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重松清 SHIGEMATSU KIYOSHI 既読書籍

018 ニワトリは一度だけ飛べる 017 たんぽぽ団地のひみつ 
016 ファミレス(上)(下) 015 十字架
014 きよしこ 013 きみの友だち
012 その日のまえに 011 哀愁的東京
010 カシオペアの丘で(上)(下) 009 カカシの夏休み
008 熱球 007 送り火
006 ビタミンF 005 口笛吹いて
004 定年ゴジラ 003 流星ワゴン
002 トワイライト 001 疾走 上・下
読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。出版社に勤務した後フリーライターとして独立し、ドラマ・映画のノベライズや雑誌記者、ゴーストライターなど、多くを手がけた。代表作は『エイジ』(1999年)、『ビタミンF』(2000年、2001年直木賞受賞)、『十字架』(2009年)、『ゼツメツ少年』(2013年)など。(Wikipediaより引用 2022年)


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018 ニワトリは一度だけ飛べる(朝日文庫)

2002年から2003年に週刊朝日に連載されていた小説で、2019年にその文庫版が発刊されました。

主人公は妻と子がいて買ったマンションのローンを抱えている中年男性ですが、勤務する会社に新しく入ってきたやり手の営業本部長から無情にもリストラ部屋行きを命じられます。

しかし家族を守るためには勤務する大企業を辞めるわけにはいかず、また妻にもそのことが言えず、悶々とします。

同時に成績優秀で昇進もトップを走っていた同期の男性と、大阪支店から風変わりな後輩の男性と計3名がリストラ部屋に配属されます。

リストラ部屋では、ひたすら読まれることはない「社内業務改善」の案を考えたり、過去の社員名簿のデータ化などをやらされ続け、過去には何人もそれで辞めています。

そこへ主人公の男性に謎のメールが届き、そのタイトルが「ニワトリは一度だけ飛べる」というもので、読むと意味不明ながらも、営業本部長やその取り巻き達のリストラ対象者への思惑などを教えてくれるようになります。

またそのメールの送り主は、主人公に昔助けられたことがあり、今度は自分が助ける番だと言うことを書いてきますが、その助けたり人に親切をしたという記憶がまったくなく、不審半分ながら、同じリストラ部屋の仲間と一緒に会社と戦うようになります。

リストラという深刻で暗くなるテーマですが、コミカルな要素を加え、また「オズの魔法使い」の登場人物を、この小説の登場人物に当てはめて教訓的な話しになっているのが面白いです。

リタイヤして早3年、すでにビジネスの現場の記憶がすっかりなくなってしまっていますが、こうしたビジネスの現場を描いた小説を読むと、懐かしくもあり、二度とその世界はご免だとか、いろいろと感情が湧いてきます。

★★☆

6月前半の読書と感想、書評 2023/6/17(土)

017 たんぽぽ団地のひみつ (新潮文庫)
2015年に単行本「たんぽぽ団地」、2018年に改題されて文庫化された、著者のお得意の高度成長期に建てられた団地を舞台とする長編小説です。

著者の作品は、社会問題を鋭く捉えた作品から、ほのぼのとする小説まで様々で、2000年代頃からボチボチ買って読んできました。

調べると過去16作品(冊数では19冊)を読みましたが、年間5冊以上も上梓される売れっ子多作作家さんゆえ、全然追いついていません。一番最近読んだのが2018年に読んだ「ファミレス(上)(下)」(文庫版2016年刊)で、こうして振り返ると著者の作品を読むのは1年に1話ペースです。今年はもう少し増やそうと思います。

ストーリーは、小説やドラマによくある時空もので、1960年代に次々建てられたニュータウン団地、そこで生まれ育ち生活してきた子供達が、やがて大きくなった時に、忘れ去られ、取り壊されていくそれらの団地の想い出を回想するというもの。

1960年代を象徴するツールとして出てくる「ガリ版」は、私の年代では小学生時代に実際よく使っていたもので、つい最近、松本市にある国宝「旧開智学校」の中にそれが展示されていたのを見て、懐かしさひとしおでした。

思い出すのは小学校の上級生になった頃には、それまでのガリ版印刷から、画期的なコピー機が導入され、ちょうどその両方を経験したことを思い出します。最初に使ったコピー機は感光紙を使った湿式タイプで、1枚単価がやたらと高価なもの(と先生に言われた)でした。

小学生を主人公として、やんわりとした中に、懐かしさと人の温かさなどが伝わってくる良い作品でした。

★★☆

1月前半の読書と感想、書評 2020/1/15(水)

016 ファミレス (角川文庫(上)(下))
2013年刊、2016年に文庫版が発刊された長編小説で、元は2012年から日経新聞夕刊に連載されていた作品です。2017年には遊川和彦監督、阿部寛、天海祐希主演で映画「恋妻家宮本」というタイトルで公開されていました。

映画も見てないし、日経夕刊も読んでいないので、どういう内容かはまったく知らずに読み始めました。

主人公は40代後半の中学校の国語教師で、子供達が就職や進学で家から出て行き、突然夫婦二人だけの生活になり、長く連れ添った夫婦関係がギグシャクしてくる頃です。

二人目は、その主人公の同世代の友人で、大手出版社で雑誌の編集長をやっている男性の妻は介護を理由にして京都の実家へ帰ってしまって別居状態。

三人目のもう一人は、嫁と姑の関係がこじれて離婚し×1となった男性で、再婚するにあたり、実家のお弁当屋をそのまま継ぐと、再び妻に嫁姑の関係で気苦労をかけると判断し、キッチンカーを購入し、お弁当やおかずの移動販売を手掛けている男性が話しの中心となります。

そこへ主人公と編集長が趣味で通っている「男の料理スクール」の講師で×2の女性が関わってくることになります。

その講師には妊娠している娘がいて、相手は元・売れないロックバンドメンバーで、妊娠を知ってバンドを辞めたものの、講師親子からは絶縁されています。

その他、主人公が勤める中学校の生徒で母親が不倫していたときに事故に遭い入院してしまったり、主人公の妻が書いた離婚届が本の間からみつかったりと、とにかく夫婦の関係がこれでもかというぐらいに揺さぶられていきます。

こういう小説を読むと、「結婚ってなんなの?」とか「夫婦ってなに?」って考えさせられます。

タイトルの「ファミレス」も、「ファミリーレストラン」の略ではなく、家族ではなく、独身者が多く集まる「ファミリーレス」の縮小型ではないのか?と、父親は海外へ単身赴任し、母親は不倫という夫婦の子供に言わせています。

でも現実に、専業主婦がメインだった時代を過ごしてきた妻が、夫が定年を迎えた機会に「熟年離婚」を言い出して騒がれた時代から、今では子育てを卒業して「卒婚」と称し、共働き夫婦で、まだお互いが元気なうちに新しい生活を手に入れようと別れる時代へと変わってきているのかも知れません。

私は別に結婚にこだわる古い考え方でもなく、また大きなお世話ですが、そうした流行で今後ますます結婚したいと思う若い人が減っていくことがないように願うばかりです。

★☆☆

2月後半の読書と感想、書評 2018/2/28(水)

015 十字架 (講談社文庫)
2009年単行本、2012年に文庫化された長編小説で、2010年に吉川英治文学賞を受賞した作品です。

筆者の作品は好きでよく読みますが、それにしても多作家で、次々と作品が出てくるものだからとてもすべては読んでいません。

以前からテレビのコメンテーターとして見かけることもあり、そうした多忙な中、よくこれほどに創作意欲がわくものだと感心しきりです。

読んだ小説は、数えてみると14タイトルありましたが、Amazonに登録されている著者の文庫だけで100タイトル以上ありますから、実質的に著者の作品の1割ちょっとしか読んでいないということでしょう。

過去に読んだ筆者の作品の中では「疾走」「その日のまえに」「ビタミンF」(直木賞受賞)「哀愁的東京」などが良かったかな。

基本的には「家族」や「定年後のオヤジ」「子供と父親」「幼なじみと友情」と言った割と軽い、懐かしさや郷愁を誘うテーマが多い感じです。

さて、この作品は、同級生がイジメを苦にして自殺しますが、そのイジメを見て見ぬふりしていた幼なじみの同級生や淡い恋をしていた相手の子が背負ってしまったトラウマというか十字架がテーマとなっています。

学校などでのイジメ問題が社会問題化してもう相当長いですが、小説にもこうしたイジメ問題はよく出てきますね。学園ものにはもう不可欠になっていると言えます。

自殺した子供の父親は、イジメをした同級生だけでなく、それを見過ごしてきた担任教師や同じクラスの子供に対しても反感を持ち続け、マスコミを利用して非難を続け責任を問い続けます。

私なら「それなら親の責任はどうなんだ?」「死にたいほど困ったことが話せない家庭に責任はないのか?」と真っ先に反発するところですが、なぜかそうしたところは無視されていますね。

ちょっと感動的に盛り上げていこうというところにわざとらしさが感じられ、著者の作品としてはちょっとどうなのかなぁって思わざるを得ません。多作しているとどうしてもあまり深掘りはせずに、ついそれでも通用してしまうテクニックに走ってしまうのでしょうかねぇ、、、

★☆☆

5月後半の読書と感想、書評 2017/5/31(水)

014 きよしこ (新潮文庫)
2002年に単行本、2005年に文庫本が発刊された著者の幼少時代をモデルとした短編作品集で、「きよしこ」「乗り換え案内」「どんぐりのココロ」「北風ぴゅう太」「ゲルマ」「交差点」「東京」の7編が収録されています。

1963年生まれの著者は私と6年違い(私が年上)で、世代的にも違ってきていますが、著者の作品の中では「定年ゴジラ」や「流星ワゴン」「カシオペアの丘で」など若い頃を思い出す中高年を扱った小説が割と好きでよく読んでいます。

この作品は少し前に読んだ「きみの友だち」と同様、テーンエージャーを主人公とする連作短編集という点で似ていますが、主人公は著者本人という設定で、割と自伝的な内容が多いようです。

幼児の頃にあるできごとがきっかけとなり、小中高校時代はカ行とサ行の発音がうまくいかず、どもってしまうことから、それが嫌で同級生とも気軽に話しをすることができず、なかなか友人にも恵まれません。

また親の仕事の関係で、たびたび転校があり、そのたびに自己紹介の時名前の「きよし」がスムーズに言えず、自己嫌悪に陥ってしまう少年時代を送ります。

この小説のきっかけになったのは、やはり吃音の障害を持つ子供の母親から手紙が来て、「吃音なんか気にしないで…」というその「なんか」に違和感を覚え、手紙の返事は書かず、そうした障害に真剣に悩む子供達に向けて書いたという体裁になっています。

タイトルの「きよしこ」とは、主人公が子供の頃に、クリスマスに流れる「きよし この夜」を「きよしこ の 夜」と理解してしまい、その自分の投影でもある少年「きよしこ」が夜になると自分のところへ遊びにやってくると夢想していたことからの発想です。

8月後半の読書と感想、書評 2014/9/3(水)

013 きみの友だち (新潮文庫)
元々小説新潮に掲載された短編連作の小説で、2005年に単行本、2008年に文庫化されています。2008年には石橋杏奈主演で映画も作られていますが、あまり評判にはならなかったようです。

短編ごとに主人公というか登場人物は変わりますが、その中心にいるのは小学生の時に、自分の不注意でクルマにはねられ松葉杖の生活を余儀なくされた少女です。

あえて言うまでもなく、もうすぐ思春期を迎えようとする、心身ともに不安定な今どきの10代の少女や少年のキラキラした姿を、中高年の著者が描き、そして「きみたち」として描かれたものを、中高年の私が読むという、こっぱずかしい側面もあります。

収録されている短編は「あいあい傘」「ねじれの位置」「ふらふら」「ぐりこ」「にゃんこの目」「別れの曲」「千羽鶴」「かげふみ」「花いちもんめ」「きみの友だち」の各編から成り立っています。

途中少し中だるみするところもありましたが、上記の足の悪い主人公の元へ集まってきた、成長した彼女ら彼らが登場する最後の短編で、あらためて友達の意味を考えさせられるいい仕上がりとなっています。

今まで著者の作品の中では「その日のまえに」や「カシオペアの丘で」などの、壮年や中高年男性が主人公で、昔の仲間や友達、恋人、故郷などを懐かしく振り返るというテーストの作品を中心に12作品読んできました。

こうした思春期の少年少女を主人公とした作品も数多くあるのは知っていましたが、「いまさら少年少女ばかりが主人公の小説なんて」と思う気持ちもあり、なかなか手を出せませんでしたが、こうして読んでみると、今の若い人の悩みや考え方が多少は理解できるようになったかなと、勝手に自分に言い訳めいたような気分になります。

6月前半の読書と感想、書評 2014/6/18(水)

012 その日のまえに (文春文庫)
7つの短編からなるこの本は2005年に発刊、2008年に文庫化されています。また2008年には大林宣彦監督で映画化もされていますが、緩いつながりしかないそれぞれの短編をまとめて映画化ってのもまたすごいですね。

やはり映画化された佐藤泰志氏の短編集「海炭市叙景」も同じような感じですが、映画ではいったいどうなっているのか一度見てみたいものです。

収録されているのは、「ひこうき雲」「朝日のあたる家」「潮騒」「ヒア・カムズ・ザ・サン」「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」。最後の3編はひとつの物語と言ってもいいかもしれません。

重松氏の小説の特徴としては、話しの中に主人公の子供の頃の情景がふんだんに取り入れられ、その後大人になった自分と同級生との再会や回想があります。この短編の中にもそういったものが多く、40歳以上の人にとっては懐かしく甘酸っぱい思い出に浸ることができます。

そして泣かせる小説には必ずといっていいほど、若くして病気で亡くなってしまう人が登場します。突然亡くなる交通事故などではなく、その多くはガンや白血病といったジワジワと時間が経つにつれて弱り、そして亡くなる病気です。

小説の中には頻繁に登場しますが、実際の世の中にはそういう病気で亡くなる若い人は、そう多くないと思いますが、作家の中ではひとつの定番となってしまっているのでしょう。

重松清氏の小説はやっぱり長編をジックリと読みたいものです。

5月後半の読書 2012/6/6(水)

011 哀愁的東京 (角川文庫)
まったくバカですね。これでいったい何冊目になることか。軽く10冊は超えてます。すでに持っていて読んだ本をまた買ってしまいました。

買うときにはタイトルや、カバー裏面のあらすじを読んでもわからず、中身を少し読んでみてから「あれ?」と気がつくものがほとんどです。

中には最後まで読んでまったく気がつかず、読んだ後にデータを登録する際「ありゃ10年前に読んでら」とか気がついたものもありました。恥ずかしながらボケちまってます。

時には単行本で買って読んで、その後文庫本でも買ってしまうケースや、A社の文庫として刊行されたあと、しばらくしてから別のB社から同じ小説が文庫で発刊されることがあり、そのB社から発刊されるときは「新刊」となるので、それを「あ、誰それさんの新刊が出た!」と思わず中身を見ずに買ってしまったということも何回かありました。

もちろん同じA社からカバーがガラリと変わり「新装刊」として出る場合もややこしいです。そりゃ一種の詐欺だろとか思ってしまいます。

この本は一度2007年初頭に文庫を買って読んでいます(文庫の発刊は2006年12月)。小説の中に自宅の近所にある向ヶ丘遊園地がモデルとして登場し、そこの閉園に絡み、そこで働いていた年老いたピエロと、遊びに来ていたヤク中の父親に殺されてしまう少女の話しが記憶に残っていて、そこの場面でハッと気がつきました。遅すぎです。

内容は短編連作で、主人公は昔に絵本を出したこともある離婚歴のある中年フリーライター男性。父親に殺されて亡くなった少女を想い、遊園地で楽しそうにピエロをジッと眺めているシーンを象徴的にハッピーエンドで締めくくった絵本で賞をとったものの、それを見せに行った遊園地のピエロにいきなり殴りつけられ、そのことによって次作が描けなくなってしまいます。

小説には、その絵本の大ファンでそれが編集者になるきっかけだったという若い女性編集者や、IT長者で時の人だったものの事業が破綻してしまった社長、小学生の頃にデビューし大ヒットしたものの、大人になるにつれ落ち目になってしまった少女歌手、売れっ子だった作曲家など、次々に魅力たっぷりな人物が登場します。活字離れが激しい中で、そういう仕事に溢れる右肩上がりのライターがいれば素晴らしいなぁとも思えるファンタジードラマのようでもあります。

2度も買ったので言うわけではありませんが、タイトルはもちろん、中身も面白く仕上がっていてお勧めな文庫です。このブログにプレゼントコーナーがあれば余分な1冊を熨斗つけて出品するのですけどね。

9月後半の読書 2011/10/1(土)

010 カシオペアの丘で(上) (下) (講談社文庫)
2000年に「ビタミンF」で直木賞を受賞した作家さんですが、同賞を逃した「定年ゴジラ」やその後に書かれた「流星ワゴン」「疾走」などが私は気に入ってます。最近はテレビワイドショーのコメンテーターにも出たりされていますが、とても多作の作家さんです。

年代的には私より半周りお若い方ですが、比較的世代も近く、子供の頃から現在に至るまで見てきた様々な風景が割と近いと感じられます。例えば高度成長期に子供時代を送り、その象徴として万博の太陽の塔だったり、多摩ニュータウンだったりします。

この小説では北海道芦別市がモデルとなっている、昔は炭坑で賑わっていたけど今は寂れてしまった街の出身の仲良しグループだった子供達と、ひょんなことで知り合った人達が、大人になって様々な問題を背負って再びその街に集まってくるというものです。

ただねぇ、、、子供の頃に友達との喧嘩の直後下半身不随の事故に遭った人、40歳手前で悪性腫瘍に罹り余命3カ月と宣告された人、過去に運転中老婆を轢いて死なせた人、妻の不倫相手に小さな我が子を殺された人、炭坑を守るため行方不明者の捜索を断念し注水を決めた人、、、あまりにも不幸なことや重苦しい出来事を背負った人ばかり登場するので、気分はなかなか晴れません。そう言えば「疾走」なんかも重苦しかったような気がします。

7月後半の読書 2010/8/3(火)

009 カカシの夏休み (文春文庫)
2009/03/23読了

「BOOK」データベースより
ダムの底に沈んだ故郷を出て二十年、旧友の死が三十代も半ばを過ぎた同級生たちを再会させた。帰りたい、あの場所に―。家庭に仕事に難題を抱え、人生の重みに喘ぐ者たちを、励ましに満ちた視線で描く表題作始め三編を収録。現代の家族、教育をテーマに次々と話題作を発信し続ける著者の記念碑的作品集。

008 熱球 (新潮文庫)
2007/12/20読了

「BOOK」データベースより
甲子園に憧れていた。予選を勝ち進んだ。でも、決勝戦前夜の悲劇が僕と仲間たちの夢を断ち切った。二十年後、三十八歳になった僕は一人娘を連れて故郷に帰ってきた。仲間と再会した。忘れようとしていた悲劇と向き合った。懐かしいグラウンドでは、後輩たちが、あの頃の僕らと同じように白球を追っていた。僕も、もう一度、マウンドに立てるだろうか―。おとなの再出発を描く長編。

007 送り火 (文春文庫)
2007/06/06読了

「BOOK」データベースより
「昔の親は、家族の幸せを思うとき、何故か自分自身は勘定に入ってなかったんだよねえ…」。女手ひとつで娘を育てた母は言う。そんな母の苦労を知りつつ反発する娘が、かつて家族で行った遊園地で若かりし日の両親に出会う。大切なひとを思い、懸命に生きる人びとのありふれた風景。「親子」「夫婦」のせつない日常を描いた傑作短篇集。

006 ビタミンF (新潮文庫)
2006/07/26読了

「BOOK」データベースより
このビタミンは心に効きます。疲れた時にどうぞ。「家族小説」の最高峰。直木賞受賞作!
38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか??」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。

005 口笛吹いて (文春文庫)
2006/06/18読了

「BOOK」データベースより
偶然再会した少年の頃のヒーローは、その後、負けつづけの人生を歩んでいた。もう一度、口笛の吹き方を教えてくれたあの頃のように胸を張って笑って欲しい―。家庭に職場に重荷を抱え、もう若くない日々を必死に生きる人々を描く五篇を収録。さり気ない日常の中に人生の苦さをにじませる著者会心の作品集。

004 定年ゴジラ (講談社文庫)
2006/04/09読了

「BOOK」データベースより
開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組の日々の哀歓を温かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。

003 流星ワゴン (講談社文庫)
2006/01/30読了

「BOOK」データベースより
死んじゃってもいいかなあ、もう…。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして―自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか―?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

002 トワイライト (文春文庫)
この年末年始の休みはどこも遠くには行かず寝正月の毎日でした。その時に読んだ本で印象深く残っているのが重松清著の「トワイライト」という小説です。

あらすじは、完成したばかりの多摩ニュータウンに住んでいたちょうど団塊ジュニアに近い世代が小学生を卒業するときに埋めたタイムカプセルを開けるために集まるところから始まります。

その30代後半になった男女の中にはリストラされたが家族には言い出せない男や家庭内暴力で悩む女あり、仕事が面白くてとうとう今まで結婚せずにお台場を見下ろせる高級マンションに住む女、何度も転職を繰り返してそのたびに会社は小さくなっていく今では詐欺まがいのリフォーム会社で悶々とする男だったり、現代の世相をよく反映しています。

私はその世代より約10年年上なのですが、大阪万博の公式ガイドをボロボロになるまで読んだりするところは、登場人物の子供時代の事が自分の子供の頃の思い出と重なる部分もかなりあって、懐かしさや共感を覚えずにいられません。

また今では多摩ニュータウンと言えばデパートあり、遊園地あり、巨大な一大タウンとなっていますが、1971年の第1号の入居時のニュースでは「陸の孤島」と名付けられたほど交通の便が悪く悲惨な状態だったことや、第1号というのはつまり次々と周りが開発されていくためにダンプカーなど工事車両がその後十数年に渡って走り回る騒がしくほこりっぽいところだったということが印象深いです。

その第1号の入居はNETで調べたところ今では小田急・京王線が停まる「永山」ですが小説では「長山」となっていたり微妙に変えてありますが、基本的には当時住んでいなければわからないぐらい忠実に再現されているような気がします。

堺屋太一著の「平成三十年」には高度成長時代にできたニュータウンは老人だらけになると書かれていましたが、すでに多摩ニュータウンのうち70年代にできたところに住んでいる人達はもう老人ばかりで、小学校も廃校となるなど廃れてきているようです。

しかしエレベータのない4階建てとかが多く、老人達が暮らすにいい環境とは言えなくなってきています。大阪の千里ニュータウンなども同じですね。

本当ならば建て替えればいいのだけども、年金生活で他に収入のない老人達に建て替え費用がまかなえるはずもなく、そのジュニア達はそういう狭い、遠い、古い団地はとうに捨てているので肩代わりもできない状態なのでしょう。

また子供と同居して団地から出た老人もいまさらもう住まないのに建て替えの費用を出す人もいないでしょうから空き家ばかり増えて立替もできないといういわゆるスラム化してしまっています。

小説の中でも高度成長期には少なかった駐車場からあふれたマイカーが団地の敷地内を占拠していたのが今ではナンバーのない不法投棄された車が多い情景描写が今の団地の姿をよく表しています。

今度暇を見つけて多摩ニュータウンの初期に入居が始ったところをブラリと見に行きたくなりました。住んでいる人には迷惑でしょうけど。

189 多摩ニュータウン 2006年1月9日 (月)

2006/01/04読了

「BOOK」データベースより
小学校の卒業記念に埋めたタイムカプセルを開封するために、26年ぶりに母校で再会した同級生たち。夢と希望に満ちていたあのころ、未来が未来として輝いていたあの時代―しかし、大人になった彼らにとって、夢はしょせん夢に終わり、厳しい現実が立ちはだかる。人生の黄昏に生きる彼らの幸せへの問いかけとは。

001 疾走(上)(下) (角川文庫)
2005/08/11読了

「BOOK」データベースより
広大な干拓地と水平線が広がる町に暮す中学生のシュウジは、寡黙な父と気弱な母、地元有数の進学校に通う兄の四人家族だった。教会に顔を出しながら陸上に励むシュウジ。が、町に一大リゾートの開発計画が持ち上がり、優秀だったはずの兄が犯したある犯罪をきっかけに、シュウジ一家はたちまち苦難の道へと追い込まれる…。十五歳の少年が背負った苛烈な運命を描いて、各紙誌で絶賛された、奇跡の衝撃作、堂々の文庫化。

誰か一緒に生きてください―。犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。人とつながりたい…。ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。



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