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リストラ日記アーカイブ 2024年6月
読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。
日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです |
1789 5月後半の読書と感想、書評 2024/6/1(土) |
1790 健康のためのウォーキング歩数最適解は? 2024/6/8(土) |
1791 6月前半の読書と感想、書評 2024/6/14(金) |
1792 子持ち様論争の行方 2024/6/29(土) |
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5月後半の読書と感想、書評 2024/6/1(土)
1789
火の壁(文春文庫) 伊野上裕伸
1938年生まれの著者の作品は今回初めて読みますが、数多くの推理小説が出版されています。中でも作家になる前に勤務していた損害保険会社での調査員の業務と経験が多くの作品に生かされているようです。
本書は1996年にサントリーミステリー大賞を受賞し、単行本が発行され、1999年に文庫化されています。
本書の主人公は損保会社と契約し、保険支払に関わる事故などの調査を請け負っている会社の調査員で、主に火災事故で火災保険の支払のための調査をおこなっています。
私も自宅には火災保険をかけていますが、保険金の支払い額を抑えるため、例え全焼して保険金が満額が支払われたとしても、自宅の再建や使い慣れた家具や電気製品などを揃えるには十分な水準ではなく、元の生活には戻れそうもないかなと思われる程度の契約で、今後見直しも必要かなと考えているところです。また地震保険も付けたいところですが悩ましいところです。
小説では、連続して自宅や店舗が不審火や失火で火災保険が支払われている曰く付きの男性について、新たな火災が起きたため、さすがにこれは疑わしいと損保会社から依頼をされ調査を始めたのが主人公の調査員です。
以前読んだ重松清著「疾走」でも放火がテーマで、重苦しいテーマでしたが、放火のテクニカルな話とともに、放火を起こす犯人の複雑な精神状態など、単なる保険金目当てだけではない様々な事情や人間関係が絡んできます。
しかし火災の原因や、失火に誰が関わったかなど、警察ではない調査員が調べていくというのは、一種の探偵と同じで、個人情報やプライバシーなど様々な制限があり困難を極めます。
そうした困難をひとつひとつクリアしていき、その中からおおよその絵を描いて、あとは保険会社とその弁護士へ引き渡していくという流れで、一般的な探偵小説のようにすべて一人で解決していくというものではありません。
推理小説としては、人間関係にやや無理がなくはありませんが、総じて知らない世界を見せてもらって面白かったというのが感想です。
★★☆ |
追想の探偵(双葉文庫) 月村了衛
「機龍警察シリーズ」の小説が有名な著者ですが、そちらはまだ読んでいません。本作品は、2017年に単行本、2020年に文庫化された連作短篇の小説です。
探偵というタイトルから「人捜しでもするのだろう」ぐらいに思って、特にあらすじとかは知らずに読み始めました。
そうすると人捜しには違いないものの、主人公が出版社で怪獣や変身もの、戦隊ものなど、特撮ドラマや映画の専門雑誌の編集長で、当時の関係者のインタビュー記事を掲載するために古い作品の監督など関係者を探していくという物語です。
特撮ものというと、1950年代から1960年代にかけて、テレビでは月光仮面や、少年ジェット、ウルトラQ、マグマ大使などがヒットし、その後はウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズ、映画ではゴジラシリーズなどへと広がっていきます。
1957年生まれの私がリアルタイムで見ていた特撮もののテレビ番組は、カネゴンやガラモンが登場していたウルトラQ以降です。
2000年頃からはそれまでのミニチュア模型やコマ送り合成などを使ったSFX(特撮)から、コンピュータグラフィックスを使ったVFXへと変わってきます。
ゴジラシリーズで言うと2004年公開の「ゴジラ FINAL WARS」まではミニチュアや着ぐるみで製作されましたが、実質その次の作品となる2016年公開の「シン・ゴジラ」からはVFXで製作されています。
したがって従来の特撮の専門家というと、主に1960年代〜1990年代までに活躍した人たちということになり、その時代に活躍していた人はすでに亡くなっているか、かなり高齢ということになりますので、人捜しはたいへんです。
短篇は6編あり、それぞれに当時の特撮に関係していた人を探していきますが、今でも当時の特撮マニアが相当数いるというのには驚きます(知りませんでした)。
なお、この小説の主人公のモデルは実在していて、解説に書かれていましたが洋泉社がかつて発行していた「特撮秘宝」の編集者だった方です。単なる創造世界の中だけでなく、実際にこのような特撮のマニアックな世界があったこと自体驚きでした。
★★☆
◇著者別読書感想(月村了衛) |
70歳の正解(幻冬舎新書) 和田秀樹
2022年に発刊された新書で、高齢者専門の精神科医として「80歳の壁」や「70歳からの老けない生き方」など、タイトルに年齢を入れた健康指南本が多い著者です。
私と年齢が近く、したがって日々感じていることや、それぞれの年代によって必要とされるものなど、考え方に近いものがあって話はスッとはいってきます。ということはおそらく20代や30代の人がこの本を読んでも、あまりにも置かれた環境や精神的・肉体的条件が違いすぎてピンとこないでしょう。
まず最初に本を開いてみると、文字が大きく老眼の入った高齢者にも読みやすくなっています。普段細かな文字の文庫ばかりを苦労して読んでいるので、極めて楽に読めます。
内容は、平均余命まで生きるとして60代だとまだ20年以上余命があり、そのラスト20年に心身ともに健康でいられるように医者としてなにをしたら良いかという話がメインです。
そうした高齢者の健康指南本は星の数ほどあるので、その中に埋もれてしまいそうな気もします。内容的にも、他の指南書とそう変わらないかなと思います。
その中には、タバコの害と禁煙は当然書かれていますが、「最近の研究では、ニコチンはアルツハイマー型認知症を防ぐ効果がある」というアップデートされた意外な記載があり、過去に書いた著書の使い回しではないことは言えそうです。
★★☆
◇著者別読書感想(和田秀樹)
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囚われの山(中公文庫) 伊東潤
著者の作品を読むのは今回が初めてですが、1960年生まれの著者は2007年以降、歴史小説やノンフィクションを数多く出版されています。
本著は、1902年(明治35年)に青森で起きた八甲田山雪中行軍遭難事件をモチーフにした現代が舞台の小説ですが、この冬山での遭難事故として世界の中でも最多の犠牲者を出した事件については、戦史家、歴史家、学者、ジャーナリストなど多くの人が検証や研究発表、執筆を行っていて、もはや新しい謎やネタで書くのは難しいだろうと思っていました。
個人的には若い頃に高倉健主演の映画「八甲田山」をロードショーで見て、そのずっと後に映画の原作となった新田次郎著「八甲田山死の彷徨」を読んでいます。さらに東北へ旅行したときには、本著にも出てくる八甲田山雪中行軍遭難資料館を見学し、隣の幸畑墓苑にお参りしてきました。
小説のストーリーは、出版社に勤務する中年男性が、歴史物雑誌の特集記事で八甲田山事件を取り上げる提案をしてその企画の責任者となります。
その主人公は元々は夕刊紙の記者でしたが、雑誌の編集長だった先輩に誘われて今の部署に来ています。しかしその先輩が雑誌の販売不振で退職したあと、後任にファッション雑誌の副編集長だった女性が上司としてやってきたのが不満です。さらにプライベートでも妻との関係もうまくいかずに別居状態です。
八甲田山事件の謎として、下級兵士の服装が冬山には不向きと言える軽装備だったことから、これは軍部が満州でソ連と戦う前に冬の装備の優劣や、兵士が寒冷地で凍傷に罹った場合の対応など人体実験として計画されたものではないか?というテーマと、もう一つ、当初の新聞では現地での凍死者数200名というのが、後から軍の発表では199名となっていたことに疑問を持ち、除外された1名の謎を追いかけます。
多少は八甲田事件のことを知っていたことや、夏場ですが行軍隊が迷走した馬立場から鳴沢あたりの地形を実際に俯瞰して見ているので、迷走した歩兵第5連隊の行動履歴がよく理解できました。本書の最初には、地形図と露営地の場所などが書かれた地図もついているのが親切です。
最後の命をかけたクライマックスのシーンはそれまでの緻密な設定から急に大雑把な感じへと変わってしまい、やや不満が残るところですが、なりゆきからどこかで雪山で無念の死を迎えた兵士の亡霊でも出てくるかなと思っていたら案の定でした。
それはともかく、ずっと興味を持っていたテーマでもあり、とても面白かったです。
★★☆ |
【関連リンク】
5月前半の読書 護られなかった者たちへ、日本史の内幕、新章 神様のカルテ、ベロニカは死ぬことにした 4月後半の読書 おとなの教養3、蓮如 われ深き淵より、雪の階、ディプロトドンティア・マクロプス 4月前半の読書 無駄だらけの社会保障、あなたが消えた夜に、木漏れ日に泳ぐ魚、ロウソクの科学
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健康のためのウォーキング歩数最適解は? 2024/6/8(土)
1790
2016年から人工股関節置換手術のリハビリのために始めた毎日のウォーキングですが、無理をしない範囲で1日6千歩を目標として8年経った現在も継続しています。
歩数をスマホの歩数計でカウントをとるようになったのは2017年2月頃から7年間で、その歩数の合計は約1700万歩(月間平均約20万歩)で、1歩あたりの歩幅を70cmとすると、ウォーキングで歩いた総距離は1万1700km、東京から直線距離でインド洋を越え、中央アフリカのタンザニアやマダガスカルあたりを歩いていることになります。
いや〜遠くまで来たもんだ(来てない)。
東京からもっとも遠い(つまり東京の裏側)ブラジルまではあと6千kmほどあります。まともに歩けるうちにブラジルから戻ってくる地球1周が目標ですがちょっと厳しいかも。
1日6千歩の目標は当初からなにかエビデンスがあったわけではなく、ウォーキングの途中に15分程度のストレッチをおこない、それを含み合計1時間歩くとだいたい6千歩だったので、それを基準としました。
当時はまだ会社へ出社することもあったり、終日雨模様でウォーキングができない日もあったので、月間単位で1日平均6千歩以上を目標としていました。30日の小の月で18万歩以上歩くのが目標です。
それをしばらく続けていると、「1日6千歩を歩けば寿命を延ばすことができ、それ以上歩いても寿命はあまり変わらない」という研究発表がありました。
長寿効果、1日5000〜7000歩で十分?=歩数と死亡リスクの関連分析―早大など(2023年02月20日時事エクイティ)
歩くことで得られる長寿効果は、高齢者では1日5000〜7000歩で頭打ちになるとの調査結果を、早稲田大の渡辺大輝助教らの研究チームが20日までにまとめた。1日1時間程度の歩行に該当するが、これが最適な長さという。研究成果は2月上旬、米科学誌の電子版に掲載された。 |
私が勝手に決めていた6千歩がドンピシャだ!と先見の明を喜んでいましたが、喜びもつかの間、最新の研究では6千歩では不十分のようです。
1日9000歩で健康寿命延伸 AI指標で分析 京都府立医科大(2024年5月1日時事通信)
「健康寿命」を延ばすには1日9000歩が目標。京都府立医科大の研究グループが1日の歩数と健康状態との関係を、人工知能(AI)を使って開発した指標などから分析したところ、こんな結果が出た。「自分は健康だ」と自覚するには1日1万1000歩となった。いずれも年齢や性別による違いは見られなかったという。論文は1日、英医学誌電子版に掲載された。 |
長寿効果(死亡リスク)と、健康寿命の違いがあるとは言え、二つの研究結果に戸惑います。
それに1日6千歩と9千歩では3千歩という大きな差です。歩くスピードや歩幅などに個人差がありますが、だいたい千歩を歩くには7〜8分が必要です。3千歩をプラスするにはおよそ20数分余計にかかります。わずか20分、されど20分、、、暇なリタイア生活とは言え、毎日20分の追加は結構負担です。メジャーの試合も見たいし。
もちろん、日々歩く距離は違っていて、日によっては1万歩以上歩く日もあるので、毎日9千歩以上を歩くのがいかに大変かというのはよく知っています。慣れの問題かも知れませんが。
しかも毎日のことで飽きないように、またその日の体調や予定などに応じて様々な歩くコース(1万歩コース、8千歩コース、6千歩コース、4千歩コース、山道コースなど)を設定していて、その中には長い坂道や急な山道などを歩くときもあり、平坦な歩きやすい場所だけではありません。
しかもウォーキングは気分転換の散歩とは違い、インターバルで早足で歩いたり、時には軽く走ったりして身体に負荷をかけながら、運動としておこなっています。そんなわけで今のところ毎日プラス3千歩は厳しそうです。できない言い訳に過ぎませんが。
【関連リンク】
1668 私の健康習慣 その2(ウォーキングとストレッチ)
1621 歩数計データ5年間の中間決算
1418 寿命と死因を考える年齢に
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6月前半の読書と感想、書評 2024/6/14(金)
1791
四つの署名(角川文庫) コナン・ドイル
「シャーロック・ホームズシリーズ」の推理小説で有名な著者の作品ですが、このシリーズ全60作品の中で長編作品は、最初の「緋色の研究(A Study in Scarlet) 1887年」などわずか4作品しかなく、あとはすべて短篇というのはあまり知られていません。
◇2013年9月前半の読書と感想、書評(緋色の研究)
今回の「四つの署名(The Sign of Four)」は、長編として上記「緋色の研究」に続く2作目で、初出は1890年頃と言われています。また日本語翻訳版では複数の出版社から出版されていてそのいずれもタイトルが少しずつ違っています。
ストーリーは、暇を持て余してコカインなどを吸引してぶらぶらしていたホームズの元へ、若い女性が「軍人でインドに駐在していた父親が所用で英国に帰ってきたらそのまま行方不明になったので探して欲しい」と相談を受けます。
しかも行方不明になって以降、不思議なことが次々と依頼人の身の回りで起き、「それらについて説明をするから来て欲しい」と、謎の相手から手紙が送られてきます。
そこで、ホームズと助手のワトソンが女性の付き添いとして出掛けていきますが、その先では不思議な殺人が起きているというストーリーです。
長編と言っても文庫本でわずか216ページという短さなのであっという間に事件は解決してしまいますが、1880年当時の東インド会社やセポイの反乱など、英国がインドなどを実効支配していた頃の話なども出てきて、歴史のお勉強にもなりそうです。
★★☆
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牛の首 厳選恐怖小説集(角川ホラー文庫) 小松左京
サブタイトルに「厳選恐怖小説集」と銘打ってありますが、思ったほど怖くはないです。というのも、著者お得意の科学的なSFと、その対極にありそうな古典的な妖怪など怪談とのミックスですので、意外性はあるものの、あまり身近でベタな恐怖ではないだけに怖さを感じません。
短篇とそれより短いショートショートが計15編で構成されていて、それぞれのタイトルは 「ツウ・ペア」「安置所の碁打ち」「十一人」「怨霊の国」「飢えた宇宙」「白い部屋」「猫の首」「黒いクレジット・カード」「空飛ぶ窓」「牛の首」「ハイネックの女」「夢からの脱走」「沼」「葎生の宿」「生きている穴」です。
各作品の初出は、1964年(昭和39年)から、一番新しいものでも1978年(昭和53年)で、小説雑誌やスポーツ新聞などに掲載されていたものです。本著文庫本は2022年に発刊されています。
印象に残った作品として「飢えた宇宙」と「夢からの脱走」の2作を挙げておきます。
「飢えた宇宙」は太陽系を超え、あと10年はかかるアルファ・ケンタウリを目指している宇宙船の中で搭乗員がひとりずつ消えていなくなる事件が発生します。また積み込まれていたはずの食糧がほとんどないことも発覚し、残った搭乗員はこのままでは餓死すると絶望感に陥ります。
食糧がほとんど積み込まれなかったのは。実は人間だと寿命があり、さらに大量の食糧を積み込む必要があるので、それを一気に解決する策として、少しの血漿さえあれば不老不死のドラキュラを眠らせて密かに乗せておき、目覚めてからは搭乗員の血を吸って、、、
「夢からの脱走」は、2つのパラレルワールドを行ったり来たりする男の物語で、平和な世界で妻と子供がいるサラリーマンが、あるとき、最初は夢の中と思っていた現代の戦争に巻き込まれていて、戦闘員として戦っている自分が交互に現れてきます。それを夢と思っていたら、、、
と、まぁ、ユニークな発想が素晴らしいというか、今から50〜60年ほど前に書かれた作品ですけど、十分に楽しめます。
★★☆
◇著者別読書感想(小松左京)
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残酷な進化論 なぜ「私たち」は「不完全」なのか(NHK出版新書) 更科功
著者は分子古生物学者の大学講師で、他にも多くの著書があります。時にはこうした専門雑学というか知的好奇心を満たす書物も読んで刺激を与えておかないと脳が怠けてしまいそうです。本著は2019年に発刊された新書です。
個人的にはあまり関心がない「進化論」や「人類史」「人体」の話ですが、常識と思っていたようなことが次々と覆される快感は捨てがたいです。
例えば、人の眼は生物の中ではもっとも進んだ視覚装置と思っている人が多いと思いますが、人が「鳥目」と夜盲症を揶揄しますが、実は鳥の中でも鷹や鷲の目は人間のそれよりも優れているとか、チンパンジーの手よりも人間の手の方が原始的で進化していない形状だったりします。
結果的にはそれが小さな物をつかむときなどでは有利で道具をうまく使いこなせたわけですが、比較的安全な森の中の木の上で生活するために類人猿の手からチンパンジーの手は進化してきたようです。
話は生物の進化だけではなく、原始的な細菌の話や、心臓や肺の進化の様子など面白く読めます。
数万年後には、どんな進化した生物(人間とは限らない)が地球上で繁栄しているのかをぼんやりと考え、創造力たくましくなります。
★★☆
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盤上の夜(創元SF文庫) 宮内悠介
著者の小説は初めて読みましたが、SF小説を得意とする1979年生まれの著者が、2010年から2012年にかけて書いた短篇作品をまとめた単行本が2012年に発刊され文壇デビューとなりました。
そして今回読んだ実質デビュー作が、直木賞候補(落選、その時受賞したのは辻村深月著『鍵のない夢を見る』)になり、日本SF大賞を受賞しました。
収録されている短篇のタイトルは、「盤上の夜」「人間の王」「清められた卓」「象を飛ばした王子」「千年の虚空」「原爆の局」の6篇で、最初の「盤上の夜」と最後の「原爆の局」の2作は連作で囲碁がテーマ、「人間の王」はチェッカー、「清められた卓」は麻雀、「象を飛ばした王子」は古代インド発祥で将棋やチェスの起源と言われているチャトランガ、「千年の虚空」は将棋をそれぞれテーマとしています。
盤上ゲームをテーマにした作品は数多くありますが、それは将棋なら将棋、麻雀なら麻雀だけで、この短篇集のように、時代や場所がそれぞれ違う中で、扱うテーマも違っているというのは珍しいです。
しかしなぜか盤上ゲームの中でも世界の競技人口が多いトップ3のトランプやチェス、オセロがこの中には入っていません。ま、どのゲームを入れるかは著者の自由ですけど。
個人的にはギャンブル性のあるゲームは苦手で、遊ぶことはあっても強くはないので、あまり詳しくもなければ興味もありません。
それだけになにか読んでいても、ゲーム独自の専門用語などがビシビシと出てきて、それらは意味不明で、読み飛ばすしかありません。なにか「わかるヤツだけわかればいいのさ」というような身勝手さが感じられます。
こうした盤上ゲームは元々が賭け事から発展していることから仕方がないですが、内容的にはアングラ的というか暗いものが多く、登場人物が熱くなっていくのと反比例して、読者(私個人のこと)は冷めていくような感じでした。
でもいろいろと知らなかった知識や雑学が得られたのは良かったです。
★★☆
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子持ち様論争の行方 2024/6/29(土)
1792
少し前の話になりますが、子供を持たない人から、子供がいる人への非難がSNSで炎上し、社会問題にまでなっていました。
ま、最初のうちは、身の回りにあるよくある不満や愚痴を述べただけだろうと思いますが、「そうそう同じこと経験している」や「その思いわかる!」という肯定派と、「その不満や考え方は間違っている!」という否定派がガチでぶつかってしまったようです。
そういうのは、漫画家がギャグとして風刺的に描いたなら問題にもならないと思いますが(それでも生真面目な人が問題視するかも)、SNSという様々な意見が自由に言える中でのことで、以前SNSで炎上したことがあるバスや電車にベビーカーを折りたたまずに乗ってくるとか、住民の苦情で子供の遊び場が閉鎖されたとか、昔からある保育園の子供の声がうるさいので高い防音壁を設置させるとか、それぞれの立場の違いでの対立があります。
またコロナ禍で起きたマスク警察、池袋暴走事故での被害者遺族への嫌がらせ、キャンプ場での女児行方不明事件の母親への誹謗中傷など、「正しいのは自分で目立つ他人を糾弾するのは使命!」みたいな極端な勘違い人など社会の闇を見ることもあります。
大手マスメディアでもこの「子持ち様論争」がしばしば取り上げられていました。
「『お子が高熱』とか言って、また急に仕事休んでる」SNSで広がる「子持ち様」論争 育休取得社員の同僚に“一時金”を支払う企業も(TBS NEWS DIG)
子どもを持つ親を「子持ち様」と批判するような書き込みが、SNSで広がり、議論を呼んでいます。背景には何があるのでしょうか。(中略)
厚労省が2022年に行った国民生活基礎調査によると、“子持ち世帯”が1986年は46.2%だったのに対し、2022年は18.3%になっているそうです。東京大学大学院の藤田准教授は「自分だけではなく、親戚にも子どもがいないという人も珍しくない」としています。子どもがいるというのは当たり前の環境ではなく、少数派になってきているという現状があります。 |
〈子持ち様論争〉「子どもをもたなかった人の老後を負担」するのは誰? “子持ち様”を一概に批判できない社会保障に関わる“勘違い”とは(集英社オンライン)
日本で子どもを持つ親に対する、“子持ち様”批判が社会問題になりつつある。子どもを持つ女性が、子どもの体調不良や学校行事などを理由に仕事を休んだり、早退することに対して、SNSなどで不満を漏らす人が続出しているのだ。
また、たとえ身近に“子持ち様”がいなくとも、児童手当、高校無償化など、子育て世帯を援助する政策が打ち出されると、〈なんでよその子どもの負担を俺が…〉〈子育て世帯ばかり優遇されるのは不平等だ!〉という不満が巻き起こったりする。(中略)
社会全体の中では、子どもを作らなかった人の老後の負担を、子どもを作った人の子どもが負っているわけで、お互いさまでもあると思います。むしろ今の子どもたちのほうが将来的には大きな負担になるかもしれません。 |
書いてあることはもっともな内容です。ただ、立場や状況が違えば当然対立するのが当たり前で、それをどのように解釈し許容していくのか?というのが最終的な落ち着き先でしょう。
お金で済む問題もあればそうでないこともあります。そしてそれでもすべてクリアになるとも思えません。
私には3人の子供がいますが、40代で転職したあとにこういうことがありました。転職先は面接でかなり長い時間ジックリ話をした経営者の資質や考え方に共感してその人の元で働くことを決めました。
その再就職先の会社では、7〜9月の3ヶ月間の中で土日を含め5日間連続した夏休みをとれるルールがありました。独身の人などは、混まなくて旅費が安い7月とか9月に夏休みを取れるので社員にとっては好評な制度です。
私のところにはまだ小学生や中学生の子供がいたため、7月下旬から8月の学校の夏休みに入ってからしか家族旅行には行けません。
そこで、なかなか当たらないものの抽選で1ヶ月に1度しか申し込めない格安で使える健保組合のリゾート宿泊施設に7月下旬と8月上旬に申し込んでおいたところ、たまたま7月下旬に当選しました。
7月下旬に施設の予約ができたため、ルール通りに会社に申請したところ、その社長から「他のメンバーより先に休みを取るなんて非常識」と嫌みを言われました。確かにリーダー的な役割があったことは確かですが、入社してから1年近くが経ち、その時期に急ぎの重要な業務があったわけではありません。
ルール通りなのに、どうしてそういうこと言うかな?と不思議でしたが、その社長は50代で既婚ですが子供がいない夫婦二人だけの家庭だったことに思い当たりました。
つまり一度も育児をしたことがないと、普段は毎日夜遅くまで働いて子供と話をする機会がまったくなくても、せめて夏休みぐらいは親として一緒に思い出作りが必要だということがまったく理解できないのです。
いくらビジネスや経営者として優秀な人でも、子育ての経験がないというだけで、従業員の子育て世帯の親の立場や行動が理解ができないんだなぁと思った次第です。
政治の世界でも、乳幼児を自ら育てた経験があったり、子育てしながら議員として活動する人が増えて、それが日常的にならないと、本当の意味で子育て重視の政治や法律改正は期待できないでしょうし、頭が古く子育ては専業主婦の妻に任せっきりの高級官僚などが行政のトップにはびこっている限り、少子化はいつまでも食い止められないでしょう。
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