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小松左京 KOMATSU SAKYO 既読書籍

010 おれの死体を探せ 009 虚無回廊 I・ II・ III 
008 ゴルディアスの結び目 007 夜が明けたら  
006 明烏 落語小説傑作集  005 召集令状
004 ホクサイの世界 003 首都消失
002 復活の日 001 日本沈没
読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


1931年〈昭和6年〉〜2011年〈平成23年〉80歳没、大阪府出身。京都大学文学部に進学。大学在学中に同人誌『京大作家集団』の活動に参加。1961年早川書房主催の第1回空想科学小説コンテストに、「小松左京」のペンネームで応募した「地には平和を」が努力賞に入選。翌年の第2回SFコンテストで『お茶漬けの味』が第三席となった。『SFマガジン』(1962年10月号)に掲載された『易仙逃里記』でデビュー。1964年光文社から処女長編『日本アパッチ族』を刊行。代表作に『復活の日』(1964年)、『果しなき流れの果に』(1966年)、『日本沈没』(1973年)、『さよならジュピター』(1982年)、『首都消失』(1985年)、『虚無回廊』(1987年)など。(Wikipediaより引用 2022年)


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010 おれの死体を探せ(徳間文庫)

おれの死体を探せ1983年に文庫で出版された短篇集で、「長い部屋」「幽霊屋敷」「おれの死体を探せ」「共食い」「男を探せ」「鳩啼時計」の6篇が収録されています。

前の3作は貧乏な私立探偵が主人公で、コミカルな連作です。後の3作はいずれも独立していますが、どの作品もSFをうまく取り入れていたり、著者の作品にしては幽霊が自分の死体を探しに出てきたり、同時に複合的な誘拐事件が発生したり、性転換手術だったりといろんな面を見せてくれます。

個人的には最後の「鳩啼時計(はとなきどけい)」が好きで、小説の舞台はずっと未来の話ですが昔懐かしい「鳩時計」が出てきます。実は母方の実家に行くと、(本物の)鳩時計があって、欲しくてたまりませんでした。

タイトルの「鳩啼時計」とは、明治生まれの詩人で作詞家だった西条八十が昭和8年に書いて少女向け雑誌「令女界」に掲載された「鳩啼時計」という詩のことです。

詩の1番は「鳩啼時計今啼き 冬の夜ふけの十一時 凩さむき戸外には 利鎌のごとき月冴えて」と、「冬の夜更けの11時に鳩時計がちょうど今啼いて、木枯らしが吹く外にはよく切れる鎌のような月が出ている」という意味。

2番は「過ぎし日君と一つづつ 銀座の街に購へる 鳩啼時計いま啼けば うれいは深しわが心」で、意訳すれば「ずっと昔にあなたと銀座で鳩時計を一つずつ買って、それを今啼くと切ない思いが心に広がる」という、鳩時計の音で昔の恋人を思い出すという内容です。

小説では、その詩のように、昔の恋人と一緒に買った二つの鳩時計が絡む殺人事件が起きて、、、というストーリーです。

なお、この詩は4番までありますが、3番以降はその恋人のことを想う愁いをシクシクと繰り返していて、恋する女学生達に向けた今で言うところのラブソングです。

1980年代のSFらしく、40数年後に読むとテレビ電話や人体移植、人工的に重力を曲げる装置など、40数年後の現在既にあるものもあればまだないものなどあって創造力の面白さを味わえました。

★★☆

3月前半の読書と感想、書評 2024/3/16(土)

009 虚無回廊 I(徳間文庫) 虚無回廊 II(徳間文庫) 虚無回廊 III(ハルキ文庫)

著者の作品には「果しなき流れの果に」「さよならジュピター」など宇宙を舞台にしたSF作品も数多くありますが、晩年になってから書かれた本作品が未完のまま残されました。

1985年の雑誌で連載が始まり、途中中断のあと1991年から1992年まで連載されされて雑誌の都合で終了します。続編の執筆の意欲はありながら2011年に亡くなり最後の長編小説となります。

内容は、琴座と白鳥座の間の方向の地球から5.8光年離れた場所に、巨大な人工物と思われる物体が現れたり消えたりすることが観測されます。

しかしその時の宇宙船で現場へ行くには片道だけで何十年もかかり人間が乗船して行くのは無理で、AIロボットのその先を研究していたAE(人工実存)ロボットを送り込むことになります。

AE(Artificial Existence)ロボットは、指示を与えられなくとも自らの判断だけで行動することができるロボットで、自己修復、自己改良、自己再生が可能で、開発研究者の経験や知識、さらには魂までが移植されています。

AEを乗せた宇宙船が巨大人工物に到着する前に、地球にいるAEの開発者が寿命を終え、それを知ったAEは、これで義務や義理がなくなったと、地球との定期交信を終了する判断をし、その後は単独で人工物の探査を始めます。

まるで宇宙の中の集蛾灯のような存在の巨大人工物に何万年も前から様々な生命体や人工生命が集まってきていて、その中で地球から送られたAEはコミュニケーションが可能な異星人や異星人が送ってきたロボットと情報を交換し共に探査活動を始めます。

と、言った内容ですが、まだ宇宙、時に太陽系以外のことがよくわかっていなかった1980年代に、よくこれだけ宇宙開発について想像しながら書けるものだと驚きです。

この小説にも出てきますが、天の川銀河の中心近くにあり電波を発している天体「いて座Aスター」のことが、先日大きなニュースで出てきました。

天の川銀河のブラックホール撮影 最も近くに存在、2例目―国立天文台など国際研究チーム
地球から約2万7000光年離れた銀河系の中心部には、「いて座Aスター」と呼ばれる電波を発する天体が存在する。周囲の恒星の動きから、この天体は太陽系よりも狭い範囲に太陽の400万倍の質量を持つことが判明。巨大なブラックホールと考えられてきたが、今回の撮影で裏付けられた形だ。

宇宙にはまだわからないことがいっぱいあるので、ロマンがあふれます。

そしてこの未完の長編を誰かが引き継いで書かないか?ということですが、ハルキ文庫の3巻で解説を書いている瀬名秀明氏などが有力な候補になるでしょう。

でも、実際のところ、偉大な著者がこの遺作とも言える長編のラストをどのようにしたかったのかわからないので、なかなか難しいでしょう。

この3巻まででも十分に楽しめるので、これでいいんじゃない?と私は思います。

★★☆

5月後半の読書と感想、書評 2022/6/1(水)

008 ゴルディアスの結び目 (角川文庫)
1977年に単行本、1980年に文庫化されたSF短編集です。1978年には優秀なSF作品に贈られる星雲賞を受賞しています。

そう言えば、著者は2011年7月に亡くなられたので、来月に亡くなってちょうど10年となるのですね。没後10年を記念して、もう一度なかなか手に入らない「虚無回廊」や「果しなき流れの果に」など古い作品を再版してくれると良いのですけどね、、、

収録されている短編は、「岬にて」「ゴルディアスの結び目」「すぺるむ・さぴえんすの冒険 - Sperm Sapiens Dunamaiの航海とその死」「あなろぐ・らう゛または“こすもごにあII”」の4編です。

タイトルの「ゴルディアスの結び目」とは、古代アナトリアにあったフリギアの都ゴルディオンの神話と、アレクサンドロス大王にまつわる伝説のことで、手に負えないような難問を誰も思いつかなかった大胆な方法で解決してしまうことのメタファー「難題を一刀両断に解くが如く」として使われる。(Wikipedia)

つまり誰もほどけなかった縄の結び目を、まだ駆け出しのアレキサンダー大王が剣でバッサリ切ってほどいてしまったことで、「この結び目を解くことができたものこそ、このアジアの王になるであろう」と予言されたことがその後の大王の大躍進につながったという逸話です。

タイトルからして難解なこのSF小説は、その中身もかなーり難解です。

あまり深く考えないようにしてサクサク読んでいかないと、すぐにつっかえてしまい、投げ出したくなります。しかしこんな難解SF小説が40年以上も前に出ていたのですね。

ま、そんなわけですから、感想なんてとてもじゃないけど書けません。

★★☆

6月前半の読書と感想、書評 2021/6/16(水)

007 夜が明けたら (文春文庫)
元々は44年前の1974年に発刊され、その数年後に文庫化もされましたが、その後しばらく経った1999年に別の出版社からあらためて文庫で出版された短編小説集です。

収録作品は、「夜が明けたら」、「空飛ぶ窓」、「海の森」、「ツウ・ペア」、「真夜中の視聴者」、「葎生の宿」、「秘密」、「保護鳥」、「安置所の碁打ち」、「兇暴な口」、「沼」、「猫の首」、「腐蝕」、「青ひげと鬼」、「牛の首」、「黄色い泉」、「怨霊の国」の17篇。

また巻末にはシリーズ化された短編集を総括した著者へのインタビューが収録されています。インタビュアーはミステリ、SF研究家の日下三蔵氏で、これもまた作品の裏側や苦心の跡が垣間見られてよかったです。

著者お得意のSF、オカルト、ホラー、ミステリーといろんなパターンがあってとても楽しめます。

タイトルになっている「夜が明けたら」は、ある日の夜に大きな地震が起きて、大規模な停電になります。懐中電灯や携帯ラジオを点けようとするも、なぜか乾電池が全部ダメになっていて点きません。

隣人のひとりが電力会社の社員で、停電があまりに長く続くので緊急事態と判断し、会社へ行きたいのでクルマを貸してくれと家にやってきます。しかしクルマのエンジンをかけようとするも電装品がダメになっていて動きません。

そこで走っているクルマを停めて乗せてもらおうと外へ出ますがまったく来ず、季節は冬で寒いので焚き火に当たっていたら、近くの天文台から来たという人達がやってきて「地球の自転が停まったようだ」と告げられます。つまり夜明けはいつまで経っても来ない、、、

短編でなければ、その後のドタバタの話しが続くところですが、それは残念ながら想像するしかないです。

あと、怖いホラーやミステリーでは、「誰かに見られているような気がする」「何者かがいる気配がする」というセンテンスが常道なんだなということがよくわかります。そういう作品には必ずそうした場面が出てきますので。頻繁すぎて、ちょっと使いすぎって気もします。

元々がSF作家として有名な著者ですから、突拍子もない話しが多いのですが、夜にひとりで読んでいると「自分の後ろに誰かがいる気配がして背筋が冷え」、「窓から誰かがジッとのぞきこんでいるような不安」に陥ることは間違いありません。

★★☆

10月前半の読書と感想、書評 2018/10/17(水)

006 明烏 落語小説傑作集 (集英社文庫)
2009年に発刊された古典落語を元にした短編小説です。

小松左京氏といえば、「日本沈没」や「さよならジュピター」などSF小説、あるいはシニカルな短編小説なども多くありますが、さすが大阪生まれ!というか、3代目桂米朝師匠とも懇意だったということもあり、古典落語をネタにした小説があったとは知りませんでした。

その元ネタとなった落語は「明烏」、「天神山」と「立ち切れ」の二つをまとめたもの、「三十石夢乃通路」、「反魂香」。

それぞれどういう落語かを知っていた方が楽しめそうですが、私はこの中では「天神山」ぐらいしか知らなかったですが、それでも面白く読めました。

解説にも書かれていますが、著者と3代目桂米朝とは昵懇の間で、小説の中にも米朝と思われる大物噺家が出てきます。業界裏話なども混ぜられているようで、上方落語に詳しい人ならば、ニヤリとする場面もあるのではないでしょうか。

落語とSF小説とのミックスは、意外性もあって、それなりには楽しめますが、ちょっと普段からあまり馴染みがないことが多いだけに、読み進めるのは苦労もありました。

★★☆

4月前半の読書と感想、書評 2018/4/14(土)

005 召集令状 (角川文庫)
2011年に亡くなられた著者が1960年代に発表した短編のSF小説で、発表から30年近く経った1995年に発刊されています。

今回は意図してなかったのですが、5冊中短編集が3冊と偏ってしまいました。できるだけ「小説(国内・海外)」「新書やビジネス」「ノンフィクション」の各ジャンルを混ぜて読むようにしていますが、なぜか偏るときは偏ってしまいます。

特に最近は、本の内容は見ず、著者の名前だけで買って読んでいるせいだと思います。

この作品の収録作品は「戦争はなかった」、「二〇一〇年八月十五日」、「地には平和を」、「春の軍隊」、「コップ一杯の戦争」、「夢からの脱走」、「お召し」、「召集令状」とテーマは戦争というか著者の子供の頃に味わった戦争体験を元にした作品が多く含まれています。

基本は突飛押しもないSF作品ですが、発想がユニークでホラーでもありコミカルでもあります。

「戦争はなかった」は太平洋戦争で敗戦し、広島や長崎への原爆の悲惨さを知っている戦中派の主人公が、大人になってから出た同窓会で軍歌を歌うと同窓生から不思議な顔をされ、軍隊生活の苦労を話すと誰も知らないと言われ「えぇ!?」となるものや、逆に「地には平和を」では戦争中と現代を行ったり来たりするパラレルワールドの世界など。

これこそテレビで時々やっている「世にも不思議なシリーズ」で映像に取り上げてもらいたい作品ばかりです。ってテレビドラマだと制作費をケチるから、迫力のないつまらないものになってしまいそうですが。

東映さん、久々に「8.15シリーズ」として、これらの作品をオムニバス映画として作ってみませんかね?お金は集まりそうもないですが、、、

★★☆

7月前半の読書と感想、書評 2017/7/15(土)

004 ホクサイの世界―小松左京ショートショート全集〈1〉 (ハルキ文庫)
昭和の時代のSF小説と言えば星新一、筒井康隆とこの著者と言われる2003年に刊行されたショートショート全集です。

2月に読んだ星新一著「ボッコちゃん」と読み比べってわけでもないのですが、当然それと比較してしまいます。

2月前半の読書と感想、書評 2017/2/15(水)

結果的には「ボッコちゃん」には及ばないものの、それなりに楽しめました。

そう言えばつい先日、近所にあるそこそこ大きな書店で文庫本のコーナーで新刊をみていたら、3人の女子高生がキャッキャッと文庫コーナーにやってきて、次々と文庫を手にとって見ているので、珍しいなぁって思っていたら、そのうち「このボッコちゃん・・・(最後のほうが聞き取れなかった)」「知ってる〜星なんとかいう人のでしょ?」「短いよね〜」っていう会話が飛び込んできて驚きました。

何と言っても1971年に発刊された文庫ですから、今の女子高生が知っているとは、、、まぁそれぐらい面白いってことなのでしょう。私も先月の読書感想では星3つ!をつけていました。

脱線しましたが、著者の本ではSF長編の「復活の日」(1964年)、「日本沈没」(1973年)、「さよならジュピター」(1982年)、「首都消失」(1985年)などを過去に読んでいます。いずれの作品も大作映画になっていて、そちらで知っているファンも多いでしょう。

昔、大阪で仕事をしていたとき、用事があって中之島にある住友商事本社に伺ったことがありました。そこで会った担当者が「あそこを歩いているのが小松左京さんのお兄さん。よく似ているでしょ〜。弟さんの小説の話しでよく盛り上がります。」とか言っていたのを思い出しました。どうでもいいことですが。

この本はショートショートなので、ひとつひとつ内容やオチを書くわけにもいかず、なんだか関係のない話しばかりになってしまいました。

タイトルの「ホクサイの世界」も短編で、富士山大爆発で左右対称の美しい富士山がすでになくなっている未来人が、北斎に描かれた当時の富士山を見たいと未熟で怪しい操縦ながらタイムマシンでやってきます。

そして付いた時代では、北斎の絵の通りの綺麗な富士山が見えて、裸の男達が近くの海(相模湾?駿河湾?)で原始的な漁をしています。北斎が富士山を描いた江戸時代にちゃんと着いたと思っていたら実は、、、っていうホラーなネタです。

★★☆

3月前半の読書と感想、書評 2017/3/16(木)

003 首都消失 (徳間文庫)
1985/05/17

「BOOK」データベースより
S重工企画総務課長・朝倉達也は、役員会議へ新企画報告のため、名古屋を発ち東京へ向った。が、途中で新幹線がストップ、首都圏に大異変が起ったことを知る。都心を中心に半径三十キロ、高さ千メートルの正体不明な巨大な“雲”に覆われ、交通通信電波は遮断、死者も出たのだ。家族は友人は無事だろうか? この“封鎖”は一時的現象なのか? 国家中枢を失った日本の将来は…? 日本SF大賞受賞のパニック巨篇。

002 復活の日 (角川文庫)
1980/

「BOOK」データベースより
MM‐八八菌―実験では、摂氏五度で異常な増殖をみせ、感染後五時間で九十八%のハツカネズミが死滅!生物化学兵器として開発されたこの菌を搭載した小型機が冬のアルプス山中に墜落する。やがて春を迎え、爆発的な勢いで世界各地を襲い始めた菌の前に、人類はなすすべもなく滅亡する…南極に一万人たらずの人々を残して。人類滅亡の恐怖と、再生への模索という壮大なテーマを描き切る感動のドラマ。

001 日本沈没(上)(下) (角川文庫)
1975/

「BOOK」データベースより
鳥島の南東にある無人島が、一夜にして海中に沈んだ。深海潜水艇の操艇責任者の小野寺は、地球物理学の田所博士とともに、近辺の海溝を調査し、海底の異変に気づく。以降、日本各地で地震や火山の噴火が頻発。自殺した友人を京都で弔っていた小野寺も、大地震に巻き込まれ、消息不明になるが、ある日突然、ナポリの消印がある辞表が会社に届いた。どうやら田所の個人研究所と関係があるようで…。日本SF史に輝くベストセラー。

日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートするが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。



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