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リストラ日記アーカイブ 2013年8月

読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです

734 7月後半の読書と感想、書評 2013/8/1(木)
735 遠い夏の記憶 2013/8/3(土)
736 最近の玉虫色の解決 2013/8/7(水)
737 日本人が罹りやすい病気 2013/8/10(土)
738 日本人の年齢別死因は 2013/8/14(水)
739 8月前半の読書と感想、書評 2013/8/17(土)
740 高齢者の犯罪が増加 2013/8/21(水)
741 消滅すると言われていた新聞社の近況 2013/8/24(土)
742 それでも日本の解雇規制は緩すぎる 2013/8/28(水)



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7月後半の読書と感想、書評 2013/8/1(木)

734

氷の華 (幻冬舎文庫) 天野節子

著者は、幼稚園教諭や幼児教材会社で勤め上げ、定年の60才になってから小説家デビューしたという異色の小説家です。しかもこのデビュー作「氷の華」は当初自費出版と言いますから、おそらくは応募や持ち込みされたと思われる出版社も、見る目がなかったと言うことでしょうか。

同じように持ち込みされながらも多くの出版社からケンホロで追い返された百田尚樹氏の大ヒット作「永遠の0」などの例もありますからそういうことは珍しいことではないのでしょう。

同作品はその後2008年には米倉涼子主演でテレビドラマ化され、続く第2作目の「目線」も仲間由紀恵主演でテレビドラマ化され、まだ作品数は少ないですが、一躍ヒットメーカーとなりました。

私はそうではありませんが、若いときに小説家や文筆業になる夢が破れ、それでもいつかは小説家デビューしたいと思いながら畑違いの仕事を続けている40代50代中高年にとっては、天野氏が60才になってデビューしたという実績を残してくれたおかげで、俄然やる気が出てきた人も多いのではないでしょうか。

前置きが長くなりましたが、この小説、デビュー作とは思えないほど、しっかりと考えられて作られています。主人公は警視庁殺人課の刑事と、夫の不倫相手を毒殺した妻のふたりです。

内容は詳しくは書きませんが、こうした殺人事件の小説では設定にかなり無理があるなというものが多いのですが、この作品では詳しく描かれる双方の心理描写に納得できるところが多く、ぐいぐいと物語の中へ引き込まれていきます。

現実の世の中では、一般人の殺人事件に関して言えば、直情径行型の犯行が大半を占めていると思われますが(根拠なし)、こうした小説やドラマの中では当然それだけで終わるわけもなく、読者にも十分推理が可能なようにしながら、刑事がふと感じた違和感の理由を突き止めていくというストーリーです。


終わらざる夏 (集英社文庫)(上)(中)(下) 浅田次郎

前から読みたかった作品がようやく文庫化されましたので、私の夏休みの大きな宿題、いや、楽しみとして、さっそく買ってきて猛暑の中、エアコンの効いた部屋で静かに読みました。

   
この小説の舞台にもなっている太平洋戦争終戦後に突如ソ連軍が北方領土攻撃してきた話しは、池上司著「八月十五日の開戦」や、戦前までは日本領だった南樺太を描いた映画「樺太1945年夏 氷雪の門」、その映画のクライマックスとなった悲しい「霧の火-樺太・真岡郵便局に散った9人の乙女たち- [DVD]」のドラマなどで知っていました。

割と最近にもNHKで占守島の守備隊の話しを当時の関係者の証言で検証した番組が放映されていました。

なので、このテーマ自体には目新しさはないのですが、泣かせの次郎が本領を発揮する、重苦しく切ないテーマでの長編作でもあります。

知らない人のためにこの北方領土の戦いについて少しだけ触れておくと、8月15日は終戦の日と信じて疑わない日本人がほとんどですが、この終戦の日前後の北方領土では日ソ中立条約を一方的に破棄して樺太や満州、千島列島などへなだれ込んできたソ連軍との自衛戦争開戦の日でもあるのです。8月15日以降はほとんど抵抗をしなかった満州や南樺太と違い、千島列島の最北にある占守島では8月15日以降も激しい戦いが続きました。

太平洋や南方でこてんぱんにやられた日本軍は、実はアメリカ軍が北のアリューシャン列島から千島列島へ島伝いに、そして北海道へ攻めてくることを想定し、強力な部隊を千島列島などに配備をしていました。結局アメリカは沖縄など南方からの攻撃だけで同時に北方へ戦力を分散することはありませんでした。

一方、ソ連軍は戦後の占領後体制を考えると冬でも凍らない北海道の不凍港を手に入れることがヨーロッパのドイツ分断と同じくアメリカに対抗する上で重要でした。なので、南樺太や千島列島を制圧し、そのまま一気に北海道まで占領しようと目論みましたが、アメリカと戦ってもう戦力は残っていないはずの日本軍に、千島列島で思わぬ反撃を受け、甚大な損害を出すことになります。

しかし結局はポツダム宣言を受諾した日本はやがて反撃を中止し、樺太はもちろん、千島列島もすべてソ連に占領されることになりましたが、千島列島の守備隊が命を賭けてソ連の侵攻を阻止したおかげで、ソ連軍が北海道に上陸することはなく占領されることはありませんでした。

さて、小説ですが、長編小説と言うこともあって、同時並行で複数の主人公が描かれますが、それぞれの運命と言える必然により、占守島へと集まってきます。

徴兵の年齢が上限近く、もう徴兵されることはないだろうと思っていた丙種合格の翻訳本編集者、過去3度の兵役で金鵄勲章をもらう活躍をして、同時に3本の指を無くしたため銃の引き金も引けない元鬼軍曹、事情のある人には徴兵検査で不合格を出し続けてきた良識ある若い医師、南方で死線をくぐり抜けてきた船舶兵、元大本営の参謀ながら、現地視察と称し、なぜかこの島に居座ってしまう謎多き将校、ドイツとの戦いに勝利し、これでやっと故郷へ帰れると思っていたら、シベリア鉄道でそのまま極東の島へ命を捨てに送られてきたソ連兵士などなど、、、

また豊富な海洋資源を生かし、日本国内や兵士に貴重なタンパク源を提供してきた日魯漁業の社員や勤労動員の女性達、銃後を守る兵士の妻や疎開先の学校、殺人で刑務所に入れられていたものの、赤紙が来て故郷の連隊へ向かおうとしているヤクザなども描かれていますので、ちょっとひとつの小説の中で、描かれる人物が多すぎ、ちょっとばかしとっ散らかってしまったような感じです。

しかし、この小説では占守島の戦いそのものや、戦争の悲惨さや不条理だけを訴えかけるのではなく、あの時代の狂ってはいない日本人にスポットライトをあて、小説として著者の考えや思いを読者に伝えたかったのだろうなぁと。

登場人物はすべて架空の人達で、あえて実在の人をモデルにはしなかったようです(たぶん)。それだけに、歴史的事実を元にしたドキュメンタリー小説とも言えず、またソ連の侵略を食い止めたという英雄譚でもなく、したがってエンタテーメント的なものでもありません。

強いて言うなら、太平洋戦争末期の狂っていた日本の軍部と、それを冷静に受け止めていた一部の庶民とを対比して、どんな理由があろうとも戦争することの愚かしさや、一旦動き始めてしまうとそれを停めることの難しさなどを浅田流の小説で示したものでしょう。

今まで「壬生義士伝」や「日輪の遺産」「天国までの百マイル」など多くの作品で泣かされてきましたが、この作品では決してハッピーエンドではないものの、まったく涙は出てこず、著者の意図とは違うかも知れませんが、淡々と始まり淡々と終わってしまった感があります。


 【関連リンク】
 7月前半の読書 40 翼ふたたび、沈底魚、この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)(下)
 6月後半の読書 ツ、イ、ラ、ク、終の住処、判決の誤差、<対話>のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの
 6月前半の読書 誰か Somebody、発達障害に気づかない大人たち、ひまわり事件、錏娥哢た(アガルタ)
 5月後半の読書 散る。アウト、盗作(上)(下)、黄昏の百合の骨、兎の眼
 5月前半の読書 すべてがFになる、マンチュリアン・リポート、砂の上のあなた、寝ながら学べる構造主義
 4月後半の読書 写楽 閉じた国の幻(上)(下)、なぜ日本でiPhoneが生まれなかったのか?、夕映え天使、純平、考え直せ
 4月前半の読書 竜の道 飛翔篇、ルームメイト、父・こんなこと
 世界と日本の書籍ベストセラーランキング
 2012年に読んだ本のベストを発表
 3月後半の読書 弁護側の証人、十三の冥府、ハルカ・エイティ
 3月前半の読書 アリアドネの弾丸、パルテノン、ニライカナイの語り部、そして、警官は奔る 
 2月後半の読書 対岸の彼女、発火点、泥棒は詩を口ずさむ  
 2月前半の読書 蛇行する川のほとり、盗まれた貴婦人、星月夜、ワシントンハイツの旋風
 1月後半の読書 神様のカルテ2、東京セブンローズ、鄙の記憶



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遠い夏の記憶 2013/8/3(土)

735
暑い夏が続きますが、この暑さを感じながら、ふと中学生の頃に毎日野球漬けの生活をおくっていたことを思い出しました。

私が入学した中学校には軟式野球部があり、小学生の頃から野球少年だった私は、親しかった同級生とともに入部しました(下記写真は社会人になってからの雄姿?)。

1年生の頃はそれこそ来る日も来る日もランニングと球拾いばかりで、これじゃ野球なんてうまくなれないなぁと思っていましたが、とにかく理屈ではなく上級生の指示を盲目的に従うのが当たり前という時代でしたから、そんなものかと思っていました。そうして自分の頭で考えることより反射的に上位者から命令されることが当然と思ってしまう都合のよい働き蜂が作られていったのです。

それはさておき、今でこそ、夏場のスポーツには適度な水分補給やクールダウンは当たり前ですが、当時はそれこそ巨人の星と同じようなシゴキは当たり前、土曜日や夏休み期間中は午後1時に始まって夕方6時頃まで一切の水分は摂れず、アンダーシャツだけでなくユニフォームまで手で絞れば汗水がしたたり落ちました。でもなぜだかそれで具合の悪くなる部員はいませんでした。

そんなことも今では懐かしい思い出となりましたが、私の場合、実質的に野球部で活動できたのは2年生まで。2年生の終わり頃に足を故障してしまい、検査入院をする羽目となりました。その後は再発を恐れ練習には参加していません。

つまり本当なら先輩に命令されるばかりの苦しい1〜2年生の頃をやっとしのぎ、これから上級生として、またレギュラーとして本格的に練習や試合に出られるようになった矢先の病気でした。したがって練習試合はともかく、公式戦の出場は2年生の秋におこなわれる新人戦だけです。

さぞガッカリして意気消沈したかと言うと、案外平気なもので、今まで放課後や休日はすべて部活に縛られ、それまでまったく知らなかった優雅で堕落したもうひとつの生活を知ってしまい、それなりに楽しく過ごせていたのは今から考えると不思議です。

そのような2年間という短い野球部生活の中で、一番強烈に記憶に残っているのが、私自身の初ヒットでもなければ痛恨のエラーでもなく、私が2年生だった時の夏、先輩の3年生が出場する最後の公式戦での一幕です。

入部していた野球部は市内の公式戦でも初戦突破できるかどうかという弱小チームでした。練習時間だけは豊富だったのですが、まともな指導者はいない、練習方法も非科学的、根性とか精神力で勝てと言わんばかりのチームでしたからそれも当たり前です。野球の練習というよりは肉体を痛めつける精神修行のようなものでした。しかもまともに野球の練習ができるのは上級生レギュラーだけで、後輩を早く育てようという風土はまったくなし。したがって連綿と毎年弱いチームの出来上がりです。

で、試合ですが負ければレギュラーを占めていた3年生すべてが引退をするという夏の公式戦です。私たち2年生はベンチの横で構えながら声をかけているだけです。そして当事者ではないだけに、冷静に試合を見ていられます。

相手チームは忘れましたが、どこにあるのか、強いか弱いかもわからないチームです。有名でないのでおそらく自分たちと同じく弱小チームだったと思われます。

中学野球は7回まで戦います。市内の大会を勝ち進み優勝すれば地域代表の試合へ。それにも勝てば全国大会へと続いていき、評判になれば甲子園常連校からスカウトが来る野球少年の最初の登竜門です。もちろん私たちのチームにはまったく関係のない話ですが。

試合は猛暑の中、順調に進み、1点差で負けている状態でいよいよ最終回の攻撃となりました。

先頭打者はヒットだったか、四球だったかで、とにかく塁に出ることができました。やっと味方チームの反撃が始まりそうです。

と、その時、風雲急を告げるがごとく、空からポツポツと雨が降り出してきました。

犠牲バントや相手のミスなどもあり、1アウトでランナーが1塁・3塁となりました。この3塁ランナーがホームへ返ると同点に、1塁ランナーまで返ってくれば逆転です。

この3塁まで進んだ先輩ですが、野球部員らしくなくお洒落でファッションにこだわり、お調子者で、場を明るく和ませてくれる人なのですが、自己中で少々間がヌケていて、時々とんでもないことをしでかす人でもあります。

例えば練習中、周囲に人がいる中で、何を思ったか突然バットの素振りを始め、それが人の頭にあたって大怪我をさせたことがあります。そういうなにか自分が決めたら他のことはなにも考えられなくなってしまう人です。押せ押せムードの中で、貴重な3塁ランアーがその人だというのが唯一不安材料です。

と、そこで雨が急に強くなり、なんと試合途中、しかも最終回の逆転のチャンスというところで中断となり、そのままサスペンデッドとなってしまいました。

サスペンデッドはコールドゲームとは違い、後日に中断したところから再スタートするもので、その残りの試合は球場の都合で3日後となりました。

再試合まで間があるので、翌日からの練習は、朝から晩まで1アウト1・3塁の場面からどうすれば最低1点、できれば逆転となる2点を取るかというシュミレーションに明け暮れました。当然3年生は試合に負ければ引退ですから必死で練習をします。

そして試合が再スタートする時のバッターは、部のキャプテンで打順は4番、長打力はチームで一番、またバントなど小技も上手く、部では一番野球センスがありチームにとっては願ってもない好打順です。

その練習では様々な攻撃パターンを実際に試してみて検討しましたが、結局決まったのは「初球は見逃し」て、それがストライクだったら「2球目はスクイズ警戒で外してくる可能性があるので見極めてヒッティングを基本とする(Aプラン)」、もし初球がボールなら、「次は必ずストライクを取りに来るからスクイズでまず1点をとる(Bプラン)」という作戦に決まりました。いずれにしても難しいのは打席に立つ打者ですが、一番信頼がおけるキャプテンなので、もうすべてあなたに任せたというところです。

同時に、Bプランでスクイズが成功した場合、1塁ランナーは2塁に残るので、逆転するためにそのランナーを帰すために、、、というその後の練習までみっちりとおこないました。

ま、こうした柔軟性を持たせた作戦が結果的には裏目に出ることになります。WBC準決勝での内川選手のグリーンライトの走塁ミス?とも少しダブってしまいます(いや全然違いますが)。

で、再試合当日です。

ランナーは中断した時と同じ1・3塁に付き、キャプテンは自信たっぷりに打席に入ります。

相手チームもこの1週間、同様に様々なケースを想定した練習をおこなってきているはずですが、気の毒なのはピッチャーで、一般的にピッチャーは初回に失点するケースが多く、それは試合開始直後というのはなかなかコントロールが安定せず、そのため球速も出ません。しかも今回のようにいきなり同点のランナーを得点圏に背負っての試合開始ですから、そのプレッシャーたるや相当なものでしょう。

もしそういうことを深く読む力があれば、相手ピッチャーにとって最悪なのはコントロールが定まらず、ボール先行で四球を出すことですから、初球からスクイズ警戒で大きく外してくることはまずないと思うのですが、その時は誰もそれを考えませんでした。

さてその初球、緊張気味の相手ピッチャーがセットアップモーションから第一球を、、、

バッターは相手バッテリーを惑わせるためスクイズの構えをとり、プレッシャーをかけます。

そして初球が投じられたと同時に、誰も想定しなかったことが起きました。

えぇぇぇぇ、な、なにぃぃぃ!!???(声なき声)

3塁ランナーのヌケ作(先輩だが)が、なんと投球と同時に(足は遅いくせに)必死の形相でホームに突っ込んできます!

不運にもバッターは右打ちで、3塁ランナーが突っ込んでくるのは見えません。見えたとしてもとっさに反応ができるか微妙です。

そしてバッターは決めた通りにバットを引いて初球を見逃します。

投球は打ちごろのど真ん中ストライクで、3塁ランナーはキャッチャーにホームで楽々タッチされてアウト。飛んで火に入る夏の虫ってやつです。形としては単独ホームスチール失敗となってしまいました。

これで2アウト、ランナーは1塁のまま。相手チームは大喜び。

初球は見逃すという作戦を知っている味方チーム全員、いやその3塁ランナーのヌケ作を除いた味方チーム全員、いったい何が起きたのか「???」状態です。この3日間の猛練習はなんだったのでしょう。

その後は、1球で地獄から天国へと変わったピッチャーと、混乱してしまったバッターとの勝負もあっけなくつきゲームセット。試合時間わずか5分ほどで再試合は終了し、3年生達の暑い夏が終わりました。

球場からの帰り道、勝てそうだった試合に負けたという悔しさだけでなく、すべてが終わった3年生の周囲には重く気まずい空気が包み込み、誰からもなにも声は出なかったのです。まったくこれ以上後味の悪い試合はありませんでした。


【関連リンク】
729 まだかなえられていない夢がある
700 なにもかも懐かしい新入社員の頃
696 五輪競技除外候補とスポーツ競技人口
682 我が家の食文化は子供たちへ伝えられているか?
635 英語の憂鬱
631 サッカー選手と野球選手の経済的考察
618 リニア中央新幹線は「新・夢の超特急」か?
495 ネーミングライツの功罪
391 野球は世界一なのに、サッカーは世界ランク45位だって
333 節分の思い出は、、、
302 フリーエージェント制度の日米比較
226 夏休みとレトロな自動車


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最近の玉虫色の解決 2013/8/7(水)

736
(1)0増5減の衆議院選挙区

2013年6月24日、衆院小選挙区定数の区割り変更により0増5減案が可決成立しました。最高裁判所での相次ぐ「違憲」や「違憲状態」の判決で待ったなしで急がれた結果による妥協の産物とも言える決着でした。

この際、審議をしなかった参議院がどうだとか、与野党間の合意がどうだとかというのは抜きにしても、3年前の国勢調査の人口統計でかろうじて2倍未満に抑えることを念頭におかれ、抜本的な選挙改革にはほど遠い結果となりました。

参議院選挙でねじれが解消された与党は、引き続き国会議員定数の大幅削減や、その先にある参議院の存在意義についての議論を始めることが可能でしょうか?

結局は、国会議員が自ら職を失う可能性が高まる法案に真剣に取り組むはずもなく、このまま、再び最高裁で違憲判決が出続けて始めて重い腰を上げて動き出すぐらいのスピードでしょう。


(2)選挙のネット活用

7月の参議院選挙からネットが解禁されました。正しくは「選挙運動にネットを使うことが一部だけに許されるようになった」というだけで、世界的なネットを利用した選挙の流れから見るとまだまだ大きく遅れていると言わざるを得ません。ひとえにこうした法律を作る人達(決定権のある長老)のネットへの理解不足が促進の障害になっていることは明かです。

今回のネット選挙で大儲けしたのは、政党も候補者もわけがわからないので、丸投げして頼るしかなかった大手広告代理店や、一部のWeb系のシステム会社ぐらいで、経済的な影響はほとんどなかったと言えるでしょう。

それよりも、期待したほど若者の投票率は上がらなかったようで、これはネットを使う、使わないにかかわらず、国民全体の政治に対するあきらめというか、期待できないという表れです。特に今回は与野党間の対決構造の大きな焦点が見あたらず、今回はぜひ投票しなければと言う浮動票があまり動きませんでした。そうなると地盤(よく組織された後援会)、看板(有名人や地元の名士)、カバン(金)のある自民、公明、共産が強く、その通りとなりました。

もし本当にもっと投票率を上げたいのなら、中・高校生への政治教育の徹底は基本として、それこそネットで自宅からでも投票が可能とする仕組みや、いきなりそこまでいかずとも、投票をコンビニや郵便局に設置した専用の投票マシンから可能とするなど、投票してもらいやすくする仕組み作りが重要で、旧態依然のやり方では無理でしょう。

今回のようにやっていいことと、ダメなことがいくつもるような中途半端なネット選挙では、どこまでやると選挙違反になるのかがよくわからないまま進み、またネットの世界では次々と新しい使い方や仕組みが生まれてくる中で、結局はよくわからないまま、見切り発車的におこなわれました。

ネットを活用すると決めたら、ブラックリスト方式で禁止事項だけを決め、それ以外はすべて解放すべきでした。ただネットに限りませんが、ただ金持ちだけがたくさん露出できるという候補者の有料広告については、なんらかの規制が必要でしょう。

その他のネット利用については、候補者であれ、有権者であれ、何をどう使おうと自由にして、一般国民が自由にその討論や議論に参加できるようにして、友人や知人に対して自分の主義や主張、応援している候補者を伝えることも可能とすべきで、それがなにか問題があるとは思えません。


(3)柔道やサッカー、プロ野球など公益団体代表の進退

多くの公益法人は、別の味方をすれば特定の業界や団体の利益代表の機能を持ち、それはまた紐でつながっている官公庁の利益誘導機能も併せ持っています。

理事長職は名誉職でもあり、天下り官僚のお飾りというケースも多くありますが、そうでない場合は、それぞれの業界やもっと上のクラスの社交界で、権力志向の強い人がなっているケースがよくあります。

現在の柔道やサッカー、プロ野球のそれぞれの公益団体の理事長やコミッショナーは、いずれもギラギラの権力志向が強い人達のようで、不祥事で自分が責任をとって辞めることなど、絶対にありえないしあってはいけないと思っている人達です。

体罰やセクハラ、補助金の不正流用など問題が噴出した全日本柔道連盟の会長は、投書はどこ吹く風の態度でしたが、さすがにバッシングが強くなり、下手をすれば公開の場で引きずり下ろされてしまう事態にまで発展してきたことに危機感を感じたのか、8月末にようやく辞任をすることになりましたが、これははまだ異例のことです。

問題が起きたときの責任は、例え部下や他人になすりつけてでも、自分は無関係と開き直り、天命と信じて疑わず、人々から尊敬を受ける役職を全うし、(表面上だけでも)惜しまれつつ、自らの意志で勇退をするのが美学だと強く思っています。そのことによって叙勲の道も開けてくるというものです。

その辺りの感覚が一般国民や各種スポーツに精を出している選手達と大きく乖離しているのは当たり前のことで、これは独善的な経営者とその従業員との関係や、学閥でグルグル捲きにされた医学会、年功序列を守り抜く官僚機構、特権階級意識の強い世襲政治家などと共通したところがあります。

骨のあるジャーナリストならば徹底糾弾して、それこそキャンペーンでも張って、新聞、テレビ、ラジオ、雑誌、週刊誌、ネットを駆使して「ならぬものはならぬ」と筋を通すべきなのですが、そのようなキャンペーンは我が身や我が社の総帥の意志に反すると見ておこなわず、逆に貧困層からのし上がってきて目障り耳障りなことをする成り上がり者の橋下氏などを、徹底的に糾弾し痛めつけることばかりに専念します。

日本では表向き階級制度はなくなったとされていますが、年収何億円というテレビキャスターや、30才で軽く年収1千万円を超える新聞記者やテレビ局員などは、明らかに資産家や事業家、政治家など持てる者と同類の立場、近い階級と言ってもよく、その人達が作った番組や紙面、語る言葉を鵜呑みにしてしまうようではその階級とは一生縁がないと言っていいでしょう。

そしてこのような玉虫色の解決こそが、権力者と一部のマスコミが共同して作り上げた、一般国民を押さえ込む作戦であることはあまり知られていません。


【関連リンク】
723 個人情報保護も大事だと思うが
711 地方が限界集落化していく
693 引きこもりが長期化する前にすべきこと
660 40〜50歳代プチ高所得者がハマる罠
636 昨今の新入社員は終身雇用制を支持している
585 川崎市営の駐輪場が理不尽な大幅値上げ1
441 自衛官の定員不足と少子高齢化
419 消費税増税論議素人編
409 民度が計れる国政選挙は政治家と鏡
400 規制強化の派遣法改正は正しいことか
371 定数訴訟
309 国政選挙1票の格差に思う
257 インターネット選挙はいつおこなわれる


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日本人が罹りやすい病気 2013/8/10(土)

737
概ね40歳を超えると世間話の多くは健康に関するものと相場が決まっています。ちょうどその頃からそれまで健康だった人も、長年の酷使から身体のあちこちに不具合が出だし、また仕事や家庭でもちょうどその頃からストレスの多い時期にさしかかり、体調をさらに悪化させるということなのでしょう。男の厄年、特に本厄が42歳(数え年)というのは、古来からこの頃には不吉なことが起きるので注意しなさいよというご先祖からの教えです。

少し前のデータからですが、厚生労働省の「平成23年(2011年)患者調査の概況」から、日本人がよく罹る病気の種類や怪我について調べてみました。

まずどのような疾患や怪我が多いのか、1996年から2011年までの人口10万人当たりの傷病別推移グラフです。


「高血圧性疾患」というのが圧倒的に多く、大きく開いて「歯肉炎及び歯周疾患及びう蝕」、「糖尿病」の順となっています。

次に男女別の傷病種類はどうかというグラフです。


男女間で違いが出ているのは、「高脂血症」と「高血圧性疾患」で、いずれも女性の罹患率が高くなっています。逆に男性が女性よりも高いのは「悪性新生物」「糖尿病」あたりですが大きな差ではありません。

次はざっくりとした年代別に見た場合の入院患者数です。このグラフは率ではなく入院患者数ということで、年代によって人数が違うので統計的に正確ではないものの、高齢者の入院割合が異常に高いと言うことがわかるグラフです。


年代によって罹りやすい病気があるのは明らかですが、それにしても65歳以上は「精神及び行動の障害(一般的には統合失調症やうつ病など)」以外は他の年代をはるかにしのぎます。

グラフの「新生物」とは良性・悪性の腫瘍や白血病など、「神経系疾患」は白内障、外耳疾患など、「循環器系疾患」は高血圧、脳梗塞など、「呼吸器系疾患」は肺炎、喘息、気管支炎など、「消化器系疾患」はう蝕、歯肉炎、歯周病、胃や十二指腸潰瘍などです。

次は同じく入院患者数ですが、1996年からの推移です。


うつ病などの「精神及び行動の障害」や「循環器系疾患」は近年減少傾向にあります。これは昔と違い専門医が増え治療法が確立されてきたことによるものと推定しますが、二つともストレスに大きく影響を受ける病気ですから、ストレスが減ってきているのか、それともストレス耐性ができてきたのか、よくわかりません。

他にも入院数が減る傾向にあるのが「新生物」や「筋骨格系及び皮下組織疾患」です。「筋骨格系及び皮下組織疾患」はリウマチなど関節障害や骨密度低下などです。

逆に上昇傾向にあるのは、「神経系」「呼吸器系」で、「神経系」は肺炎や喘息、気管支炎など、「神経系」は眼や耳の病気です。このあたり、やはり高齢化によって増えてきた病気っていう気がします。

最後は年代別に入院・外来を受けた受療率(人口10万人あたりの率)です。


10歳ごとに区切りましたが、産まれたての時期は例外として、50代を境にして急速に受療率が上がります。90歳以上がまた落ちるのはどういう理由か不明ですが、90歳以上まで生存している人は概して健康で、入院したり通院したりあまりしないのかも知れません。なんらかの持病持ちの多くは90歳までに亡くなるということで。

しかし70歳以上の高齢者の約1/3が入院または通院をしているという結果ですが、これって意外と少ない気もします。自分の身近で考えると、少なくとも半分以上の高齢者はなにかしらの病気で入院または通院しているようですが、案外地方の農家に住む高齢者の多くはみなさん健康なのかもしれません。

今働いている会社の中で、私は年齢的には上の方に位置しますが、若いときは、歳を取ると身体のあちこちに不具合が起きてきて思うように動かなくなるというのがわからないものです。私も若いときはそうでした。

若いときに健康であればあるほど、自分は年を重ねても健康だと信じているのが普通でしょう。でもそれは大きな間違いで、年を重ねて経験や知識はたまっていくけれど、それと引き替えのようにして、心身の自由や酷使に耐える力が奪われていくことは誰にも共通することでしょう。

なので、仕事を引退してからあれをやろう、これをやろうと若いときに決めていても、その歳になると、身体が思うように動かずできないということもまま起きます。

若い人に「高齢者を敬え」と言うのはすでに死語となりつつあるようで、むしろ「高齢者の年金のために若者がつらい思いをする」などとののしられる状況で、無理は言いませんが、それでもアドバイスをしてと、「いつかはやりたいこと、行きたいと思っているなら、なるべく早く実現しておくのがいいよ」ということ。先へ延ばしていいことなどなにもありません。

昔なら、それこそ先輩を差し置いて遊ぶために会社を休むなんてことはできませんでしたし、また仕事で暇がないと言い訳してましたが、今は完全週休二日に祝日も増え、会社もワークライフバランスが肝心とか、ダイバーシティの時代と言うようになり、遊ぶために有給休暇をとったり、リフレッシュ休暇をとることにも後ろめたさがなくなってきました。お金は高齢者と比べると若者は持っていないでしょうけど、知恵をフル動員すれば、昔と違ってそれを安く実現する方法が見付けられるでしょう。

歳を取ってからではできないこと、できなくなることが、健康で若いときなら簡単に実現できます。考えるよりもまず動いてなんでもやってみるというのが若い人へのアドバイスです。


【関連リンク】
712 最近気になる食品の安全性
689 自分の終焉をどう演出するか
644 うつ病に罹った人との関係は難しい
621 中高年者の活用について
602 ついに変形性股関節症の診断下る
556 塩の話
433 股関節唇損傷についての続編
424 股関節唇損傷?
418 もはや国民病とも言えるうつ病について考える その2
417 もはや国民病とも言えるうつ病について考える その1
273 悪者にされた薬品


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日本人の年齢別死因は 2013/8/14(水)

738
前回の「日本人が罹りやすい病気」に続いて、今回は「日本人の死因」についてです。厚生労働省人口動態統計データ(2009年)からの抜粋です。


まず5年ごとの年齢別に、最も多い死亡原因はなにかというのが下の表で、数値はその原因1位の死亡者数(2009年)です。


10歳までは赤ちゃん特有の「遺伝的な病気」か交通事故など「不慮の事故」がもっとも多く、10代後半から20代、30代の死因の一位はなんと「自殺」。

これだけをみると「若者の自殺を減らそう!」という運動もわからなくはありませんが、過去に何度か書いている通り、自殺者数がもっとも多い年代は50代でその次は60代です。50代以上は他の原因での死亡者数が多いため自殺者数が目立たないだけなのですね。

それはともかく、黄色でマーキングした55〜59歳あたりから1位の「悪性新生物」での死亡者が急速に増えています。40代前半と50代前半とを比べると3倍、50代後半と比べるとおよそ7倍という多さです。癌は長生き病と言われる所以で年齢が高くなるほど死亡者数急激に増えていきます。私も50代半ば、そろそろ手遅れの癌が発見されても決して不思議ではありません。

その癌など「悪性新生物」も70代後半にいったん死亡者数の上ではピークを迎え、あとは緩やかに減少し、90歳以上となると心疾患(高血圧性を除く)が死亡原因の1位となります。90歳まで生きれば死因最強を誇る癌も愛想を尽かしてしまうのでしょうか(そんなわけない)。

心疾患(高血圧性を除く)で多いのは急性心筋梗塞、狭心症、心不全などですが、老衰との区別がどうもつきにくいそうです。ちなみに、検視した医者が死亡理由がハッキリしないときにはよく「心不全」を原因にすると聞いたことがあります。心臓が止まったから死亡したということですから間違いではないのでしょう。健康だった若い人が突然死した場合も「急性心不全」でくくられてしまう時があります。

次に、10歳ごとの年齢層と日本人に多い死亡原因ベスト10を棒グラフにしてみました。縦軸の数字は人数です。


これでも50代から急速に「悪性新生物」(ブルー)が突出しているのがよくわかります。

ちょっと下位のグラフが見にくいので下位だけを拡大したものが次のグラフです。


自殺者数(赤色)は50代〜60代で最大数となっているのがわかります。若い人の自殺防止も結構だけど、まずはこの層の自殺を減らさなければ、統計的にはあまり減ったことにはなりません。

上の表やグラフは、死亡者数(絶対数)なので、各年代ごとの人口の違いによってその割合に差が生じます。

下のグラフは、10歳ごとの年齢層と日本人に多い死亡原因ベスト10を人口10万人あたりの死亡者数を縦軸にしたものです。


よく中高年(一般的に40代後半〜60代)になると、「親しい人との雑談は病気の話しになる」と言われていますが、その理由がよくわかるグラフです。死に至る健康を害するのは主に50〜60代から始まり、80代ぐらいに完結するという図です。

同様に、上の部分をカットして下位の詳細がわかるようにしたのが下のグラフです。


「悪性新生物」は50代から、その他の病気は主に60代以降から死に至らしめるというグラフになっています。唯一「自殺」だけは50代にピークを迎え、その後は減少していきます。

前回も書きましたが、病気等で身体が動かなくなってしまう50代、60代になる前の元気なうちに、好きなことを思いっきりやっておくことを特に勧めておきます。いくら会社に尽くしたところで、重病や末期の癌に罹れば、あとは体よく放り出されるだけですよ。

若くても年老いても死ぬ間際に「あぁ面白い人生だった」と言い残せる人が一番幸せでしょう。


【お勧め過去記事リンク】

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8月前半の読書と感想、書評 2013/8/17(土)

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MOMENT (集英社文庫) 本多孝好

「FACE」「WISH」「FIREFLY」「MOMENT」の中編で構成され2002年に発刊された小説です。同氏の本では2006年にやはり中短編作品の「FINE DAYS」を読んだことがあります。

この「MOMENT」は優秀な大学に通いながら総合病院の清掃のアルバイトをする男性が主人公で、余命幾ばくもない患者やその家族、病院の医者や看護師、それにこの病院のアルバイトを紹介してくれた同級生の女性などとの会話が中心に展開されていきます。

その中でも同級生の女性は実家の葬儀屋を継いで病院へ出入りしている変わり者です。両親は事故で亡くなっていますが古くからの社員がその家業を盛り立ててくれています。

その病院では死期が近い患者の元に、突然黒衣の人物が現れ、なんでも希望をひとつ聞いてくれるという「必殺仕事人伝説」というのがあります。その黒衣の人物というのが、いつの間にか「病院の清掃人らしい」という噂となっていて、それに乗っかる形で、主人公の男性が患者に頼まれごとをされて引き受けていきます。

病院の中では常に生と死がつきまとっていますが、ストーリーは淡々と描かれていて、それほど重苦しいものではありません。逆に主人公以外の登場人物がそれぞれユニークで、特にはユーモアもあり、サクッと読み進められます。

そしてこの「MOMENT」から7年後の続編が「WILL」として発刊されています。すでに文庫化もされていますので、これは買わないといけませんね。


星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫) 村山由佳

2003年上半期の直木賞を受賞した作品です。「雪虫」「子どもの神様」「ひとりしずか」「青葉闇」「雲の澪」「名の木散る」の連作中編が6作品と「あとがきにかえて」が加えられています。

後妻の志津子が亡くなったことにより、ずっと家を飛び出したままだった次男が実家に帰って来るところから始まります。複雑な家族一家のそれぞれひとりずつを主人公にした物語の形式がとられています。

「雪虫」は亡くなった前妻との間に産まれ、家を飛び出し現在は札幌でひとりで生活をしている次男(暁)。

「子どもの神様」は両親の再婚後に産まれた次女(美希)で、仕事関係の中年男性と不倫中。

「ひとりしずか」は父親の前妻がまだ健在だった頃、後妻となる女性と不倫関係で産まれた長女(沙恵)の視点で。

「青葉闇」は市役所に勤める長男(貢)で部下と不倫中。帰宅拒否症候群に陥り近所の空き地で始めた家庭菜園に没頭中。

「雲の澪」はその長男の娘(聡美)の視点で上級生からのいじめや暴力事件。

、「名の木散る」は一家の主(重之)の視点で戦争体験が描かれます。

一家を整理すると、

夫(重之)−−−−−−前妻(晴代)病死
   | |   |
    −|−−−|−−−−−−−−−−−−−後妻(志津子)
     |   |     |     |
  長男(貢) 次男(暁) 長女(沙恵) 次女(美希) 
     |
  長女(聡美)


こんな感じでしょうか。

その中で、不倫、幼児虐待、レイプ、近親相姦、家庭内暴力、学校のいじめ、戦争体験(慰安婦)など重苦しいテーマが次々に交錯していきます。なんと問題や刺激の多い一家でしょう。複雑な家庭に産まれるとその子どもが大人になってから同じように複雑なことをしでかすという都市伝説なのか、科学的に実証されているのか知りませんが、一家は呪われているとしか思えません。

それらの重苦しい内容が綺麗に解決されることはなく、物語は進み、結局は家族といえども個人個人の思いや生活があり、つかず離れずで漂っていくというのがこうした家族のあり方なのかなぁと考えさせられるものでした。深く精神を揺さぶりますが、なんとなく後味はよくない小説です。


パラダイス・ロスト (角川文庫) 柳広司

ジョーカー・ゲーム」「ダブル・ジョーカー」に続く日本陸軍スパイ組織D機関シリーズの第3弾です。2012年2月に単行本が、2013年6月に文庫が発刊されました。

期せずしてこの作品も上2つの作品と同様、「帰還」「失楽園(パラダイス・ロスト)」「追跡」「暗号名ケルベロス」の中編集となっています。

時代は太平洋戦争前の昭和10年代。謎の陸軍中佐が主導して全国から特殊な優れた能力をもった人を集めてスパイの訓練をおこない、機密情報を得るため世界中に送り込みます。それら名も無きスパイ達の活躍ぶりが描かれます。

そうしたスパイを養成する場所がD機関と呼ばれ、モデルは陸軍中野学校です。

さすがにシリーズ第3作目ともなるとマンネリ化は避けられず、特に目新しいことや瞠目すべきことはありません。

その中にあって「追跡」ではD機関の生みの親とされる結城陸軍中佐に興味を持ち、その過去を洗い始める英国スパイと、それを見越して事前に様々な手を打つD機関との知恵比べという構図の話しでこれは秀逸です。

できればこの中編ではなく、もっと深く英国のMI6との知恵比べを見てみたかったなと思うのは私だけではないでしょう。


瓦礫の矜持 (中公文庫) 五條 瑛

著者の五條瑛(ごじょう あきら)氏は1999年にスパイ小説「プラチナ・ビーズ」でデビューした女性作家さんです。名前や小説のタイトル、作風からして、ずっと男性作家だと思っていました。この「瓦礫の矜持」は2006年に単行本、2009年に文庫化されています。

ストーリーは警察官にまともにとりあってもらえずストーカーの被害で妹を亡くした主人公をはじめ、警察に恨みを持った男女が登場します。

その警察に恨みを抱く男女が、何者かよくわからないリーダーに操られ、国際イベントで厳戒態勢の街(仙台と思われる)で、大規模な事件を起こし、警察に大恥をかかせてやり、さらには銀行から大金をせしめようと動き出します。

このようなバラバラに集められた犯罪者が、それぞれに与えられた役割を忠実に実行し、しかも緻密な計画に従って準備ができるとは常識的には考えられず、いまいち現実性に乏しく実感が湧かないかなと。例えば重要な役割をする元下着泥棒などちんけな犯罪者というのは、自分勝手で要領が悪く、すぐにカッとなり、普段は怠惰で、疑い深い性格と言えます。

洗練された多くのミステリーの中では、設定にぎこちなさというか、散々に過去の経緯を張り巡らしておきながら、クライマックス以降はそれらはなにも関係なくなり尻切れトンボ状態で脱力感いっぱいです。

逆に前段階はもっと簡単でも、クライマックスとエピローグの部分が手厚くなればまた違った展開が考えられそうです。せっかく工学系大学院生やテーブルゲームマニアが登場しても、その知識やゲームで培った勘や創造力を生かした事件への展開は見られず(真犯人の手掛かりはつかむものの)、ちょっと残念でした。

こうした縁もゆかりもない犯罪者を集めて犯行をおこなうパターンは伊坂幸太郎氏の「陽気なギャングが地球を回す」が秀逸ですが、その作品の登場人物は問題を抱えつつも、みな生き生きとした魅力を感じられるのに対し、この作品の登場人物には誰ひとり魅力が感じられません。


【関連リンク】
 7月後半の読書 氷の華、終わらざる夏(上)(中)(下)
 7月前半の読書 40 翼ふたたび、沈底魚、この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上)(下)
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 6月前半の読書 誰か Somebody、発達障害に気づかない大人たち、ひまわり事件、錏娥哢た(アガルタ)
 5月後半の読書 散る。アウト、盗作(上)(下)、黄昏の百合の骨、兎の眼
 5月前半の読書 すべてがFになる、マンチュリアン・リポート、砂の上のあなた、寝ながら学べる構造主義
 4月後半の読書 写楽 閉じた国の幻(上)(下)、なぜ日本でiPhoneが生まれなかったのか?、夕映え天使、純平、考え直せ
 4月前半の読書 竜の道 飛翔篇、ルームメイト、父・こんなこと
 世界と日本の書籍ベストセラーランキング
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 3月後半の読書 弁護側の証人、十三の冥府、ハルカ・エイティ
 3月前半の読書 アリアドネの弾丸、パルテノン、ニライカナイの語り部、そして、警官は奔る 
 2月後半の読書 対岸の彼女、発火点、泥棒は詩を口ずさむ  
 2月前半の読書 蛇行する川のほとり、盗まれた貴婦人、星月夜、ワシントンハイツの旋風
 1月後半の読書 神様のカルテ2、東京セブンローズ、鄙の記憶



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高齢者の犯罪が増加 2013/8/21(水)

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ニュースにもなったので見たり読んだりした方も多いと思いますが、犯罪の総数は減ってきているものの、高齢者が引き起こす犯罪数は激増しているそうです。法務省が出している平成24年度の犯罪白書を見ると、

「我が国の犯罪情勢は,平成14年に刑法犯の認知件数が戦後最多を記録したが,国民と政府が一体となって治安の回復に取り組むなどした結果,刑法犯の過半数を占める窃盗を中心に刑法犯認知件数は減少傾向にあり…(中略)…近年の犯罪動向では,初犯者がおおむね減少傾向にある中,検挙人員に占める再犯者や刑務所入所受刑者に占める再入者の比率が上昇傾向にあり,特に覚せい剤事犯者や高齢受刑者等では再犯によるものの比重が大きい(以下略)

とあります。

一般刑法犯の検挙数では全国的に高年齢化が進み、60歳以上の構成比が昭和57年(1982年)に3.5%(1万5,363人)だったのが、平成23年(2012年)には22.9%(7万83人)と率で6.5倍、人数でも4.6倍と急増しています。

もっとも65歳以上の人口は2012年で29,752千人に対して1985年で12,468千人と約2.4倍の差がありますから、高齢者の犯罪の数が増えるのは当然としても、それにしても人口の伸び率以上の激増です。

確かに最近目にする凶悪犯罪も高齢者(60歳以上)が引き起こしたものが目立ちます。

「山口県周南市の限界集落5人殺人事件」の容疑者は63歳
「複数名の殺人や監禁をした尼崎事件」の首謀者(拘置中自殺)とされる女性は当時64歳
「宝塚市役所放火事件」の容疑者は63歳
「堺女性傷害致死遺棄事件」の被告は63歳と57歳の女性
「栃木茂木町の整骨院院長殺害」の被告は60歳

暴走老人は元都知事だけでなく全国で出没しているということです。

また凶悪事件というのではありませんが、被害者や遺族からすると同様な感情を持ってしまいそうな交通事故、特にブレーキとアクセルを踏み間違えてしまうクルマでの暴走事故は特に高齢者ドライバーに多く見られます。

駐車場で暴走のクルマ、フェンスを突き破って15m下に転落
2013/8/14(奈良県 運転者74歳男性)

屋台に車突っ込む 子供ら5人重軽傷 東京・羽村の公園
2013/8/12(東京都 運転者70代男性)

ペダル踏み間違えで暴走、時計店にクルマ突っ込んで客が負傷
2013/8/9(北海道 運転者85歳男性)

兄弟はねられ9歳重体
2013/8/8(山口県 運転者77歳男性)

ペダル踏み間違えのクルマが歩道で暴走、歩行者をはねる
2013/5/11(北海道 運転者76歳男性)

ちょっと古い資料ですが、ブレーキの踏み間違いで起きる事故は年齢別には運転未熟者が多い19〜29歳がもっとも多く、次いで70歳以上、次が60〜69歳となっています。(平成18年交通事故総合分析センター)

この手の事故は、今後高齢者ドライバーが増えていくにつれまだ増えそうな勢いですが、各社から衝突防止装置の付いた新車が続々と出てきていますので、それに期待したいところです。ただ年金以外に収入のない一般的な高齢者が、割高な最新装備のついたクルマに買い換えるのか?というとはなはだ疑問が残ります。

私が近所のスーパーの駐車場で目撃したのは、70歳以上と思われる小柄なおじいさんが運転する軽バン自動車が駐車場に入ってきたものの、なかなかまっすぐに停められず何度も切り返しをしていました。しかもバックする際には左右に停まっている他人のクルマにガンガンぶつけながら切り返しをしているのです。それを間近で見ていた人が、おじいさんに注意をしたところ、「え?」と驚いて降りてきて、ぶつけたところを見ているのです。つまり何度もガンガン大きな音を立ててぶつけているのに運転している本人だけが気がつかなかったというお粗末さ。おそらく運転初心者ではなく何十年と運転歴のある人だと思いますが、歳を取るとそうした運転感覚や距離感が鈍るのでしょうね。

犯罪の話しに戻りますが、内閣府の「高齢社会白書」によると、平成19年の高齢者の一般刑法犯検挙数は「窃盗」が65.0%と最も高く、次が「横領」で22.0%、以下「暴行」3.7%、「傷害」2.3%と続いています。「窃盗」の多くは万引きと考えられ、「年金暮らしで生活費がかつかつで、、、」というパターンが多いそうです。

なにか昔だと「道徳は親や祖父母から教わる」「老人を労り、敬いましょう」的なことをよく言われましたが、現代における道徳教育は「高齢者の手癖の悪さは学んではいけない」「高齢者を見れば泥棒と思え」となっていきそうな勢いです。

高齢傷害・暴行事犯者の犯行時の動機・原因としては、「激情・憤怒」が63.9%、泥酔しているなど飲酒による影響が顕著に認められた「飲酒による酩酊」が14.3%、「報復・怨恨」が6.8%となっています。

最近よく聞く「キレる老人」は6割を超えるこの「激情・憤怒」で、今の60代はまだ人並みに体力や俊敏姓もあり、それが暴力事件や傷害事件へと発展していくのでしょう。なにかで読みましたが、60代で痴呆症を患っている男性を介護する場合、体力で劣る女性では気に入らないことがあるとすぐに暴れる患者は抑えられず、殴られたりして体中青あざだらけになると書いてありました。

65歳を超えた団塊世代の一部には、若いとき学生運動に情熱を傾けていた人も多く、そういう人にとっては会社勤務というタガが外れ、子ども達は巣立ってしまい、社会や家庭の中で自分の居場所がなくなってくると、沸々とわき出てくる情熱をぶつける対象がなくなり、アルコールへ逃避したり、酔った勢いで暴力行為に走ってしまうということも起きそうです。

そのアルコールですが、特徴的なのは「犯行時に飲酒が認められた者」は高齢傷害・暴行事犯者全体の53.7%と高く、他の年齢層と比較して多くなっています。私はよくタバコの被害よりも、ずっと多くの悲劇を生み出す飲酒こそ真っ先に規制すべきと主張しています。

飲酒運転による死亡事故や、酒が入った上での喧嘩やセクハラ、痴漢など、飲酒が引き金になった事故や事件の被害のほうが、喫煙による周囲の被害よりずっと大きいので、公衆の場所で販売や提供を制限・禁止をするのなら、タバコではなくまずはアルコールではないのか?と思ってしまいます。

あと、週刊朝日に掲載されていましたが、慶応大学の太田達也教授と警察庁が共同で調査したところ、同じ高齢者でも、単身世帯と子ども達など家族と同居しているか、またはよく行き来ががある場合とでは、その高齢者が犯罪を犯す率が大きく違ってくるそうです。当然気遣ってくれる家族が身近にいない単身世帯のほうが犯罪発生率は高くなります。

「社会的孤立」と犯罪には相関関係がありそうですが、先に起きた山口周南市の5人殺人放火事件の容疑者も、父親が存命中は問題は起きず、亡くなってから集落の中で孤立していったことが伝えられていました。今後の高齢化社会において憂慮すべき点でしょうね。


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消滅すると言われていた新聞社の近況 2013/8/24(土)

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「2011年新聞・テレビ消滅」佐々木俊尚著というのが大昔に話題になった気がしますが、そういえば私も大昔に「新聞・テレビが2011年どころか10年後でも消滅しない3つの理由」というのを書いた記憶があります。

一部の地方新聞社や業界新聞社は別として、テレビ局や全国紙、一定規模以上の地方紙の新聞社がつぶれたという話しは2010年以降トンと聞きません。他の産業、例えば製造業や金融業、サービス業、旅館、建設・土木会社等のほうが廃業や倒産する割合ははるかに高そうです。

ちなみに2010年以降に廃刊、休刊となった新聞は、日本繊維新聞、南三陸新聞(東日本大震災のため)、建設日報、岡山日日新聞だけです。2010年までに財政基盤の弱いところはすでにつぶれたとも言えますが。

放送局(テレビラジオ)に至っては、2010年に愛知国際放送が廃業したぐらいで、地方局でも親会社が破綻したり経営悪化による事業譲渡はいくつかありますが、放送局自体がつぶれたところはありません。これは免許制度の恩恵かも知れません。

また新聞社や放送事業者は、その本業以外の関連事業への進出や強化も評価していいかも知れません。新聞社と直接的な関係はありませんが、各地にある新聞販売店も従来からの折込チラシの収入に頼るのではなく、最近は廃品や古物の回収、食料品・日用品の宅配事業などへ進出するなど、その業態が大きく変わろうとしています。

新聞・テレビの主たるユーザーは、子供の頃から新聞・テレビと共に泣き、笑い、喜び、怒ってきた概ね60歳以上の人々と言えますが、その中でも特に巨大な団塊世代の層が65歳を越え、おそらく今後まだ10年は、そのまま新聞・テレビの一番の愛好家として、些細なことですぐクレームの電話を入れたり、熱心に投書を出したりとしっかり盛り上げてくれることでしょう。

不思議なのは、テレビ局で、ゴールデンタイムはどのチャンネルを見ても若手お笑い芸人や場を盛り上げるリアクション芸人を大量に出演させたくだらないバラエティ番組ばかりですが、これは決して高齢者向けとは言い難く、若い世代向けです。

高齢化社会のテレビ番組は、囲碁や将棋、盆栽、家庭菜園、健康、料理、歴史ドキュメンタリー、映画、ドラマ、紀行、プロ野球、クイズばかりやっていればいいのかというと、スポンサーは新しいものを欲しがらない年金生活者よりも、流行にすぐ飛びついてくれる若い人に商品を売りたいので、どうしても若い人を集める番組を作らなければならないというのが実際のところでしょう。

さて、新聞社ですが、実は私も佐々木俊尚氏ほどは極端でないにしても、もっと早く衰退していくかな思っていました。

下のグラフは、新聞の発行部数(朝刊、夕刊、スポーツ紙合計)の推移と1世帯当たりの部数推移です。1世帯当たり平均1部を切ったのが2008年からですから、この調子でいくと数年後には、、、と思っても不思議ではありません。また現在も下げはとまっていません。



それは例えば団塊世代が現役を引退する2007年頃から始まり雇用延長した65歳も越える現在、少なくとも仕事絡みで読んでいた日経新聞や複数紙を購読していた新聞を1紙にあらためることによって、購読数が激減していくものと考えられ、現実もこの12年間、毎年平均で50万部づつ減らしてきています。新たな若い層の読者が増えないというのももちろんですが、2003年から2012年の10年間だけでみても発行部数は約11%減となっています。

名古屋に住む人の多くは主に中日新聞を購読し、ビジネスマンならあと日経新聞、さらに全国紙の朝日か読売というように複数の新聞を購読している人が多かったように思います。

年金生活に入れば、株をいっぱい持って投資活動をしている人以外は、普通なら全国紙(名古屋の中日新聞や京都の京都新聞など地方在住の場合はブロック紙や地方紙1紙の場合もあり)1紙だけになってきているはずです。それでも新聞社はなんとか持ちこたえていることに感心しています。

下表は、全国紙5紙とブロック紙3紙の2012年度売上高、利益、平均発行部数(日経新聞の売上・利益は2011年度)です。



意外と言うと失礼かもしれませんが、どこの新聞社も健闘していて、赤字は毎日新聞社だけです。

その理由は、赤字の毎日新聞社を含め、新聞発行以外に様々な事業をおこなっているからです。特に大手新聞社は一等地に自社ビルを持っていて、不動産事業などそれらからの収入が大きく貢献して黒字を出しているところが多いのだと推察できます。推察というのは新聞社の多くは非上場のため、事業ごとの損益が非公開のため詳細はわかりません。

そして実態としては各社とも本業部門は火の車状態で、今後メインの新聞事業をどうしていくかというのが最大のポイントとなっています。個人的には土・日曜日などに自宅でゆっくりと新聞を開くと、ネットにはない貴重な情報や知識などが得られ、今でも十分にいい役割をしていると思うのですが。歳のせいでしょうかね。

もちろん日経を始めとして紙から電子版への移行や共存など、あるいはネットとうまく融合させて双方向性をもたせる記事など、様々な取り組みがおこなわれていますが、アメリカで数年前に起きた新聞社淘汰の嵐は、本格的に日本にもまもなく上陸することは間違いありません。

ただ日本ではアメリカと違い、新聞の宅配システムが全国隅々まで機能していて(限界集落や、準限界集落ではすでに危ういですが)、団塊世代という非常に大きく熱心な購読者層がまだ紙の新聞を見放していないことが大きいと言えます。視力の落ちた高齢者にとって、今さら小さなスマートフォンやタブレットの画面で新聞を読みたいとも思いませんし、それが数年のうちにガラリと変わってしまうことも思えません。

平均年収が高い職業の代名詞として、過去には銀行や証券、保険業などがありましたが、最近ではテレビ局と新聞社というのが一般的によく知られています。平均年収は朝日新聞社で1,252万円、日本経済新聞社で1,201万円(朝日2011年度、日経2010年度全社員平均)で、テレビ局ではフジ・メディア・ホールディングスが1,510万円、日本テレビが1,425万円とのことで驚かされます。

こうした社員への大判振る舞いがいつまでも続くとはとても思えませんが、少なくとも団塊世代がもう新聞を読めなくなる、必要としなくなるであろうあと10〜20年間は、縮小は迫られるもののまだまだマスコミの主役として安泰と言えるのかも知れません。


【関連リンク】
687 旺盛な高齢者の労働意欲は善か悪か
582 新聞に想うこと その2
581 新聞に想うこと その1
537 新聞・テレビが2011年どころか10年後でも消滅しない3つの理由
382 マスメディアと評論家を信じてはいけない
358 テレビ・新聞に未来はない?
341 新聞、雑誌、書籍など紙媒体はなくなるか?


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それでも日本の解雇規制は緩すぎる 2013/8/28(水)

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以前から「日本は解雇規制が厳しく人材流動性に乏しい」「中高年を解雇できないから若い人の採用が進まない」などの話しを読んだり聞いたりするたびに、すごく違和感を感じていました。

なぜなら私自身10年ほど前に、自身の希望に反して勤務していた会社から簡単に解雇された経験があり、その会社の同僚十数名もほぼ同時期に軽々しく解雇されたという経験があるからです。

会社の業績がいざ傾くと、経営者は自分達の責任をまず棚に上げ、立場の弱い人間から順にスケープゴートに仕立てていくのが通例です。立場の弱いというのは決して非正規社員というだけでなく、部長や執行役員といった責任ある立場の人にも向かいます。

会社の業績が悪化するのは、社会情勢などもありますが、一般的には経営者とその下にいる執行役員や各部長の責任が大でしょう。

だから責任は上層部にあるわけですが、誰が責任を取るかを決めるのは一握りのトップなので、割を食うのはいつも執行役員や部長クラスということになります。

どうしても納得がいかない場合は解雇に抵抗するという方法もあります。

職安や労基署、それにいざとなれば裁判で不法行為を訴えかけることもできます。

しかしどれほど正当性のある言い分があったとしても、実際問題として、決着するまでに時間がかかり、精神的にも経済的にも追い詰められていくそのような事態はできれば避けたいと思うのが人情です。またそれまで世話になってきた会社や同僚といざこざを起こしたくないという心理的な要素もあります。

入社以来世話になった人や、仲のよかった人事責任者などに諭されれば、普通はあきらめて解雇に応じる人がほとんどではないでしょうか。また残ったとしても、そのような冷たい会社や経営者の元で、その先はつらい日々が待ち受けていることも容易に想像ができます。

私は勤務した経験はありませんが、外資系企業では、もっとドライで、日本であっても個人業績の悪い人や部門の縮小や閉鎖により、簡単に社員の解雇が言い渡されます。外資系だから日本の法律は守らなくてもよいわけではなく、法律を守って整理解雇を普通におこなっているわけです。

そういう整理解雇が普通におこなわれている日本で「解雇規制が厳しくて」と言われても「どこがだよ?」と言いたくもなります。

それをある意味裏付ける資料として、独立行政法人労働政策研究・研修機構が「従業員の採用と退職に関する実態調査」を7月31日に発表しました。

それによると、
ここ5年間に正規従業員に
 退職勧奨を行ったことが「ある」16.4%
 特に「1000人以上の会社」では30.3%、「300〜1000人の会社」で23.1%と高率
 普通解雇をおこなったことが「ある」16.0%
 整理解雇をおこなったことが「ある」8.6%
 普通解雇と整理解雇のいずれかをおこなったことが「ある」20.7%
 整理解雇で退職金割り増しなど特別な措置を実施して「いない」24.7%
 解雇の通告時期は「1ヶ月ほど前」が47.5%ともっとも高い

というデータがあります。
(50名以上の民間企業2万社のうち回答があった5964社のデータ)

これらからすると、事件や事故を起こして一方的に解雇される懲戒解雇ではなく、本人にさほど大きな理由がなくとも解雇を言い渡される「整理解雇」や「普通解雇」は、5社に1社の割合であり、もはや決してレアなことではなくなっていることがわかります。

さらに解雇の際に退職金割り増しなど優遇策がないところが4社に1社。解雇通知は1ヶ月前というのが2社に1社の割合。1ヶ月前では転職準備もなにもあったものではなく、欧米でよくある一時帰休「レイオフ」などよりも、もっとひどい実態が明らかになっています。

付け加えておくと「懲戒解雇」ではなく、「普通解雇」の場合、その理由として「非行」や「無断欠勤」「仕事に必要な能力の欠如」などともっともらしい理由が付けられますが、もし本当に重大な問題を起こしているのなら「懲戒解雇」にすべきで、あえて「普通解雇」にしているところは、解雇する側にもなにかしら問題があったり、辞めさせるために無理矢理に評価を落として痛み分けをしようという企業側の卑しい魂胆も見え隠れします。

あとこの調査を見て、ちょっと疑問に思うのは、中小零細企業のほうが実質的な解雇はもっと多いのではないかなと言うことです。つまりこのアンケート調査には現れてこない、中小企業では当たり前におこなわれている「自己都合退職」という名の実質解雇です。

中小零細企業には多いワンマン社長の元で働く人は、そのワンマン社長に気に入られるとトントン拍子に出世していきますが、そうでなければ、特に、ワンマン社長に逆らうことの多い社員や、給料が高くなる中高年になるといつ肩叩きがされるかわかりません。

また、中小零細企業の場合、不景気で一部の部門を閉鎖した場合、大企業のように他部門で吸収することができず、余剰人員となってしまいます。

そのような場合、中小零細企業では大企業や外資系企業のような法律に従った解雇ではなく、本人から自己都合で辞めると言い出すようにし向けることが普通におこなわれています。それらはこの調査で言うところの「普通解雇」や「整理解雇」にはカウントされません。

したがって、上記の調査はある一定規模以上の大会社の数値は比較的信用できますが、中小企業が自ら出す数値にはあまり信憑性があるとは言えません。もしそれでも比較するなら自己都合も含めた離職率(年間退職者数/全社員数)を比較して見れば、中小零細企業の離職率が大手企業と比べて高いかがわかるでしょう。

結局は「人材の流動化」や「若者の正社員雇用をしやすく」という名の元で、雇用・解雇規制の緩和や撤廃が議論されるのは、独立した労働組合組織があるような大手企業だけの問題で、御用組合に成り下がっていない組合だと、解雇するのが難しいものだから、それをなんとかしたいという大手企業側からの要請に応えるものと考えられます。

ま、研究者や学識者というのは国や自治体からの支援だけでなく、そういう大企業にスポンサーになってもらって研究活動費を援助してもらったり、共同研究をおこなったりすることが多く、大企業に有利な結果を導くことが自らの利益にもつながることから、そういう議論がいつまでも続くのでしょう。


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