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加藤廣 KATO HIROSHI 既読書籍

005 信長の血脈
004 明智左馬助の恋(上)(下) 003 安土城の幽霊「信長の棺」異聞録
002 秀吉の枷(上)(中)(下) 001 信長の棺(上)(下)
読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


加藤 廣(かとう ひろし、1930年6月27日 - 2018年4月7日)は、日本の小説家。
東京生まれ。東京都立新宿高等学校、東京大学法学部卒業。1954年に中小企業金融公庫に入庫。京都支店長、本店調査部長などを歴任後、山一證券に勤務し、同経済研究所顧問、埼玉大学経済学部講師などを経て、中小企業やベンチャー企業のコンサルタントを務めるかたわら、2005年に構想15年の書下ろし長編『信長の棺』で作家デビューした。75歳での高齢デビューが話題となった。

作家デビュー以前からビジネス書を著していたが、小説『信長の棺』は『日本経済新聞』に連載され、ベストセラーとなった。『秀吉の枷』『明智左馬助の恋』と本能寺三部作を発表して大きな話題を呼ぶ。丹念に資料を精査し、独自の解釈で日本史の謎に迫り続けていた。大阪経済大学で経営学部の客員教授も務めた。(Wikipediaより引用 2022年2月)


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005 信長の血脈(文春文庫)

2008年に織田信長の遺骸の謎を追う信長公記などを書いた太田牛一を主人公にした小説「信長の棺」(2005年)がたいへん面白く、その後も何作か、戦国時代の小説を読んできましたが、今回はその中の「安土城の幽霊 「信長の棺」異聞録」(2011年)と同様の短篇集で、2014年の作品です

短篇作品のタイトルは「平手政秀の証」「伊吹山薬草譚」「山三郎の死」「天草挽歌」の4篇で、前の二つがオール讀物に、あとの二つは書き下ろし作品となっています。

タイトルに信長が使われていますが、信長自身がメインとしては登場せず、戦国時代からその後の江戸時代に脇役というか、歴史の表舞台とは違うところで生きた武将などが主役となっています。

信長というタイトルは完全に釣りです。「信長の血脈」となれば某元フィギュアスケーターまで書かないといけませんけどそんなのは読みたくもないです。

それでも、4作とも著者が信長や秀吉、明智左馬助などの作品を書いた時に、様々な資料を調べていくなかで疑問に思ったり、新しい発見やアイデアがあったりして、それらを深めて短篇集にまとめたということで、まったくの無関係と言うことでもありません。

「平手政秀の証」は信長の幼少時代に文武の教育係として任された家老が信長の親子の葛藤の中で苦しめられる物語、「伊吹山薬草譚」はよく知られていますが、伊吹山に戦国時代に南蛮由来の薬草畑が作られて、現在でもそうした外来種の草花が繁殖している話し、「山三郎の死」は、豊臣秀吉の子とされている秀頼の本当の父親は?という話し、最後の「天草挽歌」は明智光秀の一番の家臣、明智左馬助の息子で三宅藤兵衛が肥後国で穏やかに過ごしていたところ、天草の乱が起き、人を殺すよりは良いと自死を選ぶという物語です。

ただどうしても短篇だけに、中身はそれほど深掘りはされてなく、サラッと終わっているので、印象に残りにくい感じです。

★★☆

9月後半の読書と感想、書評 2023/10/4(水)

004 明智左馬助の恋 (上)(下) (文春文庫)
今年2018年4月に亡くなられた著者の、「信長の棺」「秀吉の枷」とともに、「本能寺三部作」と言われる作品で、2007年に単行本、2010年に文庫が発刊された歴史長編小説です。

2006年には、この小説を原作とし、タイトルを「敵は本能寺にあり」としてテレビドラマ化されました。出演は、市川染五郎、玉木宏、釈由美子、竹中直人など。

主人公の明智左馬助は実在した人物で、正式には明智秀満と言う名で、主君である明智光秀の重臣です。光秀の娘を嫁にもらった後、明智姓を名乗るようになったと言われています(諸説あり)。

本書では、本能寺の変は、明智光秀もこの主人公の明智左馬助も、最初は信長を殺すのが目的ではなく、公家衆からの要請に応える形で、天皇の勅命と信じ、信長を捕らえて引導を渡し、引退させるのが目的だったところ、部下の中に比叡山の焼き討ち事件で両親や兄弟を信長勢に殺された遺族が数名いたことで、それらが信長憎しで先走った結果、激しい戦闘状態となってしまったことになっています。

また明智勢が発見できなかった信長の遺体については、織田家の菩提寺である阿弥陀寺の僧侶がどこからか引き取っていたことがわかり、その遺骨の埋葬については、今後信長後継者による遺骨の奪い合いの政争に巻き込まれることがないよう、左馬助が阿弥陀寺へ入れ知恵をします。

と、まぁ、新たな新説なども織り交ぜつつ、クライマックスの本能寺の変と、その後明智家が滅亡していく様子が明智側からの視点で描かれたことに新鮮さを感じます。

そうそう、まだ1年以上先のことですが、2020年のNHK大河ドラマは「麒麟がくる」で、その主役は明智光秀だそうです。その光秀役には長谷川博己が決まっています。

今までの大河で描かれる明智光秀は、悪役で小物感いっぱいでしたが、一気に知将・名将として躍り出るのでしょうか。

★★★

12月前半の読書と感想、書評 2018/12/15(土)

003 安土城の幽霊「信長の棺」異聞録
信長の棺」(2005年)のスピンアウトもので2011年発刊(文庫は2013年)の短編集です。

「藤吉郎放浪記」「安土城の幽霊」「つくもなす物語」の三編からなるこの「小説は、タイトルにもある通り、「信長の棺」の戦国時代末期のそれぞれ独立した物語です。

しがない商人から時代の寵児へと駆け上がっていく秀吉=藤吉郎の身分や山の民として生まれた出自を必死に隠し、己の才能だけを頼りに信長に近づき、腹心として当時の家督制度、武家社会に真っ向立ち向かっていく姿を描いた「藤吉郎放浪記」。

信長の理不尽な命令に振り回されて悔しがる愚図で小心者の家康が、腹心の部下服部半蔵を使って信長に偽の幽霊を見せて一泡吹かせようとするものの、安土城には信長に取り憑いた本物の幽霊が先にいて、取り憑かれた幽霊を祓うために頼ったのが阿弥陀寺の住職、清玉上人だったという話しの「安土城の幽霊」。

室町時代に宋から日本へ渡り、足利義満に献上されたとされ、現在も静嘉堂文庫美術館に所蔵されている「九十九茄子〈つくもなす〉」という見事な茶器が、足利義満(金閣寺建立)→足利義政(銀閣寺建立)→山名是豊(応仁の乱)→伊佐宋雲→朝倉教景→松永久秀→足利義昭→織田信長→豊臣秀吉→有馬則頼→徳川家康→藤重藤元→岩崎弥之助(三菱グループ創設者)と数奇な運命をたどっていく話しの「つくもなす物語」。

いずれも戦国時代ファンにとってはフィクションとした「異聞」ではあるものの、なかなか面白い内容となっていて、エンタメとして楽しめます。

★★☆

9月前半の読書と感想、書評 2017/9/13(水)

002 秀吉の枷 (上)(中)(下)(文春文庫)
「秀吉の枷(かせ)」は著者の前作「信長の棺(文春文庫)」と時代はかぶっているものの主役が織田信長と豊臣秀吉で違うのでそれぞれ楽しめます。

私は「信長の棺」が意外な結末に新鮮味があって面白いと思いました。あと既に単行本で発表されている明智光秀が主役の「明智左馬助の恋」とで本能寺三部作と呼ばれているそうです。

いずれも現実に起きた歴史と作者のやや無理もありそうな推理とが織りなしていく戦国ロマンの小説であります。まぁ時代劇とか戦国時代の歴史に興味のない人には無縁でしょうけどね。

9月前半の読書 その1 2009年9月14日 (月)


「BOOK」データベースより
「殿は、いつまでもあの『覇王』の手先であってはなりませぬ」。死を目前にした軍師・竹中半兵衛は、病床で秀吉に四つの忠言と秘策を授けた。天正七年(一五七九)六月、蜂須賀小六、前野小右衛門ら播州から駆けつけた異能集団“山の民”を伴い、秀吉は密かに天下取りに動き出す。大ベストセラー『信長の棺』に続く本能寺三部作、第二弾。

「例の本能寺に通じる抜け穴を、本能寺の古井戸から至近距離で封鎖するのだ」。光秀の謀反を察知した秀吉は、前野将右衛門に命じた。その光秀を天王山に破り、秀吉は後継者争いのトップに躍り出る。やがて信長の遺児や嫡流を葬り去ると、信長の姪、茶々に触手を伸ばす。独裁者となった秀吉の心に広がる、消えることのない闇とは。

比類なき軍事・政治手腕と財力を武器に天下を平定。官位も最高位に上りつめながら、独裁を強めた晩年は横暴で奇矯なふるまいへ。ついに人心は離れていく―そこにあるのは覇者の驕りか、後継不在への焦りか、それとも…桜花のように儚き栄華。豊臣秀吉の最期、物語は衝撃の結末を迎える。

001 信長の棺 (上)(下) (文春文庫)
2008/09/25読了

「BOOK」データベースより
「惟任(光秀)ご謀反」―。安土城で知らせを聞いた太田牛一は、生前の信長の密命に従うべく、5つの木箱とともに西へ向かう。が、佐久間軍に捕えられ能登の小屋に幽閉されてしまう。10カ月後、天下統一を目前に控えた秀吉から伝記執筆を条件に解放された牛一は、天満に小さな隠居所を構え、信長暗殺の謎を追うのだった。

なぜ信長の遺骸はいつまでたっても見つからないのか。光秀はなぜ戦勝祈願の連歌を詠んだのか。秀吉の「中国大返し」はなぜ可能だったのか。丹波を訪れた太田牛一は、謎の美女、多志に導かれ阿弥陀寺、本能寺、丹波を結ぶ“闇物語”のとば口へと足を踏み入れる。驚天動地の歴史ミステリーいよいよクライマックスへ。



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