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百田尚樹 HYAKUTA NAOKI 既読書籍
010 | 錨を上げよ(1)出航篇(2)座礁篇(3)漂流篇(4)抜錨篇 | 009 | カエルの楽園 |
008 | フォルトゥナの瞳 | 007 | 幸福な生活 |
006 | 夢を売る男 | 005 | 海賊とよばれた男(上)(下) |
004 | 影法師 | 003 | モンスター |
002 | ボックス!(上)(下) | 001 | 永遠のゼロ |
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1956年大阪府生まれ。同志社大学法学部中退。代表作に『永遠の0』や『海賊と呼ばれた男』など。2013年『海賊とよばれた男』で本屋大賞を受賞。2019年6月12日に、小説家引退を宣言。(Wikipediaより引用 2022年) |
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010 | 錨を上げよ(1)出航篇 (2)座礁篇 (3)漂流篇 (4)抜錨篇 (幻冬舎文庫) | |
2010年に単行本、2019年に文庫化された長編青春小説です。青春というのは、著者自身が経験してきたことを主人公に重ね合わせた少年から青年にかけての成長物語です。 文庫4冊で計1500ページを超えるかなりの長編ですが、シンプルな一人称だけの話しなので一気に読めます。 この小説が書かれたのは、2006年に「永遠の0」でメジャーデビューするずっと前の1985年頃、著者の29歳の頃だったそうです。多彩な人ですが、若い頃から創作力と文才はあったのですね。 著者は私よりも1歳年上の同年代、しかも同じ頃に同じ京都にある大学(大学は違いますが)へ通っていたということで、大学生時代の風俗やバンカラな描写はたいへん懐かしく感じます。 そう言えば五木寛之氏の「青春の門」でも大学時代の様々な出来事が主要な小説のテーマになっていましたが、時代背景や主人公の性格が全然違うとは言え、なんとなくそれを思い浮かべました。 京都の大学生活を描いた小説と言えば、時代は違いますが、万城目学著の「鴨川ホルモー」や、森見登美彦氏の小説にも時々出てきます。 大学生ではないですが、京都のバンカラな風土を描いていた花村萬月著の「百万遍 古都恋情」が面白かったです。 今でこそ大学授業料はとんでもなく高騰していますが、当時(1970年代)はまだ国立で年間10万円台、私立でも15〜30万円と破格でした。ただ著者が通った同志社は突出して高かった記憶があります。 学費が比較的安かったことで、本書でも出てきますが、将来の展望が見えず、大学8回生など留年をしている人は多かった時代です。 著者やこの主人公が通っていた同志社や学連の巣窟京都大学と違って私が行っていた大学は学生運動とはまったく縁がないところだった(本書にも出てくるキャンディーズを学園祭に呼んだ学校)のと、4年間ずっとアルバイトに明け暮れていたので、小説に出てくる学生運動家との接点はありませんでした。 ただ、バイト先で一緒に働いていた某大学の学生が、明治政府の最高権力者を祀る神社の爆弾放火事件に関係していたということで、警察が家にまで聞きに(調べに?)来たことはありました。 さて、本書の内容ですが、(1)出航篇は、主人公は3人兄弟(ずっと後にもうひとり弟が生まれて4人兄弟)の長男で、大阪の淀川近くの貧しい家で育ちます。勉強はさっぱりですが腕力と度胸だけあって喧嘩にはめっぽう強い典型的な不良少年です。 そしてさすがに中卒では将来困るだろうと、偏差値が低い商業高校へ進学しますが、そこは勉強ができない不良の吹きだまりで、学校側は生徒会と応援団と組み、生徒を規則と権力と暴力でがんじがらめにするという今ではすぐに問題となりそうな校風で、主人公は何度も事件を起こして謹慎処分を喰らい、4年をかけてようやく卒業することになります。 また在学中にバイクの免許を取り、中古バイクを買って夏休みに行き当たりばったりのツーリングをしますが、途中でバイクを盗まれたり、逆に暴走族のたまり場へ行き、他人のバイクを盗んだり、東京のぼったくりバーで呼び込みのアルバイトをしたりと、もうハチャメチャです。 (2)座礁篇では、高校卒業後に大阪のスーパーへ就職し、アパートでひとり住まいを始めます。 しかし根っからの遅刻クセや、気に入らない上司との軋轢、さらにスーパーにアルバイトに来ていた女子大生への一方的な恋愛感情が破綻(ほぼストーカー)したこともあり3ヶ月で辞めてしまいます。 その後、遠回りしたもののアルバイトをしながら大学を目指そうと猛勉強を開始し、東大は落ちますが、関西私大の雄、同志社大に合格し入学することになります。 大学ではまだ60年代の学生運動の残り火がある中で、文系サークルに加入しますが、そこの上級生の女性に一方的に惚れてしまい、今なら十分ストーカー規制法に抵触しそうな行動から、散々な目に遭います。懲りない主人公です。 主人公の中学生の頃から何度も惚れて討ち死にしている女性に対する強烈な思い込みとその行動は、当時だからまだ許されますが、とにかく自己中で勝手なものですが、あくまで小説ですから仕方ないですね。 (3)漂流篇では、大学を途中で投げ出し、あてもないまま東京へ向かい、野宿をしながら様々なアルバイトをして糊口をしのぎます。 その中で、長く続いたのがレコード販売会社で、クラシックレコードの販売で才能を発揮し、新たに輸入版販売を手がけます。 しかしそこでも女性関係でトラブり、仕事をキッパリ辞めてテレビで見た北海道の漁業へ飛び込みます。 そこでは未経験ということもありまともな仕事にはありつけず、声がかかったのはソ連領に入ってウニを採るリスクは高いが一攫千金の特攻隊漁船で、そこで地力を付け自ら船を調達し、船長となってぼろ儲けの仕事を始めます。 (4)抜錨篇は、大阪で一目惚れで結婚し、テレビの放送作家の仕事を始めますが、あるとき妻の浮気を目の当たりにし離婚、そして風俗店の店長と共にタイへ渡り女性を日本へ送り込む仕事や、タイ人の元恋人を連れ戻しにやってきた日本人とヤクザの騒動に巻き込まれていきます。 まったくとんでもないストーリーです。以上 ★★☆ 12月後半の読書と感想、書評 2022/1/5(水) |
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009 | カエルの楽園 (新潮文庫) | 2016年に単行本、2017年に文庫本が発刊された小説です。著者は、ジョージ・オーウェル著「一九八四年」をモチーフとした作品のような感じですが、著者の政治的スタンスを強く取り入れた、日本と憲法9条、日米同盟、自衛隊、朝日新聞などを寓話で揶揄した物語となっていて、従来の名著「永遠の0」のような感動小説を期待していては大きく裏切られます。 アマガエルはカエルの中でも小さく弱いので、周囲には様々な敵が多く、ある日、二匹のアマガエルが地域を跳びだし楽園の地を探しに旅に出ます。 そして、様々な辛苦を乗り越え、楽園と思われる地域にたどり着いたのですが、そこは昔激しく戦ったことがある鷲と協定を結び、他の外敵から守ってもらっている住民全部が平和ボケした地域でした。 しかし、鷲は年老いてしまい、「今までのように1羽だけで外敵から守ってやることはできない、もし守って欲しいのなら一緒に外的と戦え」と求めてきます。 その地域では、不戦の誓いがあり、戦うことが禁じられているので、鷲の提案を断り、やがては、近くの池から大きなウシガエルが、天敵の鷲がいなくなった地域へと迫ってきます。 ま、読者がどういう感想を持つかは、それぞれの立ち位置や考え方、思想によって違うでしょうが、少し極端とも思いますが、こうしたところから議論が始まるのも悪くはないかなと思います。 ここで特に強調されていることは、ポピュリズムというか、「不幸なことなど決して起きない」という、根拠のない自信を民衆に植え付けると、それがやがては民衆の中で熱狂となり、冷静な正しい判断など置き忘れ、もう引き返すことが容易でなくなるということ。 過去の歴史を見てもそういうことは何度も起きているだけに、今後そうはならないと言い切れません。 読んでいて、この小説は感動もなければ、決して気持ちよくはなれませんが、平和社会の中においても、心の片隅にこうした悲劇を持っておくことは無意味ではないでしょう。 ★★☆ 2月前半の読書と感想、書評 2020/2/19(水) |
008 | フォルトゥナの瞳 (新潮文庫) | 2014年に単行本、2015年に文庫化された長編小説です。2014年と言えば、その後様々な訴訟沙汰を引き起こした「殉愛」の発刊の直前で、この「殉愛」が大きな話題となったため、こちらの作品はあまり目立ちませんでした。 2019年には監督三木孝浩、神木隆之介や有村架純出演で映画が製作されています。 タイトルのフォルトゥナ(Fortuna)とは、ローマ神話に伝えられる運命の女神で、運命の車輪を司り、人々の運命を決めるという英語の「Fortune」の語源(wikipedia)ということで、この小説では、人がもうすぐ死ぬのがわかってしまう能力のことを指しています。 主人公は子供の時に両親と妹を事故で亡くし、天涯孤独の身で育ちますが、まっすぐに育ち、やがては自動車のボディを磨く工場で真面目に勤務し、その腕も高く評価されていきます。 その主人公が、まもなく死んでしまう人の姿が透明になって見えることに気がつき、未来を変えてそうした人を助けるべきかどうかで悩むことになります。 ある日、腕が透明になっている有名人をジッと見つめていると、中年男性から「お前もフォルトゥナの瞳を持っているな」と声をかけられ、その話から、人助けをすることで、自分の身体に大きな負担がかかり自分の寿命を縮めてしまうことを教えられます。 というような、特殊な能力を持ってしまったばかりに悩み続け、果ては多くの人を救うため、自分の命を引き換えにしてしまう犠牲的精神を発揮する美徳のお話しです。 個人的にはどうせであれば、乃南アサ著の「しゃぼん玉」のような、悪の限りを尽くしてきた男が、偶然山で知り合った老婆の元で暮らすうちに、過去の自分を反省し、やがては過去の罪を認めて自首するという流れの方が、読者の感情を盛り上げるためには良かったかな。 つまり本書においては悪事から身を引いて、自首する代わりに大事故を防止するために自分の命を差し出すというような感じ。 「永遠の0」でもありましたが、零戦の模擬戦闘で主人公をうっかりして機銃で撃ってしまったヤクザ者が、戦後、暴力団抗争で組長を斬ったあと、そこにいた主人公の妻だった女性も斬るはずだったのをお金を与えて逃がしたような感じ。 絵に描いたような真面目な苦労人が、さらに犠牲者精神を発揮するよりかは、ずっと物語としては面白いかも。まったく大きなお世話、余計なことですが。 ★★☆ 4月前半の読書と感想、書評 2019/4/17(水) |
007 | 幸福な生活 (祥伝社文庫) | 2011年に単行本、2013年に文庫版が発刊された短編小説集で、いわゆるショートショートに近い感じです。 政治信条などは別として、書かれている小説はたいへん好きなので、文庫化されているほとんどの作品は読んでいます。 それぞれのタイトルは、「母の記憶」「夜の訪問者」「そっくりさん」「おとなしい妻」「残りもの」「豹変」「生命保険」「痴漢」「ブス談義」「再会」「償い」「ビデオレター」「ママの魅力」「淑女協定」「深夜の乗客」「隠れた殺人」「催眠術」「幸福な生活」「賭けられた女」で、19編が収録されています。 いずれも最後のページをめくると、その最後の1行でオチがあるという仕掛けになっています。 短編ミステリー小説はあまり書いていない著者ですから、そのテクニックについては、話しの中盤ぐらいで簡単にオチが見えてくる、やや荒っぽさが残りますが(それも著者流の作戦かも知れません)、それでも短い文章の中でテンポよくキレキレの話しを面白く読ませてくれることは、他の長編小説と変わりありません。 それぞれの内容は、短編だけに少し書くだけでオチがわかってしまいそうなので書きませんが、星新一や小松左京のショートショートのように気楽に読むと良いかもしれません。シリアスなオチもあれば、ブラックユーモアなオチも楽しめます。 でもやっぱりこの著者の小説は、短編ではなく、じっくり長編で読みたいものです。 ★★☆ 9月前半の読書と感想、書評 2018/9/15(土) |
006 | 夢を売る男 (幻冬舎文庫) | 2013年に単行本、2015年に文庫化された長編小説で、出版業界と自分の作品を出版したいと思う人達を皮肉ったブラックコメディ小説です。 なにかと作品以外で話題が多い著者ですが、そのせいで、読む前から毛嫌いされてしまうリスクがあり、お互いに不幸なことです。 それにしても出版業界というのは再販制度や取次店制度などに守られていて、なかなか一般人にとっては馴染みが薄く理解しがたい業界ですが、そうした内幕を容赦なく暴露しています。 出版業界は出版不況のまっただ中で、現在は過去の資産を食い潰していく事態に陥っていますが、確かに今の若者にはお金を出して本を買い、苦労しながら面倒な文字を追わなくても、テレビもあればネットもあり、いつでもどこでもスマホさえあればみたいものが見られ、動画であろうと調べ物であろうとなんだってできてしまいます。 そりゃ、若者が読書離れしても不思議ではありません。 それに今まで熱心な読者層を占めていた団塊世代以上の人達は、老いて年々その数は少なくなっていき、また仕事からも離れ、通勤中や出張中に本を読む機会も減っていきますから、新しい読者が増えない限り書籍の売り上げは下がり続けます。 一方ではこれほど出版不況の中でも、自分が書いた作品を世に問いたいとか、人に著書があることを自慢したいと願う人も後を絶たず、それらをうまく結びつけてみなハッピーになろう!というのが、この小説の主人公です。 主人公は元名門出版社で数多くの名作や著名作家の作品を世に出してきましたが、年々下降していく書籍売上に早く見切りを付けて、それまでの経験を生かし、口八丁手八丁で自分でお金を出してでも出版したいと思う人達に、その夢を売っていきます。このお手並みが見事言うか面白い。 新聞を読んでいると「自費出版」の広告がよく出ていますが、この小説では、おとりの「新人文学賞」に応募があった中から、無料で作品が出版される大賞に選ばれなかった人達に対して、出版社と折半で出版しないかと持ちかけるわけですが、実は出版にかかる経費は個人が負担する金額の何分の一で済ませるという一見すると阿漕な商売です。 相手の懐次第で、100万円〜200万円を支払ってもらい(原価は30〜40万円)、1千部を刷り、そのうちの何冊かはちゃんと書店に配本して、著者に対して「もしかするとベストセラーになって増刷に次ぐ増刷になるかも〜」という夢を与える商売と考えると、確かにそれもアリかなと。 そうした出版社が生き残りを賭けた様々な仕掛けをこれからもやってくるぞという、業界内幕暴露小説でした。 ★★☆ 11月前半の読書と感想、書評 2017/11/15(水) |
005 | 海賊とよばれた男(上)(下)(講談社文庫) | 出光興産創業者の出光佐三をモデルとした作品で、2013年に本屋大賞を受賞しています。2016年には映画が公開される予定で、監督は山崎貴、主演は岡田准一の「永遠の0」コンビとなります。 私が生まれる前の話しがメインなので、よく知らなかったことも多いのですが、戦後の占領統治時代に、世界第2位の海軍力を持っていた英国と石油メジャーに対し、敗戦国(日本)の1民間人が堂々と喧嘩を売って、しかもそれに勝利をした日本人がいたことをこの小説で始めて知りました。ま、こうした小説にはありがちな、大げさにドラマティックかつロマンティックにヨイショした部分がないとは言えませんが、史実も織り交ぜています。 第二次大戦後のイランは独立していましたが、まだ英国の影響下にあり、そこで産出する原油はすべて英国が国有するものと主張していたため、自由に輸出ができず、イラン国民は貧困にあえぐ状況となっていました。 そこへ石油が不足していて、戦後の復興が進まない日本の石油販売の1企業が、自前の石油タンカーをイランへ差し向け、英国の妨害や差し押さえを見事にすり抜け、原油を日本へ持ち帰ったのが「日章丸事件」と言われる1953年に起きた事件です。 その後イランでは石油を狙う英国と米国がタッグを組み、イラン国内でクーデターを起こし、再びメジャーと言われる英米仏の大手石油企業が利権を手中に置くことになります。 しかし、英国と堂々と渡り合った日本の石油企業として、世界をアッと驚かせた影響もあり、日本国内で競合するメジャー以外の新たなパートナーと組むことがかない、また石油精製工場も建設してようやく石油ビジネスを順調に軌道に乗せることができるようになっていきます。 私の家の近所には、ENEOS(旧日本石油、三菱石油、JOMOなどが合併、統合した国内最大の石油精製販売会社)とESSO、それに出光のガソリンスタンドがあります。今までは営業時間の長いENEOSを利用していましたが、この本を読んでからは、今後はメジャーに支配されず、日本民族系石油販売会社として生き延びてきた出光興産のスタンドにも行かないとなぁって思いました(感化されやすいタイプ)。 ★★☆ 1月後半の読書と感想、書評 2016/2/3(水) |
004 | 影法師 (講談社文庫) | 2010年に単行本で発刊され、この6月に文庫化されたばかりの著者初めて?の時代小説です。 「百田氏と浅田次郎氏の作品の共通点は?」と、問いかけをすると、おそらくはどちらも「ストーリーで読者を泣かせる」と言うのが私の答えなのですが、浅田次郎氏の場合は主に女性的な涙、百田氏のそれは男性的な涙という点に違いがあります。 もっとも先日読んだ百田氏の「モンスター」は、涙を誘うというよりは「えげつない社会をかいま見た」「男の軽薄さが浮き彫りに」といった内容で、エンタメ指向のちょっと今までの百田氏には見られない作品でしたので「それだけじゃないんだぞ」と主張していたのかも知れません。 「影法師」の主人公は最下級武士の出で、子供の頃まだ幼い妹を守るため上位武士に逆らった父親が主人公の目の前で斬られてしまい、その後なにかと上位武士との確執が生まれていきます。 そして当時は厳格な身分制度があるため下級武士の子が上級武士を超えて出世することはできませんが、努力を積み重ね、そして様々な幸運にも恵まれ、やがて藩主からも認められるようになり異例の出世を果たします。 その順調に見えた主人公の飛躍には、主人公が考えもしなかった子供時代からの親友の助けがあったことが後になってから判明していきます。そのサポートが本書タイトルの「影法師」となっているものと思われます。 「永遠の0」では深い家族愛を貫くための自己犠牲を描きましたが、こちらは男の友情と藩のため大きなことを成すための自己犠牲を描いていると言っていいでしょう。 そのため家族を持つ身としては「永遠の0」には泣けましたが、こちらの友情に関しては年を取りすぎたせいか感動はすれども泣けるようなところまではいきません。 おそらくは時代劇映画にふさわしいストーリーでもあるので、きっとそのうち「永遠の0」に続いて映画化されるのではないでしょうか。 ここ十数年時代劇では世界的な大きな賞をとっていないので、できればこの作品では主演に人気アイドルを引っ張ってくるような安易なことはせず、真に迫力のある演技ができる若手俳優を起用し、監督も有名どころではない若手監督で、新しい感性の元で制作していただきたいと願うばかりです。 7月後半の読書 2012/8/4(土) |
003 | モンスター (幻冬舎文庫) | この「モンスター」は百田尚樹氏メジャーデビュー後5作品目で2010年に発刊された作品です(文庫化は2012年4月)。同氏のデビュー作「永遠の0(ゼロ)」は発刊当時は埋もれていましたが、やがて口コミで拡がり突然火が付き100万部の大ヒットとなり一躍人気作家に躍り出てきました。 その後の作品「ボックス! 」や「風の中のマリア 」「錨を上げよ 」などの評価も高く、順調に活躍されています。 著者の作品の中では、すでに「ボックス! 」は市原隼人が主演で映画化されていますが、来年には東宝の大スペクタル作品として本命の「永遠の0」が山崎貴監督、岡田准一主演で映画化されることが決まっています。 この小説はなかなか映画化は難しそうな内容で、バケモンと言われたきたブルドッグのような顔の少女が、家族からも追い出され、身体を売って自力でお金を作り、それで整形手術を繰り返し、世間を見返していくというストーリーです。 小説ならまだしも、映画にすると、顔の変化は特種メークでいくらでも変えることができるでしょうけど、偽善的な社会、特にフェミニスト団体から猛抗議を受けてしまいそうな内容です。 韓国では整形外科が普通におこなわれていて、別に珍しくないと聞きますが、日本ではまだそれへの抵抗感や反発が強いのと、風俗で働いてお金を稼ぎ、整形手術につぎ込むという、決して誉められたやり方でない方法を美化し推奨してしまう恐れもあります。 流行のテレビ局タイアップ式の映画化は難しいものの、独立プロが手がけるというのは話題性があって可能性はあるかもしれません。 細かなことを言えば、例え顔はすっかり変えることができたとしても、戸籍やパスポート、健康保険、納税申告、銀行口座などが簡単に偽名でおこなえるはずはなく、小説のように年齢や氏名を変えて、まったく別人になりすまして裏社会ではなく表舞台で生活するというのは現実的には難しいでしょう。 それにこれはなんとなくですが、整形手術を何度も繰り返すと遠目だとわからなくても、間近でじっくり見るとなんとなくわかってしまいます。 誰よりも大金をつぎ込み、世界でもトップクラスの整形外科医が施術したであろうマイケル・ジャクソンですら、あの顔の不自然さやホルモン注射から時間が経った時の崩れ方は半端なく異常でした。 でも女性(特に不美人と自分で思っている)にとっては、お金とチャンスがあれば、顔を変えてみたい願望はきっとあるのでしょう。 そしてなにかのきっかけで軽く一カ所の手術をして成功すれば、今度は別のところと際限なくそのスパイラルにはまっていくこともあるのでしょう。男にはあまりわからない世界ですが。 登場人物の中に、主人公と同じく風俗で働く女性(整形済み)が、風俗を辞めて田舎の実家に帰るときには、また元の顔に戻して普通の結婚をすると言っていたのには「なるほどなぁ」と妙に感心してしまいました。 下手に風俗やAVで顔が売れてしまうと、その後もずっと影響してしまうので、そういうこともあるのでしょうね。 6月前半の読書 2012/6/16(土) |
002 | ボックス!(上)(下)(講談社文庫) | デビュー作「永遠の0」を読んでファンになった百田尚樹氏の2008年の小説です。 タイトルだけではなんのことか分からない人が多いと思いますが、表紙カバーを見ると「ああボクシングの小説か」とすぐにわかります。 このカバー表紙が、いかにも若者向けというイメージで、果たしてこの本の売れ行きにいいのかどうかちょっと微妙な気がします。 「ボックス!」とはボクシングでレフリーが両者を闘わせる際にかける言葉で、相撲で言えば「ハッケヨーイ!」ですが、「あしたのジョー」世代には「ファイト!」と言うのが一般的に知られていましたが、いつの間にか変わったんですかね。 設定は大阪の高校の弱小ボクシング部に、中学校時代から素質を認められプロボクサーに混じってジムでボクシングをやってきた運動能力の優れた生徒と、その親友で勉強しかできないスポーツ苦手の高校生が入部し、アマチュアボクシングを通じ成長していくという内容です。 「Box」に「ボクシングをする」という意味の動詞があったり、「Science」に「ボクシングの技」という意味があったりと、その他にも様々な一般には知られていない用語やルールなどのうんちくが満載です。 どうしてもボクシングと言うと、あまり一般の人には馴染みがなく、テレビ中継があるプロの試合やアニメや映画「あしたのジョー」のイメージだけですが、単なる根性ドラマでもなくヒーローものでもない、現代っ子の部活動を中心に書かれています。 ジワジワと口コミや書店員の推薦で伸びて結果的には大成功を収めた「永遠の0」とはまったく違ったジャンルの小説で、著者としては「永遠の0」で描いた太平洋戦争小説家のイメージが付くことを恐れ、まったく違う、どちらかと言えば若者に向けた売れる小説を書いたのかも知れません。しかし最後のエピローグ部分に「永遠のゼロ」を彷彿させる同じような匂いを私は感じ取りました。 著者は元々放送作家ですので、いかにも映像化しやすそうな内容で、そのうちたぶん映画化されるのではないかなと思います。 6月前半の読書 2011/6/15(水) |
001 | 永遠の0 (講談社文庫) | 百田尚樹の小説は初めてですが、この「永遠の0 (講談社文庫) 」には引き込まれてしまいました。 カミカゼ特攻で戦死したというまったく知らない祖父のことを急に調べることになった26歳のフリーターが、当初「臆病者」「卑怯者」と言われていた祖父が実は天才的なパイロットで多くの仲間を救ってきたことが次第にわかっていきます。 「必ず妻と子の元に帰る」と言い続けていたはずの祖父がやむを得ず特攻機に乗る前に決断したこと、そして小説の最後に明らかになる事実が、、、う〜ん、ここでは言えません。読んでください。 7月後半の読書 2009年8月2日 (日) 「BOOK」データベースより 「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる―。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。 |
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