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西加奈子 NISHI KANAKO 既読書籍

005 サラバ(上)(中)(下)
004 白いしるし 003 ふくわらい  
002 きいろいゾウ  001 通天閣


1977年イラン・テヘラン生まれ。父の海外赴任地イランのテヘランに生まれ、イラン革命が起きた2歳のときに帰国。関西大学法学部卒。大学卒業後は就職せず、アルバイトとして『ぴあ』の店舗取材ライターを続ける傍ら、のちに友人と協同で玉造にカフェを開業。25歳くらいから短編小説を書き始め、作家になるために単身上京。知り合いから小学館の編集者を紹介され、2004年『あおい』にてデビュー、翌2005年に発表した『さくら』が20万部を超えるベストセラーとなった。その後『通天閣』で織田作之助賞(2007年)、『ふくわらい』で河合隼雄物語賞(2013年)、そして作家生活10周年を記念して上梓した大作『サラバ!』で直木賞(2015年)を受賞した。(Wikipediaより引用 2022年)


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005 サラバ(上)(中)(下)(小学館文庫)

2014年に単行本、2017年に文庫化された長編小説で、2015年に直木賞を受賞した作品です。

主人公の男性が一人称で子供の頃から大人になるまでの複雑な家庭の事情と、自身の交友関係を中心に語っていきます。

父親の仕事の関係でイランで生まれ、一度は母親の実家がある大阪へ帰国するものの、小学生の頃にはやはり父親について家族でエジプトへ引っ越します。

これは著者自身の実体験が元となっているようで、現地の風俗や日本人学校の様子など、リアリティがあり読んでいても引き込まれます。

この子供時代に外国で生活している時代が、80年代後半頃でちょうど日本がバブルの真っ只中、日本人全体が自信にあふれていて生き生きとしているのがよくわかります。

そんな中でも主人公の家族にはちょっと変わった母親と、かなり変わった姉がいて、幼いながら主人公はそれらにできるだけそれには関わらないように苦心しています。

エジプトでは同年齢の現地エジプト人の友人ができ、アラビア語で「さようなら」のことを「マッサラーマ」と発音することから、それと日本語の「サラバ」を重ねて二人の合い言葉にして、いつも「サラバ!」と声を掛け合うことになります。それがこの小説のタイトルとなっています。

この小説の主人公は、身長が高く綺麗な顔立ちをしたモテモテの男性ですが、どこまで女性の著者の願望と体験がリンクしているのか気になるところです。

主人公の母親の母親(主人公の祖母)や姉(叔母)、以前住んでいたアパートの大家さんで背中に菩薩の刺青があり、やがては周囲から教祖様に持ち上げられていく女性など、魅力ある人達が次々と登場してきますが、これもまた著者の親族からなにかしらのモチーフを得ているのでしょうか。

そして大学生活や、アルバイトを続けながら、ライターの仕事も請け負い、そしてやがては家族と友情を描いた小説を書くという主人公と著者が重なっていくところが面白かったです。

★★★

10月前半の読書と感想、書評 2022/10/15(土)

004 白いしるし (新潮文庫)
2010年単行本、2013年に文庫化された小説です。著者の作品は過去に「きいろいゾウ」(2006年)、「通天閣」(2006年)、「ふくわらい」(2012年)の3編を読んでいます。

そう言えば直木賞受賞作で代表作の「サラバ!」(2014年)はまだ読んでいませんでした。

上記の「虚無への供物」とは対称的で、200ページ足らずの、文庫の中でも薄くてサラッと読んでしまえる短い作品です。

32歳の独身女性の心理をたくみに小説に仕上げていますが、60過ぎた男性が読むと「へぇ〜」とか「あれー」とか思うことしきりです。

新宿のバーでアルバイトのバーテンの仕事をしながら絵画を描いている大阪出身の女性が主人公で、友人のカメラマンに連れられてある美術作家の個展へ行き、そこで出会った作者との不思議な関係がテーマです。

大阪弁丸出しの主人公の会話がとても良い感じですが、独身女性の32歳というのは、やっぱり将来を考える岐路ってところなのでしょうかね。よくわかりませんが、、、

北村薫著の「八月の六日間」は30代後半の独身女性の山歩きと人生についてのなんやかんやでたいへん面白く読めましたが、なんとなくそれにも似ているかな。

ただ結末というか終盤は盛り上がらず、そのままフェードアウトしてしまったような感じで、後に印象が残らないものでした。オッサンだからかも知れません。

★★☆

4月前半の読書と感想、書評 2019/4/17(水)

003 ふくわらい (朝日文庫)
2012年に単行本、2015年に文庫化されたなんとも不思議な小説です。

主人公は冒険作家でほとんど家にはいなかった父親と家政婦に育てられた女性で、早くに母親を亡くし、父親も一緒に旅をしていた南米でワニに襲われて亡くなり、親戚の家で育てられましたが、現在は出版社の作家担当として勤務し、自立した生活を送っています。

主人公は小さな頃から無表情、無感動な子供でしたが、ふくわらいで初めて大笑いし、その後もふくわらいの遊びを続けるようになります。

会話の中でゲシュタルト崩壊という言葉がよく出てきますが、ひとつの全体のまとまりに集中すると、それぞれのパーツひとつひとつが不思議と理解できなくなる現象のこと言いますが、ふくわらいにおいても、人の顔の全体がまずあって、その顔のパーツそれぞれが単独で動いてしまうとそのパーツが意味不明になってしまうという暗喩が秘められているように思います。

著者の小説は「通天閣」と「きいろいゾウ」と荒削りな初期の作品を読んでいましたが、16作目となるこの作品はいよいよ売れっ子作家として、また余裕が出てきたというかベテランの域に入りつつある作品で、とてもよいデキです。

そしてこの作品の2年後、2014年には「サラバ! 」で、2回目のノミネートながら見事、直木賞を受賞しますので、その創作力、文章力はここ数年で格段にその才能が伸びてきているのでしょう。

★★★

11月前半の読書と感想、書評 2017/11/15(水)

002 きいろいゾウ (小学館文庫)
この小説は2006年に単行本で、その後2008年に文庫化されました。また2013年には宮崎あおいと向井理出演で映画化もされています。見てないけど。

著者の作品は過去に「通天閣 」を読んでいます。コテコテの大阪下町を愛おしく書いた小説で、織田作之助賞の大賞を受賞したよい作品でした。

2013年10月前半の読書と感想、書評「通天閣」

さてこちらの小説は、若い男女が男の田舎にある実家に帰り、暮らしている日常が描かれますが、チャボや犬と会話ができたり、草木に励まされたりと、ファンタジー的な要素も含まれています。

その他、定番とも思える大人よりもしっかりした小賢しい?少年、主人公の夫の背中にある前カノと関係がある鳥の入れ墨、旦那だけに働かせて自由気ままな生活を送っている主人公と、まったくよくわからない作品です。

タイトルは、本文中に文字だけ出てきますが、主人公が子供の頃に親しんだ絵本で、病弱な女の子が月の使者となっていた黄色い象に連れられて世界中を飛び回るという、こちらもファンタジーな内容。

還暦まであと1年と少しというオヤジだと、こうしたほんわかしたファンタジー作品を味わい親しむのは、売れない芸人が大勢集まり、騒がしいだけのテレビのバラエティ番組と同様、もう厳しくなってきたなぁとつくづく感じています。

★☆☆

10月後半の読書の感想、書評 2016/11/2(水)

001 通天閣 (ちくま文庫)
先に読んだ柴崎友香著「その街の今は」と同じ香りがする小説です。著者は2004年にデビューし、16作目の「ふくわらい 」が今年の直木賞候補となったこれからまだまだ有望な若手作家さんです。

この「通天閣」はデビューから4作目、2006年に発刊された小説で(文庫版は2009年刊)、2006年の「その街の今は」に続き、2007年の織田作之助賞を受賞しています。

主人公は大阪の下町にある通天閣のそばに住んでいる、まったく縁もゆかりもない男女二人で、その二人の話を中心にして展開していきます。

ひとりは40才を過ぎても独身のまま、100円ショップに卸す商品を包装している小さな工場勤務の男性。もうひとりの主人公の女性は同棲していた男性が突然米国に留学することになり、その帰りをひたすら待ちつつも、やがてはふられてしまうことに。

その女性は、生活費を稼ぐため、なんばの怪しげなスナックで働くことになり、そこのオーナーに気に入られて黒服のギャルソンを任されています。

それらの主人公の周りにはこれまたユニークな面々が揃い、日々の生活が淡々と流れていきます。

そして見ず知らずだった男女が、ある日なんばで飛び降り自殺志願者が現れた現場で、すれ違うことになりますが、実はこの二人は、、、ってところで最後のオチというか実際はオチにはなっていませんが、ワケありの二人の関係が、読者だけには知れることとなります。大阪なのでオチがなくていいのか!という声もありますが、それでいいのです。

10月前半の読書と感想、書評 2013/10/16(水)



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