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--------------------------------------------------------------- 生活保護世帯の増加は高齢者増加だけが原因なのか? 2015/11/3(火) 970 高齢化社会もまもなく佳境に入りつつあり、年金や生活保護の受給者が増えて社会福祉にかかる経費が増大してたいへんだという話しは毎月のように耳にします。 ただ、憲法で保障されている「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」を現実の制度に置き換えると生活困窮者に与えられる生活保護の支えは最低限必要な制度と思われます。 ではなぜ、これほどまでにこの制度や制度を使う人が叩かれたり、社会悪とでも言うような問題として俎上に上がってしまうのでしょう。 確かに生活保護費の不正受給や疑わしいケースが毎年摘発されたりします。そういうのはもちろん可能な限り発見して排除していくべきですが、いくらでも人手とお金をかけて調査し検挙すればいいというものでもないでしょうし、不正受給は全体の0.5%と決して頻発しているというレベルでもありません(税金の滞納率は1.3%前後、小売店での万引き被害は売上金額の0.8〜1%と言われています)。 悪事をはたらく犯罪者は生活保護を不正に受給しようと考える人だけではなく、他にもいっぱいいるわけですので不正受給ばかりを調査、監視、摘発するのも限界があります。 不正受給者をなくすという以外の対策等で増加する生活保護費の問題を解決できないものか考えてみました。もちろん夢のような解決策があれば頭のいい人が先に提案して実行しているわけで、無理を承知の上でのことです。 まず生活保護受給者数と受給世帯数の推移を調べます。データの出典は厚生労働省の「被保護者調査」です。 約40年前の高度成長期の1975年には月平均で135万人だった生活保護受給者は2013年には216万人と1.6倍に増えています。人口も1975年から1.14倍増えていますが、人口比で見ると、さすがにちょっと増えすぎでしょう?っと思うのもやむを得ません。 これは生活保護受給者の数と失業率は深い関係があって、1975年は1.9%だった完全失業率は2013年は4%にまで上昇しています。まずはこれが大きいでしょう。 つまり失業率が高いと、失業後に次の仕事に就けず、やむなく生活保護を申請するという人が当然ながら増えることになります。都会に住んでいる若い人なら「仕事がないなんて、考えられない」と思うでしょうけど、地方に住んでいる人や中高年者はこういうケースは珍しいことではありません。 また家族の介護のために地方から離れられず、また介護のために働ける時間が限られて、そういう都合のいい仕事が見つからないという人も多くいます。さらに50歳を超えていたりすると都会でも次の仕事を見つけるのは困難です。 そういう人達には、制度として家族を介護しながらでも働ける環境を提供するなど、働く場を作っていくしかないでしょう。 ちょうど介護士や介護補助員の不足ということもあるので、老人ホームに介護している家族を預け、そのホームで毎日働くという仕組みが作れないものでしょうか。老老介護や認知症介護など介護側に大きな負担を強いて悲惨な結末を迎えることを考えると、もっと積極的に施設や福祉団体が介護と雇用に関わるべきでしょう。 また民間の老人ホームが高くて入れられないという場合でも、その費用の代わりに今まで介護をしていた家族がそのホームで働くことで要介護者が優先的にホームに入居できるのなら双方にとってメリットがありそうです。 次に、生活保護というと、イコール高齢者というイメージが強くありますが、生活保護受給世帯の内訳をよく見てみると、確かに高齢者数の増加とともにその数は増え続け、世帯別で見ると受給者全体の4割以上を占めていますが、ここ数年で割合が急速に増加しているのは、「その他の世帯」です。 「高齢者世帯」(青)とは65歳以上の男女のみか、これに18歳未満の者が加わった世帯を表しますが、一般的にみて老夫婦のみあるいは高齢者が1人で暮らす世帯と考えていいでしょう。 生活保護を受ける「高齢者世帯」は2012年は約68万世帯(2014年74万世帯)で、生活保護受給世帯全体の44%(同45%)を占めています。これは10年前と比べると24万世帯も増加(155%)していますが、生活保護受給世帯全体に占める割合は横ばい※です。※2002年の高齢者世帯が占める生活保護受給世帯の割合は46% つまり高齢者世帯の増加で生活保護受給世帯が増えているというのは、絶対数では正しいですが、全体の割合からすると間違っているということです。 「母子世帯」(オレンジ)は配偶者がいない65歳未満の女性と18歳未満の子のみの世帯で、生活保護を受けているのは2012年で11万世帯です。10年前と比べると3万世帯(139%)の増加と、他と比べると極端な増加率ではありません。 「障害者、傷病者世帯」(緑)は世帯主が障害者または傷病者で働けない世帯で、2012年に生活保護を受給しているのは48万世帯。10年前と比べると14万世帯(141%)増えています。 そして最後の「その他の世帯」(紫)ですが、65歳以上高齢者や母子、または障害・傷病者の世帯以外の世帯のことで、いわゆる(働くことができる人がいる)普通の家庭(世帯)です。 もちろん特殊な例としては、「50歳代の世帯主が会社の倒産(または事業が失敗)で失業したが、次の仕事が決まらず、貯金もないので夫婦ともアルバイトをしながら常勤の仕事を探しつつ不足分を生活保護の受給に頼っている」とか、「ずっと引きこもりで親の年金で暮らしていたが、その親が亡くなり、かと言って40代で職歴なしだと働くこともできずに」っていうケースもあるでしょう。 この普通の世帯「その他の世帯」の受給が妙な感じで急増しています。2102年は28万世帯で、10年前と比べるとなんと20万世帯(335%)と3倍以上に増えています。 生活保護受給世帯全体に占める割合も、2002年8%だったものが、2012年には18%と2倍以上の伸びを示しています。 つまり、「高齢者世帯」の生活保護受給対策も必要ですが、それでだけではなく、「その他世帯」の生活保護受給の実体を明らかにして、その対策を早急に詰めるべきでしょう。 おそらくですが、親の介護問題や、地方都市の景況悪化、若年層より高い中高年層の失業問題などが深く関わっているように思えます。さらにニートや引きこもりの増加もこれに拍車をかけていることになるでしょう。 最後に医療費の問題です。 生活保護が受給できると医療費が無料になります。これはなにを置いても大きいですね。 貯蓄がない低所得者や年金生活者が健康で、医療費がかからなければいいのですが、そうでなく、持病があったり怪我や病気のため保険が適用されてもなお高額な医療費や薬代が必要な場合、自分で働いて治療費を稼ぐよりも、生活保護を申請する方が得という考えに立ってしまいます。それが広く知られているだけに、その流れはもう止めるに止められないでしょう。 2012年のデータでは、生活保護費全体に占める医療扶助費の割合は46.5%にまで増えてきています。つまり金額ベースでみると、「生活保護を受ける理由は生活費が半分、あとの半分は医療費がタダになるから」とも考えられるのです。 そりゃ、お金がないからと言ってまともな医療が受けられないというのは人道に反します。本来は国民皆保険制度でいつでも安い料金で医療を受けられるのが日本が世界に誇れる仕組みでした。 しかし医療が高度化し、高額な検査や高度な手術、そして新薬が次々と投入され、それに比例して医療費が高騰し、一方では医療の進歩で本来の寿命を超えてもなお生き続けることが可能となってきたため、そこに従来の保険制度だけではまかなえない医療費急増問題があるわけです。 一般的に「生活保護費の増大」って一言で片付けてしまっていますが、実際は、その半分は「医療費負担の問題」なのです。 若くて健康な人に「将来、延命治療はして欲しいか?」って聞くと、多くの人が「必要ではない」と答えます。しかし病気で気弱になった高齢者に同じ質問をすれば、多くは「して欲しい」と答えます。生活保護を受給していて医療費が一切かからないのならなおさらそう答えるでしょう。 生活保護とは無縁と思っている今の「延命処置は不要」と答える若い人も、やがて高齢となり、寿命が残りわずかになると、多くの人は同じように「延命処置して欲しい」と答えると思います。それが生命に固執する人間の性(さが)なので、それがおかしいとは思いません。 そうやって、病院では以前なら手の施しようがなく見守るだけだった高齢者や重病患者に対し、今では自腹ではとても支払えない高度な延命医療を施し、寿命を数日〜数ヶ月延ばすようなことが普通におこなわれています。 そうしたことも含め、「生活保護受給資格があるのだから、今のうちに病院にいき、できるだけ多くの検査をしてもらい、長期入院をして、薬も余計にもらっておこう」というようなことが起きないよう、もう少しマシな制度にあらためることが必要でしょう。 例えば生活保護受給者でも生命に関わりのある治療以外の医療費は自己負担とか、生活保護費の中から医療費の一部を支払う仕組みとか。 と、いうことで、自分含めて誰もが将来お世話になるかもしれない生活保護に関しては、まだまだ他にもいろいろと考える余地がありますが、社会に必要な制度ということは前提にして、その中身や基準をより現実的にしていくことが重要ではないかという提言でした。 【関連リンク】 872 高齢者支援だけが本当に手厚いのか 796 貧困率とワーキングプア 795 定年リタイア時の必要貯蓄額と生涯住宅費用 ---------------------------------------------------------------- 数字で見るプロ野球名監督列伝 2015/11/7(土) 971 プロ野球シーズンも終わり今年もストーブリーグが始まっていますが、毎年のことながら、去る人あり、新しく入ってくる人あり、復活・復帰する人あり、いらないと言われてもなんとか新しい雇い主を探しもがく人ありで、リストラ線上にいるサラリーマン同様、悲喜こもごもが展開されています。 見ていると、選手生命というのは、過去の実績などの実力の他、運不運、古傷の状況、ファンの人気度、人間性、性格、監督やオーナー、スタッフの好き嫌いなど様々な要素が加わります。 例えば、現状で言えば飛ぶボールの影響もあってか、セパともに打高投低傾向にあり、そうなると各チームの補強ポイントは投手が中心になり、比較的投手が採用されやすいというタイミング的なツキがあったりします。同様に全体的に左腕の投手が稀少ならば少々難があってもサウスポー投手が採用されやすくなったりするのは運としか言いようがありません。 今期でチームを去った監督も多く、読売巨人の原監督、阪神の和田監督、横浜DeNAの中畑監督、楽天の大久保監督、オリックスは開幕当初は森脇監督でしたが、成績不振で途中休養となり、福良監督代行が新監督に昇格することになり合計12球団中5球団の監督が新しくなります。 そのプロ野球球団のチーム監督では一般的には巨人V9の川上哲治氏、再生工場と言われた野村克也氏、天性の野性的直感の長嶋茂雄氏、燃える男星野仙一氏、沈着冷静オレ流の落合博光氏などがすぐに思い起こせますが、各種の記録を調べるといろいろなことがわかります。 プロ野球は魅せるプロスポーツなので異論もあろうとは思いますが、監督に一番必要なことはまず試合に勝つことでしょう。 過去勝率が高い監督ベスト10は、 1.鶴岡一人 0.609 2.川上哲治 0.591 3.藤田元司 0.588 4.水原茂 0.585 5.天知俊一 0.581 6.原辰徳 0.576 7.森祇晶 0.574 8.濃人渉 0.563 9.落合博満 0.562 10.秋山幸二 0.553 の順番です。(2014年シーズンまで。氏名と通算勝率) 意外ですが、野村克也氏や王貞治氏、長嶋茂雄氏、西本幸雄氏など監督のイメージが強い有名どころがベスト10には入ってきません。現役監督では6位に原辰徳監督が入っていましたが、今年で勇退しましたので、来期シーズンになるとこのベスト10監督からは誰もいなくなります。 もっとも2015年シーズンから指揮を執ったソフトバンクの工藤公康監督は、今年1年間の成績が0.647というとんでもない高い勝率を出しましたので、1位の鶴岡氏を超えてダントツ1位で2年目の来期を迎えることになります。 次に(2シーズン制の)日本シリーズを制覇して日本一に輝いた回数が多い監督は、 1.川上哲治 11 2.森祇晶 6 3.水原茂 5 4.三原脩 4 5.原辰徳 3 5.上田利治 3 5.野村克也 3 5.広岡達朗 3 5.古葉竹識 3 です。(2014年シーズンまで。氏名と日本シリーズ優勝回数) やはりV9を達成した川上氏の優勝回数が突出しています。ここの上位でも2015年現役(だった)監督は原氏のみ。あと特徴的なのは川上氏、森氏、水原氏、三原氏、原氏、広岡氏と9人中6人がなんと巨人OBです。まるで巨人OB監督でないと複数回の優勝はできないという勢いです。 その中に食い込んだ上田氏(阪急)、野村氏(南海他)、古葉氏(広島)はいずれも弱小球団を優勝に導いたとして名監督の誉れが高いですね。 あと監督業というのはなかなかハードでしかも政治的で、チームが調子がいい状態のときばかりではありませんので、当然成績不振により解雇されたり、成績は悪くなくとも、オーナーや有力選手との関係が悪くなって辞任したりということが起きます。もちろん本人の体調不良で余儀なく辞任するケースもあります。 したがって、監督業を長く勤められるというのは、まず心身ともにタフで、しかも勝率もさほど悪くなく、オーナーや選手、コーチなどスタッフ、そしてなによりもファンから信頼され愛されているゆえとも言えます。長期政権または辞めても他のチームから招聘されるのは一種の勲章みたいなところがあります。 その監督として長く指揮した年数(通算)と試合数を順に並べると、 1. 三原脩 26 3248 2. 野村克也 24 3204 3. 藤本定義 29 3200 4. 鶴岡一人 23 2994 5. 水原茂 21 2782 6. 西本幸雄 20 2665 7. 上田利治 20 2574 8. 王貞治 19 2507 9. 別当薫 20 2497 10.星野仙一 17 2277 です。(2014年シーズンまで。氏名と通算監督年数、監督としての出場試合数) 年数では試合数3位の藤本定義氏が通算29年と最長ですが、監督として指揮した試合のゲーム数は三原脩氏、野村克也氏が上回っています。ノムさんは選手兼監督の時期もありましたがさすがですね。 これほどの長期政権なら当然のごとく監督はリーグ優勝や日本一にも輝いているかと思いきや、この中では別当氏だけがリーグ優勝の経験がなく、藤本氏はリーグ優勝は9回あるものの、途中で2リーグ制になってから2度日本シリーズに監督として挑戦しましたがいずれも敗退しています。昔はチームが優勝から遠ざかっていても、気長に監督を信頼してまかせてくれたという傾向があったのでしょう。 藤田元司氏、広岡達朗氏、落合博光氏のように短期間(7〜8年)で4回のリーグ制覇をする短期決戦型監督と、上田利治氏や野村克也氏のように長期(20〜24年)で5回のリーグ制覇をする長期安定型監督にタイプが分かれそうです。 ただ最近は世相や世の中全体が闇雲にスピードを求め、どうしても2〜3年で結果を求められる傾向にあり、野村氏や西本氏、王氏のようにオーナーもファンも「監督にすべてお任せで、一緒に心中する気持ち」っていう感じにはなりにくいのかなと思ってます。世知辛い世の中ですからね。 あとは選手引退後の収入のことを考えると、監督やコーチを引き受けるより、テレビやラジオ、スポーツ新聞の専属解説者になるほうがずっと収入が多いという時代がありました。監督で胃が痛む苦労するよりも、無責任な評論家になって監督以上の収入を得る方が得ってことですね。 でも最近はテレビラジオともプロ野球中継の数が大幅に減り、スポーツ新聞の販売数低下もあり、スター選手でも解説や評論活動、コラム執筆だけで安定した高額収入を得続けるのが難しくなってきています。 過去にそういう道を選んだ元スター選手がお金を得ようとするとなにか芸を磨いてバラエティ番組の道しか残されていませんが、やはり向き不向きがあり、金銭感覚が狂ってしまって派手な生活に慣れきった元スター選手にとってはますます厳しい時代です。中には現役時代にしっかり貯めたお金で事業を始め、うまく軌道に乗せた人もいそうですけどあまり聞きません。 ま、芸能界に入っていった元選手は自己責任なのでどうでもいいのですが、プロ野球やスポーツの発展のために、選手を引退した後も直接プロ野球に関わり、目の前のお金ではなく、自分の経験を後輩に伝え、自分も勉強して次代のスター選手を育成し、なによりファンに夢を与え続けてくれている名監督、コーチ達に感謝とエールを贈りたいと思います。 元データは、 プロ野球歴代通算記録 より引用しました。 【関連リンク】 794 田中将大とダルビッシュ、松坂、前田(健)の成績を比較してみる 758 プロ野球とメジャーの試合時間 631 サッカー選手と野球選手の経済的考察 ---------------------------------------------------------------- 大阪道修町と大阪万博 2015/11/11(水) 972 20代の頃、もう30年近く前になりますが、大阪で数年間働いていました。仕事は企業相手の営業職で、担当エリア制になっていたので年配の前任者から地区と顧客を引き継ぎました。担当したのは主として大阪のビジネス街の中心地、中央区の狭い一角で、端から端まで徒歩で歩いていける範囲です。 大阪のビジネス街の地理が不案内だったので、自分の足でエリアを何度もグルグルと歩き回り、既存の顧客を担当しつつ戦略を考えて新しい見込み顧客を開拓していくのが仕事です。 大阪の中心部を歩いてみて面白いなぁって思ったのは、ある地域にライバルでもある同業者が固まってあることです。 繊維関連なら船場や久太郎町、証券会社なら北浜、総合商社は本町、阿波座は電子や機械部品商社などなど。東京でも兜町に証券会社、秋葉原に家電販売店がかたまっているとかはありますが、もっといろいろな業界ごとに固まり、その密度が濃いというか。 その中でも異彩を放っていたのは道修町(どしょうまち)で、一方通行の狭い道路の両側に製薬メーカーや薬の卸業がこれでもかってほど固まって本支店(オフィス)を構えています。 しかも当時には誰もが知っているような大メーカーが、戦前の建物?って思うような古い歴史を感じさせるビルで本店を構えていたりして驚きました(30年ほど前のことで、今ではさすがに建て替えられているようです)。 薬はそれこそ江戸時代から大きな商売の種になっていましたが、それにしても老舗の製薬会社や薬問屋が、江戸時代のまま、今でも大阪の中心部に集まって本店、支店、営業所を構えているというのは壮観でした。 その道修町のすぐ近くには有名な「適塾(てきじゅく)」跡もあり、こちらは医者でもあった緒方洪庵が開いた蘭学の塾で、大村益次郎や福澤諭吉が学び、大阪大学医学部の元となった学校です。道修町の医薬品と、そのすぐそばにあった適塾との関係に思いを寄せたりします。 大阪道修町に拠点がある製薬、化成品会社を列挙しておくと、カイゲンファーマ(本社)、小林製薬(本社)、塩野義製薬(本社)、大日本住友製薬(大阪本社)、武田薬品工業(本社)、田辺三菱製薬(本社)、扶桑薬品工業(本社)、丸善薬品産業(本社)、和光純薬工業(本社)、小野薬品工業(本店)、田村薬品工業(本社)、中間物商事(本社)、DSファーマバイオメディカル(本社)、天藤製薬(大阪本社)、ニプロファーマ(本社)、伊藤由製薬、乾卯栄養化学、イワキ、エビス薬品、関西薬品、小城製薬、金剛薬品、シオエ製薬、鈴粉末薬品、関商、第一三共、ダイト、大鵬薬品工業、高砂薬業、東洋製薬化成、常盤植物化学研究所、日新化成、日本新薬、日本製薬、日本バルク薬品、日本粉末薬品、日野薬品、富士化学工業、富士カプセル、堀江生薬、丸三薬品、丸善製薬、三国、八ツ目製薬、山善製薬、横内製薬、米山薬品工業、興和など(順不同)。 30年前から吸収や合併などもあり、だいぶんと社名が変わったりしていますが、それでもまだこれだけの会社が狭い道修町の一角に店を連ねています。 製薬会社と言えば、近代以降は研究開発施設や製造工場、倉庫・流通などの部門が必要で、こうした街の中心部にあるのはいわゆる営業販売部門と本社事務部門だけということになりますが、この業界、高齢化社会ということもあって、いまは割と景気がよさそうなのです。 話しが急展開するようですが、いま、松井大阪府知事が中心となり、2度目の大阪万博を開催できないかと旗を振っています。 「思いつきの発想」経済界総スカン!? 松井知事が2度目の大阪万博にこだわるワケ 2度目の大阪万博では、これから多くの先進国が迎える高齢化を先取りしてきた日本の得意分野の「健康」「長寿」をテーマとして、医療や介護、薬品、バイオなどの分野に焦点をあてようというもので、超高齢化を迎えている日本の、大阪道修町を抱える大阪市としては、目の付け所は青色吐息のシャープ(本社大阪市)と違ってイイカかもって思ったりします。 もちろんまもなくおこなわれる大阪府知事選挙で松井知事が圧勝して再選されることが絶対条件でしょうけど、東京で二度目のオリンピック、それなら大阪では二度目の万博という発想はシンプルで悪くはないと思います。年齢が高齢化して新しいことはなにも受け入れられない頭が硬直化しつつある多くの大阪府民からは不評を買うことになるでしょうけれど。 もちろん団塊世代が押し寄せた1970年の万博と違って、国内の観光客はあてにできませんので、海外、特にアジアからの観光客をどれだけ呼び込めるかというのがキーとなりそうです。日本ブームでもあり、USJや京都・奈良など世界に通用する観光資源が近くにあり、私は十分に勝算はあると思いますけどね。 別に万博だから箱物を作ってと言う旧来の発想ではなく、高齢者が生き生きと暮らせる先進的でお洒落で楽しめるコンパクトシティのモデルを大阪郊外に作り(万博終了後はもちろん高齢者用に有効活用)、そこへ視察&体験に来てもらおうというのであれば既存の施設や改築する施設も利用してそれで十分に対応が可能かなと。 来場者には日本が誇る世界最先端の医療検査機器でおもてなしをして、手軽に全身の精密診断が受けられ、詳しい検査レポートが1時間でもらえるとか、必要に応じて薬もすぐに処方してもらえるとか、医療と健康に特化したサービスを提供しなくちゃなりません。 また大阪万博と言いつつ、日本の各地の観光も兼ねられるよう、人気の高い京都や神戸、奈良、和歌山あたりまでひっくるめて会場や展示場、提携宿泊施設を拡げ、関西全域でおもてなししていくという方向性も考えられます。リニア新幹線が大阪までつながっていれば、これもいい引きになります。 もちろん何事にも反対する人はいるでしょうけど、できれば大阪市や堺市の企業が中心となって、民間の知恵とお金で税金は投入せずに立派にやっていけるのであれば、これからの日本の歩む道を世界に対して示すいいPRになっていいのではないでしょうか。 【関連リンク】 951 日本経済と外交を大阪商人に任せてみる 929 人だけが長生きをしたがる 906 トクホが売れるわけ ---------------------------------------------------------------- ゴルフ場と利用者の推移 2015/11/14(土) 973 ここ半年ぐらい、出不精で自宅でゲーム漬けになっている次男に、ダイエットも兼ねて社会人の身だしなみとしてゴルフぐらいやっておいたほうがいいだろうと、休日の夕方にゴルフの打ちっ放しへ毎週連れ出しています。足の調子がいいときは私も一緒に練習します。 そして練習を始めて3ヶ月ぐらい経った時、ボールを打つのがマットの上ばかりでは飽きるだろうと、先日は近所のショートコースへ行き、9ホールを回ってきました。 本当は18ホール回りたかったのですが、情けないことに私の足が途中で音を上げたので断念しました(その後1週間近く股関節痛で苦しみました)。ちなみにショートコースのティグラウンドは全部マット敷きで、結局は練習場とあまり変わりませんでしたw。気分の問題です気分の。 私がゴルフを始めたのは30数年前、社会人になってすぐ、休日に先輩に神田のゴルフショップへ連れて行かれ、初心者用の用具一式購入(もちろん自前)、その足で東京タワー近くの打ちっ放し練習場へ行き初めて練習をしました。 その後、練習はそこそこに、年数回、多いときは10数回、会社の先輩や、仕事関係で付き合いがあった人、それに学生時代の友人などとゴルフコースへ出ましたが、ちょうどバブル景気の時期と重なり、プレー費は高額で、しかもゴルフ場は混んでいて、気軽にできなかったこともあり、ゴルフは時間とお金の無駄だと思って、熱心なプレーヤーにはなれず、そして足を痛めた10年ほど前からは徐々に遠ざかりました(調べてみると2007年と2008年に1回ずつ行ってそれが最後です)。 用具は20年ぐらい前に買い換えた一式がありますので、型は相当に古いけれど、それを持って子供に特訓指導です。 最近の都会の若い子の標準的傾向なのか、アウトドアスポーツが苦手で、したがってスポーツをする時の基本的な動作(リズミカルな体重移動やバランス感覚)が下手で、本能的な器用さにも欠けく、ボールがうまくミートできずに苦労していました。 ま、最初は誰でもそうだから仕方がない、と思っていましたが、毎週欠かさず練習に行き、それで2ヶ月経っても全然芯に当たらずまっすぐに飛ばないので、「こりゃ教え方が悪かったかなぁ」と反省し、練習場にいるレッスンプロに個人指導を頼みました。 教わっているその時はその通りやればちゃんと打てても、終わったあと1人で練習するとまったくダメダメに戻り、これは根っからの運動神経のなさ、運動音痴としか思えなくなりました。 ま、そんなことはどうでもいいのですが、ゴルフ練習場に通ってみて思ったのは、私が子供を連れて練習に行く土曜日の夕方に練習している人達の推定年齢平均はおおよそ50〜55歳ぐらいで、私が昔よく通っていた30年前と比較すると確実に年齢層が高くなっています。都心の練習場だともっと若い人が多いとか、練習場の立地場所にもよるとは思いますが。 練習しているのはもう仕事をリタイアして暇を持てあましていそうな60代以上の高齢者、私(58歳)とほぼ同年代のサラリーマン、あとはもう少し若い40代のサラリーマンと肉体労働系の作業着を着たオヤジさん連中が中心です。いかにも20代って人は男女とも見掛けません。たま〜に小学生ぐらいの息子を連れたサラリーマンが来ているぐらいです。 私がそこそこ熱心にゴルフ練習をした30年前は、ちょうどバブル時代ということもあり、土日曜日の練習場は、朝から夜まで老若男女で行列ができ(1時間待ちとか普通)、土日曜日にコースを予約するには何千万もする会員権を持った会員と一緒でないとダメとか、それでゲスト料金は1プレイ(18ホール)軽く3〜4万円(昼食代は別)とか、もう無茶苦茶な世界でしたが、現在は名門コースを除き、あまりそういうことはないでしょう。 そこで、最近の国内のゴルフ場(コース)事情はどうなっているのかな?って思って調べてきました。前置き長くてすみません。 まず公益財団法人 日本生産性本部が毎年公表している「レジャー白書2015」によると、2014年度のゴルフ人口は720万人で、前年(2013年)から140万人ダウン、13年前の2001年と比べると620万人もの大幅ダウンと、ここのところずっと減らし続けています。90年代初頭のバブル最盛期には日本の人口の1割を超える1500万人以上がゴルフをたしなんでいましたからそれから半減したことになります。 ◇ ◇ ◇ 次にゴルフコースに行った(プレイした)人の年間延べ総数と、営業しているゴルフ場数の推移です。 データ出典は、一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会調べの「利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移」からです。 高度成長期前の1958年はゴルフ場が117カ所、延べ利用者は2,472千人でしたが、バブル頂点の1992年はゴルフ場は全国2,028カ所(1958年比17倍)で、延べ利用者は102,325千人(同41倍)で、なんと延べ利用者数は1億人を突破しています。 もちろん1人で年数十回利用した人もいるでしょうけど、均せば生まれたての赤ちゃんから入院中のお年寄りまでの国内総人口のほぼ全員が年1回ゴルフ場を利用したってことになりますからこの時のブームは驚きです。当時私も年間10回ぐらいはコースに出ていましたのでその一翼を担っていました。 90年代初頭にバブルが弾けても、それですぐにゴルフ場の開発計画、造成工事は停まらないので、2002年の2,460カ所までゴルフ場は増え続けますが、利用者は先の1992年を頂点にして、その後は平均して毎年100万人ずつ減っていくことになります。 ゴルフ場延べ利用者(2013年8675万人)数を、先の生産性本部のゴルフ人口(2013年860万人)で割ると、ゴルフ場利用者は平均して年10回利用していることになります。意外と多い感じがします。 ◇ ◇ ◇ そして作りすぎたゴルフ場は利用者の減少で経営が立ちゆかなくなり、廃業や倒産の法的整理の憂き目に遭います。一季出版株式会社ゴルフ特信のデータから、ゴルフ場の法的整理件数(倒産、廃業件数)とその負債総額の推移です。 2002年は98カ所のゴルフ場が倒産等に追い込まれ、約3000億円の負債総額が出ています。その後は新設ゴルフ場もほとんどなくなり、倒産件数は減少していきますが、ゴルフ人口の減少からすれば、経営的には決して楽ではないでしょう。 バブル時期に何千万円もする会員権を買った人達はおしなべて大損し、中には経営母体が変わってしまい、旧会員は再度数百万円の追加費用を払わないと自動的に退会みたいな悲惨な状況に追い込まれた人も多いように聞きます。私はちょうどバブル前に貯金をはたいて家を買っていたので、会員権まではとても手が回らず、勧誘は多かったのですが購入せず結果オーライでした。 ただしゴルフ場にとって現状はまだ良い条件が残っています。 それはゴルフ大好き人間が多い団塊世代(66〜68歳)が一斉に定年退職したため、暇と退職金を持て余し、老後の楽しみととして会員権を購入したり、混まない平日にゴルフをする人が増えているからです。 この比較的持ち直してきた機会を捉えて、ゴルフ業界は若い人にもゴルフをやってもらおうと、様々な取り組みをおこなっていますが、どれもイマイチってものが多そうです。プロゴルファーも石川遼や松山英樹に続く若いヒーローが出ず、女子プロに至ってはここ何年も海外勢に歯が立ちません。 さらに慣習やしきたりにこだわる団塊世代が、現在の客のシェアのほとんどを握っていることで、ゴルフ場の思い切った改革や若者向けのサービスが十分におこなえないということもあるでしょう。若者のクルマ離れと同様、若者にとってはクルマもゴルフも、贅沢なうえにお洒落ではないレジャーでオヤジ世代のものという感覚です。 あと、自分の息子を見ていて思いますが、決定的に運動不足で、日が暮れるまで野原を駆け回って遊んだという経験もなく、なんでも欲しい情報は身体を動かさなくてもキーをいくつか叩けばすぐ手に入り、コミュニケーションするのも外へ出掛けなければならないリアルより、手元ですぐに開始でき完了するSNSばかりという若い人に、時間もお金も、そしてなによりマナーまでうるさく言われ、一緒に回るパートナーに気を遣わなければならないゴルフが、今後再び流行するか?って言うとそれはどうもなさそうに思えます。 5年先の東京オリンピックのゴルフ競技で、若い日本人スター選手の活躍があったとしても、それは一時的なもので、麻雀やパチンコと同様、若い人にとっては古臭い加齢臭が漂うレジャーとして敬遠されていくのではないでしょうか。 そしていよいよ団塊世代がより高齢化して、好きなゴルフもできなくなる10年先を考えると、いまのプチブームが去り、さらにゴルフ場利用者が急速に減じていくことになっていきます。果たしてリッチな中国人など、多くの観光客を日本のゴルフ場にも呼び込めるかはこれからの戦略次第ってところでしょうか。 【関連リンク】 936 休日はごろ寝がいい 906 トクホが売れるわけ 820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編) ---------------------------------------------------------------- 11月前半の読書と感想、書評 2015/11/18(水) 974 悪女について (新潮文庫) 有吉佐和子 タイトルからすると、まるで週刊誌に連載するようなエッセイ集のような気がしますが、1978年に「週刊朝日」で連載された有名な長編小説で、テレビドラマ化も2度おこなわれています。 主人公の富小路公子という名前を見ると、2003年に起きた有栖川宮詐欺事件を思い出しましたが、過去には一見すると皇室や貴族と誤解しそうな偽名や芸名などを使って相手を信用させる犯罪や売名行為はよく見られました。 この小説には実在するモデルはなく、フィクションですが、男社会だった戦後の高度成長期を、不幸な身の上にかかわらず、たくましく生き抜く女性主人公に多くの共感を呼んだのではないかと思われます。 その主人公女性ですが、生まれは八百屋の一人娘で父親は早くに交通事故で亡くし、貧しい家庭に育ちますが、女の武器を利用しながら、名門家の跡継ぎや資産家の奥方達を手玉にとり、また多くの後援者や味方も作りながら着実にやり手の女実業家として成長していく姿に魅了されていきます。 小説のスタイルはその主人公本人が語るのではなく、関係者27人がこの主人公の女性について語るという手法で展開されていきます。しかもいきなり主人公は不審死で亡くなったことが明かされて、その死の謎にも興味が沸く仕掛けとなっています。 それは芥川龍之介の「藪の中 」と同様、複数人の視点で主人公の生い立ちから現在の姿まで語らせることで、語る人によって「とても上品で優しい人」、「男をはめて賠償金目的の性悪女」など様々な見方がされ、テンポ良く読者を引きつけていく手法は圧巻とも言えます。 ★★★ ◇著者別読書感想(有吉佐和子) 空の中 (角川文庫) 有川浩 女流作家が自衛隊を舞台にした小説を書くのは珍しいですが、著者のデビュー作にあたる「塩の街」(2004年)、「海の底」(2005年)とともに自衛隊三部作のひとつとされ、2004年に単行本、2008年に文庫版が発刊されています。 もっとも映画でも大ヒットした「図書館戦争」などの著者でもあるわけなので、そうしたミリタリーオタクが喜びそうな知識が豊富ということなのでしょうが、著者の本を最初に読んだのが「阪急電車」だっただけにその落差というか幅に広さには驚かされます。そういえば「阪急電車」の登場人物にも上空を飛ぶヘリコプターの音を聞いただけで機首かがわかる人がいたような気がします。 「阪急電車」の感想 2012年2月前半の読書「迷宮 清水義範、阪急電車 有川浩、ひとがた流し 北村薫、読者は踊る 斎藤美奈子、九つの殺人メルヘン 鯨統一郎」 主人公は航空自衛隊のF15戦闘機のパイロットのひとり息子で、父親を飛行訓練中に謎の事故が起き亡くしています。もうひとりの主人公は、戦後初の民間小型ジェット旅客機を製造するメーカーの男性で、この試作器も自衛隊の航空機と同じ場所でテスト飛行中に謎の爆発事故を起こしていて、その関連を調査するため、航空自衛隊に日参しています この二人の主人公に共通するのが、古代から生息していたという高々度に浮かぶ、謎の浮遊体生命とコンタクトが取れることです。それがミステリー仕立てのSFホラー小説みたくなってきます。 あり得そうもないSFミステリーなのですが、事故で亡くなったF15パイロットの部下で、間一髪生き残った女性パイロットと、主人公、もうひとりの主人公(高校生)と隣に住む同級生の女の子の二組のカップルのコミカルな関係など、いかにも女性が書いたロマンティック色も忘れていない作品となっています。 ★☆☆ ◇著者別読書感想(有川浩) アンブロークンアロー 戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA) 神林長平 シリーズ1作目の「戦闘妖精・雪風」(1984年)、2作目の「グッドラック―戦闘妖精・雪風」(1999年)に続く3作目の作品で2009年に初出、2011年に文庫版が出ています。 前の作品を読まずにいきなりこの作品を読むと、きっとなんのこっちゃわからないということになりますから、面倒でも最初の作品から読みましょう。最初から読んでいても、前作からしばらくあいだが空くと、なんのこっちゃって考えたりするぐらいですから。あ、それは単なる物忘れが激しくなってきているせいかも。 さて本編も前作同様「ジャムになった男」、「雪風帰還せず」、「さまよえる特殊戦」、「雪風が飛ぶ空」、「アンブロークンアロー」、「放たれた矢」の連作短編で構成されています。 2作目の終盤からいわゆる地球防衛軍(FAF)と異星生命体ジャムとの闘いが本格的になってきます。そしてちょっと展開が複雑で哲学的になってきたというか、実体を持たない異星体との心理戦で、主に人間側の感情や心理面に関する話しが多くなり、なにが正しいのか、なにが本物なのかということが、歳を取って柔軟性に欠ける頭では追いつかず、苦労します。 起承転結があってスッキリと終わるというものではありませんので、それだけは覚悟が必要かも。 1作目が初出してから30年が過ぎていますが、まだ完結には遠い感じで、今後も続編が出てくるのは間違いなさそうです。著者も62歳ということで、作家としては脂がのって、これからとも言えますし、まだまだ頑張ってもらいたいものです。 ★☆☆ ◇著者別読書感想(神林長平) 青い約束 (ポプラ文庫) 田村優之 著者は1961年生まれで、日本経済新聞社の記者として活躍されている(同書執筆時)方です。この本は「夏の光」という題名で発刊した小説を加筆修正し、同時にタイトルも変更して2012年に文庫化されました。 主人公は高校生の頃からエコノミストになりたいと勉強し、その夢はかなえたものの、勤務していた銀行が合併吸収され、難しい立場に置かれている男性。 さすがに著者が経済新聞記者だけあって、国債の発行と経済に関して主人公のエコノミストの言葉を借りてその仕組みと持論をわかりやすく語ってくれます。 それはいいのですが、ある日主人公が取材をしていた財務省で、大手新聞社の記者で高校の時以来プッツリと縁が切れていた同級生と出会い、その縁が切れた理由が読者には謎として浮上してきます。あることが原因で縁が切れるまでは親友だった相手です。 その理由について、小出しにして読者をじらし、だんだん邪魔くさくなてきますが、我慢して読み続けなければスッキリしません。 小説の主テーマでもあるところに「大きな謎」があることを序盤にハッキリ提示しておき、その謎をいつまでも明かさないというのは常套手段なのかもしれませんが、なにかもったいぶられているようで、また無駄に紙面を稼いでいるようで、超売れっ子作家が数ある中のひとつの手法として使うのでなければ、私は好きにはなれません。イライラするだけで。歳のせいでしょうか、やっぱり。 普段、著者が書いている経済新聞は、大見出しで結論を、記事本文でその詳細を簡潔に書いているわけで、その鬱憤?を晴らすためか、小説はその逆の手法、大見出しで謎を、本文ではダラダラと横道に逸れながら最後まで結論をひっぱるという手法でと考えておられるのでしょう。困ったものです。 ★☆☆ 【関連リンク】 10月後半の読書 時の地図 上・下、贖罪、家族という病、ワーカーズ・ダイジェスト 10月前半の読書 羆嵐、幸せになる百通りの方法、努力しないで作家になる方法、幻影の星 9月後半の読書 渇いた夏 柴田哲孝、女系家族(上・下) 山崎豊子、定年後 年金前 岩崎日出俊 ---------------------------------------------------------------- 自動車の分類「セグメント」とはなにか? 2015/11/21(土) 975 最近自動車関連のサイトを読むと、このクルマの分類法「セグメント」が普通によく使われていますが、以前はこの分類法は少なくとも国内においてはまったく使われていませんでした。なので私のようにちょっと古めの人にはこのセグメントという分類がいまいちピンときません。 もっとも日本国内においての乗用車の分類法と言えば、一般的に道路運送車両法で定められている分類を使うことが多く、小さい方から「軽自動車」「小型自動車(5ナンバー)」「普通自動車(3ナンバー)」とサイズで3種類に分けられ、さらにセダンやクーペ、ハッチバック、ワゴン、ワンボックス、ミニバン、SUV、オープンスポーツなどボディ形状や用途で便宜上分けられています。 ところが国産乗用車は、国内だけで販売するよりも世界に輸出する台数が圧倒的に多くなり、そこで国際化の潮流にも乗り、欧州で普通に使われている「セグメント」という分類法に無理矢理当てはめて語られるということになってきました。 そして輸入規制が緩み輸入車が増加し、欧州で普通に語られているこのセグメントという分類を、あたらしモノ好きな自動車評論家達が国内でも積極的に使い出したということもあります。 ところがこのセグメント分類は国産車、特に国内専用車にはわかりにくく、あまりいい識別方法とは思えません。最近特にエンジンのダウンサイジングやハイブリッドカーが増えてくるにつれ、サイズや排気量での分類がしにくくなってきているからです。 で、このセグメントですが、大きくA・B・C・D・E・Lの記号が使われ、それらに加えてS、M、Jという9つに分かれています。またそれぞれにプレミアムという+α的な意味合いをもつものがあります。Eセグメントプレミアムとか。 日本人にとってわかりにくい理由としては、元々は自動車発祥国のドイツ車が基準となっていて、その主体はメルセデス・ベンツとフォルクスワーゲンのクルマのサイズを元にしています。 しかしドイツ車は日本の5ナンバー車のように長さや幅の寸法が何mmというように決まっているわけではなく、それぞれ時代に合わせて主力車種のサイズが変わり、同車種でもセグメントの基準が曖昧になってきます。つまり時代と共にそのセグメントのサイズも変化していくってことです。それがわかりにくくしています。 まずAセグメントは、「ミニカー」という定義で、フォルクスワーゲンのup!が基準の2ボックスハッチバックタイプで、排気量は500〜1300ccぐらいまででしょうか。 日本車で言えば大きさや排気量は軽自動車が該当しますが、軽は日本独自の規格なので、欧州車ではサイズがもっと大きいのが一般的です。 up!(2ドア)のサイズは全長×全幅×全高が3,545×1,650×1,495で、排気量は1000cc、軽自動車からすれば一回り以上大きい感じで、国内では小型5ナンバー車に該当します。 Aセグの他のクルマでは、SMART、フィアット パンダ、プジョー 107、シトロエン C1、ルノー TWINGO、国産車ではトヨタのパッソやiQ、三菱 ミラージュ、スズキ ソリオなどが該当します。 Bセグメントは「スモールカー」という定義で、フォルクスワーゲンのポロが基準となり、現在のポロのサイズは3,995×1,685×1,460です。 日本人にはAセグもBセグも同じ5ナンバーサイズで、その違いがピンきません。 Bセグに該当する車種はフィアット グランデプント、ルノー ルーテシア、プジョー 207、フォード フィエスタ、国産車ではトヨタ ヴィッツや日産 マーチ、ホンダ フィット、マツダ デミオ、スズキ スイフトなどが該当します。 日本車の場合(欧州車も)、このAセグやBセグのサイズでも、ハッチバックだけでなくセダンやワゴン、SUV、2シーターオープンカーなど派生型も多く、それらはどこのセグメントに入るのか?ってなると混乱してしまいます。(よくわかりません) Cセグメントは「ミディアムカー」という定義で、フォルクスワーゲンのゴルフが基準となります。こちらも基本的な形状は2ボックスカーです。 ゴルフは1970年代に登場した初代は3,725×1,610×1,410というサイズで、今のポロよりも小さくAセグとBセグの中間的サイズでしたが、現在の7代目のサイズは4,255×1,799×1,452と、全長で530mm、全幅で189mmも贅肉?がつき、これがいまのCセグメントの代表とされています。なのでゴルフがCセグと言われても、昔のスマートで小気味よいゴルフを思い浮かべると間違っていることになります。 その他のCセグ車は、シトロエン C4、メルセデス・ベンツ Aクラス、ルノー メガーヌ、アウディ A3、ボルボ C30、アルファロメオ 147、BMW 1シリーズ、プジョー 308、フォード フォーカスなど代表的なメーカーが最近特に力を入れていて競争が激しいクラスです。 国産車ではトヨタ カローラ、ホンダ シビック、スバル インプレッサ、マツダ アクセラあたりが該当します。このクラスともなれば国産車の場合、サイズ的にはCセグでも、2ボックス以外の形状(セダンとかミニバン)のほうが多く売れているのが欧州との違いでしょうか。 Dセグメントは「ラージカー」という定義で、その基準はメルセデス・ベンツCクラスです。このクラスからセダンタイプが標準となります。 現在のベンツCクラス(W205形式)のサイズは4,690×1,810×1,430です。DセグなのにCクラスが基準というのもわかりにくさ全開です。 その他のDセグメント車にはBMW 320i、アウディA4、フォルクスワーゲン パサート、ジャガー Xタイプ、プジョー 407、アルファロメオ 159、シトロエン C5、ボルボ S40など。国産車では、トヨタ マークX、マツダ アテンザ、ホンダ アコード、スバル レガシィB4などです。 Eセグメントは「エグゼクティブカー」という定義で、基準はベンツのEクラス、BMWの5シリーズやアウディA6がEセグ御三家といえます。 その他車種ではシトロエン C6、ジャガー XF、ボルボ S80、キャデラック CTS、国産車では日産 フーガ、レクサスGS、ホンダ レジェンドなど。 トヨタクラウンの場合、日本専用車ということで多くの種類があり、セグメントはあまり気にされていません。概ねサイズ的にはDセグに属する車種と、豪華版はEセグに属する車種に分かれるようです。 Lセグメントは「ラグジュアリーカー」という定義で、後席の快適性を追求した豪華仕様車で、ロールスロイスやメルセデス・ベンツ Sクラス、BMW 7シリーズ、アウディ 8、ジャガー XLシリーズ、キャデラック STSなど。 国産では日産 プレジデントとかレクサス LS、トヨタ センチュリーと言ったところでしょうか。庶民には縁がないのでどうでもいいです。 なぜEの次がLなのかに関しては、諸説ありますが英語のLuxuryやイタリア語のLussoの豪華を意味するところからきているというのが正しそうです。またLセグメントのことをEの次のFセグメントという場合もあります。 その他のセグメントでは、Sは「スポーツクーペ」、Mは「マルチパーパスカー」、Jは「オフロード四輪駆動車など」と分類されていますが、こちらのセグメントはなぜか国内ではほとんど使われていません。 いずれにしてもこれらのセグメント分類はドイツ車の、その時代の大きさを基準としていてわかりにくく、A〜Cは2ボックスでD〜Lはセダンという決めつけも同じプラットフォームで多種多様な形状がある現状では不合理です。 トヨタ プリウスは一応Cセグメントに属しますが、長さが他のCセグと比べて異常に長く、Dセグのセダンと変わりません。Cセグのカローラやインプレッサも2ボックスもありますがセダンもあり、セダンタイプだとCセグには含まれないとか。 同様なことが他にもあり、いっそ、日本の基準のように、A〜Eセグメントは長さ・幅・高さのサイズをハッキリ決めておき、それぞれのセグメントに続いてボディ形状、例えばセダンならS、ハッチバックはH、ワゴンならW、クーペならC、SUVならVなどサブ的に記号をつけ、さらにドアの枚数2、3、4、5などの数字をつけるように決めれば誰からもわかりやすくていいと思うのですけどね。 ただサイズとボディ形状だけで決めると、今度は排気量や動力性能との整合性がとれなくなる可能性もあります。さらにはダウンサイジングターボ、ハイブリッド、PHEVなどの動力や、フルタイム4輪駆動などの駆動系の違いなど、様々な要素が加わり、なかなか誰にもわかりやすく分類するには手強いというのが実際です。 いずれにしてもセグメント分けして語られることの多い輸入車の日本でのシェアは2014年でもたったの8.8%。所詮1割にも達しない販売台数です。なので、国内においては、わざわざこのようなわかりにくいセグメントなど使わないで、軽、小型、普通(中型・大型)のクラス分けと、ボディ形状でとりあえずは十分じゃないかと思うのですが、いかがなのでしょう。 【関連リンク】 891 昨年の自動車販売データ 864 衝突安全性テストについて 842 ひき逃げは絶対に許してはいけない ---------------------------------------------------------------- 金で買える?グッドデザイン賞 2015/11/25(水) 976 毎年グッドデザイン賞というものが発表されて、受賞した賞品や企業、団体はここぞとばかりに自慢をしたがって、広告などで盛んに取り上げていますが、実はこの賞の重みというか実際のありがたさは意外とたいしたことがありません。 グッドデザイン賞というのは、1957年に通産省(当時)が進めた「グッドデザイン商品選定制度」ですが、現在は公益財団法人日本デザイン振興会が主催をして毎年審査発表している総合デザインの品評会となっています。 そしてその対象は工業製品ばかりでなく、サービス、ビジネスモデル、番組コンテンツなど幅広いものです。 今年の受賞の中には時計や文房具、家電、乗用車などに混じって変わり種として「道の駅」や、テレビ番組「ブラタモリ」なども受賞しています。「テレビ番組のグッドデザイン」ってどうなのよ〜っていうのもありますが、大人の対応と言うことでしょう。 賞の重み付けに疑問を感じるのは、作品候補が利用者などの他薦など推薦されたものではなく、審査費用を支払って依頼する自薦スタイルということから、お金で賞を買っているとも理解できるからです。ありがたみから言えば、消費者ユーザーにとってのではなく出品者にとってありがたみのある賞ということなのでしょう。 もちろん自薦すれば100%賞がもらえるわけではないので、一定のスクリーニングはかかっているのですが、それでもお金を払って応募した1/3か半分近くが毎回受賞しているという結果からすれば、ほぼデキレースと言ってもいいものでしょう。 今年2015年は3658件の応募デザインの中から、1337件(応募作品の37%)がグッドデザイン賞を受賞しています。そして受賞したのちには、展覧会でお披露目するのにもお金がかかり、年鑑に掲載するには掲載費、広告に「グッドデザイン賞受賞」のマークを使う場合はまた別途お金を支払う必要があります。 つまりこの賞を主催する公益財団法人が儲けようと思えば、応募作品を多く集めて(応募費と審査費)、多く受賞させる(出展費や商標使用料)ことに尽きます。そんな賞でいいのでしょうか。 公益財団法人だからお金儲けの必要はないのでは?という意見を持つ人もいるでしょうけど、こうした美味しい団体には天下り元役人が列をなしていますので、その賃金や数年在籍しただけで数千万円の退職金を捻出するためにもお金儲けは必要となっています。 さっと見ただけで、常勤理事3名中2名が経済産業省の天下り、評議員は8名中2名がやはり経済産業省の天下りです。他にも国公立大学の教職員出身者もいますし、こうした報告書に掲載される年収数千万円をもらうような上位者以外のポジションにも大勢の元役人が働いて?いることでしょう。 これらグッドデザイン賞の中から選ばれる「グッドデザイン大賞」は唯一投票によって選ばれますので、さすがにこれをお金で買うというのは難しく、これについてはある程度の価値を認めなくてはなりません。 しかし元々は審査費用を支払って応募しなければ、その大賞の候補にすらならないデザイン賞ですので、そのデザインがどこまで世の中の役に立っているかという市井の意見は無視されがちです。 記憶にまだ新しいですが、2013年の投票では候補作品の中から「Googleマップ」が投票でトップとなりましたが、2007年から「大賞」=「内閣総理大臣賞」になるということで、受賞には政府の意向が反映されることになり、その結果政府が「最も優れたデザインとは認めがたい」と判断したため大賞は該当なしということになりました。 政府が受賞に異議を唱えた理由は明らかにされていませんが、噂では投票で2位になったJAXA(宇宙航空研究開発機構)の固体燃料ロケット「イプシロン」を受賞させたかったという話しや、Googleマップには竹島や尖閣諸島が日本領土と記載されていないことを問題視したとも言われています。 この政府の決定は、独裁国家や何十年も一党が支配する国と同じような政治的な独断で、せっかく投票をした多くの人や関係者の努力をまったく無為にしてしまい、すでに国の手を離れている賞の意義や意味を失ってしてしまうような蛮行です。もし大相撲で優勝した力士が「日本政府は無能だ」とか「竹島は韓国のものだ」的な発言をしていたら、優勝杯の内閣総理大臣杯は出さないということでしょうか。 そうした、政治的でもあり、またお金を出して賞を買うというこの制度が、ある一部では権威あるものになってしまっているという現実を知ると、一気にしらけてしまいそうです。 とにかく年間1000件以上も受賞する、ありがたみのない賞に、果たして意味があるのか?って疑問を感じ得ませんが、モノが売れない時代だけにそれを起爆剤にしたいと願う企業や団体は多いのでしょうね。 てなことを書いていたら、すでにもっと詳しく書かれた記事(ブログ)が10月初旬に上がっていました。悔しいですが、こちらのほうがよくわかりそうです。 20万円でもらえる?「グッドデザイン賞」受賞率は4割(BLOGOS) ※掲載期間終了?のためリンク切れ あと東京丸の内にグッドデザインのショールームが10月にオープンしたようです(NHKでやっていたのを見ました)。受賞作が飾ってあるだけのつまらなさそうな感じでしたが、お近くへ行った際には無料ですのでのぞくのは自由です。 「GOOD DESIGN Marunouchi」 東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F 【関連リンク】 906 トクホが売れるわけ 746 直木賞作家の前職は? 533 ユニバーサルデザインはどこへ行った ---------------------------------------------------------------- 奨学金という名の学生ローン 2015/11/28(土) 977 少し前のTwitterで「卒業即借金827万530円」という、自虐的なつぶやきと明細書の写真が話題に上りました。私も以前から大学生の奨学金という名の学生ローンについては理解していましたが、中身を見てあらためて驚きました。 卒業即借金827万5301円(Twitter) 合わせて簡単な明細がつぶやかれていますが、入学金と4年間の学費計242万円、それに4年間の生活費と家賃339万円(1ヶ月約7万円)、ローン保証費33万円の合計614万円が実際に借りた金額。 4年間614万円の借金にこれから返却が終了するまでの利子が付いて総額827万円となり、それを卒業後に35,000円の240回払い(20年間)となるそうです。この奨学金という名の学生ローンは、日本学生支援機構の「第二種奨学金」とのことです。 この人のケースでは入学金も学費も国立大学なので、私立(文系)と比べると3〜5割程度安く、また家賃と生活費を合わせて月7万円+アルバイトでやりくりするのは、地方ならなんとか可能でしょうが、大都市部では難しいでしょう。 自宅通学ができずに生活費として借りるプラス7万円(4年間で339万円)の負担が大きいとも言えますが、いや〜たいへんですねぇ、、、順調にいけばですが、無事に返却が終了するのは立派な中年になっている42歳です。結婚適齢期もとうに過ぎています。 でもね、こうした学費や生活費を奨学金という名の学資ローンを借りて大学へ通っている人って、大学生、大学院生全体の半分近くにものぼります(独立行政法人日本学生支援機構「平成24年度学生生活調査」)。 もちろん上記の人のように授業料以外の生活費も借りている人だけでなく、純粋に学費のみ、あるいは学費の一部だけ借りている人も含めてですが。 私もちゃんと安定収入がある親戚の姪が、地方の国立大学に入学するとき、奨学金という名の学資ローンを借りるので、その保証人になって欲しいと頼まれて、受けざるを得ませんでした。最近の親は子供の教育費を出さなくなってきている? この人が入学した4年前は国立大学(文系)の入学金と4年間の授業料が282万円だったのですね。私が私立大学へ入学した約40年前は、国立大学の文系授業料が確か年間18万円ぐらいでしたから、約3倍に上がっています。大卒の初任給は当時から約2倍ってところですから、収入に占める返済の割合は大きくなってきているってことですね。 あと、国立大学へ行けた人はまだラッキーで、私立大学へ行って入学金や授業料を奨学金という名の学生ローンで借りた人は、例え自宅通学で生活費まで借りていなくても、多額の借金を背負って社会に出ることになります。数的にはそのほうが圧倒的に多いでしょう。 例えば、法政大学の政経学部など文系の場合、入学金は180,000円、年間学費1,016,000円ですから、18万+(101.6万円×4年)=424.4万円とローンの保証費がやはり30万円程度とすると、合わせると450万円程度の借金です。その他に一般的には教科書代やら設備施設費、半強制的な寄付金なども別途必要になります。部活でもしようものなら部費、遠征費、ユニフォーム代など、とても奨学金頼みの貧乏生活では負担しきれるものではありません。アルバイトする時間も必要でしょうし。 さらに同校理工学部の場合、入学金は同じく180,000円、4年間の学費が11,105,000円で合計11,285,000円となり、学費だけで先の国立大学生の倍近くとなり、新社会人がとても背負いきれるような借金ではないでしょう。 日本が得意分野としてきた科学、理工系分野の学生が、ここ数年減少していっている理由は、案外こういうところにあるのかも知れません。理工系に興味があっても授業料が高すぎてとても払えないという。 私の職場にも40歳過ぎまで奨学金という名の学資ローンを長々と返済していた人がいましたが、そうした長期ローンを抱えていると、クルマを買うのも、ローンを組んで中古マンションを買うのも、なにかとお金のかかる結婚も、思いとどまらざるを得ないと言っていました。 奨学金の返済を3ヶ月以上滞納をしている人(延滞者)の割合は全体の5.5%です(独立行政法人日本学生支援機構「平成25年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果」)。若者の多くがフリーターになっていると(根拠なく)言っている割には意外とみなさん真面目にちゃんと返済をしているという感じです。 というのも、延滞金には年率10%の延滞金や、3ヶ月以上滞納すれば、信用情報機関へいわゆるブラックリストに載ってしまい、9ヶ月滞納すれば財産の差し押さえなどが実施されます。もちろん本人だけでなく保証人のところへも督促がいきます。当たり前ですが奨学金とはいえ借金の取り立ては厳しいのですよ。 返済が滞り、ブラックリストに載れば、新たにクレジットカードが作れなくなるのはもちろん、持っているカードが使用停止になったり、各種のローンが受けられなくなります。今のネット社会でクレジットカードが持てない、使えないとなると、どれほど不便になるかは想像がつくでしょう。 学費が今後も闇雲に高騰していけば、さらに奨学金という名の学生ローンを借りざるを得ない人が増え、結果的に大卒者の婚姻率の低下や少子化にますます拍車がかかりそうです。大学進学率の低下も招きそうです。 2年半前に「大学へ奨学金で行くということ」という記事を書いています。参考まで。 【関連リンク】 934 子供の教育費にいくらかけますか? 727 大学生の就職率推移と卒業後の進路 666 子供の教育費の負担を覚悟しているか |
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