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日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです
978 11月後半の読書と感想、書評 2015/12/2(水) 
979 企業と経営者の資質 2015/12/5(土) 
980 TSUTAYA図書館は非難されるべき問題なのか? 2015/12/9(水) 
981 大きく変化していく農業従事者 2015/12/12(土) 
982 12月前半の読書と感想、書評 2015/12/16(水) 
983 我が青春のヒーロー、スティーブ・マックイーン 2015/12/19(土) 
984 広告とブラック企業と心の病 2015/12/23(水) 
985 高齢者の健康には会話が重要だということ 2015/12/26(土) 
986 日記で1年を振り返る 2015/12/30(水) 

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11月後半の読書と感想、書評 2015/12/2(水)

978
ラスト・チャイルド(上・下)(ハヤカワ・ミステリ文庫) ジョン・ハート

以前「川は静かに流れ」(2009年)を読んだことのある著者の2009年(翻訳版は2010年刊)発刊の作品です。

この著者の書く小説のイメージは、人間、特に家族の暗くて重いテーマを粛々と描くってところですが、この小説はその代表的なものかも知れません。

アメリカの地方に住む13歳の少年が主人公で、1年前に双子の少女が行方不明となり、続いて父親までが失踪してしまい普通の家族が一気に崩壊してしまいます。

一緒に暮らす母親は麻薬におぼれ、街の有力者の囲われ者となってしまい生きる気力さえ失いつつありますが、主人公の少年は健気にも行方不明になった双子の妹を探すため、街の中を一軒一軒訪ね歩き、不審者をあぶり出していきます。

登場する大人はすべて何かしらの問題を抱え、主人公少年の純粋さと勇気だけが光って見えますが、何度もピンチに陥りそうになりながらも、うまく機転を利かせて切り抜けていくという、ありえそうもない設定で、ホームアローンじゃないけれど、そうした年端もいかない賢い少年が、大人顔負けの大活躍をするっていうストーリーが、現実ではありえそうもないだけに、意外性があってうける素地があるのでしょう。

暗澹とした気分にさいなまれながら読む長編小説ですが、話しの流れのテンポがよく、サクサクと読むことができ、タイトルの「ラストチャイルド」って意味が最後の最後で明らかになる設定といい、「川は静かに流れ」同様、なかなかできのいいと感じる作品でした。

★★☆

         

老いる覚悟 (ベスト新書) 森村誠一

2011年に書かれたエッセーをまとめた新書で、今年82歳になる著者ですが、まだまだ意気軒昂って感じです。

著者の作品で最初に読んだのは「新幹線殺人事件」(1970年刊)で、今から40数年前の中学生のころです。それ以来、同氏の作品は10作以上を読んでいますが、過去に出版された作品数はすでに300作を超えているそうです。まったくアイデアと執筆意欲の枯れることがない凄い人です。

その著者が考える、リタイヤ後にやってくる老いと死に至るまでの覚悟を淡々と語っています。年齢的にはちょうどリタイアを迎える団塊世代向けに書いているのかなって感じです。

団塊世代260万人の中の100人に1人、1%の人が買ってくれれば、それだけで2万6千部ですからね。この世代に向けたビジネスはまだまだ有効です。

著者は戦前生まれで苦労してきた人だけあって、その含蓄には重みがあります。しかし死への覚悟という点で言えば、それは年齢と共に変化していくもので、いま50代の私が平均寿命の80代が持つべき覚悟についてはなかなか理解ができません。

この新書が東日本大震災のあとに書かれただけあって、震災と津波、そして原発事故避難による突然の死や、生活のすべてを失った絶望状態からの人生などについても深く書かれています。長く生きるとそれだけいろいろな自然災害含め人の生き死にを身近に見ることになります。

定年とか引退ということがほとんどない作家である著者と、一般的には定年後にそれからまだ2〜30年の老後が残されている元サラリーマンとではだいぶんと考え方が違うんじゃないのかな?って思いましたが、作家になる前は今でいう社畜として10年間働いていた著者だけあって、そのあたりはぬかりなくよくわかってらっしゃるって感じです。

さらに雇用問題として、利益追求、効率重視の「成果主義」についても、「日本の国民性には合わない」とバッサリ斬り捨てているのもまったく納得。

定年退職後に「なにもしなくていい自由」ではなく、「なにをしてもいい自由」と考える人だけが、有意義な老後をおくれる人という点はなるほどって思うにしても、私のように足が不自由になってしまって、できることがかなり制約されてしまうと、前向きに「なにをしてもいい!」とは考えにくいのも確かです。

高齢になるとなにかしら病気はつきものといいますが、よりよい有意義な老後をおくるためには、いかに健康体であることが重要か身をもってそう思います。

★★☆

         

Nのために (双葉文庫) 湊かなえ

デビュー作品「告白」で一気にブレークした著者の4作目の長編小説で2010年単行本、2014年に文庫化されています。この著者の本を読むのは「告白」「夜行観覧車」「贖罪」に続き4作目です。どれもライトに読めて気分転換にいい感じです。

この長編は2014年に榮倉奈々、窪田正孝、賀来賢人などの出演でテレビドラマ化されたそうですが、見ていないのでまったく内容は知らずに読みました。

この著者の特徴でもありますが、ちょっと人間関係が複雑でややこしい設定となっている長編ミステリー小説です。この複雑さが不自然に映り、いかにも無理して役の設定をしたなぁって感じがしてあまり好きではありません。

主人公は四国の離島出身で、大学へ通うために上京してオンボロアパートに住んでいます。そのアパートで親しくなった友人と沖縄旅行へ行った際に知り合った、タワーマンションに住むセレブな夫婦と付き合いが始まります。

そのタワーマンションで主人公の女性などを招待して、食事会を開こうとしていたその時、商社マンの夫が妻を刺し殺すという事件が起き、その妻と不倫関係にあった男が、夫を燭台で殴打して殺すという事件が起きます。

ここまでがプロローグのようなもので、一件落着したように見えた、この殺人事件の謎や真相が次々と語られていくというストーリーです。

主要な登場人物の名前が成瀬、野口、西崎、野原、望、夏恵、奈央子と、タイトルの「N」とはいったい誰なのか?ってところがミソですが、注意して読むことでそれがわかるっていう仕組みではなく、最後まで読まないとわかりません。そういう意味では前作や前々作と同様なパターンと言えます。

★★☆

著者別読書感想(湊かなえ)

         

昭和の犬 (幻冬舎文庫) 姫野カオルコ

2013年刊の小説で、2013年下半期の直木賞で、朝井まかて氏の「恋歌」と同時受賞した作品です。この受賞までには「受難」「ツ、イ、ラ、ク」「ハルカ・エイティ」「リアル・シンデレラ」と4作が直木賞候補にのぼり、この5回目の候補で受賞と相成りました。

昭和33年生まれの著者自身が歩んできた人生を、主人公に重ね合わせたような自伝的な小説と言うことで、私とほぼ同年代、しかも同じく関西出身と言うことで、小説に登場する様々な生活の場面、テレビ番組、社会背景が自分の人生にもかぶってきます。

それにしても私の子供時代(昭和30年代〜40年代)に起きたことやその時の世相なんてすっかり忘れていましたが、この本のおかげで少し蘇ってきました。しかし「土居まさるのTVジョッキーでの白いギタープレゼント」や「心に愛がなければ、どんなに美しい言葉も 相手の胸には響かない…聖パウロの言葉より」なんて、よく覚えているものです。言われてみてそういうのあったなぁって思い出しました。

人は誰でも過去の体験を美化して話したがる傾向があります。成功者が必要以上に貧しかった生い立ちや、人並み以上の努力をしてきたことを語るのに似ています。

でもそこは作家さん、単なる歩んできた過去を美化した話しではなく、時代とそれに寄り添ってくれた犬や猫をうまく重ね、昭和後期と平成初期はこういう時代だったんだっていう思い出の記録の小説に仕上げています。

終盤、そうした昭和から、いきなり平成の現代へ飛びますが、紆余曲折あった主人公がほのぼのとして、肩から力が抜けるような人生を送っている姿を見せて、読み終わりも心地よい気分になれました。

★★★

著者別読書感想(姫野カオルコ)

【関連リンク】
 11月前半の読書 悪女について、空の中、アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風、青い約束
 10月後半の読書 時の地図 上・下、贖罪、家族という病、ワーカーズ・ダイジェスト
 10月前半の読書 羆嵐、幸せになる百通りの方法、努力しないで作家になる方法、幻影の星


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企業と経営者の資質 2015/12/5(土)

979
基本的にはニュース的な時事ネタはあまり書かないようにしていますが、昨今の企業のデータ偽装事件や不正について少し思うところがあって書いてみることにします。

まず昨年(2014年)のことですが、株式会社タカタ製のエアバックの異常破裂による事故で、けが人や死者が続出していたことを重く見て、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、装着車のリコール要請や、原因追及のためアメリカ議会の公聴会への呼び出し&制裁金が科せられました。

そうした事故が世界中で起きてもタカタの対応はなぜか鈍く、この問題は翌2015年においても沈静化することなく、今年11月には追加のリコールや追加の制裁金を科せられ、とうとうタカタ製エアバッグを今後搭載しないと公表するメーカーまで現れる事態となっています。

ホンダ、タカタ製インフレ―ター今後使用せず 日産も「失望」(ロイター)

同社においてエアバッグの売り上げは全社売上の約4割を占めている主力商品です。偽装や不正ということではありませんが、事故が起きたときの初動が遅く、しかもその対応が中途半端で、ユーザーや顧客(自動車メーカー)に対しても誠意が感じられないと批判を浴びました。

同様なケースでは2009年にトヨタの一部車種において急発進事故が多発しているという指摘を受けて、一時期トヨタは北米でこっぴどく叩かれました。その時はすぐにトヨタの最高責任者である社長が自らアメリカで行われた公聴会に出席し、謝罪し、誠意を持った対応を約束することですぐに沈静化しました。それと比較をすると今回のタカタの対応はあまりにも稚拙でお粗末だったと言われても仕方がありません。

そうした予期しなかった事態に対する経営陣のまずい対応で、主力商品の大幅縮小につながり、従業員の大リストラが始まることが予想されます。

二つめは、今年3月に発覚した東洋ゴム工業株式会社の免震ゴム性能データ偽装で、その後の追加調査により10月には2005年以降に製造した防振ゴムの性能データの偽装が明らかとなりました。

偽装の発覚は2年も前に子会社の従業員が性能データに疑問があることを上司に報告していたにもかかわらず、親会社の役員へそれが伝わったのが1年も経過した昨年、そしてその後も1年間あやふやの状態で放置?され、最終的に国交省へ報告したのが今年の2月になってからというていたらくです。

偽装発覚後、その問題の製品についてはすべて無償交換をおこなうということで収まりそうですが、不正発覚後公表まで2年間も要し、その間にも偽装データの製品を出荷し続け、結果損害は拡大し莫大なものとなりました。そして一度ついてしまった不信感をぬぐいさるには今後多くの期間と労力を要しそうです。

謝罪風景三つめは、株式会社東芝で、今年7月に2008年度から不正会計処理があったことを公表し、2014年度の決算報告を大幅に延期、修正をおこないました。事件が発覚したのは内部告発を受けてのことで、監視委員会検査で不適正が指摘され、第三者委員会にて調査がおこなわれました。

つまり経営者自身が何代にもわたって不正会計に関わっていたため、元経営者が中心的役割を果たしていた監査委員を勤めていたり、元経営者の子飼いの部下だった現在の経営者が、同僚や先輩を傷つけることができず、自浄作用が働かなかったいい例です。

歴代の社長が業績をよく見せようと不正に関与してきたという事件ですが、規模が大きく影響が大きいと言うだけで、企業に対して社会的な制裁は特に行われなさそうです(株主代表訴訟を免れるため?仕方なく、会社が旧経営陣を訴訟するみたいですが、結局それでは許されるはずもなく株主代表訴訟は全国規模で行われそうです)。

もし今回の東芝と同じようなことを、ポッと出の中小企業やベンチャー企業がおこなったら、見せしめ的に経営陣の逮捕や上場取り消し、ひどいときは倒産にまで追い込まれます。しかし大企業、特にこうした名門企業には見えない特権があり、こういう犯罪行為があっても、影響が大きいからと会社が揺るぐことはありません。なのである日突然路頭に迷いたくなければ中小企業やベンチャー企業ではなく、リスクの少ない大企業を目指すべきなのです。

四つめは、フォルクスワーゲン(Volkswagen AG)が今年9月にディーゼル車の排気ガスデータが、試験の時だけよくなる不正プログラムを使い、環境規制をクリアしていたことを明らかにしました。さらに11月には同社グループのアウディやポルシェにも同様のプログラムが使用されていたことを追加で発表しました。

発覚した原因となったのはアメリカの環境NPOのICCT(国際クリーン交通委員会)の計測で、実走行時と試験データのあまりの差にアメリカの環境保護庁がそれを確かめて不正があったことを発表したことに始まります。

トヨタと共に北米で好調な販売を続けてきたVW社ですが、功を焦ったか、欧州よりも厳しいアメリカの環境基準対策において、ズルをしちゃったってことですが、トヨタがハイブリッドエンジンで環境対策を進めていったのに対し、欧州で広く普及しているディーゼルエンジンでアメリカのシェアを奪っていこうと馬力を駆けたところに無理があり、原因がありそうです。

あと第二次大戦で敵国だった日本とドイツのクルマが、アメリカ国内で巨大なシェアを奪っていく現状を憂いているアメリカの愛国者や保守派達が、先のトヨタの急発進やホンダ車のエアバッグ、そして今回のエンジン不正プログラムなどに過大な難癖をつけ、大きく社会問題化し、多額のペナルティを支払わせて溜飲を下げるっていう部分もあろうかと思います。もし同じことを同盟国の英国やフランスのクルマが起こせば、ここまで大きな社会問題にしなかった可能性があります。いずれにせよ、日本やドイツの企業がアメリカで問題を起こすと保守派が騒いで火が大きくなるのは必定です。

五つ目は、まだ記憶に新しい、今年10月に横浜のマンション建設で、旭化成株式会社の子会社、旭化成建材株式会社の杭打ちデータの不正流用問題が発覚しました。追加調査により11月には杭データ偽装は過去10年間で合計300件に及び、50人の現場担当者が関与していることが判明しました。今回不正が発覚したのは、住民がマンションの傾きを指摘し、何度も糾弾したことで横浜市などが重い腰を上げて調査して偽装が発覚したものです。

不正が見つかったマンションは、事業者は三井不動産レジデンシャルですが、建築元請けは三井住友建設、そこから工程管理や工事監督をおこなう一次下請けとして日立ハイテクノロジーズ、現場監督を担当する二次下請けが旭化成建材、さらに実際の作業を行う三次下請け業者という構造です。

やり玉に挙がっているのは二次下請けの旭化成建材とその親会社旭化成ですが、構図をみるとそれぞれに応分の責任はあるように思えますが、そこはみなさん業界上の大人の対応で、社会的な被害をできるだけ少なくするために、一番責任が重くて最下層の下請けに該当する旭化成建材をスケープゴートとして差し出したってところでしょうか。そうすれば旭化成としても三井不動産や日立に大きな貸しを作っておくことができます。

その旭化成建材にしても、不正データ偽装が見つかった直後の会見では「偽装をした従業員を聴取したが、いい加減な性格でルーズ」と、まるで不正が個人にあったように発言していたこと。つまり、できればこの個人の責任で収めたいという感じがありありでした。実際は旭化成建材の中で不正に関わっていたのが50人以上、そしてくい打ち業務の別の会社でも同様の不正が発覚し、この問題は決して個人の性格などの問題ではなく、際限なく拡がっていくことになります。

以上、いずれも名門大企業が起こした不祥事の数々ですが、一般的に企業というか経営者は、社内で不正が発覚しても基本的にはまずは知らぬ存ぜぬを決め込む傾向があります。そりゃそうです、少なくとも自分が経営者のあいだは、なにも問題はなく終わりたいと思っているからです。サラリーマン経営者の場合は特にそういう傾向が強くなります。

マスコミは広告費である程度押さえ込めても、被害者から明かな証拠を突きつけられたり、公的機関が動き始めると、もう逃げられないとして、一転下請けや現場担当者を前面に押し出して謝罪会見となります。その身替わりの早さと、金太郎飴のような同じスタイルの謝罪会見は割と最近流行りだしたことで、現在のような危機管理術や広報戦略などなかった昔は、とことんとぼけて逃げ回るようなことも普通にありました。

謝罪会見も昔なら不正の当事者の上司、せいぜい部長と平取クラスが中心で、いわゆるスケープゴートを差し出して、それで収まるのならと考えて、できるだけ経営陣にまで累が及ばないように取りはかわれます。コンプライアンスの問題なんてそのほとんどは経営者自身の問題だってことをわかっていないようです。

上記の例で言うとタカタの謝罪が、旧式の謝罪会見のままで、たいして権限のない現場責任者をアメリカに送り込み、さらにエアバッグの被害者対応も、当初から自動車メーカーに丸投げしていたところに、信用の失墜を招いてしまった原因がありそうです。

こうしたトラブルや不祥事が起きた時こそ、企業と経営者の体質や能力が表面化しますが、まだまだ旧態依然とした会社風土が多く残っているってことや、それは日本国内だけではなく、合理的かつ先進的と思われてきたドイツ最大の名門企業でも、同様の問題を抱えているのだということがわかった1年です。

それにしてもみな大きな代償を払わされることになり、経営者ばかりでなく、従業員やその家族、取引先にまで拡がっていき、残念なことです。


【関連リンク】
914 殺人事件の国際比較
898 過去に遭遇した大事件
850 少年犯罪は増加、凶悪化しているのか?


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TSUTAYA図書館は非難されるべき問題なのか? 2015/12/9(水)

980
TSUTAYATSUTAYAと言えば個人的にはまれにレンタルDVD映画を借りに行くしか使うことはありませんが、世の中的には書店(新刊、中古)、CD、Tポイントカードなど幅広く展開していて、特にエンタメ大好きな若い人にとってはお馴染みのブランドとなっています。

個人的にはポイント制は嫌いなので、Tポイントを勧めてくるサービスには嫌悪感を持っていて、それを運営するTSUTAYAや運営会社CCCにもあまりいい印象は持っていません。

そのTSUTAYAが運営委託をする公営の図書館「武雄市図書館」は従来にない斬新な発想で利用者を大きく増やし一躍有名になりました。2番目の公立図書館「神奈川県海老名市立図書館」では選書が不適切だったりと疑問を持つ人もいますが、概ね順調にスタートしているようです。

小牧市の図書館の運営委託では、市民団体の反対が強く撤回されてしまいましたが、別にいちローカルで反対されたことを気にする必要はないと思います。どこにでも新しいことに拒絶反応を示す人は必ずいるもので、賛成する人と反対する人のその声が多少大きいか小さいかのわずかな違いの差です。

図書館は、図書館法第2条において「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」と定義されています。

その中で国立図書館(国立国会図書館)、都道府県や市町村、公立学校が運営する公立図書館、私企業や私立学校、団体が運営する私立図書館などに分類されています。

公立図書館や学校図書館の運営を外部の私企業にアウトソーシングするようになってきたのは比較的最近のことで、1990年代中盤ぐらいからです。

年功序列で自動的に給料が上がっていく公務員が運営にあたるより、経費節減効果はもちろん、住民サービスの向上を考えれば、民間へ外部委託するのは時代の趨勢とも言えます。まだ全面的に運営を外部に委託しているのは、2007年で1%に満たない数ですが、今後一気に増えていくでしょう。

上記のTSUTAYAが2012年に公立図書館の運営に進出するまでは、公立図書館の運営全体を外部委託すると言えば概ね図書館流通センターが独占していました。その他にはシダックス関連のシダックス大新東ヒューマンサービスという人材派遣会社などが受注しています。いち早く事業化を成功させ、狙い所がよかったのですね。

株式会社図書館流通センターの母体は大日本印刷(DNP)、丸善、日本出版販売(日販)などで、図書館向けや学校向け書籍の販売から始まり、やがて図書館の運営まで関わるようになってきたというのが大まかな沿革です。

この書籍販売、出版、流通、印刷業界は複雑なところがあり、私もあまり詳しくはないのですが、いろいろと過去のしがらみや系列など絡み合っていて旧態依然としたところがあります。

著作者が書いたものは、まず出版社で編集、装丁され、印刷会社で印刷、製本されます。その製品となった本は取次店を通じて二次取次店や書店に配布され、それから図書館や学校などに納品されていきます。

著者−編集・装丁−印刷−取次−1次取次−2次取次−書店−読者という流れから、今後電子ブックが当たり前になると、それらの複雑な流通がかなり端折られ、著者−編集・電子ブック化−読者となります。すでに携帯小説などでありそうですが、著者−読者というケースも出てくるでしょう。

そうした流通の複雑さや、旧態依然とした利権構造をまずは図書館の運営受託というところからTSUTAYAは壊し始めています。そして当然ながら今までの既得権益を壊されたくない人達が、マスメディアなどを使ってTSUTAYA叩きを必死におこなっています。

TSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由(東洋経済)

ま、過去からの慣習を踏襲し大事にしたいという気持ちもわからないではありませんが、私は様々な新しい試みで時代と共に変化していくことも重要だと思っています。言葉や表記だってどんどん変化していっているではありませんか。日本十進分類法(NDC)も重要とは思う反面、これらは利用者を中心に考えられたのではなく、管理側の都合による分類で決して一般利用者にとっては優しくありません。

公立図書館は誰のためにあるの?って考えると、国会図書館のような文化資料を保管しておく機能を持っているところは別として、町営や市営図書館クラスにおいては子供を含め利用者が一番使いやすい、探しやすい、利用しやすいことを最優先すべき事項でしょう。

以前、ソフトバンクが鳴かず飛ばずで赤字を垂れ流していたボーダフォンから携帯電話事業を買い取って事業を始めたときに、それまで元公営企業同士だったドコモとKDDIが携帯電話の高値維持政策が壊される危機を感じ、一斉にソフトバンクを叩き、マスメディアを総動員して悪評を流したのと同じ構造です。出る杭は打たれるのは常です。

しかしTSUTAYAもソフトバンクもその後の結果を見れば、事業として成果を出しており、多くの人に役だっていることは明かで、社名だけで拒絶反応を示す人は除き、今では事業進出に疑問を言う人は少ないでしょう。アイデアを駆使して競合する会社が多いほどいい競争ができるのであって、従来のように天下り官僚ばかりの大会社が独占してしまうと決していいサービスは生まれてきません。

図書館流通センターは2大取次大手のうちのひとつ日販、大日本印刷系列ですので、本来ならば後発のTSUTAYAはもうひとつの大手取次トーハンや凸版印刷、紀伊國屋書店などと組んで、図書館受託事業をやるべきだったかも知れません。でもそうしなかったのは旧態依然とした大企業と組むのを良しとしなかったのかも知れません。

今はまだ、様々なメディアでTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社は叩かれ続けていますが、やがて多くの利用者から評価されてくると、そのうち誰もなにも言わなくなるでしょう。もし評価されないとそのうち切られるだけ自業自得でしょう。

いずれにしても書籍の電子化が進んでくるにつれ、今までの書籍の製作や流通ルートが大きく変わってくることは間違いなく、旧体制を壊し、利用者にとってより便利にしてくれるのは、業界にいる人ではなく、TSUTAYAやソフトバンクのような一見すると破壊者とも思える(そのようにメディアから喧伝される)人達なのでしょう。


【関連リンク】
830 宅配ビジネスのラストワンマイル
577 ハローワークを頼りにしていいのか?
474 昨年何本の映画を観ましたか?


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大きく変化していく農業従事者 2015/12/12(土)

981
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉がまとまり、今後日本の貿易に大きな影響を与えそうですが、中でも農業分野での議論が多く聞かれます。

私が子供の頃に小学校で習ったのは「日本は今まで第一次産業が中心の農業国だったが、第二次産業の工業国へと変わろうとしている」「日本は資源に乏しい国なので貿易が重要」「輸出品目は繊維製品から工業製品へと変わってきた」ということでした。若い人には「ふるぅ〜いったいいつの話し?」って笑われそうですが、たった50年前の話しです。

今でもその時に習ったことはよく覚えていて、工業化とともに自然環境が壊され、農業や林業の第一次産業が衰退し、貿易では資源を輸入する必要性から、工業製品をたくさん作って世界中に売りまくるという国家政策の元で進められてきましたが、TPPによりその完全なる転換期がやってきたと言うことでしょう(実際の転換期は20世紀終盤の日米貿易摩擦とNIESやBRICsと言われた各国の工業化に始まる)。

そうは言っても日本は現在でも農業生産額ベースで見ると中国、アメリカ、インド、ブラジルに次ぐ世界で第5位の農業生産国という事実※もあり、第一次産業が衰退したといえども、その農耕民族としての伝統は脈々と残っています。
 ※日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率  浅川芳裕著

テレビの討論番組で「TPP反対!農業と農家を(補助金を与えて)手厚く保護していくべきだ!」の意見に対し、農業従事者の高齢化や農業規模の拡大と効率化により「農業従事者は年々減少している」という事実を元に保護する必要はないと反論するという構図が見られました。

そこでどのぐらい農業従事者が減っているのか?って思って調べてみました。

農業就業人口は専業、兼業含めた農業従事者合計で、基幹的農業従事者数は一般的に兼業でおこなう農業従事者になります。

農業従事者数推移
データ出典:農林水産省 農業労働力に関する統計

1985年に543万人いた農業従事者(兼業含む)は30年後の2015年には209万人と4割に減少しています。ちなみに55年前の昭和35年(1960年)には農業従事者は1450万人もいて、日本の人口の12%を占めていました。

確かに農業従事者は年々減少と高齢化が顕著に見られますが、元々狭い田畑で細々やっていたのを大規模化、オートメーション化しておこなうことができれば、農業従事者が減ったとしても収穫量自体は逆に増やすことも可能です。

そうした細々と効率が悪い農業をやっていれば補助金がもらえるという仕組みが今までは普通にありました。そうした補助金まみれの農業が、競争力を生まずに衰退してきた最大の原因とも言われています。

それで新規に就農する人の推移はどうなっているかを調べました。

新規に自営で就農する人と、雇用されて就農する人、共同経営などにより新規参入した就農者別の、49歳以下の新規就農者推移(就農形態別)です。

新規就農者数推移
出典は農林水産省 平成26年新規就農者調査です。

このグラフを見ると、ここ5年ほど低調だった就農者数が戻ってきている感じです。特に新規雇用就農者と新規参入者が増えているのが注目です。

これは農業の大規模化、企業化による雇用型就農が増えたり、異業種から農業へ参入する企業(=従業員)が増えているからと考えられます。

セブン&ローソン、農業本格化 失敗繰り返す企業による農業経営、農業関係者は強い不信感(Business Journal)

“耕作放棄地” 相次ぐ企業参入(NHK)

これらの記事でも紹介されていますが、2009年の農地法の改正以後、農地をリースする形で一般法人(NPO法人、特例有限会社、株式会社)の参入ができるようになったのが大きいと言われています。

過去には企業参入で失敗して撤退ということも多くありましたが、いずれにせよ農業人口の減少と高齢化に歯止めをかけるにはこうした大規模化、企業化、雇用型就農しかないのではないでしょうか。

我々消費者にとっても、安いけれど、残留農薬や禁止薬物、遺伝子組み換え、収穫から時間が経っても見栄えがいい作為などの不安がぬぐいきれない輸入食品ばかりではなく、地産地消を原則として、収穫してすぐ食べられ、作り手の顔が見える食品と、いざというときには責任を問える相手がいるという点だけでも大いに救われます。

特に上記のコンビニやスーパーという直接流通網を持つところが農業に進出することは、ビジネス的にも十分にペイできそうで、単なる小売り業から脱却していくには向いているでしょう。

企業の中には毎日満員電車に揺られ、ずっとパソコンとにらめっこしたり、毎日、人とコミュニケーションをとるのがつらいという人もいるでしょう。そういう社員には自社経営の農園勤務という選択肢があれば、対人関係でうつ病気味だった人も一気に改善に向かうのではないでしょうか。煮詰まっている人の気分転換やガス抜きにも最適です。

もっと言えば、日本の農業を守るため、例えば資本金50億円以上または社員数1000名超えの企業には、一定の農水産業事業を義務化するとかしてもいいかも知れません。それは事業でもいいし、社内の福利厚生としてでもよく、一定の農業や水産業を自社または共同でおこなうことを求めるのです。

昔なら、大手企業なら保養所や研修所など、温泉付き宿泊施設を持っているところが多くありましたが、いまはかなり減ってきました。それに代わるものとして、休耕地の広大な農地と簡易な宿泊施設(放棄された家屋をリフォームしたもので可)を保有してもらい、多くの社員にそうした農業体験や漁業体験をしてもらうというのは悪いことではなさそうに思えます。

また公務員全体のおよそ1%がうつなどの病気で長期休職をしていると言います。そうした企業や公共団体の1%の人達で、環境を変えても差し支えがなければ、一時的にでも農業や水産業に配置をすることで、改善効果もあるのではないでしょうか。


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923 ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか
725 農業の大規模化と零細な起業
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12月前半の読書と感想、書評 2015/12/16(水)

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早春の化石 私立探偵 神山健介 (祥伝社文庫) 柴田哲孝

渇いた夏」(2008年)に続く、私立探偵・神山健介シリーズの第2弾作品で、2010年発刊、2012年に文庫化されています。その「渇いた夏」から1年半過ぎたところから始まります。

主人公が福島県白河で探偵業を始めた前作から、浮気調査や家出少年、迷い犬の捜索などを細々と生業にしている中、東京の調査会社で元上司だった男から紹介を受けて、ある女性の失踪してしまった双子の姉を捜索して欲しいと依頼を受けることになります。

この姉は自殺したストーカーが書き置いた遺書で、すでに殺されたと考えられますが、その遺体の行方はまったくわからず、ただ、ストーカーが以前福島周辺に住んでいて土地勘があるということで、その足取りを追うことになります。

ちょっと人間関係が複雑で、しかも犯人との関係が満州に住んでいた依頼人の曾祖父までさかのぼったりします。

また書かれた時期が東日本大震災前で、いわきや小名浜など震災以前の町並みが出てきますので、それを知っている人が読むと懐かしく感じたりするでしょう。

シリーズ作品ということで、前作の事件の主犯だった男の名前なども出てきてしまいますので、できれば順番に読むほうがよさそうです。

★★☆

著者別読書感想(柴田哲孝)

         

冬蛾 私立探偵 神山健介 (祥伝社文庫) 柴田哲孝

上記「早春の化石」に続く私立探偵・神山健介シリーズ第3弾で、2011年単行本発刊、2013年文庫化されています。夏→春ときて今回は冬です。主人公が住む福島白河の冬は寒そうです。

会津の山奥にあるわずか数軒の村から、主人公の元へ依頼が舞い込みます。1年前に事故で亡くなった村人の死に関係してその後すぐ失踪してしまった別の村人が関係しているのではないかと疑われています。

しかし過去数年のあいだに何人もの村人が事故や不審死していても警察に届けず、黙って土葬して許される村がこの日本にまだあるのか?ってちょっと無理目の設定が気にかかります。

それはともかく、今回はいろんな所を歩き回り、ヤクザや警察とも関わりながら事件の謎をあぶり出していくという古くからある私立探偵スタイルの物語ではなく、雪で閉ざされた地図にも出ていない村の中で、隠された秘密を暴いていくという新たなスタイルです。

それだけに、今まで出てきた常連さんの出番はほとんどなく、前作とは違って単独で読んでもまぁいけるかなって感じです。

タイトルは、プロローグで出てきた厳冬の中でも静かに活動する蛾と、本編の最後のほうに出てくる紅蓮の炎が蛾の羽を広げた姿とダブらせたものです。

最初の頃から比べて、ちょっとストーリー性が弱くなってきたように感じ、まさかネタ切れってことはないのでしょうけど、主人公の行動パターンがあまりにも普通すぎるような。ちょっと残念。

このシリーズもあと「秋霧の街」で四季シリーズが完結し、プラスアルファとして東日本大震災を絡めた「漂流者たち」を残すだけとなりました。その後も続編が出るのかどうかは不明です。

★☆☆

著者別読書感想(柴田哲孝)

         

中国化する日本 増補版 日中「文明の衝突」一千年史 (文春文庫) 與那覇 潤

著者はいかにも沖縄出身の名前ですが、神奈川県出身、東京大学卒で愛知県立大学日本文化学部歴史文化学科准教授の学者さんです。中国の研究家ではないということもひとつキーになっています。

この刺激的なタイトルのせいで、読者やその道の人達のあいだでは賛否両論、喧喧囂囂、侃侃諤諤、議論百出していて、なかなか興味深く、そうした不毛な議論に参戦するつもりはないものの(しても誰も相手にしてくれない)、知識として様々な意見を知っておこうと読むことに。

この本のタイトルや副題は、著者が付けたのか出版社の編集員がつけたのかわかりませんが、誤解を招くのには最適、でも炎上必至というような感じもします。

いわゆる中世(唐、宋)から近代(元、明、清)初頭までの中国は、世界の中でもトップクラスの繁栄と高等文化を持っていて、その真似をした後進国が群雄していたヨーロッパが宗教戦争に勝利してようやく追いつき、そして一気に追い越していった中で、日本は中世の途中までその中国を見習ってきましたが、戦国時代以降はもっぱら独自の社会と文明を作り、そして現代になってからようやく中世中国の後追いを始めたという流れ。

話しは、明治維新以降、その「中国化」と日本独自の封建体制「江戸化」のせめぎ合いを繰り返してきましたが、現代の自民党一党支配体制と自由経済は、「中国化」に他ならないとの話しでした。

難しい話しを茶化しながらも軽く伝えようとしているところは好感ですが、Amazonの書評を見ても意見が分かれるように、中国文化の先進性を受け入れがたい人も多いのではないかと思った次第です。

★★☆

         

恍惚の人 (新潮文庫) 有吉佐和子

1972年に刊行され日本中に一大ブームを巻き起こし、翌年には森繁久彌、高峰秀子主演で映画化もされた作品です。認知症老人役の森繁久彌氏は当時はまだ60歳でした。

当時は現在のように高齢化社会でもなく、また認知症やアルツハイマー病という名称もなく、いわゆる呆け老人とか痴呆、耄碌(もうろく)爺じいとか言っていた時代です。

高齢になると癌とともに増える病気として当時から知られてはいましたが、分類上精神病の一種ということもあり、同居する家族は隠したがる傾向で、あまり表沙汰になることはありませんでした。

ちなみに1970年の高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)はわずかに7%ほどで、現在は26%なので45年のあいだに高齢者の割合が3.7倍にまで増えています。それに比例して認知症患者の数も増えているということになります。

またこの小説が書かれた1970年の日本人の平均寿命は男性69.31歳、女性74.66歳でしたが、現在2014年の日本人の平均寿命は男性80.50歳、女性86.83歳と、44年間でそれぞれ、11.19歳、12.17歳伸びています。それだけ認知症に罹る割合や実数も格段に増えてきています。

この小説を原作とした映画が、私の中学生の頃にブームとなりましたが、当時の映画としては珍しくモノクロで、しかもなんとなく中学生がみる映画ではないという雰囲気だったので機会を逃し見ていません。今度レンタルDVDでも借りてくるかな。

主人公は大家族で暮らしながらも手に職を持って外で働き続けている嫁で、ある日元気にしていた義理の母が突然亡くなってしまい、それとほぼ同時に80歳過ぎの義父の様子が変になっていきます。今では認知症の症状だと誰でも知っていますが、健忘、徘徊、妄想とだんだんとひどくなっていく姿が当時としてはリアルで衝撃的です。

この小説は誰もが高齢になると(最近は若年層アルツハイマーとかもありますが)、そのようになる可能性があるのだよという、社会への警告でもあり、当時から問題としてありながら、「祖父母の面倒は嫁の仕事」みたいな古くからの慣習があり、なかなか行政も手を出せなかった中に一石を投じた作品です。そして先を見越し数十年後に高齢化社会を迎えることへの警鐘だったと考えることもできそうです。

この作品が売れに売れ、200万部を超す大ベストセラーになったおかげで、新潮社の本社の向かいに大きな別館ビル(別名恍惚ビル)が1974年に建設されたとも言われています(wikipedia)
恍惚ビル

★★★

著者別読書感想(有吉佐和子)

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 11月後半の読書 ラストチャイルド(上・下) 、老いる覚悟、Nのために、昭和の犬
 11月前半の読書 悪女について、空の中、アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風、青い約束
 10月後半の読書 時の地図 上・下、贖罪、家族という病、ワーカーズ・ダイジェスト


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我が青春のヒーロー、スティーブ・マックイーン 2015/12/19(土)

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寒くなってくると暖かい映画館や、自宅でゆっくり映画でも楽しむっていう身近なレジャーが恋しくなります。

映画「クライム・スピード」が先月11月にロードショー公開されていました。この映画は1959年にアメリカで公開された「セントルイス銀行強盗」という映画のリメーク版ですがいまいちパッとしません。

その1959年に公開されたオリジナルの前作では、あの有名なスティーブ・マックイーン(1930年3月24日〜1980年11月7日)が主演を努めていましたが、公開当時はまだアメリカの西部劇テレビドラマ「拳銃無宿」(1958〜1961年)でようやく芽が出はじめた矢先で、これからまさにスターダムへ駆け上ろうとしている若い頃の作品です。

私がマックイーンの魅力にはまるきっかけとなった映画は「荒野の七人」(1960年)と「大脱走」(1963年)ですが、ロードショー公開時はまだ小学校入学前の幼児でしたので、実際にそれらの映画を見たのは公開から数年後、映画館ではなく吹き替え版のテレビの洋画劇場とリバイバル上映でした。

そう、このふたつの映画は1970年代中学生の頃に、劇場でリバイバル公開され、その時にはいそいそと映画館へ足を運び吹き替えのないオリジナル版を見に行きました。当時は映画の本数も限られていたせいか、人気映画は10年ぐらいして名画座ではなくロードショー映画館でもリバイバル上映がよくありました。

同様にマックイーン主演の60年代の作品「ネバダ・スミス」(1966年)、「ブリット」(1968年)、はテレビ映画で、70年代(中・高校生時代)以降の作品「栄光のル・マン」(1971年)、「ゲッタウェイ」(1972年)、「パピヨン」(1973年)、「タワーリング・インフェルノ」(1974年)は、すべてロードショーを映画館へ見に行きました。

彼の主演作品の中ではアカデミー主演男優賞に輝いた「砲艦サンパブロ」(1966年)を一押しする人が多いのですが、一度だいぶんと前にテレビで見ましたが、アクション俳優のイメージが強かったせいか、この映画では存在感が感じられず、私の中ではイマイチです。もう一度落ち着いてちゃんとじっくりと見たいとは思っています。

彼が主演の映画の中で一番よかった映画は、、、しばらく考えたものの順番は付けにくいです。

それで、特にお気に入りとしてはありきたりになりますが、「荒野の七人」「大脱走」「ブリット」「栄光のル・マン」の4本。この4本は何度観ても飽きません。

荒野の七人 「荒野の七人」はよく知られているように黒澤明監督の映画「七人の侍」のリメーク版です。マックイーンの役どころは、村人の要請を受けて立ち上がるガンマンのリーダーユル・ブリンナーを補佐する知的でしぶい参謀役でした。

オリジナルの七人の侍では、片山五郎兵衛(稲葉義男演)と七郎次(加東大介演)の二人の役を兼務する大事な役です。

大脱走 「大脱走」ではあの象徴的なドイツ軍の軍用バイクを奪って草原を疾走するシーン。国境までたどり着きながら、あとわずかというところで銃撃され脱走に失敗する迫力あるシーンは映画の名場面として長く記憶されるでしょう。

但しあのジャンプと鉄条網へ突っ込む危険なシーンは大事なスターに怪我されるのを心配したプロダクション側の指示でスタントだったとのこと。

その代わりに逃げるマックイーンを追いかけるドイツ兵のバイク走行シーンはマックイーンが希望して自分でおこなったとか。好きですねぇ。

ブリット 「ブリット」は、沈着冷静なサンフランシスコ警察の敏腕警部補役で、それまでのイメージとちょっと趣が違っていますが、サンフランシスコの急坂を、犯人が乗るダッチチャージャーを追いかけるマスタングGT380が跳ねて飛び回る派手な重量級カーチェイスで有名になりました。

ちなみにさすがにサンフランシスコの坂でも普通にはクルマはジャンプしないので、撮影では見えないようにジャンプ台を設置してクルマをわざと跳ねさせていました。

またスーツにネクタイをしているマックイーンというのも珍しく、この映画のやや崩したIVYリーガーっぽい粋な服装と着こなしが人気でした。

トヨタがチェイサーというクルマを発売するとき(1977年?)のテレビCMには、草刈正雄がサンフランシスコの坂の街を(大人しく)走りながら「刑事ブリット、彼はチェイサーだ」というキメ台詞のシーンがありました。

栄光のル・マン 「栄光のル・マン」は、映画としてあまり評価が高くないのですが、クルマ好きなら誰も興味をそそられる「フェラーリvs.ポルシェ」のワークス勢同士の激突を描いたもので、その時すでにレーシングドライバーとしても定評があったマックイーンが、「俺の得意分野だぞ」とばかりに生き生きと演技しているのがGoodでした。

どこで手に入れたのか忘れましたが映画のオリジナルサウンドトラック(カセットテープ)まで持っていました。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

当時は一流のハリウッドスターはテレビCMや商品広告には出ないというのが常識でしたが、1972年には唯一と言ってもいいテレビコマーシャルに出演をしています。その後松下電器(現パナソニック)と訴訟沙汰になった広告は、映画シーンを彼の承諾なしに(おそらく映像権を持つプロダクションと松下電器が契約した?)勝手に使ったというものとされていますが、それではなくマックイーン自らが出演したものです。

HONDAエルシノア250CM それはHONDAエルシノア250というモトクロッサー用バイクのCMです。

映像は広大なアメリカ南西部のインディアン・デューンズの大地をマックイーンがひたすら走り回るというだけのCMで、あの「大脱走」で演じたバイクでの逃走シーンともかぶってくるものです。

私はそのCMをリアルタイムで見て、その時はまだ免許が取れない年齢でしたが、いずれはオフロードバイクに乗りたいと思ったものでした。


HONDA CR250M ELSINORE CM 5分間フルヴァージョン(ファンには感動もの)
https://www.youtube.com/watch?v=J8nJvgSlSiM

この当時としては異例のハリウッドのトップスターがテレビCMに出演してくれた理由が、下記のホンダのサイトに書かれています。面白いですよ〜
HONDA MotorSports The Origin2「スティーブ、待ってくれ!」
Hondaのテストスタッフは、遙かエントリーゲートの方向に立ちのぼる砂埃を発見して、緊張に身を引き締めた。その日のインディアン・デューンズ・モトクロス・パークはHondaが貸し切り、わずか4人のテストスタッフで極秘テストを行っている真っ最中だった。ロサンゼルスからそれほど遠くない場所に位置しながら、普通のモトクロス場の何倍もの広大な面積を誇るインディアン・デューンズは、人知れずマシンの開発テストを行なうにはうってつけのコースだったが、そこに誰かが侵入してきたのは確かだった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

マックイーンが出演した映画はちょい役も含めて全27作品。同世代の俳優ポール・ニューマンの50作以上と比べると決して多くはありません。それは全身を癌に蝕まれ50歳の若さで亡くなってしまったことにもよります(ポールは83歳で死去)。

その癌は、因果関係は様々言われていますが、「拳銃無宿」や「荒野の七人」「ネバダ・スミス」など数多く出演した西部劇でよく使われるロケ地が、アメリカの原爆実験場(ネバダ州)と重なり、その残留放射能の影響を受けたというものや、軍隊時代やその後のレース活動で、当時は耐熱、耐火用素材として普通に使われていたアスベストを使った衣服や建材に触れる機会が多くあり、それらの影響だとか言われています。

マックイーンの60歳、70歳の年齢に応じた円熟した演技もぜひ見たいと思ったのは私だけではないはずです。

【出演作一覧】
1956年
傷だらけの栄光  Somebody Up There Likes Me
1958年
ニューヨークの顔役 Never Love a Stranger
マックイーンの絶対の危機 The Blob
拳銃無宿 Wanted: Dead or Alive
1959年
セントルイス銀行強盗 The Great St. Louis Bank Robbery
戦雲 Never So Few
1960年
荒野の七人 The Magnificent Seven
1961年
ガールハント The Honeymoon Machine
1962年
突撃隊 Hell Is for Heroes
戦う翼 The War Lover
1963年
大脱走 The Great Escape
雨の中の兵隊 Soldier in the Rain
マンハッタン物語 Love with the Proper Stranger
1965年
ハイウェイ Baby the Rain Must Fall
シンシナティ・キッド The Cincinnati Kid
1966年
ネバダ・スミス Nevada Smith
砲艦サンパブロ  The Sand Pebbles
1968年 華麗なる賭け The Thomas Crown Affair
ブリット Bullitt
1969年
華麗なる週末 The Reivers
1971年
栄光のル・マン Le Mans
栄光のライダー On Any Sunday
1972年
ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦 Junior Bonner
ゲッタウェイ The Getaway
1973年
パピヨン Papillon
1974年
タワーリング・インフェルノ The Towering Inferno
1978年
民衆の敵 An Enemy of the People
1980年
トム・ホーン Tom Horn
ハンター The Hunter


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880 高倉健さんを偲び映画の思い出など
811 ゴールデンウィークにお勧めの古い映画10本


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広告とブラック企業と心の病 2015/12/23(水)

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派遣社員はほとんどいない「年越し派遣村」とか、ネットからブラック企業の存在が騒がれ出したら「ブラック企業大賞」などが生まれたりと、旬のネタをうまく利用して金儲けや売名行為に走る人や団体がありますが、主催者の多くはおそらく使命感や清廉?な気持ちから「社会のため」「正義を守る」という想いや大義名分があるのでしょうから文句は言いません(棒)。

ブラック企業大賞・セブン「収益構造に歪み」「メディアが取り上げない」実行委が指摘(弁護士ドットコム)


一時期ブラック企業の代表みたく言われていたワタミの場合は、メディアに対してそれほど広告出稿もなく、ニュースとして大きく取り上げてもマスメディアの収入に影響することもなかったでしょうけど、さすがに今回大賞を受賞したセブンイレブンは、広告出稿量で言えば、トヨタやソニーなみとまではいかないまでも、その次の規模であることは確実で、同社の広告をテレビやネットで見ない日がないぐらい巨大なものです。

つまりそのような大型広告主(クライアント)の悪評をメディアで取り上げることは、マスコミ企業にとっては広告収入の激減に直面する可能性があり、大手マスコミは「大人の事情」を勘案し、この手のニュースはよほどのことでない限り取り上げられません。

広告主の意向や評判がメディアのニュースや記事の内容に反映することは、資本主義社会の中では過去も現在も普通に行われていることで、別に今更って気もします。

NHKスペシャルでやっていた「新・映像の世紀 第2集 グレートファミリー 新たな支配者」では、石油王のロックフェラー、金融業のモルガン、火薬などの死の商人デュポン、自動車のフォードなど、その戦略は国家権力にうまく入り込み、ライバルを叩きのめし、金の力でマスコミを味方に付けて繁栄を独り占めしていくストーリーが描かれています。


日本でも前述のトヨタやホンダ、パナソニック、ソニー、花王など巨大な広告出稿クライアントに対するマスコミの扱いは別格で、下手を打てばマスコミ本体だけではなく代理店や制作下請け会社など影響が大きいので、そうしたクライアントの不祥事や事件などの扱いには極めて慎重です。

例えば先月事業終了が案内されたNTTドコモのグループのNOTTV関連ニュースは、累積赤字が996億円と相当な巨額にもかかわらず、大手マスコミはどこも報道しませんでした。大口のクライアントに配慮しているとしか考えられません。

破綻した「NOTTV」の見せた電波行政の深い闇(JB Press)


先の弁護士ドットコムの記事でも、「メディアへの影響力から週刊誌などは(大賞の受賞を)取り上げないのではないかと指摘」と書かれていますが、この大賞が広告費をほとんど使っていない企業や団体でない限りは、今後もそうしたメディアの影響による差別的自主規制は働くでしょう。

ちなみに世界の中で広告宣伝費の多いのは、下記の通りです。当然メディアに対して大きな力を有しているということです。

1位 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)
2位 ユニリーバ
3位 ロレアル
4位 トヨタ
5位 ゼネラルモーターズ
6位 コカ・コーラ
7位 ネスレ
8位 フォルクスワーゲン
9位 マクドナルド
10位 ペプシコ
出典:トップ100グローバル・マーケターズ2013

日本の上場企業だけの広告宣伝費のランキング(2014年5月期〜2015年4月期)では、

1位 ソニー
2位 トヨタ
3位 日産
4位 イオン
5位 セブン&アイ ホールディングス
6位 ブリヂストン
7位 マツダ
8位 武田薬品工業
9位 NTT
9位 三菱自動車
出典:東洋経済データ事業局


で、セブンイレブン擁するセブン&アイホールディングスは堂々4位、1年間で1,656億円もの宣伝広告費を使っています。よく見掛けるホンダや花王、マクドナルド、P&G、NTTドコモ、パナソニックあたりが上位に入ってこないのはちょっと謎ですが。

 ◇ ◇ ◇

さて、広告費の出稿量と企業のブラック度はまったく関係はありませんが、そうしたブラック企業で働くと、心の病に罹ってしまう可能性が高くなるというのが一般的な風潮です。

ちなみに下記の新聞社説によると2014年度で心の病(うつ病など)を発症して労災申請した人の数はと言うと1,456人、認定されたのは497人とのことです。

働く人と心の病 企業の意識を変えよう(毎日新聞)

年間(申請)で1,456人と聞いて「多い」と感じるか「少ない」と感じるかは人それぞれの環境や経験によって違うと思いますが、私は「一桁少ない?」って思いました。

もっともこの1,456名は「心の病+労災申請」した数であって、単に「心の病を発症」や「心の病+休職または退職」などは含まれていません。そうしたことから1桁少ないという感触をもったのだと思います。

国家公務員と地方公務員の合計は約345万人ですが、その公務員でうつによる長期休職者は4万名とされています(人事院及び地方公務員安全衛生推進協議会調べ)。率にすれば全体の1.2%になります。

そのうつ病の原因が業務と直接的に関係し明らかに「労災」であるかどうかは別として、日本の総労働者数5700万人の1%がうつに罹っている可能性があり、その数は57万人になりますので、上記の労災申請者数1,456名との差があまりにも違いすぎています。

5700万人が生涯40年間働くと仮定し、40年のあいだの1年に1%の人がうつを発症したと仮定すれば、年間14,250名となります。うつを発症した人の中のおよそ10人に1人が労災を申請したと考えると、上記の数字が適当だということになります。

私の感覚的にもたぶんそんな感じでしょう。

公務員はもちろん、先のメディアへの影響力を持っている大手企業は、それらの心の病に対する対処が比較的できている方で、不幸にも心の病に罹患してもその処置や保障が十分受けられ、復帰する場合も再発しないように最善の注意を払われて別の業務を任されたりします。

例えば公務員(国家、地方等で多少の違いはあるようですが)の場合は、長期休職しても医者の診断書があれば最初の90日間!は有給で休むことができ、さらに長引く場合でも1年間は給料の80%!!が支払われることが多いそうです。

時々公務員で病欠を理由に長期休職し、その期間に海外へ遊びに行ったり、資格をとるために勉強をしたりしているのがばれたりすることがありますが、少なくとも2年半ぐらいは食うに困らないだけの、なんらかの給料や保障が与えられています。公務員とやはり好待遇の大企業は優遇されていると言われるわけです。

しかし一般的な中小企業、零細企業では、そうした官公庁や大企業なみの余裕はなく、多くの場合は、病欠で有給休暇を全部使ってしまったらあとは無給扱い、さらには露骨に退職を強要されたり、復帰するにもまともな仕事はなく、結局は追い出されてしまうというのが実体ではないでしょうか。

そうしたことを考えると、いかに「寄らば大樹の陰」が就職活動において一番重要なことかがわかってくるというものです。


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976 金で買える?グッドデザイン賞
714 離職率が高いことは悪ですか?
644 うつ病に罹った人との関係は難しい


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高齢者の健康には会話が重要だということ 2015/12/26(土)

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以前、NHKのニュースで『ふだん笑わない高齢者ほど「健康状態悪い」』という調査結果が報告されていました。笑いは健康によく、長生きの秘訣だとよく言われていることを証明しているものということです。

毎年12月初旬にニュースで流れる山口県防府市小俣地区に伝わる神事「笑い講」は、鎌倉時代の1199年から始まったそうで、豊作を祈ることが目的ですが、おそらくは農民達の健康増進という意味もあったのでしょう。

下記のはてなブックマークのコメントではこのニュースに対して「健康だからふだんから笑えるのであって因果関係が逆」と書かれていて確かにそうだとも思えます。

はてなブックマーク ふだん笑わない高齢者ほど「健康状態悪い」NHKニュース

笑うと言うことは、思い出し笑いや、テレビをみていて単独でケラケラ笑うケースもありますが、本来の笑いは他の誰か相手とのコミュニケーションから発生するものです。

「今日仕事中にこんな面白い事件が起きたよ」とか「こんな間抜けな失敗してしまったよ」、「電車の中に一風変わった人がいてね」など。あるいは子供や孫の想定外の行動や発言が、親や祖父母を大いに笑わしてくれることはよくあります。もちろん親しい友人との馬鹿話も笑いには不可欠です。

つまり、「笑う門には福来たる」は、会話が弾むことで、健康になれるという意味がこめられている気がします。コミュニケーションあってこその笑いが生じるという意味で。

ところが高齢化社会では、独居、または老夫婦だけの家族構成が急増しています。

2012年では65歳以上高齢者がいる家族構成の中で、ひとり住まいの高齢者が16.1%、高齢者夫婦だけの世帯が37.5%で、合計すると53.6%に達します。

まず一人住まいの高齢者数ですが、年々増加し2010年は男性139万人、女性341万人、合計479万人ですが、「国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計」によると、今から5年後の2020年は男性217万人、女性451万人、合計668万人(2010年比189万人増)、2030年には男性243万人、女性486万人、合計730万人(同251万人増)となっています。(いずれも千人以下を四捨五入)

独居高齢者数推移
データ出典:平成22年までは総務省「国勢調査」、平成27年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計

この高齢者の一人住まい(独居)は、自らが進んでどこへでも出掛けてコミュニティに加わる社交的なタイプでない限り、公的なサポートがなければ、何日も誰とも会話をしないということが起こります。したがって笑いも限られてきます。趣味など見つけ、面倒がらずに毎日仲の良い友人達と一緒に過ごせる人はいいのですけどね。

ひとり住まいで、いつもひとりで食事をしていると、鬱になりやすいという統計もあります。

「孤食」の高齢者 鬱リスク増 独居男性は2・7倍 東大研究チーム発表(産経ニュース)


そりゃそうなりますよ。今後ますます介護人材の不足が深刻化していくことを考えると「弧食」はますます進みそうです。

またサービスが身近にあっても、高齢になると、そういう人との付き合いが面倒くさくなって、いくら福祉担当者が勧めても動きたがらない人も多いと聞きます。

「チィチィパッパだけはゴメンだ」とディサービスの決まり切った老人を子供扱いするような健康法だけでは一回行っただけでもう二度と行きたくないと思う高齢者がいても不思議ではありません。

行政や福祉団体側も、老人が喜んで行きたくなるような多彩なメニューや趣味嗜好を考えた仕組みを、もっともっと頭を使って考えるべきでしょう。老人クラブも集会所を公民館みたいなところだけでなく、今週はラウンドワン、来週はゲーセン、再来週はカラオケ貸し切りというような工夫も必要でしょう。

次に、高齢者夫婦の世帯ならば、ひとりではないので問題ないのでは?と考えそうですが、高齢者夫婦だけで、いったいどれほどの会話などコミュニケーションがあるか?って考えてみると、若い人には想像できないかもしれませんが、毎日顔を合わせている夫婦間でも、何日も会話がまったくない(話しをすることがない)夫婦なんてざらにいます。

子供や孫が来てくれると大喜びする老夫婦は、つまり「会話やコミュニケーションできる相手が来てくれた」と喜ぶわけです。

私のところも今は子供達が同居しているので、夫婦とも会話がなくなるということはありませんが、子供がみんな外へ出てしまうと、もうほとんど会話らしい会話はなくなってしまいます。そういうものでしょう。あと数年もすれば子供達も巣立っていくでしょうから、そうしたときに残った老夫婦の日常生活は容易に想像ができます。

さて、今から子供達がみんないなくなっても、夫婦で会話ができる、夫婦以外で趣味などで近くにいつでも話ができる知人やご近所さんがいるって状態を夫婦で作っておかなければ、一気に健康を壊してしまいそうです。これが高齢者になると面倒になってきて、できないんですよねぇ、、、


【関連リンク】
889 公的な高齢者移住計画は成功するか?
888 火事と高齢化社会の因果関係
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)


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日記で1年を振り返る 2015/12/30(水)

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今年もいよいよ押し詰まってきました。歳を取ると1年がだんだんと早く過ぎ去っていきます。これは感覚というのではなく、20歳の1年はその人の人生において1/20の時間に過ぎないのに対して、60歳の1年は1/60という短い時間でしかなく、20歳と60歳を比較すれば1年のスピード(感覚)は3倍にも速くなっているということです。

この1年はなにをしたかとこの日記をみながら振り返ってみます。

まずは雇用について。この「リストラ天国」最大かつ不変のテーマですが、昨今はリストラよりもブラック企業のほうがニュースに取り上げられることが多く、決してリストラが減ってきているわけではなさそうですが、話題性には乏しいようで、私も最近ちょっとサボリ気味な感じ。えぇ反省してますとも。

■雇用
890 非正規問題の真実
907 派遣法改正三度目の正直なるか?
926 在宅派遣就労が拡がる可能性はある?
944 派遣法改正について様々な見解
947 不法解雇や退職勧奨を強要された時に打つ手


         

次は、超高齢化社会を迎え、私自身もまさにその中にもうすぐ加わろうとしているわけで、このテーマが身近に感じられ最近取り上げることが多くなってきました。えぇ勝手ですとも。

■高齢化社会
889 公的な高齢者移住計画は成功するか?
896 多死社会と葬儀ビジネス
946 介護人材を増やす
967 平成27年度高齢社会白書を読む
970 生活保護世帯の増加は高齢者増加だけが原因なのか?
985 高齢者の健康には会話が重要だということ

         

今年の初め頃、続けて火災をテーマに書きました。これは身近なところで悲惨な火災事故が起きた影響によるところが大です。冬場は火事が多くなりますので、注意をするのと、万一火事に見舞われた時に備えることも必要だということを書いています。

■火事
888 火事と高齢化社会の因果関係
892 火事と賠償
894 火災保険・地震保険について調べてみた


         

歳を取ることは、同時に身体のあちこちが傷んでくることと同義です。どんなに高品質で精巧に作られた機械でも、動かし続けていると数年から数十年で必ず故障します。メンテナンスも重要ですが、機械と違って新品部品に交換ができる肉体パーツはほとんどなく、何十年もあいだ、だましだまし使い続けていかなければなりません。えぇオッサンですとも。

■健康
902 イボを取る
906 トクホが売れるわけ
917 耳鳴りは治るのか?
924 高齢化社会で変形性股関節症が増加する
930 加齢性難聴とは
958 男の更年期障害について調べてみる
961 マッサージというかリラクゼーションサロンとやらへ
965 とうとう杖を買いました orz
984 広告とブラック企業と心の病


         

実は悲しいことに今年は一度も映画館へ行っていません。何本か見たい映画はあったのですが、休日に痛い足をひきずってでも見に行くモチベーションが盛り上がりませんでした。その代わりにテレビ放送を毎週事前にチェックして、見たい映画を片っ端に録画しておき、週末などにまとめて見るようにしました。BS放送では古い有名な映画をノーカットでよくやっているので助かります。

■映画とドラマ
885 年末年始にみた映画(神様のカルテ2、選挙、トリック劇場版 ラストステージ、夜叉、ドクトル・ジバゴ)
915 「風と共に去りぬ」を観てわかるアメリカ史
937 浅見光彦シリーズドラマにはまる
966 映画 無法松の一生
983 我が青春のヒーロー、スティーブ・マックイーン

日記で書いた映画以外に、今年見て強く印象に残った映画は「雨月物語」(1953年)、「戦争のはらわた」(1977年)、「八月の狂詩曲」(1991年)、「戦場の馬」(2011年)


         

なんだかんだと言われながらもテレビの役割はまだ大きいです。私はバラエティ番組はほとんど見ませんが、ニュース、スポーツ、ドキュメンタリー、映画、時事問題、趣味(歴史とか読書とか紀行など)番組はよく見ています。

その視聴法としては、ニュースやスポーツはリアルタイムで見ることが多く、その他の番組は基本的に録画をしておき、休日に一気に見ています。ゆっくりとしゃべってくれるNHKの場合は1.5倍速の早回しで、民放番組はCMをスキップすれば、概ねリアルタイムで見るよりも2/3の時間で見られ、大いに時間を節約できます。

また10年以上前から言われるままに支払い続けてきた高額なケーブルテレビの視聴料を再検討しました。結果はしばらく継続することになりました、毎月の費用を下げることに成功しました。生活インフラの水道・電気・ガス代は仕方ないとしても、固定電話、携帯電話、ネット接続、新聞、クレジットカード年会費等、継続して引き落とされていく嘘と錯誤で固めた騙しの経費は時々思い切った見直しと断捨離が必要だと言うことがわかります。

■テレビ
910 テレビ番組はタイムシフト視聴が当たり前?
900 テレビ・ラジオの長寿番組について
962 ケーブルテレビの契約見直し
963 続:ケーブルテレビの契約見直し


         

若いときに比べるとクルマに乗って出掛けることは大きく減りましたが、クルマやクルマ社会を取り巻く環境も大いに変わってきています。超高齢化社会におけるモビリティをどう考えていくかというのは、今後の日本社会のあり方を考えることにもつながります。

■クルマ
891 昨年の自動車販売データ
904 金持ち道楽な燃料電池車への補助金は税金から
916 春風の中をオープンスポーツカーで走りたい
955 道の駅の転換期
957 歩行アシスト、パーソナルモビリティについて
975 自動車の分類「セグメント」とはなにか?


         

お金のかかる子育てはほぼ終わったものの、老後のために残すはずだった貯金はほとんど残らず、これからの年金生活とどう向き合っていくのか?ってところを、お金について、若い人には失敗してもらいたくなく、ぜひ早めに考えてもらいたいと思って書いたものが多いです。

特に「953 年収600万円と1100万円の生活の違い」の本文中に出てきますが、「リスクとの付き合い方」については、今に思えばまったく不案内で失敗しました。

人生においていつも順風満帆が続くはずもないのですが、順調にいっている時にはそのことには気がつかないものです。健康なときに病気になった時のことを考えられないのと同じです。

いや気づいていても、気がつかない振りをしているのかもしれません。40代以上で慌てても遅いので、できれば30代までに様々なリスク軽減策をとり、いい人生がおくれますように。

■お金
921 もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ
934 子供の教育費にいくらかけますか?
941 それでも宝くじに夢を見る
953 年収600万円と1100万円の生活の違い
977 奨学金という名の学生ローン


         

日本国のことを悪く言う人は多いですが、visaなし海外渡航にしろ、殺人事件発生率の少なさにしろ、日本は世界に誇るべきものをいくつも持っています。逆に自殺者の多さや外交下手、労働生産性の低さ、農業生産力の低下など、今後の課題も山積みです。統計データや、ちょっとした思いつき、アイデアをとりとめもなく書いたものです。

■その他
911 visa(査証)なしで何カ国へ渡れるのか
914 殺人事件の国際比較
919 春は自殺者が多いという話し
923 ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか
951 日本経済と外交を大阪商人に任せてみる
954 書店数や出版業界売上減と未来
971 数字で見るプロ野球名監督列伝
972 大阪道修町と大阪万博
973 ゴルフ場と利用者の推移
981 大きく変化していく農業従事者


とりとめもなく、またこの1年を書いてきましたが、数年後に読み返してみて、「あ、これは当たっていたな」とか「外れた〜」とか反省会でも開きたいと思っています。

みなさんのこの1年が素晴らしい年であり、また来年ももっと素晴らしい1年になることを願っています。1年間どうもありがとうございました。今年よりも一段とよいお年をお迎えください。

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