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柚月裕子 YUDUKI YUKO 既読書籍

006 臨床真理 005 検事の本懐
004 パレートの誤算 003 慈雨
002 朽ちないサクラ  001 最後の証人 


1968年岩手県生まれ。2008年、40歳の時に『臨床真理』で第7回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞を受賞し、作家としてデビュー。2013年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。2016年、『孤狼の血』シリーズ3部作の第1作『孤狼の血』で4回目のノミネートだった第69回日本推理作家協会賞を受賞。(Wikipediaより引用 2022年)


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006 臨床真理(角川文庫)

臨床真理
2008年の「このミステリーがすごい!」の大賞に輝き、2009年に単行本、2010年に文庫化された著者のデビュー作品です。著者の小説はすでに5作品を読んでいますが、このデビュー作品はかなりの力作だと思います。

内容的にツッコミどころはいくつもありましたが、ラスト近くで判明する意外などんでん返しとか、エンタメ性とともに、医者と看護師の間に入り、精神病など見えない敵に取り組む臨床心理士の苦労が偲ばれます。

主人公は、国立病院に勤務する新米の臨床心理士の女性で、ある福祉施設に入所していて傷害を起こした難しそうな青年のカウンセリングを受け持つことになります。

その青年と福祉施設で仲の良かった同じく入所している少女がある日腕を切り自殺を図ります。その自殺が信じられず、救急車の中で福祉施設の所長に斬りかかり、救急隊員などに怪我を負わせてしまいますが、精神錯乱の上の行為と言うことで医療病院へ収容されます。

その青年には、声に色が付いて見えるという不思議な能力があり、誰にも信用されず精神異常と判断されています。その声の色で相手が嘘をついているとか信じてくれているとかがわかります。

臨床心理士は、その青年に寄り添い、少女の自殺の真理を探し求めて奔走することになりますが、その方法が名刺も持たずに福祉雑誌の記者になりすまし、役所や企業の担当者に取材を申し入れ探りを入れるとか、高校時代の同級生で今は警察官になっている男性に非合法な協力を求めたりと、常識では考えられないリアリティのない場面も結構あってそういうところにまだ新人作家時代の甘さを感じさせられます。

★★☆

7月前半の読書と感想、書評 2024/7/20(土)

005 検事の本懐(宝島社文庫)

検事の本懐最後の証人」(2010年)から始まった「佐方貞人シリーズ」の第2弾の連作短編集です。出版は2011年に単行本、2012年に文庫化されています。

短編は、「樹を見る」「罪を押す」「恩を返す」「拳を握る」「本懐を知る」の5編です。

地方検察庁に配属された若い検事を主人公としますが、その主人公の父親が元弁護士で、顧問弁護士をしていた企業のオーナーが亡くなった時に業務上横領が発覚し逮捕されて実刑を受けるという過去があります。

主人公の父親は収監中に病気で死亡していますが、今回の短編の中でその事件と、発覚してから一切の言い訳をせず実刑を言い渡されることになった理由などが明らかになります。

その他、大掛かりな事件捜査のため東京地検に呼ばれて地味な仕事を担当しますが、その中で見逃されていた謎に気がつき、上司に報告するも相手にされず、結果的に「できないやつ」という汚名を着せられてしまいます。しかしそのときに上司に伝えたヒントが元になって事件は大きく動くことになります。

5編、それぞれ、派手な活躍などはなく、検事の地味な仕事が綴られていきますが、その中にある人間の思いをくみ取れる正統派検事としての活躍が秀逸です。

このシリーズは、すでに第3弾の「検事の死命」(2013年)、第4弾の「検事の信義」(2019年)が発行されています。また機会を見て読んでみたいと思っています。

★★★

2月前半の読書と感想、書評 2024/2/17(土)

004 パレートの誤算(祥伝社文庫)

2014年に単行本、2017年に文庫化された社会派ミステリー小説です。

タイトルの「パレート」とは、ビジネスパーソンなら聞いたことがあると思いますが、「パレートの法則」のことを指していて、別名「80:20の法則」とも言いますが、「特定の要素 20% が、全体の 80% の成果を生み出している」ということで、具体的には「20%の社員が利益の80%を稼いでいる」とか、「売上の8割は、2割の特定顧客からのもの」とか、「納税の8割は、2割の富裕層からなる」など経済活動の場でよく使われる法則で、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱したものです。

この小説の舞台は日本の地方都市(呉市がモデル)にある市役所の福祉保健部社会福祉課で、主人公はそこに所属する臨時職員の女性で、主に生活保護関連の仕事をしています。

生活保護とパレートの法則?ってなかなか結びつきませんが、事件が起きて刑事が市役所に尋ねてきた来た時に「生活保護を働き蟻の法則か」と漏らしたことがきっかけになっているようです。

「働き蟻の法則」とは、パレートの法則と少し違いますが、ひとつの働き蟻の巣には働く蟻と働かない蟻がいて、その中の働く蟻だけを集めてひとつの巣にすると、今まで働いていた蟻でも働かなくなる蟻が出現することで、その働く蟻と働かない蟻の割合は常に同じという法則です。

つまりどれほど熱心に生活保護受給者の支援をして自立させても、その分だけまた新たな生活保護受給者が増え、自立している人の数と、生活保護に頼らないとならない人の割合は常に一定だということをつぶやいたわけです。

また終盤に出てきますが、パレートの法則を挙げて、全体の事象のうち2割の人だけが影響を及ぼし、残りの8割の人は影響を及ぼさない、いなくても同じと言われているけど、それは間違いで、8割の人が無価値という意味ではなく存在意義を有しているは明らかだということが書かれています。

主人公の上司で生活保護受給者の自宅へ定期的に訪問するケースワーカーのひとりが何者かによって殺害され、やがて地域の暴力団との関わりなどが明らかになってきます。

生活保護と暴力団と言えば、生活保護費を搾り取る貧困ビジネスが有名ですが、そうした社会の仕組みなどがわかりやすく小説化されていて、ためになります。

ミステリーとしては、あまり上質とは思いませんが、「お仕事小説」として、また普段あまり馴染みがない生活保護の実体などについて知りたいならば、大いに役立ちそうです。

★★☆

4月後半の読書と感想、書評 2023/5/3(水)

003 慈雨(集英社文庫)
著者の小説は3作目となりますが、今回は前回読んだ「朽ちないサクラ」と同様に警察ものというか、正確には定年退職した元捜査一課の刑事が主人公のシリーズものではない独立した長編小説です。2016年に単行本、2019年に文庫化されています。

主人公は群馬県警に入りますが希望とは違い僻地の村民との関係が難しい駐在所に移動となりますが、そこで起きた事件を苦労して解決したことが認められ、県警本部に異動となって刑事になります。

そこで、幼女殺害事件が起き、容疑者を見つけますが、当時のあまり正確ではないDNA検査でクロとなり、本人はずっと否認したまま逮捕され裁判でも有罪が決まります。

しかし事件直後から長く留守にしていた容疑者の隣人が、その事件のあった日時に容疑者が自宅にいたことを目撃したことが判明し、えん罪の可能性があると上司に報告しますが、DNA検査の信憑性に疑義が出ると他の事件にも影響が出るので再捜査は握りつぶされることになります。

組織を守るため、また自分を守るために上司に抵抗できず、えん罪を見逃した16年前のことをずっと後悔していますが、退職後にその16年前の幼女殺害事件と非常によく似た事件が起きたことで、もしかすると当時見逃した真犯人が起こしたのではないかと苦悩します。

退職後は、仕事で向き合った死者の霊を収めるために妻とともに四国八十八か所霊場めぐりに出掛けますが、現職当時の部下からこの新しい事件捜査に協力して欲しいと頼まれ、お遍路を続けながら電話で連絡をとり続けます。

この小説では、犯人を除いて嫌な人は出てこず、また家庭も順調で、すごく恵まれた主人公です。世の中の半分ぐらいは嫌なヤツと思っているので、これほどいい人ばかりが登場すると、ちょっと真実味が薄れて感じます。

あと、四国お遍路のことも詳しく書かれていて、おそらく実際に現地に赴いて距離感や風景などを身を以て感じられたのでしょう。

★★★

2月後半の読書と感想、書評 2023/3/1(水)

002 朽ちないサクラ (徳間文庫)
著者の作品は「最後の証人」(2010年刊、文庫2011年刊)を2012年に読んで以来7年ぶりとなります。

この作品は、2015年刊(文庫は2018年刊)の長編小説で、女性作家としては割と珍しい、警察ものミステリー小説です。

元々、法廷もの小説がお得意な著者ですから、その延長線というか手前にある警察署や刑事、公安といった知識もお持ちなのでしょう。

タイトルの「サクラ」は一般的には警察をイメージしますが、ここでは警察内部の符丁として使われているらしい公安警察を指しています。

女性作家らしく、主人公は民間企業を辞めて、地元に戻り、地方の警察署に事務職員として勤務する女性で、その主人公の親友だった女性新聞記者が何者かに殺害されたことで、事件に首を突っ込んでいくというパターンです。

警察と公安(警備局)との関係など、内部の事情はあまり外部に出てくることはありませんし、まして最近の骨抜きされたメディアが警察を敵に回すようなスクープを掲載するとも思えなく、リアリティはどこまであるのかというのはよくわかりません。

しかし過去に現実に起きた、ストーカー殺人事件や、新興宗教団体のテロ活動など、身近なテーマも盛り込み、サスペンスドラマとしてうまく仕上がっています。

終わり方が、主人公の続編も期待できるような感じでしたが、現在のところ、出てはいないようです。

★★☆

11月後半の読書と感想、書評 2019/11/30(土)

001 最後の証人 (宝島社文庫)
著者の柚月(ゆづき)氏は43歳、2008年のデビュー作品「臨床真理」で「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞されています。

この「最後の証人」(2010年)は、いわゆるヤメ検と呼ばれる元検事だった弁護士佐方貞人を主人公とする法廷ミステリー小説です。

本のタイトルに「最後の証人」とあるので、読み始めてすぐに「最後に登場する証人が判決をひっくり返すのだろう」というのが容易に想像でき、それまではその伏線ということになります。

ストーリーは飲酒運転事故により亡くなった子供の仇を討とうする両親が中心になって展開されますが、その中で起きる殺人事件の被告から弁護の依頼を受けたのが上述の佐方弁護士です。

この佐方弁護士がなぜ検事を辞めたのかという理由も出てきますが、警察や検察局の隠蔽体質については昨今のよく報道されている通りでまったく変わっていません。

この小説に書かれているような、警察や検察の身内かわいさによるもみ消しなどは全国どこでも起きていて不思議ではありません。佐々木譲氏の北海道警シリーズにもそのような警察内部の犯罪がよく書かれています。

この小説の場合、よく考えて構成が作られているものの、ちょっと内容自体が現実的ではなく、ネタバレするのでここでは書けませんが、かなり無理をしているところがあります。そうしたところがちょっと惜しいかな。

このような法廷ドラマ(小説)は特に海外モノでよく見掛けますが、有名なところでは「十二人の怒れる男」「評決のとき」「推定無罪」「告発の行方」などヒット映画にも多いです。それらの中でも私の一番のお気に入りは「スリーパーズ」で、これも最後に登場する証人の発言が一発逆転のキーとなります。その最後の証人であるダスティン・ホフマン演じる牧師はたいへんよかったです。

4月後半の読書 2012/5/5(土)


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