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著者別読書感想INDEX

浅田次郎 ASADA JIRO 既読書籍

浅田次郎の歩き方 2021/8/4

050 長く高い壁 The Great Wall 049 帰郷
048 ブラック オア ホワイト 047 降霊会の夜
046 僕は人生についてこんなふうに考えている 045 わが心のジェニファー
044 黒書院の六兵衛(上)(下) 043 一路(上)(下)
042 赤猫異聞 041 一刀斎夢録
040 終わらざる夏(上)(中)(下) 039 マンチュリアン・リポート
038 夕映え天使 037 姫椿
036 ハッピー・リタイアメント 035 中原の虹(1)(2)(3)(4)
034 月島慕情 033 つばさよつばさ
032 月下の恋人 031 草原からの使者 
030 あやしうらめしあなかなし 029 お腹召しませ
028 霧笛荘夜話 027 昭和侠盗伝 天切り松がたり第四巻
026 憑神 025 輪違屋糸里 上・下
024 五郎治殿御始末 023 紗高樓綺譚
022 オー・マイ・ガアッ! 021 珍妃の井戸
020 蒼穹の昴1・2・3・4 019 王妃の館 上・下
018 歩兵の本領 017 薔薇盗人
016 シェエラザード 上・下 015 壬生義士伝 上・下
014 プリズンホテル1夏/2秋/3冬/4春 013 見知らぬ妻へ
012 勇気凛凛ルリの色 福音について 011 霞町物語
010 天国までの百マイル 009 活動写真の女
008 月のしずく 007 鉄道員
006 勇気凛凛ルリの色 005 極道放浪記2 相棒への鎮魂歌
004 勝負の極意 003 初等ヤクザの犯罪学教室
002 地下鉄に乗って 001 日輪の遺産
読書感想は2010年頃以降から書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


1951年東京都生まれ。高校卒業後陸上自衛隊に入隊。除隊後はアパレル業界など様々な職につきながら投稿生活を続け、1991年『とられてたまるか!』でデビュー。悪漢小説作品を経て、『地下鉄に乗って』で吉川英治文学新人賞、『鉄道員』で直木賞を受賞。時代小説の他に『蒼穹の昴』、『中原の虹』などの清朝末期の歴史小説も含め、映画化、テレビドラマ化された作品も多い。(Wikipediaより引用 2022年)


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050 長く高い壁 The Great Wall(角川文庫)

著者の作品はかなりの数を読んできましたが、おそらく初めてではないかと思われる犯罪ミステリーで、ホームズ役の探偵作家と、ワトソン役の東京帝大出の文系エリート将校という組み合わせで事件を解決?する話です。

小説雑誌「野性時代」に連載後、2018年に単行本、2021年に文庫化されています。

単に戦場ミステリーだと「日輪の遺産」(1993年)なんかはそれに近いかも知れませんが、探偵が事件の謎に迫るというのは初めてのような気がします。

タイトルの「長い壁」とは、万里の長城を指していて、時代は日中戦争が泥沼に入りつつある1938年秋の北京から物語は始まり、万里の長城に駐屯し、匪賊や共産党軍の攻撃に対処していた日本陸軍の兵士10名が、何者かに殺されてしまうという事件が起きます。

単に敵に攻撃を受けて戦死した状態ではなく、血の一滴も流さず銃器の使用跡もなく、見張り番をしていた全員が同じような謎多き死に方です。

そこへ通称ペン部隊として新聞社の嘱託として北京へ来ていた探偵小説で人気作家の主人公が、護衛兼見張り役として軍の検閲班長と一緒にその事件現場へ向かうことになります。

ミステリーなので詳細を書くのは野暮というものですが、ヒントはこの万里の長城で守備を任されたのは、本隊の足手まといになるならず者だったり犯罪者などで、指揮官も士官学校を出たばかりで実戦経験がない若い見習士官だということ。

主人公達は、事件現場近くにいた軍隊の警察を担っている憲兵曹長とともに、殺された10名以外の他の分隊長らから聴取をおこない、事件の謎に迫っていくことになります。

舞台のバックボーンをもう少し書いておくと、1930年代に満州を併合した日本は、1937年には中国北東部の盧溝橋事件が発端となり支那事変(日中戦争)が起き、その後全面戦争へと発展していきます。

武力衝突後に首都北京を攻略後も、中国政府(中国国民党軍)は南下して戦い続け、北京周辺や北東部では日本軍に反抗する中国共産党が組織だってゲリラ攻撃をしかけ、また広大な満州から中国北東部にかけて発生した抗日武装集団(匪賊)がいて、日本軍はそれらに悩まされ続けます。

本著に出てくる張飛嶺は架空の場所ですが、調べると現在も昔のまま残っている司馬台長城周辺がモデルのようです。

角川書店のサイトにも、司馬台長城を見学した時の著者の写真が載っていて、長城の巨大さがよくわかります。

万里の長城を舞台に、従軍作家が日本軍の闇に挑む。浅田次郎作品初の戦場ミステリ(カドブン)

★★★

11月前半の読書と感想、書評 2023/11/15(水)

049 帰郷(集英社文庫)
2016年単行本、2019年に文庫化された短篇集です。長編小説も素晴らしいけど、短編小説の名手でもあります。現在活躍中の日本人の作家さんでは、著者と奥田英朗の二人が突出している気がします。

収録されているのは「歸ク」「鉄の沈黙」「夜の遊園地」「不寝番」「金鵄のもとに」「無言歌」の6篇です。

いずれも太平洋戦争時の下級兵士または元兵士を取り上げていて、南方の総員玉砕の激戦地から奇跡的に帰還してきたものの帰る場所がない男や、本来は後方で兵器の修理をする技術者が最前線に送り込まれ、逃れようがない立場に陥る話しなど、「泣かせの浅田」の本領発揮、すべての物語に悲哀がつきまといます。

その中でも唯一ホラーとファンタジーの中間的な「不寝番」は、著者自身が陸上自衛隊で経験したことがあると思われる当番制で夜間の見張りに立つ不寝番で、なぜか旧陸軍の兵士へ不寝番を変わることになってしまう話し。

陸上自衛隊の富士の隊舎は旧陸軍時代からそのまま使われていますが、そこで不寝番をしていた隊員(士長)が時間が来たので次の当番を起こしにいきます。そして起きてきた当番の上等兵(旧陸軍の階級)に不寝番の申し送りをしますが、お互いちょっと違和感を感じてしばらく話しをすることになります。

最後の「無言歌」に至っては、仲の良い二人の兵士が夢で見たことを互いに話し合うストーリーですが、それは実は特殊潜航艇の中で、しかも故障して海底に着底してしまい、まもなく酸素も尽きようかという涙なしでは読めません。

★★★

1月前半の読書と感想、書評 2023/1/14(土)

048 ブラック オア ホワイト(新潮文庫)
2013年に週刊新潮で連載され、2015年に単行本、2017年に文庫化された、長編小説です。

西洋の人種問題?ぐらいに思って、内容はまったく知らないまま読み始めましたが、全然違いました。なんと、このタイトルで、夢の話しです。

60過ぎた元エリート商社マンだった裕福な男性が、亡くなった学生時代の友人のお通夜で久しぶりに会った同級生に語る夢の話しですが、その不思議な夢を見た場所が、総合商社員らしくスイス、パラオ、インド、中国、日本(京都)で、そこに白い枕と黒い枕が登場してきます。

白い枕で寝ると、ハッピーな夢に、黒い枕で寝ると不幸な夢をみることになり、夢を見ているときは、それは夢だと言うことがわかっています。

いずれの夢にも、満州鉄道の理事を務め、戦後は総合商社に入社した祖父や、誰かわからない謎の恋人の女性が出てきます。

世界中で活躍する商社員としての仕事の他は、そうした夢の話しが淡々と続くだけの話しですが、なにか仕事を引退した後、昔の輝いていた頃を懐かしんで、誰かに聞いてもらいたいだけ?とも思えて、その真意がイマイチよくわかりませんでした。

★☆☆

9月前半の読書と感想、書評 2020/9/16(水)

047 降霊会の夜 (文春文庫)
週刊朝日に連載されていた長編小説で、2012年に単行本、2014年に文庫版が発刊されています。

泣かせの浅田ワールド満載ですが、ちょっと話しが無駄に長く、くどくなってきた感があり、年を取ってから涙もろくなってきているにかかわらず涙が浮かぶことはありませんでした。

主人公は軽井沢っぽい感じの高級別荘地に男一人で住んでいましたが、ある日、別荘の外で急な雷雨に遭って怯えてしまいうずくまっている女性を助けます。

その助けた女性から、近所に降霊をしてくれる人がいるのでご紹介しますと言われ、冷やかし半分で、同じ別荘地にある家へ出掛けます。

そこには年配の女性と姪の若い女性が住んでいて、仕事としてではなく、頼まれた場合に降霊会を催してひとの役に立つことをしているとのこと。

そして、主人公が小学生だった頃の同級生で、事故で亡くなった友人の霊を呼び寄せます。

降霊でやってくるのは、呼び寄せようとした霊だけではなく、亡くなっているその関係者の霊や、まだ生存中の生き霊までがやってくるという念の入りよう。ちょっと都合良くありません?

浅田次郎作品ということで、読む前からの期待が大きいだけに、今回はちょっと無理しているかな〜という感想です。

浅田ワールド作品には、コミカル路線のものも数多くありますが、こちらはいたって真面目なシリアス路線です。そのため出てくる人達や霊はみないい人ばかりで、読者を泣かせようという思惑がありありで、くどく感じた次第です。

シリアス路線の小説で、この世のものではない霊が出てくる作品は、「鉄道員(ぽっぽや)」や「地下鉄に乗って」などがあり読みましたが、いずれも泣かせられました。しかもその両方とも映画化されヒットしています。

また今回泣けなかったのは、「鉄道員」や「地下鉄に乗って」が、家族、親子といった濃密な関係だったのが、この作品では亡くなったのが友人という比較的薄い関係だったからかも知れません。

この小説もいずれ映画化あるいはテレビドラマ化されるのでしょう。もしそうなれば、団塊世代と思える主人公が過ごした戦後の子供時代や、青春真っ盛りの学生紛争時代が、再現映像として出てくることになりそうです。

★★☆

8月前半の読書と感想、書評 2020/8/15(土)

046 僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)
2003年に単行本、2006年に文庫化された、著者の多くの作品の中からテーマ毎に一部を抜き出したアンソロジー的な内容です。

読むまでは知らなかったのですが、著者がこの本のために書いたのは「あとがき」だけで、想像ですが、出版社の熱烈な浅田ファンの編集者が「私が過去の著書から抜き出しますから、それで1冊作らせて!」と頼んだのではないかなぁーと。

なので、著者の作品だと思って読むと、正直ちょっとガックリです。

と言うのも、ごく一部だけ小説の登場人物が発する言葉や、著者のエッセイのひと言を抜き出し、それらを寄せ集めただけのものですから、感動もなければ、わくわく感もありません。

せめて、エッセイだけから抜き出しているのなら「僕は・・考えている」もわかりますが、小説の登場人物の言葉を抜き出して、それを「著者の考え」というのはあまりにも乱暴すぎます。

これじゃーこの本の著者名は浅田次郎氏ではなく、○○編集部編ってするのが正しそうですが、それじゃー売れませんものね、、、

そんなわけで、著者にはなんの不満も恨みもありませんが、Amazonに1円で並ぶぐらいの評価するに値しないつまらないものでした。

☆☆☆

7月前半の読書と感想、書評 2020/7/15(水)

045 わが心のジェニファー (小学館文庫)
2015年刊の長編小説です。比較的時代物の作品が多い中、現代日本の観光をテーマにした一部紀行とも言えるコミカルな内容となっています。

主人公はウォールストリートで働いているエリート男性。独身ですが、両親は子供の頃に離婚したまま行方不明、その後は祖父母に育てられ、両親に捨てられたとのトラウマがずっと残っています。

しかし育ててくれた祖父はアメリカ海軍の元将軍で、金銭的にも社会的にも恵まれた人生をおくっています。

そしてパーティで知り合った女性に恋をして、プロポーズをしますが、その女性は何度も日本を訪れ、文化や歴史に詳しく、ぞっこん惚れていて、「結婚する相手は同じ価値を共有できなければ」と、男性にスマホもPCも持たず、しばらく日本の文化を感じて共通の価値観を持って欲しいと条件が付けられます。

そこで、たまった休暇で、ひとり日本へ旅立つわけですが、2種類の旅行ガイド(ひとつはまっとうなガイドで、もうひとつはぶっ飛んだガイド)を元に、京都、大阪、別府、東京、北海道へとなにかに導かれるように各地を巡ります。

その間、ずっとアメリカで待ってくれている?彼女に「Jennifer On My Mind・・・」と手紙を書き始めます。

アメリカ人を主人公にして、最近テレビでやたらと見かける脳天気な「Nipponすげー!」「クール!Japan」的な番組とどこか共通する、日本再発見的な匂いがプンプンして、著者らしくないな〜って気もします。残念ながら。

いっそ翻訳して、それこそ外国人が日本を旅行するなら、こうした様々な観光地とうんちく話しを知った上で、妙齢の女性が飛び込んできてくれるかもよーって変な期待を煽っておけば、経済産業省あたりから感謝状でも贈られるかもしれませんね。

最後に少し泣かせる?場面も用意されていますが、私はまったく泣けませんでした。

昨年の9月に「黒書院の六兵衛」を読んで以来の著者の作品ですが、どうも最近は「蒼穹の昴」や「壬生義士伝」のような、私の好きなタイプの作品が減ってきたように感じます。作風が変わりつつあるのかな。

★☆☆

4月後半の読書と感想、書評 2018/5/2(水)

044 黒書院の六兵衛 上/下 (文春文庫)
2012年頃、日本経済新聞に連載されていて、その後2013年に単行本、2017年に文庫化された時代劇長編小説です。

あらすじは、江戸幕府が終わり、新しい明治政府に江戸城を引き渡す段になったところ、どうしても江戸城から動かない武士がいて、なんとか円満に新政府に引き渡したい勝海舟など旧幕臣と、けしからんという新政府側でもめます。

その問題となった人物は不可解で、金で旗本の地位を買ったとされる一方、勤務はいたって真面目で堕落し腐りきっていた江戸末期の多くの武士達とは違うなにか本物の武士の魂をもっています。

そうした一本筋が通った謎多きラストサムライと、江戸から東京へと移り変わる混乱した世相を面白おかしく仕立てたもので、実際に活躍した歴史の人物が多く登場して楽しめます。

但し、江戸城の中や、しきたりなど、なかなか頭の中でイメージがしにくく、読んでいてもあまりワクワク感がなく、退屈この上なく、途中で断念しそうになりました。著者の作品はいつも一気に読み進められるのに、これは珍しいパターンです。

新聞連載小説と言うことで、一気に読むのではなく、かみしめながらじっくりと何ヶ月もかけて読むとまた違うのかも知れませんが、この作品はお得意の泣かせの場面もなく、ちょっと著者の作品らしくないなって感じです。

★☆☆

10月後半の読書と感想、書評 2017/11/1(水)

043 一路(上)(下) (中公文庫)
2013年に単行本、2015年に文庫化された浅田次郎ワールドをたっぷりと楽しむことができる、長編時代劇小説です。2015年にはNHK BS時代劇でドラマ化され、2016年にNHK総合でも放送されています。

時は文久2年(1862年)というから徳川家康が江戸に幕府を開いてから260年が経とうとし、やがて数年の内には明治へと変わる幕末が近い頃の話しです。

美濃は今の岐阜周辺を納めていた、大名より格下ではあるけれど、関ヶ原の戦いで家康に味方して一躍名を上げた旗本でしたが、脈々と子孫にと続いてきた今の殿様は、周囲からうつけと言われています。

その殿様が隔年に一度の参勤交代のため、中山道を江戸に向かう参勤道中の旅の始終が小説では書かれています。

参勤行列を今まで仕切っていた供頭役が、殿様を追いやって家督を乗っ取ろうと画策している後見役の将監の企みで謀殺されてしまい、代わってその供頭役を任されたのが、過去に一度も参勤交代を経験をしたことがない、ずっと江戸住まいだった息子という非常事態。この息子が主人公の小野寺一路です。

なにもわからない小野寺一路は、関ヶ原の戦い直後にご先祖様が書いたとされる参勤交代の書を見つけ、それに書いてある通りに参勤道中を実行しますが、それは平和な二百数十年間のあいだに省略されたものが多く、すでに時代と合わなくなっています。

そのようなにわか知識でつつがなく殿様を江戸城に送り届けられるか、それとも不満分子によって参勤交代が妨害されるか、捨てる神あれば拾う神ありという流れで、供頭の小野寺一路の活躍はいかにぃ〜って感じで、コミカル、かつ人情味あふれるドラマが待ち受けています。

★★★

3月前半の読書と感想、書評 2017/3/16(木)

042 赤猫異聞(新潮文庫)
単行本は2012年、文庫版が2014年12月に発刊されました。文庫が出るとなにも考えずすぐ買ってしまう浅田次郎氏の長編時代劇です。

赤猫とは元々は「赤猫を這わす」ということから火付けや放火を意味する江戸時代からある隠語のようですが、それが転じて火事を意味することも多いようです。

ちょうど10年前、2005年に読んだ重松清著「疾走」の中では、主人公の兄の放火犯を「赤犬」と呼び、その家族を村八分にする土地の話しが書かれていたのを思い出しましたが、地域によって猫だったり犬だったりするのでしょう。

昔から「喧嘩と火事は江戸の華」と言われるぐらいに、江戸ではしばしば大きな火事に見舞われています。

そして、今で言う刑務所、江戸時代は牢屋敷と呼ばれていましたが、そこに閉じこめられていた罪人も、その大火が近くまで迫ってきた時には、一時的に解き放ちがおこなわれることがあります。

物語の時代は慶応から明治に変わり、その元年の暮れも押し詰まった頃、ちょうど江戸の牢屋敷で不可解な斬首の刑が実行されようとしていた時に、半鐘が鳴り響きます。火事が起き火が迫ってきたことから、牢につながれていた罪人達の解き放ちが実行されます。

その中でも重罪人と言われているのが「客分で招かれていた地場の親分に裏切られ、賭場の全責任をかぶらされた信州無宿繁松」、「旗本の次男で新政府の役人相手に夜な夜な辻斬りをしていた岩瀬七之丞」、「悪党の与力にうまく利用された末に捨てられた夜鷹の元締めで江戸三美人の白魚のお仙」の3人です。

解き放ちの際にこの重罪の3人だけは後々面倒だから大火事のどさくさに紛れて切って捨てようとした同心仲間を信義にもとると説得し、「三人のうち一人でも戻らなければ戻った者は死罪、三人とも戻れば全員が無罪、全員が戻らなければ牢屋の鍵役同心が切腹」という妙な条件を付けて解き放されることに決まります。

そして、時代は平和な明治に飛んで、その三人や番人から解き放ち後に起きた不思議な出来事を伝聞として書き残すため、役人が聴き取りに回るというストーリーです。

こういうストーリーは黒澤映画にもなった芥川龍之介の「藪の中」で使われたものと同様の流れですが、最後に「種明かし」と「浅田流泣かせ処」が用意万端整えられています。

とっても面白かったです。おそらく「壬生義士伝」同様、そのうち映画化が企画されるのではと思います。

2月前半の読書と感想、書評 2015/2/18(水)

041 一刀斎夢録 上・下 (文春文庫)
単行本が2011年刊、文庫本は2013年刊の浅田次郎作品文庫新作で、新選組の中で一番腕が立つとも言われていた新選組三番隊長・斎藤一(さいとうはじめ)が主人公の小説です。

新選組が壊滅した後は会津で闘ったものの降伏とあいなり、その後改名して藤田五郎と名乗り警視庁勤めをしていた時、腕はべらぼうに立つが、散々人を斬ってきた斎藤一の本名が警視庁の中で出てくるのはさすがにまずかろうと、名前をひっくり返した一刀斎という隠語で語られるようになり、それがタイトルとなっています。

著者は新選組がたいへんお好きなようで、過去には「輪違屋糸里」「壬生義士伝」などの作品がありますが、いずれも新選組が好意的に書かれています。この作品を合わせて新選組三部作と言われているそうです。

映画になった「壬生義士伝 」では大正時代まで生き残った斎藤一を佐藤浩市が、大河ドラマ「八重の桜 」では会津藩とともに戦う斎藤一を降谷建志が、いずれもイケメンで格好良く演じていましたが、近年では新選組の中では土方歳三、沖田総司に次いで人気がありそうです。

その一刀斎の小説ですが、物語の出だしは皇居のそばをひとりで馬に乗って名残惜しく散策する乃木将軍です。乃木将軍といえば世界に日本という強国があることを知らしめた日露戦争で活躍した武人で有名ですが、明治天皇が崩御されたあと、天皇に殉じるため妻と一緒に自害を果たし、それはつまり明治という世が名実ともに終わったことを指しているわけです。

やがてもうひとりの主人公で、陸軍近衛師団の梶原中尉が、剣道仲間から教わり、老いた斎藤一が住む家を訪ね、1週間連続してその壮大なる剣士の語り部を聞くという流れです。

壬生浪士組の成り立ち、芹沢鴨の暗殺(暗殺には立ち合わず、芹沢と仲のよかった永倉を見張っておく役目、坂本竜馬の暗殺(自分がひとりで得意の居合いで斬り、自分が去った後、つけてきた京都見廻組がとどめを刺したと語る)、伊東甲子太郎ら御陵衛士暗殺の油小路事件、負け戦だった鳥羽・伏見の戦い、勝安房守(勝海舟)にはめられた感のある甲州勝沼の戦い、死に場所を求めて最後の砦となる会津へ下る話しなど戊辰戦争のこと、降伏し謹慎後に警視庁に勤めるようになり、その警察官として参加した西南戦争など新選組というか幕末から明治にかけての話しがこれでもかというほど(著者の想像や推測も含め)登場してきます。

特にクライマックスの西南戦争では、鳥羽伏見の戦いでは薩摩藩に裏切られ、敗走する結果となった新選組など幕府側の志士達の生き残りが、今度は逆に官軍となり西郷隆盛率いる旧薩摩藩士と戦うという構図に不思議な縁を感じます。

これはもしかすると武士世界が終わり、全国にはびこっていた不平士族達を抑え込み、明治政府を安定させるために大久保利通と西郷隆盛の策略にはめられたか?との疑念をもちます。そう考えると、明治政府に楯突き、多くの官軍兵士を殺したはずの西郷どんが、戦争終結後まもなく首都東京の上野公園に銅像が建てられ英雄視されるのも不思議ではなかろうと。

そして最後に待ち受けていたのは、不思議な縁を持つ二人の鬼と呼ばれる師弟が激突することになります。

いや〜面白い、楽しい、こうした江戸前の頑固一徹オヤジの語りをさせると浅田次郎氏の右に出る者はいません。

余談ですが、読み続けていて、斎藤一の語りの聞き役だった梶原という近衛師団の陸軍中尉が陸軍内で一二をを争う剣道の達人という設定になっているので、その梶原中尉が新選組の中で斎藤一がただひとり実戦的な居合いを教えた元浮浪児だった弟子市村鉄之介の子供だったとか、ゆかりがあったというオチが最後につくのかなと思っていましたが、残念ながらそれはありませんでした。

11月前半の読書と感想、書評 2013/11/20(水)

040 終わらざる夏(上)(中)(下)(集英社文庫)
前から読みたかった作品がようやく文庫化されましたので、私の夏休みの大きな宿題、いや、楽しみとして、さっそく買ってきて猛暑の中、エアコンの効いた部屋で静かに読みました。

この小説の舞台にもなっている太平洋戦争終戦後に突如ソ連軍が北方領土攻撃してきた話しは、池上司著「八月十五日の開戦」や、戦前までは日本領だった南樺太を描いた映画「樺太1945年夏 氷雪の門」、その映画のクライマックスとなった悲しい「霧の火 樺太 真岡郵便局に散った9人の乙女たち」のドラマなどで知っていました。

割と最近にもNHKで占守島の守備隊の話しを当時の関係者の証言で検証した番組が放映されていました。

なので、このテーマ自体には目新しさはないのですが、泣かせの次郎が本領を発揮する、重苦しく切ないテーマでの長編作でもあります。

知らない人のためにこの北方領土の戦いについて少しだけ触れておくと、8月15日は終戦の日と信じて疑わない日本人がほとんどですが、この終戦の日前後の北方領土では日ソ中立条約を一方的に破棄して樺太や満州、千島列島などへなだれ込んできたソ連軍との自衛戦争開戦の日でもあるのです。

8月15日以降はほとんど抵抗をしなかった満州や南樺太と違い、千島列島の最北にある占守島では8月15日以降も激しい戦いが続きました。

太平洋や南方でこてんぱんにやられた日本軍は、実はアメリカ軍が北のアリューシャン列島から千島列島へ島伝いに、そして北海道へ攻めてくることを想定し、強力な部隊を千島列島などに配備をしていました。

結局アメリカは沖縄など南方からの攻撃だけで同時に北方へ戦力を分散することはありませんでした。

一方、ソ連軍は戦後の占領後体制を考えると冬でも凍らない北海道の不凍港を手に入れることがヨーロッパのドイツ分断と同じくアメリカに対抗する上で重要でした。

なので、南樺太や千島列島を制圧し、そのまま一気に北海道まで占領しようと目論みましたが、アメリカと戦ってもう戦力は残っていないはずの日本軍に、千島列島で思わぬ反撃を受け、甚大な損害を出すことになります。

しかし結局はポツダム宣言を受諾した日本はやがて反撃を中止し、樺太はもちろん、千島列島もすべてソ連に占領されることになりましたが、千島列島の守備隊が命を賭けてソ連の侵攻を阻止したおかげで、ソ連軍が北海道に上陸することはなく占領されることはありませんでした。

さて、小説ですが、長編小説と言うこともあって、同時並行で複数の主人公が描かれますが、それぞれの運命と言える必然により、占守島へと集まってきます。

徴兵の年齢が上限近く、もう徴兵されることはないだろうと思っていた丙種合格の翻訳本編集者、過去3度の兵役で金鵄勲章をもらう活躍をして、同時に3本の指を無くしたため銃の引き金も引けない元鬼軍曹、事情のある人には徴兵検査で不合格を出し続けてきた良識ある若い医師、南方で死線をくぐり抜けてきた船舶兵、元大本営の参謀ながら、現地視察と称し、なぜかこの島に居座ってしまう謎多き将校、ドイツとの戦いに勝利し、これでやっと故郷へ帰れると思っていたら、シベリア鉄道でそのまま極東の島へ命を捨てに送られてきたソ連兵士などなど、、、

また豊富な海洋資源を生かし、日本国内や兵士に貴重なタンパク源を提供してきた日魯漁業の社員や勤労動員の女性達、銃後を守る兵士の妻や疎開先の学校、殺人で刑務所に入れられていたものの、赤紙が来て故郷の連隊へ向かおうとしているヤクザなども描かれていますので、ちょっとひとつの小説の中で、描かれる人物が多すぎ、ちょっとばかしとっ散らかってしまったような感じです。

しかし、この小説では占守島の戦いそのものや、戦争の悲惨さや不条理だけを訴えかけるのではなく、あの時代の狂ってはいない日本人にスポットライトをあて、小説として著者の考えや思いを読者に伝えたかったのだろうなぁと。

登場人物はすべて架空の人達で、あえて実在の人をモデルにはしなかったようです(たぶん)。それだけに、歴史的事実を元にしたドキュメンタリー小説とも言えず、またソ連の侵略を食い止めたという英雄譚でもなく、したがってエンタテーメント的なものでもありません。

強いて言うなら、太平洋戦争末期の狂っていた日本の軍部と、それを冷静に受け止めていた一部の庶民とを対比して、どんな理由があろうとも戦争することの愚かしさや、一旦動き始めてしまうとそれを停めることの難しさなどを浅田流の小説で示したものでしょう。

今まで「壬生義士伝」や「日輪の遺産」「天国までの百マイル」など多くの作品で泣かされてきましたが、この作品では決してハッピーエンドではないものの、まったく涙は出てこず、著者の意図とは違うかも知れませんが、淡々と始まり淡々と終わってしまった感があります。

7月後半の読書と感想、書評 2013/8/1(木)

039 マンチュリアン・リポート (講談社文庫)
蒼穹の昴」「珍妃の井戸」「中原の虹」から続く近代中国・満州を描いたシリーズで、「中原の虹」を完結してから3年が経ち、すっかり忘れた頃にようやく文庫として登場しました。

簡単にシリーズをおさらいをしておくと、「蒼穹の昴」は清朝(1616年〜1912年)末期、貧しい家の出身で踊り子だった李春雲が苦労を重ね宦官となり、やがて頭角を現し宦官の中でもトップの座に就きます。

そして悪女として名高い西太后に仕え、内憂外患の滅び行く清朝を懸命に守り建て直していこうとする姿を描いたものです。日中合作でドラマ化され、NHKで放送されてました。

続く「珍妃の井戸」は、清朝滅亡を一気に加速させることになる義和団の乱(1900年)が取り上げられています。今までは清朝末期の話しといえば「ラストエンペラー」で有名な宣統帝、愛新覚羅溥儀(あいしんかくらふぎ)を描かれることが多いのですが、浅田次郎氏は先の「蒼穹の昴」とともに西太后を中心して描いています。

そして「中原の虹」は義和団の乱のあと起きた日露戦争(1904年〜1905年)が日本の勝利で終結した後、列強各国に蹂躙されていく統治者がいなくなった中国で、馬賊出身の張作霖(1875年〜1928年)が東北部(満州)で勢力を増し、やがては長城を超えて北京へと進出していく過程と挫折が描かれています。

そしてこの「マンチュリアン・リポート」です。直訳すれば「満州報告書」。

清朝末期の1900年初頭、満州全域を制覇し、さらに清朝が滅亡した後、主導権争いで群雄割拠する北京へ入り、中国統一へ野心をのぞかせていた張作霖でしたが、北伐で勢力を増してきた国民党(国民革命軍)との争いに敗れ、地元奉天へ引き下がることを決め、その際に何者かによって列車ごと爆殺(1928年6月4日)されてしまいます。物語はその1年後から始まります。

裕仁親王(昭和天皇、当時27才)はその張作霖暗殺事件を曖昧にする田中総理大臣を更迭し、事件の真相を調べるため、軍紀を乱したと投獄されていた日本帝国陸軍の志津中尉に白羽の矢をたて中国へ送り込み、その中尉が定期的に送ってくる報告書という体裁で、真実に迫っていきます。

主人公は報告書を送る志津中尉と、その報告書の間に登場する25年以上前に西太后に贈られた英国製の蒸気機関車を擬人化した鋼鉄の公爵。

そう、張作霖を乗せて北京から奉天へ向かう時に使われた蒸気機関車です。

とは言うものの、喋る英国の蒸気機関車といえば「機関車トーマス」か「チャギントン」がすぐに頭に浮かんできてしまい、シリアスなドラマになにか妙な感覚を覚えます。

清朝の後の中華皇帝に手が届く寸前のところまでいきながら思いを果たせず、暗殺されてしまう張作霖は、私の中では天下統一の前に倒れた織田信長や、自分が関わってきた新しい日本を見ずして倒れた坂本竜馬のイメージとダブります。

その暗殺には関東軍参謀が関わったという説が有力ですが、それ以外にもスターリンの命を受けておこなわれたなど諸説があり現在でも確定はされていません。

この暗殺、一般的には線路や列車に仕掛けられた爆弾が炸裂してというイメージが強いのですが、事実は線路同士が交差する上の橋を爆破して下を走る列車を押しつぶすというもの。しかも押しつぶせるのは、19輛編成のうち、せいぜい1〜2輛という難しさです。

それには張作霖がその時に乗っている車輌を知らなければならず、また駅が近くてスピードは落としているものの、列車は走っているので、その車輌が通過するタイミングで爆破しなければならず、緻密な計画と練度の高い技術が要求されます。

そうした中でこの志津中尉に代弁させた浅田次郎氏が導き出した結論は、、、ということは読んだ人だけの楽しみとしておきましょう。そしてこのシリーズはここで終わってしまうにはなにか中途半端な気もするので、これに続く新たな小説が今後の楽しみです。

この浅田次郎氏のシリーズは史実を追い実在の人物の名前もたくさん出てきますが、基本的にはフィクションの小説であるということを十分理解しておかなければ、時々書評で見かけるようなトンチンカンな感想になってしまいます。それは史実とフィクションをごっちゃにしてしまっていることによるでしょう。

5月前半の読書と感想・書評 2013/5/18(土)

038 夕映え天使(新潮文庫)
浅田次郎氏のお洒落な大人の感性を試されるような6編を収めた短編集です。それぞれのタイトルは、1.夕映え天使、2.切符、3.特別な日、4.琥珀、5.丘の上の白い家、6.樹海の人となっています。

そう言えば50冊以上持っている浅田次郎氏の小説を読むのは久しぶりだなと思って調べてみると2011年9月に「ハッピー・リタイアメント」を読んで以来、約2年ぶりのことです。なぜか少しあいだが空いてしまいました。

ただ浅田次郎氏の作品は文庫化されると内容やタイトルに関係なくすぐに買ってしまうので、昨年(2012年)、書店の文庫新刊コーナーで平積みされていた徳間文庫の「姫椿」を買ったら、2003年に新刊文庫で購入した文春文庫の「姫椿」と同じで(そりゃそうだ)、なにか詐欺に遭ったような気分でした。9年前に一度文庫化された本を新刊として売るなよまったく、出版社の策略に見事引っかかりました。

新装刊の場合だと、奥付の発刊日を見るとその作品が新しいものかどうかが判断付きますが、出版社が違う場合はそれではわかりません。売れっ子の作品は、そのように違う出版社から発刊されると新刊扱いになるので気をつけないといけません。

タイトルにもなっている「夕映え天使」は、ワケありの男女、と言ってもどこにでもいそうな中年男女の機微に触れるような味わい深い作品で、「切符」は親に捨てられた子供と祖父との暖かな日常に起きた出来事にまつわる話し、「特別な日」は定年退職の当日、本当なら自分が役員になれると思っていたのに、そうはならなかった本当の理由が終盤一気にわかるという浅田氏としては異色のSFチックな話しです。

「琥珀」は定年間近になって妻から離縁された刑事が、休暇でふと訪れた三陸の寂しい町で、時効間近の殺人事件の手配犯とバッタリ出くわすことになる話し、「丘の上の白い家」は貧しい家の少年とその仲間が出会った裕福な少女の思惑が引き起こした不幸な出来事で、いずれももう少し膨らませた内容で読みたいと思わせる秀作揃いです。

最後の「樹海の人」は少し趣が違っていて、浅田氏が自衛隊に入隊していた頃の出来事で、訓練のため富士山の樹海の中で1人取り残されサバイバル訓練をしていたときにふと現れた謎じみた男性のことを、自殺するために樹海に入ってきた自分の未来の姿ではないかという妄想じみた話し。

その訓練中に密かに持っていった本がトルーマン・カポーティの「ティファニーで朝食を」で、訓練から撤収する際、雨で濡れそびたその本を捨てていこうとしたら、謎の男性から持っていくよう渡されて、今でもちゃんと保管してある。

で、浅田氏が自衛隊に入隊したのは三島由紀夫が自衛隊で割腹自殺をしたことを機に決めたのは有名な話し。そして三島由紀夫が来日したカポーティと面会した後、「カポーティは自殺する」と予言していたという(結果は自殺したのは三島でカポーティは60才の時心臓発作で病死)。なにか連綿とした不思議なえにしを感じさせられます。

4月後半の読書 2013/5/1(水)

037 ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫)
ジェフリー・アーチャーやコナリー、フォーサイスなどと同様、文庫が出てくればなにも考えずにすぐに買ってしまう浅田次郎氏の小説です。

タイトルからもわかるように、幸せな定年を迎えようと、これから定年を迎えようとする人には羨ましい限りの話しがいっぱい出てきます。

主人公は役所を早期に肩を叩かれたノンキャリア公務員で、典型的な天下りとして60歳定年までの5年間を過ごすため、戦後まもなくGHQの指導の元で作られた中小企業協会へ入社することになります。

解説で勝間和代氏が書いているとおり、この天下りの仕組みや仕事?の内容はまさに現実そのもので、とにかく5年間なにもしないでジッとしていれば多額の退職金がもらえてハッピーリタイアメントできるという素晴らしきかな人生はと言わんばかりの世界が描かれています。

しかし意外だったのはもう枯れてしまっていると思っていた新顔の二人が実はまだ枯れていない上に、一人は独身、一人は離婚し一家離散した後と言うこともあり、家族のためとかしがらみもなにも持っていないため、本来の仕事にせいを出してしまい、様々なことが起きてしまいます。

いずれにしても中高年者の悲哀が十分に描かれていますが、中でも『どれほど視力に自信があり、どれほど注意力にすぐれていても、けっして自分の目に見えぬ人間が世界にただひとりだけいる。ほかでもない自分自身である。だからたいていの人間は、自分が最も華やいでいた時代の姿を心の鏡にとどめて、誰の目にもそう映っているにちがいないと誤解している。その錯覚に気付いてさえいれば齢なりに尊敬もされ、大人になることも美しく老いることもできるのだが、それはなかなか難しい。』という文章に、ショックを受けない中高年者は少なくないはずです。

特にこの本の主人公のように仕事一筋で生きてきた人にとっては。

あと、小説の中に「つぶれたリーマン(ブラザーズ証券)の(サラ)リーマンが可哀想」という表現が何度か出てきますが、私に言わせれば「リーマンのリーマンは上下を問わず実力以上の高額な報酬を長期間にわたりもらい続けていたわけだからいきなりクビになっても平気の屁」だと思います。なので全然可哀想じゃありません。

もっともつぶれる直前に入社した人は「お気の毒様、あぶく銭をもらい損ねたね」としか言えませんが、正しいリーマンならば新橋の焼鳥屋でサワーをチビチビと飲むのであって、リーマンのリーマンのように六本木ヒルズでワインなどかっくらうのではありません。

10月上旬の読書 2011/10/19(水)

036 中原の虹 (1) (2) (3) (4) (講談社文庫)
NHKが中国と共同でドラマ化している清朝末期を描いた「蒼穹の昴」の続編です。

同時代の義和団の乱(1900年)を描いた「珍妃の井戸」と合わせて3部作とも言われていて、300年続いた清朝が崩壊し中華民国ができあがっていく混乱した時代で、その完結編ということになるのでしょう。

清朝末期といえば映画「ラストエンペラー」が有名ですが、まさにその少し前の西太后や袁世凱、満州の馬賊の張作霖が暗躍した頃の時代で、一般的には史上最悪の悪女とも言われている西太后がそうしなければならなかった時代背景、それに愛と苦悩が壮大なスケールで描かれています。

小説ですので、実在の人物以外にも想像の人物も多数出てきていて、どこまでが真実でどこからが創作なのかよくわかりません。

中学校や高校の時に習った元、明、清王朝のことや、義和団事件、辛亥革命などを思い出しつつ読んでいくことになりますが、相当に浅田ロマンが込められていますので、あくまでもそうあって欲しいという著者の願望だと思って読み進めることがいいのかもしれません。

文庫本4冊にまたがる長編ですが、「蒼穹の昴」と同様、あっという間に読み進められます。

ただ人名や地名が慣れ親しんだ漢字の日本語読みではなく、中国発音のふりがながふってありますので、それに多少とまどってなかなか覚えられないかもしれません。

例えば満州で活躍した馬賊で後に清朝の軍隊に加わった「張作霖」は日本の教科書では「ちょうさくりん」ですが、小説では「チャン ヅォリン」、しかも通称が「白虎張(パイフーチャン)」、字は「雨亭(ユゥ ティン)」となりますので、この3つの名前が次々と出てくることになります。

日本でも有名な袁世凱(えんせいがい=ユアン シーカイ)に至っては、字は慰亭(いてい)、号は容菴(ようあん)、また一時は洪憲皇帝を名乗ることになります。

現在は日本と中国の関係は非常に険悪なムードとなっていますが、この小説の舞台では、日清戦争や義和団事件で日本が大陸や満州に進出していく様子が出てきます。

と同時に反政府の革命家達は、政府軍に追われると日本へ逃げて庇護されるという微妙な関係になりたっています。

いずれにしてもこの頃から太平洋戦争までの日本の行いが、100年後の今になっても政争の道具とされ、反日運動の火種になっていることは間違いありませんので、ちょっと複雑な思いがします。

清王朝のきらびやかで、厳かな雰囲気と、清朝末期に起きた漢民族による革命で大きく動く大陸、権益を狙う先進諸国の思惑、隣接する領土満州で起きる新しい国作りの動きなどが相まって、混乱の極みを呈する清朝末期を、浅田ワールドがもの悲しく、しかし時には暖かく展開されるこの小説は、漢民族が主体の中国人民はともかく、きっと世界中で長く読み継がれていくのではと思います

10月後半の読書 2010/11/4(木)

035 月島慕情(文春文庫)
浅田次郎氏の小説は基本的に文庫になれば全部読んでいますが、「蒼穹の昴」や「壬生義士伝」のような長編はもちろん、このような短編もさすがです。

ただ短編はあっという間に終わってしまって物足りない消化不良な感じがします。やっぱりじっくりと長編をわくわくしながら読みたいというのが本音です。

この七編の短編はいずれも涙腺が弱いとウルウルすることうけおいです。私も「雪鰻」や「シューシャインボーイ」なんかには、、、ちょっと泣いてみたい人にお勧めです。

1月後半の読書 2010/2/2(火)

034 つばさよつばさ(小学館文庫)
「つばさよつばさ」はJALの機内誌向けに書かれた浅田次郎氏のエッセイ集です。「蒼穹の昴」など長編の名手はエッセイでもひと味もふた味も違います。

川端康成のように旅をしてそれを小説にする手法にあこがれている著者ですが、実質は小説を書くために現地を取材をするというスタイルのようで、なかなか自由に気ままな旅を満喫できてはいないようです。

既に超売れっ子作家になった現在は取材にかこつけなくてもモナコでもベガスでもマカオでも自由だとは思いますが。いやでも本当に面白い話しが満載で機内誌だけで終わるにはもったいないのもわかります。

11月後半の読書 2009年12月1日(火)

033 姫椿 (徳間文庫)
2003年に文藝春秋から発刊された短編を集めた小説で、発刊後まもなく買って読んでいましたが、今年の2月に別の出版社(徳間書店)から中身は同じこの文庫が新たに発売され、徳間書店としては新刊本扱いなので、当然のように書店の新刊書コーナーに並べてありました。

で、深く考えずに手に取り買ってしまい、見事に騙されてしまいました。ハイハイ買った私がバカなだけです、わかってますハイハイ。

このような出版社を違えて同じ小説が発行されることは、人気作家の場合、ままあることですが、せめて先に出した文庫が廃刊または絶版、在庫切れになってからにしてもらたいものです。

Amazonを見るとまだ文藝春秋の文庫も新品が普通に売られていてしかもそちらのほうが値段が安く、なんか枯れ葉も山の賑わいで目立つ新刊本コーナーに置くための一種の詐欺商法みたいな感じさえ受けてしまいます。

徳間書店といえばギャビン・ライアルの「深夜プラス1 (ハヤカワ書房)」のまるごとパクリの志水辰夫氏「深夜ふたたび」(徳間文庫)を、そのことにまったく触れずにシラっと販売していました。

せめてそういうことは最低限裏表紙のあらすじや中の解説などで触れておくべきで、まったく人を騙すことに抵抗のない、誠意の感じられない会社です。

「舞台をアメリカを日本に置き換えただけで、出てくるジョークまでまったく同じ内容の小説なら買うわけないだろ!」と思うのですが。はがきでクレームを入れましたが当然反応なしでした。

その後志水氏の小説を一切読まなくなったのは言うまでもありません。徳間書店の本を買うときには今後注意が必要です。って言うかできれば買いたくない。

それと似た手法としては出版社は同じで、カバーや帯を変えて置かれることがありますが、その場合は新刊本コーナーには置かれないので、納得して購入できるので問題ありません。

カバーを変えただけで埋もれて消えていく小説がバカ売れすることがありますので、それはいいことだとです。

浅田次郎ファンは多いので、私と同様に新刊本コーナーに置かれた文庫をタイトルなどロクに見ず、すぐ買ってしまた人も多いのではないでしょうか。お気の毒さまです。

一応しゃくだから最初からすべてを読み直しました。半分以上ストーリーを忘れてしまっていましたが、そいうことも含め、正直言って浅田次郎氏の作品にしては珍しく、ほとんど印象に残らない平凡な、悪く言えばつまらないストーリーだなと感じました。

同じ小説を二度買いしてしまった不満と恨みがそこには込められているので話半分にしてください。

2月後半の読書 2012/3/4(日)

032 月下の恋人 (光文社文庫)
短編集ですが、ちょっと今回のものは期待はずれかなぁ。著者への期待が歴史ものとか過去のオマージュのようなところに行ってしまったせいもあるのでしょうが、私に言わせれば浅田次郎らしくない短編です。なにか実験でもしているのかな。

9月後半の読書 2009年10月3日 (土)


「BOOK」データベースより
恋人に別れを告げるために訪れた海辺の宿で起こった奇跡を描いた表題作「月下の恋人」。ぼろアパートの隣の部屋に住む、間抜けだけど生真面目でちょっと憎めない駄目ヤクザの物語「風蕭蕭」。夏休みに友人と入ったお化け屋敷のアルバイトで経験した怪奇譚「適当なアルバイト」…。珠玉の十一篇を収録。

031 沙高樓綺譚 草原からの使者 (文春文庫)
2009/01/25読了

「BOOK」データベースより
ロンドンの超高級カジノの一夜は夢のように過ぎた―。大資産と才気、家柄、すべてを持った青年の驚愕の告白とは。総裁選の真実、大馬主が体験した運命の勝負、そしてアメリカ人退役軍人たちの「もう一つの戦い」。金と名誉を得た者だけが味わう甘美と戦慄を、浅田次郎が精緻に織り上げた傑作短編集。

030 あやし うらめし あな かなし (集英社文庫)
2008/10/31読了

「BOOK」データベースより
子供の頃、伯母から聞かされた恐怖譚―。月のない夜、奥多摩の霊山に建つ神官たちの屋敷を男女の客が訪れた。思いつめた二人は、神主の説得の甲斐もなく屋敷内で心中を図ったという。だが女は死に切れず、事切れた男の隣で苦しみながら生き続け…。著者の母方の生家に伝わる話を元にした「赤い絆」「お狐様の話」など、怖ろしくも美しい全7編。短編の名手が紡ぐ、味わい深き幽玄の世界。

029 お腹召しませ (中公文庫)
2008/10/08読了

「BOOK」データベースより
お家を守るため、妻にも娘にも「お腹召しませ」とせっつかれる高津又兵衛が、最後に下した決断は…。武士の本義が薄れた幕末維新期、惑いながらもおのれを貫いた男たちの物語。表題作ほか全六篇。中央公論文芸賞・司馬遼太郎賞受賞。

028 霧笛荘夜話 (角川文庫)
2008/04/18読了

「BOOK」データベースより
とある港町、運河のほとりの古アパート「霧笛荘」。法外に安い家賃、半地下の湿った部屋。わけ知り顔の管理人の老婆が、訪れる者を迎えてくれる。誰もがはじめは不幸に追い立てられ、行き場を失って「霧笛荘」までたどりつく。しかし、「霧笛荘」での暮らしの中で、住人たちはそれぞれに人生の真実に気付きはじめる―。本当の幸せへの鍵が、ここにある。比類ない優しさに満ちた、切ない感動を呼ぶ7つの物語。

027 天切り松 闇がたり 4 昭和侠盗伝 (集英社文庫)
2008/04/10読了

「BOOK」データベースより
時は昭和九年。関東大震災から復興を遂げ華やかなモダン東京を謳歌したのも束の間、戦争の影が徐々に忍び寄っていた。ついに寅弥が我が子のようにいとおしんできた勲にも召集令状が届く。国の無体に抗おうと松蔵らが挑んだ企みとは?激動の時代へと呑みこまれていく有名無名の人々に安吉一家が手をさしのべる五編。人の痛みを、声なき声を、天下の侠盗たちが粋な手並みですくいとる。

026 憑神 (新潮文庫)
2007/05/04読了

「BOOK」データベースより
時は幕末、処は江戸。貧乏御家人の別所彦四郎は、文武に秀でながら出世の道をしくじり、夜鳴き蕎麦一杯の小遣いもままならない。ある夜、酔いにまかせて小さな祠に神頼みをしてみると、霊験あらたかにも神様があらわれた。だが、この神様は、神は神でも、なんと貧乏神だった!とことん運に見放されながらも懸命に生きる男の姿は、抱腹絶倒にして、やがては感涙必至。傑作時代長篇。

025 輪違屋糸里 上・下(文春文庫)
2007/04/06読了

「BOOK」データベースより
文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在である輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。「壬生義士伝」に続き、新選組の“闇”=芹沢鴨暗殺事件の謎に迫る心理サスペンス。

芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の恋人吉栄、新選組の屯所、八木・前川両家の女房たちは、それぞれの立場から、新選組内部で深まる対立と陰諜を感じ取っていた。愛する土方のため、芹沢暗殺の企みに乗った糸里の最後の決意とは?息を飲むクライマックスと感動のラスト。巻末に著者と輪違屋当主の対談を収録。

024 五郎治殿御始末 (新潮文庫)
2006/01/29読了

「BOOK」データベースより
勢州桑名藩の岩井五郎治は、新政府の命で、旧藩士の整理という辛い役目についていた。だが、それも廃藩置県によって御役御免。すでに戊辰の戦で倅を亡くしている老武士は、家財を売り払い、幼い孫を連れて桑名を離れたが…「五郎治殿御始末」。江戸から明治へ、侍たちは如何にして己の始末をつけ、時代の垣根を乗り越えたか。激動の世を生きる、名も無き武士の姿を描く珠玉の全6編。

023 沙高樓綺譚(文春文庫)
2005/11/25読了

「BOOK」データベースより
「沙高樓へようこそ」女装オーナーの言葉で、今宵もめくるめく百物語が始まる。日本刀の真贋をめぐる真実、かつての日本映画界の伝説、やくざ渡世の内幕―巨万の富と名誉を得た者が胸に秘めてきた驚愕の光景が、鮮やかな語り口とともに展開する。ストーリーテラー・浅田次郎が本領発揮した超贅沢な短編集。

022 オー・マイ・ガアッ! (集英社文庫)
2004/12/11読了

「BOOK」データベースより
日本史上最大のお気楽男、ファッション・メーカーの共同経営者にだまされ彼女にも逃げられた正真正銘のバカ、大前剛47歳。元スーパー・キャリア・ウーマン、現ラスベガス・ブールヴァードのコール・ガール、肉体以外のすべてを捨てた梶野理沙32歳。ベトナム戦争末期の鬼軍曹も、いまはただの飲んだくれ、エリートの妻に捨てられたジョン・キングスレイ―が、スロット・マシンで史上最高のジャック・ポットを出しちまった!だが…。謎の老婆に若き石油王、元マフィア父子にヒットマンetc。爆笑のうちに、人生はルーレットのごとく回転し、そして!著者会心の、勇気百倍正調喜劇。

021 珍妃の井戸 (講談社文庫)
「BOOK」データベースより
列強の軍隊に制圧され、荒廃した北京。ひとりの美しい妃が紫禁城内で命を落とした。四年前の戊戌の政変に敗れ、幽閉された皇帝・光緒帝の愛妃、珍妃。事件の調査に乗り出した英・独・日・露の四人の貴族たちを待っていた「美しい罠」とは?降りしきる黄砂のなかで明らかになる、強く、悲しい愛の結末。長編歴史ミステリー・ロマン。

020 蒼穹の昴(1) (2) (3) (4) (講談社文庫)
2004/10/30読了

「BOOK」データベースより
汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう―中国清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児は、占い師の予言を通じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀に従って都へ上った。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた二人を待ち受ける宿命の覇道。万人の魂をうつべストセラー大作。

官吏となり政治の中枢へと進んだ文秀。一方の春児は、宦官として後宮へ仕官する機会を待ちながら、鍛錬の日々を過ごしていた。この時、大清国に君臨していた西太后は、観劇と飽食とに明けくれながらも、人知れず国の行く末を憂えていた。権力を巡る人々の思いは、やがて紫禁城内に守旧派と改革派の対立を呼ぶ。

落日の清国分割を狙う列強諸外国に、勇将・李鴻章が知略をもって立ち向かう。だが、かつて栄華を誇った王朝の崩壊は誰の目にも明らかだった。権力闘争の渦巻く王宮で恐るべき暗殺計画が実行に移され、西太后の側近となった春児と、革命派の俊英・文秀は、互いの立場を違えたまま時代の激流に飲み込まれる。

人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、あってたまるものか―紫禁城に渦巻く権力への野望、憂国の熱き想いはついに臨界点を超えた。天下を覆さんとする策謀が、春児を、文秀を、そして中華四億の命すべてを翻弄する。この道の行方を知るものは、天命のみしるし“龍玉”のみ。感動巨編ここに完結。

019 王妃の館 上・下 (集英社文庫)
2004/06/25読了

「BOOK」データベースより
パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ十四世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。

ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた―かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。さらに「王妃の館」に秘められた太陽王・ルイ十四世の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。

018 歩兵の本領 (講談社文庫)
2004/05/21読了

「BOOK」データベースより
名誉も誇りもない、そして戦闘を前提としていない、世界一奇妙な軍隊・自衛隊。世間が高度成長で浮かれ、就職の心配など無用の時代に、志願して自衛官になった若者たちがいた。軍人としての立場を全うし、男子の本懐を遂げようと生きる彼らを活写した、著者自らの体験を綴る涙と笑いの青春グラフィティ!

017 薔薇盗人 (新潮文庫)
2003/07/02読了

「BOOK」データベースより
「親愛なるダディと、ぼくの大好きなメイ・プリンセス号へ」―豪華客船船長の父と少年をつなぐ寄港地への手紙。父の大切な薔薇を守る少年が告げた出来事とは―「薔薇盗人」。リストラされたカメラマンと場末のストリッパーのつかの間の、そして深い哀情「あじさい心中」。親友

016 シェエラザード(上)(下) (講談社文庫)
2002/12/25読了

「BOOK」データベースより
昭和二十年、嵐の台湾沖で、二千三百人の命と膨大な量の金塊を積んだまま沈んだ弥勒丸。その引き揚げ話を持ち込まれた者たちが、次々と不審な死を遂げていく―。いったいこの船の本当の正体は何なのか。それを追求するために喪われた恋人たちの、過去を辿る冒険が始まった。日本人の尊厳を問う感動巨編。

弥勒丸引き揚げ話をめぐって船の調査を開始した、かつての恋人たち。謎の老人は五十余年の沈黙を破り、悲劇の真相を語り始めた。私たち日本人が戦後の平和と繁栄のうちに葬り去った真実が、次第に明るみに出る。美しく、物悲しい「シェエラザード」の調べとともに蘇る、戦後半世紀にわたる大叙事詩、最高潮へ。

015 壬生義士伝 上・下(文春文庫)
2002/10/18読了

「BOOK」データベースより
小雪舞う一月の夜更け、大坂・南部藩蔵屋敷に、満身創痍の侍がたどり着いた。貧しさから南部藩を脱藩し、壬生浪と呼ばれた新選組に入隊した吉村貫一郎であった。“人斬り貫一”と恐れられ、妻子への仕送りのため守銭奴と蔑まれても、飢えた者には握り飯を施す男。元新選組隊士や教え子が語る非業の隊士の生涯。浅田文学の金字塔。

五稜郭に霧がたちこめる晩、若侍は参陣した。あってはならない“まさか”が起こった―義士・吉村の一生と、命に替えても守りたかった子供たちの物語が、関係者の“語り”で紡ぎだされる。吉村の真摯な一生に関わった人々の人生が見事に結実する壮大なクライマックス。第13回柴田錬三郎賞受賞の傑作長篇小説。

014 プリズンホテル 1 夏 2 秋 3 冬 4 春 (集英社文庫)
2001/12/04読了

「BOOK」データベースより
極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ―。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。

花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが「プリズンホテル」へ投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察署の酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。愛憎ぶつかる温泉宿の夜は笑えて、泣けて、眠れない。

阿部看護婦長、またの名を“血まみれのマリア”は心に決めた。温泉に行こう。雪に埋もれた山奥の一軒宿がいい…。大都会の野戦病院=救命救急センターをあとに、彼女がめざしたのは―なんと我らが「プリズンホテル」。真冬の温泉宿につどうのは、いずれも事情ありのお客人。天才登山家、患者を安楽死させた医師、リストラ寸前の編集者。命への慈しみに満ちた、癒しの宿に今夜も雪が降りつもる。

義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残すことはない…。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。笑って泣ける感動の大団円。

013 見知らぬ妻へ (光文社文庫)
2001/06/13読了

「BOOK」データベースより
新宿・歌舞伎町で客引きとして生きる花田章は、日本に滞在させるため偽装結婚した中国人女性をふとしたことから愛し始めていた。しかし―。(表題作) 才能がありながらもクラシック音楽の世界を捨て、今ではクラブのピアノ弾きとして生きる元チェリストの男の孤独を描いた「スターダスト・レビュー」など、やさしくもせつない8つの涙の物語。

012 勇気凛凛ルリの色 福音について (講談社文庫)
2001/03/28読了

ついにとったぞ、直木賞。受賞前後の興奮と戸惑いを綴るエッセイ。爆笑のち涙。やがてじんわり効いてくる! 恋焦がれた直木賞。紆余曲折はあったけど、ついに雪辱、祝受賞。その前後の喜怒哀楽を、ときに格調高く、そしてときに下品に綴った貴重な記録の傑作エッセイ。他人の弱点を笑いとばし、自らの身を嘆息する。しかし我が道を信じ邁進し、手に入れたのが売れっ子作家の誉れと超多忙。力みなぎるエッセイ集。(講談社文庫)

011 霞町物語 (講談社文庫)
2000/12/07読了

「BOOK」データベースより
青山と麻布と六本木の台地に挟まれた谷間には、夜が更けるほどにみずみずしい霧が湧く。そこが僕らの故郷、霞町だ。あのころ僕らは大学受験を控えた高校生で、それでも恋に遊びにと、この町で輝かしい人生を精一杯生きていた。浅田次郎が始めて書いた、著者自身の甘くせつなくほろ苦い生活。感動の連作短編集。

010 天国までの百マイル (講談社文庫)
2000/11/09読了

「BOOK」データベースより
事業に失敗し愛する妻子とも別れたダメ中年の城所安男。重い心臓病を患う老母を乗せて天才心臓外科医がいるという病院までポンコツ車でひた走る。母、水商売のマリ、元妻…すべての人の思いとともに辿りついた先には切ない奇跡が待っていた。著者自らの経験を元に書かれたからこそ落涙必至、名作中の名作。

009 活動寫眞の女 (集英社文庫)
2000/09/25読了

「BOOK」データベースより
昭和四十四年、京都。大学の新入生で、大の日本映画ファンの「僕」は友人の清家忠昭の紹介で、古き良き映画の都・太秦の撮影所でアルバイトをすることになった。そんなある日、清家は撮影現場で絶世の美女と出会い、激しい恋に落ちる。しかし、彼女は三十年も前に死んだ大部屋女優だった―。若さゆえの不安や切なさ、不器用な恋。失われた時代への郷愁に満ちた瑞々しい青春恋愛小説の傑作。

008 月のしずく (文春文庫)
2000/09/21読了

「BOOK」データベースより
三十年近くコンビナートの荷役をし、酒を飲むだけが楽しみ。そんな男のもとに、十五夜の晩、偶然、転がり込んだ美しい女―出会うはずのない二人が出会ったとき、今にも壊れそうに軋みながらも、癒しのドラマが始まる。表題作ほか、子供のころ、男と逃げた母親との再会を描く「ピエタ」など全七篇の短篇集。

007 鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)
2000/04/13読了

「BOOK」データベースより
娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた…。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録。日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラー作品集にあらたな「あとがき」を加えた。第117回直木賞を受賞。

006 勇気凛凛ルリの色 (講談社文庫)
1999/11/10読了

「BOOK」データベースより
陸上自衛隊出身、ピカレスク人生経由、現在小説家。今や超多忙で絶好調、超有名とサクセスした直木賞作家が、理不尽な宿命を笑いとばす自伝的熱血エッセイ。涙あり笑いあり怒りあり哀しみあり、おのれの目標めざして突き進んだ男の、体を張った文章は、読めば思わずパワーが湧いてくる!元気が出る一冊。

005 極道放浪記〈2〉相棒への鎮魂歌 (幻冬舎アウトロー文庫)
1999/07/23読了

「BOOK」データベースより
「一人でも多くの方にこの経験談を読んでいただきたい。私はこの書物の舞台となった前後十数年の間に、三度は死んでいる」――直木賞作家が必死に生き抜いてきた軌跡を辿る最後の懺悔録!

004 勝負の極意 (幻冬舎アウトロー文庫 O 1-1)
1999/06/29読了

「BOOK」データベースより
私はこうして作家になった! どうしても小説家になりたかった男は卓越した博才と商才を駆使し、ついに悲願を成就――直木賞作家が履き続けた二足のわらじとは? 痛快人生必勝エッセイ。

003 初等ヤクザの犯罪学教室 (幻冬舎アウトロー文庫)
1998/08/10読了

「BOOK」データベースより
「私はこの先、皆さんに鮮やかな詐欺の手口とか、簡単な人の殺し方だとか、強盗、麻薬、誘拐などの兇悪犯罪のノウハウを講義するわけです」――著者の実体験(?)に基づく犯罪学エッセイ!

002 地下鉄(メトロ)に乗って (徳間文庫)
1997/11/26読了

「BOOK」データベースより
すべての地下鉄通勤者に捧ぐ!愛と死、そして魂の再生へ。戦後の地下鉄を舞台に感動の冒険ファンタジー。

001 日輪の遺産 (講談社文庫)
1997/10/16読了

「BOOK」データベースより
帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したという時価200兆円の財宝。老人が遺(のこ)した手帳に隠された驚くべき真実が、50年たった今、明らかにされようとしている。財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙する感動の力作。ベストセラー『蒼穹の昴』の原点、幻の近代史ミステリー待望の文庫化。


浅田次郎の歩き方 2021/8/4


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