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リストラ日記アーカイブ 2017年11月
読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです
1170 10月後半の読書と感想、書評 2017/11/1(水)  
1171 木造建築の明るい未来 2017/11/4(土)
1172 最近見た映画(テレビ録画版) 2017/11/8(水)
1173 玄関ドアクローザーをDIYで交換 2017/11/11(土)
1174 11月前半の読書と感想、書評 2017/11/15(水)
1175 人工股関節手術のその後とまとめ 2017/11/18(土)
1176 フルーツと糖質制限 2017/11/22(水)
1177 年間8万人の行方不明者の行方 2017/11/25(土)
1178 11月後半の読書と感想、書評 2017/11/29(水)

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10月後半の読書と感想、書評 2017/11/1(水)

1170
黒書院の六兵衛 (文春文庫)(上)(下) 浅田次郎

2012年頃、日本経済新聞に連載されていて、その後2013年に単行本、2017年に文庫化された時代劇長編小説です。

あらすじは、江戸幕府が終わり、新しい明治政府に江戸城を引き渡す段になったところ、どうしても江戸城から動かない武士がいて、なんとか円満に新政府に引き渡したい勝海舟など旧幕臣と、けしからんという新政府側でもめます。

その問題となった人物は不可解で、金で旗本の地位を買ったとされる一方、勤務はいたって真面目で堕落し腐りきっていた江戸末期の多くの武士達とは違うなにか本物の武士の魂をもっています。

そうした一本筋が通った謎多きラストサムライと、江戸から東京へと移り変わる混乱した世相を面白おかしく仕立てたもので、実際に活躍した歴史の人物が多く登場して楽しめます。

但し、江戸城の中や、しきたりなど、なかなか頭の中でイメージがしにくく、読んでいてもあまりワクワク感がなく、退屈この上なく、途中で断念しそうになりました。著者の作品はいつも一気に読み進められるのに、これは珍しいパターンです。

新聞連載小説と言うことで、一気に読むのではなく、かみしめながらじっくりと何ヶ月もかけて読むとまた違うのかも知れませんが、この作品はお得意の泣かせの場面もなく、ちょっと著者の作品らしくないなって感じです。

★☆☆

著者別読書感想(浅田次郎)


         

夢をかなえるゾウ 水野敬也

200万部を超えるベストセラーになった著者の三作目の小説というか、ライトノベルというか、人生の指南書というか、ビジネス本というか、よくわからないジャンルの本で、2007年に発刊されています。

またこの作品を原作として小栗旬主演でテレビドラマや、アニメ化(声優に草なぎ剛や笑福亭鶴瓶)もされていますので、知っている人は多いのではないでしょうか?

ヒットすると続編が出てくるのは世の常で、2012年に「夢をかなえるゾウ2 ガネーシャと貧乏神」、2014年に「夢をかなえるゾウ3 ブラックガネーシャの教え」が刊行されています。

内容は、しがないサラリーマンの若い独身男性がインド旅行に行った時、買ってきた置物(ガネーシャというヒンドゥー教の神)に乗り移った神様とのやりとりがメインで、「お金持ちになりたい」「今までとは違う自分になりたい」という男性の願いをかなえるため、なぜか関西弁あれこれ指示を出していきます。

その指示を正当化するため、過去の偉人や成功者、大金持ちの言葉や行動様式を引用することが多く、その点はいかにも軽い新書のノリがあります。

ま、そういう意味では、新書やビジネス書によくありそうな「こうすれば年収3000万円!」とか「あなたの人生が劇的に変わる!」とか「金持ち父さん、貧乏父さん」という本と変わりなさそうですが、それがアニメを見ているように二人のコミカルなやりとりを通じて面白くすっと入ってくるような感じで書かれているのが特徴的です。

読みやすい本で読書慣れしている人なら1〜2日で軽く読み終えてしまうでしょうけど、活字離れした若い人にはアニメや映像、そしてオーディオブックまで準備されているので、それなりに幅広い需要があるのだと思われます。

でも結局は読んだだけでは、金持ちにもなれないし、自分も変われません。成功するには継続と行動力であることをもっと伝えるべきでしょうけど、なにかを50年間継続したからといって、自分が思い描く結果になるわけでもなく、結局は面倒なことでもなんでも進んでやる、その人のやる気次第なのかな。

★★☆


         

深川黄表紙掛取り帖 (講談社文庫) 山本一力

2002年に単行本、2005年に文庫化された著者お得意の江戸時代の庶民を描く時代劇小説の連作短編集です。

江戸の裏社会で恨みを晴らすため暗殺を手掛ける必殺シリーズはバイオレンス時代劇ですが、こちらも裏家業には違いないですが、殺しなどは一切なく、アイデアと知恵で阿漕な金持ちを懲らしめたり、困っている商売人を救う手立てを考えたりする温厚な裏家業集団です。

その主役を張るのは、それぞれに商売をしている4人の若者で、うち一人は男装の女性というちょっと魅力的なメンバーです。

時は生類憐れみの令が出された頃ですので、第5代将軍徳川綱吉の貞享から元禄時代と言ったところです。

この著者の描く江戸庶民の図は、直木賞に輝いた「あかね空」など、まるで実際に見てきたかのように生き生きと細かく描写されています。

緻密な時代考証をおこなえば、違っている点などもあるのでしょうけど、そうした細かなことを言わなければ今から320年前にタイムスリップができて楽しめます。

★★☆

著者別読書感想(山本一力)


         


悪意のクイーン (徳間文庫) 井上 剛

京大卒で二足のわらじを履き、主としてSF小説を発表してきた作家さんで、2014年に発刊されたこの4作目の小説はSFではなく、いわゆる後味の悪い女性同士の憎しみのミステリー小説です。

ママ友の輪の中で、ひとり浮いてしまっている恵まれた環境にいる若妻が主人公です。この若妻とは別で、ランクのが高い女学校の中学生ももうひとりの主人公です。

このふたりの女性の人生が狂い始め、憎しみや絶望が沸き起こり、そして最後にはもう一名の女性が加わって複雑に絡み合っていくという流れです。

ま、女性の恨み辛み、極度の憎しみを男性が描くとこういう事になるのでしょうけど、それにしてもやりすぎって思います。

正直にこれを読んで共感できたり、面白かったという人はほとんどいないでしょう。

ストーリー的にも同時に二つ(二人)の話しが同時に進行する、ありふれたパターンで、特に秀逸と思えるところがありません。

自殺や、飲酒運転による交通事故死、不登校、家庭崩壊、子育てヒステリー、売春、殺人とミステリー小説では定番とも言えるこれらを散らばめただけという感じもします。

才能ある作家さんなのでしょうから、もっと深いものを期待したいところです。

★☆☆


【関連リンク】
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
 9月後半の読書 象の墓場、ナイト&シャドウ、美しい家、お別れの音、偽悪のすすめ
 9月前半の読書 危険なささやき、会社の品格、男の勘ちがい、安土城の幽霊


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木造建築の明るい未来 2017/11/4(土)

1171
「もしも私が 家を建てたなら〜♪」は43年も前の1974年に大ヒットした小坂明子の「あなた」って曲ですが、私がもし家を建てるなら、大きな地震にも耐えられる頑丈な鉄筋コンクリート製の家がいいなと思っていました。

しかしここ最近の建築トレンドを見ていると、今までのようにガッチリとしたコンクリート製ではなく、世界中で環境に優しく、しかも耐震性にも配慮した木造建設が注目されているようです。

住宅建築私が現在住んでいる家は25年前の建て売りの木造住宅で、安普請ゆえ、かなり傷みが激しくなってきています。

これが住宅メーカーのプレハブ住宅だと、もう少し経年劣化は防げるのでしょうけど、いずれにしても日本の木造家屋は湿度や気候のせいもあり、よほどしっかりした手入れをしない限り、そうそう長持ちするものではありません。

かと言って、鉄筋コンクリートや鉄骨で作られたビルやマンションも、修復を重ねても内部の配管の老朽化や、コンクリートのひび割れによる鉄筋の腐食、さらには時代の変化で電気容量やIT化設備の刷新など、様々な修復や大幅な補修が必要で、結局は40〜50年サイクルで大規模な改修をするか建て替えが必要な状況です。

都心でも老朽化しつつある昭和時代に建設されたコンクリートの高層ビルや高架道路などインフラが次々と建て替えられています。

浜松町の「世界貿易センタービル」建て替え報道に、「悲しい」「寂しくなるね」の声(@niftyニュース)

三菱地所/東京駅前に390mの超高層ビル、2027年度開業(流通ニュース)

首都高老朽化の象徴、造り替えへ 40か月、一部通行止めで(乗りものニュース)


なぜ木造建築が見直されているかというと、木造建築とコンクリート製建築では、建て替えをするときに出る廃材の量と処理法に大きく違いがあります。

コンクリートは基本再利用ができないため、現在は粉砕して産業廃棄物として海か山などに埋めるしか手立てはありません。つまり高額な処分費用がかかり、しかも環境に優しくありません。

一方、木造建築の木材は再利用が可能で、端材にしても細かく砕いてチップにして新たな建材として使える合板にしたり、最終的には燃やして発電に利用するなど、ゴミとして廃棄する必要はなく、リサイクルに活用できます。

さらに山の木を利用することで、それまで放置されて荒れ放題になっていた山が、計画的な伐採と植林と間伐がおこなわれ、本来の山の力を取り戻すことができます。

そうした環境に優しい木材の利用が活性化しています。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


国立競技場新国立競技場も当初の鉄骨とガラスを組み合わせたようなデザインから、木をメインに使ったものへと変わりました。

先日読んだ「里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く」では、新しい建材としてのCTLという合板が取り上げられていて、今後新建材としてブレークしていきそうな予感です。

木造だと「高層建築ができない」とか、「火災に弱い」とか、「耐久性が」とか、「腐食する」とか心配する声もありますが、近年の加工技術や建築技術で、一定条件の下では強度や安全性が鉄筋コンクリートと遜色ないレベルまできているそうです。

次世代の高層ビルは、木でつくられる──世界各国で進む木造高層建築プロジェクト(WIRED)
現在、シカゴ川沿いの敷地に、すべてが木でできた新しい様式の高層建築物を建設しようとするプロジェクトが進行中だ。この「リヴァー・ビーチ・タワー」は、ブナ材でつくられた細長い形の80階建てのビルで、シカゴの暗く無表情な地平線を背景に金色のシルエットが浮かび上がるようデザインされている。


日本のオフィス街に木造高層ビルが立ち並ぶ日は来るか?(YOMIURI ONLINE)
国や林業界が今、熱い視線を送っている新しい建築用木材がある。CTL(クロス・ラミネテッド・ティンバー、直交集成板)と呼ばれる厚板パネルだ。従来の木材では難しかった高層建築物にも利用でき、欧米ではすでにCTLを使った木造ビルがいくつも建っている。なかには80階建ての構想も。日本でも建設事例が増え始めており、2020年東京五輪・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場(杜のスタジアム)にもCTLが採用される見通しだ。

そのCLTを使い、耐震、耐火、腐食などに厳しい条件が課される高層ビルが建てられるようになれば、一般住宅への利用もまったく問題なくクリアできそうです。

プレハブメーカーも従来のツーバイフォー工法から、こうした木の新素材を使った耐震、耐火対策の住宅を作るようになってきそうです。それにはCLTが大量に作られて値段がこなれてくることと、各種の古い建築規制が緩くなることが条件でしょうね。

その木材はどこから調達するの?ってことですが、いま地方再生事業として、海外の木材に押され、放置されている日本の森林が注目されています。なんと言っても国土の2/3が森林で、森林率は7割という世界でもトップクラスの森林大国です。そうした資源をうまく生かさなきゃバカです。政府が推し進める地方再生計画にもうまく合致しそうです。

野菜も地産地消が良いと言われていますが、値段が安いからと言うだけで、経済が豊かでない国の森林をハゲ山にして安い木材を輸入するより、木材も地産地消でも十分にやっていけるってことです。森林は将来の輸出商品になるかも知れません(すでに国内の木材の多くは建築ブームの中国へ輸出されてます)。

日本の林野業の現状については、三浦しをん著のお仕事小説「神去なあなあ日常」や、それを原作にした映画「WOOD JOB! 神去なあなあ日常」をご参考に。但し映画のヒロイン長澤まさみのような女性が、そうしたところであなたを待ってくれているという甘い考えは持たないようにしましょう。


【関連リンク】
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1019 老人ホームについて調べてみた(1)
892 火事と賠償


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最近見た映画(テレビ録画版) 2017/11/8(水)

1172
男性の好きなスポーツ(原題:Man's Favorite Sport?)1964年米

監督は「紳士は金髪がお好き」(1953年)、「リオ・ブラボー」(1959年)など多くの映画を手掛けたハワード・ホークス、出演は「ジャイアンツ」(1956年)や「武器よさらば」(1957年)など多くの作品に出ている二枚目俳優ロック・ハドソン、ポーラ・プレンティスなど。

魚釣りの本まで出している独身イケメン主人公は実は釣りの経験はなく、まったくのド素人だったという、なにか政治に全くのド素人が政治家先生をやっている今となにか共通するところがあるなぁと思えるコメディ恋愛映画です。こういう趣向はアメリカ人が大好きみたいですね。

その釣り素人の主人公が、ひょんなことから釣り大会に出場することになり、偶然やたまたまのラッキーで大物の魚を次々に釣り上げて見事優勝するところがいかにもコメディです。

そうした中で、婚約者がいる主人公ですが、釣り大会の主催者側の美女と戯れているところを見つかってしまい、怒った婚約者は帰ってしまい、一度は落ち込みますが、その新しい美女との恋愛感情が湧き出してというハッピーストーリーです。ヤレヤレって感じ。

1964年というと、日本が高度成長期に入り始めた頃で、東京オリンピックが開催された年です。国を挙げてのイケイケムードの日本に対し、会社に縛られず、個人主義でスマートな恋愛にも精を出すというアメリカンスタイルが日本人には驚きというか新鮮に映ったかも知れません。

★★☆

                

スターリングラード(原題:Enemy at the Gates) 2001年米、独、英、アイルランド合作

監督は「愛人 ラマン」(1992年)、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」(1997年)などの監督をしたジャン=ジャック・アノー、出演者はジュード・ロウ、ジョセフ・ファインズなど、ソビエトが舞台の映画ですが、俳優は英国人やアメリカ人が多くを占めています。

内容は、第二次世界大戦時にソビエトの狙撃兵として活躍し、英雄となった実在の人物ヴァシリ・ザイツェフを主人公とし、ドイツ軍との激しいスターリングラードの攻防を描いた作品です。

羊飼いで、オオカミなど子供の頃から撃ってきた猟師でもあった主人公が徴兵され、激しい消耗戦を繰り広げるスターリングラードへ投入されます。

そこで、たまたまドイツ軍の将校を遠くから銃で仕留めたところを評価され、その後もドイツ軍将校を狙撃する任務を与えられますが、その期待に応え次々と成果をあげていき、次第にソビエトの英雄に祭り上げられていきます。

そのような事態を打破するため、ドイツ軍はその狙撃手を殺すためにベテランの狙撃手を送り込み、緊迫した1対1の対決が始まります。

この二人の対決は、ドキドキハラハラ、胃が縮むようなシーンです。

そうした戦場の中でも主人公と家族を殺されて兵士に志願した女性とのあいだに愛が芽生え、多くの兵士がゴロ寝している兵舎の中での睦み合いなど大作映画らしいエンタメ要素も盛り込まれています。

しかし、完全なるソビエトの歴史を描いた作品をロシア抜きで制作し、映画では完全に悪役に徹しているドイツが、この映画の制作に加わっていたりとなかなか興味深い構成です。

実はこの映画を見るのはこれが3回目ぐらいなのですが、第二次大戦を描いた映画、そして狙撃手を描いた映画としては、私の中ではかなり上位にランクされるものです。

★★★

                

誘う女(原題:To Die For) 1995年 米

監督は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)などがあるガス・ヴァン・サント、主演はトム・クルーズの前妻だったニコール・キッドマンで、この映画ではゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しています。

1990年に実際に起きた殺人事件を元にしたストーリーで、アメリカの片田舎で産まれた美貌の女性が、金持ちの家の青年を誘惑して結婚、さらにテレビに出たい、有名になりたいと、まずはそのきっかけを作るために地元の小さなCATV会社に押しかけて、天気予報キャスターになります。

そして取材で地元高校へ行き、そこで知り合った高校生を誘惑し、邪魔になってきた夫を殺害するように仕向けていきます。このあたり自分の野望のためには手段を選ばない、ちょっと精神がいってしまったような女性の狂気をを感じるところです。

夫を殺され悲観に暮れる美貌のお天気キャスターとして、多くの取材が押し寄せてきます。その取材には健気に対応し、狙い通りに全国的に有名になっていきますが、同時に警察の手も伸びてきます。

そしてやがて犯行の裏にこの妻がいたことが高校生の自供で判明し、警察が逮捕する直前に、激怒した殺された夫の父親(イタリア系)が、マフィアに電話をしてこの妻だった女の殺害を依頼、そしてそれが実行されるというアンハッピーなラストシーンで終わっていきます。

欲と野望に燃えた女の怖さをたっぷりと思い知らされる内容で、出てくる男はすべなく言いなり状態で、どこかの国の首都の長と、その人気にあやかろうと蟻のごとく群がり集まっていた男どもの姿がダブって見えます。

もちろん当時20代後半のニコール・キッドマンの美貌は、演出の一環でしょうが、ちょっと厚化粧が気になりましたが、その若さだけでなく、自信に満ちあふれたセレブな雰囲気も、緑のたぬきと揶揄される方々とはまったく違い、男性からすれば何を捨ててもと思えるぐらいにチャーミングです。

★★☆


                

紙の月 2014年松竹

原作は角田光代の小説で、監督は「桐島、部活やめるってよ」などの作品を手掛けた吉田大八、主演は宮沢りえ、その他出演者に池松壮亮、大島優子、小林聡美など。

原作の著書(または原作とした映画)に「八日目の蝉」があり、それは母性愛から不倫相手の妻の子を誘拐するという犯罪に手を染める女性が描かれていますが、こちらは歪んだ恋愛感情から、犯罪を繰り返すことになる女性を描いています。

女子銀行員が銀行のお金を不正に取得して男に貢いでいたという事件は古くからあり、有名なのは1981年に起きた三和銀行オンライン詐欺事件というのがあります。

著者も、こうした女性が巨額の詐欺を働く場合には、必ずそれを貢ぐ男がいることを知り、それをヒントにこの小説を書いたということです。

内容は、地味で真面目な既婚女性が、銀行の契約社員として働いていましたが、顧客の家で大学生の孫と出会い、その後その男性と何度か会ううちに恋愛感情が芽生え、肉体関係に溺れるようになっていきます。

男の大学生は学費が不足して中退をすることを告げたところ、女はクルマを買うつもりで貯めていたと言って200万円をポンと渡します。そのお金は、顧客から預かった預金をうまく操作して詐取したものです。

一度悪に手を染めると、自転車操業で次々と銀行の盲点を突いて顧客の預金を詐取し、金額も大きく膨らみ、それを男との豪遊に使っていきます。

しかし男はと言うと、大学のサークルの若い女性と付き合っていて、やがて自分は騙されたと気がつきますが、その時には銀行内で事件が発覚し、大問題となってしまいます。

主人公のわずかな不審な行動から不正を感じ、顧客のところへ出向いて詐欺に気がつく、お局ベテラン行員役の小林聡美のなんとたくましくて凄まじいこと。

犯罪を犯した主人公は、証拠を突きつけ問い詰められた銀行の会議室から逃げ出し、東南アジアのタイ?の街中に現れて終わります。

そう言えば上記の三和銀行オンライン詐欺の犯人伊藤素子も逮捕前にマニラへ逃亡しましたが、マニラで拘束され日本に送還されました。

映画では宮沢りえの激しいベッドシーンが何度も登場し、しかも珍しい悪女役ということで人気を集めました。

スケールは違いますが、上のニコール・キッドマン主演の「誘う女」と、綺麗な悪女が大胆に悪事に手を染めるという共通したところがあります。

★★☆


【関連リンク】
1167 最近見た映画(TV録画含む)
1114 最近見た映画(2017年4月)
1106 最近見た映画(2017年2〜3月)


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玄関ドアクローザーをDIYで交換 2017/11/11(土)

1173
25年前に建売一戸建て住宅として購入した自宅の玄関ドアのクローザーがとうとう壊れてしまいました。ドアの開け閉めの時に速度をゆっくりと調整してくれるアレです。

家も古くなってくると、まずキッチン周りに水が溜まり、内壁が腐ってダメになり修理(大工さんに依頼)、次に洗面台のほうろうにひびが入って洗面台ごと交換(DIY)、浴室のタイルがひび割れし、そこから水が漏れ出したのでユニットバスに交換(業者に依頼)、その他、屋根と壁の塗装は専門業者さんへ、キッチンの水栓交換や、トイレの水栓器具交換などは随時DIYで直してきました。

と、今までは自宅の補修や修理は、エアコンの交換以外は水回りの修理や補修がほとんどでしたが、ドアクローザーがダメになるという初めての経験をしました。

自宅は準防火地区にある関係で、玄関ドアは防火対策用の鉄でできた頑丈なものが付いていて、ドアクローザーがうまく効かないと、もの凄い勢いでバッターンと轟音を轟かせ、家全体が震えます。

最初はクローザーの調整がうまくいっていないものと、あれこれ器具を調節してみたのですが、以前のようにうまくスムーズに閉まってくれません。

よくよく見ると、クローザーの調整弁付近にオイルがにじみ出ているのを見つけ、ドアをゆっくりと閉じてくれる油圧が抜けてしまっていることに気がつきました。

ドアクローザー

そこで、ネットで同じメーカーの同じ製品があるかと調べてみたところ、そのメーカー(NHNニッカナ)は2009年に会社を廃業していて、製品はすでに販売されていません。

う〜む〜、、、こりゃ困ったぞ〜と思っていろいろ調べたところ、リョービから汎用の取り替え用ドアクローザーが出ているのを発見し、さらに重い鉄製ドア用のものもあることがわかり、さっそく購入してみました。

ドアのタイプには開き方によって「スタンダードタイプ」と「パラレルタイプ」の2種類があるのと、開く方向を示す「右勝手」と「左勝手」の区分、それにドアの重さによって何種類かに分かれていたりしますので、購入時には交換するクローザーを事前に調べておく必要があります。

このクローザー修理も大工さんに依頼すれば、おそらく工賃込みで2.5〜3.5万円はすると思いますが、DITでおこなえば、うまく取り付けられないというリスクはあるものの、製品価格(Amazon購入価格6,600円)だけで済みます。

購入したのはこれ
リョービ スチールドア 万能取替え用 ドアクローザー S-203P シルバー

木製ドアやアルミドア用ならもっと安い製品がありますが、鉄製ドアの場合は重いのでこのスチールドア専用のクローザーが必要です。

細かなことはわかりませんが、もし業者に頼んでも元と同じ製品はないので、こうした汎用製品を使うことになるようです。あとは取り付けが素人にできるかどうかです。

ままよと、発注したものの、送られてきた製品に同梱されている大きな説明書を読んでもさっぱりわかりません。いろいろと書き過ぎです。

リョービ スチールドア説明書

この説明書にびっしりと取り付け方が書かれていて、さらに取り付け後の調整用の説明書がまた別にあります。一応は絵入りで親切なのですが、初めて聞く用語もあり、絵の向きも統一性がなく混乱します。

書き方が変なのか、読解力が不足しているのかわかりませんが、製品名に「万能」と書かれているように、たいていのドアに対応できる汎用品のため、説明書がややこしくなっているようです。

例えば、ドアは引いて開けるドアと押して開けるドアがあり、このクローザーはその両方に使えるようになっています。それで取り付け方法等が変わってきたりします。

またクローザーの片方はドアの上のドア枠部分にブラケットを固定しますが、その固定する場所の幅が広い場合と狭い場合があり、この汎用品は自由に幅が調整ができるようになっていて、それだけ部品点数や可動部分が多くなっていることもわかりにくい点です。

読んでもわからなければ、実際にまず付けてみようと、古いクローザーを外して、新しいクローザーをあててみて、勘でだいたいこういう形になると判断していきます。ま、いい加減なものです。

ドア枠とドアにクローザーをくっつけるためのネジ穴は、新しいクローザーに付属していたネジとでサイズが違い、説明書ではドリルでネジのサイズまで穴を少し拡げないといけないようです。鉄のドアとドア枠だけに穴開けはちょっと大変そうです。

それは面倒だなと思い、前のクローザーで使っていた古いネジが使えないかと試したところ、新しいクローザーにも問題なく使えそうなので、ネジは古いものを使うことにしました。そうすればドア枠やドアの穴を加工しなくて済みます。

細かなところでは説明書を見ましたが、あとは勘とこんな取り付けイメージだったと思い浮かべながら、サクサク組み立てていくと、30分ほどで意外とスムーズに装着できました。

ドアクローザー設置

取り付けた後は、開いたときの停止位置と、閉まる時のスピード調整をおこなえば完成です。

これで、ドアから手を離して閉めても轟音を立てて閉まることもなく、ようやく平和な日々を送れそうです。

リョービさん、本当に良い製品を出してくれてありがとう!あとは説明書を素人向けにもうちょっと工夫してくれれば100点満点です。線だけで描かれた絵よりも、実物の写真で載せてくれた方がわかりやすいかもです。


【関連リンク】
788 浴室のユニットバス化リフォーム工事完了
670 我が家のテレビ視聴環境改善 準備編その1
507 洗面化粧台をDIYで交換 その1準備編


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11月前半の読書と感想、書評 2017/11/15(水)

1174
ブラックボックス (講談社文庫)(上)(下) マイクル・コナリー

2012年に米国で発刊され、翻訳版文庫は2017年に出た、翻訳版としてはハリー・ボッシュシリーズの第16作目の邦訳最新刊です。ちなみに米国では現在シリーズ20作目までが刊行済みです。

タイトルのブラックボックスとは、航空機に搭載されていて事故が起きた場合にその原因となる情報が詰まっているブラックボックに例え、事件の捜査で不明なことが一気に解明できるブラックボックスのような存在がどこかにあるということを示唆しています。

すでに定年延長契約期間に入っているハリー・ボッシュは未解決事件捜査担当のままで、今回は1992年に起きたロサンゼルス暴動の際、デンマークから取材に来ていた女性記者がLA管内で何者かに射殺されていた事件についてスポットをあてます。

1992年は「ナイトホークス」で、ハリー・ボッシュシリーズが始まった年でもあり、当時ボッシュはLA警察の殺人課刑事で、まだ暴動が冷めない中、治安維持のため派遣されていた州兵に守られて、女性記者が殺害された現場へ行き、最初に現場検証をおこなっていましたが、その後の捜査は別の刑事に移っていました。

1992年のロサンゼルス暴動は、黒人のロドニー・キングがスピード違反で捕まった際、白人警官に度を超す暴行がなされ、その行為がビデオに撮られ、何度も繰り返して放映されました。ところが法廷では暴行を加えた警官が無罪となり、黒人達が怒りの声を上げ、やがて焼き討ちや強盗、殺人などへと発展していきます。

数少ない20年前の事件の証拠や関係者をたどり、何十年かぶりに表に現れた拳銃から、やがては1990年の湾岸戦争にまでたどり着きます。そして殺されたデンマークの女性記者もその湾岸戦争を取材しています。

しかし警察署の中では、白人女性の未解決事件だけが重点的に捜査されているという噂が出ては困ると配慮があり、それを捜査するボッシュに圧力がかかります。

その他、多感な年頃の娘や、恋人と強姦罪で刑務所にいるその恋人の息子など、プライベートな諸々も絡み合いながら、60過ぎのボッシュが精力的に動き回り、最後には死の一歩手前まで追い詰められていきます。

それだけにわかりやすい勧善懲悪ドラマですが、アメリカの暗部をこれでもかと引きずり出すスタイルはアメリカ人にとってはあまり心地よいものではないだろうなと心配してしまいます。

★★☆

著者別読書感想(マイクル・コナリー)


         

老後に本当はいくら必要か (祥伝社新書192) 津田倫男

著者は私と同年代の方で国立大学を卒業後にアメリカの大学でMBAを取得し、外資系企業を渡り歩き、その後独立して企業アドバイザーというよくわからない意味不明な仕事をされている方で、「意識高い系」の先駆者とも言える方です。

この著書は2009年に書かれたもので、ちょうど民主党政権が与党となって、世の中これから大きく変わるぞーと意味もなく、リーマンショックが世界を飲み込もうとしている中、すがるような思いで新政権に期待をしていた時代です。

なので社会保障や医療制度、雇用環境など当時から変わった話しなどもありますが、言わんとすることは今でも十分い通用するノウハウが書かれていて参考になります。

特に、ファイナンシャルや証券について、プロフェッショナルな会社員が勧めるものには素人は食いつかないことや、ハイリスク・ハイリターンではなく、ハイリスク・ローリターンな投資案件なども実際にあるということを、わかりやすく説明し書かれています。

つまり、通常のサラリーマンなら、現在なら63〜65歳から年金が支給されるので、定年退職後からそれまで間食いつなげるだけのものがあれば、まずなんとかなるものだと。

次に夫婦で、平均寿命を考えて、年金だけでは不足する分をできるだけ早くから貯金するか、年収から考えて生活レベルを落とすか、あるいは持ち家があるならそれを担保にして借金をするなど、方法はいくらでもあると。

勧められるがまま、下手に投資をして、せっかくの貯金や退職金を減らしてしまわないよう、どういった投資がいいか、分散方法としてどういうのがいいかなど。

いつまでもお金のことで老後を不安がっても仕方ないぞ。せっかくだからお金のことは忘れて楽しい老後を送ろうといったところが著者の言いたいところでしょうか。

今の高齢者が老後の不安を感じるのは、いつ年金が減らされたり、医療費負担が増やされたり、消費税が拡大されたりするか?というのがまったく未知数で、真っ暗でしかも霧深い険しい道を手すりも道しるべもなく歩かされているようなものだからです。

政治家や学者が「年金財政破綻」「年代格差」「医療費の急増」などと高齢者をおびえさせる話しをしている限り、高齢者のタンス預金からお金が出てくることはなく、せいぜいオレオレ詐欺業界を潤すだけでしょう。

ま、この問題は、一言、いや1冊の新書ぐらいでは結論が出るわけもなく、毎年のようにこのテーマで新しい新書が出てきていますね。

★☆☆


         

夢を売る男 (幻冬舎文庫) 百田尚樹

2013年に単行本、2015年に文庫化された長編小説で、出版業界と自分の作品を出版したいと思う人達を皮肉ったブラックコメディ小説です。

なにかと作品以外で話題が多い著者ですが、そのせいで、読む前から毛嫌いされてしまうリスクがあり、お互いに不幸なことです。

それにしても出版業界というのは再販制度や取次店制度などに守られていて、なかなか一般人にとっては馴染みが薄く理解しがたい業界ですが、そうした内幕を容赦なく暴露しています。

出版業界は出版不況のまっただ中で、現在は過去の資産を食い潰していく事態に陥っていますが、確かに今の若者にはお金を出して本を買い、苦労しながら面倒な文字を追わなくても、テレビもあればネットもあり、いつでもどこでもスマホさえあればみたいものが見られ、動画であろうと調べ物であろうとなんだってできてしまいます。

そりゃ、若者が読書離れしても不思議ではありません。

それに今まで熱心な読者層を占めていた団塊世代以上の人達は、老いて年々その数は少なくなっていき、また仕事からも離れ、通勤中や出張中に本を読む機会も減っていきますから、新しい読者が増えない限り書籍の売り上げは下がり続けます。

一方ではこれほど出版不況の中でも、自分が書いた作品を世に問いたいとか、人に著書があることを自慢したいと願う人も後を絶たず、それらをうまく結びつけてみなハッピーになろう!というのが、この小説の主人公です。

主人公は元名門出版社で数多くの名作や著名作家の作品を世に出してきましたが、年々下降していく書籍売上に早く見切りを付けて、それまでの経験を生かし、口八丁手八丁で自分でお金を出してでも出版したいと思う人達に、その夢を売っていきます。このお手並みが見事言うか面白い。

新聞を読んでいると「自費出版」の広告がよく出ていますが、この小説では、おとりの「新人文学賞」に応募があった中から、無料で作品が出版される大賞に選ばれなかった人達に対して、出版社と折半で出版しないかと持ちかけるわけですが、実は出版にかかる経費は個人が負担する金額の何分の一で済ませるという一見すると阿漕な商売です。

相手の懐次第で、100万円〜200万円を支払ってもらい(原価は30〜40万円)、1千部を刷り、そのうちの何冊かはちゃんと書店に配本して、著者に対して「もしかするとベストセラーになって増刷に次ぐ増刷になるかも〜」という夢を与える商売と考えると、確かにそれもアリかなと。

そうした出版社が生き残りを賭けた様々な仕掛けをこれからもやってくるぞという、業界内幕暴露小説でした。

★★☆

著者別読書感想(百田尚樹)


         

ふくわらい (朝日文庫) 西加奈子

2012年に単行本、2015年に文庫化されたなんとも不思議な小説です。

主人公は冒険作家でほとんど家にはいなかった父親と家政婦に育てられた女性で、早くに母親を亡くし、父親も一緒に旅をしていた南米でワニに襲われて亡くなり、親戚の家で育てられましたが、現在は出版社の作家担当として勤務し、自立した生活を送っています。

主人公は小さな頃から無表情、無感動な子供でしたが、ふくわらいで初めて大笑いし、その後もふくわらいの遊びを続けるようになります。

会話の中でゲシュタルト崩壊という言葉がよく出てきますが、ひとつの全体のまとまりに集中すると、それぞれのパーツひとつひとつが不思議と理解できなくなる現象のこと言いますが、ふくわらいにおいても、人の顔の全体がまずあって、その顔のパーツそれぞれが単独で動いてしまうとそのパーツが意味不明になってしまうという暗喩が秘められているように思います。

著者の小説は「通天閣」と「きいろいゾウ」と荒削りな初期の作品を読んでいましたが、16作目となるこの作品はいよいよ売れっ子作家として、また余裕が出てきたというかベテランの域に入りつつある作品で、とてもよいデキです。

そしてこの作品の2年後、2014年には「サラバ!」で、2回目のノミネートながら見事、直木賞を受賞しますので、その創作力、文章力はここ数年で格段にその才能が伸びてきているのでしょう。

★★★

著者別読書感想(西加奈子)


【関連リンク】
 10月後半の読書 黒書院の六兵衛、夢をかなえるゾウ、深川黄表紙掛取り帖、悪意のクイーン
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
 9月後半の読書 象の墓場、ナイト&シャドウ、美しい家、お別れの音、偽悪のすすめ


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人工股関節手術のその後とまとめ 2017/11/18(土)

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2016年に右側の股関節の人工股関節置換手術をおこない、今年2017年には左側の同手術をおこないました。そして、今月には手術後1ヶ月の検診に行ってきました。

■過去の関連記事
1146 人工股関節置換手術1年検診
1109 人工股関節全置換手術その後
1049 変形性股関節症の人工股関節置換手術まとめ
1047 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(4)
1046 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(3)
1037 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(2)
1033 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)
1137 人工股関節、人工膝関節の寿命と再置換


変形性股関節症による過去の病院受診、手術歴
2004年 近所の内科(リウマチ科)受診→異常なしと診断
2004年 近所の総合病院整形外科で受診→異常なしと診断
2012年 近所の整形外科病院で受診し、臼蓋不全、変形性股関節症と診断
2016年 手術を前提に総合病院(股関節センター併設)整形外科受診、両側変形性股関節症末期と診断
2016年 入院、右股関節手術、退院は術後8日目、会社への初出社は術後19日目
2017年 入院、左股関節手術、退院は術後8日目、会社への初出社は術後16日目

人工股関節の手術を受けるにあたっては、ネット上の情報が役に立ちました。
・各病院の股関節手術の術例や年間術数
・最小侵襲手術やコンピュータ・ナビゲーションシステム利用の術式導入実績
・各病院で人工股関節手術を受けた方のブログなど
・変形性股関節症、人工股関節などについての最新情報
などなど。

たまたま自宅からクルマで20分程度のところに股関節センターを併設の総合病院があり、そこの術例も詳しく書かれていて、さらにその病院で人工股関節置換手術を受けた方の日記なども豊富にあって、いろいろと参考になりました。

人工股関節したがって、手術はそこにしようと決め、あらかじめ電話をして、紹介状はないが、変形性股関節症であることや手術をお願いしたい旨を話しをすると、いついつに外来として来てくださいということで初診日が決まりました。

通常なら、近所のクリニックや整形外科病院から紹介状などをもらっていくべき総合病院ですが、4年前に行った近所の整形外科では問診の際には説明してもなかなか変形性股関節症だと信じてもらえず、レントゲン撮影するまでは「それはないでしょう」と決めつけられ、レントゲンで撮影後にやっと「明らかな変形性股関節症、臼蓋不全です」と言われて不信感がありました。

そんなあまり信用がおけない整形外科だったので、通院はその時1回きり、紹介状をもらいに行くのもためらわれたので、直接総合病院(股関節センター)へ電話を入れた次第です。

手術法はまだ病院によって様々な方法がとられていて、どれが正解というわけではありませんが、やはり術例が多い病院ほどそのノウハウがあり、医師の技術水準も高いとは想像ができます。

ごく稀に、有名な○○医師に手術を頼みたいという希望を言う人がいますが、そういう医師は有名人などVIP対応で手一杯、待てば1年待ちとか普通にあると聞きます。

また人工股関節置換手術は、年間4万件以上もおこなわれている、ごくごくありふれた手術で、そういう偉い有名な先生は一般人に対して自らオペすることは滅多になく、そのほとんどは若手の育成も兼ねてサポートにまわっているという話しも聞きます。

なので、あまり、この医師だからというこだわりは持たなくて良いかと思います。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

術後に長く理学療法士が面倒を見てくれる病院と、割と早く追い出す(追い出してくれる)病院があります。病院でリハビリをするか、それとも自宅でするか、そのメリットデメリットはそれぞれにあります。

私の場合、

・MIS(Minimally Invasive Surgery)最小侵襲手術をやっている病院
・術後の禁忌体勢はない
・入院期間は短い方が良い(入院費や生活の自由さの面)
・リハビリは原則自宅でおこなう
・インプラントの耐久性については使い方次第なので今は考えない

という条件で、この病院を選択しました。
もちろん家族が見舞い(下着などの替え)に来やすいよう、自宅から近いことも大きな要素です。

まだ片側の手術で1ヶ月ほど入院する病院もあれば、術後に禁忌体勢(してはいけない体勢)がある場合もあります(私の病院は入院は平均12日、術後の禁忌体勢なし)。

全身麻酔にしても、他の病院で手術を受けた方のブログを読むと、背中から入れる麻酔で無茶痛かったようなことが書かれていましたが、この病院では術前に付けた点滴のベースからで、何の痛みもなくすぐに眠りにつけます。

術後に尿のカテーテルを外すタイミングは、術後2〜3日後(つまりその間はずっとベッドに縛り付けられた状態)という記述もありましたが、この病院では手術の翌日の朝(つまり術後18時間後ぐらい)には外し、車椅子に乗ってひとりでトイレや院内の売店へ行くことも可能です。この自由さがなんともいいと思いました。

そしてこの病院では、術後2日目には傷口に透明のフィルムを貼ってもらい、シャワーを浴びられますが、他のブログを見ていると、1週間経ってやっとシャワーを浴びられたというのがあります。それでは夏場だとたまりません。

そのように術後1日目に立ち上がることができたり、2日目にはひとりでシャワーを浴びに行ったりできるのは、MIS最小侵襲手術で、可能な限り筋肉や関節包を切らずに人工股関節を設置しているからで、それなりの難しい高度な手術をおこなってくれる病院と医師だからです。

このMISは高度な技術や設備(コンピュータナビゲーション)が必要で、どこの病院でもやっている術法ではありませんが、最近では多くの病院で取り入れています。

入院期間が短いと、その分理学療法士から得られるリハビリ治療が手薄になります。これは年齢にもよりますが、若くて歩くのが苦痛でない人であれば、真っ直ぐに両足均等に力をかけ、背筋を伸ばしてやや大股で歩くというのを実践すればそう難しいことではありません。

別に今から俳優やモデルを目指すわけでもありませんから、多少変な歩き方になっても仕方ないと思っていますし、要はそれぞれ個人に向いた骨と筋肉のうまい使い方、動かし方を教えてもらい、そのポイントは入院中にしっかり覚えておくことが必要です。

家でのリハビリは、苦痛を感じるまでやる必要はありませんが、やはり毎日少しずつ歩いたりストレッチをして傷ついた筋肉を元に戻していく努力が必要でしょう。私はスマホの歩数計を利用して、毎日どれだけ歩いたかを記録して励みにしています。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

インプラント(人工股関節)の耐久性については医者に聞いても「正確にはわからない」と言われます。

今までは人工股関節を入れるのが60歳以上の人がほとんどで、インプラントが壊れる前に亡くなるケースがほとんどだったからです。再置換は稀なケースでした。

高齢者の場合、激しいスポーツをする人も少なく、また日進月歩でインプラントの性能も上がってきていますので、現在のインプラントがどれぐらい耐久性があるのかわからないというのが実際でしょう。

人工股関節手術の先進国アメリカの例です。
1137 人工股関節、人工膝関節の寿命と再置換

なので、そのこと自体をあまり心配しても仕方がないことで、自分の寿命が尽きる前にインプラントが不具合を起こせば、再置換となるというだけです。それは自分の寿命と同じで誰にもわかりません。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

人工股関節を入れると飛行機に乗るとき、金属探知機に反応することが多いそうです。最近は飛行機に乗る前の出国時だけでなく、金の密輸入対策で入国の際にも金属探知機をくぐるケースが増えています。

国内なら日本語で説明すればまず大丈夫ですが、外国の場合、説明するのがちょっと面倒です。

そこで、病院に頼んで人工関節証明書なるものを発行してもらいました。有料ですが、日本語と英語で書かれ、医者のサインもあり、どこまで有効かはまだ使った経験がないのでわかりませんが、いちいち説明をする手間が省ければいいなと。

さらに今後はその証明書の裏にでも、人工股関節のレントゲン写真が印刷されて、人工股関節のことを知らない人にも、ひと目でわかるようにしてくれると完璧なのですけどね。

医師や理学療法士ではありませんので、専門的な話しはできませんが、手術や入院のことなど、もし不安や心配で、なにか聞きたいことなどあれば、コメントするか下記のメールアドレスあてにメールをお寄せください。

管理人宛メールアドレス
area99(アットマーク)infoseek.jp
※上記(アットマーク)のところに半角の@を自分で入れ替えてください(メールアドレス自動収集ロボット対策)


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フルーツと糖質制限 2017/11/22(水)

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オレンジ米や麺などの炭水化物を減らして肉や野菜、果物をメインに食べる糖質制限ダイエットを始めて数年が経ちます。

元々果物が好きなので、朝食や夕食の量を減らしても、その物足りない分を果物で補えるため、私的には糖質制限ダイエットが長続きできた最大の要因です。

子供の頃、兄弟がチョコレートパフェを頼んでも、私はフルーツパフェを頼み、ケーキもカラフルなフルーツが上にのったり中に挟まれていたりするものを好みます。

さて、果物の話しとなると、野菜と果物とはどう違う?と時々疑問に思うこともあります。

一般的には、リンゴや柿のように木になるのが果物で、トマトやスイカ、イチゴ、メロンなど畑で採れるものが野菜とされています。

でも果物店でイチゴやメロンが売られ、八百屋さんではリンゴやバナナが売られています。今更イチゴやメロンが果物ではなく野菜だって言われてもピンときません。

その違いをもう少し専門的に言うと、
果物とは、木本植物(樹木になる植物)や、本来は木ではないが数年間に渡り生育する多年生植物に実る果実のうち、食用になるものを指す。木本植物の果実はリンゴや桃、多年生植物の果実はバナナやパイナップルが代表的な例である。
野菜とは、一般に草と呼ばれるような草本植物で、一年生、田畑で栽培されるものを指す。いちご、メロン、スイカは一年ごとに種から育てて栽培する草本性植物のため、本来は野菜の定義に当てはまる。そのため、果物的野菜と呼ばれる。
出典:今さら聞けない2つの違い

そうか、スイカやイチゴ、メロンなど果物に近い野菜は「果物的野菜」と呼ばれるのですね。これは知りませんでした。

私が食後に食べている果物(一部果物的野菜)は、近所のスーパーで手軽に買えるものばかりで、
春:イチゴ、リンゴ、ミカン
夏:桃、ブドウ、スイカ、メロン
秋:柿、ブドウ、リンゴ、梨
冬:ミカン、リンゴ、イチゴ、キウイ
で、あと年間を通して、パイナップルやバナナが加わります。

パイナップルも昔(30〜40年前)は缶詰か、あるいは大きな実そのままで買うしかなかったのが、最近はどこのスーパーでも細かく切ったのがパックされて売られているのでお手軽で良いですね。売れ残りを切っているせいか、カットした後少し時間が経っているのか、ちょっと新鮮さには欠けますが。

と、ここまで書いて、果物(果物的野菜)って糖質低かったっけ?と疑問に思って調べてみると、実は果物は結構糖質分が高いものもあります。そりゃー甘いもの多いですからね。

その中でも比較的糖質分の低い果物(果物的野菜含む)は、
()内は可食部100g中の糖質重量

・イチゴ(7.1g)
・桃(8.9g)
・グレープフルーツ(夏みかんなども)(9g)
・スイカ(9.2g)

で、逆に糖質が多い果物(果物的野菜含む)は、

・バナナ(21g)
・ライチ(15g)
・ブドウ(15g)
・柿(14g)
・リンゴ(13g)
・イチジク(12g)
・パイナップル(11g)
・キウイ(11g)
・ミカン(11g)
・梨(10g)

糖質制限ダイエットクラブ記事からデータ引用

ちなみに比較のため、白米100g中の糖質は約37gです。100gのご飯と言えば半ライス程度ですからお茶碗1杯分だと軽く70gは超えます。食パンは100gあたり44gが糖質で、六つ切り1枚あたりだと約27gの糖質が含まれることになります。

う〜む、、、白米やパンに比べるとずっと少ないとは言え、果実でも微妙に糖質をしっかり摂っているって感じですね。

もっとも、フルーツの場合、米や麺と違って、一気に大量に摂ることはそれほどなく、しかも果肉の成分のほとんどが水分で、糖質の摂取量からたいしたものにはならないだろうと思えます。

ご飯ならおかわりも含めお茶碗に2杯程度を一気に食べることはあっても、リンゴ2〜3個を一気に食べる人はそうはいないでしょう。普通リンゴだと1/4か、多くても半分ぐらいを食べることが多いのではないでしょうか。

なーんて言い訳しながら、好きなフルーツを毎日好きなだけ食べています。


【関連リンク】
1107 意外と楽しめる歩数計
1039 減り続ける米需要
759 糖質ダイエットについての備忘録その1


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年間8万人の行方不明者の行方 2017/11/25(土)

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行方不明者と聞くと夜逃げとか家出とか自主的に姿を消す場合と、今年世間を騒がせた座間市の連続殺人死体遺棄事件のように事件や事故に巻き込まれたという場合が想像できます。

最近はそれに加えて認知症を発症し、徘徊しているところを保護されたり行き倒れになって発見され、どこの誰だかわからなくなるケースも増えてきているそうで、今後団塊世代が70歳以上の高齢になっていくにつれ、その数は増えていきそうです。

座間市の事件報道で、行方不明者の数は年間で8万人を超えていると聞いてちょっと驚きました。交通事故死(24時間以内死亡)は年間で4千名ぐらいですから、割と身近なところで起きているような気がする交通事故死のなんと20倍という多さです。

ちなみに座間市で犠牲となった全員が家族から行方不明の届け出が出されていたと言うことですが、明らかな事件と判明していない限り、警察はそれらに対して捜索など積極的に動くことはなく、今回も犯人を追い詰めたのは9人目の犠牲者となった女性の兄が執念で調査し追跡した結果です。

行方不明者の統計資料としては警察庁生活安全局のデータがありますので、それを元にグラフ化してみました。但し、このデータは警察へ行方不明者の届け出があり受理されたものの数ですので、実態とは少し違っていると思われます。

◆男女別
行方不明者数男女別

行方不明者では2016年では男性が64%と女性を上回っています。この傾向はここ数年は変わりません。ただ今後は高齢者の認知症によるケースが増加していくと、長寿の女性が行方不明となる割合が増えていく可能性があります。


◆年齢層別(実数)
行方不明者数年代別

家出と思われる10代の行方不明者数を頂点とし、50代まで直線的に下降していき、60代で横ばい、70代以上でまた増加という傾向です。
ここ5年間の推移では、10代はやや下降気味ですが、20代と70代以上は上昇傾向にあります。70代以上は疾病関係と予測が付きますが、20代の増加にはどういう意味や理由があるのかは不明です。


◆年齢層別(人口10万人あたりの数)
行方不明者年代別人口10万人あたり

各年代層で人口が違いますので、それぞれの人口10万人あたりの行方不明者数で、その年代別傾向がわかります。家出と思われますが恐るべき10代20代の多さですね。また70代以上は疾病関係中でも認知症の影響が大きいと思われます。


◆行方不明者数と所在確認者数の長期推移
行方不明者数と所在確認者数推移

所在確認者数は数年前に届け出された発見者数も含まれますので、単年度での単純比較はできません。ただ近年は所在が確認されるケースが増えてきていることは確実です。


◆動機5年間推移
行方不明動機

行方不明になった動機では疾病関係だけがこの5年間で大きく増加しています。疾病関係の中で認知症を別途抜き出してありますが、疾病関係の中でも特に認知症による行方不明の増加というのがよくわかります。動機で「その他」は、遊び癖や放浪癖等です。


◆所在確認態様(発見・死亡等の状況)
行方不明者所在確認

行方不明者の中で、「発見」と「帰宅等確認」は全体の86%、「死亡」は全体の約5%です。「その他」は届け出の解消となっていますので、詳細は不明です。いずれにしても約9割以上が死亡以外でなんらかの解決を見ているようで、行方不明=死亡というようなネガに考える必要はなさそうです。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

1960年代〜1970年代は行方不明者を発見できたのが70%程度だったのが、ここ10数年で大きく改善できているのはなぜでしょうか?警察の捜査能力が高まったとも思えませんし、明らかな事故や事件でないと捜査なんてやってくれません。

以前にも書いたことがありますが、行方不明者対策、特に認知症患者に関しては、早急に顔認識システムを全国の警察に導入し、届け出が出されたら、即座に全国の防犯カメラ映像や身元不明者(生存、死亡とも)との照合を全自動でおこない、早期発見と犯罪や事故に巻き込まれないようにしていく仕組みが必要に思います。

もちろん、そうしたものをプライバシー侵害や、政治活動、警察権力の暴走など不正に使われることがないよう、裁判所の承認など一定の歯止め対策は必要ですが、行方不明の届け出を出す家族が、プライバシー侵害を気にして当事者の写真や名前を提供することを断るってことはないと思います。


【関連リンク】
1141 リタイアメント
1099 マイナンバーカード
825 行方不明者と顔認識システム


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11月後半の読書と感想、書評 2017/11/29(水)

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死都日本 (講談社文庫) 石黒 耀

2002年にこの作品で作家デビューを果たした現役内科医が本業の作家さんで、この著者の作品を読むのはこれが最初です。文庫版は2008年に発刊されています。

医者でありながら小説を書いている人って多いですね。しかもこの著者さんは、専門である医療分野のネタを小説にするのではなく、まったく畑違いの火山や地質、防災、政治などをテーマにしているところが凄いところです。

タイトルからして縁起でもない衝撃的ですが、単にひとつの火山が噴火して、逃げ遅れた近隣住民や取材陣に被害が起きますが、これはそんな軽い話しではなく、霧島連山を中心に九州の南半分が吹っ飛び、成層圏にまで及ぶ噴煙が立ち上り、日本はもちろん北半球の世界の環境に大きな影響を与えてしまうと言う壊滅的な火山災害を描いています。

この作品が出たのが2002年ですから、2011年の東日本大震災前の話ですが、破局的噴火の火砕流やその前に起きる火砕サージという高熱の火山ガスが流れ出て街を襲うシーンが、まるで2011年震災当時の津波が一気に街を飲み込むシーンと瓜二つです。

偶然なのか、それともなにか意図されたのか、阪神淡路大震災の時は村山総理、東日本大震災の時は菅総理と、自民党から総理大臣が出ていなかったごくわずかな期間中に大きな災害が起きています。

この小説でも東日本大震災をまるで予言したかのように、それまで野党だった政党が選挙に勝って与党になったあとすぐに起きる設定です。

その時の首相は、切れ者で、政権を取って以降、様々な火山噴火対策をあらかじめ準備をし、日本国が壊滅的危機になってもそれを乗り越えられる策を練っていきますが、九州の大噴火に続き、東南海地震発生の徴候、さらには富士山の噴火徴候がみられ窮地に立たされていきます。

この本を読むと、日本列島は列島すべてが火山とその噴石で出来上がっていて、いつまたそうした大規模噴火に襲われるかわからないという恐怖を感じます。

何千年、何万年、何百万年という間隔があるものの、いつかはまたきっと列島全体の形を変えてしまうほどの火山活動が活発化することはいつか必ず起きます。

こうした自然大災害が日本を襲う小説としては小松左京氏の「日本沈没」や、高嶋 哲夫氏の「M8(エムエイト) ) 」など災害サスペンス3部作、福井晴敏氏の「平成関東大震災 いつか来るとは知っていたが今日来るとは思わなかった」など数多く読んできましたが、火山を前面に出してその怖さを詳細に説明してくれたものは少なかったように思います。

日本は地震や台風の備えには割と進んできていますが、総合防災の備えという点では今後火山の噴火対策にも備える必要がありそうです。

★★★


        

天国旅行 (新潮文庫) 三浦しをん

2010年に単行本、 2013年に文庫化された短編集小説です。収録作品は「森の奥」「遺言」「初盆の客」「君は夜」「炎」「星くずドライブ」「SINK」の7編です。

タイトルにあるように、収録された短編はすべて人の死に関連したストーリーとなっています。人生でもっとも大きな出来事と言えばやっぱり死ですから、小説には欠かせないテーマです。

事業に失敗して自殺を図ろうと青木ヶ原樹海へ踏み入れた中年男性が、その森の中でサバイバルに慣れている元自衛隊員の男性と出会う「森の奥」、亡くなった祖母に知られざる過去があったことを初めて知る孫の女性が主人公の「初盆の客」、子供の頃から死者の霊が見えて会話もできる特殊能力をもった男性が恋人の死で、その霊とともに生活する息苦しさを感じていく「星くずドライブ」、一家心中で唯一生き残ってしまった男性の心の闇を描いた「SINK」など。

それなりに楽しめますが、やっぱり短編はその道の達人以外の作品では話しが中途半端になりがちで、いまいち好きにはなれません。病院での待合とか、電車の中とか、気が散る場所で、細切れになる時間でちょっと読むのには適しています。

★★☆

著者別読書感想(三浦しをん)


         

湖水に消える (ハヤカワ・ミステリ文庫) ロバート・B・パーカー

2002年刊、文庫版は2005年に発刊された警察署長ジェッシイ・ストーン・シリーズの第4作目になります。この作品は、2006年にトム・セレック主演で映画化されています。

主人公はロスの殺人課の刑事でしたが、酒に溺れて謹慎を喰らい、ボストンにもほど近い東海岸の小さな街の警察署長として流れてきました。

別れた前妻にまだダラダラと未練を残していて、またいつかはよりを戻せると願いつつ、一方では女性関係は派手で、エンタメ要素は満載です。

今回の事件は、管内の湖で殺された若い女性の遺体があがり、その女性のたどってきた過去を調べ、犯人に迫っていくというストーリーです。

このシリーズでは、他のシリーズ「私立探偵スペンサー」や「女性探偵サニー・ランドル」と共通する人物が登場することもあり、スペンサーシリーズを全部読み終えた後ですが、懐かしい名前が出てきて楽しめます。

今回は、スペンサーシリーズに時々登場するギャングの殺し屋ヴィニィ・モリスが登場しています。スペンサーシリーズでは拳銃の腕はナンバーワンとスペンサー自身も評価をしているヴィニィ・モリスですが、この作品の中では「クレー射撃の的を拳銃で撃つ」という伝説の話しが出てきて笑いました。

今回の話しでは主人公自らボストンへ出向くことも多く、スペンサーとどこかで接点がないかとドキドキしましたが、さすがにそれはありませんでした。

★★☆

著者別読書感想(ロバート・B・パーカー)


        

体を壊す10大食品添加物 (幻冬舎新書) 渡辺雄二

著者は「買ってはいけない」「ヤマザキパンはなぜカビないか」などの著書がある食品や環境にテーマを置いたジャーナリストです。

その「買ってはいけない」は、スポンサーや広告主に配慮して物言えぬメディアに代わり言いたい放題で、様々な反響を呼び、その本に対する批判本なども多く出てきましたから、それらの著作が食品添加物などに一石を投じる効果は大いにあったようです。

帯の「がんになりたくなければ、これだけは食べるな!」は刺激的でオーバーかなと思いましたが、ついそれに誘われて購入して読んでみました。

多くの添加剤や防かび剤、抗菌剤、残留農薬などから発がん性があるとされたものやその疑いが濃いものを特定し、それらを食べるなと書いています。中には具体的な製品名なども書いてありますので結構衝撃的です。

但しこの本の発刊日は2013年ですので、その後改善されたりしている製品もあるかも知れませんので、製品名と言うよりは内容物をいちいち記憶しそれを確かめないとなりませんから、そのあたりは面倒くさいです。

さてタイトルに挙がっている危険な10大食品添加物というのは、

1)亜硫酸Na(漂白、酸化防止剤)・・・おにぎりの明太子、ハム入りサンドイッチ等
2)カラメル色素(メチルイミダゾール)・・・コンビニ弁当やラーメン、ジュースなど多数
3)合成甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK)
4)パン生地改良剤・臭素酸カリウム・・・ヤマザキランチパック、食パン芳醇、超芳醇など
5)合成着色料・タール色素・・・真っ赤な福神漬けや紅ショウガ、菓子パン、ジュースなど
6)防かび剤・OPPとTBZ・・・輸入オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど
7)殺菌料・次亜塩素酸ナトリウム・・・(一部の店舗で)刺身、魚介類、食肉等の殺菌
8)酸化防止剤・亜硫酸塩・・・ワイン、甘納豆、コンビニ弁当
9)合成保存料・安息酸Na・・・栄養ドリンク
10)合成甘味料・サッカリンNa・・・パックにぎり寿司、歯磨き粉

これだけ並べると、食べられるものがないじゃん!って思いますが、これらを摂取するのが常態化しなければ仕方がないでしょうと言う感じです。但し小さな子供や、妊婦さんは特に注意する必要がありそうです。

当然のことながら、コンビニやスーパーなどで手軽に安く買えるお弁当や加工食品、価格の安いお惣菜や安価で提供されるレストランでの肉や魚といったものにはそれなりの理由がありそうです。

もちろんこの本の内容については様々な異論や反論もありますから、闇雲に神経質になる必要はありませんが、これだけ化学物質が世の中に蔓延している中、業界利益の都合とか、外国の圧力で認められたような危険な添加物などもあり、それらだけでも注意をしていこうという姿勢は間違っていないのではないでしょうか。

一応、この著者の本に対する反論、討論本も紹介しておきます。

「買ってはいけない」は買ってはいけない
「買ってはいけない」大論争―ほめる人、けなす人
「買ってはいけない」論争 解決篇

★★☆


【関連リンク】
 11月前半の読書 ブラックボックス、老後に本当はいくら必要か、夢を売る男、ふくわらい
 10月前半の読書 秘められた貌、ウルトラ・ダラー、創造力なき日本、海の見える街
 9月後半の読書 象の墓場、ナイト&シャドウ、美しい家、お別れの音、偽悪のすすめ

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