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リストラ日記アーカイブ 2013年9月
読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです
743 出版社不況の現状 2013/9/1(日)
744 8月後半の読書と感想、書評 2013/9/4(水)
745 名前、特に苗字についてのお話し 2013/9/7(土)
746 直木賞作家の前職は? 2013/9/11(水)
747 農家の知恵はいまの熱中症を予防する 2013/9/14(土)
748 9月前半の読書と感想、書評 2013/9/18(水)
749 TwitterとFacebookの現状 2013/9/21(土)
750 ツイッターこれだけはフォローしておけ 2013/9/25(水)
751 自動車事故と車種や装備の関係 2013/9/28(土)

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出版社不況の現状 2013/9/1(日)

743
日本にはほとんどの人が知らないというのを含めて多くの出版社がありますが、零細規模だったり資本的に不安定なところも多く、今までに数多くの出版社が倒産、廃業、休止を余儀なくされています。

しかし調べてみてわかったのですが、意外に出版社の倒産、特に大型倒産というのは少なく、他の業界、例えば建設業や不動産業、金融業、製造業、飲食サービス業などと比べてみるとこの長引く不景気の中でも不思議と大手出版社はつぶれていません。

理由をいくつか考えてみると、大手出版社は自社でビルなど不動産を持っているところが多く、人件費以外の経費はあまりかかず逆に出版以外の収入が得られていること、出版は昔のやりかたとは違い、発行部数が少なくても出しやすく、大きなリスクを背負うことがないこと、若い人が活字離れしても、その代わりにコミックやライトノベルはよく売れ、一方電子書籍の伸びは緩慢で、一気に書籍と置き換わりそうもないこと、比較的裕福な書籍好きな団塊世代がリタイアし、暇になって書籍をよく買ってくれるなどなど。

10年前なら倒産した出版社から発行されていた書物は廃刊となり、手に入れるのが難しかったのですが、Amazonのおかげで全国の古書店やリサイクル店からたいていの本は出品されており、簡単に手に入りやすくなったのは素晴らしいことです。

「ネットのせいで紙情報が主体の出版社が次々と倒産」と思いがちですが、意外とそうでもなく、2000年以前と2005年以降と比較しても年間の倒産、廃業件数はさほど変わりません。ネットが流行すれば出版社もいち早く体制を変化させたり、多様化することで生き延びていたり、逆に売れるコミックにシフトをしたり電子書籍などをいち早く手掛け、売上を伸ばしている会社もあります。

新聞の発行部数のピークは1997年でそれ以降はずっとダウントレンドですが、雑誌や書籍などを扱う出版社も影響がもっとも大きいのは「若者の活字離れ」ではないでしょうか。書店数も同様に1990年代後半以降ずっと減少しています。

出版社というのは一種読書や書籍の趣味が高じ、会社を作った、あるいは大手出版社に勤務していたが、大手では扱わない自分の好きな本だけを扱ってみたいという編集者が独立してみたいな個人商店規模のところも多く存在し、スポンサーが撤退、あるいは死去すると、そこで終わりということもありそうです。

また倒産や経営悪化後に、有志達や新たなスポンサーの元で新会社を設立して前の会社の事業を引き継ぐというケースもあります。河出書房が河出書房新社に、中央公論が中央公論新社へと「新社」と名が付く出版社はそういう所以があります。

下記は2000年〜2013年上半期までに業務委譲、活動休止、倒産、廃業して実質活動を終えた出版社の一覧です。

2000年
釣りの友社 自己破産
ペヨトル工房 解散
アクセラ 事業停止
青年書館 倒産
小沢書店 自己破産
博品社 廃業
柏樹社 廃業
マインド出版 廃業
葉文館出版 倒産
あゆみ出版 休業
飛天出版 自己破産
駸々堂出版 自己破産
2001年
同文書院 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続中
梧桐書院 民事再生法申請
十月社 倒産
長崎文献社 倒産
経営実務出版出版 業務停止
ティーツー出版 民事再生法申請
都市文化社 倒産
銀河書房 倒産
成星出版 倒産
2002年
柴田書店 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続中
勁文社 倒産
同朋舎 倒産
社会思想社 倒産
ワラヂヤ出版 破産
梧桐書院 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続中
あゆみ出版 破産
創樹社自己 破産
一粒社 廃業
さくら出版 破産
2003年
婦人生活社 破産
日刊工業新聞社 産業活力再生特別措置法の適用を申請。出版事業は継続中
デジキューブ 自己破産
光芒社(旧・丸山学芸図書) 廃業
ノースランド出版 自己破産
アップフロントブックス 事業停止、解散
アミューズブックス 事業停止、解散
シュベール出版 倒産
2004年
デル・プラド・ジャパン 自己破産
アルプス社 民事再生法の適用を申請。翌月にヤフーの子会社化、吸収合併され解散
美術公論社 廃業
大明堂 廃業
ギャップ出版 自己破産申請
東京布井出版 破産
2005年
ソフトマジック 破産
平和出版 任意整理
文献出版 解散
メタローグ 倒産
岩崎美術社 廃業
ぺんぎん書房 倒産
2006年
ビブロス 自己破産
ナウカ 倒産
アポロコミュニケーションなど3社 民事再生法申請、のち2007年にぶんか社の子会社化
続群書類従完成会 不渡り倒産
史輝出版 消息不明
アクタスソリューション 自己破産
経林書房 破産
碧天舎 自己破産
2007年
リーフ出版・雄飛 破産
英知出版 連鎖倒産
あおば出版 破産
桃園書房・司書房 自己破産
朝日ソノラマ廃業 朝日新聞社へ版権譲渡
エクスメディア 自己破産
山海堂 自己破産
アートン 会社整理
白鳳社 廃業
チクマ秀版社 解散
夏目書房 業務停止
英知出版 破産手続き開始
生活情報センター 破産手続き開始
嶋中書店会社 解散手続き開始
東京法経学院出版 民事再生法の適用を申請
司書房 破産
2008年
新風舎 破産手続き。事業は文芸社へ譲渡
草思社 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続。のちに文芸社の子会社化
はまの出版 自己破産申請
アスコム 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続中
大阪書籍 民事再生法の適用を申請。出版事業は継続中。日本文教出版に教科書の版権を譲渡
九天社 自己破産
日本洋書販売 自己破産
詩学社 倒産
マガジンファイブ 解散
雁書館 廃業
彌生書房 営業休止
歴史春秋出版 民事再生法の適用を申請
アーカイブス出版 民事再生法の適用を申請
スタジオ・セロ 破産
2009年
メディア・クライス(旧・バウハウス) 自己破産を申請
ユーリーグ 民事再生法の適用を申請。中心事業はいきいき株式会社に譲渡
雄鶏社 自己破産を申請
一橋出版 自己破産を申請
社会保険新報社 自己破産
エム・ピー・シー 自己破産
ゴマブックス 民事再生法の適用を申請
デプロ 自己破産を申請
草の根出版会 自己破産申請
ナイタイ出版 破産
日本聖書刊行会 解散
2010年
日本スポーツ出版社 破産申請
CCRE 民事再生法の適用を申請
一草舎 任意整理解散
工業調査会 事業停止
東京三世社 事業停止、廃業
理論社 民事再生法の適用を申請
KI&Company 倒産
コンシャスプレス 破産
民事法情報センター 解散
2011年
短歌新聞社 廃業
パロル舎 倒産
ブレーン出版 破産手続き開始
編書房 解散・廃業
講談社インターナショナル 解散
中央書院 破産
2012年
レッスンの友社 事業停止
武田ランダムハウスジャパン 倒産
どうぶつ社 廃業
オルディ 破産手続き開始
アメーバブックス新社 解散
エフ企画 業務停止
霞ヶ関出版社 廃業
学会出版センター 廃業
教学研究社 破産
工業調査会 破産
2013年
明文図書 自主廃業

その多くは一般の人にはあまり馴染みのない出版社ですが、個人的には2007年の「山海堂」、2009年の「ゴマブックス」が気になります。「山海堂」はクルマ関連の雑誌や書籍をよく購読していましたし、「ゴマブックス」は新書などで何冊か読んだことがあります。

「ゴマブックス」と「ごま書房(新社VM)」はよく間違われるようですが、元々はまったく関係のない会社で、一時期は事業の一部の譲渡を受けて「ごま書房」でゴマブックスを傘下に入れていましたが、経営悪化のため手放しました。

いずれにしても、書籍や新聞など紙媒体の電子化は、エコ(環境)や輸送配達コストの増加など長い眼で見ると避けられないわけですが、それには3年5年という短期中期レベルではなく、10年20年というゆっくりした長期的な変革となるでしょう。

だって今の老眼の入った中高年者が、今さら小さなスマホやタブレットの画面で新聞や書籍を読むなんて考えられません。その人達が新聞も書籍も読めなくなり需要がなくなるまでは、あと20〜30年はかかりそうです。


【関連リンク】
709 Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか
702 アマゾンジャパンは国内の小売り業を破壊するか?
698 世界と日本の書籍ベストセラーランキング


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8月後半の読書と感想、書評 2013/9/4(水)

744
遠野物語 (河出文庫) 柳田國男

柳田國男氏は明治8年生まれの民俗学者だった人で、島崎藤村や田山花袋、国木田独歩、南方熊楠などとも交流があり、埋もれてしまいがちな日本の各地に残るスピリチュアリズムを広く紹介した初めての人かも知れません。

その中でもこの「遠野物語」は有名で、岩手県遠野出身の民話蒐集家佐々木喜善氏が語る遠野に伝わる民間伝承を筆記・編集し、1910年に350部余りを自費出版したのが最初です。文庫にはこの「遠野物語」の他、「女の咲顔」「涕泣史談」「雪国の春」「清光館哀史」「木綿以前のこと」「酒の飲みようの変遷」などが収録されています。

内容は天狗、河童、座敷童子など日本の古くから伝わる妖怪にまつわる話しから、山人、マヨヒガ、神隠し、山霊、古くから伝わるしきたりなど多岐に渡り、極めて短い簡潔な文章で全部で119話あります。ただ119話といっても1話で完結するものばかりではなく、2話、3話でひとつの話しとなっているものもあり、読んでいるとどこまでが前の話と関わっているのか、全然関係ない話しなのかわからないときがあります。

もちろん今でも文庫として販売されていますが、すでに著作権は切れていますので、青空文庫で無料で読むことも可能です。

「遠野物語」の一部を大胆に引用してみましょう。

一七
旧家にはザシキワラシという神の住みたもう家少なからず。この神は多くは十二三ばかりの童児なり。おりおり人に姿を見することあり。
土淵村大字飯豊の今淵勘十郎という人の家にては、近きころ高等女学校にいる娘の休暇にて帰りてありしが、或る日廊下にてはたとザシキワラシに行き逢い大いに驚きしことあり。
これは正しく男の児なりき。同じ村山口なる佐々木氏にては、母人ひとり縫物しておりしに、次の間にて紙のがさがさという音あり。
この室は家の主人の部屋にて、その時は東京に行き不在の折なれば、怪しと思いて板戸を開き見るに何の影もなし。しばらくの間坐りて居ればやがてまた頻《しきり》に鼻を鳴らす音あり。さては座敷ワラシなりけりと思えり。この家にも座敷ワラシ住めりということ、久しき以前よりの沙汰なりき。この神の宿りたもう家は富貴自在なりということなり。

三一
遠野郷の民家の子女にして、異人にさらわれて行く者年々多くあり。ことに女に多しとなり。

三二
千晩ヶ岳は山中に沼あり。この谷は物すごく腥《なまぐさ》き臭のするところにて、この山に入り帰りたる者はまことに少なし。昔何の隼人という猟師あり。その子孫今もあり。白き鹿を見てこれを追いこの谷に千晩こもりたれば山の名とす。その白鹿撃たれて遁げ、次の山まで行きて片肢折れたり。その山を今片羽山という。さてまた前なる山へきてついに死したり。その地を死助という。死助権現とて祀れるはこの白鹿なりという。

五七
川の岸の砂の上には川童の足跡というものを見ること決して珍しからず。雨の日の翌日などはことにこの事あり。猿の足と同じく親指は離れて人間の手の跡に似たり。長さは三寸に足らず。指先のあとは人ののように明らかには見えずという。

八四
佐々木氏の祖父は七十ばかりにて三四年前に亡くなりし人なり。この人の青年のころといえば、嘉永の頃なるべきか。海岸の地には西洋人あまた来住してありき。釜石にも山田にも西洋館あり。船越の半島の突端にも西洋人の住みしことあり。耶蘇教は密々に行われ、遠野郷にてもこれを奉じて磔になりたる者あり。浜に行きたる人の話に、異人はよく抱き合いては嘗め合う者なりなどいうことを、今でも話にする老人あり。海岸地方には合の子なかなか多かりしということなり。

九十
松崎村に天狗森という山あり。その麓なる桑畠にて村の若者何某という者、働きていたりしに、頻《しきり》に睡くなりたれば、しばらく畠の畔に腰掛けて居眠りせんとせしに、きわめて大なる男の顔は真赤なるが出で来たれり。若者は気軽にて平生相撲などの好きなる男なれば、この見馴れぬ大男が立ちはだかりて上より見下すようなるを面悪く思い、思わず立ち上りてお前はどこから来たかと問うに、何の答えもせざれば、一つ突き飛ばしてやらんと思い、力自慢のまま飛びかかり手を掛けたりと思うや否や、かえりて自分の方が飛ばされて気を失いたり。夕方に正気づきてみれば無論その大男はおらず。家に帰りてのち人にこの事を話したり。その秋のことなり。早池峯の腰へ村人大勢とともに馬を曳きて萩を苅りに行き、さて帰らんとするころになりてこの男のみ姿見えず。一同驚きて尋ねたれば、深き谷の奥にて手も足も一つ一つ抜き取られて死していたりという。今より二三十年前のことにて、この時の事をよく知れる老人今も存在せり。天狗森には天狗多くいるということは昔より人の知るところなり。

一〇三
小正月の夜、または小正月ならずとも冬の満月の夜は、雪女が出でて遊ぶともいう。童子をあまた引き連れてくるといえり。里の子ども冬は近辺の丘に行き、橇遊《そりっこあそ》びをして面白さのあまり夜になることあり。十五日の夜に限り、雪女が出るから早く帰れと戒めらるるは常のことなり。されど雪女を見たりという者は少なし。


一七は座敷童
三一は山男
三二は山の霊
五七は河童(カッパ)
九十は天狗
一〇三は雪女

とまぁこのような内容が訥々と書かれています。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

傍聞き 《かたえぎき》 (双葉文庫) 長岡弘樹

「迷走」「傍聞き」「899」「迷い箱」の各短編小説を集めた作品です。どの作品もピリッとひと味もふた味も効いていてなかなかのショートストーリーに仕上がっています。うまいですねぇ。

「迷走」は逆恨みによって刺された検事を病院へ運ぶ途中、救急隊員が、なぜか病院へ搬送するのではなく、その周囲の道を迷走させた理由とは?「傍聞き」とは「かたわらにいて、人の会話を聞くともなしに聞くこと」の意ですが、その手法を使うと、話しが例え嘘でも真実味を帯びて聞こえることをうまく利用したトリックです。

「899」は近所のアパートに住む女性に恋する消防士が、その女性部屋で消火活動をするときの心理状態と意外な行動を。「迷い箱」は受刑者が社会復帰するまでの更生保護施設の施設長の女性と、そこを退寮していった元受刑者の気持ちを描いた作品となっています。

各編主人公は救急隊員、女性刑事、消防士、更生保護士と公務を職業とする人達ですが、これらの小説には多くと言うかほとんどの小説に登場してくる便利な精神異常者などは出てこず、なにげない日常に起きているテーマでうまくショートストーリーにまとめてあります。

そうしたショートストーリーでは、古くはサキの「サキ短編集」や、「賢者の贈り物」や「最後の一枚の葉」などを書いたO・ヘンリ短編集、比較的最近ではジェフリー・アーチャーの「十二の意外な結末」や「十二枚のだまし絵」などが秀逸な短編集です。

この著者の作品は今回始めて読みましたが、今後もチェックしていきたいと思います。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

九月が永遠に続けば(新潮文庫) 沼田まほかる

著者沼田まほかる氏(65歳)の経歴は変わっていて、団塊世代の女性らしく早く結婚するものの、やがて離婚、得度して僧侶になったかと思えば、建設コンサルタント会社の経営をし倒産。その後57歳で出したこのデビュー作「九月が永遠に続けば」が、道尾秀介氏「背の眼」に勝ってホラーサスペンス大賞を受賞するという快挙を得ました。

ストーリーはある事情で離婚した女性が主人公で、その主人公の高校生の息子がある日、神隠しにでもあったように忽然と行方を消してしまいます。その消えた長男を探し出す物語となっています。

主人公は別れた元夫が再婚した女性の連れ子と交際している男性と知り合い、やがて深くつき合うようになりますが、その男性が事故か事件か不明ながら駅のホームから転落して死亡します。それが長男の行方不明とタイミングが同じだったので、息子がなにかの事情でその男を突き飛ばして殺したのではないかと疑い始めます。

この小説でも、レイプ事件の被害者や、近親相姦に悩む姿など現代の精神的病巣についての話題が登場してきます。先日読んだ直木賞受賞作品、村山由佳氏の「星々の舟」でもそうでしたが、女性作家はこうした創作設定を比較的軽く扱い過ぎてヘキヘキしないでもないです。もちろん女性作家だけでなく売れっ子の東野圭吾氏の「白夜行」などでも、主人公の敵が次々とレイプされる設定などもありますから、女性作家特有のものではないのでしょうけど、なにか軽薄すぎて嫌な感じがします。

最近のミステリー小説、特にホラーというジャンルでは精神異常者やレイプ犯罪、幼いときの虐待の心的外傷後ストレス障害(PTSD)などが、お約束のように必須となっているとはいえ、そういうものに頼らない本格的なミステリー小説はないものかなと心待ちにしているところです。

この文庫の解説を読むと「登場人物はみなどこにでもいる普通の善良な人」と書いてありましたが、善良はともかく、子どもの頃から何度もレイプされたり、大人になってからもその時と同じような設定でしか夫婦の営みがもてないなんて普通の善良な人々ではないでしょう。

あと、主人公を支える近所の関西弁男が女性の恋愛心理を表すのに「遠野物語」から引用していてびっくり。しかし出ていたその内容「村の娘が栃の木に恋してしまい、舟を造るために伐採された木を追いかけて一緒に滝壺へ・・・」というお話し、同時に読んでいた「遠野物語」にはなく、似たような話しで「飼っていた馬に恋し、やがてその馬と結婚した娘さん」の話しはあったけどなぁと思って調べてみたところ、「遠野物語」の続編にあたる「遠野物語拾遺」にその引用された話しが出ていました。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

瑠璃を見たひと (角川文庫) 伊集院静

この作品は1992年に初出ということで、同年に直木賞を受賞した「受け月」の前後に書かれたものと推察がされます。また同年には篠ひろ子と再婚し(最初の妻夏目雅子さんは1985年に死去)、同氏にとっては絶頂と言える時期だったかもしれません。

主人公は神戸の名門資産家に嫁いだものの、満たされぬ思いを感じてある日突然夫を捨てて出奔します。そして亡き父親の遺言にあった「なにか困ったことが起きたときにここへ電話をしなさい」というの実行します。

そこには父親と若くして亡くなった母親の知人で、謎の中国人女性が待っていて、何も聞かずに住む場所や仕事を提供してくれます。そしてその女性に頼まれ、それを対で持つと富と権力が手に入るという伝説の彫刻を探しに香港、フランス、ベルギーへと旅立つことになります。

そこまでもなにかあり得そうもない不思議なストーリーですが、ここから後半にはいるとさらに中国マフィア、ナチの残党、囚われの身となったままでシルクロードへの旅、ジンギスカンに滅ぼされた西夏文明の遺跡と、奇想天外、斬新奇抜、空前絶後、荒唐無稽な話しがジェットコースターのように進んでいきます。ちょっと待ってくださいよねぇ、と言ったところです。

本のタイトルにもなっている瑠璃色とは「やや紫みを帯びた鮮やかな青」ということで、このストーリーでは探し求めるタオティエという彫刻に使われている翡翠の色と、北京の西千キロほどにあった西夏の都の遺跡に残る伝説の瑠璃色に光る湖などを現しているものと思われますが、読む前はもうちょっとロマンティックな物語を想像していました。

この小説の中には日本人はほとんど登場せず、主人公を含め日本に住む中国系、または華僑など外国に渡った人、元ベトナム難民などアジア系の人達ばかりです。悪役で日系ドイツ人などは出てきますが、ちょっと毛色の変わった登場人物ばかりでそこのところは面白く読むことができました。

著者別読書感想(伊集院静)


【関連リンク】
 8月前半の読書  MOMENT、星々の舟、パラダイス・ロスト、瓦礫の矜持
 7月後半の読書 氷の華、終わらざる夏(上)(中)(下)
 7月前半の読書 40 翼ふたたび、沈底魚、この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)(下)


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名前、特に苗字についてのお話し 2013/9/7(土)

745
「七音(どれみ)」「希星(きらら)」「火星(まあず)」「天響(てぃな)」など日本ではいわゆるキラキラネームというどうにも読み方が難しい(っていうか読めるわけない)名前が流行っているそうですが、今回はファーストネーム(名)ではなく、ラストネーム(姓)の話しです。

韓国では金、李、朴、崔、鄭の姓が圧倒的多数を占め、金姓は国民の21%以上、李姓も15%近くを占めています。同様に中国でも王と李の姓がどちらも全国民の7%以上を占め、それらの姓を持つ人の数はそれぞれ約9,000万人以上という多さです。

これらは元々姓の数が少なかったとだけではなく、姓を持つ歴史の長さが大きく影響しています。中国は世界でもっとも早くから姓を名乗った国で、それは今から5千年前にさかのぼるそうです。

つまり通常一夫一妻制の元では、一般的に夫婦が結婚後にはどちらかの姓を名乗り、片方の姓はその時点で消えてしまうことになります。

ある姓が他の姓より最初は少し多いだけでも、結婚して二つの姓がひとつの姓になっていけば、多い姓が少ない姓より残る確率が高くなり、それが数千年の単位で何百世代にわたって2つの姓が1つに集約されることが繰り返されるのです。そうすると最初から比率の高かった姓が、少ない姓を圧倒していき、やがては数種類に固定してしまいます。

日本の場合、私が子供の頃は鈴木姓が一番多いと言われていましたが、現在は佐藤、鈴木、高橋の順で多い姓のベスト3です。

そして1位の佐藤姓が全体に占める割合は、金姓の21%や王姓の7%には遠く及ばず、30万種とも言われる日本の姓の中で、せいぜい1.5%ぐらいですので、日本では姓を名乗る歴史はまだまだ始まったばかりと言っていいでしょう。

日本で国民すべてに姓が必須になったのは明治8年からと言われていますからまだ138年ほどです。世代で言えば25年ごとに世代が変わっていくと仮定すれば、その138年間で新しく世代が作られたのは5〜6世代ほどです。5000年と138年ではまったく比較しようがありません。

さて、30代から40代の頃には仕事関係や友人関係の結婚式に招かれることが多く、その時にしばしば思ったのは、「せっかく綺麗な苗字なのに、旦那のありふれた平凡な名前に変わってしまうのがもったいないな」です。

通常は結婚すると夫になる男性の姓になるケースが多いのですが、妻側の姓が例えばですが「白鳥」とか「清泉」「朝霧」「水流」のように割と珍しくしかも爽やかな姓だと、それがひとつ消えてしまうことがすごく残念な気がしました。

外国人が日本に帰化したり日本国籍を取得する場合、新たな姓を作ることがよくあります。特に日本国籍がないといろいろと不自由な芸能人やサッカーや相撲などスポーツ選手に多くみられます。

サッカー(元)選手では、三都主アレサンドロ(旧名Alessandro Santos)、ラモス瑠偉(旧名Ruy Gon*alves Ramos Sobrinho)、呂比須ワグナー(旧名Wagner Augusto Lopes)、相撲界では曙太郎(旧名Chad George Haaheo Rowan)、武蔵丸光洋(旧名Fiamalu Penitani)、高見山大五郎(旧名Jesse James Wailani Kuhaulua)、小錦八十吉(旧名Saleva'a Fuauli Atisano'e)、ラグビー界ではニールソン武蓮伝(旧名Brendan Neilson)、真羽闘力(旧名Feletiliki Mau)、野球界からもダルビッシュ有などなど。

こうした、新しく作られた姓が今後どのような変遷をたどっていくのか興味あるところですが、100年先はもちろん50年先のことも私には確かめようがないでしょう。

特にラモスとかニールソンとかカタカナの姓は極めて珍しいので、子孫はそれをどう感じとり、先の人生に生かしていくことになるのでしょう。日本人の人口減と移民政策によって100年後にはカタカナの苗字が珍しくなっているかもしれませんね。

あと、姓が新しく作られるケースとして、捨て子など親が不明のまま児童養護施設に預けられた場合、仮の名前(姓名)を行政府の長が定め、その名前で育てられ、その後養子などで新たな養父母の姓に変わらなければ、幼少の頃に付けられた姓名をそのまま使うことになるようです。

外国人が日本で産んだ子は、届け出をしなければ国籍が得られません。しかし不法滞在の外国人の場合、届け出をすると自分が不法滞在者であることがバレ強制送還されるので届け出をしないケースが増えています。そういう子は義務教育の学校にも行けず、親からも邪魔扱いされ虐待されがちになってしまいます。

日明恩氏の小説「そして、警官は奔る 」では、そういう子ども達を非合法で預かり、不法滞在の親が働いている間、子供の世話をしているボランティアに「羽川のぞみ」という女性が登場します。

なぜ非合法と知りつつ、そのような子どもの世話をするボランティアをおこなっているのか?と警官の主人公は疑問を感じますが、この女性、産まれてまもなく多摩川近くに捨てられているのを発見され、児童養護施設で育ったという過去がわかります。

つまり「羽田近くの多摩川で見つかり保護されたが、希望をもって生きて欲しい」という願いを込めて行政が付けた姓名と主人公は推測するのです。

いずれにしても姓は簡単に変えることはできません。特殊な例として、犯罪絡みなどで本名のままでは普通の生活がおくれないという場合に裁判所の許可のもと、姓名を変更することが可能なようですが、それは極めてまれなケースです。

過去には総理大臣にまで上り詰めた「田中角栄」と同じ名前を子供につけた田中という夫婦の子供。元総理はその後刑事被告人となり世間を賑わせ、同時に子供が学校の同級生達からその名前のせいでいじめられることになり改名したとか、神戸の少年が引き起こした凶悪な殺人事件のあと、少年院から社会復帰する際に、元の名前が報道され知れ渡っていたので改名して出所したなど。

近年ではネットの中で、良くも悪くも姓名がずっと残ってしまうことがあり、それが完全に消せない場合、それによって、進学や就職、結婚などに不利になるケースが起こります。そういう時に、裁判を起こしてでも姓名を変更したいという人が今後増えていく可能性がありそうです。ってもうすでに増えていても驚きません。

SNSは実名か匿名かという論争もよくありますが、実名の場合、例え自分にまったく非がなくとも、間違えられて犯罪者に祭り上げられたり誤用されてしまうことがないとは言えません。

大津市のいじめ自殺では、無関係な人が加害者の生徒の親と指摘され、それが一気に広まりました。そして一度書かれたものを間違いだからと言っても消してもらうには途方もない労力がかかります。

そういうのを見ると、あまりよく考えず、ムードや勢いだけでネット上に実名登録してむやみにプライバシィを公開してしまうのはどうかと思いますがどうでしょう。


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直木賞作家の前職は? 2013/9/11(水)

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小説家ならもらって損はない直木賞ですが、2013年上半期は、桜木紫乃氏の「ホテルローヤル 」に決定しました。おめでとうございます。

ちなみにその直木賞、受賞すると記念の懐中時計と副賞として100万円がもらえるそうですが、なんだか小説家にとっては最高級の栄誉にしては地味でケチ臭いような気がします。

「ノーベル賞」の約1億円はともかく、以前俳優の水嶋ヒロが受賞したことで有名になった「ポプラ社小説大賞」が2000万円、「江戸川乱歩賞」や「ホラーサスペンス大賞」「サントリーミステリー大賞」などが1000万円と、結構文学関連では高額賞金があります。

せめて日本一とも言える文学賞ですから副賞に1000万円ぐらいは出してもよさそうですが、受賞すれば大きなPRとなり、本が売れるからそれでヨシということなのでしょうか。

その桜木氏の経歴は少し変わっていて、裁判所でタイピストとして勤務した後に結婚。専業主婦の時に小説を書いて、直木賞は2回目の候補で見事に射止めました。

専業主婦からの作家デビューは川上弘美氏や久木綾子氏など最近割と多い気がします。そういう才能に恵まれた妻をもった旦那はとてもラッキーですね。私ならすぐに仕事を辞めて、主夫役と妻のマネージャー業務に専念しますね。

一般的には一流の小説家として認められるこの直木賞受賞者ですが、元々はどういう仕事をしてきた人が多いのかなとちょっと調べてみました。あまり古い受賞者まで調べるのは手間なので、1990年から2012年までに受賞した61人についてだけです。


第103回(1990年上半期) 泡坂妻夫 会社員・家業(絵師)
第104回(1990年下半期) 古川薫 教員・山口新聞
第105回(1991年上半期) 宮城谷昌光 出版社、家業(土産物屋)・英語塾
                芦原すなお 帝京短期大学講師
第106回(1991年下半期) 高橋義夫 出版社、広告会社
                高橋克彦 アレン短期大学専任講師
第107回(1992年上半期) 伊集院静 広告代理店
第108回(1992年下半期) 出久根達郎 古書店
第109回(1993年上半期) 高村薫 外資系商社
                北原亞以子 石油会社、広告制作会社他多数
第110回(1993年下半期) 佐藤雅美 週刊ポスト、週刊サンケイ記者、フリーライター
                大沢在昌 勤務歴なし
第111回(1994年上半期) 中村彰彦 文藝春秋編集部、出版部
                海老沢泰久 國學院大學折口博士記念古代研究所
第113回(1995年上半期) 赤瀬川隼 住友銀行、外国語教育機関、書店
第114回(1995年下半期) 小池真理子 出版社
                藤原伊織 広告代理店(電通)
第115回(1996年上半期) 乃南アサ 広告代理店
第116回(1996年下半期) 坂東眞砂子 フリーライター
第117回(1997年上半期) 篠田節子 八王子市役所
                浅田次郎 陸上自衛隊、婦人服販売会社経営
第119回(1998年上半期) 車谷長吉 広告代理店、出版社、旅館、料理人
第120回(1998年下半期) 宮部みゆき 法律事務所、東京ガス等
第121回(1999年上半期) 佐藤賢一 東北大学大学院フランス文学専攻博士課程、勤務経験なし
                桐野夏生 映画館、広告代理店、フリーライター
第122回(1999年下半期) なかにし礼 作詞、作曲、翻訳、舞台演出等
第123回(2000年上半期) 船戸与一 小学館、祥伝社、フリーライター
                金城一紀 勤務歴なし
第124回(2000年下半期) 山本文緒 勤務歴あり(不明)
                重松清 角川書店、フリーライター
第125回(2001年上半期) 藤田宜永 エールフランス、翻訳
第126回(2001年下半期) 山本一力 通信機輸出会社、近畿日本ツーリスト、コピーライター等
                唯川恵 北國銀行等
第127回(2002年上半期) 乙川優三郎 国内外のホテル勤務、会社経営や機械翻訳
第129回(2003年上半期) 石田衣良 広告代理店、フリーコピーライター
                村山由佳 不動産会社、塾講師
第130回(2003年下半期) 江國香織 勤務歴なし
                京極夏彦 桑沢デザイン研究所、広告代理店、デザイン会社経営
第131回(2004年上半期) 奥田英朗 プランナー、コピーライター、構成作家
                熊谷達也 中学校数学教諭、保険代理店
第132回(2004年下半期) 角田光代 勤務経験なし
第133回(2005年上半期) 朱川湊人 出版社
第134回(2005年下半期) 東野圭吾 デンソー
第135回(2006年上半期) 三浦しをん 外資系出版社、書店アルバイト
                森絵都 アニメシナリオライター
第137回(2007年上半期) 松井今朝子 松竹、ぴあ嘱託記者、脚本家
第138回(2007年下半期) 桜庭一樹 アルバイト
第139回(2008年上半期) 井上荒野 翻訳
第140回(2008年下半期) 天童荒太 映画脚本家
                山本兼一 出版社、編集プロダクション、フリーライター
第141回(2009年上半期) 北村薫 高校国語教師
第142回(2009年下半期) 佐々木譲 溶接工、自動車組立て工、広告代理店、本田技研工業
                白石一文 文藝春秋
第143回(2010年上半期) 中島京子 日本語学校、出版社、フリーライター
第144回(2010年下半期) 木内昇 出版社、フリーランス編集者、フリーライター
                道尾秀介 2社勤務(営業職)
第145回(2011年上半期) 池井戸潤 三菱銀行等
第146回(2011年下半期) 葉室麟 地方新聞社記者、ラジオニュースデスク
第147回(2012年上半期) 辻村深月 山梨県団体職員
第148回(2012年下半期) 朝井リョウ 東宝勤務中
                安部龍太郎 東京都大田区役所、図書館司書


調べ方は、Wikipediaや著者インタビュー、作品の著者紹介欄などからで、100%の信憑性はありません。また、複数の職業を経て作家となった方も多く、その場合は、私の独断でどこかに無理矢理に当てはめてみました。

まとめた結果は、61人の受賞者のうち、もっとも多かった前職は、他を圧倒して「出版社勤務」の13名(21.3%)でした。

出版社での勤務経験があるのは、山本兼一氏、朱川湊人氏、重松清氏、小池真理子氏、中村彰彦氏、宮城谷昌光氏、白石一文氏、三浦しをん氏など。

やはり出版社に勤めようと思う人は小説が好きな人で、そして才能とチャンスに恵まれるとやがては自分で作品を書いて小説家デビューするという構図ができあがっています。直木賞自体が元々は出版社が主催していた(現在は財団法人主催)ということもなじみ深いだけあって多少は関係しているのでしょうか。

次に多かったのは、「広告代理店」の7名(11.5%)です。これはちょっと意外な気がします。作家と広告代理店というのがすぐには結びつきませんが、広告のコピーライターやクリエイターが文章や作品で無から有を創り出すところなど、作家と共通する感性を必要とするのかも知れません。

「広告代理店」出身の直木賞作家としては、石田衣良氏、車谷長吉氏、藤原伊織氏、乃南アサ氏、伊集院静氏など。

その次に多かったのは、僅差で中学高校の国語教師や大学講師、塾講師など「教員、講師」で6名(9.8%)です。芦原すなお氏、村山由佳氏、熊谷達也氏、北村薫氏などです。

教員や講師の仕事は、朝早くから夜遅くまでびっしりと会社に拘束される民間企業のサラリーマンと比べると、割と自由時間があって創作活動に向いているのかもしれません。教員も休みなく働いている人もいるかも知れませんが、私の身近な知人や短絡的な知識だけの感想です。

それ以外では、順に勤務歴なし(5名8.2%)、公務員・団体職員(4名6.6%)、銀行員(3名、4.9%)、映画関連職(3名)などです。

銀行員というのは、どこも長時間働かされるのが普通ですから、その合間に小説を書いたり勉強するのは大変なことでしょう。しかし日本経済や金融の表と裏をかいま見る機会も多く、話題には困らないでしょう。

実は「出版社」とか「代理店」「銀行」のように色分けができない、その他一般企業出身者を合計するとそれが2番目に多く、例えば「法律事務所」(宮部みゆき氏)とか、「外資系商社」(高村薫氏)、「通信機器輸入や近畿日本ツーリスト」の山本一力氏、「自動車メーカー」に勤務していた佐々木譲氏など12名(19.7%)などです。そうしてみると、出版社出身者以外は、作家の前職についてはばらけています。

前職の変わり種としては、八王子市役所勤務だった篠田節子氏、大田区役所に勤務していた安部龍太郎氏、「アルバイトやフリーター」だった桜庭一樹氏や坂東眞砂子氏、調べたところ「勤務経験なし」の金城一紀氏、江國香織氏、角田光代氏、大沢在昌氏など。前職がないと「まずは勝手知ったる自分の得意な領域で」という作品が書けないので、これはもう無から創り出す創作の才能に頼るしかありません。すごいと思います。

そのまま勤めていればエリートビジネスパーソンとして安定した生活がおくれたであろう元銀行マンだった赤瀬川隼氏や唯川恵氏、池井戸潤氏、二足のわらじで受賞後に東宝に就職した朝井リョウ氏、三島由起夫自決のニュースを聞いて陸上自衛隊に入隊した浅田次郎氏なども異色です。

意外に思ったのは、文章を書くプロでもある新聞社の元記者は葉室麟氏ただひとりでした。ノンフィクションや時事コラムなどを書く元記者は多そうですが、直木賞を狙える小説となると分野というか必要とされる能力が違うのでしょう。昨今多くの新聞社記者が早期退職しているようですが、司馬遼太郎(産経新聞社)、井上靖(毎日新聞社)、松本清張(朝日新聞社)のように過去の経験を生かした創作小説で活躍してもらいたいものです。

あと、世間には現役医師の作家や大学教授のかたわら執筆されてる人は数多くいますが、直木賞に限ってはこの13年間にひとりもいません。


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農家の知恵はいまの熱中症を予防する 2013/9/14(土)

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今から45年ほど前、私が小学生の頃は夏休みになると母方の実家へ毎年泊まりがけで出掛けていました。

農家風景そこは住んでいた町からバスと汽車(電車ではなく)を乗り継ぎ約3時間以上かかる山の中の田舎ですが、母の実家を継いでいた母の長兄は学校の教頭先生というのと同時に広大な農地や山を引き継いだので大規模な農業を人を雇っておこなうというその地域では豪農と言ってもいい大きな家でした。

そんな家ですから泊まりに行っても部屋はいくらでも余っていて、また家の周囲の多くはその家の農地だったりするので、子どもが遊ぶのに困ることはありません。

しかしその地域は盆地と言うこともあり、夏場はものすごく暑く、農作業は明け方の早朝から午前10時頃まででいったん終わり、暑い日中は部屋の中でできる仕事をして、夕方にまた出ていくというのが大人達の日課です。そこの主(私にとっては叔父)は、行くときは教職員のお仕事は夏休み期間中なので、もっぱら農民という姿しか記憶にありません。

田舎での食生活は、自前の農地で栽培した野菜や、飼っていた鶏肉と鶏卵などがメインで、朝に畑で摂れたばかりの新鮮な野菜は味がしっかりしていて美味しかたことを子どもながらよく覚えています。

その野菜ですが、その家ではトマトにはウスターソース、スイカには塩をふって食べるのが流儀でした。また夏場には欠かせないナスやキュウリのぬか漬けには、醤油とすり下ろした生姜をつけて食べます。

スイカは「塩をまぶして食べると甘さが引き立つ」と今でもそうする人もいますが、最近のスイカは改良が進みそのままで十分甘くてその必要はありません。そしてスイカに塩の愛好家はたいてい年配者で、しかも元農家や肉体労働系の人です。

私はトマトもスイカもそのままで食べるのが普通だと思っていましたから、それらの様子は変に見えましたが、モノは試しと同じようにやってみたところ、やっぱり美味しいとは思えず、その風習に同化することはありませんでした。

田園子どもの頃には単に「変わった食の風習」ぐらいにしか思っていませんでしたが、今思えば、これは夏の農家の知恵で、暑い屋外で作業をする人達にとって、トマトやスイカを食べて水分を補給する際に、塩分も同時に取らなければそれこそ熱中症や日射病に罹ってしまうという、長い経験から身につけた健康法だったのでしょう。

スイカやトマトには水分補給とともに、ミネラル成分もたっぷり含まれていて、農作業などで多くの汗をかいた人にはそれと少量の塩やソースに含まれる塩分を一緒に食べることで、熱中症対策にはもってこいです。

またぬか漬けにおろし生姜をつけて食べるのは、夏場の栄養面と同時に、水道水は井戸水、トイレはくみ取り式、そして人糞肥料がまだ普通に使われている時代で、衛生環境が悪く、食材が傷みやすい夏場に、殺菌成分を含んだ生姜を最後に食べるというのが必然だったのかも知れません。

現代のように冷蔵技術が発展していない時代に生魚を食べる握り寿司に、殺菌効果の高い生姜やわさびが必ずついているのもそれと同様な考え方でしょう。

現在、我が家でも「夏にはぬか漬けを」と所望し、漬けてもらっていますが、その際にはおろし生姜(最近はチューブに入ったものが売られている)と一緒に食べています。若い人は臭いのきついぬか漬けに辛い生姜は苦手かな?と思いましたが、子ども達も結構気に入っているようで、親子で取り合って食べています。

ぬか漬けを始め発酵食品について詳しく書かれているのが、宮本輝著の「にぎやかな天地」という小説です。主人公が実家からもらってきた少量のぬか床のタネを毎日欠かさず大事にかき混ぜたり、捨てる魚の頭をぬか床の中に入れておくと、数日で分解され、跡形もなくなってしまい、ぬか漬けの風味が増すことなど、発酵食品全般にうんちくが満載です。


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735 遠い夏の記憶
729 まだかなえられていない夢がある
720 そして次男坊は希少価値を持つ
712 最近気になる食品の安全性


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9月前半の読書と感想、書評 2013/9/18(水)

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緋色の研究 (新潮文庫) アーサー・コナン・ドイル

1887年に発表されたシャーロック・ホームズシリーズの最初の作品です。

ワトソン博士が英国軍に軍医として入隊してから派遣されたアフガニスタンで負傷し、英国に戻ってくるまでの回想と、その後のホームズとの出会い、そしてアメリカ人が空き家で何者かに殺されるという事件がロンドン市内で起き、その謎を解き見事に犯人を捕まえるホームズの活躍をワトソン博士が記録として書いたという設定でこれがその後長く続くホームズシリーズの原型となりました。

これが書かれたときには、その後世界的な大ヒットをおさめ、長くシリーズ化され、何度も映画化され、世界でもっとも有名な探偵小説になるとは著者自身も想像もしていなかったでしょうが、今読んでも素晴らしい内容だと感心します。

この作品が発表された1887年といえば日本は明治20年、伊藤博文が初代内閣総理大臣に任命された(1885年)すぐあと、大日本帝国憲法公布(1889年)の2年前のことです。

ストーリーは、第一部としてワトソン博士の自身の紹介というか軍隊時代の回想の後、知人を通じてロンドンで部屋を探していたところ、ちょっと変わり者だがと断りをいれた上で同じようにルームシェアの相手を探していたホームズを紹介されますが、意気投合して一緒の家に住むことになります。その時も初めて会ったばかりなのに、軍医として南方へ行っていたことを当てられ驚きます。

ある日刑事からの使者がホームズを訪ねてきて、殺人事件の協力を要請されます。ホームズと一緒に殺人現場へ出向き、現場を鑑定し刑事にアドバイスをおくり、さらにホームズ自身が犯人に罠を仕掛けて、協力者を尾行するところまでいきますが、まんまと逃げられてしまいます。

手掛かりが消えて、どうするのかと思っていたら、別の推理を元に、犯人を自宅へ呼びつけることに成功し、鮮やかに捕まえます。しかしそれができた理由が、ワトソン博士や刑事達、もちろん読者にも、どうしてそれができたのか謎だらけです。

そこで第二部として、なぜホームズに犯人がわかったのか、この事件の裏に隠されていたものがなにかが説明されていきます。

その第二部はロンドンからいきなりアメリカのユタ州はソルトレイクで起きた過去の悲惨な出来事の回想となります。この小説の中では、当時の新興宗教だったモルモン教のことを悪の権化のごとくめちゃくちゃに悪者仕立てとしています。たぶんアメリカでは、当時でもそのままの内容で発表することはできなかったでしょう。

当時のモルモン教は一夫多妻を基本としていて、そのため妻となる若い女性が不足するので、あれやこれやと犯罪行為含めて若い女性を集めていたとか、上層部は世襲制で、露骨な特権が与えられていたとか、まるで日本で過去に問題となった新興宗教か独裁国家のように描かれています。

このドラマチックかつ壮大なスケールの探偵小説を、著者は英国内の数多くの出版社に持ち込んだものの、どこにも断られ、結局アメリカの出版社でようやくこぎつけました。

それを知ると、今や大ベストセラーとなってこの12月には映画化もされる「永遠の0」が、いくつもの出版社に持ち込んだものの、どこにも相手にされず、結果的に零細な出版社でようやく書籍にはなったもののあまり売れず、それが文庫化されてから口コミで拡がって大ブレークしたという百田尚樹氏のツイートを思い出しました。

出版社には時の権力者に対してはコメツキバッタのように頭を下げ、札束を思い描いたり数える能力はあっても、将来有望な新人を発掘し、育てようとする意識や、新しいことにチャレンジする能力は今も昔も、そして西洋東洋問わずないということでしょうかね。

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

眠れぬ真珠 (新潮文庫) 石田衣良

いや〜、まったくものすごいメロドラマでした。メロドラマってのが当たっているかは置いて、45歳の独身女性(不倫相手あり)と27歳の将来有望な映画監督の卵とのとろけるような恋愛ドラマです。文庫の解説に小池真理子氏が絶賛しながら書いているところなんかみてもやっぱりメロドラマですよ、これは。

出だしはこんな感じです。「北の空に開いた天窓を見あげた。星はない。夜空より一段暗い雲の影もない。濃紺のガラスを薄く切りだして、ななめにはめこんだ平面の空だった。仕事と少々のラブアフェア以外なにもない自分のような退屈な空だ。」

登場人物は、主人公の中年女性は自立している版画作家で、身よりはなく親が残してくれた逗子の家で1人住まい。主人公の不倫相手は銀座で雇われ画廊店主をやっています。この不倫相手の男が一見ちゃらんぽらんで嫌なヤツかと思いきや、なかなかいい味を出しています。

その不倫相手には主人公以外にももうひとり若い愛人がいて、それが小説にはいまや不可欠の要素となってきた感のある精神異常者。それにもう1人、主人公が年齢差を越えて恋をしてしまうのが、映画制作でトラブルがあり、今は逗子のカフェでウエーターとして働いている、いつも困ったような顔をしている若い男性。大まかにこの4人で物語は進行していきます(その他に脇役は何人もいますが)。

初出は2006年(文庫は2008年)で、以前にテレビドラマ化された作品「美丘」とほぼ同時期に書かれた作品です。

解説で小池真理子氏も書いていますが「男性作家は女性心理を、女性作家は男性心理を見事に書くことを要求される」を実践し、45歳で肉体の衰えを気にしながら、また更年期障害にも悩まされつつ、中年男性と若い男性の間で揺れ動く女性心理を見事に描ききっています。

世の女性なら一度はこういう恋もしてみたいだろうなと、中年オヤジの私が勝手に想像するのは反論など恐れず自由でしょう。

仕事や恋愛で日々の生活に疲れ切った独り身の女性にとって、この小説は一時とはいえ鬱憤を晴らす清涼剤として役に立つのではないかなと想像しています。50過ぎの平凡な毎日を淡々と過ごしているオッサンが読むにはちょっと刺激が強くてキツかったです。

著者別読書感想(石田衣良)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

ブエナ・ビスタ 王国記II (文春文庫) 花村萬月

花村氏の小説は過去に「笑う山崎」や「セラフィムの夜」「ゲルマニウムの夜」などを読みましたが、中でも自伝的小説の百万遍シリーズ「百万遍 青の時代」「百万遍 古都恋情」「百万遍―流転旋転」は自身の生々しい体験が詰まっているようで、きわどい描写もあちこちにありますがエンタメ小説として傑作と言える作品です。

著者の花村萬月氏は1955年生まれと言うことで私とほぼ同年代ですが、複雑な家庭で育ち、小学校から全寮制の福祉施設におくられ、高校は3日で退学という変わった過去の持ち主です。その著者も今や作家として大成功を収め、京都の花園大学で客員教授を務めるなど名士と言ってもいいでしょう。

この「ブエナ・ビスタ 王国記II 」は1999年に単行本が発刊されています。1998年に出版された芥川賞受賞作品「ゲルマニウムの夜」の続編にあたるもので、著者の子供の頃に入園していた福祉施設が舞台となっています。「ブエナ・ビスタ」と「刈生の春」の2編が収録されています。

「ゲルマニウムの夜」では福祉施設から逃げだし、人を殺してしまうことになり、その後、警察の手が届かないカトリック系の救護院へと舞い戻ってきてからも、神への冒涜をし続ける生活が綴られています。

内容的には「ゲルマニウムの夜」ほど刺激的でも活動的でもありません。どちらかと言えば、少し落ち着いて、福祉施設の中で精神社会に対する反発を身体の内に貯め込んでいた一時期だったのかもしれません。

著者別読書感想(花村萬月)

  ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

心に龍をちりばめて(新潮文庫) 白石一文

2010年に「ほかならぬ人へ」で父親の白石一郎氏と同様、直木賞作家となった著者の2007年の作品です。

この著者の作品も女性を主人公とした作品が割と多いのですが、先に読んだ石田衣良著の「眠れぬ真珠」と同様に、中年に足を踏み入れた独身の美しい女性が主人公です。

2006〜2007年頃というより、そうした設定は、ハーレクイーンズシリーズのように、現代においては女性の読者層にウケがいい永遠のあこがれのテーマなのでしょうかね。 

主人公がまだ2歳の時に目の前で未婚の母親が自殺してしまい、児童養護施設からある福岡の一家に引き取られ養子として育てられます。その後ひとりで東京に出て、フリーのフードライターとして自立しています。

主人公が里帰りをした時に、幼なじみで、子供の頃に親を亡くし似た境遇だった男性とバッタリ出会います。その幼なじみは、背中に龍の入れ墨を持つ元ヤクザで、現在はヤクザ家業から足を洗い、田舎町で焼き鳥チェーン店を経営しています。

主人公の女性には新聞社に勤務する資産家の家系でエリート男性の恋人が東京にいます。

しかしその男性が政治家を目指すことになり、自分が今まで築き上げてきた仕事を捨てることに抵抗があるのと、過去に一度裏切られた経験から「一度裏切った人は二度裏切る」という思いがあり、また男性の両親とは肌が合わないことで悩みます。

恋愛小説とも言える小説ですが、自殺、養子、愛人、麻薬、暴力、ヤクザ、婚約破棄など、ストーリーは結構重く暗い内容です。しかし最後のワンシーンで少しは気が楽になった思いがしました。これだから白石一文氏の小説はやめられないんですよね。

著者別読書感想(白石一文)


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TwitterとFacebookの現状 2013/9/21(土)

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ネットの文化についてあれこれ言うほど知識も研究熱心でもないのですが、身近なところでのTwitterとFacebookについて自分の考えるところをひとくさりしてみます。

私がネットと関わり始めたのは、いわゆる草の根BBSが全盛を迎えようとしていた1990年代初頭の頃で、OSはまだMS-DOSが主流でした。

なので、ネット史を語れと言われると、若い人が書籍などで得る知識と違い、生の経験談を語ることができますが、もっと真面目に講釈できる50代、60代の著名人も多いでしょうからここではやめておきます。

また私の場合は仕事で関わっていたわけではなく、ほとんど遊びや趣味、それと将来のビジネスのヒントが得られないかなとぼんやりと考えただけだったので、深い知識や技術的なことはわからず、単にコミュニティに出入りしていた1ユーザーに過ぎません。

さてその後Windows95とIEの登場により爆発的に普及を始めてきたネット文化ですが、初期の頃の静止画とプレーンテキスト主体のWebサイトから、Web2.0を経由して様々な新しい技術が次々と登場し発展してきました。

しかしまだまだだなぁと思うのは、Googleの登場により検索結果の絞り込みがかなり進歩してきたものの、まだ目的とする結果を引き当てるまでには時間や労力がかかりすぎていることや、各サイトの作り方が変に凝っていたり、Webデザイナーのひとりよがりか、そのサイトの中から目的のページにたどり着くのにイライラするぐらい時間がかかったりすることがよくあります。余計なものを廃しもっとシンプルにできないものかといつもひとり文句をつぶやいています。

いくらハードディスクの値段が安くなり容量が大きくても気にしなくなったり、ネット接続のスピードがあがったとは言え、不必要な場所にまで単なる見栄え重視の動画などは目障りなだけなので、調べ物をするサイトまでいちいちそれらを挟まないでもらいたいと思ったことが何度もあります。

ひどいサイトの代表例では一般消費者向けの製品を販売している大メーカーのサイトで、過去の製品の補修品パーツを調べるためにたどり着くまで10回ぐらいクリックしなくてはならず、そしてたどり着いた後も、他の別の製品を見るため一度戻るごとに巨大なFlash動画が動き出し、すぐには次の操作ができないときています。こういうユーザー無視がにじみ出ているメーカーの製品は二度と購入したくなくなります。

そうした意味のない動画の多用など、Webビジネスに慣れていない後進的な会社ほど、見かけ倒しで使い勝手の悪いWebサイトを運営しているようです。

あ、ぁ、TwitterとFacebookの話しでしたね。うっかり別の方向へ行きそうでした。

まずTwitterとFacebookですが、「Twitterバブルの終わり?」に書いてあるとおり、気まぐれで飽きっぽい若者達は5年ほど前からmixiや2chから大量に移ってきましたが、それも今やLINEなど新しい場所への移行が進んできているようです。


栄枯盛衰、盛者必衰のことわりを引いてくるまでもなく、その伸びは一時期よりも鈍化しています。やがてはLINEをはじめとする新しい他のSNSに多くの関心が奪われていくことになるでしょう。下記の活用者人口推移で10年ほど前は他を圧倒していたmixiの凋落を見ていてもそれがよくわかります。

主要SNS活用人口推移
 株式会社リスキーブランド実施の生活意識調査より抜粋

そして現在驚異的な伸びのLINEも数年後にはまた違ったSNSに利用者が移行し始めていても不思議ではありません。

実は私、恥ずかしながらまだLINEはやっていません。モバイル(携帯)が使った分だけ支払う従量課金の契約なので、基本的には電話を受ける専用で、ネットのツールとしては活用していません。したがってTwitterもFacebookもモバイルでは使わずもっぱら旧世代といわれるPCでの利用です。

よく考えると、こうした新しいネットやSNSの流行を作るのは、生み出すのはビジネス(社会人)の場であったとしてもそれを使う(使いこなす)のは多くの場合、学生達や社会人になりたての若い人達が中心です。

その学生は毎年入れ替わっていきます。つまり社会人になるとそれが20代でも30代でも40代でも毎日通勤して昼間はずっと会社や工場で働き、週末にレジャーを楽しむと、やっていることにさほど違いはないのですが、学生達は違います。

この中学生〜大学生までの約10年間に所属する人達は、プライベートにおける友人や知人とのコミュニケーションの量は社会人の比ではなく、それこそ朝から寝るまでのあいだずっと誰かとつながっていることを求めます。社会人ならプライベートなコミュニケーションができるのは、せいぜいアフター6や休日だけのものでしょう。

その入れ替わりの激しい学生(12〜22歳)の人達が直感的にいいと思うものがSNSの主流に躍り出るわけで、これは40代以上の社会人がいくら熱心に研究したところで容易に創造できるようなものではありません。

さて、私も割と熱心につぶやいているTwitterですが、最近目に付くのが「自己主張の強さ」です。SNSでは割と知人に気をつかっての発言もありますが、不特定多数の相手に対しては、極端に態度が変わり多くの人が「俺様」に変貌します。そしてその発言には「俺の考えにケチつけるヤツは許せない」「俺の考えが常に正しい」という勝手な思い込みの自己主張です。

Twitterなんて元々そういうものだと考えればいいのですが、それも度が過ぎていくとその人やその人の周囲にいる人すべてが信用がおけなくなってきます。下手をすれば人間不信に陥りそうです。

2年半前の原発事故以来、原発容認派と反対派の間でその風潮は一気に高まり、尖閣・竹島問題による日中・日韓関係の悪化、民主党政治の混乱、昨年末の衆議院選挙、今夏の参議院選挙と、特に政治・思想・人種的な過激な発言がTwitterで多くなってきています。もううんざりしている人は私を含め少なくないでしょう。外国ではそれにおそらく宗教が加わるのでしょうね。

自分の思いを主張することは全然かまわないのですが、一国の総理大臣や選挙民から付託を請けた議員など公人に対し、失礼千万で多くの人にわざと誤解を与え貶めるような発言は見ていて気持ちがいいものではありません。発言者が誤認していることを理解していない可能性もありますが、まだそういうネットリテラシーの低い人達の声が大きいと言うのも情けない話しです。

そうした他人を誹謗中傷することや人を貶めるためなど、そして一部で「バカ発見器」と揶揄されるような、本来の目的とは違う手段として使われることが増えてきたTwitterは、やがてはまともな感覚をもった人達から見放され、シュリンクしていくのではないでしょうか。

そしてまた、まっさらで上品なSNSが新たに登場し、そこでも数年間はまともな会話や気の利いたジョークが飛び交い、そして普及するにつれて荒れ始め、同じ運命をたどるというサイクルが繰り返されることになります。

個人的にはTwitterはとてもよい情報ツールで、あの大震災が起きた日、電話やメールがつながりにくい状態だった時も、唯一と言ってもいい連絡可能手段で、しかもテレビやラジオよりもリアルタイム性があり、使い方によってはたいへん便利です。あの混乱のさなかに偽の救助要請を書き込む愚かな人も混じってましたが、基本的には整然としてリアルタイムの情報(どの電車が動いているとか、どの道が混雑しているとか)が取得できる役割を担いました。

またフォローする相手を選べますので、自分の気に入らない発言をする人を次々とリムーブ(フォロー解除)していけばいいという考え方もあります。しかしそれもあまり度が過ぎるとおとな気がないのと、自分の耳に心地よい発言だけを集めていると、それもちょっと情報や考え方に偏りが出てしまうなぁと躊躇います。

しかし過激で不愉快な発言が増えてくると、やがてはそうせざるを得なくなり、それが結果的には自分の意見と違う人を排除し、攻撃してたたきのめし、周囲から追い出すようにと過激化していきます。そしてそれに成功した(と思い込んで)「俺様」ばかりが醸造されていくという流れにになってしまいます。

Facebookの場合は本来は実名主義をとっていますので、積極的に使う人は限られています。もちろん匿名でも参加が可能ですが(一時期は明かな匿名の場合、アカウントが停止されることもありましたが最近はあまり聞きません)、匿名でやるなら知人同士がつながるというFacebookの意味や価値が相当失われてしまいます。

つまり自分からだけ知人など他人を捜す(実名で検索)ことはできますが、他人から自分を探し出すことは不可能になります。これもある意味「俺様」主義で、自分さえよければOKという考え方です。

私の場合、Twitterは匿名で使っていますが、Facebookは実名で参加しています。ただし最初の頃はすべてオープンにしていましたが、まったく知らない人からも友達リクエストが送られてきたり、スパムのような広告案内がたまってきたので、現在は友達として許可をした相手しか中身を公開していません。もし本当の知人であれば、実名での検索はできますから、申請さえしてくれればその人に公開するという流れを作っています。

たまに「家族や会社の上司などに見られると嫌だから」と言ってFacebookの実名登録を嫌がる人がいますが、中身の公開はすべての人にオープンにする必要はないので、そういう使い方を知っていれば実名でできる便利なSNSだと思います。

Facebookで困るのは、しばらく使っていないと次々と新しい機能が追加されたり表示画面が変わり、直感的に軽く使えるTwitterとは違って、ある程度の知識が必要ということでしょう。私自身、あまりメインには使っていないので、人に使い方を説明できる知識はありませんが、もう20年近く会っていない懐かしい知人とFacebookで連絡が取れ、会って近況を話し合うことができたり、サブ的なSNSとして活用しています。

もし独立してなにか仕事を始めたならば、ホームページをこのFacebookで活用することもでき、使い方はひとそれぞれですが、原則実名主義をうたっているだけあって、日本の伝統的な匿名参加に今後どこまで風穴を開けられるか注目しているところです。


【関連リンク】
662 SNS上での実名主義と匿名主義
622 iGoogleがサービス終了とのことで困った
525 転職にSNSは有効なのか?
429 twitterについてその3か4


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ツイッターこれだけはフォローしておけ 2013/9/25(水)

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前回に続いてTwitterの話しです。今回は「これだけはフォローしておけ」と私が勝手に推薦するフォロワーを紹介しておきます。

いわゆる芸能人(芸人)のたぐいは私はほとんどフォローをしていないので、よくわかりません。「芸能人 Twitter」で検索すれば星の数ほど出てきますのでそちらを見てください。あしからず。

主として、私(55歳・男性)がフォローしてみて、ツイート数がそこそこあり、読んでいてもあまり不快感がない人達(団体)です。決して彼らの主義、主張と一致しているとか、近しいというのではなく、あくまでTwitter上の1フォロワーとしての感想と見解です。思想や志向はできるだけバランスを考えてフォローしているつもりです。

・ニュース・情報系
・ブロガーやフリージャーナリスト系
・学者系
・政治家系
・法曹系(インテリ系)
・作家系

に分けてあげておきます(順不同です)。

後ろにつけたコメント(紹介文)は私の勝手な思い込みや感想ですので気にしないでください。

なお下記のアカウントのほとんどは有名人だったり著名なアカウントですので、相互フォローや返信のRT(リツート)、質問などを投げかけても返事を期待してはいけません(一方的にフォローするのみと承知の上で)。

またアカウントの「@」より後を「https://twitter.com/」の後に付けるとその方のアカウントトップページに直接行けます。
 例:@NHK_PR → https://twitter.com/NHK_PR

◆ニュース・情報系
@NHK_PR すっかり有名ですね。ゆるいツイートが人気のNHK広報局のアカウントです。
@nhk_news 早いNEWSが特徴。スピードが命のTwitterのことをよくわかっています。
@nikkansportscom 日刊スポーツ。スポーツ速報はもちろん芸能ニュースも。
@MLBjp_GyaO メジャーリーグの試合をネット中継しています(PCのみ)。その速報も。
@unko_kanto うんこうかんとう。アイコンはひきますが、関東の電車運行状況がわかります。
@earthquake_jp M3以上の地震速報が送られてきます。

◆ブロガーやフリージャーナリスト系
@takapon_jp 堀江貴文さん、ほりえもんですね。元々頭がすごくいい人でまともな発言多し。
@tsuda 津田大介さん。「公式RTは非表示にする」の設定しておかないと余計な宣伝RTがいっぱいくるかも
@KeigoTakeda 竹田圭吾さん。国際ジャーナリスト兼かき氷評論家。とぼけたツイートに味があります。
@ikedanob 池田信夫さん。発言が極端な人で好き嫌いは分かれる。私は人間として好きではありません。
@kirik やまもといちろうさん。キレ味最高のブログが人気。若いのに悠々自適っぽくて羨ましい限り。
@InsideCHIKIRIN ちきりんさん。著名覆面ブロガー。仕事しないと言いながら講演などに引っ張りだこ。
@hirougaya 烏賀陽弘道さん。ちょいクセが強いがハマると危険な香りも。烏賀陽大学入試問題に挑戦。
@amneris84 江川紹子さん。炎上もなんのその。信じた我が道を行く強い人です。

◆学者系
@levinassien 内田樹さん。著書もいっぱい、ユニークな学者さんで、好みは分かれると思われます。
@masaru_kaneko 金子勝さん。慶応の教授で最近は反原発の本が多いかな。
@kenichiromogi 茂木健一郎さん。脳科学者としてあまたの本がでています。連続投稿は必見。
@HYamaguchi 山口浩さん。駒大教授。ネタはメディアからのピックアップが多いが意見は読む価値あり。
@HayakawaYukio 早川由紀夫さん。群馬大教授。原発事故の過激発言が話題となりましたが普段はいたってまとも?

◆政治家系
@t_ishin 橋下徹さん。当然好き嫌いは当然あるでしょうが、この人の発言でマスコミ右往左往。
@konotarogomame 河野太郎さん。政治の活動報告がメインですが政治家の日常がよくわかります。
@310kakizawa 柿沢未途さん。みんなの党を離党して孤軍奮闘中。いずれはどこかに所属かな。

◆法曹系
@Hideo_Ogura 小倉秀夫弁護士。炎上あるところに小倉さんの影あり。つっこみ鋭く顔は鋭くない方。
@yjochi 落合洋司弁護士。以前ネットでのなりすまし犯人からの犯行声明が送られた先生。
@masaki_kito 紀藤正樹弁護士。あまり自己主張はないが、ポイントを突いたRTが時々あり。

◆作家系
@kujira1016 鯨統一郎さん。作家さんでユニークな方です。毎日夕方4時のツイートに病みつき。
@itoi_shigesato 糸井重里さん。ほぼ日刊イトイ新聞の主宰者ですがツイートはお気楽な感じ。
@kaz_shiraishi 白石一文さん。直木賞作家さんですが、Twitterは気晴らしなのかきさくな感じです。
@product1954 盛田隆二さん。「二人静」が第1回Twitter文学賞を受賞。小説の書き方の教室も。
@michioshusuke 道尾秀介さん。激務の売れっ子作家さんにしてはTwitterにもよく登場。
@tokuro_nukui 貫井徳郎さん。この方も売れっ子作家さんにしては気さくに話しができます。
@hiranok 平野啓一郎さん。真面目なツイートがほとんどですね。

◆その他
@KazuhiroSoda 想田和宏さん。映画作家。ひとりで被写体を追いかけるドキュメンタリー映画が秀逸。
@TomoMachi 町田智浩さん。アメリカ在住の映画評論家。Twitterでの発言は過激で挑戦的。
@Junji_Inagawa 稲川淳二さん。芸能人って言えばそうなのだけど、時々流れるTwitter怪談は一見の価値あり。

注意点として、Twitterでは発言が炎上したり、思想的に偏った発言だったり、感情的に激した暴言が飛び出してくることもよくありますが、そういうことにいちいち反発したり、同じように感情的になって発言するのは誉められたことではありません。

他人のあらゆる思想や考え方、価値観、宗教観、歴史認識など一切を、賛同や認めるかどうかは抜きにして、まずはいったん受け入れてしまうのがいいでしょう。どうしても受け入れられない発言があっても過剰に反応せず、「そういう考えの人もいるのが世の常だから」ぐらいに客観的に見ましょう。

とにかく自分の考え方がすべてだと思わないことです。明かな中傷や差別などに対しても、当事者以外は変に反応せず(そうした反応を楽しむ人達もいる)、無視を決めるのが一番です。


【関連リンク】
662 SNS上での実名主義と匿名主義
622 iGoogleがサービス終了とのことで困った
525 転職にSNSは有効なのか?
429 twitterについてその3か4


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自動車事故と車種や装備の関係 2013/9/28(土)

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自動車事故は様々な要因で起きます。まずは運転者の操作ミスによる事故、飛び出しなど被害者側にも責任がある事故、自然災害や道路陥没などで起こる事故や、トンネル天井落下や道路に大きな落下物がありそれを避けようとしての事故など様々です。

1970年には日本の交通事故死亡者(事故から24時間以内に死亡した人の数)は1万6千人を越えていましたが、その後様々な死亡事故防止対策や救命医療体制の発達により、年々減り続け2012年には4411人と1/3以下に減りました。

特に1985年(昭和60年)に高速道路でのシートベルトの(前席)着用義務化が施行され(翌年には一般道においても前席着用義務化)、違反者は減点されるようになったことや、1980年代にバイクのヘルメット着用義務、それらとあわせてクルマの乗員安全性の研究と成果が進んできたことが大きく関係しています。

その他ではやはり医療技術や救急救命の体制が整い、従来なら生きてはいなかったであろう、意識不明の瀕死の重傷者でも延命装置を施し24時間以上生きながらえさせることができるようになり、統計上24時間以内の死亡者が発生しにくくなったこともあります。24時間を超えてから、どうなったかは過去と現在で比較する資料がないので不明です。

最近ではスバルのアイサイトをはじめとする衝突防止装置を装着するクルマが続々と登場し、ドライバーの脇見などによる追突事故や、アクセルとブレーキを間違って踏んでしまう暴走事故などにたいへん有効なプレ・セーフティ装置として大きな期待が寄せられています。

ただ残念なことにそのような装備は、後付けで装着できるものはなく、新車にオプションという割り増し価格で購入する必要があり(標準装備というのもありますが)、本来なら一番使って欲しい高齢ドライバーや免許取り立ての初心者が、わざわざ高いお金を出して新車や高額オプションを購入してくれそうもなく、行き渡るようになるまでにはまだだいぶんとかかりそうです。

この衝突防止装置は乗員の安全はもちろんですが、一部には自転車や歩行者などの飛び出しに有効なものもあり、従来のように乗員の安全さえ守られればそれでいいという身勝手な安全装備だけではなく、クルマの歴史からみて、初めて乗員以外の安全にも配慮した装置として大きな意義のあるものです。

と言うと、すでに何年も前からボンネットの形状や材質などは、人と衝突したときに跳ね飛ばされた人の衝撃を和らげる工夫をしているとか言われそうですが、実際には事故の状況は実験室の想定とは大きく違っていて、付け焼き刃的な対応ではエンジニアの自己満足でしかなく、気休め程度の効果しかないでしょう。

クルマの歴史は、スピードや乗員の快適性の追求とともに、安全性の追求の歴史でもあります。

衝突の際の衝撃を和らげる衝撃吸収バンパーや、一般的に2点式だったシートベルトをボルボ社が開発して特許を無償でオープンにした3点式シートベルト、ハンドルの中に埋め込んだエアバッグ装置。その発展型で助手席エアバックやサイドエアカーテン、制動時に滑りやすい路面で不安定となる姿勢を安定させる4輪アンチロックブレーキシステム、さらにはカーブで不安定になるのを防ぐ横滑り防止装置など、自動車そのものの安全に関わる装備や装置はこの20〜30年のあいだにずいぶん進化してきました。

しかし同じ車種でもそれらの安全装備のいくつかはオプション設定となるケースが多く、同じ車種であっても安全性能に差ができます。本当に有効な安全性の装備はなにとなにか?と聞かれるとそれを証明するデータがなく、我々はメーカーが主張する広告を信用するしかありません。作った会社が一方的にいいと主張するものほどアテにならないものはありません。

例えば衝突防止装置も各メーカーがそれぞれ別々に開発し、光学カメラ、レーザー、赤外線などを組み合わせていますが、実際にそれらを公平な第3者機関が様々な状況で徹底的に検証したものはありません。テストには莫大な費用がかかり、また条件設定などにより装置の有利不利などが起き、比較されるのを嫌がるメーカーからの協力も得にくいからです。

また効果が一番得られると言っても、その装備を付けるのに車両価格の1割以上も占める高価なものだとなかなか普及は進まないでしょう。

もっと具体的に言うと、登場して間がない前方衝突防止装置は、例えばですが、前方に障害物があることを俊敏に検知して自動的に急ブレーキをかける能力が優れていると、それによって後続のクルマの制動が間に合わず追突してしまうことさえ懸念されます。後を走るクルマに衝突防止装置が付いていないことが多いからです。

上記の場合、装置の誤認識だったり、本来ならハンドルを少し切ることで避けられ、急ブレーキをかける必要がない場合でも、衝突防止装置が働き余計な事故を増やしてしまう本末転倒の結果が出ることも考えられます。流れの中で十分な車間距離をとることができればいいのですが、必ずそういう場面ばかりではありません。阪神高速などを走行していると、前のクルマとホンの10mも空けていると、すぐに2〜3台が割り込んできます。

私は重大な交通事故の検証・調査を警察が事件性の検証をするだけではなく、第三者機関が車種と安全装備の有無、車体の色、使用年数、走行距離、整備状況、タイヤの摩耗度、運転者の習熟度(過去の運転歴とその事故を起こしたクルマの運転歴)、その他に事故が起きた道路状況や事故発生の時刻、天候・気温などを総合的に検証し、できるだけ多くの事故のデータを公表する必要があると前から主張しています。

安全なクルマとそうでないクルマ、安全な装備とそうでもない装備、車内の乗員の安全性と歩行者など車外にいる人の安全性、運転習熟度によって選ばれるクルマの違い、事故が起きやすい車種、車体の色、時間、天候、整備状況、運転者の詳細など様々な角度から第三者が検証します。

損害保険会社には、過去の事故や盗難など、車種ごと、運転者の年齢ごとに保険の支払に関するデータが残っていて、車種や年齢など条件によって保険金額のランクが違っていたりするのは普通です。

つまり保険会社のデータにさらにもっと条件を付加して公平中立な機関がデータを蓄積していけば、保険会社が個々に調べる必要もなくなりますし、消費者にとってはクルマを選ぶ際に、スピードや快適性などより、乗員安全性を求めるならこの車種と装備の組み合わせというのがわかります。

また前席の乗員に死亡者が多いクルマや、逆に後席の乗員に死亡者が多いクルマ、夕暮れに追突されやすいクルマの色、スリップ事故の起きやすい車種やタイヤのメーカー、過去○年間、ひとりの死亡者も出していない車種と言った有意義な情報が得られます。メーカーにとっては困るでしょうけど。

下記は最近起きた自動車事故のうち自損と考えられる転落事故です。

フェンスを突き破って40m下まで転落するも軽傷
道路右側のフェンスを突き破って、約40m下まで転落する事故が起きた。転落によって車両は大破したが、運転していた42歳の男性は軽傷だった。

駐車場で暴走のクルマ、フェンスを突き破って15m下に転落
金属製のフェンスを突き破って、約15m下を流れる川へ転落する事故が起きた。クルマは大破し、乗っていた2人が死傷している。

ヘアピンカーブを曲がりきれなかったクルマ、約25m下に転落
ガードレールを突き破って、約25m下の雑木林に転落する事故が起きた。運転していた30歳代とみられる男性が重傷。

ガードレール突き破って50m下に転落、運転者が意識不明の重体
道路右側のガードレールを突き破り、約50m下の谷に転落する事故が起きた。運転していた21歳の男性はヘリコプターで救出された。

このように40m転落しても軽傷で済んだケース、15mの転落で死傷者が出たケースと様々です。事故の様々な状況にもよりますが、それに加えて事故を起こしたクルマの車種や安全装備、シートベルト着用の有無、運転者の運転経験度などを数多く蓄積することにより、事故の原因や死亡原因、そしてクルマの車種別、装備別の安全性などがわかってくるはずです。そしてそれらは警察だけの秘密情報ではなく、広く公開すべき情報だと思っています。

多額の広告料でマスコミを押さえている大メーカーの自動車会社は、そんなレベル分けをしてもらっては商売に影響があるということで猛反対するでしょうけど、毎日十数名の死亡者や多くのけが人を出し続けている凶器とも言えるクルマを作って売る以上は、もう経済性や乗員安全性ばかりを主張するのでなく、自動車メーカー同士互いに切磋琢磨して乗員や歩行者ともに安全で、事故が起きにくく、またドライバー(=自社の製品のユーザー)の安全教育にも力を入れるようにしていくのが当然の義務ではないでしょうか。

そしてそれが世界の市場に対して日本車が他国の安いけれど安全でないクルマと差別化できる数少ない優位な点となります。

それでもまだ事故の車種別公表に反対するのであれば、美味そうに吸うタバコの広告が禁止されたように、音も出さず誰もいない綺麗な海岸線を違法スピードに違いないハイスピードで走り抜ける自動車のコマーシャルなどは即座に禁止し、「このクルマは昨年交通事故により○○人の死亡者を出しました」という表示をCMに入れるよう義務付けするのが妥当という気がします。


【関連リンク】
661 乗用車の平均車齢と平均使用年数
658 自転車のマナー違反が特にひどい
557 運転免許証の取得推移と乗用車保有台数推移を並べてみる
518 7月11日の高齢者の交通事故

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