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読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです
1156 空き家バンクの無能ぶりと空き家に思う 2017/9/2(土)
1157 有効求人倍率がバブル期超えしそう 2017/9/6(水)
1158 海外通販を使ってみた感想 2017/9/9(土)
1159 9月前半の読書と感想、書評 2017/9/13(水)
1160 ギャンブル依存症対策とパチプロの今後 2017/9/16(土)
1161 偏向報道って何だ? 2017/9/20(水)
1162 不登校と自殺 2017/9/23(土)
1163 フラリーマンの哀愁 2017/9/27(水)
1164 9月後半の読書と感想、書評 2017/9/30(土)

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空き家バンクの無能ぶりと空き家に思う 2017/9/2(土)

1156
懲りずにまたまた空き家の話題です。

いま「空き家」で検索をすると、全国各地の自治体などが運営する空き家バンクのサイトが星の数?ほど出てきます。役所が主導することと言えばこのように右にならえばかりで、創造力や起業家精神に欠けているとしか言えません。

空き家

いくつかの空き家バンクのサイトをのぞいてみたところ、「ど」が付きそうな田舎の築数十年の中古一軒家が数千万円とかで掲載されていたり、駅までバス便しかない地方都市の賃貸が月6万円の家賃とか、アホらしくてよくこんなの恥ずかしげもなくよく載せているなと思うようなものばかりです。

民間の不動産業者なら相手にしないような物件で、枯れ木も山の賑わいってところでしょうか。

このような全国共通の金太郎飴みたいな「上からやれと言われたから仕方なく格好だけつけてます」というような空き家バンクをやっている限り、その地方都市に未来は永遠に来ることはないでしょう。

 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

さて、空き家ですが、今までは地方でその傾向は強まっていますが、今後は都市近郊のいわゆる郊外地域にまで広がってくるのは明らかな情勢です。

少子化で、跡継ぎがいない夫婦や遠くで暮らす家族しかいない高齢者が、老人ホームや介護施設などに引き取られた後、残されるのは築40年とか50年経過した古屋です。

子供など家族がいる場合なら、そうした古い空き家は価格が付けばさっさと売ってしまえばいいのですが、親は介護施設に入っていてもう住んでいなくても、親がまだ生きているあいだは思い出が詰まった家を勝手に処分するわけにもいかず、仕方なく空き家状態で放置というパターンが多いのではないでしょうか。

私の住む地域でも最近空き家がボチボチ現れてきています。

東京都心や横浜中心部まで距離にして20km、電車で1時間程度の郊外地域で、ここに引っ越してきた30年近く前は、周囲にはまだ畑や田んぼが結構あり、交通の便が割と良く、しかも土地代は比較的安いというメリットがあり、周囲には大手企業の社宅や寮、そして古い小さな工場などがいっぱい建っていました。

その社宅はというと、現在はほとんどが普通の民間マンションに建て替えられていて、小規模な工場跡地はいくつにも土地が分筆されて小規模な一軒家が建っていたりと今ではファミリー向けの住宅地となっています。

そうしたまだまだ需要がある地域でも、すでに空き家はいくつも見つかります。

総務省が公表した2013年の全国平均の空き家数は820万戸、全体の空き家率は12%ですが、野村総研の未来予測では、そこから20年後の2033年には空き家は2140万戸(2.6倍)、住宅数全体の30%(2.5倍)に達するそうです。

20年後と言えば、競ってマイホームを手にした団塊世代が80代半ば〜80歳後半中盤となり、その多くが亡くなるか、介護施設等に入居、または介護に便利なケア付きマンション等に移っているかというタイミングで、団塊世代達の夢のマイホームが古い空き家になって出てくるわけです。

3軒に1軒が空き家というのは、限界集落や準限界集落ではすでに起きている事象ですが、やがて人がワサワサと多い都市部でもそれが近づいてくるというあまり考えたくない未来絵図です。

それでも日本の住宅メーカーやマンションデベロッパーは前年より着工件数を増やし売上を上げようと、必死に政治家や役所にロビー活動をおこない、テレビやチラシで派手に宣伝し、家やマンションを売りまくろうと手ぐすね引いています。

そりゃ無理ですってば。

国内にこれ以上、新築の家やファミリータイプのマンションを建てたって、そうそう売れるものではありません。ディベロッパーや建材メーカーは、売上や利益を伸ばしたいならとっとと海外へ向かうべきです。

長期トレンドで人口が減っていて、結婚する人が減り、ひとり住まいの人(基本は賃貸)が増えている現状で、中長期的に見てどうやって稼ぎ頭のファミリー向けの一戸建てや広いマンションの販売数を安定して伸ばせますか?

都市部においては、中国人富裕層や国内の少数お金持ちが買う投資用高級タワーマンションか、シングル用の安価なマンション、裕福な高齢者が古くて不便な一軒家から移り住みたいケア付きマンションのこの三つしか考えにくいでしょう。

投資用マンションも、増え過ぎて、今後それを借りてくれる裕福な人がすぐに見つかるか怪しいものです。家賃保証を唄う不動産会社も、そのビジネスモデルが危険水域に来ていると言われています。まもなくそうした高級投資用タワマンのババ抜きゲームが始まると予想されています。

以前書いた、リゾート地の古いマンションがわずか数万円で売りに出されている話しがありましたが、やがてそれがリゾート地だけでなく、周囲が空き家だらけで不用心になり、不良外国人のたまり場と化し、治安が悪化してくる都心部でも同様に売りたくても売れない物件というのが出てきてもまったく不思議ではありません。

そう考えれば、私自身は元々賃貸派ではなく持ち家派なのですが、今廃れ始めた都市郊外にマイホームを買うという選択肢はかなり冒険だと思いますね。

マイホームや不動産を買うのなら、20〜30年後にその住宅の周囲がどうなっているかという目利きが重要ですが、そればかりは想定が難しいとしか言えません。


【関連リンク】
1069 世帯数や住宅総数は増えていき、空き家も増える
1053 空き家問題を考える
1103 高齢者の賃貸アパート入居問題


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有効求人倍率がバブル期超えしそう 2017/9/6(水)

1157
この6月にも似た記事を書いていますが、大切なことは二度言うを実践してみます。単にネタ切れということもできます。

一般的に新卒者を含まない求職者に対する求人数の割合を有効求人倍率といいますが、ここのところの人手不足もあり、その有効求人倍率が上がってきています。

有効求人倍率

2016年度は1.36倍で、(職安の中で)ひとりの求職者に対して1.36件の求人があるということです。

余談ですが、すでに職安へ求人を出すという会社も、職安で職を見つけるという人もそれほどは多くないと思うので、もう少し違うやり方(民間の職業紹介や転職サイト、求人誌などを巻き込んで)を考えた方が良さそうに思いますが、過去の統計との整合性などの問題もあり、なかなか実行はされません。

それはさておき、この有効求人倍率1.36倍は1990年のバブル時代の1.40にかなり近い数値で、高度成長期1973年の1.76には遠く及びませんが、バブル終焉から25年でもっとも高い数値となっています。

そして最近の月間の統計値を見ると、2017年6月の有効求人倍率は1.5となっていて、瞬間風速ながらバブル時代を上回っていて、このまま変わらなければ2017年の年間統計でも1.40を上回る勢いです。

有効求人倍率が上がることは労働者側(求人側)にとっては職を選ぶ範囲が拡がって良いことですが、その中身についてよく見てみないと楽観的に喜んでいるだけではいけません。

まず、年齢や性別によっても有効求人倍率は違ってきます。

法律では年齢や性別で求人上差別してはいけないことになっていて、求人広告に条件で年齢や性別を載せることは少なくなってきましたが、最終的に採用するかどうかは求人側の判断にまかされるわけですので、当然その差はハッキリと出てきます。

例えば、求人倍率を見ても10代、20代の若い人には3〜4倍の求人があるのに対して、50歳以上は現在でも1.0を下回る求人しかありません。女性も中途入社組の場合、パートなら複数あるけれど、正社員の求人はなかなか見つからないという話しもよく聞きます。

次に業種や職種によって人が集まらず、求人が膨れ上がるという例は、90年代のバブル時代には3K(危険、汚い、きつい)という言い方で、ガテン系の仕事などをやり玉に挙げていましたが、今の時代はそれが福祉系(医療、介護)の仕事や販売系、飲食系の仕事へと拡大しているという感じです。

有効求人倍率が増えたという理由には景気が上向きになったからという政府広報の説明を信じるより、人口の5%を占めている団塊世代がここ2〜3年で65歳を超え、その多くの人が一斉に仕事をリタイアし、全体の求職者数が減ったという事実も忘れてはいけません。

特にこれからは超高齢化社会を迎えるので、今までなら若者のアルバイトや主婦のパートでしのいでいた軽作業等の業務を高齢者にもできるような工夫が必要になってくるのでしょう。

今はコンビニやスーパーへ行っても、レストランでも居酒屋、ガソリンスタンド、宅配便でも結構な高齢者が働いていたりするのを目にします。

今はまだ少ないコールセンターや、遊園地のサポートスタッフなどへも高齢者が進出するのは時間の問題かも知れませんね。


【関連リンク】
1133 有効求人倍率がバブル時並みとは
866 失業率とか雇用状況
807 労働人口と非労働人口推移と完全失業率


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海外通販を使ってみた感想 2017/9/9(土)

1158
「今更〜」とか、「遅れてる〜」と言われそうですが、いま海外の通販にちょこっとはまっています。

通常のネットショッピングなら国内のamazonや楽天、yahoo!ショッピング、ヤフーオークションなどでだいたい間に合うのですが、このほど古くて安い中古外国車を手に入れたので、それの部品や用品をあれこれ調べているうちに、こりゃ海外の通販で買うのが良さそうと発見した次第です。

海外通販のなにが良いかというと、
1)外国車の部品や用品の種類が国内通販よりも豊富にある
2)国内通販会社でも扱っている同じ製品なら送料含めても海外通販の方が安い
と、この2点です。

当然海外通販はデメリットもあり、
1)基本英語なので、ある程度は自分で調べなきゃならない
2)当然ながら日本語の説明書やマニュアルは付いてこない
3)到着までに時間がかかる
4)輸入税がかかるものがある
5)不良品とか不達のクレームや返品交換は、英語でやりとりするリスクがある
6)外国の通販サイトにクレジットカード情報を登録するリスクがある
などでしょうか。

こうしてみると海外通販のメリットよりもリスクや不便さのデメリットが目立ってしまいます(笑)

それでも国内通販では買えないものが見つかったりすれば、否応なくオーダーすることになり、せっかくオーダーして口座を開いたなら、国内通販で買おうと思っていた別の製品も安いのでついでに頼んじゃおう!ということになります。

私が今回海外の通販会社の口座を開いたのは世界最大級のオークション&通販サイトのeBayと、自動車部品などの扱い数が多い中国系のアリババグループのAliExpressの二つです。

eBay AliExpress
eBay AliExpress

eBayはともかく、まだ馴染みが薄いAliExpressですが、下記にわかりやすい説明があります。ご参考まで。中国の楽天みたいな感じですね。

AliExpress(アリエクスプレス)ってどんなところ?

Ali Expressには機械翻訳された日本語サイトも用意されています。翻訳がいい加減なところがありますがご愛敬です。そう言えば日本のAmazonでも商品説明のところで、日本語が機械翻訳されて掲載されている商品が最近目立ちます。そういうのは海外から出品されているのでしょうね。

海外の通販の仕組みは日本の通販と大差なく、簡単にオーダーできますが、気をつけるところは、送料と輸入関税の金額です。あとは細かなところではドル決済となるので、決済日の為替変動によって日本円では数円〜数十円変わってくるということもあります。

たいした金額でないものなら、輸入税もかからず、送料込みの商品も多くあり、あと気にするのは到着までの日数でしょうか。

今回5つぐらいの製品をこの二つの海外通販へ発注しましたが、最も速いところで1週間程度、遅いところは到着までに3週間かかりました。国内通販会社の場合、在庫があれば翌日〜2日以内で到着というのに慣れていると、出荷〜港へ配送〜船便〜陸揚げ〜税関〜国内配達と、このスピード感に耐えられないかも知れません。

すでにご存じの方も多いと思いますが、ヤフオクにしろamazonのマーケットプレイスなどには、そうした海外通販の製品を輸入し、国内販売している業者や個人の方がたくさんいます。

もちろん一種の輸入業ですので、海外価格に輸入コストや日本語の仕様書等を付けたりと、手間とリスクがかかっているので直接個人輸入するよりは高くなっているのが普通です。

どのぐらい高くなっているか?というと、ちょっと見ただけですが20%(2割増し)〜100%(2倍)程度の割高というものが多い感じです。

2割程度の割高ならば、リスクが少ない国内の通販で買うほうがって思いますが、さすがに送料等含めた価格が1.5倍以上違うと、海外通販を使おうという気になります。

そうしたリスクや手間を惜しまないなら、こうした海外通販を使ってみるのもアリかも知れませんね。

私の場合、きっかけとなったのは、たまたま国内通販では売っていなかったために海外通販に頼らざるを得ない状態でしたが、今後も急がないものに関してはこれからも活用していこうと思っています。


【関連リンク】
968 日本の小売り大手が動いてきた
856 コンビニの活用はどこまで進むのか
709 Amazonにガチ対抗できるのはイオンかセブン&アイか


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9月前半の読書と感想、書評 2017/9/13(水)

1159
危険なささやき (1983年) (ハヤカワ・ミステリ文庫) J.P.マンシェット

日本語版は1983年に発刊されたフランスの私立探偵小説というちょっと珍しいジャンルの作品です。

フランスの小説ということもあって、この小説を原作としたアラン・ドロンが制作・監督・主演をこなした同名の映画作品が1981年に作られていて、そちらのほうが一般的にはよく知られているかも知れません。

そしてこの小説の翻訳者が、フランスを舞台にした犯罪小説やミステリー小説を多く書き、また2001年に「愛の領分」で直木賞に輝いた藤田宜永氏というのも注目される点です。

小説の舞台になっているのが1970年代後半頃のフランスで、有名なシャンゼリゼや凱旋門など観光地ではなく、パリ郊外などあまり知らない場所で展開していきます。

また当然ですが、時代柄携帯電話やパソコンなど情報機器らしいものはなにもなく、昔ながらの知恵と足で情報を得て、事件に首を突っ込んでいきます。

主人公が行方不明になった女性を探そうとした途端に、殺し屋が現れ、事件から手を引くように脅されたり、依頼人と駅で待ち合わせをしたら目の前で射殺されてしまったり、さらにはガールフレンドが誘拐されてしまうという、よくわからないまま大きな陰謀に巻き込まれていきます。

派手なドンパチや暴力シーン、アクションシーンもふんだんにあり、確かに映画に向きそうなエンタメ的展開です。

書かれた時代が時代だけあって、今読むとなにか懐かしい香りがする上質なミステリー探偵小説でした。古い文庫本だけに文字のサイズが小さく、目の焦点が合いにくくなってきた高齢の身にはちょっとつらいのはやむを得ません。

★★☆

         

会社の品格 (幻冬舎新書) 小笹芳央

著者は元リクで卒業してリンクアンドモチベーションを設立して活躍されている有名な方です。2007年に出版されました。

どうも私は「品格」という言葉に弱く、30数年前に新卒で入社した(営業が主体の)会社の当時の社長がよく言っていた「一流の環境にいれば一流の品格が身につき一流の営業ができる」と、当時はまだ小さい会社ながら、かなり無理をして超一流のビルの中に(小さく)事務所を構えていたことを思い出します。

で、「一流の品格」ってなんぞや?とずっと考え続けてきましたが、実は今でもよくわかっていません。品格って時と立場と環境によりますよね、たぶん。

それ故に、書籍で「品格」と名の付くものは、自然と手が動き、片っ端から買ってきて読んでいるってわけです。

国家の品格」「男の品格」「女性の品格」「女と男の品格。」「日本人の品格」「遊びの品格」「親の品格」などなど。

で、この本は新書にありがちな著者の会社の事業PR本という側面は多々あるものの、経営者が自分では気がつかず、残念な会社となっていく気づきになるかもしれません。

うつけな経営者が「なるほど!そうか!」と手を打つかどうかはわかりませんが、著者の経営する会社に相談してみよう!と考えるかも知れません。

企業経営者が書いた新書を読むと必ずと言って良いほどそうした自社PR本となっていて、印刷部数のうち書店で販売された数よりも会社が買い取って客や見込み客に配った数のほうが多いのではないか?って思うこともありますが、物書きができる中小企業経営者にとってはそれが最善の策とも言えそうです。

この本は、そうした自社PRももちろん詰め込まれていますが、ははーんなるほどねという納得感もあり、特に目新しさはありませんが、暇つぶしの自己啓発には悪くありません。

★★☆

         

男の勘ちがい (文春文庫) 南美希子

amazonが日本に法人を設立したのが1998年ですから、この本が出版された1992年にはまだ本の通販は一般的ではなかったということになります。

だから何なのだ?と言われても困りますが、1991年に設立されて急拡大中のブックオフで見つけたこの本の中身はかなり赤茶けていて、いかにも古書という感じがします。1992年と言えばわずか25年前なんですけどね。

著者は元テレ朝のアナウンサーで、この本を執筆したときは33歳とありましたから、今では還暦を超え、立派な高齢者の仲間入りをされています。今でもバラエティ番組などに時々出演されているようです。

この本が書かれた頃の世の中はまだバブルに踊っているさなかで、「車載電話付きの高級外車」や「地上げオヤジとその愛人」とか、「カルティエのリング」「アラミスを付けた男」とか懐かしいことばが満載です。今真面目に書かれているそういう時代表現を読むとなんだか皮肉を綴った漫画です。

しかし著者とはひとつ違いの同年代で、そうした時代をともに見てきただけに、笑えるに笑えません。

ちょっと今読むと時代があまりにも違いすぎて、男女とも役には立ちそうもありませんが、バブル時代の饗宴をちょっと懐かしむにはちょうど良いかもしれません。

★☆☆

         

安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録 (文春文庫) 加藤廣

信長の棺」(2005年)のスピンアウトもので2011年発刊(文庫は2013年)の短編集です。

「藤吉郎放浪記」「安土城の幽霊」「つくもなす物語」の三編からなるこの「小説は、タイトルにもある通り、「信長の棺」の戦国時代末期のそれぞれ独立した物語です。

しがない商人から時代の寵児へと駆け上がっていく秀吉=藤吉郎の身分や山の民として生まれた出自を必死に隠し、己の才能だけを頼りに信長に近づき、腹心として当時の家督制度、武家社会に真っ向立ち向かっていく姿を描いた「藤吉郎放浪記」。

信長の理不尽な命令に振り回されて悔しがる愚図で小心者の家康が、腹心の部下服部半蔵を使って信長に偽の幽霊を見せて一泡吹かせようとするものの、安土城には信長に取り憑いた本物の幽霊が先にいて、取り憑かれた幽霊を祓うために頼ったのが阿弥陀寺の住職、清玉上人だったという話しの「安土城の幽霊」。

室町時代に宋から日本へ渡り、足利義満に献上されたとされ、現在も静嘉堂文庫美術館に所蔵されている「九十九茄子〈つくもなす〉」という見事な茶器が、足利義満(金閣寺建立)→足利義政(銀閣寺建立)→山名是豊(応仁の乱)→伊佐宋雲→朝倉教景→松永久秀→足利義昭→織田信長→豊臣秀吉→有馬則頼→徳川家康→藤重藤元→岩崎弥之助(三菱グループ創設者)と数奇な運命をたどっていく話しの「つくもなす物語」。

いずれも戦国時代ファンにとってはフィクションとした「異聞」ではあるものの、なかなか面白い内容となっていて、エンタメとして楽しめます。

★★☆

著者別読書感想(加藤廣)

【関連リンク】
 8月後半の読書 白雪姫殺人事件、里山資本主義、デセプション・ポイント、漂流者たち
 8月前半の読書 転落の街、となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術、長女たち、殺戮にいたる病
 7月後半の読書 漂えど沈まず、そして奔流へ 新・病葉流れて、本と私、落日燃ゆ、いっぽん桜


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ギャンブル依存症対策とパチプロの今後 2017/9/16(土)

1160
朝や昼の情報番組を見ていると、定期的な特集として出てくるのが、ギャンブル依存症やアルコール依存症などの社会問題です。

スロットたいていは近年の依存症患者数の推移をとりあげ、その実態報道ということで、モザイクをかけた依存症の人の日常を追いかけるという内容です。

これらのネタには尽きませんので、テレビ各局とも、大きな事件や話題がない時のため、埋め草的な特集として常時用意してあるという感じです。

ついこの前には、朝の時間に「ギャンブル依存症280万人!」という内容の特集がテレビでやっていました。

最近、東京オリンピックに合わせ、公営カジノを認可しようという動きがあり、それとともに盛んになってきたのがギャンブル依存症対策に力を入れようという運動です。

日本でギャンブルと言えば、公営の競馬、競輪、競艇、オートレースが主と考えられていますが、実は金額でも利用者でも一番多いのは公的にはギャンブル(賭け事)とはされていないパチンコです。

4種の代表的公営ギャンブルの売上合計は2兆円ほどですが、パチンコの年間売上は20兆円ほどあり、桁違いに大きなものとなっています。

パチンコで換金できるのは暗黙の了解ですが、管轄の警察は表面上はそれを認めておらず、あくまで景品の買い取りをしているだけというスタンスですから笑わせてくれます。その警察とパチンコ業界とのつながりは深く、天下りも大量で、ズブズブの関係ということもよく知られています。

そのパチンコですが、ギャンブル性というか射幸心を抑えるために、今まで大勝ちすると10万円ぐらいの収入になった出玉を、3年後までには5万円程度にするという出玉規制の方針が決まり、段階的に新しい機械にかわっていくそうです。

警察庁が風営法施行規則を改正。パチンコ業界「悪夢の倒産ラッシュ」(週プレNEWS)
ここ数年、パチンコ業界は不況で、参加人口はピーク時(1994年)の約3000万人から940万に激減してます。さらにパチンコ台のスペックが下がれば、その940万人もホールから遠ざかってしまいかねない。

大勝ちができないと依存症が減るという目論見だそうですが、果たしてそうなのかは謎です。

私も独身時代には、たまにパチンコを打ちに行ったことがありますが、もうここ30年ぐらい入ったことがなく、あまり知らないのですが、昔のようにサラリーマンがちょっと暇つぶしで1万円を超えない範囲でちんたら遊ぶゲームから、数万円をつぎ込んで、1日で10数万円を目標に稼ごうとする人達への特殊な賭けのゲームへと変わってきました。

そのきっかけとなったのは、言うまでもなく1980年に最初のフィーバー機が登場し、一攫千金の大当たりするマシンがブームとなり、その後もギャンブル性が強い機種が次々と登場したことによります。

また、大勝ちすることもあれば、当然大負けすることもあるという、博打性が強く、それだけに射幸心を煽り、その魔力にはまってしまい、依存症に罹ってしまう人が増えているのだとか。

私が行かなくなった理由も、当時から増えつつあった、パチプロやセミプロと言われる、定職を持たずにパチンコに朝から夜までいて、その稼ぎで生活をしている、機種や釘にやたらと詳しく、また常連同士で徒党を組んでパチンコ台を融通しあうプレーヤー(軍団と呼ばれる)がホールに増え、私のようなまるっきり素人がフラリと行って楽しめるような場ではなくなったからです。

さて、依存症対策ですが、ギャンブル依存症の場合は、アルコール依存症とは違い、病気とひとくくりできないところに難しさがあるように思います。

つまり上記でも書いたパチプロのように、それをギャンブルを生活の糧にしている人が実際に多くいるってことです。

多少ながら、競馬や競輪等でもその配当金を目当てに予想し、また当たり券を予想するプログラムを使って、それを本職としている人がいますが、パチプロの数は半端ないところが問題です。

パチンコの遊技人数は約1000万人と言われていますので、その20人にひとりがパチプロ(セミプロ含む)と想定すると50万人、50人にひとりとすると20万人ということになります。私の感覚ではそのあいだぐらいかなと思います。

パチプロは所得の申告をしませんので、国はその人数をつかめません。無職の人もいれば、別の仕事と掛け持ちでやっている人もいるでしょう。

そうしたパチプロは、決してギャンブル依存症という人ばかりではないでしょうけど、パチンコの規制が強まり、儲けが出なくなると、どうやって生活を立てていくのか気になるところです。

ギャンブル依存症対策もたいへんですが、規制強化に乗り出すのなら、少なく見ても20万人のパチプロの再就職問題も合わせて考えておかないと、下手をするとそのまま地下へ潜って非合法事業に手を出したり、生活保護受給へ突入していきそうな予感もします。


【関連リンク】
1111 ギャンブル依存対策もいいけど、引きこもり中年問題もね
941 それでも宝くじに夢を見る
819 パチンコ業界その未来は?


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偏向報道って何だ? 2017/9/20(水)

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福島の原発事故以来、「政府寄りだ」とか、「左寄りだ」とか、「反日だ」とか、様々なマスコミやメディアに対して「偏向報道だ!」という意味の発言を目にすることが増えました。

20年ほど前までは、情報発信をする側は巨大な組織(放送局や新聞社)しかなく、細々とやっている雑誌社などは発信力が弱かったので、従来はこうした「偏向報道だ!」と叫ぶ声はかき消されてしまうのが普通でした。

最近は、TwitterやFacebookなどSNSで、手軽に個人の発言が広く拡散されることで、日常的によく目にすることが増えてきました。

櫻井よしこ「国民から受信料を取って偏向報道するNHKおかしくない?朝日新聞より悪質」(NET GEEK)

アメリカでもトランプ大統領が、そうしたSNSをうまく利用して、特定の新聞社や放送局を「フェイクニュースだ!」と決めつけ、自分にとって都合が悪いニュースや記事を偏向していると強く非難しています。

こうしてみると、この偏向報道と言うものは、ある特定人物から見た偏向であって、なにを基準に偏向しているのか?ってところが見えにくくなってしまっています。

デモ活動実のところ個人の意見や見解ほど偏向しているものはなく、それを避けるために、放送局や新聞社では記者やデスク、編集委員、ディレクター、プロデューサーなどが複数人で内容をチェックして、できるだけ個人の意見を排し、中立の立場で報道しようとしていて、その心がけが本来正しい姿と言えます。

そのため、新聞社や放送局独自の判断だけではなく、専門家や学者、評論家、そして関係者などにも意見を求め、幅広い意見や見解を得ようと、たいへん面倒くさい涙ぐましい努力をしています。

そうした複数のチェックを経てきた報道に対し(それでも社や局の方針や主義主張によって偏りがあるのはやむを得ないとして)、ある特定の偏見や誤解や思想や宗教観や政治信条をもった個人が、「マスコミの報道は偏向している!」と声を大にして言うのは矛盾していておかしくはないでしょうか?

もちろん大手マスコミも、まったく政治信条が中立の人ばかりが働いているわけではなく、また経営層や編集長、デスク、ディレクターなど主要なメンバーの政治信条や思想などが色濃く反映され、右にも左にも、労働者にも経営者にも、愛国にも反日にも、保守にも革新にも、与党にも野党にも旗色が変わることがあるしょう。それは決しておかしいことではありません。

同じ事件や政策でも新聞社によって評価が違ったり、取り上げ方が違うのはそのせいで、様々な意見が出るそれ自体は国家統制で記事の内容が縛られたり検閲されて、一面的な報道だけが許される某国と違って健全なことだと思います。

自分にとって心地よい報道する機関は「公正中立」で、自分にとって都合が悪かったり、意見が違う報道は「偏向だ!」と、そう言う人こそまったく信用が置けません。

NHKの場合は、各人が好みで選び購読する新聞と違って、視聴者から強制的に聴取聴料をとっているから、より中立の立場にこだわらないとダメという(偏向した)意見もありますが、思想信条を持った普通の人達が、それぞれ予算や締め切りや上司の意向などを忖度しつつ作るものである以上、厳に公平公正ものが作れるはずがありません。

将来AIがニュース記事を作ることが想定されますが、それだって過去の傾向を取り入れた恣意的な内容で作られることになるでしょう。まさかAIが独自に中立性を宣言し、過去の膨大なデータにはとらわれず、自分の判断で記事を書くわけでもありません。

NHKに限らず、まずはそれらを理解した上で、報道や論評を見たり聞くべき事なのです。そして個人がどう判断をするかは自己責任の範疇で、明らかな虚偽でなければマスコミの報道にクレームをつける筋合いのものではありません。

例えば選挙の際、選挙運動臨時特例法に基づいた政見放送以外では、主要な候補者には多くの時間が使われて報道され、その他泡沫候補は最後に名前が紹介されるぐらいでほとんど時間が使われないのも、泡沫候補やその支持者にしてみると偏向報道だ!ということになります。

それは確かにマスコミの原則である公平公正な報道ではないですね。でも多人数の候補者を同じ時間だけ使って公平に報道しないことも、合理性や視聴者の利便性などから、グレーと認識しつつも認められているわけです。

しかし、さすがに個人や特定の政治信条や思想、宗教、主義で集まった組織集団より、公共的な機関や会社組織になっているマスメディアの中立性、報道倫理はずっとマシなレベルが維持されています。

上記の櫻井よしこ氏が、もしひとりでマスメディアを立ち上げたら、そりゃ一般的に言って超偏向報道メディアに分類されそうです。それは櫻井氏に限らず個人の主張なんて、一般的に見て公正中立なんてあり得ないわけです。

それでもやっぱりマスコミは偏向報道だ!と思う人は、冷静になって視点を変えてみると、自分自身がかなり偏屈で、思想的に偏向しているのだということに気がつくでしょう。気がつかないならそれはもう洗脳されて非合法活動に走るオーム真理教の元幹部のように手の打ちようがない重症です。

過去にNHKも朝日新聞も毎日新聞も読売新聞も、政治家や軍部に協力をして、対中、対米英戦争に向かっていく国民世論を形成してきたという愚かな黒歴史を持っています。

そうした愚かなマスコミやメディアだから、また同じ過ちを犯すという心配もないわけではありませんし、マスコミ批判において、なんとかのひとつ覚えのように今でも必ずそれを持ち出す人がいます。

しかしあの時代、自由報道が許されない時代、マスコミが生き残る(新聞を発行したり放送電波を飛ばす)方法として、軍部に協力する以外の選択肢があったのでしょうか?

当時のマスコミに、軍部を批判したり、統帥権を持つ天皇を批判したり、多くの国民の支持を集めている好戦的な政治家を公然と批判ができたでしょうか?

もしそれをおこなえば、たちまち関係者は連座し、良くて監獄行き、悪ければ拷問された上に刑死という時代でした。同時に新聞発行や電波送信も止められてしまったでしょう。

結果的にはマスコミが果たした戦争責任の罪は小さくないと思いますが、そうした軍部の暴走を止められなかったのはマスコミの責任だ!と一方的に押しつけて、それに一緒に乗っかった大多数の国民が被害者面していて良いとは思えません。

やたらと最近目に付く「マスコミは偏向報道だ!」という"クソリプ""クソ記事"に反応してしまい、普段はマスコミ批判を嬉々とおこなっているマスメディア嫌いの私が、珍しくマスコミ、マスメディアを全面的に擁護してしまいました。


【関連リンク】
1006 都合よく利用される虚報
491 首相や東電バッシングに思うこと
428 報道は弱いモノの味方なのか?


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不登校と自殺 2017/9/23(土)

1162
9月になると新学期が始まると言うこともあり、中高生の自殺が増えるという話しが数多く出ていました。確かに8月下旬から9月初旬に賭けてそのような報道が多く見られました。

首都圏で中高生の死亡相次ぐ 新学期に自殺か(産経ニュース)
東京都内で女子中学生と男子高校生が死亡しているのがそれぞれ見つかり、千葉県では男子高校生とみられる男性が電車にはねられた。警視庁や千葉県警によると、いずれも自殺の可能性があるという。中略
東京都と埼玉県では8月30、31両日、少なくとも中高生3人がマンションから転落するなどして死亡。いずれも自殺とみられる。

同級生や先輩からのイジメや校内暴力、恐喝、教師の暴言などにより、新学期の始まる4月や、長い夏休み明けの9月、冬休み明けの1月などに学校へ行きたくない、学校へ行くぐらいなら死んだほうがマシと思い悩む子供がいても不思議ではありません。

そうした学校へ行きたくない子供達の逃げ場を提供しようとする動きも最近多く見られます。また、テレビなどでも、追い詰められた子供に「学校へ行かなくても良い」「図書館へ行こう」とか呼びかけています。

新学期が死ぬほど苦しい君へ 「義務教育は1日も通わず卒業できる」(AERA dot.)
あの日、学校へ行かなかったから、私は自分の命を拾ったのだと今でも思っています。1年のうちで最も子ども自殺が多くなる「9月1日」を前にすると、自分が不登校だったころのことをどうしても思い出します。

2015年の夏休み終盤の8月25日には鎌倉図書館員のツイートが社会に大きな反響を与えました。このツイート以降、多くのメディアで「つらければ学校へ行かなくてもよい」というメッセージが普通に使われるようになりました。

もうすぐ二学期。学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい。マンガもライトノベルもあるよ。一日いても誰も何も言わないよ。9月から学校へ行くくらいなら死んじゃおうと思ったら、逃げ場所に図書館も思い出してね。

公共施設で勤務する公務員たる者が「学校を休んで図書館へ来いとはけしからん!」と言う一部の人もいたでしょうけど、このツイートは多くの人に支持、理解されています。

大人でも4月に社会人となり、1ヶ月が過ぎた後、5月の長い連休明けになると、会社へ行きたくなくなるいわゆる五月病というのもあります。

ただ、そうした「夏休み明けに自殺が急激に増える」というのは統計的には根拠がなく、元々年代別で言えばかなり少ない20歳未満の自殺数ということもあり、9月だけ特異的に自殺が増加するという傾向は見られません。

何度かこの日記でも自殺について取り上げてきましたが、繰り返すと、日本の自殺者のほとんどは中高年者であり、理由は健康問題、経済的理由ということです。

警察庁のデータでは、自殺者数は2016年(H28)は21,897人(男性15,121人、女性6,766人)となっていて総数では7年連続で減少しています。

そのうち、中高生が含まれる20歳未満の自殺者数は520名、全体に占める割合は、他の各年代が10数%に対しわずか2%という少なさです。20歳未満を中高生だけに限定すればさらにこの何分の一に減ります。つまり20歳未満の自殺は稀なことであり、統計上では表面には出てこない極めて小さな数値になってしまいます。

20代は少子化で人口が少ないから低くて当たり前?

人口10万人あたりの自殺者数を割合にした自殺率で見ると、20歳未満は2.4%、つまり20歳未満の10万人の中の2.4人が自殺をしたことになります。

同じ自殺率で50代は27.1%で、10万人中27人が自殺でなくなっています。20歳未満と比べるとざっと11倍という高率です。

年代別自殺率

「人の命に軽重はない」ということであれば、この20歳未満の自殺者への対策はまったく無視をしてもよいレベルで、それよりも50代の自殺を防止をすることに全力を挙げれば自殺者数、自殺率とも大きく下げることができます。

そして月別の自殺死亡率を見ると、毎年特異的に多いのは3月と5月で、それぞれ自殺率平均は19.6%、19.2%(2016年)となっています。次が4月と6月で、概ね春(3〜6月)に集中している傾向があります。

これは推定ですが、企業の1年が3月末が期末で4月に新年度を迎え、それに合わせて就職、人事異動、退職などがおこなわれることと関係がありそうです。

中高生の自殺が多いと言われる9月の自殺率は平均で16.9%で、自殺が特異的に少ない12月や8月に次いで、比較的自殺が少ない月のグループに入ります。

年齢別の月別の数字が調べられなかったので、20歳未満の9月の自殺率がどうなっているかはわかりませんが、20歳未満は他の年代と比べて極めて少ない自殺者数、自殺率ですから、全体の傾向に与える影響も少なく本当に多いのかどうか判断が付きません。

上記の記事は、「学校が嫌で自殺を選ぶぐらいなら不登校を選ぼう」という主張であり、それは正しい提案でしょう。

私の年代(昭和32年生まれ)では、不登校になる中高生というのは極めて少なかったような気がしますが、イジメや暴力がなかったわけではありません。

そして今の時代、子供達に「我慢、根性が足りない」とか「這ってでも学校へ行くべき」とか言うつもりはまったくなく、親から金をせびって学校をサボって放蕩の限りを尽くすのでなければ、選択肢として、フリースクールや高校生以上なら働きながら通信教育を受けるなど、通常の登校以外の別の方法を考えるのもアリだと思います。

ちなみに有名人で過去に子供時代に不登校を経験した人を上げておくと、
小栗旬、星野源、安室奈美恵、指原莉乃、マツコ・デラックス、千原ジュニア、伊集院光、吉木りさ、中川翔子、藤田ニコル、平山あや、栗原類、手嶌葵、なだぎ武、チュートリアル徳井、西田敏行、宮崎哲弥、宮本亜門、樹木希林、家入一真、小飼弾など(敬称略)で、大人になってから素晴らしい活躍をされている方がたくさんいらっしゃいます。

現代の感覚では、不登校=ダメ人間ではありませんし、それで人生が決まってしまうわけでもないということを子供はもちろん、教育熱心な親も教育関係者もよく理解しておくべきでしょう。


【関連リンク】
1076 繰り返すな過労自殺
919 春は自殺者が多いという話し
575 自殺者数と失業者数の相関関係


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フラリーマンの哀愁 2017/9/27(水)

1163
先日NHKの番組の中で、仕事が終わっても、まっすぐ家には帰らず、時間をつぶしている「フラリーマン」が増えているという趣旨の話がありました。

放送後には反響が大きかったせいか、NHKやまとめサイトに、感想や意見、その後の様子などがアップされています。

“フラリーマン” まっすぐ帰らない男たち(NHK Web)

NHKおはよう日本で取り上げられた「フラリーマン」に賛否両論 みんなの反応は?(まとめまとめ)

私に言わせると、「そんな暇な時間があるならとっとと家に帰ってやるべきこといくらでもあるだろうに」と思ってしまいますが、番組の中では様々な理由を挙げる人がいて、少し納得するところもありました。

フラリーマンまずなぜフラリーマンが増えたかと言えば、明らかに電通事件を筆頭に多くの企業が残業抑制に走り、それで今まで当たり前に夜遅くまで残業していた会社員が、今まで仕事に充てていた時間が余ってしまい、かと言ってまっすぐに家に帰りたくない理由がそれぞれにあって、ということなのでしょう。

独身の人なら、外で過ごしても家にまっすぐ帰っても変わりはないので、どちらでもいいのでしょうけど、結婚している人は、家族、特に小さな子供や、介護すべき高齢の両親などがいると、家に早く帰っても気が休まらないということで、帰りたくないという事情があるそうです。

女性からすれば、暇な時間があるのなら、少しでも家事や育児、介護を手伝ってよ!と言うことなのですが、会社で1日働き、帰ってからも家事や育児で働くというのはよほどできた旦那以外、なかなか積極的にできることではありません。

すでに共稼ぎ率が専業主婦世帯を大きく超えているので、過半の働く女性からすれば、「なにを甘いこと言っているの!」とお叱りを受けそうですが、元々育児や家事をやってこなかった多くの男性にとってはハードルが高く、急にそれをやって当たり前と言われても戸惑うばかりでしょう。

番組の中でも、ちょっと特例だとは思いますが、帰って家事を手伝っても妻からダメだしを喰らい、結局は妻が全部やり直しすることになり、余計手間が増えたと妻から言われ、早く帰れなくなった人が出ていました。

せめて、そうした訓練を受けていればまだいいのですが、「そんなことも知らないの?」って、妻からなじられながら家事や育児、介護をおこなう男性の姿が哀れに思えてきます。

これも今までが職場が男性社会で、家のことは妻に任せるという慣習があり、それが変化してもなんとか逃げ延びようとしてきた男性側に非があるのは重々承知で、今はそれの変革期で、過渡期ということと言えそうです。

番組の中でも「どうして?」という問いに、「家では邪魔者扱いされてしまう」とか、「長く親の介護をやってきてストレスがたまっている」とか、「会社や家庭から離れたひとりの時間を持ちたい」という様々な理由が挙げられていましたが、あまり説得力のあるものではありませんでした。どちらかと言えばなんとなくという消極的理由って感じです。

そして決定的だったのが、子供のいない場合と、子供がいる場合では、子供がいる家庭の場合のほうがフラリーマンが多いという統計結果が出ていました。

せっかく政府が本腰入れて「働き方改革」を推進し、女性活躍の場を作ろうとしていますが、こうした家庭に帰りたくないという人が増えていくほど、その目論見は大きく崩れていきそうです。

どうすればいいのでしょう?

ひとつには、男性も家事をと言うのなら、主夫率をもっと高めて、子育てや家事が得意だという男性を多く作り出していくのも方法でしょう。男性が家事や子育て、介護などをおこないやすい環境を作らないといつまで経ってもそれは進みません。そのためには女性がもっと働き、一家の家計を支える人が増えなくちゃいけません。

日本の専業主婦率は激減してきているとは言えまだ38%です。一方増えてきていると大げさに言われている主夫率はなんと0.4%という少なさです。

男性も家事や育児、介護をもっとやれ!と言うなら、主夫率もせめて20〜30%ぐらいはないと、男女平等とはとても言えません。現在の50倍以上数を増やさないといけません。

そうした家事や育児、介護に向く男性を育てるために、花嫁学校ならぬ、花婿学校を全国に作って、激しい弱肉強食の競争社会はゴメンだ、人の役に立つ仕事がしたい、料理や掃除など家事が好き、福祉に興味があるという男性を誘導し主夫を養成するとかも国策として必要でしょう。

番組を見ていて思ったのは、登場するフラリーマンはみな、居酒屋とかに寄ってお酒を飲むから帰るのが遅いのではなく、家から持ってきた腐りかけのおにぎりを食べて飢えをしのぎ、お金のかからない公園のベンチや量販店などをブラつき、時間をつぶしているのがなんともはやでした。

残業が減ると当然手当が減り、手取額が減りますから、今までのように気軽に帰りに一杯とか、パチンコ店で時間を潰していうこともできなくなってきているのでしょう。

なんのための働き方改革かわからなくなってきますね。

本来なら、もっと前向きに、もしまっすぐ家に帰りたくないのなら、夜間の学校や講座へ通ってなにか新しい資格や趣味にチャレンジするとか、NPOなどのボランティア活動に参加するとか、夜でも空いている図書館を探して勉強したり、もっと有効な時間の使い方がありそうです。

そうした歳や内容には関係がなく、学習する意欲の積み重ねが、きっと10数年後には思わぬ役に立ったり、人生に厚みをもたらせてくれたりするものです。思っていても、それがなかなかできない人が多いと思いますが。


【関連リンク】
1080 女性リーダーを増やすには専業主夫が必要
1043 親の介護は行くのか呼ぶのか
985 高齢者の健康には会話が重要だということ


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9月後半の読書と感想、書評 2017/9/30(土)

1164
象の墓場 (光文社文庫) 楡 周平

2013年に単行本、2016年に文庫化された現実に起きたデジタル革命によって象に見立てた巨大外資系企業の没落を描いた経済長編小説です。

1990年頃まではアメリカの超優良企業だったイーストマン・コダック社は、世界の写真フィルムや現像液、印画紙などで圧倒的な世界シェアを持ち、1ドルの売上で80セントの利益が得られたという高収益企業で、長く我が世の春を謳歌していました。

しかし1990年代に入り、写真の世界にデジタルの波がヒタヒタと忍び寄ってきて、従来の安定したビジネスモデルが壊されていくことになります。

当時、世界の写真フィルムメーカーは、圧倒的に強いコダックと、新参者の富士写真フイルム(現、富士フイルム)、ドイツのアグフア・ゲバルト社、小西六写真工業(現、コニカミノルタ)などがありましたが、日本以外の国ではコダック社が圧倒的なシェアを持つ巨象に例えられていました。

その巨象コダックがデジタルカメラ時代に乗り遅れ、経営判断の誤りもあって、2012年には上場廃止、2013年には倒産危機を迎えることになります。

デジタルカメラ時代に乗り遅れたと書きましたが、実は世界で最初にデジタルカメラを完成させたのはコダック社です。

しかしチェーン化していたフィルム現像所などパートナーとの関係から、フィルムも現像も不要なデジカメを普及させるのに抵抗があり、モタモタしているあいだに日本の家電メーカーやカメラメーカーからデジカメが次々と登場し、一気にフィルム市場を奪われていくことになります。

この小説では外資系企業日本法人の会社員が主人公で、まさかこの巨大企業が傾いていくなど夢にも思わず、その激しい逆流の中で必死に戦っていく姿を描いています。

コダックの社員というので思い出したのは、親しい知人がバブルの頃、投資用でファミリー向けのマンションを5千万円で購入し、まだ入居者が決まっていない時に、良かったら賃貸として借りないかと言われて一緒に物件を見に行ったことがあります。

しかしまだ結婚してまもなくの頃で、ファミリー向けの広いマンションを借りるには、家賃を大幅にまけてもらっても当時の収入ではとても厳しく、すぐに断りました。

その後、当時は優良企業だったコダックの社員に貸し出せたので安心だと聞いて、喜んでいたのもつかの間、その後1年も経たないうちにコダックの様子がおかしくなりました。

おそらく突然リストラをされたのか、その借主は何ヶ月分かの家賃を踏み倒したまま夜逃げ同然で行方不明となり、残された部屋には大物の家具等は持ち出され、粗大ゴミだけがそのまま散乱していたという悲惨な状態だったとか。コダックの社員にとってはそれほど寝耳に水の急な業績悪化とリストラだったのでしょうね。

なかなか読み応えのある、外資系ビジネスマンには身につまされるような話しも多く、面白く読めました。

★★☆

著者別読書感想(楡周平)

         

ナイト&シャドウ (講談社文庫)  柳 広司

2014年単行本、2015年に文庫化された長編小説で、主人公は日本人の警察官ながら、舞台はワシントンD.C.という珍しいパターンです。

著者の出世作で代表作となった「ジョーカー・ゲーム」(2008年)のシリーズは、昭和初期の帝国陸軍のスパイ養成機関が舞台で、そこでは徹底した記憶力と卓越した推理と創造力を鍛えられます。

そうした特殊なスパイと能力的に共通するのがアメリカ財務省管轄の要人警護組織であるシークレット・サービスで、科学的な捜査とともに、身を犠牲にして要人を守り抜く強靱な身体と、犯行を未然に防ぐための予知能力、そして非常事態発生時の対応などが求められます。

そのシークレット・サービスへ警視庁から厄介払いとして研修に出されてD.C.へやってきたのが主人公で、現役のシークレット・サービスとともに、大統領を狙うテロ犯グループと知恵比べをするというストーリーです。

ちょっと主人公にできすぎた感はあるものの、最後のどんでん返しも見事で、単なるハッピーエンドで終わらないところが秀逸と言って良いでしょう。

★★☆

著者別読書感想(柳広司)

         

美しい家 (講談社文庫) 新野剛志

八月のマルクス」(1999年)、「あぽやん」(2008年)など、毛色の違う多くのヒット作を持っている著者の2013年刊(文庫版は2017年)の長編社会ミステリー小説です。

主人公は二人で、その二人の視点で物語が同時並行して進められていきます。

一人目は最近は新作が書けないでいる小説家で、子供の頃に姉が何者かに拉致されて行方不明となってしまった過去を引きずっている男性と、もう一人は刑務所から出たばかりの暗い過去を持つ若い男性です。

と思っていたら、終盤近くでそのうちの一人、作家がもう一人の主人公男性にあっけなく殺されてしまいます。ネタバレ失礼。

行く当てのない家族を引き受けて、集団で生活をするというのは古くは1980年頃に起きた「イエスの方舟事件」や、2012年には「尼崎事件」というのもありましたが、そうしたところで育てられた子供達が、成長して大きくなってからも過去を引きずっていく様子がよく描かれています。

タイトルは転々と住まいを変える集団生活において、そこで生まれ育った子供達が、幼いときのイメージの中に生じさせる理想的な住まいを揶揄したものと思われます。

★★☆

著者別読書感想(新野剛志)

         

お別れの音 (文春文庫) 青山七恵

著者は2007年に「ひとり日和」で芥川賞受賞、2009年には短編「かけら」で川端康成文学賞を受賞した若手作家のホープのひとりで、2010年(文庫は2013年)刊の短編小説です。この作家さんの小説を読むのは今回が初めてです。

短編は、「新しいビルディング」「お上手」「ニカウさんの近況」「うちの娘」「役立たず」「ファビアンの家の思い出」の6編で、それぞれ「別れ」がテーマとなっていますが、関連はなく独立した話しです。

割とそれぞれが平坦な日常の光景を淡々と描いたもので、特にインパクトを感じる隙間もないのですが、その6編の中でかろうじて印象に残った作品はというと、街中でよく見かける靴の修理やキーの複製などをしてくれるワンオペのお店の男性に興味を持ってしまう女性を描いた「お上手」と、大学を卒業前の最後の夏休みに、英国へ留学している友人に誘われてスイスへ旅行する学生の一夏の体験とその後を描いた「ファビアンの家の思い出」ぐらいでしょうか。

小説というと非日常のあり得そうもない凶悪な事件や死に至る病気など、刺激的な話しが多い中、こうした薄味で淡々とした別に誰かが死ぬわけでもなく、家族が引き裂かれるわけでもなく、悪意がみなぎるわけでもない平凡な人の平凡な日常が逆に新鮮に思える時代になってきたのかも知れません。

そう、起承転結なんかくそ食らえ!って感じで、いつ終わったのかもわからないような。

私の年代(弱肉強食が普通に通用した年代)だと、どうにもまどろっこしく感じたり、物足りなく感じるでしょうけど、若い人、特に女性や草食系と言われる男子には、心穏やかに共感が得られそうな気がします。

ただ短編作品に関しては私の評価は厳しくて★1つです。

★☆☆

         

偽悪のすすめ 嫌われることが怖くなくなる生き方 (講談社+α新書) 坂上忍

主としてテレビバラエティ番組のMCで活躍している著者の2014年刊のエッセイ本です。芸能人がよく出すゴーストが書いた当たり障りのない自慢話かと怖々読んでみたところ、なかなか毒舌を持ち味としたキャラを生かした人生の深い話が聞けます。

実は私自身がテレビのバラエティ番組はまず見ないので、この人のことはほとんど知らず、たまにワイドショーのMCやコメンテターで言いたい放題に話しをしているところをちょっとだけ見て、顔ぐらいは知っているというレベルです。

バラエティ番組のMCをする人はたいてい元アナウンサーとか、しゃべりが商売のコメディアンが多いのですが、この著者は元人気子役で、大人になってからも子役のしがらみを振り払い、俳優を続けているという割と珍しい人です。ってほとんどの人が私よりもよく知っているでしょうからあらためて説明する必要はないでしょう。

この著者の面白いところは、俳優ならば大手芸能事務所に所属して付き人やマネージャーをつけて自分は演技以外の仕事はしないというのが普通でしょうけど、著者は子役時代に個人事務所を設立し、その後も群れずに一人で芸能活動をやっていくことを善としています。

そうした「鶏口となるも牛後となるなかれ」主義は著者の数々の毒舌と称される発言にも影響していて、本人はいたって普通にしゃべったことが、芸能業界の中ではちょっと異例のことだったり、空気を読まないと非難されたりということのようです。

若者に対し「スマホなんかいじってないで、おっぱいをいじろう」みたいなエロオヤジ全開モードのところもありますが、この人も正直すぎて時代の趨勢には乗っかれない人なんだろうなぁと思ってしまいます。

いえ、それが間違っているというのではなく、誰でも年を重ねていくと、そういう上から目線で自己中気味の説教臭くなるってことで、この異端児?も同じ中年なんだなぁって嬉しく思う次第です。

★★☆

【関連リンク】
 9月前半の読書 危険なささやき、会社の品格、男の勘ちがい、安土城の幽霊
 8月後半の読書 白雪姫殺人事件、里山資本主義、デセプション・ポイント、漂流者たち
 8月前半の読書 転落の街、となりのクレーマー―「苦情を言う人」との交渉術、長女たち、殺戮にいたる病

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