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日本の農業はどこへ向かうか マイカーで東京から京都まで旅行する場合 ゴルフをプレイしている人の年代層割合に驚いた 世界と日本の宗教別信者数 2021年版出版社不況 客員教授と非常勤講師ってなんだ? ロバート・B・パーカー「スペンサーシリーズ」全巻まとめ 窓ガラスの熱割れで火災保険は使えるか? 天然素材でも綿はよく燃えるらしいことがわかった やっとのことでJ:COMを退会した 貯まった1円玉はどうする? 自動車整備士に未来はあるか? 液晶テレビが壊れた件 リタイア後の心配事 運転免許証取得者は意外にも増えている 著者別読書感想INDEX −−−−−−−−
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リストラ日記アーカイブ 2021年9月 読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。 日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです |
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---------------------------------------------------------- 8月後半の読書と感想、書評 2021/9/1(水) 1566 運命のコイン(上)(下) (新潮文庫) ジェフリー・アーチャー 原作は2018年に、日本では2019年に発刊された長編小説で、以前読んだ短編集「嘘ばっかり」(日本版2018年刊)にそのプロローグというか第1章がすでに書かれていたという変わったスタイルでした。 1960年代後半、旧ソ連に住んでいた親子のうち、父親が労働組合設立を進めていたことが発覚し、KGBに惨殺され、さらに母子にもその災いが起きそうになり、旧ソ連から脱出することになります。 港から外国船に密航して脱出する際、アメリカ行きかイギリス行きのどちらの箱に入るか、コイントスをして決めることになります。ここまでが、第1章です。 そしてその後は、「ケインとアベル」や「クリフトン年代記」などとも共通する、貧困と絶望からの復活と成功物語が展開していきますが、これまたスタイルが変わっていて、アメリカへ渡った場合と、イギリスへ渡った場合が、同時並行で語られていきます。 最初はどうなのよーと思いましたが、まるでそれぞれが別人格の物語で、よく考えられていて楽しめます。 まだ未読の方もいると思いますので、クライマックスは書きませんが、米英それぞれに向かって成功した二人の主人公が、同時期に生まれ故郷のレニングラードに向かいます。 著者の長編ではお馴染みの主人公を徹底的に貶める悪役はソ連時代にはKGB将校で迫力ありましたが、渡米、渡英後は、同級生のライバルだったり、仕事上の元社長だったりで迫力不足、どちらかと言えば、都合の良い味方が多く出てきて安心して読めますが、ドキドキ感は薄まっています。 長さも、第7部あり、しかもそのほとんどが1部あたり上・下巻ある「クリフトン年代記」と比べると、中篇か?って思うぐらいの分量で、サクッと読めてちょうど良い感じです。 著者が描く「政治家とビジネスマンの成功物語」は、ちょっとワンパターンで飽きてきましたが、なかなか面白かったです。 ★★★ 著者別読書感想 ジェフリー・アーチャー シャーロック・ホームズ対伊藤博文 (講談社文庫) 松岡圭祐 2ヶ月前に読んだ「黄砂の籠城」(2017年)のすぐ後に発刊された歴史長編小説で、タイトルでもわかるように、この二人が主人公です。 シャーロック・ホームズの小説は、子供の頃に読んだぐらいであまり詳しくないのですが、1891年から1894年まで主人公ホームズが行方不明(著者アーサー・コナン・ドイルが作品を書かなかった)だった時期があり、その時期に実は明治時代の日本へ渡って大きな事件を解決していたという想定です。 一方の伊藤博文は1863年に密航して渡英(事実)していて、その時に子供時代のホームズと会って親交があり、殺害した大物悪党モリアーティの残党から逃れるため、密航して日本にやってきたホームズを大英帝国の息がかかっていない日本でかくまう役目で、実質的にホームズの相棒ワトソン的な役目です。 ホームズがやってきた1891年(明治25年)の日本はというと、明治維新後に大日本帝国憲法が1889年に公布された直後で、まだ工業力などでは欧米先進国には遠く及ばない状態です。 また伊藤博文は初代総理大臣を1期務めたあと、枢密院議長に就任していた頃で、日清戦争(1894年〜)、日露戦争(1904年〜)以前で日本に食指を伸ばそうとしていたロシア帝国から来日していた皇太子・ニコライ(後の皇帝ニコライ2世)が滋賀県を旅行中、警察官に切りつけられ負傷するという「大津事件」が起きた直後でした。 その「大津事件」で謀反人を死刑にしろと圧力をかけてくるロシアと、法治国家として傷害事件で死刑にはできないという政府重鎮(伊藤)との間にはいり、事件の謎解きにホームズが大活躍し、さらにその後、日本を攻撃する理由を作るためのロシアの策略を暴いていきます。 こうした実際に起きた時代背景を元に、そのタイミングでちょうど行方不明だったホームズが事件の陰で活躍していたという発想はお見事!としか言いようがないです。 タイトルからすると、「ルパン対ホームズ」みたいに、この二人が対決する?と思われがちですが、もちろんそんなことはなく、上記にも書いたように伊藤はワトソンの役目を果たし、ホームズが日本国内で自由に動けるよう様々な恩恵を与え、さらに、事件解決後には英国女王陛下に願いでて恩赦が得られるようにしてくれます。 ★★★ 著者別読書感想 松岡圭祐 経済危機のルーツ モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか 野口悠紀雄 最初は海の向こうの話しと思っていたら、日本経済をも直撃したリーマンショックで、製造業を中心に大不況が訪れ、経済が疲弊した時代の2010年に発刊されたビジネス書です。 著者自身が、理工系でありながら大蔵官僚出身で、金融工学にも深い造形があり、リーマンショックを引き起こした金融証券ビジネスの光と影、そしてその影響で製造業が大打撃を受けた構造について詳しく、起きるべくして起きた現象として解説されています。 内容は著者が得意とする高度成長期以降の70年代に起きたニクソンショックからオイルショック、東西冷戦終結、土地バブル、ITバブル、そしてリーマンショックまで、世界と日本で起きた様々な経済危機を掘り起こし、世界はどう動き、日本はなぜ動けなかったなどを解説していきます。 こうしたわかりやすい解説は、中途半端な知識しかない私にとって助かりますが、結局は過去に起きたことをデータなどとともに「こうだった」と言っているだけで、なにか眼新しさや、目からうろこというような話しではありません。 90年代にアメリカと英国が、見事に脱工業化を果たし、金融など付加価値が高い労働やビジネスに移行したのに対し、日本やドイツは旧来の製造業から脱却できず、当初は他山の石ぐらに思っていた金融危機が回り回って製造業を基幹産業とする国に大打撃を与えたという構造はわかりやすいです。 評論家というのは、そうした結果を見てあーだこーだと言えるので、そういう意味ではズルイ存在です。 一方では未来の予測や現在進行形のことについて話すのは目立ちたがり屋で怪しげな人ぐらいで、優秀で保身を考える人は言わないものです。 アメリカの有名大学へ留学経験があることや、東西ドイツの壁の崩壊前に東ドイツへ旅行して決死の覚悟で壁の写真を撮ってきたこと、世界の有名人と懇意であることなど自慢たらしい話しが、何度も繰り返されるのがちょっと鼻につきますが、そうした過去の栄光を、自慢気に語りたくなる高齢者なのでその点はご愛敬なのでしょう。 ★★☆ 【関連リンク】 8月前半の読書 地のはてから、父の戦場、誰かのぬくもり、号泣する準備はできていた 7月後半の読書 生きて帰ってきた男、震源、もらい泣き、時砂の王 7月前半の読書 宇宙を読む、夏の情婦、永遠の出口、無人島に生きる十六人、MISSING ---------------------------------------------------------- 退職して無職・無収入の身に起きること 2021/9/4(土) 1567 リタイアしたのは昨年6月なので、すでに1年以上経ちました。その間に起きた、マネー関連についての出来事を書いておきます。 早期リタイアは、リストラや会社の倒産のように、ある日突然通告(通知)されて、明日から路頭に迷うということはなく、特にマネーについてはあれこれ考え、「これならいけそう!」となれば初めて踏ん切れるものです。 頼れるのは、私の場合、一部は63歳から受給できる年金と、今まで貯めてきた貯金、投資用の株式ということになります。 私は退職時には役員に就いていたため、失業保険は受給できませんでしたが、雇用保険に加入していれば、ハローワークへ行って「再就職する気は満々です!」という姿勢を見せつつ、失業保険はもらうべきでしょう。 ハロワの職員達(窓口にいるのはほとんど非正規)は、できれば払いたくないという雰囲気で、偉そうにしていて険悪なムードですが、そういうのは一時の我慢です。 株式の評価額は、当然日々変動するのと、売却後には利益に対して税金がかかることもあり、決して大きくは見込まず、ここ5年間ぐらいの推移をみて「これよりは下がらない」という線と、売却益の2割の税金分を念頭に置いて計算しておきます。もし実際に浮けばちょっとしたボーナスです。 さらに株式は売る(売れる)タイミングというものもあり、すぐに引き出せる普通預金とは違います。これは結構重要な点です。 そして、退職後に待っている大きな支出です。 その前に、あっさりしていますが、下の記事が参考になります。 退職後に訪れる「3つの支払い」放置で起こり得る最悪の事態(Mocha) その要点は、 (1)退職後の健康保険は国民健康保険に切り替わる (2)退職後の年金は国民年金に切り替わる (3)退職後の住民税は後払いシステム です。 (1)の健康保険は、退職すると、多くの場合はそれまで加入していた健保の任意継続する人が多いかも知れません。これは国民健康保険料と比較してどちらが安く済むか?を計算してすぐに選択しなければなりません。
国民健保は収入に応じた保険料が決まっているので、市区町村のサイトを見て計算することが可能です。 その二つを並べて選びますが、健保組合によっては様々なサービス(直営の健診設備や格安保養所、スポーツ・旅行補助金など)が充実している場合もあり、もし僅差なら健保組合のほうがお得な場合があります。 ただ気をつけないといけないのは、収入が一切なくても毎月結構な額の請求(引き落とし)が来ることになります。 また私のように扶養家族がいる場合、当然その分も加算されます。 私は、収入がないのに毎月支払う(振り込む)のも面倒なので、任意継続で、最初の2ヶ月分(8.6万円)と、その後6ヶ月分(約25.5万円)を前納しました。思わぬ金額のデカさで青くなって貯金をまとめて引き出すことになりました。 (2)の厚生年金から国民年金に変更については、私の場合、退職時にはすでに年金の支払期間60歳を過ぎているので新たな費用は発生しません。 もし60歳以前に退職した場合は、その月から第1号被保険者として国民年金保険料(1ヶ月16,610円)が必要です。さらにそれまで扶養家族の第3号被保険者の妻がいた場合、その妻の国民保険料も新たに必要です。 つまり扶養家族の妻がいる場合、退職して無職(無収入)になると、いきなり毎月二人分33,000円の国民年金保険料を負担することになります。1年間で二人分だと約40万円が必要です。デカいです。 (3)の住民税ですが、忘れがちですが後払いになっています。新卒で就職すると1年目は住民税の負担がなく、「意外と手取りが多い!」と喜び、毎月キッチリ使っていると、2年目から住民税がしっかり引かれて手取り額が減り「あれれ?」となってしまう経験をした人もいるでしょう。ハイ私のことです。 住民税は勤務時代は前年分を毎月(12ヶ月)均等払いで給料から差し引かれていますが、退職して無収入になったとたん、御無体にも残り分(次の3月分まで)が一括して請求されます。 私の場合、6月退職なので、7月〜翌年3月までの9ヶ月分の住民税(県民税、市民税)、およそ11万円(自治体や前年の所得によって違います)が一気にやってきました。 まだそれだけではありません。 退職後の4月以降、新たな住民税額の計算は前年4月〜3月までの所得で計算されます。 私の場合は、前年度は4〜6月まで3ヶ月間の勤務だったので、年間所得は少なく救われていますが、もし1月の退職で9ヶ月間の所得を元に住民税を計算されると、退職して無収入なのにその年の住民税額は結構な額になります。退職後すぐに払うか、翌年に払うかの違いだけですけどね。 たまに、大ヒットした漫画家さんが、一攫千金の慣れない高収入を手にして、家を買ったり高級車を買ったりして使いまくった後、翌年に住民税がドカッとやってきて慌てたという話しを聞きますが、これですね。 退職後1年以内にやってくる請求額は年間合計すると、下記の通り、102万3千円にもなります(私の場合は60歳を超えての退職のため国民年金保険料は払わないので、627,000円)。 健康保険料 510,000円(任意継続の場合、夫婦) 国民年金保険料 396,000円(60歳未満で退職の場合、夫婦) 住民税(前年の所得額と今期未払い期間による) 117,600円(私の場合) 退職直後の大きな出費は以上ですが、その他にも、 ・通勤定期(現物や相当額)を支給してもらっていた人はそれがなくなる ・PCや携帯電話の貸与を受けていた場合は返却 ・会社の福利厚生施設や割引購入、団体割引加入などが使えなくなる ・会社の寮や家賃補助があった場合は、引越したり、それがなくなる などなど。 当たり前のことばかりですけど、今まで当たり前だった事柄が、退職して初めて気がついて不便になると言うことがありそうです。 例えば、昔、住宅を買った時に住宅ローン減税を受けるためと、足の手術をした時に高額医療費控除の確定申告をした時以外は年末調整で済ませてきましたが、退職後は自分で調べながら確定申告をする必要があります。これが結構面倒です。 最後に良かった話しとして、確定申告をした際、その年に支払った任意継続保険料(翌年3月までの半年分一括)の額が大きく、昨年度4〜6月の3ヶ月間だけ働いて支払った所得税の一部が戻ってきたり、その前年の所得から保険料が差し引かれて大きく減じ今年の住民税が下がりました。 面倒なことはなんでもやるべきです。それが身を助けます。 【関連リンク】 1547 リタイアして1年 1542 退職後初の健康診断は残念な結果に 1465 リタイア後、日々やってきたこと 1394 あと半年に迫ったリタイア準備 ---------------------------------------------------------- 2021年7〜8月にみた映画 2021/9/8(水) 1568 悪の法則(原題:The Counselor) 2013年 米 監督:リドリー・スコット 出演者:マイケル・ファスベンダー、キャメロン・ディアス、ブラッド・ピット 監督は「エイリアン」(1979年)や「ブレードランナー」(1982年)など大ヒット作をいくつも出している名監督で、最近では「オデッセイ」(2015年)が最高に良かったです。 ストーリーはなかなか複雑で、有能な若い独身弁護士の男性が主人公ですが、友人から誘われて一度だけ麻薬ビジネスに手を出したことで、犯罪組織に狙われる身となり破滅していくというのがザックリした内容です。 ワイヤーマンという殺し屋が使う、路上にワイヤーを張ってバイク乗りの首をはねるシーンとか、首に巻き付けるとモーターで自動的に締めていく殺人具とか、かなり刺激的な内容を含み映画館ではR15指定だったそうです。テレビでの放映ではかなりの部分カットされている感じで、さほど残虐な感じはしませんでした。 カッコいいブラッドピットは珍しく脇役の出演で、途中までは主人公を助ける役目でしたが、自らも犯罪組織に追われ、悲惨な最期を遂げます。 またお色気たっぷりなキャメロン・ディアスは、映画公開当時41歳ですが、元々セレブだけあって富豪の愛人?を演じればまさに生き生きしています。 アメリカの上流社会と、そこに食い込み、やりたい放題の犯罪組織という構図が描かれ、どうも後味はあまりよろしくない感じです。 ★★☆ 断崖(原題:Suspicion) 1941年 米(日本公開1947年) 監督:アルフレッド・ヒッチコック 出演者:ジョーン・フォンテイン、ケーリー・グラント 太平洋戦争が起きた1941年に公開されたサスペンス映画で、日本での公開は戦争が終わった後の1947年でした。 毎度書きますが、戦争中によくこのような娯楽大作映画を作れるものです。こんな国に対し戦争を仕掛けるほうがどうかしています。 監督のヒッチコックは元々英国人ですが、ハリウッドに注目されて1939年にアメリカへ移り、すぐ後に作った「レベッカ」(1940年)でアカデミー作品賞を受賞します。 この作品はそのすぐあとに製作されたもので、アカデミー賞でジョーン・フォンテインが主演女優賞に輝いています。一番脂がのっていた時期のような気がします。 その主人公の女性は、上流家庭での令嬢でありながら、軽薄そうで不良っぽい男性にひかれてしまい、親の反対を押し切り駆け落ち同然で結婚します。 しかし夫はろくに働かず借金をして競馬場通い、やっと友人の会社に就職しても、その会社の金を詐取し、黙ったまますぐに辞めていたりして不信感がつのっていきます。 そうこうしていると裕福な女性の両親が亡くなり、莫大な財産を引き継ぐことになりますが、夫が妻の財産を奪おうと目論んでいるのでは?と思うようになり、心理的にどんどん追いつめられていきます。 サイコホラー的になってきて、いよいよヒッチコック監督お得意のパターンです。 ま、さすがに、夫役の大人気俳優ケーリー・グラントを極悪人に仕上げるようなことはないと最初から思っていましたが、それにしても破天荒な夫で、ハンサムだけどこういう男を旦那に持つとたいへんという教訓が満ちあふれています。 ★★☆ ミッドナイト イン パリ(原題:Midnight in Paris) 2011年 米(日本公開2012年) 監督:ウディ・アレン 出演者:オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス パリで撮影したスペイン製作のアメリカ映画というややこしい権利関係で、監督と脚本を務めたウディ・アレンがアカデミー脚本賞を受賞しています。 内容も複雑で、見せ場はアメリカ人の主人公が、フランス人妻をめとりしばらくパリに在住していた時のこと、夜の道で迷い込み、1920年へタイムスリップし、作家を目指している主人公にとって憧れのF・スコット・フィッツジェラルドやジャン・コクトー、アーネスト・ヘミングウェイなどと出会います。 さらに、自分で書いた小説を見せに行ったガートルード・スタインのサロンではピカソやサルバドール・ダリとも出会うことで、この時代の華やかさと魅力にのめり込んでいきます。 一方では結婚したばかりの妻は、言動がおかしくなった夫に愛想をつかし、友人と浮気していて短い結婚生活に終わりがやってきます。 結局、なにが言いたいのかはよくわかりませんが、芸術の栄華を極めた1920年のパリの社交界を再現し、そこに迷い込んだ21世紀の主人公が舞い上がるという荒唐無稽なエンタメ映画なのかなぁというのが実感です。 こうした1920年代に輝いた芸術に造詣深い人が見るとまた違って見えるのかも知れません。 なお、タイトル名が似ている「ラストタンゴ・イン・パリ」(1972年伊)は、マーロン・ブランド主演のエロチックな問題映画?で、まったく関連性はありません。 ★★☆ 記憶にございません! 2019年 東宝配給 監督:三谷幸喜 出演者:中井貴一、ディーン・フジオカ、石田ゆり子他 三谷幸喜の長編映画監督8作目で、フジテレビ開局60周年記念作品の同映画では、日本アカデミー賞の最優秀脚本賞(三谷幸喜)と最優秀主演男優賞(中井貴一)を受賞しています。 主人公は、品がなく横暴な総理大臣で、テラスで演説をしていた際、聴衆から投げられた石にあたり入院、記憶喪失になってしまうところから物語が始まるコメディ映画です。 記憶喪失になったことを総理周辺は必死で隠そうとしますが、今までの横暴さが影をひそめ、混乱していた政治も落ち着いてきます。 総理大臣の妻は、とっくに愛想を尽かしていて、秘書官と関係がデキていてそれが雑誌にすっぱ抜かれましたが、生まれ変わった総理大臣が今までの自分は間違っていた、許してくれと謝罪することで円満に解決していきます。 なんとノー天気な政治映画ですが、今の影絵みたいな存在感のない政治家を見ていると、例え横暴でも味のあるリーダーや、女性党首ながら男気?のある野党を国民は期待しているのかな?と思ったり。 いかにも三谷映画で、その内容になにか秘められたものがあるということはなく、めでたしめでたしで幕を閉じるのでした。 ★☆☆ 戦場(原題:Battleground) 1949年(日本公開1950年) 米 監督:ウィリアム・A・ウェルマン 出演者:ヴァン・ジョンソン、ジョン・ホディアク 1944年の大戦末期のヨーロッパ戦線が舞台で、バルジ作戦で大攻勢に出たドイツ軍とベルギー近郊のバストーニュで衝突したアメリカ軍第101空挺師団の小隊が苦戦を強いられつつ、天候が回復し、味方が支援に駆けつけるまで大きな損害を出しながら持ちこたえた「バストーニュの戦い」を描いた作品です。 以前見た「パットン大戦車軍団」のように個人のヒーローを賞賛するようなものではなく、傷つきながらも戦うしかなかった最前線の兵隊達の日々と苦悩、飛び交う砲弾や銃弾など、迫力あるシーンががよく表現されています。 アカデミー賞では脚本賞と撮影賞、ゴールデングローブ賞では助演男優賞と脚本賞に輝いています。 モノクロの映像といい、小隊単位での戦闘ということ、小銃など兵隊たちの装備が同じということで、テレビドラマで人気だった「コンバット!」とよく似た設定の映画です。 ただコンバットは1962年以降に作られたドラマや映画なので、こちらの映画をモチーフにしてヨーロッパ戦線でアメリカ地上部隊の小隊とドイツ陸軍の戦闘を描いたのかも知れません。 補充兵やベテラン兵、牧師や学者など、様々な出身や階層で構成された小隊の個人ひとりひとりの特徴がよく出ていて、なかなか見応えのある映画でした。 ただなぜか最前線で活躍していたはずの黒人兵士がまったく出てこなかったのは不思議です。監督の主義思想かな? 【関連リンク】 2021年5〜6月 新選組(1969年)、座頭市と用心棒(1970年)、パットン大戦車軍団(1970年)、シング・ストリート 未来へのうた(2016年) 2021年3〜4月 おしゃれ泥棒(1966年)、海賊と呼ばれた男(2016年)、天気の子(2019年)、心の旅(1991年) 、80デイズ(2004年) 2020年11〜12月 48時間PART2/帰って来たふたり(1990年)、レディ・プレイヤー1(2018年)、こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年)、天国は待ってくれる(1943年) ---------------------------------------------------------- ポストコロナの日本経済は 2021/9/11(土) 1569 以前、コロナ禍が収束したあとに待っているのは、東日本大震災後に新たに作られた復興税と同様新たな増税案だろうという話しを書きました。 □新型コロナワクチン接種を受けながら考えたこと 2021/7/10(土) その前に、「数年後、日本経済は危機的な状態になりそう」というのが下記の記事です。 財務省の「人災」で、これから日本経済に「倒産ラッシュ&大不況」がやってくる!(現代ビジネス)
この記事では主に内需(国内でのビジネス)を主として書かれていますが、大枠では今の日本経済は、高齢化と人口減少し縮小してきている内需で回っているのではなく、80年代のバブル以前と同様外需で回っています。 しかしコロナ禍で経済が疲弊しているのは世界共通のことなので、日本だけが今後輸出を増やしていけるとも思えません。 それだけに、上記の記事のように企業の税収が伸びているというのは異常とも思えますが、記事にもあるように、工場や販売拠点を閉鎖または縮小し、人員をカット、海外出張やPR活動を中止、積極的な投資活動も延期、中止するなど、経費を大幅に圧縮することで、思わぬ利益が出てしまったということがありそうです。 そのツケは今後どのように出てくるのか?記事の通り長い不況に陥ってしまうのか?顧客が尻すぼみで事業として成り立たなくなっていくのか?はわかりませんが、可能性はありそうです。 ただなんとなくわかっているのはアメリカの経済が好調に推移すれば、それに引きずられて輸出が伸びる(維持できる)可能性があるのと、中国などアジアの新興国がどれだけ日本の工業品などを買ってくれるか?というのがキーポイントかなと思ってます。 アメリカが日本から輸入をしてくれないと日本経済はガタガタになってしまうことは明らかで、アメリカ経済次第という他力本願なのと、誰が大統領でも貿易不均衡は見逃してくれそうもないので、輸出を増やした分、兵器購入などなにかでお返しをする必要に迫られます。すでにコロナの医薬品で大判振る舞いはしていますが。 また貿易相手国として指導者の考えや国民感情で突然政策やルールが180度転換してしまう可能性がある中国に頼るのも大きなリスクです。 その他、近隣の新興国も、自国の産業振興をメインとしてくるでしょうから、日本から輸出できるのは特殊な製品やサービスに限定されるので、日本の企業数の中で99.7%を占める中小企業にとってあまり魅力的な相手ではありません。 日本の脱工業化は当面まだ難しそうで、アメリカや英国などのようにうまく転換できる術はなく、総理大臣が誰に替わってもその過去の成功体験を元とした製造業重視の方向性は揺るがないでしょう。 そうしたことを総合的に考えると、株価も含め日本経済は今後下がっていく要素ばかりで、上がる可能性はどうも低そうです。 もし、日本再浮上を考えるなら、国際ビジネスや投資、金融に明るい人をトップや閣僚や事務官に登用し、脱工業化に邪魔な規制をすべて取っ払って自由に活動させることでしょうけど、80代、70代の高齢の政治家や企業トップがまだ権力をもっている中では反対勢力も強力でしょうから、それに対抗できるとも思えません。 どうやれば一気に政治も企業も世代交代が進み、一番経験があって頭が働く40代のリーダーが出てくるのか、それに期待したいところです。 【関連リンク】 1552 新型コロナワクチン接種を受けながら考えたこと 1544 コロナ禍で零細企業は生き残れるか 1505 日本のEVシフトは環境問題ではなく経済問題 1360 縮小経済と進むべき道 ---------------------------------------------------------- 9月上旬の読書と感想、書評 2021/9/15(水) 1570 蝶 (文春文庫) 皆川博子 過去に「開かせていただき光栄です」(2011年)を読んだだけですが、その時には「若手作家さん?」と思っていたのですが、90歳を超えているベテラン作家さんでした。言い訳ではないですが、それだけ文体やストーリーが若々しかったということで。 2018年10月後半の読書(開かせていただき光栄です) 今回の作品は、2005年に単行本、2008年に文庫化されています。 前に読んだ作品とは違って、主に太平洋戦争中や戦後から間もない時代を背景とした短編集で、これを先に読めば作家さんの年齢も早くに想像ができたでしょう。 短篇作品は、それぞれ独立した話しで、「空の色さえ」「蝶」「艀」「想ひ出すなよ」「妙に清らの」「龍騎兵は近づけり」「幻燈」「遺し文」の8篇です。 幻想的なミステリがお得意な作家さんゆえ、この短編集もそうした内容となっています。 ただ個人的にはどうもこうしたフワフワした生と死の幻想小説は苦手で、起承転結がハッキリしたものを好みます。 ただ、私が子供だった頃にうっすらと記憶に残っている背景描写もあり、懐かしく郷愁に浸れました。 また各篇にはそれぞれ詩や俳句が添えられていて、その関連は学がないせいかイマイチよくわかりませんでしたが、作家さんの深い教養を感じられる作品でした。 ★☆☆ ◇著者別読書感想(皆川博子) ぬるい毒(新潮文庫) 本谷有希子 著者は多くの小説を出している作家活動以外にも劇作家や演出、女優なども手がける多才な方ですが、作品を読むのは2010年に読んだ「乱暴と待機」に続き2作目です。 本著は2011年に単行本、2014年に文庫化されている中篇の現代小説です。なおこの作品で、野間文芸新人賞を受賞し、3回目の芥川賞の候補(結果は落選)にもなっています。その後、2016年には「異類婚姻譚」で見事芥川賞を受賞されています。 主人公は19歳の地方の短大生で、あるとき記憶にない高校の時の知り合いだという大学生の男性から「返却するものがある」と電話がかかってきます。 その男性が自分の好みで、それ以降連絡を待つようになり、やがてつきあっていた彼氏とも別れ、男性が住む東京で同棲しようとなっていきますが、その心理描写がなんともまどろっこしいというか、還暦過ぎたオッサンにはなんとも理解しがたいばかり。ってそりゃ当たり前か。 とにかく、若い女性の頭の中を駆け巡る想いや感情が吐き出されているばかりの内容なので、これはオッサンが読むのはちょっとツライ限りでした。 ★☆☆ 殺し屋、やってます。 (文春文庫) 石持浅海 著者の作品は過去に「月の扉」(2003年)と「セリヌンティウスの舟」(2005年)を読んでいます。どちらも面白かった記憶があります。 この作品は2017年に単行本として、2020年に文庫化されていますが、2019年には続編として「殺し屋、続けてます。」が発刊されています。 内容は、7作の連作短編集で、それぞれのタイトルは、「黒い水筒の女」「紙おむつを買う男」「同伴者」「優柔不断な依頼人」「吸血鬼が狙っている」「標的はどっち?」「狙われた殺し屋」です。 脱サラして経営コンサルタントをしている主人公ですが、副業で殺し屋を営んでいます。ってあまり現実的じゃない話しですけど、コミカルなところとシリアスな話しとうまく組み合わせつつ、デキのよい短篇となっています。 7篇ともそれぞれ味があって面白く読めましたが、その中で一番好きだったのは「吸血鬼が狙っている」で、主人公の殺し屋はその依頼主や目的は一切知らずに仕事を受けるのですが、仕事が終わった後に仕事仲間にその推理を披露します。その内容が一番泣けたのがその作品です。 ただこの作品は月刊誌に連載していたという事情もあり、毎回短篇の前には、同じ話が繰り返されます。それがちょっとうるさい感じです。単行本化する時に、その辺りは端折るなど編集してもいいのではないかな。 殺し屋を主人公とした小説は数多くありますが、私のお気に入りはローレンス・ブロックの「殺し屋ケラー・シリーズ」で、抱腹絶倒&しんみりとできて非常に優れた作品です。 おそらくですが、著者もきっとこの「殺し屋ケラー・シリーズ」を読んで刺激を受けているのでは?と思います。 ★★☆ ◇著者別読書感想(石持浅海) 家守 (角川文庫) 歌野晶午 2003年カッパ・ノベルス、2007年に文庫化された短篇集です。意図的ではないですが短篇が続くときはよく続いてしまいます。 家にまつわるそれぞれ独立した短篇作品でそれぞれタイトルは「人形師の家で」「家守」「埴生の宿」「鄙」「転居先不明」の5篇からなっています。 著者の作品は過去に長編ミステリーの「葉桜の季節に君を想うということ」(2003年)を読んでいます。 最初タイトルを見たとき、篠田節子著の「家鳴り」や貴志祐介著の「黒い家」をふと思い出し、「これもホラー?」って思っていましたが、純粋なホラーというのではなく、ホラー的な香りが少し漂うミステリー小説です。 印象に残ったお気に入りの小説は「人形師の家で」と「転居先不明」。 前者は子供の頃住んでいた地方にある洋館でかくれんぼをしていた友達のひとりが神隠しにあい行方不明になり、20年後にその時一緒に遊んでいた友人から呼び出されその神隠しの理由が判明する話し。 後者は、いわゆる事故物件を知らずに買った夫婦の話しと、その事故物件となった時の複雑な殺人事件についてのミステリーとがセットになった話しです。 そうそう「鄙」も良かったです。高齢化で衰退した集落の中で起きた殺人事件について、犯人が罪を認め服役しているのちに、その時旅行で滞在していた官能小説家が、真相に迫る別の推理を披露するという変わった内容でお薦めです。 ★★★ うまくいっている人の考え方 完全版 (ディスカヴァー携書) ジェリー・ミンチントン 著者はアメリカのビジネス経験の後、著述業の方で、心理学に詳しいとのことですが、特に心療内科など医療関係、あるいはカウンセラーではないそうです。 この完全版は、1999年と2004年に発刊された続編の二冊をまとめたものだそうで、2013年に発刊されています。 こうした「成功への道」「対人関係」「物事の考え方」「習慣づけ」を教えてくれる指南書はアメリカで数多く出版され、それが日本へもやってきますが、私も20代30代の頃にはついついタイトルに釣られてよくお世話になりました。 こちらの新書も、社会にでて多くの経験をし、そこで様々な問題にぶつかったり、悩んだりしたときの考え方を教えてくれますので、読者の対象年齢は20代後半から30代後半ぐらいでしょう。 私のようにすでにビジネスからリタイアした人が読んでもあまり役立ちませんが、いろいろと考えさせられるメッセージもあり、悪くはないです。 1から100までの格言とその理由が書かれていて、年齢や経験、性別、性格などによって、ピンとくるものもあれば、関係なさそうと思えるものもあり、人それぞれに読んだ感想はバラバラになりそうです。 私の場合、人の眼を気にするタイプであり、失敗すると後でクヨクヨと考えることがあるので、この100の中では、 003「したくないことは、はっきりと断る」 014「自分のしたいことをする」 018「他人からどう評価されようと気にしない」 042「他人に対する悪い感情は、さらりと忘れる」 055「自己中心的な人から遠ざかる」 084「被害者意識を持たない」 085「現実を受け入れる」 093「些細な問題にとらわれない」 などが心の隅っこに引っかかりました。 ★★☆ 【関連リンク】 8月後半の読書 運命のコイン、シャーロック・ホームズ対伊藤博文、経済危機のルーツ 8月前半の読書 地のはてから、父の戦場、誰かのぬくもり、号泣する準備はできていた 7月後半の読書 生きて帰ってきた男、震源、もらい泣き、時砂の王 ---------------------------------------------------------- もうすぐ秋分の日 2021/9/18(土) 1571 来週、9月23日(木)は秋分の日です。 一般的には昼と夜の長さが同じになる日と言われていますが、日の出と日の入りの時刻を見ると実際は昼のほうが少し(十数分)長い時間となっています。 理由は、日の出は太陽の一部が見えたとき、日の入りは太陽が全部見えなくなったときなので、太陽の直径分昼間が長くなるのと、水平線付近では空気の屈折の関係で浮き上がって見えることでさらに昼間の時間が長くなるという理由です。 秋分の日は昭和23年(1948年)に制定された祝日ですが、その趣旨としては「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」ということになっています。 同時に制定された春分の日の趣旨は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」となっていますから、ご先祖やお世話になった方々へのお墓参りはお盆と秋分の日が相応しいですね。 以前、ウォーキング中に、変わったお墓を発見しましたが、あの有名な漫画家、藤子不二雄さんのひとり藤本弘さんの家のお墓でした。 この墓苑は、市営の広大な霊園で、宗派は問わず、したがって十字架やマタイ伝が彫られた墓石の隣に南無妙法蓮華経が彫られていたり、墓石の形状も球体や仏像など千差万別でユニークなものもあり、ウォーキングでは興味を持って墓石を見ながら歩いています。 さて秋分の日ですが、その前後の三日間を含み(計7日間)「お彼岸」と言い方をします。最初の日を「彼岸入り」。最後の日を「彼岸明け」とも言います。 彼岸とは仏教用語で「あの世(向こう側)」のことで、仏教においてはこの七日間があの世とこの世が近づく(つながりやすくなる)日ということです。但し仏教というか日本独自の風習だそうです。 そしてお彼岸に食べるものとしては「おはぎ」が有名です。 地域によって違ったり、また諸説ありですが、一般的にはあんこでくるんだお餅で、見た目は同じものでも、春の彼岸に食べるのは「ぼたもち」で、秋の彼岸は「おはぎ」と呼ばれます。 一説では、春に花が咲く「牡丹(ボタン)」に似せて作ったので「ぼた(ん)もち」、秋に咲く萩の花に似ていたので「おはぎ」という説があります。 コロナで遠出は控えなきゃいけないし、両親が眠るお墓は県外で遠いので、今度のお彼岸は近所の空き地からススキを手に入れて、月を見ながら、亡き両親や親友のことを思いながら、おはぎでも食べましょうかね。 【関連リンク】 1460 時計を必要としない世界 1337 土・日曜日、及び祝祭日は休日? 1289 昼夜の時間が逆転する今日が冬至 1102 あまり役には立たない曜日の話し ---------------------------------------------------------- 快眠のための枕とは 2021/9/22(水) 1572 秋の夜長は、同時に1年で一番、暑くもなく寒くもなく、花粉や雨音や朝日に邪魔されることもなく、気持ちよく睡眠を楽しめる時期です。 私の場合、ベッドの敷きマットは変更しませんが、掛け布団は5年ほど前から薄めと厚めの2種類の羽毛布団を組み合わせ、夏用、春秋用、冬用(2枚をセットにして)と使い分けていて、9月の終わり頃は夏用から春秋用に替える時期です。 羽毛布団が心地よい 2017/5/6(土) 快適な睡眠には、部屋の環境(暗さや音)、室温や湿度、そして敷き布団、掛け布団、枕などが大きく影響します。 今回はその中で、マクラ(枕)の話しです。 厚労省のホームページの中に、e-ヘルスネットという情報コーナーがあり、そこに快眠について、さらに枕についての記述があります。 快眠のためのテクニック -よく眠るために必要な寝具の条件と寝相・寝返りとの関係(e-ヘルスネット 厚労省) 1. 快眠できる「枕」の高さとは 朝目覚めたときに首や肩がこっていたら、それは枕が合っていないせいかもしれません。枕の役割はベッドマットや敷き布団と後頭部から首にかけてのすき間を埋め、立ち姿勢に近い自然な体勢を保つことにあります。このすき間は個人差が大きくそれに適した枕も人それぞれに異なるので、自分の体型にあった枕の高さを知り、安定感のあるものを選ぶとよいでしょう。 具体的にはベッドマットや敷き布団と首の角度が約5度になるのが理想的といわれています。頸部のすき間の深さは人によって異なりますが(一般に1-6cm)、この深さに合った高さの枕を選ぶと首や肩への負担が少なく眠りやすいといわれています。頸部のすき間の深さに合わない枕(高すぎる又は低すぎる枕)を選ぶと、首や肩・胸の筋肉に負担がかかり、呼吸がしにくく寝心地がわるくなります。呼吸がしやすく、頭部をきちんと支えてくれるだけの弾性があって、発汗に備え吸湿性・放湿性のよい素材を選ぶことが大事です。枕は寝返りをして横向きになった場合も考える必要があります。肩先から側頭部全体を支えるだけの奥行きが必要です。 う〜ん、さすがに官庁に評価され掲載される情報は、民間と違ってお堅いし、どうもわかりにくいです。 その点、民間の枕情報は千差万別ですが、下記の3つは参考になります。 朝までぐっすり眠りたい!まくら選びのこつ(西川公式) 自分に合った枕の選び方を、ハンズの寝具担当がとことん解説します(東急ハンズ) まくらの選び方(ビックカメラ) 中でも3つめのビックカメラの「まくらの選び方」はイラストや表を多用してわかりやすいです。 まくらの素材については、私も過去には綿(わた)やそば殻、パイプなどいろいろ使ってきましたが、現在はポリウレタンフォームのものを使っています。 それは横向けで寝ることが多いことから、固すぎず柔らかすぎずのウレタンが一番合っていると結論に達しました。 ホテルの枕によく使われているのは羽毛やフェザーの枕で、柔らかくて沈み込む感じです。肩こりのある人にはそれが向くそうですが、私には柔らかすぎてどうも首が落ち着かないのと、横向けになると顔が埋まってしまいます。 どうも寝付きが悪いとか、夜中によく目が覚める、朝起きたら首が痛いなどある方は、一度枕を替えてみるのも手かもしれません。 【関連リンク】 1342 睡眠の不思議について 1123 羽毛布団が心地よい 961 マッサージというかリラクゼーションサロンとやらへ ---------------------------------------------------------- オフィスやオフィスビルからなくなったもの 2021/9/25(土) 1573 私が社会人1年生になってビジネスオフィスに出入りをするようになったのは1980年(昭和55年)のことです。 顧客先のオフィスへ行くことが多い営業職でスタートしましたが、東京には大手町ビルとか新大手町ビルのような、中に入ると迷子になりそうな巨大なオフィスビルがいくつもあることにまず圧倒されました。 丸の内や大手町にそびえ立つ三菱地所のオフィスビルは、戦後に建設されたものがほとんどですが、大手町ビルと新大手町ビルは1958年に当時東洋一のマンモスビル(高さではなく延べ床面積)として完成しました。つまり私とほぼ同年齢というロートル組です。 同じく三菱地所が建てた名古屋駅前にある大名古屋ビルヂングは、6年前の2015年に建て替えられましたが、その前のビルは1965年に建設されたもので、そのビルに一歩入ると、設えというか構造、意匠など、雰囲気が、大手町ビルとそっくりだったことを思い出します。当時の最先端オフィスビルがそのイメージだったのでしょう。 大手町ビルで思い出すのは、暑い夏、寒い冬、雨が続く梅雨時など、外回りの営業マンのちょっとした息抜きのオアシスとなる大きな書店「紀伊國屋書店」が入っていて、週に1回はその書店で新刊本のチェックなどをしていました。 当時大手町や丸の内、八重洲あたりは、神保町(三省堂や書泉グランデ)や新宿(紀伊國屋書店)、赤坂(文教堂)、渋谷(大盛堂や三省堂、紀伊國屋)、恵比寿(有隣堂)と並ぶというかそれ以上の大型書店のメッカでした。 丸善は元々日本橋に本店がありましたが、その後丸の内オアゾ(2004年〜)の中に本店を移し、規模も大きくなりましたし、八重洲には八重洲ブックセンター(1978年〜)がありました。 その中でも大手町ビルの1階に入っていた紀伊國屋書店が一番のお気に入りだったのは、巨大な大手町ビルのフロアを生かしてワンフロアにすべての書籍が並べられていて、他の大型書店のように種類によってフロアを上下行き来する必要がなく、文庫も新書も単行本も雑誌も一気にサクッと見ることができました。 さて、その大手町ビルですが、80年代の頃、ビルの中に入ると、薄暗い廊下のあちこち隅っこに、小さな金属製の丸いゴミ箱のようなものが置いてありました。 最初はなんだかわかりませんでしたが、あるときこれが痰壺なのかぁーって気がつきました。 若いときってほとんど痰が出てくることもなく、まったくそれが必要とは思いませんでしたが、年配の人が時々立ち止まってペッと吐いていることを見たことがあります。 しかし痰壺ですよ〜今のオフィスからすれば考えられません。オフィスビルから徐々に痰壺が消えていったのはおそらく80年代後半ぐらいだと思います。 さらにオフィスビルのエレベータの前にはどこも灰皿が当たり前のように置いてありました。 なぜエレベータの前?ってことですが、エレベータの中は一応禁煙ですので、そこでタバコを捨ててエレベーターに乗るわけです。今からすると信じられない行動様式です。 オフィスの中、自分のデスクでタバコを吸うのは当たり前で、誰も文句を言う人はなく、オフィス内が煙でもうもうとしていることもしばしばありました。 今から思えば、すごい時代ですね〜 80年代半ばに仕事のため香港にしばらく滞在した時にはもっと驚きました。 なんと、エレベータの中に灰皿が常備されていたのです。つまりエレベータ内でもタバコが吸えたのです。 さらに、休日に映画を見に行ったとき、上映途中、煙がもわーと上がるのですが、映画を見ながらタバコを吸うことができました。 映画館の席には灰皿なんかありませんので、吸ったタバコは足下に捨てていくというもう無茶苦茶な感じでしたが、それが特に違法でもマナー違反でもなく、普通だったのです。ちょっとカルチャーショックでした。 その他、オフィスビルで見かけなくなったのは、オフィスの中ですが、応接室に白いレースのカバーがかかった大きなソファです。 80年代頃までは、企業の応接室には当たり前のように、白いレースカバーをかけたやたらと柔らかなソファがどこでもありました。 そのソファとセットでテーブルの上にも白いレースがかけられていて、大きなガラスの灰皿と、タバコ入れが置いてあるのが普通でした。 仕事の先輩が応接室に通されて、顧客の担当者が来るまでのあいだに、そのテーブルに置かれたタバコを持ち帰ろうと数本まとめて手に取ったその瞬間に担当者が入ってきて気まずかったという話しは今では笑い話です。 それもやがては、資料やPCを置きやすい背の高い作業しやすいテーブルとイスのセットに置き換わっていきます。 別にそれらが懐かしいというわけではありませんが、現在国を挙げてリモートワークが推進している中で、現在のオフィスのあり方も急速に変化しています。 あと10年もすると、「2020年以前のオフィスってチームごとに島になっていて笑える〜」とか「2020年までは自分の決まったデスクとチェアがあったのね?」となるのかも知れませんね。 【関連リンク】 1541 トイレの記憶 700 なにもかも懐かしい新入社員の頃 364 灰皿の行方と健康被害 ---------------------------------------------------------- 2021年9月後半の読書と感想、書評 2021/9/29(水) 1574 ダークナンバー (ハヤカワ文庫JA) 長沢樹 著者の作品は今回初めて読みましたが、2011年に横溝正史ミステリ大賞を受賞した「消失グラデーション」でメジャーデビューを果たした作家さんです。 この小説は、2017年に単行本、2020年に文庫化された長編ミステリー&犯罪小説で、視点がひとりではなく、閑職へ追いやられた「やり過ぎ」テレビ局員と、警視庁でやはりはみ出た分析官の二人の女性、さらに途中からは犯人の視点でも描かれていきます。 したがって、テレビ局員と警察関係、それに途中からは犯人とその関係者と、それぞれに登場人物が多く、いちいち誰の視点かということを見ておかないと混乱しそうです。誰の視点かは都度書かれているので安心ですけど。 タイトルの「ダークナンバー」とは、例えば被害者が泣き寝入りして表沙汰にならず、隠れた犯罪を犯した「存在しない犯人」のこと指しています。 この小説の中では、本来の犯行を隠すために、別の類似する犯行を重ねていき、いわゆる「連続事件」として捜査を誤った方向へと向かわせる知能犯との戦いという構図です。 主人公のテレビ局員と警視庁捜査支援分析センターの分析官が中学時代の同級生ということもあり、その二人が重い過去を引きずりながら、警察とマスメディアという立場の違いや、現在職務で背負っている様々なしがらみを避けつつ、少しずつ犯罪の真相に迫っていく姿は読み応え十分です。 ただ、警察小説としては、あまりにもあっさりしすぎていて、日本一男社会で保守的な警察の官僚組織を相手に、20代の女性分析官やメディア記者にいいように振り回されるライトな姿は想像ができません。 また複雑に錯綜した犯罪そのものについても、リアリティはなさそうで、ちょっと凝り過ぎな気がしました。 ★★☆ 人間の叡智 (文春新書 869) 佐藤優 著者は2002年に鈴木宗男事件に連座して逮捕、起訴(2009年執行猶予付きで有罪確定)された外務省職員で、裁判中の2005年に出版した「国家の罠:外務省のラスプーチンと呼ばれて」を出版し、一躍有名になった方です。 「国家の罠」は私も2011年に読みましたが、どうも「自分は悪くない」という自己弁護に徹した言い訳っぽい感じで、あまり良い印象は持ちませんでしたが、周囲にいた様々な方からは、著者のことを悪く言う人はあまりなく、さらの同書を含め作家としての能力は高そうな方です。 2011年5月の読書(国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて) 上記の逮捕起訴された事件と「国家の罠」については、確かに外務省が嫌った鈴木議員の腰巾着とみなされ斬り捨てられたというか、スケープゴートにされた感が強く、しかしそれでもめげてしまわず、転んでもタダでは起きない著者の執念とバイタリティが感じられます。 本書は、そうした事件のことはほとんど触れずに(1)なぜあなたの仕事はつらいのか(2)今、世界はどうなっているか(3)ハルマゲドンを信じている人々(4)国体、資本論、エリート(5)橋下徹はファシストか(6)いかに叡智に近づくかという章立てになっていますが、読んでみて思うのは、あまりそうした各章のサブタイトルとは関係なく(たぶん後付けと思う)、過去に経験したり見てきたこと、それに最近の動向で気になることを都度文章にしてまとめて一冊にしてみましたって感じです。 それと国際情勢に関して言えば、何十年、何百年の歴史や文化を知る必要があるものもありますが、今のアフガンのようにわずか数年でコロッと体制が変わってしまうようなこともあり、この新書が発刊された2012年はまだバラク・オバマ大統領の時代(日本は民主党政権時代)で、隔世の感があります。 しかしこの新書の「裏のテーマ」?でもある「新・帝国主義」の潮流については、オバマ後のトランプ時代、メドヴェージェフ後のプーチン、キャメロン、メイ後のボリス・ションソン、野田総理後の安倍総理など、世界中で顕著となり、先見の明があるとも言えるのでしょう。 しかし橋下徹氏の政治家としての今後の可能性を大いに期待している節がありましたが、大阪都構想に失敗(2015年)したあとは、すっかり評論家兼弁護士に落ち着いてしまった点はアテが外れました。 ★★☆ おにのさうし (文春文庫 ゆ 2-26) 夢枕獏 単行本で2001年に絵師天野喜孝氏との共著という形で「鬼譚草紙」が発刊(文庫版は2006年)されたもので、それからイラストと短篇の1話を削除した形で、タイトルを替えて2014年に発刊(出版社が違うので新刊)です。 こうした以前発刊された本を再版とか新装刊ではなく、別の出版社が新刊として売り出すと、Amazonのレビューでも夢枕ファンと思える人から新刊と思って読んだと文句タラタラでしたが、私も浅田次郎などの小説でタイトルこそ同じですが別の出版社から「新刊」として発刊されるという同様なことが何度かあり、非難囂々、切歯扼腕、偏袒扼腕です。 せめて、表紙か裏表紙(カバー)に「初出は○○年」ですとか表示する義務化を出版協会で決めてもらいたいものです。 収録されている3話は、「染殿の后 鬼のために 繞乱せらるる物語(繞は女編)」、「紀長谷雄 朱雀門にて女と争い 鬼と双六する語」、「篁(たかむら)物語」です。 今昔物語や古事記などに使われている和歌などをうまく利用しながら、独自の世界観を拡げていくのはかなりの教養と創造性がないとできそうもありません。 著者の作品は過去に「上弦の月を喰べる獅子」(1989年)や「陰陽師」(1988年)などを1990年代に数冊読んで以来ですから20数年ぶりに久々です。 さらにこの短篇集、テーマは鬼とエッチで、平安時代の男と女、密やかな睦言と官能の世界がそれぞれ描かれています。表現も露骨なところがあります。 元の単行本には絵師天野喜孝氏のカラー絵図が添えられているそうで、ちょっと気になるところです。 そういうわけなので、小学校や中学校の図書館に蔵書するのには相応しくありませんが、大人が秋の夜長に読むにはちょうど良い感じかも。 3話目の「篁物語」は、実在した小野篁を主人公にした、腹違いの妹との禁断の狂おしい恋愛と死、そして閻魔大王への直訴というストーリーです。 あとがきにもありましたが、ベストセラー「陰陽師」の別巻とも言えるし、平安時代の呪術師で安倍晴明のライバル蘆屋道満のスピンアウト小説とも言えるかも知れません。 ★★☆ ◇著者別読書感想(夢枕獏) センセイの鞄 (文春文庫) 川上弘美 私とほぼ同年代の作家さんで、1994年にデビュー、1996年には「蛇を踏む」で芥川賞を受賞されていますが、私自身意外でしたが著者の作品を読むのはこれが初めてです。 この作品は、雑誌に連載後、2001年に単行本、2004年に文庫化されています。2003年には小泉今日子主演でテレビドラマも作られています。 内容は、まもなく40歳になろうかという女性の主人公が、高校生時代の国語教師で、すでに引退した老人と言って差し支えない高齢男性との長編恋愛物語で、雑誌に連載する都合でしょうが、連作短篇形式で書かれています。 居酒屋でひとり飲むのが好きな主人公が、いつものように飲んでいたら、老人に声をかけられ、教え子だという話しから仲良くなっていきます。 老人は、妻が何年も前に出奔し一人暮らしで、気ままな生活を送って、いつも寄る居酒屋で何度も見かける女性が、元教え子だということに気がつき声をかけたわけです。 主人公の独身女性にも特に恋人はいなく、元教師の老人と付かず離れずで居酒屋で会っている中で徐々に気持ちが傾いていくというなんだか切ない話しです。 しかし二人ともやたらと飲兵衛で、飲んでいるシーンばかりです。恋愛にお酒がつきものなのはわかりますが、飲んでいるシーンばかりというのには辟易させられます。 ま、著者の一番の趣味でもあるのでしょう。 大人、しかも熟年と老年の恋愛小説というのも珍しく、高齢化社会が進む中で、こういうことは珍しくなくなってきているのだろうなぁと面白く読めました。 ★★☆ ◇著者別読書感想(川上弘美) 【関連リンク】 9月前半の読書 蝶、ぬるい毒、殺し屋、やってます。、家守、うまくいっている人の考え方 8月後半の読書 運命のコイン、シャーロック・ホームズ対伊藤博文、経済危機のルーツ 8月前半の読書 地のはてから、父の戦場、誰かのぬくもり、号泣する準備はできていた |
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