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リストラ日記アーカイブ 2021年5月
読みやすいようにアーカイブは昇順(上から古いもの順)に並べ替えました。上から下へお読みください。

日記INDEXページ(タイトルと書き出し部の一覧)はこちらです
1532 書店の役割は変わっていけるのか? 2021/5/1(土)
1533 2021年3〜4月にみた映画 2021/5/5(水)
1534 パンデミックが首都機能移転・分散化に拍車をかけるかも 2021/5/8(土)
1535 マリー・アントワネットの時代 2021/5/12(水)
1536 5月前半の読書と感想、書評 2021/5/15(土)
1537 定番映像に危険な香り 2021/5/19(水)
1538 日本の農業はどこへ向かうか 2021/5/22(土)
1539 金利金利金利 2021/5/26(水)
1540 5月後半の読書と感想、書評 2021/5/29(土)



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書店の役割は変わっていけるのか? 2021/5/1(土)

1532
6年前に書店数の推移を書きましたが、その後も着実に減り続けています。

書店数や出版業界売上減と未来 2015/9/9(水)

また、同じく衰退が顕著な喫茶店と比較した長期的な書店数推移を2年前に書いています。

絶滅危惧種の喫茶店と書店数推移 2019/10/26(土)

私自身も、近所にあった大きめの書店が5年ほど前に閉店してから、新刊本を販売する書店へ行くことはめっきりと減りました。

古書を扱うブックオフにはよく行きますが、どうしても新刊本を買いたい場合は、通販で買ってしまうことが多くなっています。そういう人が増えていくことを考えると、リアルな新刊本中心の書店が減るはずです。

2019年までの全国書店数推移(出典:アルメディア)です。グラフは単なる右下がりで、気持ちが暗くなるので今回はなしです。

全国書店数推移(出典:アルメディア)
書店数 減少数
1999年 22,296
2000年 21,495 -801
2001年 20,939 -556
2002年 19,946 -993
2003年 19,179 -767
2004年 18,156 -1,023
2005年 17,839 -317
2006年 17,582 -257
2007年 17,098 -484
2008年 16,342 -756
2009年 15,765 -577
2010年 15,314 -451
2011年 15,061 -253
2012年 14,696 -365
2013年 14,241 -455
2014年 13,943 -298
2015年 13,488 -455
2016年 12,526 -962
2017年 12,026 -500
2018年 11,446 -580
2019年 11,024 -422
20年間減少数 -11,272

この20年間で、1万店以上が減り、書店の数はちょうど半分になっています。そこで働いていた何万人という人達はどこへ行ったのか気になるところです。

この調査では2019年の書店数は11,024店ですが、別のデータ、日販の「出版物販売額の実態」の書店数は2019年度で9,242店となっています。

書店書店というのは文具店や雑貨店などと兼業されていたり、新刊書がメイン(書店)か古書がメイン(古書店)かなどの区分が難しいのでしょう。

もっと言えば、雑誌や人気本を置いているコンビニやキオスクなども厳密に言えば書店的な機能を持っているとも言えますから、書店の判断で調査会社ごとに多少の違いは出てきます。

それはともかく、リアルな書店の良いところは、特に新刊本や雑誌を手に取って、パラパラと中身を少し見たり、文庫ならカバー裏面のあらすじを読んで、買うかどうかを決めることができます。

外勤の仕事をやっていたときには、大雨が降っているときや、いまいち仕事に乗り気がしないときの避難先として大型書店はたいへん重宝しました。

先月ですが、朝日新聞を読んでいたら、こういう記事がありました。

講談社、文庫本をフィルム包装 もう立ち読みできない?(朝日新聞)
出版大手・講談社(東京都文京区)が小説などの文庫本のフィルム包装を始めた。同社は「消費税を含んだ総額表示に対応するため」と説明する。書店や消費者からは「立ち読みを通じた本との出会いの機会が減ってしまう」などと残念がる声も出ている。文庫本は立ち読みできない時代が来るのか。

すでに立ち読みが慢性化していた漫画本や週刊誌のフィルム包装はすっかりお馴染みの光景でしたが、これからは一般書籍にも波及していきそうです。

透明フィルムなので、文庫裏面のあらすじを見るのには不都合はなさそうですが、中身については通販と同じで、文字の大きさ(これは高齢者にとって大事)や、章立てなどザックリした内容などわからないままでの購入となります。

ただ昨今のなんでもかんでも消毒ブームからすれば、不特定多数の他人が触った書籍ではない清潔な本を買えるというメリットはあるのでしょう。ひどいオヤジは指に唾をつけてページをめくったりしていますからね。

ま、包装するしないどちらにも理由や必然性があるわけで、長々と立ち読みする人は昔から書店の敵でもあるわけなので仕方がない気もします。

とすると、これからのリアルな書店は、時間(通販ではなく書店へ行く時間的余裕がある)と、お金(古書や新古書ではなく手の垢が付いていない書籍)がある、いわゆるお金も時間もある富裕層向け対象と言うことになっていきそうです。

さらに高じて、デパートの外商のように、そうした富裕層向けに定期的に自宅まで新刊書を持って販売しにきてくれる書店や、高級ソファーに座って、ゆっくり選ぶことができる会員制書店のような形態(すでに聞いたことがある)が出てくるのかも知れません。

【関連リンク】
1512 2021年版出版社不況
1377 絶滅危惧種の喫茶店と書店数推移
1097 出版不況と電子出版の行方
954 書店数や出版業界売上減と未来


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2021年3〜4月にみた映画 2021/5/5(水)

1533
おしゃれ泥棒(原題:How to Steal a Million) 1966年 米

監督:ウィリアム・ワイラー
出演者:オードリー・ヘプバーン、ピーター・オトゥール

ローマの休日」(1953年)で大ヒットを飛ばし、その二番煎じ?とばかりに同じ監督、主演で制作されたコメディ映画です。原題は「100万ドルを盗む方法」という物騒なタイトルです。

「ローマの休日」ではまだ20代前半で初々しかったヘプバーンも37歳となり、女優としての貫禄が出ています。

父親が美術品の贋作制作を生業としていて、それを苦々しく思っている娘ですが、美術品の鑑定に明るい探偵が屋敷に忍び込んできたことから、仲良くなります。

そして父親が制作し、美術館を騙して貸し出し展示されている彫刻が科学鑑定されることになり、それを阻止するため、その探偵とともに鑑定前に彫刻を盗み出す計画を立てます。

と言ったドタバタコメディで、退屈はしないものの、もはや大女優ヘプバーンの人気に頼るのもちょっと無理がありそうな気もします。

そこで、ヘプバーンが魅せる上流階級女性の様々な斬新なファッションを、世の先進的な女性たちの眼を向けさせるためにこうした邦題になったのかなとちょっと思ったり。

今、と言ってももうかなり古くなりましたが「セックス・アンド・ザ・シティ」(2008年)や「プラダを着た悪魔」(2003年)的な要素がいっぱいです。

★☆☆

            

海賊と呼ばれた男 2016年 「海賊とよばれた男」製作委員会 配給東宝

監督:山崎貴
出演者:岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太

原作は百田尚樹の同名小説で、私も2016年に読んでいます。

◇2016年1月後半の読書と感想、書評(海賊とよばれた男)

海賊と呼ばれた男
欧米のメジャーや官製談合に対抗した出光興産創業者の出光佐三がモデルの作品で、山口の小さな油売りからスタートし、やがては自前のタンカーを建造するまで成長を続けます。

しかし石油メジャー(エクソン、モービル、テキサコ、ソーカル、ガルフ、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP)の下請けになることを拒んだことから原油輸入を停められてしまいます。

そこでくじけず、メジャーの権益が及ばないイランの国営原油工場へ自前のタンカーを送りますが、そこにはイランと敵対する英国の軍艦が海上封鎖をおこなっています。

山崎監督お得意の、迫力のあるCG映像を駆使した太平洋戦争の空中戦や、巨大タンカーと英国フリゲートの海上の戦いは最大の見所です。

そう言えば、迫力満載の空中戦が描かれた映画「永遠の0」も百田尚樹原作、山崎貴監督コンビの作品でした。その時のノウハウが思い切り生かされているようです。

その独立独歩でやってきた出光興産も、事業再編の波に押され、2019年には外資の昭和シェル石油と事業統合することになりました。

しかしこれは外資に下ったのではなく、逆にメジャー系日本子会社を吸収したという構図で、戦前から脈々と続いてきた民族系企業にこだわる姿勢がメジャー子会社を飲み込んだということです。

右翼とか言われそうですが、鬱々とした今の日本人に、元気とやる気を起こさせる良い映画だと思います。

★★☆

            

天気の子 2019年 「天気の子」製作委員会

監督:新海誠 声の出演者:醍醐虎汰朗、森七菜、小栗旬

天気の子
前作の「君の名は。」から3年目の同監督アニメ映画です。いずれも、テレビ放送で録画をして見ました。

なかなかこうした青春ドラマなアニメをオッサンが映画館で見るのも気恥ずかしいので。

◇2018年1月最近見た映画(君の名は。)

内容は、まさにファンタジーの王道をいっていて、さらにボーイミーツガールで物語は盛り上がっていきます。なんと言っても主人公が、中学生と高校生ですから、少なくともオッサンが喜んでみる映画ではなさそうです。

アニメとは言え、町並や自然現象などは写真かリアル映像のようなリアルな描写が特徴で、美しいアニメと言われる所以です。

ここまでリアルにするなら、アニメで作る意味がどこまであるの?という気がしないでもありませんが、そこは究極のアニメを目指す人達の意地でもあるのでしょう。

事前に知らないで見ていたら、前作「君の名は。」の成長した主人公二人を含む登場人物が、チラッと登場していました。ちょっとしたアニメ版のカメオ出演ってところでしょうか。

★★☆

            

心の旅(原題:Regarding Henry) 1991年米

監督:マイク・ニコルズ 出演者:ハリソン・フォード、アネット・ベニング

心の旅
原題の直訳は「ヘンリーについて」と、優秀で冷徹な弁護士の主人公ヘンリーが、銃撃事件で記憶喪失を起こし人間が変わってしまうことについての人間ドラマを指しています。

今から30年前の映画ですが、「スター・ウォーズシリーズ(1977年〜)」や、「インディー・ジョーンズシリーズ(1981年〜)」で、すでにトップ俳優になっていた当時49歳の今からすると若々しいハリソン・フォードが主演しています。今はもう79歳で、アメリカ人男性の平均寿命(75歳)をすでに超えています。

ストーリーを簡単に言えば、仕事人間が記憶喪失になって、崩壊寸前だった家族との絆を取り戻すという割と多そうなハッピーエンド物語で、あまり謎とかミステリーとかは関係がないので、なにも考えずに安心して見ていられます。

ただ、人間ドラマとしては薄っぺらな感じで、皮肉っぽく見ると、アメリカの上流社会をスイスイ渡ってきた上級民たちの優雅な生活がたっぷりとみられます。ひがみではないですが、ひがみっぽく言っておきます。

テーマは若年性認知症で違うのと、ハッピーエンドではないですが、夫婦で危機を乗り越えようとする同じ香りがする渡辺謙主演の日本映画「明日の記憶」のほうが、私は好きです。

★★☆

            

80デイズ(原題:Around the World in 80 Days) 2004年米

監督:フランク・コラチ 出演者:ジャッキー・チェン、スティーヴ・クーガン、セシル・ドゥ・フランス

80デイズ
1956年のアメリカ映画「八十日間世界一周(Around the World in 80 Days)」のリメイク版ということですが、明らかにフランスの古典名作を利用した中国人向けの中国礼賛といった映画で、アメリカ映画にもかかわらずやたらと中国人が登場し、カンフーばかりやっています。

アメリカ映画界も、世界の興行収入を考えると、中国と中国人の影響を猛烈に意識をしてきた頃の映画ということでしょう。

アーノルド・シュワルツェネッガー、サモ・ハン・キンポー、オーウェン・ウィルソン、ルーク・ウィルソン、ロブ・シュナイダーなど、有名人がチョイ役で登場しているのはなかなか面白いです。

しかし、やたらと出演者がみなハイテンションで、見ていて痛々しさを感じるほどです。

ドタバタコメディエンタメを目指したのでしょうけど、どうもそれがすべて空回りしています。

★☆☆

【関連リンク】
2020年11〜12月 48時間PART2/帰って来たふたり(1990年)、レディ・プレイヤー1(2018年)、こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話(2018年)、天国は待ってくれる(1943年)
2020年8〜10月 免許がない(1994年)、日々是好日(2018年)、助太刀屋助六(2002年)、ニューヨーク東8番街の奇跡(1987年)、ブリジット・ジョーンズの日記(2001年)


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パンデミックが首都機能移転・分散化に拍車をかけるかも 2021/5/8(土)

1534
東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に4月25日から5月11日の期間で出されていた緊急事態宣言も延長の方向で進められています。

中途半端な解除だと、ちょうど7月のオリンピック開催の頃には4回目の緊急事態宣言を出すことになりそうと言われています。

もし、実質、戒厳令下でのオリンピック開催となると、これまた世界中に日本の感染病対策の甘さとリスクを宣伝するようで恥さらしのような気がしますがどうなのでしょう。

1960年代の高度成長期から、東京、大阪を中心とする大都市圏へ地方の農村部や離島から多くの人が仕事を求めて集まってきました。

やがては、その地方から出てきた世代の子供が育ち、大学や専門学校など多くの教育機関も大都市圏に集中して作られることになり、その影響もあって「学ぶためには大都市へ」と、地方に住む若者が都会へ集まってきます。

そうして、1980年代以降、人口の大都市圏、特に首都圏への一極集中が極まっていくことになります。

1990年以降、なんどか、首都機能移転の話しが出ては消えを繰り返しました。国会でも1992年に「国会等の移転に関する法律」が成立していますが、現在は凍結されたままです。

国土交通省「首都機能移転の考え方」

国会首都機能移転にはそれぞれメリットデメリットがあり、費用も膨大なだけに、今の政治家が生きている数十年のあいだにはなにも進まないだろうと思います。

もし、一気にそれが進むことがあるとしたら、首都直下地震が起きて、かなり大きな被害が及んだ場合、「やっぱり一極集中はダメね」ということで、政治家や官僚が混乱極まる東京から家族を伴い逃げ出すように、地方で新しい首都を作ろうと重い腰をあげて動き出すかなと思っています。

しかし、今回のコロナ禍を見ていると、この感染症パンデミックが首都機能移転を後押しするかもと思い始めてきました。

感染症の対策に一番効果がありそうなのは、ワクチン接種ですが、新しいウイルスのワクチンを開発し、それを国民に行き渡らせるには相当の年月が必要なことが明らかになりました。

次に有効なのは、人と人の接触を避ける人流抑制です。つまり大都市のような人が密集する場所が感染症を拡げていくことがわかりました。

コロナウイルスはすでにワクチンが作られ、それが世界中に到達するあと1年後ぐらいには、もう普通のインフルエンザ並みの感染症になっていくと思われます。

しかし、今後、コロナウイルスよりもっと感染しやすく、重症化、致死率の高い新たなウイルスが今後も次々と出てくることは考えておく必要があるでしょう。

そうした感染症パンデミックに強い国家を考えると、やはり首都機能や大企業の地方分散化ということになってきそうです。

今回のコロナ禍で、データのクラウド化、リモートワークがかなり普及してきました。これも地方移転に拍車がかかる要因となります。

「クラウドはセキュリティに不安が〜」「ビジネスは相手と直接顔を合わせて〜」なんていう人には、個人情報漏洩事件で一番多いのは、個人のデータ持ち出しや紛失だし、日本の課題でもある生産性向上に反する直接面会など減らしていくべきということを理解させるべきでしょう。もう今は昭和でも平成でもないのですから。

中途半端に感染症が収束するより、大都市部でもっとひどい状態に陥ると、東日本大震災時の原発メルトダウンでそうだったように、家族とともに都市部から逃げ出す富裕層、政治家、役人、企業経営者が出てくるので、それぐらいの衝撃が起きると、一気に首都機能移転や企業の地方移転が一気に加速するのかも知れません。

【関連リンク】
1464 エッセンシャルワーカーへの感謝と憧れ
1443 コロナ失業者増加で自殺者数はどうなる?
870  首都移転は実現可能か
611  海外移転で製造業の労働者はどこへいったのか?


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マリー・アントワネットの時代 2021/5/12(水)

1535
シュテファン・ツヴァイク著の伝記「マリー・アントワネット」、遠藤周作著の小説「王妃マリー・アントワネット」を読んで、18世紀頃のフランスや、今はなきフランス王政のことが結構理解できましたので、備忘録じゃないですが、主要な人物別に簡単にまとめておきたいと思います。

1760年代から1780年代の日本は、10代将軍徳川家治(1760年〜)、11代将軍徳川家斉(1787年〜)の時代で、江戸中期の鎖国の真っ只中、特に新しい動きはない時代でした。ただ、江戸で明和の大火(1772年)、岩木山、浅間山の噴火などが続き、天明の大飢饉(1782年)を引き起こし数十万人が餓死したと言われる頃の話しです。


1)マリー・アントワネット

マリー・アントワネット
1755年オーストラリアのハプスブルク家王女マリア・テレジアの11女として生まれ、14歳の時に、それまで犬猿の仲だった隣国フランスの王太子(後にルイ16世として即位)に嫁ぎ、ベルサイユ宮殿に入ります。

マリー・アントワネットは勉強が嫌いでフランス語が話せず、まだ14歳の若さで政治にも王室行事にも関心がなく、関心があるのは演劇(鑑賞と自ら出演)やオペラ鑑賞、社交界で最先端を行く奇抜なファッションとジュエリー、トランプやカジノなどの賭け事などです。自分が目立ち、周囲からチヤホヤされるのが大好きだったようです。

フランス国内は英国との7年戦争(1754年から1763年)などで経済が疲弊し、国民が重税にあえいでいる中での貴族の特権や、王室の浪費に対して国民の不満がたまっていて、1789年に国民革命が勃発、多くの貴族や王家は一転してとらわれの身になります。

マリー・アントワネットの恋人とも言われるスウェーデン人貴族のフェルセンなどの力を借りて、一度は軟禁先からの逃亡を企てますが、逃げ切れずに捕まり再び軟禁されます。

そして1793年にコンコルド広場において、夫のルイ16世の処刑から9ヶ月後、断頭台ギロチンによる公開処刑され38歳で刑死します。

ちなみにギロチンはフランス人のギヨタン氏が受刑者に苦痛を伴わない処刑法として発案(その名前が由来で英語読みがギロチン)し、マリー・アントワネット処刑の前年1792年から使用されました。それまでの処刑法は、刑吏が大なたで首を切り落としたり、両手両足をクルマで四方へ引っ張る方法など刑によっていくつかありました。

  ◇   ◇   ◇

2)ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

モーツァルト
天才作曲家と言われるモーツァルトは、1756年オーストラリア生まれ、マリー・アントアネットより1歳下で、ほぼ同年代です。

父親はオーストラリアの宮廷作曲家であり、すでに早熟の天才作曲家・演奏家として活躍していたモーツァルト6歳の時に、王女だった7歳のマリー・アントワネットと出会い、「将来お嫁さんにしてあげる」と言ったという逸話があります。遠藤周作著の小説に少しだけ出てきます。

その後、二人が出会ったという記録はなさそうです。マリー・アントワネットより2年早く、1791年にオーストリアで病死します。

もし、マリー・アントワネットが政略結婚でフランスへいかず、モーツァルトと結婚していれば、母国オーストリアの地で、天命が尽きるまで心穏やかに平和に暮らしていたのかも知れません。

  ◇   ◇   ◇

3)カリオストロ

カリオストロ
1743年イタリア生まれの稀代の詐欺師で、アヴァンチュリエ(山師)と呼ばれていましたが、富裕層から金品をまきあげて貧しい人に与えていたという鼠小僧的な義賊の側面もあったとか。

フランス王室やマリー・アントワネットの評判を一気に貶めることとなった、宝石商から高級首飾りを王室の名を騙り、騙し取られた「首飾り事件(1785年)」という大きな事件が起きますが、その黒幕だったのではないかと言われていました。しかし当時の裁判では無罪になっています。遠藤周作の小説では、黒幕説で描かれています。

モーリス・ルブラン著のアルセーヌ・ルパンシリーズ「カリオストロ伯爵夫人」は、そのカリオストロの娘という設定で、ルパンのライバルとして出てきます。

またモンキーパンチ原作、宮崎駿監督の映画「ルパン三世 カリオストロの城」のカリオストロは、このルパンシリーズをヒントに名称を使ったようですが、上記の伯爵個人とはまったく関係がなく(由来がなく)、フランス近郊の架空の小国の名称とその統治者がカリオストロという設定です。

  ◇   ◇   ◇

4)マルキ・ド・サド

マルキドサド
サディズムという言葉の由来となったフランスの貴族であり小説家のマルキ・ド・サド(侯爵)は、 1740年フランスパリ生まれで、マリー・アントワネットが生きた時代(サドが15歳年上)とかぶります。

そのためか、遠藤周作著の小説では、時々変人として登場してきます。

貴族だったとはいえ、札付きということもあり、マリー・アントワネットと直接会ったことはなさそうですが、暴行や虐待などで収監されていたバスティーユ監獄からの王政批判の訴えが、フランス王室を転覆させるフランス革命のきっかけを作ったとも言われています。

革命後も、しばしば監獄や精神病院に収監され、1795年にフランスシャラントン精神病院で死亡(55歳)します。

  ◇   ◇   ◇

5)ナポレオン・ボナパルト(1769年〜1821年)

ナポレオン
マリー・アントワネットと時代はかぶっているものの、王室と一軍人ということでなんの関係もなさそうですが、私が気になったのは、フランス革命で国王ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットを処刑し、フランス国民主体の共和国制に移行したはずなのに、その国民革命に協力した一軍人のナポレオンが、革命から数年後の1804年にはフランス皇帝を名乗っていたことがよく理解できませんでした。歴史は繰り返すと言いますが。

で、調べてみると、フランスの9世紀以降の中世は、日本の戦国時代と同様に各地域で群雄割拠していて、その中の一番の支配者(名門家)が勝手に国王を名乗っていたようです。

上記のフランス革命で一時期は王制から共和制に移行し、一度はフランスから国王(皇帝)は消えたものの、オーストリアやイタリアとの戦争で連戦連勝し、国の英雄としてフランス国民の信頼を勝ち得たナポレオン(1世)が国民議会の承認を得て1804年にボナパルト王朝を作ります。しかしあれだけ王制(王政・君主制)を嫌がっていたのにフランス人も懲りない人達です。

しかしフランス革命が起きたときにはまだ若干20歳で駆け出しの軍人だったナポレオンが、その15年後に皇帝まで上り詰めていくというのはなんだか凄い話しです。

尾張の小国の跡取りのうつけが、一度は担いだ将軍を追い出し、次は天皇の座を狙っていたという(諸説あり)信長伝説ともかぶります。

それまで負け知らずだったナポレオンですが、スペインやオーストリア、そしてロシアに敗北しセントヘレナへ流刑されそこで亡くなります。亡くなったのが1821年5月5日で、今からちょうど200年前です。

その後はまたルイ王朝(ルイ18世)が復活しますが、ナポレオン(3世)が奪還、1870年に崩壊するまでフランスでは王制が生き延びることになります。

そして1871年以降はフランスに皇帝や国王はいなくなり、元首は王や皇帝ではなく選挙で選ばれた大統領になります。フランス初代の大統領は、ルイ・ナポレオン・ボナパルト(ナポレオン3世)で、2代目はアドルフ・ティエールです。

  ◇   ◇   ◇

と、ここまで5人の簡単な略歴を書きましたが、伝記や小説にはそれぞれ何十名という登場人物が出てきて、なかなか興味深い話しでした。

そして、ふと、ヴェルサイユ宮殿の造営など王朝として絶頂期だったルイ14世時代から3代目のルイ16世で、それまでのたまりに溜まったツケが暴発し、国民の不満が爆発し革命が起き王朝が崩壊する動き、これは日本の近くにある某国にも今後当てはまるのかもなぁと思っています。

つまり戦後のドサクサで建国者となった主席(最高指導者)から、その最高指導者から世襲してきた今の3代目最高指導者ですが、国民の生活そっちのけで軍備を増強し、家族と一部の幹部だけが贅沢な暮らしができる状態が、歴史を振り返ってみるといつまでも続くわけはないような気がします。

フランス革命に遅れて230数年後、東アジアの片隅で起きるかもしれない国民革命が、数年後かに世界を揺らすことになるかも知れません。

【関連リンク】
1480 10月後半の読書と感想、書評(マリー・アントワネット)
1453 ビザなし渡航できる最強パスポートは日本が3年連続世界一
998 天皇陛下の外国訪問


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5月前半の読書と感想、書評 2021/5/15(土)

1536
「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks) 川島博之

食糧危機をあおってはいけない
2009年に発刊された元東京大学大学院農学生命科学研究科准教授の著者が書いた科学分野の単行本です。

様々なデータを駆使し、以前から言われてきた食糧危機の誤りを正していきます。

例えば、「世界一の人口の中国が裕福になり世界中から食糧を買い集めて食糧不足に陥る」や、「温暖化によって作物が作れなくなる」、「穀物がバイオ燃料に転嫁されていくと食用がなくなる」などなど。

読んでみると、世界中でおこなわれている生産調整、日本で言えば減反ですが、これが相当な面積だそうです。

アメリカでもトウモロコシなどそうした減反のために農家に対して多額の補助金を出しているようで、そういうことを考えると、もっと需要があれば(お金になるならば)まだまだ供給はできます。

さらに温暖化の影響で、作物が作れなくなる地域ができる一方で、例えば今まで作物が作れなかった例えばシベリアなどの地域で新たに農業ができる可能性などにも触れています。

北海道でも何十年前なら米を作るのは無理と言われていましたが、品種改良と気候変動で、今では広大な農場で美味しいお米が作れています。

1970年代に、「あと数年で石油がなくなる!」と騒いで、世界中で何度か石油ショックが起きましたが、それから50年経った今、「石油がなくなる!」という人はいません。逆にいまは環境問題から石油に代わるエネルギーを模索しています。それと似たようなことが起きているということです。

ただ、机上の計算と実際の現場とでは食い違ったりすることがありますので、そこのところの実証ができているものではないことを付け加えておきます。

例えば、減反で休耕して何年も経った農地で、急に作付けをおこなおうとしてもできず、従来の生産高に戻るまで10数年かかったりすることもあるようです。そうした現場の話しは、ジャーナリストではないので、ほとんどありません。

とは言え、知らなかったことが豊富に書かれているので、食糧問題に危機感を持っている人は、一度読むことをお薦めします。

★★☆

            

泥棒はクロゼットのなか (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 146-5)) ローレンス・ブロック

泥棒はクロゼットのなか
原題は「The Burglar in the Closet」で、1978年に発表された作品です(翻訳版文庫は1993年発刊)。「泥棒バーニイ・シリーズ」の第2作目となります。

過去にはシリーズ3作目の「泥棒は詩を口ずさむ」と、6作目の「泥棒は野球カードを集める」を読んでいます。

2013年2月の後半の読書(泥棒は詩を口ずさむ)

ブロックと言えばハードボイルド探偵小説「マット・スカダー・シリーズ」が特に有名ですが、スカダーの長編が17作品に対し、このバーニイの長編は11作品と、それに次いで多いシリーズ作品となっています。

私のマット・スカダー好きは下記に書いてます。

元アル中探偵マット・スカダーに惚れる 2017/5/20(土)

馴染みの歯科医に離婚した妻の住まいに侵入して結婚中に買ってやった宝石類を盗んで欲しいと頼まれた主人公は、軽い仕事と思って請け負います。

セキュリティの厳しいアパートに侵入し、宝石を物色していたところ、思わぬ速さで住人が帰って来てクローゼットの中に閉じ込められることになります。

シャワーにでも入ればその間に抜け出せると思っていたら、案の定というか、その女性は一緒にいた男性に刺されて殺されてしまいます。しかも、集めた宝石を入れたバッグも持ち去られてしまいます。

このままだと、離婚した旦那に調べが入り、アパートに侵入することを知っている自分が最大の容疑者となるのも時間の問題?ということで、警察から逃げながら犯人捜しを始めます。

なかなか手の込んだ複雑な人間模様で登場人物も多く疲れますが、決してスーパーマンではなく、人間味あふれる泥棒が主人公で気楽に楽しめます。

★★☆

            

愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない (集英社文庫) 伊集院静

愚者よお前がいなくなって淋しくてたまらない
2014年に単行本、2017年に文庫化された自伝的長編小説です。

と、言うことは、亡くなった前妻夏目雅子さんのことを「愚者」とは何事!とちょっと不審に思いながら読み始めました。

著者の自伝的小説と言えば、私も読みましたが「海峡」、「春雷(海峡 少年篇)」、「岬へ(海峡・青春篇)」の三部作が有名です。

タイトルにある愚者とは、もちろん若くして亡くなった前妻のことではなく、気の合った友人、スポーツ紙の競馬担当記者、弱小芸能プロダクションの社長、小説を書くように執拗に迫る出版社の編集者の三人のことを指しています。

妻の死で、酒とギャンブルに溺れていた主人公が、それら3人の友人と深く関わっていくことで、再生していく姿を描いています。

この著者の自伝的な話しを読んでいると、なんとこの人のごく近い周囲には死が満ちあふれているのだろうと思ってしまいます。もちろん本人の責任ではないのですけど、、、

最初は子供の頃、一緒にいた幼い弟が海で溺れて亡くなり、周囲の猛反対を押し切って結婚した夏目雅子、この小説に登場する上記の3人(生死がわからない人含む)や、応援していた年配の競輪選手、小説を書くきっかけとなった阿佐田哲也(色川武大)との出会いと死など、常に死がつきまとっています。

暗く重い内容が続きますが、今の著者を知っていれば、そうしたモヤモヤも我慢して読めます。

著者は昨年2020年にくも膜下出血で手術を受けましたが、予後は良さそうで、また「ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石」(2013年)のような、明るく面白い小説を期待したいところです。

2019年10月前半の読書(ノボさん 小説正岡子規と夏目漱石)

★★☆

            

屍人荘の殺人 屍人荘の殺人シリーズ (創元推理文庫) 今村昌弘

屍人荘の殺人
2017年に単行本、2019年に文庫化された長編ミステリー小説です。著者の本は今回初めて読みますが、名前の印象から50〜60代のベテラン作家さん?と思っていたら、まだ30代の新進気鋭?な作家さんでした。

この作品を原作として2019年に木村ひさし監督、神木隆之介、浜辺美波、中村倫也など出演で映画が、また同年に少年ジャンプ+で漫画が連載されています。

ミステリーの常道とも言える、隔離された山の中の旅館で合宿中だった学生たちの中で起きる連続殺人と、それだけに飽き足らず、テロ集団による野外イベントでの化学汚染で大量のゾンビが発生し、生き残った学生たちが追いつめられていくという荒唐無稽な内容です。

う〜ん、鮎川哲也賞受賞や、本格ミステリ大賞受賞など、最近はこうした突拍子もない破天荒なストーリーがウケているのか!?って気もします。

確かについつい先を読ませる内容ですが、別にドキドキもしないし、感情移入などほど遠いし、人里離れた旅館とは言え、取引業者や通行人なども多いはずなのが完全に孤立していたりします。

さらに、なぜここにゾンビ、、、って、最近読んだ山口雅也著「生ける屍の死」や、スティーヴン・キング著「呪われた町」の中にもゾンビがゾロゾロ登場しています。鬼滅の刃に出てくる鬼に噛まれて鬼になるのもゾンビと似たようなものですね。

個人的には小説の中に、タイムスリップ(この小説には出てきません)とゾンビは飽きたから「もういいや〜」って感じです。

最後の犯人捜しの謎解きがなかなか面白かったのが救いです。

★★☆

【関連リンク】
 4月後半の読書 ふりだしに戻る(上)(下)、極上の孤独、ゼロの迎撃、チェーン・ポイズン
 4月前半の読書 獄中記 煉獄篇、さよなら、ニルヴァーナ、邪馬台国殺人紀行、眠りの森
 3月後半の読書 証言拒否 リンカーン弁護士、コンビニ人間、官報複合体、レプリカたちの夜


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定番映像に危険な香り 2021/5/19(水)

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定番映像コロナ禍の中で、テレビのニュースや情報番組を見ていると必ず映し出されるのが、品川駅通路や渋谷のスクランブル交差点、新宿南口です。

10年ほど前までは、通勤風景の映像と言えば、東京駅から群れになったビジネスパーソンが吐き出される映像がよく使われていましたが、現在は地下道を使う人が多くなり、地上の通路は閑散としていて絵にならないので上記の場所に変更されています。

また観光地や繁華街の人出を見るときには、湘南江ノ島付近、京都嵐山渡月橋、浅草雷門と仲見世、大阪道頓堀戎橋、銀座和光前が定番です。

そうした定番の映像、人の流れがどうなっているかを定点観測で見るのに都合が良いのかも知れませんが、いつも同じ場所の映像ばかり繰り返して流されると、地球温暖化の話しの時には「南極の氷塊が割れて海の中に滑落しているシーン、干ばつなど食糧危機の話しになるとアフリカで飢えて痩せ細った子供のシーンが毎回繰り返して流されるのとなにか同じに見えてしまいます。

そうした同じ映像を繰り返す印象操作?は、トランプ元大統領が大きな口をあけて吠えまくっている画像、北朝鮮で行進する兵士とハイテンションで指導者を褒め称えるアナウンサーのシーン、プラカードを持ってデモばかりやっているアメリカ人映像、ロケットランチャーを持ってポーズを決めている中東の民兵?のシーンなどなど。

何度も繰り返してそれを映像で見せられると、見る人はそれがディフォルトで日常であり、常識と錯覚してしまいます。

別に東京のビジネスパーソンは、品川や渋谷に集中しているわけではなく、観光客も浅草や嵐山ばかりに行くわけでもなく、単にサマになる絵として、人が密になっていそうな場所を選び、しかも密に見えるような構図で撮影しているだけだと理解している人がどれだけいるのか疑問に思います。

放送局が意図してやっているのか、無意識にやっているのか不明ですが、そうした定番映像を繰り返し流すのは、考えすぎ!って叱られそうですが、視聴者になにか思うところのイメージを焼き付ける印象操作のように思ってしまいます。

あと、印象操作とは関係ないですが、定番と言えば、広さや量の基準で「東京ドーム何個分(何杯分)」とか、高さや長さでは「東京タワー何個分」という比較対象の使われ方があります。

これも東京都心部に住んでいるか通勤している人ならすぐにピンとくるかも知れませんが、地方に住んで、東京に一度も来たことがなければ、その大きさなどわからないので、近くで見たり入場したした人だけが、なんとなく想像できる、無関係な人にはまったく無意味な表現法です。

東京タワーを近くで見たり、東京ドームに入場したことがある人が一億二千万人の何パーセントいるでしょう?10%?20%?せいぜい多めに見ても30%ぐらいじゃないでしょうか?

もっと言えば、ビールの年間消費量などで、「東京ドーム何杯分」とか言われても、東京ドームに何度か行ったことがある私でも、さっぱりどういう意味がわかりません。

ドーム内の控え室や機械室など含むドーム敷地の全容積で計算しているのか、グラウンドの面積×天井の高さなのか、意味不明でホントバカちゃうかって思います。

いずれにしても、テレビで流される映像は、ライブでない限り、いつも同じものを使い回しされますので、それが日常と思い込んでしまうことに少し危険な香りを感じてしまいます。

テレビの見過ぎ?リモートワーク&その後のリタイア後、確かにそれもあるかも、、、

【関連リンク】
1487 毎週繰り返し録画してみているテレビ番組一覧
1436 コロナ時代のテレビ番組と再放送
1355 やっとのことでJ:COMを退会した その1
1329 テレビCMを見なくなって久しい


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日本の農業はどこへ向かうか 2021/5/22(土)

1538
過去にも日本の農業について書いてきましたが、時々データの更新を加えて現状について軽く触れておきます。

大きく変化していく農業従事者 2015/12/12(土)
農業の大規模化と零細な起業 2013/6/29(土)
日本は世界第5位の農業大国という事実 2010/10/11(月)

総人口はもちろん、生産年齢人口も減少している中で、当然ながら農業従事者数も統計のある1960年以降、右下がりで減少を続けています。

下記のデータやグラフの農業従事者数は、農業就業人口のうち普段仕事として自営農家に従事した世帯員数で、1985年以降は販売農家(経営耕地面積30a以上または農産物販売金額が年間50万円以上の農家)の人数です。

農業従事者数
出典:農林水産省 農林業センサス累年統計年齢別基幹的農業従事者数

1960年と2020年を比べると、この60年間で1,175万人から136万人へとわずか1割近くまで減少してきました。

ただ農業は、1960年代までの従来農法から、肥料、土壌や品種の改良、大規模農業、会社組織化など様々な工夫や規制緩和がおこなわれ、めざましい生産効率の向上があります。

そのため、農業従事者が減る同じ割合で農作物収穫高が減っているかというとそうではなく、収穫高が大きく変動するのは気候や災害と言ったことが多いようです。

食の安全性については、書籍やメディアなど様々な場所で時々問題提起されていますが、都市部に住む大半の人にはあまり関心がなく、せいぜい「有機栽培ならきっと安全安心でしょ?」ぐらいが庶民の感覚でしょう。

その辺りの諸問題について考察するのはまた改めてとして、人口が減り、高齢化が進めば、食糧や食品の国内需要はますます減少していき、内需向けだけでは成長産業にはなりません。

ならば海外へ輸出!と行きたいところですが、日本よりも人件費が安く、土地も広くて大規模化が容易で、災害も少ないところと勝負するには、よほどの品質やブランド(ボジョレー・ヌーヴォーのような)がないと難しいでしょう。農産品のソニーやトヨタが作れればいいのですけどね。

テレビを見ていると、若い人を中心に、新しく農業をしようとする人達がここ数年間よく出てきますが、どうも焼け石に水のようです。

今の農業従事者の平均年齢は2020年が67.8歳で、5年前の2015年から0.7歳さらに高齢化していています。

2013年から2019年までの新規就農者推移は下記のようになっています。

新規就農数
出典:農林水産省 経営・構造統計課 新規就農者調査

2015年には新規就農者がピークに達してしまい、その後はまた減少、横ばいが続いています。

さらに農業従事者の平均年齢が68歳近いということは、つまり、(1)仕事として魅力がない(2)お金を稼げない(3)参入するには障壁が高いなどがありそうです。

それについて書きだしたら、新書1冊分ぐらい書けそうですが、そういうモチベーションもないので誰か専門家にお任せします。

10年ぐらい前には、リタイアした団塊世代が出身地の地方へ戻り、家業だった農業をするのでは?という意見を聞いたことがあります。

しかし今さら、地方移住なんて便利な都会生活に慣れた家族が理解してくれないし、例え戻っても、荒れ果てた休耕地を一からまともな農地にするのはとても高齢者にできることではありません。せいぜい自分が食べる分だけを細々と作る家庭菜園レベルでしょう。

外国人技能実習生のうち、農業で働く外国人数はおよそ3万名、日本人の新規就農者が5〜6万名ですから、農業の現場に新しく入ってくる若い人の割合で言うと、3人にひとりは外国人ということになります。

これからの日本の農業、どういう方向へ向かうのでしょうね。また後日に考えて書いてみたいと思います。

【関連リンク】
981 大きく変化していく農業従事者
923 ハイブリッド型植物工場は異常気象の野菜急騰を防げるか
747 農家の知恵はいまの熱中症を予防する


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金利金利金利 2021/5/26(水)

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自分の人生の中で、過去にお金にまつわる経済的なことで一番失敗したなぁってことは、30年近く前、現在住んでいる一戸建て住宅を買うときに、住宅ローンの契約を固定金利にしたことです。

最初に中古マンションを買ったのはバブル絶頂期の少し前で、買ってから4年後に一戸建てを買うときに売却しましたが、買った時の値段より2割ほど高く売れてホクホクでした。

さらに住宅ローン減税が3年間あり、計60万円ほどの所得税が戻ってきたこともラッキーです。

そしてバブル崩壊直後の1992年に、売れ残って値下がりしてきた新築建売の一戸建て住宅を買ったのですが、その時の住宅ローンは、まだバブルの余韻が根深く残っていました。

そのバブル直前の80年後半からバブル崩壊までの数年は、信じられないほどの狂乱インフレで、金利が爆騰したことで、変動金利で住宅を買った先輩がめちゃ苦しんでいる姿が目に焼き付いていました。

それが、その時に今から思えばアホなことですが25年もの長期の全期間固定金利を選んでしまった理由です。

金利推移
出典:住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」

一応、その時には取引先で仲の良かった銀行員と「変動で行くか固定にするか」で意見を聞きました。

銀行員は「さすがに以前のような高金利にはなりにくいと思うので、私なら変動で行きます」ということでしたが、疑い深い私はその逆を張ってみたわけです。おバカです。銀行員は基本的に銀行が絶対に損をしない「変動金利」を勧めるって聞いていたことも影響しています。

ざっくりですが、住宅ローン5,000万円を当時の固定金利6.6%で25年返済をすると、その返済総額は1億円を超えます。

つまり元金5000万円に利子5000万円ということ。それでも、もし利率が80年代前半や90年代前半の時のように8%を超えても、固定金利なら慌てず済むかな〜と暢気なことを考えてました。

ボーナスは使わず、12ヶ月均等返却で、月々の返済額は、1億円÷25年÷12ヶ月=33万3333円!

もう今から考えると無茶苦茶ですが、バブルの余韻に浸っていた当時はこれでも可愛いものだったでしょう。

と言うのも、当時はバブルの影響で仕事も順調、毎年のように給料やボーナスがアップしていき、バブルが崩壊してからも、あまり影響しない割とお堅い仕事だっただけに、強気で契約しました。

もし、変動金利で契約していれば、契約当時の変動金利の利率は5.4%でしたが、その3年後の1995年には当時の半分以下2.3%まで大きく下がります。5.4%だと返済月額はおよそ306千円、2.3%だと219千円と、月々8万7千円も下がることになります。

もうね、自分の「いずれまたインフレになって金利が上昇する」という予想は完璧に外れて、その後長い期間、高利率な固定金利に苦しめられることになります。

さすがに、5年後の1997年には銀行に無理を言って(他行へ借り換えするぞ!と脅して)金利を少し下げてもらいましたが、その際に決めた固定金利も、返済完了まで変動金利を下回ることは一度もありませんでした(最後の数年間は自動的に変動金利に変更)。

結果的に「最初から変動金利にしておけば支払総額は数千万円安くなったはず」と、捕らぬタヌキで悔しがったのは言うまでもありません。

転職した先でリストラに遭って、無収入になったときにはさすがに焦りました。すぐに銀行へ行って、返済期間を延ばす代わりに毎月の返済額を下げてもらうよう交渉しました。

いま思えば、すぐにその判断をして正解でした。こういう記事がありました。

住宅ローンの金利より大事なこと|最悪の状態を想定しておく3ステップ(エルハウス)
住宅ローンを考える上で最も想定しておきたい事は金利ではなく、最悪の状態を想定しておくことです。最悪の想定とは、収入が途絶えたときにどのように対処するかです。

長い住宅ローン返済期間中にはなにが起きるかわかりません。震災や水害、怪我や病気で仕事ができなくなったり、会社の倒産やリストラなど様々なことが起きます。

そういう時には、私もそうでしたが思考能力が極端に落ちます。気ばかり焦ってしまい、やることなすこと裏目に出る悪いスパイラルに入ってしまいます。

上記の記事に書かれていることは、冷静なときに読むと「当たり前じゃん!」って思うでしょうけど、身に災いが起きたときには、すっ飛んでしまうものです。注意しましょう。

  ◇   ◇   ◇

今の時代、若い人は「華やかなバブル時代を経験できず悔しい」と言いますが、私は「今の若い人はめちゃ低い金利で住宅ローンが組めて羨ましい!」です。

現在の某大手都銀Mの変動金利は、1%を切って0.525%です。上記の住宅ローン5千万円をいま借りると30年で利子はたったの400万円。こっちは利子だけで5千万円で契約した(実際は途中で金利を下げた)。ホントめちゃ悔しい限り。

もっとも住宅ローンが終わるまで、10年後20年後に変動金利がどう変わっているかはわかりませんので、今契約するなら固定金利一択かなぁと思いますが、そういう時には銀行はメニューにはあっても、実質的に固定金利を認めてくれなかったりします。「晴れた日に傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」のが銀行ですからね。

しかしデフレの影響もあり、今の若い人の給料がなかなか上がらず、コロナ禍みたいに、先々なにが起きるかわからない不安要素がいっぱいある中では、いくら金利が安くても、重い住宅ローン抱える気にはならないって人も多くいるのでしょう。

給料が良くて仕事にもあまり心配のない大企業勤務でも、家を買ってすぐに遠くへ転勤とか普通にありそうで買えないということもあるでしょう。

さらに言えば、親の介護の問題、リモートワークが本当に進むのかどうか、転職を考えるとどこへでも気軽に移れる機動性のある家(賃貸)が理想とか、様々な理由もあるでしょう。

私の場合、幸いに家を買ってからの転勤はありませんでした。結果的に、経済的なメリットはなかったものの(失ったお金は大きい)、それでもリタイアした今では買って良かったと思っています。

【関連リンク】
1425 リタイア後に取引銀行はどうすれば良いか
1417 31年間の住宅ローンから解放される
1303 持ち家か賃貸かは、引退後に大きな差が付く
1227 今の低い住宅ローン金利が羨ましい世代


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5月後半の読書と感想、書評 2021/5/29(土)

1540
ザ・チーム 日本の一番大きな問題を解く 齋藤ウィリアム浩幸

ザ・チーム
1971年にロサンジェルスで生まれた日系2世で、アントレプレナーの著者が、閉塞感で停滞する日本の企業人に様々な提言をするという体のビジネス書で、2012年に発刊されています。

日本の企業や役所には、グループはあっても、目的を達成するためのチームがないというのが著者がもっとも言いたいことです。

「そんなことない!チームFUKUSIMAや、ラグビーのワンチームなどいくらでもあるぞ!」って反論も聞こえてきそうですが、確かにいくつかの企業に勤めた経験からすると、チームを大事に育てようとする企業もあれば、個人主義に徹する企業、柔軟性がある緩やかなグループで関わり合っていく企業など様々です。

ただ、日本人の特性として、「お上の言うとおりにしておけば間違いない」という洗脳に近い教育や社会制度、慣習が何百年と長く続いてきた歴史があるので、なかなかその都度、目標を一にする合理的で強力なチームが作られることがなく、またそのチームを率いるリーダーが育っていないという事情もあります。

官僚組織なんて、縦割り行政のもっとも最たるもので、それぞれの省庁や担当分野で利権を守ることが最大の功績で、それを崩して担当分野を横串に貫いたチームを作るなんてもっともやりたくないでしょう。

なーんて言い訳ばかり考えてしまうのが、劣化したオヤジの悪い癖でもあるわけです。

ただこの本は、経営や組織に関係する話しですから、実力のある管理職レベル以上の人が読んで、納得し、動かないと、なんの権限もない若い人が読んで「そうだ!そうだ!」と盛り上がるだけではきっとなにも変わらないでしょう。

あと、この著者は、講演で語っていたことや、本書の中で書いている自分の経歴について、一部の経歴がよく見えるように盛り盛りで詐称していたことが2017年に発覚し、多くの信用を失っています。

ま、アントレプレナーなんて、元々口八丁手八丁が普通なので、別に経歴詐称なんか特に不思議でもありませんが、それにすっかり騙されて内閣府や経済産業省で参与を務め、果ては文化勲章まで授与されているというところに、日本人の人の良さというか、ハッキリと物事を主張するエリート(っぽい)外国人に弱い役人や政治家というのが露呈しました。

★★☆

            

緋色の記憶 (文春文庫) トマス・H・クック

緋色の記憶
死の記憶」「夏草の記憶」「緋色の記憶」「夜の記憶」「沼地の記憶」と続くミステリー「記憶シリーズ」の3作目で、作品オリジナルは1996年に発刊、日本語翻訳版は1998年に出版されています。

この作品はアメリカでも著名なエドガー賞を受賞した作品で、著者を一気に有名にした作品です。

シリーズと言っても、日本語の翻訳版だけの話しで、原題にはそれにあたる言葉やつながりはありません。

原題は「The Chatham School Affair」で、直訳すれば「チャタム校事件」ということになります。

著者の作品は好きで、過去には「死の記憶」「夏草の記憶」「沼地の記憶」など9作品を読んでいますが、1990年代から2000年代初頭の比較的昔に読んだので、ブログで感想を書いたのは2011年に読んだ下記だけです。

2011年9月前半の読書(沼地の記憶)

ストーリーは、ボストンから130kmほどに位置する実在するチャタムという港町にある私立学校に通う主人公はそこの学校長の息子です。

その学校にアフリカへ家族と移住していた若い女性が新しく美術教員としてやってきて、学校長の父親と共に、新しい生活の支援をすることで仲良くなっていきます。

小説のスタイルが、過去に起きた出来事の主題にはなかなか触れず、どうもこの女性教師に関連してなにか大きな事件が起きたようだけど、小出しで少しづつしか話題に出てこず、「いったいなにが起きた?」という疑問符だらけになっていきます。

謎は読んだ人だけのお楽しみですが、長く陰湿な話しが延々と続きますので、今のような軽くてスピード感あふれるライトなものが好かれる時代には決して合った作品ではありません。

以前読んだ記憶シリーズについてはあまり覚えてませんが、こうしたローカルな地域の話しで過去の出来事を振り返るという形が多いです。

私のような引退して時間がいっぱいできてからジックリ読むことをお薦めします。

★★☆

            

ビット・トレーダー (幻冬舎文庫) 樹林伸

ビット・トレーダー
2007年に単行本、2010年に文庫版が発刊された長編小説です。著者はいくつものペンネームで漫画の原作や小説、脚本、作詞などを書いている多才な方です。名前の読み方は「きばやし しん」とのことです。

タイトル通り、株式の売買が主要なストーリーとなりますが、組織や会社が舞台ではなく、主人公個人が交通事故で亡くした息子の賠償金を元に副業で始めた株式の売買が成功を収め、家庭とは別に愛人と高級マンションを持ち、そこでサラリーマンの本業とは別にトレーディングで巨額マネーを動かしています。

しかし、あるときに、まもなく倒産するので空売りをして数億円の利益が得られるとの確かな情報を得て、他人から預かっているお金を含めすべてをつぎ込んだところ、倒産するはずの会社に大きなファンドが買収を持ちかけたため、逆に高騰してしまいすべてを失う危機に陥ります。

そうしたトレーディングの切った張ったの世界を素人にもわかりやすく展開していきますが、本来ならば、息子を亡くして同情してもよさそうなこの主人公が好きになれず(モデルの愛人と高級外車やマンションなどを持っているのでひがみもある)、逆に「破滅しちゃえ!」とも思ってしまいます。

ま、小説ですから、結果的には落ち着くところに落ち着くわけですが、ちょっと薄っぺらで、内容に乏しい気がしました。

★☆☆

            

王妃マリーアントワネット(上)(下) (新潮文庫) 遠藤周作

王妃マリーアントワネット1 王妃マリーアントワネット2
マリー・アントワネットを元にした小説という体裁ですが、先般読んだ有名なシュテファン・ツヴァイク著の伝記「マリー・アントアネット」(1932年)等を参考にした作品となっています。

1979年〜1980年に単行本、1985年に文庫版が発刊されました。

内容は、オーストリア王家の娘として育ったマリーが、フランス国王の息子(王子)に14歳で嫁ぎ、周囲の言いなりになって自由を謳歌して散在を続け、やがては「国民から愛されている」と思っていたのが違っていたと言うことに気づき、生き抜く気力も亡くしていくという流れは伝記と変わりありません。

登場人物の多くは、伝記と基本的には変わりませんが、伝記ではなく小説のため、フランスの市井の人々など架空の人物も多く出てきます。

また、伝記ではほとんど出てこないものの、実在の人物で、マリーと同世代に生きたサド侯爵やモーツアルトなども出てきます。そうすることで、イメージがより深く広がっていきます。

その辺りの登場人物は、先日「マリー・アントワネットの時代 2021/5/12(水)」に書いています。

エンタメの小説だけあって、事実を淡々と並べていく伝記と比べると、感情の動きがより細やかでウエットで読みやすく、マリー含め登場人物の性格やら印象もまた違ったように感じます。

もちろんカトリック信者であり、その知識も詳しい著者ですから、それとうまく合っているようです。

★★★

【関連リンク】
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