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おやじの主張(リストラ天国 日記INDEX)


リストラ日記アーカイブ 2015年5月

読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです

918 4月後半の読書と感想、書評 2015/5/2(土)
919 春は自殺者が多いという話し 2015/5/5(火)
920 お薦めの面白い小説(国内本) 2015/5/9(土)
921 もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ 2015/5/13(水)
922 5月前半の読書と感想、書評 2015/5/16(土)
923 ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか 2015/5/20(水)
924 高齢化社会で変形性股関節症が増加する 2015/5/23(土)
925 最後の無頼派作家白川道氏逝く 2015/5/27(水)
926 在宅派遣就労が拡がる可能性はある? 2015/5/30(土)





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4月後半の読書と感想、書評 2015/5/2(土)

918
介護入門 (文春文庫) モブ・ノリオ

1970年生まれの著者のメジャーデビュー小説で、2004年に単行本、2007年に文庫化された短編作品です。そしてこの作品は2004年上半期の芥川賞を受賞しています。なお文庫版には「市町村合併協議会」「既知との遭遇」の短編が併録されています。

内容は、タイトルだけみると実用書?って思いがちですが、そうではなく、祖母の介護をしてきた自らの経験をベースとしたもので、文体がヒップホップ調というか、文学をラップで表現したというか読みにくいと言えば読みにくいけど、なんだか新鮮でこれもまたいいと言えばいい、よくわからないけど、こういうのもアリでしょ?っていう感じの軽い調子だYO、朋輩(ニガー)!

祖母が転んで怪我をしたことがきっかけになり寝たきりになってしまい、本当なら介護すべき母親が社長としての仕事を持っていることから、仕事を辞めて働かずに放浪していた主人公が祖母の介護をすることになります、YO,FUCKIN!

この主人公、やはり祖母の介護をしてきた著者を投影していると思われますが、小説では時に大麻を吸ったりしつつも、一応ちゃんと介護の研修を受けてそれなりに割り切った世話をしています。

介護でなにがたいへんかと言うと、おむつ交換や局部の清拭などもありますが、やはり時間が不規則で、夜中にでもおむつ交換をしたり水を飲ませたりというお世話が待っています。そして仕事でやっているのならばその仕事辞めれば即座に終わるわけですが、自宅介護というのは終わりが見えない精神的にも相当つらいものです。

そうしたつらい介護を自分なりに受け入れ、自分のリズムで精一杯やるっていう著者の優しさというか、人間の温かみが伝わってきました。それにしても、この小説はいろいろと評判が悪いですね、慎太郎じゃないけれど。


ナイン・ドラゴンズ(講談社文庫)(上)(下) マイクル・コナリー

ハリーボッシュシリーズの14作目(ちょい役登場含めると18作目)で米国では2009年、国内(文庫)は昨年2014年に発刊されています。

ロス市警本部殺人事件特捜班に勤務している主人公ボッシュが今回はLAで起きた中国人店主殺害事件に絡み、チャイナマフィアと対決することとなり、LAから香港へと珍しく海外へ飛び立ちます。タイトルを見れば中国(あるいは香港)ってすぐに気がつきますね。

それもそのはずで、元FBIで別れた前の奥さんエレイナが娘と一緒に、プロのギャンブラーとしてマカオへ出稼ぎに行っていて、そのマカオからすぐ近くの香港に住んでいます。LAでチャイナマフィアと関わり始めたとたん、香港で暮らす娘が何者かに誘拐され、「捜査から手を引け」と圧力を受けます。

香港の描写はアメリカ人向けの観光ガイドっぽくはありますが、それはおそらく事前に取材旅行を楽しんだであろう著者の、限られた香港観光情報を散りばめたからでしょう。

もっとも香港の裏社会はそんなミーハーな観光客がいっぱい出入りするような場所で大切な人質を監禁したり、連れ回ったりはしないでしょうし、80年前ならいざ知らず、もはや開発しつくされてすっかり近代化されたワンチャイが銃器を手に入れる犯罪者の巣窟みたいに書かれてもって思わなくもないです。

ま、しかし臓器移植や性奴隷のための人身売買が、アジアでは日常的におこなわれているかのような描き方には、同じアジア人としてはちょっと引いてしまいそうですが、現実的にはそれが欧米人の標準的な理解なのでしょう。


エネルギー論争の盲点―天然ガスと分散化が日本を救う (NHK出版新書)  石井彰

3.11以降にあまた出てきた原子力発電に代わるエネルギー論の中の1冊で、その中でも割とまともという評判で買ってきました。

しかし著者のプロフィールを見ると独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に所属されていて、あーこれは石油や天然ガスの利益代表者としての意見だなぁってことを割り引いて読まねばなりません。

結局は筆者が仕事で関わっている天然ガスを利用したハイブリッド型発電(コジェネレーション発電)がもっとも効率がよく、日本においてはこれを推進していくべきと言う結論となっています。

ただそれを言うならば、やっぱりその肩書きが邪魔していますね。そういう組織に所属していると天然ガスに都合が悪い話しは書けませんもの。

人類にとってエネルギーとはなにか、どうやってそれを活用してきたのか、これからはどうしていけばいいのかを、一応専門的立場から、ややわかりにくい言葉を使って上から目線で教えてやろうという内容は、いいことが書いてあったとしても、読む人にとっては意見が分かれそうなところです。

電力会社が原発を推進したいがために、ロシアからの安価な天然ガスパイプラインを渋っているとか、国際標準よりずっと高い天然ガスを輸入しているとか、現在の政治と電力会社への批判は評価していいかも知れません。

あと再生可能エネルギーに関しては、発電効率と安定性に難がある風力や太陽発電ばかりを取り上げていますが、そうしたもの以外に本書ではまったく書かれていませんが日本に優位性がある地熱発電、そして廃材や廃棄する食料などを利用するバイオ発電など様々なものを組み合わせて可能性を高めていくのがいいのでは?と思いました。


横道世之介 (文春文庫) 吉田修一

2008年〜2009年に毎日新聞に連載されていた小説で、2009年に単行本、2012年に文庫化されています。また2013年にはこれを原作にした映画「横道世之介 」が沖田修一監督、高良健吾、吉高由里子などの出演で公開されました(見てないけど)。

小説の内容ですが、著者自身が生まれ育った長崎から法政大学に入学して東京で生活を始めたことをダブらせ、出会いと別れ、友情などの青春群像ってところです。

著者は1968年生まれですから、市ヶ谷にある法政大学に入学したのが1986年頃で、ちょうど狂乱のバブルが始まってきたところです。そりゃーその頃の4年間の大学生活はむちゃくちゃ楽しかったでしょうね。

そのバブルの頃の様子を知りたければ、馬場康夫監督の映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 」を見るに限りますが、とにかく老いも若きも日本中が悪魔に魅せられ高熱にうなされ、毎日がお祭り騒ぎの日々でした。

さてこの小説、ところどころに突然に現在というか、およそ20年後の登場人物の話しが出てきます。つまりストーリーとして展開しているのは80年代後半のバブル時代なのですが、主人公以外の登場人物の20年後が描かれ、「そう言えば横道世之介ってヤツがいたな」とふと思い出したりするわけです。

その主人公横道世之介の20年後はといえば、、、それは小説をお読みになってください。ハッピーエンドではないものの心温まる物語です。


【関連リンク】
 4月前半の読書 運命の人(1)(2)(3)(4) 山崎豊子、ゲーテ格言集 ゲーテ
 3月後半の読書 彼女がその名を知らない鳥たち、「人間嫌い」のルール、インターセックス、民宿雪国
 3月前半の読書 夏の庭、マリアビートル、さらば雑司ヶ谷、ドミノ
 2月後半の読書 和菓子のアン、リフレはヤバい、屍者の帝国、三匹のオッサン
 2月前半の読書 赤猫異聞、殺人鬼フジコの衝動、モップガール、 「意識高い系」という病
 1月後半の読書 殺し屋ケラーの帰郷、模倣犯(1)〜(5)
 1月前半の読書 羊の目、シティ・オブ・ボーンズ、日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率、ボトルネック、銀の匙
 リス天管理人が選ぶ2014年に読んだベスト書籍



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春は自殺者が多いという話し 2015/5/5(火)

919
5月に入りましたが、ここ数年の自殺の統計データを見ると、1年のうちで5月は自殺が多い月となっています。これは気候的なものが人の精神状態に及ぼす影響かなと思われますが、5月病という言葉もあり、ハッキリした原因は不明です。

4月に入学や入社する人が多く、その場合親元から離れて初めて1人住まいだったりしたり、今までとガラリと環境が変わりますが、それから1ヶ月が過ぎ、耐えてきた神経がまいってしまうというケースも多そうです。

なので、企業や団体の中で人事部に勤務をされている人は、そうした環境が変わった人、元気のない人、孤立しがちな人のケアをキチンとする必要がありますので、注意をしてください。

2013年、2014年のデータを元に、自殺の各種データ(注釈のないものは警察庁「自殺統計」)を集めてみました。

ご存じの通り、1998年から2011年までの13年間自殺者が3万人を超えていましたが、2012年以降は3万人を切り減少傾向にあります。


  出典:警察庁「自殺統計」より内閣府作成

2013年は男性18,787人(69%)、女性8,496人(31%)、合計27,283人(前年比2.1%減)、2014年は男性17,386人(68%)、女性8,041人(32%)、合計25,427人(前年比6.8%減)となっています。減少傾向にあることが少しでも救われます。

マスメディアでは「若者の自殺」ばかりに注目しますが、自殺者で多いのは圧倒的に中年以上です。

5歳以上から10年刻みの年代層で見ると、2012年の厚労省「人口動態統計」のデータですが、もっとも自殺者が多い年代は55〜64歳(3,491人)、次が45〜54歳(3,347人)、その次は35〜44歳(3,064人)、65〜74歳(2,641人)の順です。若者の15〜24歳は1,294人と中高年と比較すると半分以下です。

中高年者は若い人と比べて人数が多いじゃないかということもありますが、各年代層の人口で割った自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)で見ても50〜59歳がトップで29.0、次が70〜79歳と80歳以上の27.2、その次が60〜69歳の25.7となります。

若年層の自殺が目立つのは、各年代層で死亡原因を見てみると、若者の死因では自殺がトップに躍り出るからです。


  出典:厚生労働省「人口動態統計」

10〜14歳の死因1位は悪性新生物(癌や腫瘍)で、2位が不慮の事故、3位が自殺です。
15〜19歳、20〜24歳、25〜29歳の若年層の死亡原因1位はなんと自殺で、2位が不慮の事故、3位は悪性新生物となっています。
30〜34歳、35〜39歳の1位も自殺で、2位は悪性新生物となっています。
40歳以上からは死因のトップには悪性新生物が上がり、自殺は下位に落ちています。

つまり15〜39歳の死因のトップが自殺ということです。これは確かに衝撃的です。

15〜34歳の死因のトップをG7の国別で見ると、日本以外のアメリカ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダはすべて事故、2位はアメリカは殺人、イタリアは悪性新生物、その他は自殺となっています。

先進7カ国の中では日本は事故で亡くなる件数は他の国と比較して一番少ないのですが、自殺で亡くなる件数は飛び抜けて多く(自殺率ではドイツ、フランス、イタリア、英国の倍以上)なっています。

世界の主要国の中で、年齢を問わず、人口で割った自殺率(人口10万人あたりの自殺、2009年世界保健機関データ)で見ると、1位リトアニア(34.1)、2位韓国(31.0)、3位ベラルーシ(28.4)、4位ロシア(26.5)、5位ハンガリー(24.6)、6位日本(24.4)となっています。

自殺の理由・原因ですが、健康問題(13,680人)、不詳(7,027人)、経済・生活問題(4,636人)、家庭問題(3,930人)、勤務問題(2,323人)となっています。若い人に多そうな男女問題(912人)、いじめなど学校問題(375人)は自殺者全体からすれば少数です。

この話題を書こうとした元々の理由は、最近報道でよく目にする「介護疲れによる心中や自殺」が増えているのではないかなと仮説を立ててみましたが、統計上は「家庭問題」に含まれる介護関連による自殺件数が伸びているという判断はできませんでした。

老老介護で疲れ果て、自殺するケースは「家庭問題」もあれば、鬱や腰痛、認知症などを発症して「健康問題」として自殺するケース、また医療費や介護費がかさみ、「経済・生活問題」としてカウントされるケースなど、分散してしまっている可能性もあります。

自殺者の月別統計で、多い月の順は2014年は3月(2,313人)、5月(2,262人)、9月(2,257人)の順で3月がもっとも多く、次いで5月となりました。


  出典:警察庁「自殺統計」より内閣府作成

2013年は5月(2,542人)、3月(2,496人)、4月(2,383人)の順で、2012年は3月(2,588人)、5月(2,525人)、4月(2,437人)となっていて、1年の中では3〜5月あたりがもっとも多いようです。

曜日別では月曜日が一番多く、次いで火曜日となっています。逆に少ないのは土・日曜日、祝日、年末年始です。月曜日に自殺が多いというのは、「ブルーマンデー(憂鬱な月曜日)」という言葉があるぐらいですからなんとなくわかります。日本では「サザエさん症候群」なんて言われましたね。

都道府県別で自殺率(人口10万人あたりの比率)を見ると、2014年のデータでは、多いのが山梨県(30.3)、岩手県(28.9)、秋田県(26.4)、新潟県(26.1)、宮崎県(24.8)、富山県(24.7)、福島県(24.5)の順番です。全般的に東北が高いですが、地域によって特徴的な傾向があるわけでもなさそうです。自殺する人の年齢が全般的に高いことから、高齢化が速く進む東北や地方で高くなるのは当然のことと言えます。

自殺した人の職業は、無職(60%)、被雇用者・勤め人(28%)、自営業者(7%)、学生(3%)、不詳(2%)です。この無職の中にはリタイアした高齢者や病気療養中の人も含まれています。

被雇用者・勤め人(28%)の内訳を詳しく見ると、自殺率が高いのは労務作業者4.59%、技能工4.05%、サービス業従事者3.32%、専門技術職3.21%、事務員2.4%となっていて、逆に保安従事者0.84%、通信運輸従事者1.40%、販売従事者2.05%の自殺率は低いようです。

最後に介護と自殺に関係した話題を書いておきます。

いま心配しているのは、前述したように、「介護疲れによる自殺や殺人」などが今後高まってくるのではないかということです。

ちょっとアレではあるけど、真面目な話し参考になります。
VIPPER速報 『俺「あの、そちらの老人ホームに空きありませんか?」

俺「あの、そちらの老人ホームに空きありませんか?」
俺「はい。そうですか・・・130人待ち・・・」
老人ホーム相談員「今はどこも満室ですわ」
俺「空きが出るのは、いつ頃になりますか?」
老人ホーム相談員「実質的に入所不可能ですわ。単身の生活保護者や、路上生活者が優先的に入所になりますんで」
俺「そうですか。失礼します」
ガチャ
(中略)
福祉課職員「それで、生活保護を受けたいと?」
俺「はい。施設も空いてなくて、仕事ができない状態なんです」
福祉課職員「はあ。別に、どこもそんなもんでしょ。頼れる人に預けたらいいじゃないですか」
俺「え、でも、俺、一人っ子で、兄弟がいないし、親切づきあいもほとんどなくて・・・」
福祉課職員「友達とかいるでしょ?それに、付きっきりじゃないと死ぬわけじゃあるまいし。在宅サービスは受けてるんでしょ?」
俺「え、はい」
福祉課職員「ほら!じゃあ働けるじゃないですか。そんなことでいちいち生活保護なんて無理ですよ。辛いのは貴方だけじゃないんです」
俺「・・・」

こうしたことが今後30年ほどは珍しいことではなく、普通に社会の常識として起きていくわけです(現在進行形)。

介護施設はどこも満員ですから家族(子供)がいる場合は自宅介護をするしかありません。しかしそれは働き盛りの身分を捨て仕事を退職し、収入が途絶え、社会とも縁が切れるということです。

また夫婦間での介護の場合は言わずと知れた老老介護で、体力が衰えていく中、何年も先が見えない苦痛の日々が続いていくわけです。

それでいて、介護に疲れてうとうとしようものなら、そのちょっと目を離した隙に認知症の配偶者が徘徊し、電車に轢かれて死んでしまうと、鉄道会社から情け容赦なく損害賠償金を請求され、「ご無体な!」と裁判を起こしても「責任は目を離した介護者にある」と訴えを棄却されるというのが現実です。

社会がそういう仕組みになっていれば、介護疲れによる自殺や殺人事件がもっと一般化していくのは間違いないでしょう。


【関連リンク】
914 殺人事件の国際比較
850 少年犯罪は増加、凶悪化しているのか?
738 日本人の年齢別死因は
693 引きこもりが長期化する前にすべきこと
575 自殺者数と失業者数の相関関係
338 自殺者数が年間3万名を超えている意味


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お薦めの面白い小説(国内本) 2015/5/9(土)

920
現在自宅には私が大学時代の頃から買ってきて読んだ約3000冊の蔵書がありますが、そのうちの7〜8割は小説です。高校生までに読んだ本のほとんどは実家にあり、その後家を建て直すときに処分されているので残っていません。また読んだ本の中には図書館や知人に借りたものもありますが、それらはもちろん蔵書に含まれません。

文庫や新書、単行本など大きさは様々ですが、平均して1冊が400グラムとすれば、3000冊で小型車1台分に近い約1.2トンになります。現在は自宅の2階の1部屋にその8割方を置いていますので、書棚やその他家具等の重量と合わせ、大きな地震が来れば床が抜けないかちょっと心配です。

3000冊を18歳から今の58歳の40年で割ると、1ヶ月平均して6.25冊読んできた勘定となります。最近でこそ(割と暇があるので)月9冊ぐらい読んでいますが、20代30代の頃は仕事中心の生活であまり数は読めなかったことが影響しています。

多い少ないというのではなく、その3000冊(小説以外の書籍も多く含まれていますが)の中から自分で感じたお薦め小説を選ぶと言うことに意義を感じた次第です。

小説なんかを読むメリットがわからないという、ビジネス書や専門書ばかりを読む人が、特に若い人の中では増えているようですが、確かに小説は優れたビジネス書や専門書のように「今日からすぐに役立つもの」ではありません。

しかし長い人生の中において、様々な文化的な知識や背景、他人の考え方、行動、価値観を知り、人としての器を拡げたりと、ビジネス書にはない豊かな感性を磨き、人の感情の機微を知り、生きる上での知性をもたらしてくれるのではないかと思っています。

当たり外れがあるのは小説でもビジネス書でも同様で、Amazonの書評を見てもわかる通り、他人の評判などまったくあてにならないものですが、背中を押されでもしないと読まないって人もいるでしょうから、あえて私の個人的なお薦め小説を書いておきます。

まずは和書で著者名50音順です。最初、20冊ぐらいに絞ろうと思っていましたが、「これを入れてこれを入れないわけには・・・」とはじめると、結局86冊(作品)になりました。

予防線を張るわけではないのですが、消して文学的な評価が高いとか、有名であるからというのが選択基準ではなく、単に私が読んで面白かった、感動した、役に立った、後々記憶に残っているといった個人的なものなのであしからず。

・蒼穹の昴 浅田次郎
・壬生義士伝 浅田次郎
・心の旅路 阿刀田高
・追いつめる 生島治郎
・陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎
・海峡 伊集院静
・燃える秋 五木寛之
・メルセデスの伝説 五木寛之
・屍者の帝国 伊藤計劃・円城塔
・東京セブンローズ 井上ひさし
・靖国への帰還 内田康夫
・深い河 遠藤周作
・侍 遠藤周作
・沈黙 遠藤周作
・野火 大岡昇平
・感傷の街角 大沢在昌
・明日の記憶 荻原浩
・イン・ザ・プール 奥田英朗
・オリンピックの身代金 奥田英朗
・夜のピクニック 恩田陸
・まひるの月を追いかけて 恩田陸
・ワイルド・ソウル 垣根涼介
・トラブル・バスター 景山民夫
・山の音 川端康成
・みずうみ 川端康成
・それからの武蔵 小山勝清
・ベルリン飛行指令 佐々木譲
・昭南島に蘭ありや 佐々木譲
・警官の血 佐々木譲
・太平洋の薔薇 笹本稜平
・その日のまえに 重松清
・虚貌 雫井脩介
・項羽と劉邦 司馬遼太郎
・破戒 島崎藤村
・写楽 閉じた国の幻 島田荘司
・器に非ず 清水一行
・外食王の飢え 城山三郎
・黄金の島 真保裕一
・天上の青 曾野綾子
・成吉思汗の秘密 高木彬光
・懲戒解雇 高杉良
・燃える氷 高任和夫
・13階段 高野和明
・レディ・ジョーカー 高村薫
・永遠の仔 天童荒太
・長良川 豊田穣
・墨東綺譚 永井荷風
・神様のカルテ 夏川草介
・天の夕顔 中河与一
・こころ 夏目漱石
・三四郎 夏目漱石
・慟哭 貫井徳郎
・破線のマリス 野沢尚
・聖灰の暗号 帚木蓬生
・千日紅の恋人 帚木蓬生
・私が殺した少女 原りょう
・雨やどり 半村良
・晴れた空 半村良
・手紙 東野圭吾
・ガルーダ(神鷲)商人 深田祐介
・川の深さは 福井晴敏
・蝉しぐれ 藤沢周平
・テロリストのパラソル 藤原伊織
・空の城 松本清張
・氷点 三浦綾子
・午後の曳航 三島由紀夫
・豊饒の海(一)春の雪 三島由紀夫
・金閣炎上 水上勉
・にぎやかな天地 宮本輝
・ノルウェイの森 村上春樹
・二人静 盛田隆二
・トーキョー・プリズン 柳広司
・血族 山口瞳
・大地の子 山崎豊子
・丘の上の向日葵 山田太一
・あかね空 山本一力
・利休にたずねよ 山本兼一
・アイの物語 山本弘
・海に沈む太陽 梁石日
・軍旗はためく下に 結城昌治
・上弦の月を喰べる獅子 夢枕獏
・夏の庭 湯本香樹実
・出口のない海 横山秀夫
・三国志 吉川英治
・遠い日の戦争 吉村昭
・夜に忍びこむもの 渡辺淳一

一般書店には置いてない古い本や、絶版本も多く含まれています。中には著作権が切れて青空文庫で無料で(電子書籍として)読めるものもあります。

できるだけ現在の流行作家ではなく、長く読み継がれてきた、あるいは今後も読まれるであろう小説を選んでいます。もちろん個人的好みは色濃く反映しています。

こうして一覧にしてみると、記憶がだいぶんと怪しくなっているものもあり、また読んでみようかなと思ったり。いやいや、それはリタイアして毎日が日曜日になったときのために取っておこうかと思案しています。






【関連リンク】
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784 リス天管理人が選ぶ2013年に読んだベスト書籍
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もらえる年金の額はモデルケースとは違うということ 2015/5/13(水)

921
「老後資金にいくら必要か?」というお題は限りなく多くの人がそれぞれの回答を示していますが、「もらう人の前提条件があまりにも違いすぎて答えになっていない」というのが実感です。

年金は現役世代の頃に納めた厚生年金や国民年金の月数や、その金額などに応じて、移行期間はあるものの65歳から支給されるものですが、昭和の専業主婦と終身雇用の時代とは違い、フリーターや転職、独立起業、夫婦共稼ぎ、生涯独身など様々な働き方、生活の仕方があり、年金制度がそれに追いついていないということがあります。

例えば、よく年金の支給額に所得代替率という言葉が使われます。この所得代替率とは、「年金を受け取り始める時点(65歳)における年金額が、現役世代の手取り収入額(ボーナス込み)と比較してどのくらいの割合かを示すもの」とされています。

つまり政府が目指しているというモデル世帯の代替率50%(実質はもっと低くなる)として、現役世代の年間所得が平均して500万円の人なら250万円(月20.8万円)、800万円の人なら400万円(33.3万円)となります。年金年収が250万円の世帯と400万円の世帯では生活のレベルが大きく違ってきそうです。

またモデル世帯と比べて収入が多かった人(=年金をたくさん支払ってきた人)は、代替率は下がり(つまり減る)、少ない人は代替率が上がるとされています。つまり現役世代の年間所得によって、もらえる年金額をグラフ化するとそのグラフは直線ではないということですね。

多く稼いだ人がより多い所得税を支払う累進課税のような感じで、税を払うときも、そして年金を受け取るときも、より多く稼いだ人は(割合的には)損な役回りをすることになります。これが富の再分配ってやつでしょう。

そしてここで出てくるモデル世帯にちょっと違和感があります。昭和の中頃の高度成長期に考えられた仕組みなのでしょうが、ここでいう標準のサラリーマンモデル世帯とは、

・40年間厚生年金に加入し、その間の平均収入が厚生年金(男子)の平均収入と同額の夫と、 
・40年間専業主婦の妻がいる世帯


とされています。

40年と言うと、22歳で学校を卒業すれば62歳まで厚生年金に加入できる場所で働き続けるということです。

一見すると普通に見えますが、これから中高年世代になる人の中には、途中で起業をして数年間個人事業主となったり、リストラなどで一時的に厚生年金に加入していないパートやアルバイトで数年間働いている人、転職を繰り返してその間厚生年金に入っていない時期がある人も数多く出てきそうです。

なので今までは高卒や大卒で終身雇用が当たり前だったかもしれませんが、今後40年間厚生年金に加入しているというケースは敷居が高そうです。

それに加えて65歳の時点で40年間専業主婦だったという配偶者がいったいどれほどいるのか実態調査をしてもらいたいものです。仮に女性が結婚した後は専業主婦だったとしても、女性の結婚平均年齢は29歳ですから36年間にしかなりません。それに現在は共稼ぎと専業主婦の割合は半々で、今後は政府の方針もあり共稼ぎの世帯の割合が増える(生産年齢人口において)と思われます。

つまりほとんどありもしないモデル世帯で65歳から年間250万程度の年金がもらえますよという話しだけを聞いても、実態と違いすぎて、それでいったい自分の場合はどうなのか?とピンときません。

また他の「老後の蓄えはいくら必要か?」の前提条件として、大きく違ってくるのは、持ち家か借家かで、年間の支出額が違うのが普通です。住まいの地域によっても変わってきますが、ここでは大都市の郊外という設定にします。

ローン返済が終わっている持ち家だと、固定資産税や修繕費、火災保険、マンションなら管理費など含めだいたい年間20〜30万円程度の負担でしょう。老朽化による建て替えや大規模リフォームが発生する場合は別途必要になりますが、ここではカウントしません。

借家であれば、家族構成にもよりますが、夫婦だけの世帯でも、管理費や2年毎の更新費など含め年間150万円〜180万円程度が必要でしょう。よく借家なら「固定資産税や修繕費を支払う必要がない」というアホなこと言う人がいますが、単に大家が代わりに支払っているだけで、それを負担するのは借りている人、つまり家賃や管理費にしっかりと上乗せされているだけのことです。

借家のいいところは夫婦二人になれば、もっと安いところに住み替えられるというメリットがありますが、よほど不便な場所へでも引っ越さない限り、家賃が今までの半分になることはないでしょう。それに高齢になるとエレベーターのない3階とか4階の安い部屋は無理で、逆にバリアフリーが整った高い家賃のマンションへ引っ越しをしたくなる欲求が高まるかも知れません。専有面積は狭くなっても家賃は変わらないってことも考えられます。

年金年収が例え年間300万円あっても、持ち家で年間30万円(住居費比率10%)の負担で済む人と、借家で年間150万円(同50%)負担する人とでは、老後に必要な貯金額は大きく違ってくるでしょう。

そうした前提条件の違う人達をひっくるめて、「老後には貯金がこれだけ必要!」と書かれているわけですから、いろいろ読んでみると、いったいその試算はどういう根拠で?って思ってしまいます

結局は自分の想定年金額を調べ、同時に年間でかかる費用(水道光熱費、食費、修繕補修費、税金、保険代、医療費など)を12で割って、毎月平均いくらかかるのか?同居している子供がいれば年間どれだけ家にお金を入れさせるのか?など計算してみないと必要貯金額なんてわかりっこなさそうです。

今年59歳になる私のように中途半端な世代だと、63歳からもらえる年金と65歳から支給されるものとに分かれていて、本当に計算がややこしくて困ります。

つまり63歳で年金が出るなら引退できるかって言うと、その時にもらえる年期が年間数十万円で、とてもやっていけず、結局はフルにもらえる65歳までは、年金以外に収入が必要ということです。

もちろん60歳定年時に多額の退職金がもらえる人であれば、年金がフルにもらえるようになる65歳までそれを使ってしのぐことができますが、やはりそれだけでは心配でしょう。

最近になってようやく年金定期便の内容をチェックし、それとは別の企業年金基金の積み立てについても直接聞いて想定年金額を出してもらったりと、ようやく関心が高まってきました。

ちょっと遅すぎた感はありますが、老後に惨めな思いをしたくなければ、早めの計画が必要なのかも知れません。


【関連リンク】
888 火事と高齢化社会の因果関係
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
769 相続税の税率を上げると言うこと
680 サラリーマンなら関係ないが、国民年金の滞納率
617 人口減少と年金受給者増加
546 年金受給年齢の引き上げと高齢者雇用


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5月前半の読書と感想、書評 2015/5/16(土)

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大人の流儀 伊集院 静

2009〜2011年に週刊現代に連載されたエッセイ集で、それらから抜粋して2011年に発刊されました。そのせいか、その時代時代のニュースを元にしたネタも多く、残念ながら今読むと「そんな古い話題を取り上げても・・・」って感じを受けます。小説だと10年前でも30年前でも100年前のものでも楽しく読めますが、時事ニュースの多いエッセーにはどうも向きません。

例えば自民党で参議院のドンとまで言われていた青木幹雄氏が2010年に政界をスパッと引退したと思うと、その後任に自分の息子をしっかりと据えていたことに対し「そんな世襲政治をやっていたのでは自民党の復活は遠い」なんてことが書かれていますが、その後民主党の失敗などもあり、すぐに自民党は復権したことはご存じの通り。

著者は団塊世代の1950年生まれですので、2009年当時ほぼ60歳という年齢からして、大人が若い人に対して「大人の考え方」のアドバイスを送るというような内容・文章となっていますが、今の若い人にとってはやはり「そんな古臭い考え方を持ち込まれても・・・」となってしまいそうな気がします。

結局は同じ団塊世代や、私のように団塊世代と一緒に苦楽を共にしてきた(彼らの使いっ走りとも言う)人間が読むと、妙に納得できたり、そうだそうだと、若い人にはなかなか理解されない苦労を大人の言い分として自己弁護に役立てるものかもしれません。

もっともそうした週刊誌を読むのは若い人ではなく、団塊世代を中心とするオッサンばかりという現実もあり、それが正しい書き方でもあり、読み方だと思います。

厳しい感想を書きましたが、著者の書く小説は概ね好きで、すでに15冊を読んでいます。このエッセイが「大人の流儀」ではなく、天下の大女優で美女達夏目雅子や篠ひろ子をメロメロにして妻にまでした「男の器量」を自己分析した「自分の流儀」的なものであればもっと腑に落ちたのではないのかなとちょっと残念です。

最後の章で、夏目雅子との出会いと別れや現在の妻の篠ひろ子との関係について少し書かれていますが、ギャンブル好きで借金まみれの不良中年がどうしてこうもてるのかは謎のままです。

あとこの本の最初に書かれていた言葉は覚えておきたいと思いました。ネットの世界だけにこもっていたり、あまり積極的に外へ出たがらない若者に対してのメッセージと思えますが、逆に年老いてなにもする気が起きない人に対しても激励するいい言葉です。

"旅をしなさい。どこへむかってもいいから旅に出なさい。
世界は君や、あなたが思っているほど退屈な所ではない。"


そのときは彼によろしく (小学館文庫) 市川拓司

2003年に発刊されその後映画化もされた「いま、会いにゆきます」で大ブレークした作家さんです。この本は2004年に発刊、2007年に文庫化され、同年に平川雄一朗監督、長澤まさみ、山田孝之主演で映画化もされています。いわゆる甘く切ない恋愛映画になっているのでしょうね、見てないけど。

内容はアクアプラント(水草など)ショップを細々と販売するショップのオーナーのところへ、女性がアルバイト募集のチラシをもって雇ってくれとやってきます。しかも住むところがないのでこの店に住まわせてくれと。その女性がオーナーは知らなかったものの、有名なモデルであり女優で、周囲は驚きます。いかにもできすぎたストーリーですね。

一方で、オーナーが少年時代の短い一時期をともに過ごした仲のよかった同級生の話しを、結婚相談所で知り合った女友達にしています。やがてその子供の時に仲良くしていた同級生が、そのアルバイトに応募してきた女性だということに気がつきます。

しかしどうもその女性はなにか問題を抱えているようで、、、って、いかにも若い女性にはウケそうなストーリーで、きっと映画も涙を誘ったことでしょう。

なにか映像化を前提としたような物語で、その点がちょっとやらしい気もしないではないですが、ハーレクイーンシリーズが何十年も繰り返し生み出されているように、こうした事情を抱えつつもイケてる男と女が長きにわたって想い続けてようやく出会うっていうのは、ま、鉄板なストーリーなのでしょう。

日々の生活に疲れた人が、頭を空っぽにして甘い空想に浸れるという意味では害のない、いい小説ではないでしょうか。意外と言っちゃ失礼ですが、平凡な主人公に味がありなかなかおもしろかったですよ。


長生きすりゃいいってもんじゃない 日野原 重明、 多湖 輝

2010年に発刊された本で、ご高齢ながら現役医者の日野原重明氏と「頭の体操」シリーズのベストセラーで超有名人となった元大学教授の多湖輝氏、二人合わせて192歳(2015年5月現在)の長生き賢人コンビのコラム集です。

日野原氏は若い頃は病弱で、兵隊に志願しても丙で不合格となってしまうなど、そういう人が100歳を超えてなお元気にエスカレーターを使わずに階段を駆け上がるほど元気っていうのはまったくもって人間の体の不思議です。

もっとも太平洋戦争では若く血気盛んの健康体であればあるほど、人の寿命は短くなったのでしょうね。今後は若者が口の上手い老獪なる政治家や、権力になびきやすいマスメディアの巧みな誘導に騙されてそういう目に遭わないように願いたいものです。

さて多湖輝氏は押しも押されぬご高齢の重鎮でありながらも、この日野原氏にかかると子供扱いって感じがして(別にそのような扱いをしている訳ではなく)、いかに日野原氏の生き様というか、100年を超える人生が大きすぎて、共著でありながら敬意を払っても払いきれないって感じです。

多湖輝氏の「頭の体操」第1巻が出たのが1966年、私は9歳の頃ですが、家族が買ってきたこの本をその後何度も何度も繰り返して読み、続編も数冊買ってもらいました。今でもクイズ形式の質問と挿絵、ページをめくって回答と挿絵というパターンをよく覚えています。もしかすると私が本を好きになったきっかけの本かも知れません。

本書は二人のインテリ高齢者から、これから老人になる人に向けての人生の考え方を、自分達の経験を通して短いコラムでそれぞれに語っていくというパターンです。

なにか参考になることあったか?って聞かれると、「スーパーな爺さん、二人ともいつまでもお元気で!」って言うしかありません。お二人から見習いたいことは山ほどありますが、人間の出来が全然違うっぽいので、そりゃー参考にはならないよーと、タメ息一つです。

日野原氏が書いていたことでひとつだけ備忘録のため。
幸せとはなにか?身のほどを知ることが『希望』を手にし、幸せになる第一歩と言える。『願望』の中に生きるのではなく、『希望』の中に生きる。幸せはそこにある


カラフル (文春文庫) 森絵都

1998年に発刊された小説で、2000年には映画も制作されています。著者の本は今回初めて読みますが、デビューは1990年、当初は児童文学が多く、その後活躍の場を拡げ「風に舞いあがるビニールシート」で2006年上半期の直木賞を受賞されています。

ストーリーはファンタジー的な内容で私があまり好きではない(好んでは読まない)パターンです。主人公が死後に変な天使に出会って、くじ引きにあったからもう一度あんたの魂を地上に返してあげるっていうような奇想天外荒唐無稽波瀾万丈神出鬼没有名無実な物語です。

ま、それでも人気の作品と言うことで読み進めると、意外にこの主人公(死後他人の身体を借りて復活する中3の少年)の考え方が、ふざけた漫画のような小説にかかわらず、奇をてらわず、すごくまともな感覚の持ち主で、そんな物わかりのいい中学生なんかいるのか!ってひとりつっ込みながらも、それはそれなりに共感を覚えたり。

読み進めるうちに「最後はたぶんこうなるんだろうなぁ」「いやいやそれじゃあまりにも小説として芸がなさすぎ〜」って思っていたら、当初の想像通り普通に終わってしまい、ちょっと複雑な思いです。文庫で250ページ程度の軽い中編小説なので、あまり複雑な内容にできなかったということで仕方がないかな。


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ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか 2015/5/20(水)

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今年の4月は曇りや雨の日が多く、平年と比べて日照時間がかなり少なくなりました。農業王国の長野県を例にとると、4月1ヶ月間の日照時間が平年と比べて7〜8割という地域がほとんどでした。

日照時間や降雨量は穀物や野菜、果物の生育に深く関係していて、適正な成長ができなかったり育つ途中で腐敗してしまったりします。そのため4月はキャベツやトマトなど野菜の価格が高騰し家計に打撃を与えました。

こうした気候による生産量や品質の変化に対して昔から品種改良などによりかなり改善はされてきましたが、やはり大きくは自然環境に頼らざるを得ないという構造的な図式は変えられません。

しかしこれからの農業は、まだまだ変えられる余地がある分野として企業などから注目されています。

個人農家だと大規模な投資や従業員雇用などはできませんが、企業が乗り出すことによって今までできなかった取り組みが可能となります。

例えば「植物工場」があちこちで稼働し始めています。

一般的な電気照明を使った植物工場は流行もあって、すでに各地で拡がりを見せています。

あらゆる農業はいつか植物工場にたどり着く?

事業者「磐田、農業に最適」 大型野菜工場計画

今回注目したいのは、さらに先へ進んだ、日本には豊富な資源として存在する温泉熱と電気のハイブリッド型の植物工場です。

温泉熱とLED照明で「熱帯植物工場」、雪国でもバナナやコーヒーを栽培できる
岐阜県の北部にある奥飛騨温泉郷で、バナナやコーヒーを生産する植物工場が3月中旬から稼働している。温泉熱とLED照明を組み合わせて、室内の温度を一定に保ちながら光合成を促進する仕組みだ。温泉旅館の和室を改造した植物工場では、栽培に必要な電気代が月に1万3000円で済む。

上記工場は今までなら農業とはあまり縁のない北アルプスにほど近い奥飛騨温泉郷にある株式会社奥飛騨ファームが運営しています。ここでは単なる野菜ではなく多少付加価値があるものを栽培していて、これからの小規模な地方農業のあり方として全国で注目されているようです。

そのほかにも富山市や青森市でも同様の事業が始まっています。

■温泉熱+LED照明+太陽光発電で、エゴマを栽培する植物工場が完成

■小さな植物工場にもニーズあり、温泉熱や地下水熱を利用

日本には大規模農業に向く広大な平原は少ないですが、温泉や地熱は世界の中でも屈指と言える資源量を持っています。それに加えて撤退して空きになっている工場や、誘致するために開発した広大な工業団地の跡などがたくさんあります。そしてもっと言えば空き家になっている家には事欠かない状況です。

それらを有効活用しない手はないでしょう。

例えば温泉が出る場所の近くに地熱発電所を作り、そのそばに地熱発電で利用した地下温水を引いて365日24時間稼働の野菜工場を併設するとかなど朝飯前にできそうです。発電した電気はそのすぐそばで利用できますので効率もたいへんよろしい。

また遊休地があれば最近では太陽光発電パネルを並べて「さぁどうだ」と誇らしげにエコを歌っていますが、それだけでは仏作って魂入れずの状態なので、どうせやるならその太陽光発電で得られたエネルギーを利用する野菜工場をまず造って、その工場の天井や敷地内に太陽光パネルを敷き詰めるぐらいのことをやってもらいたいものです。

ほぼ全自動で完結してしまう地熱発電や太陽光発電だけなら地元にお金が落ちず誘致にあまり積極的でない地元自治体も、同時に野菜工場や加工工場が稼働することで、若い人や地元住民が働く場所が確保できるようになります。

地熱発電については過去に2度ばかり書いています。

■地熱発電大国への第一歩を踏み出したか?

■再生可能エネルギーについて

そうした野菜工場で生産する比率を高めていくことで、気候や病害虫の影響を受けにくくなりますので、アホも極まれりなカロリーベースの食料自給率などに一喜一憂していないで(野菜はカロリーが低いので現在のカロリーベースの自給率向上には向かない)、少なくとも野菜の価格安定化と自給率向上に取り組んでもらいたいものです。

数年前から糖質ダイエットを実践してみてわかったのですが、(慣れてしまえば)別に主食の米やパンなど食べなくても、おいしい野菜や果物、肉があれば、夕食の質は断然上がり豪華で満足度も高くなります。もちろん成人の食生活にとってもいいことこの上ありません。私は夕食に米はもうほとんど食べていません。

年齢にもよりますが、人口減と超高齢化社会になるということは、ますますカロリーが高い米など穀物の国内消費量は減っていくということに他なりませんので、米農家も決して安泰なはずもなく、それなら、より付加価値があって、しかも安定生産できる穀物以外の食料工場が、これからの日本では重要な食料政策のポイントとなっていきそうです。

それがうまくいけば、食料工場をシステムごと世界中で売ることが可能となり、それが日本の国際支援であり、また安全保障にも関わってくるのではないでしょうか?


【関連リンク】
816 2050年に向けてのグランドデザイン
747 農家の知恵はいまの熱中症を予防する
725 農業の大規模化と零細な起業
600 地熱発電大国への第一歩を踏み出したか?
438 生物多様性と絶滅危惧種について
437 日本は世界第5位の農業大国という事実


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高齢化社会で変形性股関節症が増加する 2015/5/23(土)

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少し旧聞になりますが、舛添要一東京都知事が4月に変形性股関節症で手術をおこない、約1ヶ月間入院、リハビリの後に公務に復帰をしたことがニュースとなっていました。

「バリバリ仕事したい」舛添知事が復帰
変形性股関節症の治療のため、約1カ月間の入院生活を送っていた東京都の舛添要一知事(66)が30日に登庁し、都庁での公務に復帰した。

なんでも舛添知事は、元々「持病の腰痛が悪化して、歩く時に痛みがひどくなった」と思いこんでいたそうで、診察を受けたところ初めて変形性股関節症と診断されわかったそうです。

そうして舛添知事は手術を受けることになったわけですが、股関節をチタン製の人工股関節へ置き換える手術をおこないました。

知事は現在66歳ですから、およそ15〜20年の耐久性があるという人工股関節を入れるには平均寿命を考えると適当な時期です。一般的には人工股関節への置き換えは耐久性と再手術の関係から、60歳を超えてから勧められることが多いそうです。

また置き換え手術をすると、リハビリも含めると入院が約1ヶ月近くかかりますので、普通の現役サラリーマンや個人事業主だとなかなかそれだけまとまった休みを取ることができず、仕事から引退して時間がとれるようになってから手術をおこなうという事情もありそうです。

私のようにまだ50代やそれ未満の人が人工関節を入れると、80代後半までの平均余命に達する少し前に人工関節の寿命が来てしまい、もう1度、しかも高齢でリハビリをする体力がない時に人工関節を入れ替える手術をすることになり不都合です。ただ最近は20年以上の耐久性があるとされるものが出てきて、40代や50代から交換を勧めるケースも徐々に増えてきているようです。

そうした中で、気になるアメリカからのニュースがありました。

45歳から64歳で、股関節の人工関節が急増、より高齢の層と比べて2.4倍のペースで増加
米国において股関節に人工関節を入れる手術が高齢者より中年層で急増しているようだ。加齢に伴う再手術の増加と医師不足が懸念されるという指摘が上がっている。

ま、記事をよく読むとアメリカでも日本の団塊世代に似たベビーブーマー世代というのがあり、その影響?という感じですが、同時に耐久性のある人工関節が拡がってきたということもあるのでしょう。

人工関節置換術とは(岡山労災病院)
一般に、その耐用年数は、15年から20年といわれています。そのため、今までは60歳以上を対象とした手術とされてきました。人間の平均寿命も延びてきてはいますが、人工関節の寿命も材質の加工技術や手術手技の進歩、インプラントデザインの改良や選択幅の拡大により、20年以上の超長期成績で語られる時代となってきています。本邦でも、欧米のように質の高い生活を望む傾向になってきているため、40〜50歳台でも、他に効果的な治療方法がない場合は人工関節がとりうる選択肢の1つとして行なわれるようになってきています。

実際のところは術後の関節の使い方や、置き換え手術の上手い下手によって、耐久性能は違ってくると思われ、最新の長寿命の人工股関節は、実際に使われ出してからまだ数年しか経っていないので、本当に20年あるいはそれ以上の耐久性があるかは実のところ不明とのことです。

私も今から10数年前から右足に体重がかかると違和感があり、膝かな?腰かな?と原因がよくわからず、病院へもまず親が罹っていたリウマチを心配して「リウマチ科」のあるクリニックへ。血液検査をしてそうではないとわかると、今度は総合病院へ行って問診の後、膝関節のレントゲン撮影。それも違うとなりました。

原因特定をあきらめていたら、芸能ニュースでダウンタウンの松本人志さんが「股関節唇損傷で手術」という話しをやっていて、その痛みの症状を読むと「あれ?この症状に近いかも!」と思っていろいろ調べてみると自分の中ではほぼこれに確定。

その後整形外科へ行き、今度は「股関節唇損傷ではないかと思う」と最初の問診で話しをしますが、問診にきた看護士さんはどうも疑い深い人でなかなか信用してもらえませんでした。「それはないでしょう〜」とか「違うと思いますよ〜」とか先入観?なのか私の見立てを否定していました。そうした土壌があるので、以前総合病院の整形外科へ行っても原因が特定できなかったのだなと思いました。

それでも「股関節の異常」という自説で押し切り、どうにか股関節のレントゲンを撮ってもらい、「股関節唇損傷」からさらに進んだ状態の、「臼蓋形成不全」そして病名としては明らかな「変形性股関節症」と正式に診断されました。

舛添さんも当初は自分で腰痛と勘違いされていましたが、それだけこの病気は痛みがなぜか腰から下半身全体に分散し、日によって痛む箇所が変わったりして原因が特定しにくいのです。それに加えて上述のようになぜか医療機関では証拠の股関節のレントゲン写真を見るまでは否定しがちのようです。

股関節唇損傷?
股関節唇損傷についての続編
ついに変形性股関節症の診断下る

この「変形性股関節症」、癌や白血病のように直接命に関わる病気でないだけに、いまいち有名ではありません。原因は股関節の軟骨がすり減って骨や関節が変形し、やがては痛みが出る病気で、軟骨を長い期間すり減らしてきた中高年者に多く、高齢化社会を反映してか国内の患者数は500万人にのぼると言われています。

まだ軽度の「股関節唇損傷」レベルであれば前述の松本人志さんのように、骨切り手術をして痛みをなくす方法もありますが、進行すると今回の舛添知事のように人工股関節へ置き換えをするしか痛みをなくす方法はありません。

日常生活では、初期から中期頃までは、座っておこなう仕事なら問題ありませんし、ゆっくり歩く程度は苦痛ではありません。それだけに病気と認知するのが遅れてしまい、私のように骨切り手術では済まない、かなりひどくなってからというケースが多いようです。

進行が進むと、片足の自由がかなり制限され、正座やあぐらで座れないし、平面な場所に座ると足の力で立ち上がれない、早歩きや走ることができない、足が上がらず登り階段がつらい、長時間の立ちっぱなしは非常につらい、横になって寝ていても痛む、寝返りがうてない、片足立ちでズボンや靴下をはけない、など生活上では不便を強いられます。私の場合イマココです。

杖とか持っていないと外見上は普通ですので、座るために通勤電車を1本待って、席を確保しても、目の前にいかにもな高齢者やお腹が大きい人が来ると、席を譲れ光線をまともに浴びることになります。特に最近のリュックを背負ったような元気な高齢者と、単に太っているだけか区別がつかないような太めの女性の積極的な席譲れ圧力は耐え難いものがあり、気の弱い私は黙って席を立つ羽目になります。

この病気は改善することはないので、私もいずれ痛みが限界まできたところで人工股関節への置き換え手術をしなければならないなぁっと記事をみて憂鬱に思った次第です。

最後に「人工股関節手術にどのぐらいの費用が必要か」ですが、手術・入院費用など総額で100〜200万円というのが目安とのことです。もちろんその費用全額を自己負担というのではなく、通常は健康保険に加入しているでしょうから70歳未満で負担は3割、さらに高額療養費制度があり、実質は200万円の手術でも所得により10〜20万円の負担で済みそうです。

舛添さんはVIP扱いでしょうから、一般の人と多少違うかもしれませんが、手術からリハビリの様子、そして退院までを舛添知事がツイートをしていて参考になります。

舛添知事のツイッター
舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月6日
4月2日に、変形性股関節症で傷んだ左股関節を、チタン合金の人工関節に置換する手術を受けました。手術は成功し、術後の経過も良好です。すぐに翌日からリハビリを開始。少しずつ足も動くようになりつつあります。頑張って訓練を続け、早期の都知事室復帰を目指します。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月9日
術後の経過も順調です。毎日、リハビリに励んでいます。歩行器を使って歩く訓練などを行っています。一歩、一歩の積み重ねが必要な根気のいる訓練ですが、着実に前に進んでいます。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月15日
手術から2週間が経ちましたが、順調に回復しています。毎日、厳しいリハビリです。人工関節にかえてみますと、筋肉といい、関節といい、いかに人間の体が精巧にできているかを再認識させられます。また、人間の体の再生能力にも驚いています。きちんと訓練を続け、一日も早い都庁復帰を目指します。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月15日
手術の傷跡を診た医師の許可が出て、先ほど、2週間ぶりにシャワーを浴びました。心身ともにスッキリです。入院すると、日常生活を平穏に送れることの素晴らしさを痛感します。幸い、食欲、お通じなども、術前の状態に戻りつつあります。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月17日
リハビリの成果で、数十mなら何とか杖なしで歩けるようにまでなりました。2020年を前に、都では国内初の「自転車推奨ルート」約200qを設定し、整備を進めます。自転車活用が私の公約ですが、これは政策実現の第一歩です。退院はまだですが、病室からも、東京世界一の戦略を指示しています。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月19日
リハビリ、「歩く」の次は、階段などの昇降訓練です。これが難題で、脚の筋肉一つ一つの機能を考えながら悪戦苦闘しています。一歩、一歩、訓練を積み重ねるしかありませんが、着実に前進していますので、希望が持てます。早期退院を目指して、さらに努力します。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月24日
階段昇降もOKで、リハビリも最終段階。人事を含め都政全般にわたって、病室から指示を出しています。また、将来の東京のグランドデザインも描いています。病院での残された訓練は、日常生活に不便ないように、適切な体の動かし方を身につけることです。元気に退院の日を迎えられそうです。

舛添要一 @MasuzoeYoichi 4月28日
午前中に医師の診察を受け、その指示に従って、先程、退院しました。4週間ぶりの外界の空気は新鮮です。歩行はしっかりとしていますが、人、自転車、車と、往来で注意することの多さには少し疲れます。30日から、都庁で仕事を再開し、内外の要人との会談もこなします。


【関連リンク】
759 糖質ダイエットについての備忘録その1
716 変形性股関節症は治らない
602 ついに変形性股関節症の診断下る
597 足(股関節)を痛めてできなくなったこと
589 股関節痛の時に読む本
433 股関節唇損傷についての続編
424 股関節唇損傷?


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最後の無頼派作家白川道氏逝く 2015/5/27(水)

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先月2015年4月16日に作家の白川道(しらかわ・とおる)氏が亡くなりました。
1945年10月の生まれですから享年69歳でした。

死因は東京都内の自宅で大動脈瘤破裂のため意識を失っているところを、同居している中瀬ゆかり氏に発見され、病院へ運ばれたが死亡したとのことです。

代表作は山本周五郎賞の候補となった「天国への階段」ですが、結局最後まで有名な賞とは無縁な作家さんでした。

   

自伝的な小説が数多くあり、その中にもたびたび登場してきますが、著者自身も一橋大学を卒業後、三洋電機や大手広告代理店など様々な仕事をしながら、麻雀や競輪などにのめり込むギャンブラーであり、株や先物取引など相場師でもあり、そして有名な投資ジャーナル事件に関わり、インサイダー取引やマネーロンダリングなどの罪で逮捕、3年の実刑で服役をしています。

ギャンブルにまつわる噂や借金も業界の中では有名だったとか。

ベストセラー作家・白川道さん訃報、「ギャンブルの借金どうする」とざわめく出版業界
麻雀、競馬などのギャンブルも好み、“最後の無頼派作家”とも呼ばれた。莫大な借金があるということも、出版業界内ではよく知られた事実だった。

そうした自分で直接関わったり、また近くで見聞きしてきた裏の世界や、自身の波瀾万丈の生活が他人からすれば面白くないわけがなく、服役中に初めて小説の書き方を学び、出所後に自身の経験などを元にして書いた「流星たちの宴」でデビューします。その後はおよそ2年に1冊ぐらいのペースで、脛に傷あるクールな男を描いたハードボイルド小説をいくつも出しています。

作家には昔から現在まで過度にギャンブラー好きが多いようで、菊池寛、柴田錬三郎、山口瞳、清水一行、阿佐田哲也(色川武大)、藤原伊織、伊集院静、黒川博行の各氏。ロシアの文豪ドストエフスキーもギャンブラーで有名です。浅田次郎氏も借金こそこさえてなさそうですが相当なギャンブラーです。

作家がギャンブラーになるのか、ギャンブラーが作家という仕事を選ぶのかは不明ですが、名門一橋大から大企業に入社して、コツコツと真面目に働いていれば20年後はきっと同社の幹部だったはずのところ(三洋電機が経営危機を迎えた2007年はすでに定年)、たった3ヶ月働いただけでさっさと見切りを付けてしまうところは、とても会社人間は勤まらないと悟ったのでしょう。

さて白川道氏の小説では、自伝的な大河長編シリーズものとして、 「病葉流れて」シリーズがあり、主人公梨田雅之が大学時代からギャンブルにのめり込み、やがては自分で会社を興して、裏の世界ともつながり、犯罪に手を染めていく過程が描かれています。

下記はシリーズの発刊日順ですが、デビュー作品の「流星たちの宴」は同じ主人公が登場しますが、シリーズ外という位置付けのようです。

流星たちの宴(1994年)
病葉流れて(1998年)
朽ちた花びら―病葉流れて2(2004年)
崩れる日なにおもう―病葉流れて3(2004年)
身を捨ててこそ 新・病葉流れて(2012年)
浮かぶ瀬もあれ 新・病葉流れて(2013年)
漂えど沈まず 新・病葉流れて(2013年)
そして奔流へ 新・病葉流れて(2014年)

こうした自伝的な小説は私小説とも言われ、川端康成の「伊豆の踊子」や夏目漱石の「道草」のように、ある一時期だけを切り出したものもありますが、少年時代から大人になるまでを大河ドラマ的にシリーズ化された小説は、尾崎士郎の「人生劇場」シリーズ、五木寛之の「青春の門」シリーズ、宮本輝「流転の海」シリーズ、花村萬月「百万遍」 シリーズ、伊集院静の「海峡」シリーズなどがあり、いずれもベストセラーとなっています。

いつも諸般の事情から文庫が出るまでは我慢して待ってから買ってきたので、実はまだ文庫になっていない「漂えど沈まず - 新・病葉流れて」と「そして奔流へ - 新・病葉流れて」は読んでいません。まもなく出るでしょうから、いま単行本で買うのも悔しいので、待っているところです。

その代わりというか、遺作となるであろう最新刊の「神様が降りてくる」(2015年3月20日刊)をご供養を兼ねて単行本で買ってきました。もちろん初版です。


   

そう言えば「ファントム強奪」や「情報クーデター」などで、活躍が期待されていた竹島将が1990年にオートバイ事故で亡くなったときも、それまでは文庫しか買っていなかったので、その時点での最新刊「破滅の日」を単行本で買ってきたことを思い出しました。


【関連リンク】
881 私立探偵ハードボイルド小説2つ
843 8月前半の読書(身を捨ててこそ 新・病葉流れて、浮かぶ瀬もあれ 新・病葉流れて
704 4月前半の読書(竜の道 飛翔篇)
607 5月前半の読書(冬の童話)
404 2010年6月後半の読書(最も遠い銀河 1巻 冬、2巻 春、3巻 夏、4巻 秋)
327 さらばスペンサー!さらばロバート・B・パーカー
269 ハードボイルド的男臭さ満点小説


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在宅派遣就労が拡がる可能性はある? 2015/5/30(土)

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労働者派遣法の改正が審議が国会で着々と進んでいるようですが、その話しはまた別の機会とし、今回は派遣就労の変化についてです。

元々70年代後半頃から始まった人材派遣サービスは、せっかく大学で学び、社会に出て高度な技能などを身につけながら、結婚して仕事を辞めて家庭に入ったり、出産で職場を離れると、元の職場や業務に復帰ができず、仕方なしに近所のスーパーでレジ打ちのパートなどをやっていた女性達に、身につけていた技能や経験を生かした高度な仕事に就くことで高収入が得られ、しかも家事や子育てと両立するため自分の都合のいい時間や期間で働ける道を切り開いたものでした。

利用する企業も70年代に数回起きたオイルショックで、業務の効率化や固定人件費の抑制を迫られ、変動費として即戦力を必要な期間(時間)だけ使えるという大変便利な仕組みでした。

そうした社会ニーズをうまくすくい上げて、バブル期に一気に拡大していったわけです。

ところが、近年の人材派遣というと、まるでアルバイトやパートのような派遣職種が増え、専門職ではなく単純労働にまで拡がってしまい、利用する企業側も「専門職を機動的に雇う」というものから、「単純作業は安い非正規」「景気の波に合わせて都合よく使う」という安易な人件費抑制構造に変化してきたことに問題が起きているように思えます。

それはともかく、これだけ世の中にネットが普及し、業務用のクラウドサービスやセキュリティ通信も安価になってきたことから、正社員の在宅勤務などがぼちぼち始まってきたことから、専門職に関して言えば派遣就業においても在宅派遣という新しい就業形態が生まれても決して不思議ではありません。

派遣社員、在宅勤務OK、パソナと日本マイクロソフト、導入を支援、ネット経由で労務管理(日経新聞)
両社が開発した労務管理ソフトと、日本マイクロソフトのクラウド型業務ソフトを連携させ、自宅での就労環境を整える。限られた時間や日数だけ働きたい人に新しい働き方を提供し、企業の人材確保の選択肢を増やす。


従来から在宅でもできる派遣(受託)業務と言えば、データ入力や筆耕、翻訳、議事録や講演会の録音起こしなどがあり、ハード面は10年以上前から整ってきたものの、ソフト面の個人情報漏洩や通信セキュリティ問題など、リスク管理上なかなか思い切った在宅勤務へのシフトは進んでいませんでした。

しかし発注する側も個人ではなく派遣会社に委託することで、責任が明確となり、リスクが軽減され、また通勤時間や交通費などの省力化、受け入れ場所が不要といった効率化で委託費用もそれなりにリーズナブルとなってくれば需要は拡大していくかもです。

小さなお子さんを抱えていたり、要介護者がいる家庭において、そのような在宅でできる仕事がコンスタントに受けられるようになると、双方にとってこのような働き方は意義のあることだと思われます。

もうひとつ派遣就労ではなく、独立した個人事業主としても在宅で受けるというパターンが増えてきているようです。

ネット時代の新しい働き方を育みたい(日経新聞)
ネットを使った仕事の発注は「クラウドソーシング」と呼ばれる。受注する個人は現在、150万人にのぼるとみられている。受注する内容は企業のホームページに載せる商品紹介文の作成や、広告チラシ、製品のデザインなどさまざまだ。仕事に充てる時間帯を自分で決められるため、子育て中の女性なども働きやすい。定年退職者も経験を生かせる。


ただしこちらはその個人にそれなりの実績や信頼がないと、仕事を得るのはそう簡単ではないでしょう。ちゃんとした企業が外注に依頼するとき、どこの誰かわからない、実績も本人のPRだけを信用することはまずないからです。

またこうした仕事が増えてくれば、中には悪どい発注者に騙されて、ちゃんと仕事をしたのに、支払ってもらえない、減額されるなど、トラブルも起きそうです。双方の言い分を公平に聞いてみると、責任はどっちもどっちっていうケースが多いのですけどね。

そうしたトラブルを少しでも回避するため、仕事の仲介者の立場と責任を明確にしておくとかが必要となってきますが、企業と個人ではどうしても個人が弱い立場になってしまいます。下請法などあっても実態は泣き寝入りすることが多いです。

また仕事を受ける人も、職場へ行って働く以上に納期の遵守や品質に気をつけないと、いい加減な気持ちで受けてしまって、「約束していた期限に間に合わなかった」とか、「ミスが多くて使い物にならない」といったようなことがあれば、二度と依頼されることはないだけでなく、大きなトラブルが起きてしまった場合、最悪は損害賠償など裁判沙汰になるケースもあります。

個人だからと言って、企業の仕事を請け負うことは、決して「暇つぶしで」とか安易な気持ちでやるべきことではないでしょう。企業を相手に長期間に渡る訴訟沙汰などが起きると個人はとうてい耐えられませんので注意が必要です。

そうしたリスクはあるにしても、やる前からなにかと恐れてばかりいては、人間進歩しないので、腕に自信があれば思い切って、まず派遣会社やクラウドソーシング会社などを通して、まずは副業で腕試しのつもりで週末の在宅の仕事をやってみるっていうのがいいでしょう。

そうしたところで実績を積めれば、やがては間に業者を入れず、直接仕事をコンスタントに取ってこれるようになるかも知れません。そうなれば副業を脱して本業とすることもできシメたものですが、外注というのは景気の変動や発注企業側の都合(方針変更や担当者異動など)で発注量が大きく変わってしまうので、そうしたリスクも考えておく必要がありそうです。


【関連リンク】
907 派遣法改正三度目の正直なるか?
865 仕事と介護の両立という難題
844 内職・副業詐欺など
834 高齢者向けビジネス(第4部 ボランティア編)
830 宅配ビジネスのラストワンマイル
824 高齢者向けビジネス(第3部 仕事編)
820 高齢者ビジネス(第2部 趣味編)
810 高齢者向けビジネス(第1部 居住編)




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