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日本の農業はどこへ向かうか マイカーで東京から京都まで旅行する場合 ゴルフをプレイしている人の年代層割合に驚いた 世界と日本の宗教別信者数 2021年版出版社不況 客員教授と非常勤講師ってなんだ? ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ 窓ガラスの熱割れで火災保険は使えるか? 天然素材でも綿はよく燃えるらしいことがわかった やっとのことでJ:COMを退会した 貯まった1円玉はどうする? 自動車整備士に未来はあるか? 液晶テレビが壊れた件 リタイア後の心配事 運転免許証取得者は意外にも増えている 著者別読書感想INDEX −−−−−−−−
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リストラ日記アーカイブ 2017年4月 読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。 日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです |
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-------------------------------------------------- 新入社員へ贈る言葉 2017/4/1(土) 1113 今日から新年度が始まります。(多くの)企業や役所、学生のお正月です。また、日本の雇用慣例ともいえる新卒採用入社は、ほとんどが4月1日の入社となります。今年は今日1日が土曜日のため、新入社員(職員)の初出勤は、3日の月曜日になるところが多いでしょう。 また今日4月1日はエイプリルフールで、各社、各人趣向を凝らした面白コンテンツが出てくるのが恒例ですが、いかんせん面白みのないオヤジゆえ、そのようなお遊びには向きません。なので今回も普通のつまらないオヤジの独り言です。 新年度初日は電車に乗ると新しいスーツを身にまとった若者が研修に向かうためか大きなバッグを持って乗り込んできたりします。思わずその背中に「頑張れよ!」と声をかけたくなります。 信じ難いことですが、まもなく定年を迎える私にも当然新入社員の時はあったわけで、今でも昨日のことのように覚えていますから、この学生から社会人となった節目というのは人生の一大転機という大イベントなのです。 多くの場合、入社初日には入社式があって、社長など偉いさんのつまらない訓示があり、昼食は役員や社員との立食パーティ、午後からは社内見学や数日〜数週間の入社時研修がスタートというのが多いでしょうか。 このあたりは私が新入社員だった38年前とほとんど変わっていない気がします。 日本人は入園式、卒園式、入学式、卒業式、そして入社式と節目節目でのイベント(式)が好きなようですね。けじめをつけるという意味でも悪くはないと思いますが、逆に言えばそうした式に出ないと、一定の同年代の仲間には加われないというような村意識を強く感じることもあります。 つまり、一度入社すれば終身雇用が当たり前だった時代の遺物ともとれますし、中途入社組を否定したり、のけ者にする制度のような気がします。 もっとも最近では労働者の流動化が進み、終身雇用も崩れ始めているという中で、そうした新卒入社組と中途入社組を分けたり区別するのは流行らないと思いますが、深層心理の部分ではまだまだそうした区分が残っていたりするのでしょう。 ふと気がつきましたが、定年で退職するときには一般的には「定年退職辞令」が出て、所属部署でささやかな慰労会が開かれる程度で、会社を挙げての退社式というのはあまり聞いたことがないですね。企業によっては、特に同期退社が多い大企業などではあるのかな? 入社式は盛大にやっているのだから、退職するときも、しかも企業都合で退職する場合は、ちゃんと盛大な退社式を開催してもらいたいものです。もちろん辞めたくて辞める人ばかりではないでしょうから、そういう虚礼に出たくはないという定年退職者も多いかとは思いますが。 ま、それはどうでもいいのですが、、、 せっかくだから新入社員や若手社員へ老年の私から贈る言葉です。 (1)生まれてから社会人になる20数年間と、社会人になって定年になるまでの40年間は、実感として同じぐらいの期間だと思え。それぐらい社会人になってから年をとるスピードは速い。 (2)役所や大手企業にうまく入れたら、無理せず細く長くという生き方を。甘い話には乗らずに地味に淡々と生きるべし。残念ながら中小零細企業に入ったら、一人で会社を背負ったつもりになって派手に暴れよう。うまくいくと大化けする。 (3)入社して3年間は個を捨て滅私奉公してみよう。人生80年の間に3年間ぐらいそういうことを経験して絶対に損はない。 (4)社外の友人は絶対必要だが、それは30代になってからでも遅くはない。まずは社内で絶対的な友人や信頼できる先輩を作ろう。 (5)辞めたくなったら少し仕事以外の趣味や学生時代の友人たちと遊んでみよう。特にスポーツで思いっきり汗を流すのがいいぞ。そして客観的に自分と仕事を見つめてみよう。感情の赴くまま辞めてしまったあと、転職して成功するのはホンのわずかなレアケースだと思え。 今は定年が60歳というところが多いですが、今の新入社員が中高年になる30年後40年後には定年が65歳、または70歳となっているでしょう。つまり22歳で入社して、43年〜48年間も働くことになります。 でも長いようで、案外あっという間に過ぎてしまいます。苦しいこともありますが、楽しいこともいっぱいあるでしょう。社会人の最低限のマナーとして健康に留意するのと、約束は守る、違法なことには手を出さない、仕事では感情的にならない、先輩には敬意を表すなど、たいへんでしょうけど頑張ってください。 【関連リンク】 837 電話に出るということ 700 なにもかも懐かしい新入社員の頃 645 面白い入社試験 ---------------------------------------------------------- 最近見た映画(2017年4月) 2017/4/5(水) 1114 きみがぼくを見つけた日(原題:The Time Traveler's Wife) 2009年米 監督:ロベルト・シュヴェンケ 出演:レイチェル・マクアダムス、エリック・バナ オードリー・ニッフェネガー著の同名の小説を映画化したものです。原題にあるとおり、タイムトラベラーものの恋愛映画ということで、ややその手のストーリーには食傷気味ですが、意外と面白かったです。 自分の意志とは関係なく、突然自分の未来や過去に影響がある場所へタイムスリップしてしまう男性が主人公で、子供の頃に突然現れた謎の中年男に恋をして、やがて図書館で青年時代のその男性とばったり出会うというヒロインとの哀しくも切ない物語という感じ。 タイムトラベルものはもういい加減にうんざりしていますが、「もしも○○だったら」的な架空の想像をするなら、タイムトラベルというのは安易で最適なツールになります。 昨年大ヒットした「君の名は。」も映画は見ていませんがそういうストーリーだし、やはり昨年にヒットした「帰ってきたヒトラー」も、今年1月に公開された「本能寺ホテル」もやはりタイムスリップものです。 そのうちNHK大河ドラマでも現代人が戦国時代にタイムスリップするようなドラマが作られるようになるのかも知れません。それはないか。 ★★☆ 陽のあたる場所(原題:A Place in the Sun)1951年米 監督:ジョージ・スティーヴンス 出演:モンゴメリー・クリフト、エリザベス・テイラー セオドア・ドライサーの小説「アメリカの悲劇(An American Tragedy)」を映画化したもので、日本では1951年に公開されました。アカデミー賞監督賞他5部門で受賞し、ゴールデングローブ賞では作品賞に輝いた作品です。 貧しい家庭で育った主人公が叔父の経営する工場で働くことになり、そこでも仕事ぶりが認められ一躍昇進していきます。 自分には縁がないと思っていた上流社会へも顔を出すようになり、そこで社交界の花と言われていた女性と知り合い恋愛が始まります。しかし主人公には工場勤め時に知り合った同じく貧しい家庭の女性との付き合いがあり、その女性が妊娠したことで事態は急変することになります。 と、今ではドラマや映画で珍しくもない貧しい男の出世物語と三角関係のなれの果てっていう構図ですが、まだ太平洋戦争が終わって数年という時代においては刺激的だったと思います。 当時まだ10代のエリザベス・テイラーがとってもチャーミングで、しかも上流社会のお嬢様役でなかなか堂々とした女優っぷりです。それだけでも見る価値のある映画かもしれませんね。 ★★☆ 招かれざる客(原題:Guess Who's Coming to Dinner)1967年米 監督:スタンリー・クレイマー 出演:スペンサー・トレイシー、シドニー・ポワチエ、キャサリン・ヘプバーン 公開を前に亡くなったスペンサー・トレイシーの遺作とされる作品で、さらに4度もオスカーをとった名女優キャサリーン・ヘプバーンとの共演という豪華配役で騒がれた作品でもありますが、この映画というか人種差別に関したテーマからしても一番存在感が高いのは、まだ40歳になる前のシドニー・ポワチエでしょうか。 この映画公開と同年にはシドニー・ポワチエの大ヒット作「夜の大捜査線」も公開されています。 ここ何年も白人俳優、女優しか受賞できないと言われてきたアカデミー賞ですが、当時はこうした人種問題をテーマにした根深いアメリカの現実を大ヒットさせていたのですね。 新聞社社長の一人娘がヨーロッパ留学からアメリカの自宅へ帰ってきます。そのときにヨーロッパで知り合った黒人男性を一緒に連れてきます。 どういう黒人かと調べると、昔に事故で妻子を亡くした医者の資格を持つ男で、世界的にも評価の高い数々の書籍も出している優秀な人物ということがわかりました。 娘の母親や親しくしているゴルフ仲間の神父は祝福をしますが、娘の父親は黒人と結婚することにどうしても賛成できず悩むことになります。 黒人男性は、両方の親全員が賛成してくれなければ結婚はできないと伝え、やがてその両方の両親が一同に集まることになり・・・ 最後は父親の感動的なスピーチで終わりますが、この50年前にはやがて黒人大統領登場するということまでは理解を超えていたでしょうけど、実際的には現在でもこうした差別感というのはほとんど変わっていないというのが現実なのでしょう。 ★★☆ 武士の献立 2013年 『武士の献立』製作委員会 監督:朝原雄三 出演:上戸彩、高良健吾 江戸時代に外様大名としては最高級の権力を持っていた加賀藩お抱えの料理人と、その息子夫婦の成長物語です。 時代劇映画としてはそこそこヒットした2010年公開の映画「武士の家計簿」も同じ加賀藩が舞台でしたが、二匹目のドジョウというか、それと同じ流れをくむ映画です。 大名達の料理を作る台所方の家の次男に生まれ、本来は長男が後を継ぎ、次男は他家へ養子に入ることになっていたところ、長男が若くして病気で亡くなり、侍でありながら料理人の家督を継ぐ役目が自分に回ってきました。 剣の道を究め、その道でのし上がろうと思っていた矢先に、刀ではなく包丁に持ち替えて藩に貢献する包丁侍になったことで、仕事にもまったく身が入らず、やる気が出ません。 それを憂いた江戸詰台所方の父親が、自分が工夫した料理の素材をひと目で見抜いた浅草の料亭の娘で江戸の加賀藩屋敷で女中として働いていた主人公を見初め、息子の嫁にと加賀へ送り込みます。 妻となった娘はやる気のない次男に洗練された料理技術を教え、メキメキと実力が伴ってきますが、加賀騒動(1748年)が起き、改革派の親しい友人から誘われ藩主の暗殺へ巻き込まれそうになります。 上戸彩のような現代的な顔をした美人が、このような時代劇に向くのか?しかも男を立てて出世が決まると自分は武家の奥方には相応しくないとサッと身を引くような控えめな性格の女性が似合うのか?というのはさておき、ストーリーとしては実際に起きた事件をうまく取り入れ、わかりやすく起承転結ができています。 最近の映画は複雑に奇をてらうものが多く、見た後にスッキリしないものが少なくないですが、こちらはハッピーエンドで終わります。 ★★☆ 【関連リンク】 1090 「ゼロ・グラビティ」、「真田幸村の謀略」、「イエスマン “YES”は人生のパスワード」、「スティーブ・ジョブズ」 1051 「麗しのサブリナ」、「白熱」、「第七の封印」、「最前線物語」、「シン・ゴジラ」 1042 「男と女の不都合な真実」、「スリーデイズ、ダークナイト ライジング」、「鍵」、「北の零年」、「海街diary」 ---------------------------------------------------------- 歳を重ねて初めてわかったこと 2017/4/8(土) 1115 前に和田一郎氏のブログから「僕が19年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと(Ichiro Wada 2013-11-01)」を紹介したことがありましたが、その後、内容を大きく膨らませ、書籍「僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと」として出版されたみたいです。和田さん大したものです。確かにいいこと書いてありましたものね。ブログと本で勤務年数が1年違うのはご愛敬w その和田さんのブログだったかどうか記憶が定かではないのですが、中年になり、年を重ねてきたことを振り返って書かれた個人のブログを読んで、自分自身、59歳となり、今年60歳を迎えますので、ここいらで年を感じたことを書き残しておきたいと思います。 一般的によく言われていることと変わりありません。やはり自分にも年相応の老化の波が押し寄せてきたようです。 1)近視だった目に老眼が入ってくると、新聞や本をじっくり読むのがつらくなってくる 2)朝起きてから身体がスムーズに動くのにしばらくかかるようになる 3)地下鉄駅から地上までの長い階段を一気に上がると息が切れる 4)集中力がなくなるのか、同時に二つ以上のことをするのが難しくなる 5)集中できる持続時間が徐々に短くなってくる 6)相手にすぐにムカッとくる 7)物忘れ、ど忘れがやたらと増える 8)加齢臭や尿漏れ含め、老人臭くなってくるのが自分でもわかる 9)高音域が聞きづらくなり子供の声や高音の女性アナの声が耳障りになる 10)食がだんだんと細くなり、胃がもたれやすくなる 11)バイクや自転車でバランスがうまくとれなくなる 12)就寝中、尿意で目を覚ますことが増える 13)健康食品や霊園、お墓の広告チラシが気になる 14)年金や介護保険関連のニュースに敏感になる 15)写真アルバムや身の回りの持ち物を整理したくなる 16)仕事を辞めたら毎日なにをしようか考えるようになる 17)高齢化に対応した自宅のリフォームを考えるようになる 18)今後のことをいろいろと考えるのだが考えたことすらすぐに忘れる ま、普通の老人の標本みたいなものですね。 若いときには老人とはそういうものだって聞いていても、核家族が進んだ現代では身近に老人がいない場合が多く、実感がないものだからまったくわかりません。私がそうでした。 いざ自分がその立場になってみて初めてわかることばかりです。いや理解しろっていうほうが無理があります。例えば病気や事故で視力を失った人の普段の生活を五体満足な人が理解しようと思ってもかなり無理があるのと同じです。 そうした病気と同じような老化現象は、ある日突然訪れるわけではなく、長い時間をかけてゆっくりとやってくるので、その変化になかなか本人は気がつかないものです。俺はまだ若い、若い者にも負けないと言い張るのはそういうことで、それ自体が老化現象と言っていいでしょう。 そしてそのような老化現象に陥った老人は若い健常者にとって邪魔な存在に違いないだろうなぁって最近よく思います。世代間で年金や雇用など様々な問題で利害の衝突が起きていますが、それも最近になってよくわかるようになりました。 もし自分がいま20代の若者だったら、表面には出しませんが、やはり心の中では高齢者を邪魔な存在と思っていたかもしれません。いやきっとそう感じているでしょう。 その高齢者が若者の何倍もの数で急速に増えていくものですから、若者にとってはたまったものではありませんね。 60代と10代の人口を比較すると、10代を1とすると60代はその1.8倍の数になります。 そりゃ、会社の中でも観光地でも公園でもスーパーでも、高齢者がうじゃうじゃといる感じがしますよね。 そして昔のように若い人から尊敬される高齢者が少なくなってきていると言われることも耳が痛いところです。 老人の数が少なかった時代は、それなりに尊敬を集めたり、インターネットなどがない中で、経験豊富な知恵袋として役立ったりしてましたが、今では高齢者にかまってくれるのは詐欺集団以外はいません。 結局は世代間でわかり合うというのはなかなか難しいことで、国の政策でどうかなるものでもありません。 高齢者にとって若い人には労ってもらいたい、労られて当然だというのが本音で、逆に身内以外の若い人を応援しよう、育てようという考えを持つ高齢者は極めて少なそうです。勝手なものですね。 せめて現役を引退した高齢者には若い人の邪魔にならないよう、気を遣って地味に暮らしていくのが相応しいのかもしれません。 でもお金を持っている人が多いのも高齢者ですから、持っている高齢者には地味に暮らすのではなく派手に遊んで散在してもらい、また若い人にもっと投資をしてもらいたいものですけどね。 【関連リンク】 1044 高齢者ドライバーの増加がもたらすこと 1040 高齢化社会は日本になにをもたらすか? 985 高齢者の健康には会話が重要だということ ---------------------------------------------------------- 4月前半の読書と感想、書評 2017/4/12(水) 1116 二流小説家 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 ディヴィッド・ゴードン 2010年に発表された著者のデビュー作が本作品です。アメリカ本国よりも日本でよく売れた作品だそうです。その日本では2013年に「二流小説家 シリアリスト [DVD]」というタイトルで映画化もされました。 複数のペンネームを使い分けて大衆小説やポルノを書いている売れない作家が主人公で、この主人公のところへ連続女性殺人事件の実行犯で死刑を宣告されている男から会いたいと連絡が来ます。 死刑囚の希望は、自分宛てにファンレターを送ってくる女性に会って、自分とその女性を主人公にしたポルノ小説を書いてほしいと依頼です。 書いてくれたらその代償として、死刑執行後に発表することを条件に、過去の殺人事件で隠していたことを話してもいいということで、それができれば死後に発表するノンフィクションは大ヒット間違いなしとそろばんをはじき死刑囚の提案にのります。 しかし当初思っていたような単純な話しではなく、死刑囚の弁護士、殺人事件の被害者遺族、アシスタントとして出版社との交渉役を手伝ってくれているお金持ちの家の女子高生などを巻き込み、やがては死刑囚の依頼で作家が会った女性たちが次々と惨殺されていくことになり、もしかすると死刑囚は無実で、真の連続殺人犯は別にいる?と混乱していきます。 翻訳者の作為なのか不明ですが、日本人作家が書いたような馴染みのある流れと展開で、翻訳本にありがちな難解な解釈や極端な意訳は感じられず、まるで東野圭吾氏が書いたようなスムーズな物語で読みやすくていい感じです。 最後に出てくる凝ったどんでん返しも、想像の域を遙かに超えていて、なかなかよくできたミステリーでした。しかし現実の世の中はそう思った通りにはコトは運びませんよね。 ★★★ 脊梁山脈 (新潮文庫) 乙川優三郎 2002年に「生きる」で直木賞を受賞した著者が、2013年に発表した現代小説で、この作品は大佛次郎賞を受賞しています。 タイトルの「脊梁山脈」とは、主要な分水嶺となる山脈のことで「セキリョウサンミャク」と読みます。あまり普段使わない難しい字ですね。人生において誰でもそういう脊梁山脈の頂上に立つことがあります。後戻りする人もいるでしょうし、先へ進む人も、またその場で倒れてしまう人も、、、 ストーリーは、太平洋戦争中に上海で学生をしていた主人公ですが、そのまま日本陸軍に召集され、生き地獄を味わうもどうにか生き残り、そして戦争で灰燼と化した日本に帰国します。 帰国して故郷へと戻る汽車の中で激しい腹痛に襲われますが、物資不足の中同じく復員中の男に薬をわけてもらい、看病もしてもらって無事救われます。 男は途中の駅で降りてしまいますが、そのときに預かったままになっていた薬箱が、ちょっと特殊な木工細工でできています。 その後、長い長い期間が過ぎますが、ずっと心の中にその命を救ってくれた恩人にもう一度会いたいと捜す旅に出ます。手がかりは名前と特殊な木工細工です。 そしてやがてその男は木工を専門とする木地師であることがわかり、足跡をたどっていくと、転々と住む場所を変えながらも生きていることが判明するという物語です。木地師とはろくろを回して茶碗やお盆、こけしなど木工を専門に作る集団のことで、その先祖は仏具などをを作る、朝鮮からの渡来人と言われています。 読んでいると宮本輝氏の小説にもこうした特定のテーマについて深掘りというかうんちくを紹介するような展開が多く、今回深掘りするテーマは「木地師の謎と足跡を解き明かす旅路」と言ったところでしょうか。 またお互いに惹かれ合いながらも結ばれることがない女性が出てくるのも宮本輝氏の小説と同様で、初めて読んだ筆者の作品とは思えない感じがしました。 ★★☆ 国盗り物語(新潮文庫)(1)(2) 司馬遼太郎 2009年に3巻と4巻を先に読んでいます。信長が主人公として出てくるのが3巻以降なので、先に興味があるところから読みました。 この作品は1963年〜1966年に週刊誌に連載されたもので、今から50年以上も前に書かれています。その後NHK大河ドラマ 国盗り物語が作られたのは1973年のことで、そのときの主役は斎藤道三が平幹二朗、織田信長が高橋英樹という俳優陣です。今度DVDでも借りてこようかな。 この1巻と2巻の主人公は戦国時代初頭の主役斎藤道三です。私は斎藤道三については信長の義理の父親(信長の妻の濃姫の父親)ということぐらいであまり詳しくなかったのですが、美濃の実力者として君臨するに至る長い道のりがよくわかる小説です。 もちろん時代が時代だけに想像や脚色も多いでしょうけど、下克上という言葉がこの戦国大名こそ相応しく、京都妙覚寺で僧侶だったのを飽き足らず飛び出し、乞食生活から、油売りで成功し、やがては美濃の大名を追い出して岐阜城主にまで上り詰めていきます。 こうした腐敗する旧体制を一新し、成り上がり成功物語を読むと、なんだかとても清々しい気分になれます。 この時代成功者になるためには悪知恵や、謀略などもつきものですが、最近では減少してきた人脈やコミュニケーション能力、そして情報収集能力と深慮遠謀が重要であることがわかります。現代社会でも成功者に共通する能力ですね。たぶん。 戦国時代終盤で一度は天下を取る豊臣秀吉も貧しい農家の出と言われていますが、この道三と秀吉には共通する「人たらし」の能力が長けていたことがこの小説を読むとよくわかります。 岐阜城は信長の城と思われがちですが、最初に金華山(稲葉山)に目をつけ城を構えたのは斎藤道三と言われています。今はロープウェーで一気に登れますので一度行きたくなりました。 ★★★ 遊びの品格 (中経の文庫) 川北義則 ビジネス書を中心に過去1000冊以上の著書を出されているそうですが、読むのは2012年に読んだ「男の品格」に続き2作目です。 2012年7月前半の読書(男の品格) 「遊び心」「趣味」「作法」「恋愛」「お金」「芸術」という6つの視点で現代人に欠ける遊びの要素を著者なりの考えで紹介したものですが、旅先の移動中にでも書いたというような、やっつけ仕事的な感じが文章の節々に感じられます。遊びながらこの「遊びの品格」を書いたとまでは言いませんが。 ま、これほど多くの著書を次々出版されていれば、内容や質よりもスピードと直感、そして構成力が人一倍有能なのでしょう。それらの能力は尊敬に値します。 あまり役に立つ話しとも思えませんが、ある多忙を極めていそうな人の考え方や生き方を知るという意味で、暇つぶしに読むのならそれもいいでしょうかね。意識高い系の人が目指すべき才能かもしれません。 ★☆☆ 悪党 (角川文庫) 薬丸岳 著者は様々な職業を経験した後、2005年刊のデビュー作「天使のナイフ」で江戸川乱歩賞を受賞されています。 この「悪党」は、2009年刊の4作目の作品で、過去には上記「天使のナイフ」と連作短編の「刑事のまなざし」(2011年刊)を読んでいます。 テンポが良くライトな感じで読めますので、結構お気に入りの作家さんです。 天使のナイフ 4月前半の読書と感想、書評 2014/4/16(水) 刑事のまなざし 11月後半の読書と感想、書評 2016/11/30(水) 主人公は元警察官で、仕事中に不祥事を起こし懲戒解雇、その後知人の誘いでホープ探偵事務所に入所し勤務する私立探偵という設定です。 「悪党」「復讐」「形見」「盲目」「慟哭」「帰郷」「今際」の7編の連作短編からなります。 主人公は過去に悲惨な身内の事件でトラウマを抱えていて、警察官を懲戒になった原因もそれが大きな要因でした。 そして人捜しなどの探偵業をしながら、そのときの犯人が少年院を出た後、どういう生活を送っているのかが気になり調べ始めます。 私立探偵の本場のアメリカではそれなりのステータスがあり、職業としても認知されていますが、日本では探偵と言うとどうしてもいかがわしい感じが拭いきれません。よくは知りませんが、実際に探偵社で株式を公開できるような企業もありませんし、何かにつけいかがわしいのでしょう。 しかし小説となると、この私立探偵という職業が生き生きとしてくるから不思議です。国産小説では古くは生島治郎氏の作品、最近では原りょう氏の「沢崎シリーズ」や、大沢在昌氏「佐久間公シリーズ」、東直己氏の「探偵はバーにいる」など「ススキノ探偵シリーズ」など、結構ツボにはまってよく読んでいます。 ★★☆ 【関連リンク】 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路、会社という病 2月後半の読書 天使の囀り、日本人の死に時 そんなに長生きしたいですか、楽園、サムライと愚か者 暗躍オリンパス事件 ---------------------------------------------------------- 7年ぶりに自宅のパソコンを買い換えたその1 2017/4/15(土) 1117 7年前の2010年には自宅で使うデスクトップパソコンが故障して寿命とあきらめ、当時の中級機(デスクトップ型)に買い換えましたが、これが当たりがよかったせいか、その後故障もせず、毎日使うパソコンとしては7年間も壊れずよく持ってくれました。過去で7年以上ももったのは初めてかもしれません。 と、古い記録を出して調べてみると、 1台目 1994/12/14 COMPAQ Presario 433 金額不明 486SX/33MHz Windows3.1 2台目 1997/02/02 GATEWAY2000 G6-200(モニター含む) 294,168円 PentiumPRO200MGz Windows95 3台目 1998/02/06 DELL Dimension XPS D300H(17インチモニター付き) 290,356円 Pentium II Windows95 4台目 2000/07/12 DELL Dimension XPS T850r 185,670円 Pentium III Windows2000 5台目 2001/12/20 DELL Dimension 4300S 91,665円 Pentium 4 WindowsXP 6台目 2004/07/07 DELL Dimension 8400 133,350円 Pentium 4 WindowsXP 7台目 2010/06/16 DELL Inspiron 580 59,800円 Core i3 530 Windows7 1994年に最初の1台を購入してから、3年、1年、2年、1年、3年、6年と買い換えてきましたから、今回の7年で買い換え期間最高記録更新です。 しかし昔は仕事でも使っていたという事情がありますが、20数万円もするPCを1〜2年で買い換えていたんですね〜恐ろしい。 あと、PCで言えば、会社の業務と兼用で98noteやダイナブックJ-3100、レッツノート、それに個人用のモバイル端末としてシャープテリオスを上記デスクトップ機と並行して使っていた時期があります。こうしてみると結構豪勢ですね、 世の中的にはもはやデスクトップPCなんていうものは流行らず、売上減少の一途をたどっていますが、個人的にはタブレットやノートPCのモニターでは小さくて目が疲れるのと、広い画面上で複数の作業を同時並行で進めたい時もあり、デスクトップPCは手放せません。 しかし今使っているデスクトップPCは、最近のネットの動画を多用した重いコンテンツが増えてきて、メモリーも少な目で動きがかなり悪くなってきました。 以前なら「パソコンは消耗品、3年持てば良い」ぐらいに思っていましたが、この子は7年も持ってくれたので御の字でしょう。 そこで、今回は動画もサクサクと編集ができ、また最低でも5年以上は使えるような、ちょっと高級なマシンを張り込むことにしました。 狙うは現在の汎用タイプのPCの中では最も高級な「インテル Core i7 プロセッサー」搭載のデスクトップ。7年前に買ったPCが「Core i3 」ですから、中間の「Core i5」をすっ飛ばしての上級機狙いです。 そしてここのところ5台連続してDELLを使ってきましたが(その他に子供用として3台のDELLノートPCを購入)、特段に可もなく不可もないって感じです。 別にDELLにこだわりたいとも思えないので、この機会に他のメーカーや安そうな通販専用機なども調べてみました。 結果から言えば、自分のPC知識や、使い方を考えればやっぱりDELLのPCがお手頃で安心できるかなって感じです。 現在ありものの部品等を使い回しつつ、新たに自分で組み立てれば、もっと安く性能強化した、自分好みのPCを手に入れられるのでしょうけど、そうした手間もリスクもかけたくありません。 DELLの場合、実機を見たい場合は都内に実店舗がありますが、通常は仕様を自分で考えて、インターネット通販でそのままポチるというのが基本的なスタイルです。 そして困るのがDELLの通販サイトを見ていると、様々なキャンペーンが煩雑に行われていて、それによって同じ製品でも価格が毎週変わります。 例えば「1万5千円割引」という週もあれば、「15%引き」という週もあります。ちょうど10万円のモデルなら、どちらでも同額の値引きを得られそうですが、9万円のモデルなら前者がお得、12万円のセットなら後者がお得となり、週によってお買い得が変わりあれこれ悩んでしまいます。 さらにたった「5千円割引」の週もあれば、滅多にないですが、「17%引き」の週もあったりして買うタイミングによって同じ製品でもかなり金額に差が出てきます。やっぱりボーナスシーズンとか決算時期とかはニーズが高いのと競争が激しくなって割引額も大きくなる傾向にあるようですからご参考に。 ま、欲しいときが買い時と割り切るのがいいのでしょうけどね、、、 あと、ネットで製品を見ていると、横にチャットで担当者(日本語のできる外国人がほとんど)に購入相談ができる画面がポップアップで出てきます。 このチャット画面、普段は邪魔だな〜と思っていましたが、いよいよ買う段になった時、そこのチャットに入り、「買うつもりだから、もう少しまけて」と頼み込んでみると快く数千円下げてくれましたw。 いつでも誰にでもディスカウントしてくれるのかはわかりませんが、一言チャットで頼めば数千円と考えると使わない手はありません。 結局、XPS 8910という上級機で、インテル Core i7 プロセッサー、メモリーは16GB SDRAMと、故障さえしなければ5年以上は十分に使えそうなセットです。 価格は組み合わせや仕様、キャンペーン等によって変わりますが、今回購入したモデルは23インチモニターを含めて12万円を少し切りました。 前のPCが当時の普及機(本体のみ)で約6万円ですから、モニター込みとは言え、それからすると2倍近い価格になりました。 即納モデルではなかったので、中国の工場?から船便で輸送され、待つこと、待つこと、待つこと、2週間で無事届きました。故障して早く新しいPCを使いたいのなら即納モデルを選ぶべきですが、その場合、同仕様の製品で数千円ほど割高になります。 今回は液晶モニター(S2316H)もセットで購入。今まではアスペクト比4:3の昔のサイズの液晶モニターをずっと使ってきましたが、今回は近年標準になりつつある16:9のHDTV規格(1,920 x 1,080の俗称フルHD)の横長のサイズへ。 23インチモニタにした理由は、ワイドモニタで横が広がる反面、縦の寸法が今の17インチモニタよりも狭くなるのが嫌だったので、縦幅が今までとほぼ同等サイズと考えたことによります。 今まで使ってきた17インチの4:3の液晶モニタを横に並べてみると、横幅はグッと広がりますが、縦幅は気持ち狭くなります。ワイド24インチあたりで縦幅はちょうど同等かもですね。 「7年ぶりに自宅のパソコンを買い換えたその2」 へ続く。 【関連リンク】 自宅のパソコンが逝ってしまった件 その1(トラブルいろいろ解決編) 自宅のパソコンが逝ってしまった件 その2(バックアップは大切よ編) 自宅のパソコンが逝ってしまった件 その3(逝ってしまった原因?編) ---------------------------------------------------------- 7年ぶりに自宅のパソコンを買い換えたその2 2017/4/19(水) 1118 前回、7年間使ってきたデスクトップPCがそろそろ我慢の限界近く動作がのろまになってきたので、今時、スマホやタブレットが主流を占めていて、デスクトップPCでもなかろうという外野の声は無視をして、新しく買ったというお話の続編です。 「7年ぶりに自宅のパソコンを買い換えたその1 2017/4/15(土)」 いろいろ悩んで買ったのはDELL XPS 8910というデスクトップPCで、Core i7プロセッサー、HDDは1TB、メモリーは16GBと23インチモニターをセットにしたモデル。最低でも5年間は快適に使えるようにと願って高性能機を選びました。 発注してから2週間後に到着し、土曜と日曜の二日間を使って、ハードウェアの設定及び初めて使うWindows10の学習と設定、使い慣れたアプリケーションソフトのインストールなどをおこないました。 まずハードウェアの設定から入ります。 PCの中で一番故障しやすいハードディスク(HDD)は、今までOS用、作業用、バックアップ用と3台の内蔵HDDをPCの中に押し込めて使っていました。その中からOS用以外の2台のHDDを取り外し、新しいPCに移設をしました。 このXPには当初から2台のHDDとSSDの増設が可能となっています。増設に必要なものは、HDD本体とATAケーブルだけで接続するだけで自動的に認識してくれますから楽ちんですね。昔はやれジャンパピンの設定とか、RAMの認識設定とかたいへんでした。 HDDを移設してみて初めて気がつきましたが、増設HDDのATA接続端子のところが、本体表面のギリギリのところにあり、今まで使っていたコネクター部分が両側ストレートタイプのATAケーブルではPCの筐体から飛び出してしまいカバーがしまらなくなりました。 仕方なくL字型のコネクタのATAケーブルをAmazonで探すとそんなに高くないので、通販で買って待つより手っ取り早く近所のPCデポで今すぐ買ってくるかと出掛けました。 しかし、PCデポで見ると同じATAケーブルがAmazon価格(送料込み)の3倍以上もすることに愕然となり、結局すごすごと帰ってAmazonで購入することに。 通販の売上が伸びるのも仕方ないですね。ATA接続ケーブルは元々そんなに高いものではないけれど、HDDは2台、ケーブルも2本が必要で、その価格3倍差はちょっとねぇ、、、 ケーブルが到着するまで閉まらないカバーはとりあえずガムテープで押さえておくことにしました。みっともないので人には見せられません。 Amazonで注文すると通常便で3日後に到着、無事に装着でき、カバーもぴったり収まりました。 HDDと本体をつなぐATAケーブルのコネクタ部分はストレートタイプとL字タイプとがあり、さらにL字タイプの場合、L字に曲がる方向が上と下の2種類があるので、購入時はちょっと注意が必要です。 次に、新しく買った23インチモニターと本体とはHDMIケーブルで接続しますが、モニター側は標準のHDMI、PC本体側にはGeForce GTX 750 Tiというグラフィックボードが付いていて、その端子がMini HDMIの端子となっていて、付属のケーブル(両側HDMI標準)ではつながりません。 一応HDMIミニへの変換コネクタも同梱されていて、それをあいだに挟めば接続できるのですが、ここは気持ちよくHDMI標準とHDMIミニ端子の3mケーブルを事前に準備しておき、それを装着しました。余計な出費だったかな。 ハードウェアの設定を終え、次はシステムとアプリの設定です。 今までWindows7を使っていて、今回Windows10に変わることで使えなくなったアプリの筆頭が漢字変換ソフトのATOKで、これだけは新しいバージョンを購入しました。しかも更新できる期限がとうに過ぎていて、安いバージョンアップ版ではなく、新規購入ということになります。ま、仕方ない。 やっぱりずっと使い慣れてきた漢字変換と、変換効率が素晴らしいATOKは手放せません(その割にはブログに誤字が多いって?)。 ATOK以外は、普段使っている有料、無料の各アプリソフトは、なんとか全部移行または新規インストールでき、今までの使い勝手を大きく変える必要がありません。 古い「はがきスタジオ」(マイクロソフト)は、普通にインストールしようとするとエラーが出てしまい、これも買い換えを覚悟していましたが、ネットで調べてみると、エラーの回避策がMS側でちゃんと報告されていて、その通りに設定をすると無事にWindows10にインストールすることができました。いや〜ありがたや〜。 あと、長らくテキストエディターに秀丸を使っていましたが、今回からフリーのサクラエディターに変更。名前から想像できるように日本人が開発したそこそこ高性能なエディターで、秀丸並みの機能は十分に備えています。 さて、新しいPC、使ってみての感想は、、、 当たり前ですが、いや〜快適です。 本当は一気にメインドライブにSSDを入れて劇的なスピードアップを図ろうかとも考えましたが、数年後にこのPCの動作が遅く感じてからでもいいかなというぐらい快適です ---------------------------------------------------------- 格安スマホMVNOへ変更後1年 その1 2017/4/22(土) 1119 スマホを大手キャリアのSoftbank契約から今流行のMVNO契約に切り替えてほぼ1年が経ちます。 世の中的には格安ゆえの問題も起きているようですが、なにか格安スマホブームに水を差すのが目的か?と思える報道に、どこかから圧力がかかっているのか?と勘ぐってしまいます。 格安スマホをめぐる相談急増 “よく理解して利用を”(NHK)
それはさておき、MVNO事業者が提供するいわゆる格安スマホに変更し、1年間使ってみた感想などを書いておきます。 まずMVNOとは? Mobile Virtual Network Operator(仮想移動体通信事業者)の略で、無線通信回線設備を開設または運用せずに、自社ブランドで携帯電話やPHSなどの移動体通信サービスを行う事業者のことで、DoCoMo、au、Softbankの大手キャリアの回線や通信設備(インフラ)を利用して通信事業(ネットや携帯電話事業など)をおこなう「他人のふんどしで相撲をとる」会社のことです。 従って格安スマホだからと言って携帯がつながりにくいということはなく、電波状況はDoCoMoなど大手キャリアと同じです。 DoCoMoかauかSoftbankいずれの電波を使っているかはMVNO事業者によって違いますので、もしそれにこだわりがあるのならMVNO事業者を選ぶ際にどこの電波を使っているかを事前に調べた上で決める必要があります。 例えばDoCoMo系MVNOはOCNモバイル、楽天モバイル、イオンモバイル、IIJ mio、ケイオプティコム、ビッグローブなどがあり、au系MVNOはmineo(マイネオ)やUQmobile(UQモバイル) 、Softbank系は日本通信b-mobile、U-mobile(ユーモバイル)、Y!mobile(ワイモバイル)※などがあります。※Y!mobileは厳密に言えばMVNOではなく自社回線も保有しています。 同様な形態では、固定電話もNTTの設備を利用した割安の通信を提供している会社(ソフトバンクテレコムやフュージョンコミュニケーションズ、アルテリア・ネットワークスなど)があったり、最近では電気も東京電力や関西電力の設備を利用した安い電力提供を行っている会社(ENEOSでんきや大阪ガスなど)もあります。電力の場合電力そのものは各社で製造しているので、通信とは形態がちょっと違いますけど、インフラを借りていると言うことは同様と言うことで。 携帯電話の場合は、大手通信キャリア事業者から通信回線設備を借りて、利用契約とSIM(携帯やスマホの中に入れる認証チップ)の販売だけをおこないますので、小規模な会社でも割と簡単に始められます。店舗は持たずにネット上だけで契約販売をおこなっている会社が多いのも特徴です。その分経費が抑えられて費用が安くできますからね。 主なMVNO会社は、 1)NTTコミュニケーションズ(OCNモバイル) 19.0% 2)インターネットイニシアティブ(IIJ) 16.4% 3)楽天モバイル 8.6% 4)ケイオプティコム 5.9% 5)ビッグローブ 5.3% 6)U-NEXT(U-mobile) 4.3% 2016年度版 MVNO(格安SIM)事業者別シェアランキング(2016年MM総研調べ) となっています。上位にはネームバリュー効果か大手企業が入っています。 実はこのMVNO事業者は、データ通信だけのSIMを販売しているケースも多く、通常のスマホのように使える音声通話ができるSIMのシェアだけを切り出すと下記のようになります。 1)楽天モバイル 21.9% 2)OCNモバイルONE 11.3% 3)IIJmio(みおふぉん) 10.2% 4)mineo(マイネオ) 7.4% 5)イオンモバイル 6.8% (2016年MMD研究所調べ) 多くの事業者が乱立していて(詳細は不明ですが2016年時点で500社を超えているという話しです)、しかもデータ通信と音声通話の種類、さらに高速通信が使える容量別料金、各オプションの種類など、多少はスマホ契約について理解をしていないと、こうした格安MVNO事業者を利用するのはリスクが伴います。 つまりMVNO事業者にDoCoMoなど大手3社と同様の丁寧なサービスや品質を求めてはいけないと言うことです。 但し、最近ではMVNO事業者でもイオンモバイルや楽天モバイルのように実店舗を構え、スマホにあまり詳しくない人にもフェースtoフェースで丁寧に説明する事業者もあり、大手キャリアとMVNO事業者の境界は狭まってきています。 そして現在のところはまだMVNO事業は順調に伸びている段階でいいのですが、やがてMVNO事業者が飽和状態になり、競争や値下げ競争が激しくなってくると、事業が赤字となり中には撤退する事業者が出てくることが予想されます。 事業基盤が脆弱な企業もあるでしょうから、その場合、ある日突然倒産、事業継続ができなくなるということも考えられます。倒産までは行かなくても、通信事業からの撤退、事業縮小や提供しているサービスの低下、料金の大幅な値上げ等があるかもしれません。 つまり、安いというのには当然理由があるので、携帯電話契約の知識をほとんど持たず、また調べることも面倒で邪魔くさいと思う人は、DoCoMoなどの実店舗で、丁寧な説明と気持ち悪いスマホデビューの歌でも聴かせてもらいつつ契約した方がいいと言うことです。 と、脅すような事を書きましたが、別にスマホの契約を理解するのはそれほどハードルが高いわけではなく、簡単に言ってみれば自己責任で使えるか、そして安いのでと割り切ることができるかどうか?ってことです。 例えば、「契約時にお店のカウンターで丁寧な説明や操作説明がなくても平気」「操作や設定がわからないとき、販売店に教えてもらうのではなく、自分で調べておこなう」「様々なプランやオプションを自分で考えて選択ができる」「インターネットにアクセスして検索等が普通にできる」このような人であればMVNOに変えても問題はないでしょう。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 大手キャリアでスマホを購入(機種変更含む)場合は、新しい本体と、通信の契約を行います。MVNOでは、基本的には本体の中に入れるSIMを販売していますので、本体をセットにして買うか、本体は別で手に入れるかはユーザーの自由です。 ここでは大手キャリアで購入・契約するのと同様、本体とSIMをセットで、しかも通話ができるプランでの話しをしていきます。 MVNO事業者で本体ごと購入し、大手キャリアのスマホ契約から変更をする場合、最近はナンバーポータビリティに対応しているMVNO業者がほとんどですので、自分で調べて手続きをおこなえば、現在使っている電話番号がそのまま使えます。 そのナンバーポータビリティではひとつだけ注意点があります。ネット上でMVNO事業者とナンバーポータビリティで契約をおこなう場合、業者側で旧スマホの番号から新しいスマホへ切り替えの手続きがおこなわれ、その後設定をした本体が宅急便等で送られてきますので、その送付期間は切り替えが済んだ旧スマホは使えないという、「スマホ空白期間」が生じます。 私の場合、切り替え日の午後から、翌日に新しいスマホが到着するまでの1日はスマホのないのんびりした生活となりました。 MVNO事業者の中には実店舗があり、その場で切り替えの設定をしてくれるところがあります。その場合は送付期間がありませんので、スマホ空白期間はできません。1日でもスマホを手放せないという人は注意しましょう。 また契約しているキャリアのメールアドレス(○○○@docomo.ne.jpとか)は使えなくなりますので、スマホでメールを使いたければ自分でGmail(無料メール)などを設定する必要があります。 あと少し面倒なのは、今までキャリアメール(○○@dokomo.ne.jpなど)でやりとりしていた相手のメールアドレスを取り込んだり、設定したりすることぐらいでしょうか。ただそうした設定の仕方などはネットで検索すればいっぱい出てきますので、面倒がらなければ特に難しいことはありません。 その2ではMVNOに切り替えての感想や、料金面、データ通信量などについて書いておきます。 「格安スマホMVNOへ変更後1年 その2」へ続く 【関連リンク】 1027 格安スマホ(MVNO)に替えた 656 スマホかガラ携か。中高年者にとっての選択 599 スマートフォンからガラ携に戻る人達 ---------------------------------------------------------- 格安スマホMVNOへ変更後1年 その2 2017/4/26(水) 1120 「格安スマホMVNOへ変更後1年 その1」では、MVNOの説明と切り替え時の注意点などを書きました。その2では、実際に変更して使ってみての感想と料金面でのお話です。 さて私がMVNOに変えた理由は、もちろん月々のスマホ料金を下げたいからです。 世の中の人はいったいスマホにどのぐらいお金をかけているのでしょう? 「現在支払っているスマートフォンの平均月額料金、大手3キャリアユーザーは平均7,876円、格安SIMユーザーは平均2,957円」(MMD研究所) と、あるように、概ねザックリ言ってDoCoMo等大手3キャリアでスマホを契約すると通信代金と本体割賦価格を含めて月々8千円程度かかり、MVNO事業者のそれに変えると本体価格+月々3千円以下になります。その差は月5千円ですが、MVNOで本体(端末代金)を購入するとそれは別料金になります。 つまりMVNO契約時の本体一括支払い代金が5千円×24ヶ月=12万円より安ければ、2年間機種変更などしないで継続するという前提でMVNOが安いと言うことになります。 もちろん10万円を超えるような本体(端末)はありません。せいぜい3〜7万円でしょう。安い端末なら1万円程度からありますし、すでに持っている端末がSIMフリー対応機種であれば本体を新たに購入する必要すらありません※。 ※SIMフリーのスマホのすべてがMVNO事業者で使えるわけではありません。使える機種はそれぞれ確認を要します。 MVNOに変えてどれほど安くなったかという比較は、本体価格を月々の契約費用に含めているケースが多い大手キャリア契約と、本体は最初に一括して買い取り月々の支払いには含めないケースが多いMVNOとではなかなか比較しにくい面があります(MVNO業者でも24ヶ月の割賦販売とか行っているところもあります)。 また高速通信できるデータ通信容量も大手キャリアではパケ放題的な無制限が多かったり、MVNOは細かく通信容量制限別で料金設定がされていたりして、利用する個人差があって判断しにくい面があります。 そこで、大手キャリアで機種交換した場合と、MVNOで本体を一括買い取り、その本体価格を2年間(24ヶ月)で割って月々費用に含めた場合で比較してみます。 もちろん買い取ったスマホは故障しなければ何年でも使い続けることができます。バッテリーは消耗品ですので2〜3年で劣化が激しくなってしまいますけどね。価格は2017年4月18日現在のもの、キャンペーン等は考慮していません。 ◆ソフトバンク ホワイトプラン(高速通信無制限、本体2年割賦、通話料は別)シャープAQUOS Xx3 (6,934円+2年間割賦料金1,480円)×24ヶ月=201,936円(2年間支払総額) ◆MVNO(イオン)契約(高速通信は2GB/1ヶ月、本体買い取り、通話料は別)富士通arrows M03 1,490円×24ヶ月+買い取り37,584円=73,344円(2年間支払総額) 差128,592円/2年間 高速データ通信量の違いや、音声通話の1分間あたり料金など、条件が違っていますが、この2年間の支払総額の差(約12万円)は無視ができない大きなものです。 普段データ通信にどれほどの容量を使っているかは請求書を見ると書いてあります。私は過去数ヶ月のデータ使用量を見てその範疇に収まる2GBで契約しました。 以前のスマホではどのぐらい使うかわからなかったので無制限で契約していましたが、意外と使っていないものです。お店の人はこちらから聞かない限りそういうことを指摘してくれませんので、ただ言いなりで契約していると大きく無駄遣いをしていることになります。 動画視聴が多かったり、オンラインゲームをよく使う人、スマホをカーナビとして使っている人は無制限でないとダメって人もいるでしょうけど、Facebook、LINE、Twitter、メール、地図、ニュース、電子書籍ぐらいの利用者であれば、高速データ通信に容量制限を設けてもまったく支障ないでしょう。また一度決めた容量でも、MVNOの場合、あとで簡単に変更できるケースが多いです。 私の場合、下から2つめに安い2GBで契約していますので、ガラ携の頃より安い毎月1,490円だけの支払いです(通話料は別)。 データ通信2GB/1ヶ月とはどのぐらいの通信量かと言えば、Google Maps現在地表示2000回、YouTube動画(解像度360P)600分(出典:イオンモバイル)ありますから、私の使い方なら十分です。 特に自宅にWi-Fi環境があれば、自宅ではMVNO業者の高速データ通信を利用する必要がありません。したがってアプリのダウンロードや更新など、容量を食いそうな作業は自宅でおこなうことで、通信容量の削減ができます。 私の通常のネット接続での使い方はTwitterやFacebook、ニュース、Googleマップ、メールを1日に20〜30回見たり開くだけで、その際、速度にまったく不満はなく、2GBを超えそうな時はありません。ただヘビーユーザーやスマホ中毒者にとっては2GBでは物足りないかもしれませんね。 キャリアを変えるのは面倒、調べるのも苦痛というのでなければ、2年間で12万円、1年で6万円、1ヶ月5千円の節約がすぐにできるので、私はMVNOを強くお勧めします。自己責任でね。 ---------------------------------------------------------- 4月後半の読書と感想、書評 2017/4/29(土) 1121 待ちに待った?ゴールデンウィーク。行楽地はどこも人やクルマであふれ、疲れるだけなので、この際近所の公園や河川敷で暖かな春の陽を浴びながら読書でもどうですか? 私が愛用する「ブックオフ」では全店で5月4日から書籍全品(一部除外品あり)20%OFFセールをやるそうです。私もこの機会にまとめ買いを予定してます。 そして適当に本棚から好みの本を選ぶのもいいですが、事前に書評などを読み、「読みたい本リスト」を作っておいて、それを探すという買い方も宝探しのようで悪くないですよ。私は常に50冊ぐらいの「読みたい本リスト」を持ってブクオフへ出かけます。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 一九八四年〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫) ジョージ・オーウェル 1949年に刊行された未来SF小説ですが、未来とかSFという言葉から来る夢のある話しではなく、以前読んだ「動物農場」にも関係するような世界中が当時猛威を振るっていたスターリン的な社会主義、全体主義的な世界に変貌した未来を描いた小説です。 2014年9月後半の読書と感想「動物農場」 なんでもアメリカでトランプ大統領が誕生し、保護主義や全体主義的な発言や行動をすることで、この本があらためて見直され、爆発的に売れ出したというのには笑えます。 そうしたなにか流行に乗って読んだみたいになりましたが、この本を買ったのはもう半年以上前のことで、トランプ大統領とは関係ありません。 以前「動物農場」を読んだとき、その巻末の解説にこの「1984」もお勧めだと書かれていたので購入しましたが、購入後すぐに読み始めたものの、序盤から退屈で冗長な話しが長々と続き、「これはもう少し精神的に落ち着いたときに読もう」と、しばらくしおりを挟んだまま保留にしていました。年を取るにつれて集中力が落ちてきて、こういった序盤の退屈な話しは苦手になるのです。 そうした中で、ニュースとかで「いま『1984』が売れている」と聞くようになり、そういえば途中のままにしてしまっているなぁって思い、再び読み出したようなわけです。 なんでも作者の本元の英国では「読んだフリをする本No.1」がこの本だと言うことで、私と同様、序盤の退屈なシーンで断念し、読んだつもりになってほこりをかぶったままになっている英国人が多いのだろうなと理解ができました。 中盤ぐらいから物語は急変し、おそらく今で言うところのAI、人工知能みたいなものであろう全能の神ビッグブラザーに国民が支配されている状態から抜け出そうと主人公が抵抗を試みます。 その試みが、職場不倫などは別として、普通にありふれた自立的な生活なのですが、それが懐かしく思えてしまうほどに管理された未来社会は強烈ということです。 当然、そうした社会の中では、密かに反・ビッグブラザーを掲げる地下組織もあり、主人公はそこへ近づいていくのですが、、、 同じように途中で読むのをやめた人には、「頑張って中盤まで読むと、あとは普通の小説のようにスラスラと読めるので、途中で諦めないで!」と言いたいです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(ジョージ・オーウェル) ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫) ジェイムズ・P・ホーガン 1978年の「星を継ぐもの」(原題:Inherit the Stars)の続編で、同じく1978年に発刊された作品です。原題は「The Gentle Giants of Ganymede」です。 シリーズとしては、このあと1981年に「巨人たちの星」(原題:Giants’ Star)、1991年に「内なる宇宙」(原題:Entoverse)と続いています。 2015年7月後半の読書と感想「星を継ぐもの」 この「星を継ぐもの」は権威はまったくありませんが「2015年リス天管理人が選ぶ2015年に読んだベスト書籍外国小説部門大賞」を受賞しています。 さて、「星を継ぐもの」では、月の裏側で宇宙服を着た5万年前の人類とおぼしきミイラが発見され、さらに木星の第3衛星ガニメデからも2500万年前の宇宙船と謎の異星人の亡骸が発見されます。 ちなみに、ガニメデという衛星は実在していて、赤道の直径は地球の半分ぐらい、月の1.5倍の大きさで、太陽系の衛星では最大のものです。また地質は地球と似ていて、大気や地下に海があることが確認されています。 その二つの大発見から太陽系惑星の成り立ちや謎を解き明かそうとしますが、そのとき、遙か彼方から1隻の巨大宇宙船がその木星の惑星ガニメデへやってきます。人類初の生きた異星人との遭遇です。 よく理解できませんでしたが、2500万年前にそれまで繁栄していた木星の衛星ガニメデの環境が変わり、そのガニメデから移住をするため、太陽系以外の星を探索へ出かけた1隻の宇宙船が、現代のガニメデへと戻ってきたという設定です。 ところが帰ってきたガニメデ人達は、破壊されていて、故郷は無くなってしまっていることを知ります。 ガニメデ人が持つ高性能なAIコンピュータにより、地球人とガニメデ人はお互いの意思の疎通ができるようになり、互いに立場を理解し合い、やがて地球へ招待します。 現代の科学や常識で考えれば、いろいろと突っ込みどころはありますが、これが書かれたのが、1978年ということを考えると、そういう些事はどうでもいいじゃない?って感じです。 ガニメデ人は「争う」「戦う」「妬む」という概念がなく平和主義で、宇宙戦艦ヤマトに出てくるデスラー総統みたく、攻撃的な異星人でなくてよかった〜って感じです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(ジェイムズ・P・ホーガン) 老いの才覚 (ベスト新書) 曾野綾子 数多くの小説やエッセイを出している今年85歳になる著者の2010年発刊の随筆(エッセー)集です。 元々相当な自信家な方で、周囲に気を遣わない過激な発言も多く、話題を提供される著者ですが、それだけに著者が書く文章とその主張には迷いがなく、細かなところはさておいてもその言わんとすることにはある程度共感ができます。 Amazonのレビューを見ても、「老害」という悪意がありそうな批判もあれば、「硬派なメッセージ」と尊敬する読者もあり、好き嫌いがはっきりと分かれるところでしょう。 「別に嫌いなら読まなくて結構」と著者の声が聞こえてきそうですが、こうした自己主張の強い有名人を批判することで自分の有能感を高めたい人も多そうで、その格好の的となっているという感じです。 芭蕉の句「物言えば唇寒し秋の風」は、「余計なことを言えば後味が悪く、寒々とした気持ちになる」という意味で、さらに意訳すれば「口は災いの元」となります。 現役バリバリで仕事をしているとなかなか言いたくても言えないことが多くありますが、その点、一応名を成して死ぬまで食うに困らぬ財を得た後では、人に迷惑さえかけなければなにをしても言っても許されるって感じでしょうか。 それはさておき、内容的には特に目新しいことはなく、高齢者は老いの覚悟と老いの品格を持って暮らせという著者や夫の三浦朱門氏らの経験から思うところを書き連ねたお手軽ハウツー本です。 こちらの貧弱な感性のせいもありますが、いまいち印象に残る箇所や、1冊の本の中で新しい気がつきがなかった点が残念です。 ★☆☆ ◇著者別読書感想(曽野綾子) 旅のラゴス(新潮文庫) 筒井康隆 ラゴスという名前の主人公の男性が、架空の地域を苦労しながら旅する物語で、今から31年前、1986年に発刊された小説です。 著者は最近、炎上させる目的で過激?な発言をしたりとお騒がせしていますが、もうこの年(82歳)になれば、しかも死ぬまで食っていけるだけの十分な蓄えもあるでしょうから、なにをしても、なにが起きても、もう怖いものはない状態なのでしょうね。それにしてもあの発言は本人もあとで反省しているようですが、お下品を通り越しています。 時々元気な高齢者が、衝動的に重大な事件を起こしたりすることがありますが、今後もそうした短気を爆発させたような事件や問題発言が増えていくことが容易に想像できる昨今です。本書とは関係はありませんが。 さて、小説ですが、電気などエネルギー革命が起きていない中世の世界観の中の話しです。 様々な出会いや障害に遭いつつ、何年もかけて遠く異国の地へ旅をする主人公の目的は、昔不時着した宇宙船の乗員から新しく得た知恵や知識を書物にして残している村があり、その村へ行って大量の書物を読むためです。 旅の途中では奴隷狩りに捕まり鉱山で働かされたりしますが、どうにか逃げ出して旅を続けます。そんなに何年も旅を続けられるお金はどうして得ていたのか、その点は大きな謎です。 その村に到着し、村からは一切持ち出し禁止の大量の書物を何年もかけてそれらを読破していきます。さらにはその貧しい村でコーヒー豆の栽培を指導して、村の発展に寄与したことで、王に祭り上げられ、二人の妃も得ますが、やがてその村からも出て、生まれ故郷へ帰ってきます。 さて結局、この小説では何を言いたかったんだろう?と考えてもよくわからず、知的好奇心を満たすため、一生をかけた夢と旅と冒険、そして初恋の物語かな?と。 またこのような空想の中世という時代設定が、最近読んだ別の小説と似通っている気がするなぁ〜なんだったっけ?と記憶障害が最近顕著な頭をかき回して思い出すと、伊坂幸太郎著「夜の国のクーパー」でした。 2017年3月前半の読書と感想「夜の国のクーパー」 旅の途中で知り合った少女への思いを何十年も過ぎた後でも捨てきれず、その影を追ってそれはそれでロマンがあって良かったのですが、平凡な能なしオヤジにはこの主人公には感情移入ができず、数々の行動が理解に苦しむものでした。 ★★☆ ◇著者別読書感想(筒井康隆) ソロモンの犬 (文春文庫) 道尾秀介 2007年に単行本、2010年に文庫化された長編ミステリー小説です。 タイトルは、昔、ソロモンの王が魔法の指輪をはめることで、動物たちと会話することができたという言い伝えからで、「ソロモンの指輪」というのは動物行動学になぞらえて使われます。 主人公は自転車で書類などを運ぶバイトをしている大学生で、自分の目の前で、知り合いでもある大学の教員の息子が飼い犬に引っ張られ、道路に飛び出したところでダンプカーにひかれてしまうという悲惨な事故に遭遇してしまいます。 その犬の行動が謎で、普段からおとなしく飼い主に忠実だったその犬ともし会話ができれば「なぜ急に飛び出した」がわかるのにと残念がる大学の生物学者とともに謎を調べていきます。 昔から動物と会話ができればと空想する作家も多く、「ドリトル先生シリーズ」などが有名ですが、上記でも書いた伊坂幸太郎著「夜の国のクーパー」でも猫やネズミと人間が話ししていましたね。 ただ人間同士でも、使う言語が違えば意思の疎通はかなり難しいし、同じ言語同士でも傷つけ合っているのに、なに動物との意思疎通って言ってんだかって感じもします。 そして誰の責でもなく犬が飼い主を引っ張ったせい起きた事故というのは明らかで、原因がわかったからと言っても死んだ子供が返ってくるわけもない事故をほじくり返してどうなるんだ?って気もします。 結果的には、謎を解こうとすることで、知られたくない秘密が暴露されたり、間接的に責任を感じる人が出てきて、さらに不幸なことが起きていくという連鎖型ミステリーは後味があまりよろしくないです。 ★★☆ ◇著者別読書感想(道尾秀介) 【関連リンク】 4月前半の読書 二流小説家、脊梁山脈、国盗り物語(1)(2)、遊びの品格、悪党 3月後半の読書 下流の宴、老後に破産しないお金の話、過去からの弔鐘、蝶々の纏足・風葬の教室、漱石先生の事件簿猫の巻 3月前半の読書 夜の国のクーパー、ホクサイの世界、一路(上)(下)、会社という病 |
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