とは判定されなかったようですが、見ていると明らかにダルビッシュが当てた場所と同じ場所に当てにいってました。

しかし最近はこれを潔しとせず、なにか伏線ががあって故意に当てたと判断されると、処分が下されます。開幕してから2ヶ月の間に3回処分がおこなわれています(2012/5/9現在)。

ハメルズが故意死球で出場停止
米大リーグ機構は7日、フィリーズのハメルズ投手が6日のナショナルズ戦の1回にハーパー外野手に与えた死球が故意であったとして、5試合の出場停止と罰金の処分を科した。

ゴメス、故意死球で出場停止処分
米大リーグ機構は18日、インディアンスのゴメスが14日のロイヤルズ戦で記録した死球が故意だとして、5試合の出場停止と罰金の処分を科した。

ヒメネスに5試合の出場停止処分
米大リーグ機構は2日、インディアンスの右腕ヒメネスが1日のロッキーズ戦で故意に死球を与えたとして、5試合の出場停止と罰金の処分を科した。

投手に5試合の出場停止なら軽いものですね。せいぜい次の登板がローテーションから1〜2日遅れるだけのことです。おそらく罰金もチームメイトがカンパしてくれるのでしょう。

いっそ故意と認められると出場停止を15試合ぐらいにすれば、登板機会が大きく減ってしまうことで自身のキャリアや来期の年俸にも影響し、仕返しが減ると思うのですが、そうしないのは、おそらくエンタテーメント性を追求するメジャー機構は、ある程度「目には目を」の仕返しという常套手段は、やむなしと認めているような気がします。

死球で受けた怪我が元で野球生命を絶たれてしまった選手も過去にはいて、プロ野球では水谷実雄、高橋慶彦、竹之内雅史など、それ以外にも長期戦線離脱を余儀なくされたり、顔面や頭部に受けた死球の恐怖から踏み込めなくなってしまう選手もいるそうです。メジャー選手のことはわかりませんが、その歴史から言っても、その荒っぽさから言っても日本よりずっと多く死球に泣いた選手がいると思われます。

もちろんメジャーでわざと当てる時は、足や腰、背中などを狙い、致命傷になる恐れのある頭部に投げないよう注意するものの、それでもあの固いボールを150km/h近いスピードでぶつけられると、身体を鍛えていたところで、めちゃくちゃ痛いでしょう。そんな痛い思いをして四球と同じ一塁をもらったところで、うれしくはありません。

いっそ死球はテイクワンベースではなく、テイクツーベースかスリーベースぐらいに厳罰化すれば、わざと相手に得点のチャンスを与えることはしなくなるのではと思いますが、どうなのでしょう。そうすると今度は逆にバッターが当たるのを覚悟して大きく踏み込めて有利になり、内角近くをえぐってくるきわどいボールにわざと当たりにいく選手も現れ、真剣勝負の醍醐味が薄れてしまうかもしれませんね。


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労働者派遣法改正 2012/5/30(水)

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すったもんだありながらもようやく先月派遣法の改正がおこなわれることが決まりました。

労働者派遣法改正法(PDF)

当初はリーマンショック以来の「派遣社員雇い止め」「年越し派遣村」の問題が大きくフューチャーされ、「派遣=悪」のような論調で語られることが多かったのですが、実態をよく見ると「実は派遣が悪いのではなかった」というのが本当のところでしょう。

しかしいったんは大きく振り上げたこぶしをおろす先がなく、仕方なく派遣法をちょこっといじってお茶を濁そうとしているのが見て取れます。ま、結果的にはそれでよかったのではないかと私的には思っています。

したがって、正社員が減ってきて存続の危機を迎えている組合系団体から強く求められてきた「登録型派遣の原則禁止(専門26業務等は除外)」と「製造業務派遣の原則禁止(1年を超える常時雇用の労働者派遣は除外」という二つの大きな目玉が削除されることになりました。それをもって「骨抜き」と書いていた新聞もいくつかありました。すっかり骨がなくなってしまっているのは、ほかでもないその大新聞社だと思うのですけどね。

しかしこの二つが削除されたことで、既存の派遣会社の多くはホッと胸をなで下ろしたことでしょう。

「登録型派遣の原則禁止(専門26業務等は除外)」は、派遣会社の根本に関わる問題で、登録型だからこそ働く側も雇う側も繁閑に応じて柔軟な対応ができる大きなメリットだったからです。

労働組合やマスコミは登録型派遣は「企業側(雇用側)にとってだけ都合がいいシステム」と言います。しかしこれは働く側にとっても「介護や子育て中でフルタイムでは働けない」「資格をとるため勉強中だけど一定期間だけ働きたい」「近所のパートで働くより専門スキルを生かした仕事がしたい」など多くのメリットを感じている人の職をも奪うことになりかねませんでした。特に今後は少子化対策と高齢者問題を考えると、昔取った杵柄(スキル)で、希望する時間や期間で働ける派遣のメリットは大きいでしょう。

「製造業務派遣の原則禁止(1年を超える常時雇用の労働者派遣は除外」は、「派遣雇い止め」問題で一番大きな影響を受けたのがこれらの職種に就いていた人達でした。

それはこの職種には比較的男性が多く、しかもそれが世帯主だったり、家計の中心を担っている人達が多く働いていたからでしょう。しかし年々製造業が海外に奪われていく一番の原因はその労働コストであることは明かで、この製造業派遣をなくすことで、柔軟な従業員の確保ができなくなると、今後ますます日本の製造業が弱体化し衰退することが懸念されました。

ここでも一番の問題は、主たる家計を支える人達が多くこの有期で不安定な職に就いていた(就かざるを得なかった?)ことで、製造業派遣自体に問題があったとは思えなかったからです。

上記ふたつは削除されましたが、一方で規制が強化されたのは「日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止」と「グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止」の2つです。

「日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止」は一見すると派遣会社にとって大きな打撃のように思えますが、禁止されるのは「すべての職種」ではなく、一般的に短期間の仕事が多い職種に関しては除外されますので、事務系専門職に関して言えばそれほど問題にはならないでしょう。問題があるとすれば先に法案が削除されたと書いた「製造業務派遣」において、1ヶ月以内の短期派遣ができなくなったことにより、微妙な雇用調整が難しくなったということでしょうか。

例えば多くのメーカーでは期間工と呼ばれる一定時期に集中して工場を稼働させる時があります。そこで、すべての期間工が最初の約束通りに勤務期間を最後まで全うしてくれるといいですが、残り2週間を残して辞めてしまったような場合、2週間だけ替わりの誰かを雇うことができません。そのしわ寄せは残った人達でやりくりするようなことになりますが、まだ大企業ならやりくりができるかもしれませんが、中小零細企業なら果たして安全に工場稼働ができるのかという問題になってきます。

「グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止」は、いわゆる親会社が人件費抑制のため子会社や関連企業を作り、そこへ多くの正社員を移籍させて、給料を下げたり、解雇しやすくすることがないようにするためでしょう。ただ働く側にとってみると、退職後に慣れ親しんだ親会社へ時間や期間を定め、慣れた仕事をおこなうというのは双方にとって悪いことではありませんが、それはできなくなります。

また派遣労働者の待遇改善につながることとして、「派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化」「雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示」などがあります。

ちょっと読むと自分の給料と派遣会社に支払われる派遣料金の差額のマージン率がズバリわかるのか?と思えてしまいますが、もし派遣社員が一人二人ならそうなるかも知れませんが、3名以上いるとその平均マージンがわかるだけですので、あまりピンとこないかも知れません。

「雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、一人当たりの派遣料金の額を明示」は、すでに多くの派遣会社では「基準金額(時給)」として普通にやっていると思われますが、あらためて決まりました。

職種別の平均額を知ることで、同じ職種で派遣される自分がそれと比べてどうだとわかるのはいいことですが、まったく同じ職場の同じ職種ばかりとも思えず、様々な環境や条件によって職場が働きやすかったり、そうでなかったりすることもあります。また人によって持っていいるスキルや資格要件、経験度なども違うので、単に給料の額だけで比べてしまうのもどうかと思いますけどね。

公布されたのは4月6日で、実際の施行は6ヶ月以内のどこかということですから、おそらくキリのいいところで10月1日からではないでしょうか。


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