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乃南アサ NONAMI ASA 既読書籍

007 凍える牙
006 地のはてから(上)(下)  005 最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。
004 しゃぼん玉 003 風紋(上)(下)
002 火のみち(上)(下)  001 暗鬼
読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。

東京都生まれ。カリタス女子中学校・高等学校を経て、1980年に早稲田大学社会科学部中退。広告代理店勤務を経て、1988年に『幸福な朝食』で日本推理サスペンス大賞の優秀作を受賞しデビュー。1996年に『凍える牙』で第115回直木三十五賞を受賞。2011年に『地のはてから』で第6回中央公論文芸賞を受賞。2016年に『水曜日の凱歌』で第66回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。他の作品に『花盗人』『団欒』などがある。(Wikipediaより引用 2022年)


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007 凍える牙(新潮文庫)

1996年の直木賞に輝いた長編警察小説で、その後シリーズ化される「女刑事・音道貴子シリーズ」の第1作目です。1996年に単行本、2000年に文庫化されています。

読んでいると、元白バイ警官でもあった離婚経験がある女性刑事が活躍する内容で、映像化に向いた作品だなと思っていたら、すでに2001年と2010年にテレビドラマ化されていました。

2001年のNHKドラマでは天海祐希で、相棒になる中年刑事が大地康雄、2010年のテレ朝版では木村佳乃と橋爪功です。なるほどなって感じの配役です。

ストーリーは、ある日、東京立川のファミレスの中で客の男性から突然火が出て燃え上がります。

その事件を調べるために刑事達が集められますが、主人公のクールな女性刑事と、男尊女卑で警察は男社会という伝統を引きずる中年の男性刑事とがペアを組み、事件の解決に向けて奔走します。

その二人の掛け合いと、徐々に互いのバックボーンなどを知るようになり打ち解けていくところが面白いところですが、それはこういう小説では予定調和です。

その後のシリーズは読んでいませんが、「もう嫌」と言っていたこの凸凹コンビが再びタッグを組んで活躍する話しもあるそうです。

著者の作品は過去にいくつか読んでいますが、警察小説は初めてで、どちらかというと、か弱い女性主人公が苦労しながら成長していくというストーリーが多いと思っていましたが、こういうクールで1200ccのバイクにまたがり颯爽と走るカッコイイ女性主人公の作品で大きな賞を取っていたというのは意外でした。ま、苦労しながら成長という点では共通しているのかも知れませんが。

★★☆

6月前半の読書と感想、書評 2022/6/15(水)

006 地のはてから(上)(下)(講談社文庫)
2010年に単行本、2013年に文庫化された長編小説です。前年2009年刊の長編小説「ニサッタ、ニサッタ」の主人公の祖母がこの小説では主人公となっています。

時代は大正時代初期、主人公の女性がまだ2歳の時に始まり、食い詰めた福島の農家の四男坊だった父親が、国の北海道移住政策にのっかって地の果て知床半島へ夜逃げ同然で移住してきます。

その主人公が、厳しい自然環境の中で、たくましく育っていく姿が印象的で、見ていませんが有名なNHKドラマ「おしん」の北海道版って感じもします。

借金を作って移住を独断で決めた父親は、まともな生活ができずにやけくそになって酒に溺れ海に転落して早くに亡くなり、本当は来たくなかったのに父親に連れられて知床へ来た母親と小さな子供二人が残され厳しい環境の中で極貧の生活が続いていきます。

成長した主人公はその後小学校をでてすぐに小樽へ子守の奉公に出されますが、その前に山の中で知り合ったアイヌのたくましい子供に恋心を抱きます。

大正時代から昭和初期の東北や北海道は、きらびやかな東京や大阪とは違い、貧しい農民ばかりが肩を寄せ合って生きているという印象で、そうした重苦しい話しが延々と続きます。

農民たちに希望はあるのか?ってことですが、ハッピーエンドで終わるドラマチックなことはなく、家に縛られ、職業選択や住まいの移動が自由にできない中で、貧困の連鎖が延々と続いていくことになり、そうした、あまり表には出てこない日本の暗い歴史を知っておくことも必要でしょう。

またアイヌ差別の問題や、貧困の中においても「お国のため」と貴重な働き手の男手を戦場へ送らなければならない農家の悲惨さなど語り尽くせない、日本の黒歴史が学べます。

★★★

8月前半の読書と感想、書評 2021年8月14日(土)

005 最後の恋―つまり、自分史上最高の恋。 (新潮文庫)
8人の作家が書く8編のアンソロジー風短編集で、2008年に刊行されました。

収録されている短編は、「春太の毎日」三浦しをん、「ヒトリシズカ」谷村志穂、「海辺食堂の姉妹」阿川佐和子、「スケジュール」沢村凜、「LAST LOVE」柴田よしき、「わたしは鏡」松尾由美、「キープ」乃南アサ、「おかえりなさい」角田光代と、お馴染みの売れっ子作家さん大集合です。

ただし、タイトルやその副題に騙されて、大人のしっとりした深い恋愛や、激しく燃え上がる感情や、ベタベタした甘ったるい関係を期待して読むときっと肩すかしに合います。

いずれの作者も、そこは海千山千のテクニシャン?だけあって、最後の恋をテーマにした短編を書くと、一筋縄には終わりません。

ミステリーなものもあれば、ちょっとホラー?的なものもあり、淡々と始まり淡々と終わるものはありませんから、それなりに楽しめました。

その中で個人的に好きだったのは柴田よしき著の「LAST LOVE」かな。阿川佐和子著の「海辺食堂の姉妹」も良かった。

でもこういう短編の競作スタイルにすると、それで飯食っているプロの作家さんは、他の作家さん、特に「誰々さんには絶対負けたくない!(面白いものを書く!)」という思いが前面に押し出てしまい、なんだかえらく肩に力が入りすぎているかな?と感じるような作品もあったりして、人気作家を集めた競作というのは難しいものです。

★★☆

3月後半の読書と感想、書評 2020/4/1(水)

004 しゃぼん玉 (新潮文庫)
2004年に単行本、2008年に文庫化されています。また2017年には「相棒」シリーズで有名になった東伸児監督、出演者は林遣都、この作品が最後となった市原悦子などで、この著作をしゃぼん玉が製作されています。

著者の小説では過去に「暗鬼」、「火のみち」、「風紋」を読んでいます。そう言えば1996年の直木賞に輝いた代表作とも言える「凍える牙」はまだ読んでいません。そのうちにね。

主人公は、コンビニ強盗や、女性や高齢者からひったくりを繰り返し、ヒッチハイクをしながら放浪しているどうしようもない若い男性。

ヒッチハイクでトラックに乗せてもらったところ、途中喧嘩をしてしまい、ドライバーをナイフで脅したものの途中で寝入ってしまったため、山の中の真っ暗な道に放り出されてしまいます。

仕方なく誰も通らない山道をとぼとぼ歩いていると、バイクで転けて動けなくなった老婆と出くわし、老婆を家まで送り届けます。

老婆の家からお金を盗んですぐに逃げだそうと思っていたものの、暖かな食事やどこの誰というような詮索もなく、居心地がよくてしばらく老婆の家に滞在することになります。

そうした底辺で犯罪を繰り返しながら生きるしか術がなかった若者の再生物語ってところでしょうか。

現実の社会でも、危険なあおり運転を繰り返し、その結果、相手が事故で亡くなっても「注意されてカッとなった」「我慢が限界を超えた」とか平気で言い、自分を正当化する身勝手な人も多い世の中ですから、犯罪を犯罪とは思わず、それに深く染まった人が、厳しく断罪されない限り、そう軽々しく自ら更生できるとも思えませんが、小説だけにそういう理想を求めています。

★★☆

1月前半の読書と感想、書評 2019/1/16(水)

003 風紋(上)(下) (双葉文庫)
この「風紋」は1994年に初出の長編小説です。乃南アサ氏の小説では過去に「暗鬼」(1993年)、「火のみち」(2004年)を読んでいます。

直木賞受賞作品の「凍える牙」(1996年)など小説だけでも50作以上出ているので、これからもっと読んでみたい作家さんです。

女性、しかも今や絶滅種に近くなってきた専業主婦が主役の作品は最近は少なくなってきましたが、まだ1994年当時にはそう珍しくはなかったのでしょう。

その主役かと思っていた専業主婦が序盤であっけなく殺されてしまい、主役の座は高校生の娘へと変わっていきます。

殺された家族と、殺した側の家族それぞれが苦悩する人間ドラマで、被害者と加害者の家族が、事件が起きてから裁判で決着がつくまでの長いあいだ置かれる立場や心境を描いています。そして家族以外の第三者的な立場として事件に最初から関わる新聞記者が客観的に見つめていきます。

ま、いってみればそれだけなのですが、先日読んだ湊かなえ氏の「夜行観覧車」と同じ匂いのする作品と言ってもいいでしょう。もちろんこちらの作品がずっと先に書かれていますし、展開も全然違ってはいます。

途中から主人公となる女子高校生の姉は、母親が生きている時には、親に反抗し怒鳴り散らす手の付けられない異常性格だったのが、母親が亡くなってからはうってかわってしおらしく家事なども手伝うようになったのはどうも変な感じで納得ができません。

本当ならば、執拗なマスコミの取材攻勢を受け、母親が殺された遠因に自分が二浪生活をして多大な迷惑をかけていたということもあり、本来ならば責任を感じて家を飛び出すか、逆にもっと荒れた生活をおくるのが普通のような気がします。

さすがにそこまで拡げてしまうと焦点がぼけると考えたのか、ちょっと物足らなさを感じてしまいました。

10月前半の読書 2012/10/17(水)

002 火のみち(上)(下) (講談社文庫)
火の道は貧しさから殺人を犯した主人公が備前焼を知ることで過去に悩みながらも立ち直りさらに上を目指す苦悩を描くよくあるパターンだが、あまり知らない陶器の制作や世界についてよく書かれているので面白い。

2009年2月の読書 2009年3月8日 (日)


(講談社文庫)
父が戦死し、戦後満州から引き揚げてきたどん底の生活の中で母まで亡くした南部次郎は、わずかな葬式費用の形に幼い妹を連れ去ろうとする男を撲殺してしまう。きょうだいは離散し服役中も渦巻く憤怒を抑える術すら知らない次郎は備前焼と出会い、ひたすら土を練ることで、ようやく心が鎮まっていく――。

兄妹を名乗れない陶芸家と女優。幻の汝窯(じょよう)との出会いは運命なのか。妹は女優として成長し、刑期を終えた次郎も独立して窯を開く。暗い過去ゆえに兄妹を名乗れないながらも家族の絆が深まる中、次郎は中国宋代の青磁・汝窯に魅入られる。「雨上がりの空の色」と称される幻の器を自らの手で蘇らせたいという激情はどこへ向かうのか。戦後昭和という時代を描ききった意欲的長編。

「BOOK」データベースより
たった一人の妹を守るために、人を殺した男。心を焦がす、怒りと憎しみを、「土の冷たさ」だけが鎮めた。時間が止まった刑務所の十年。自由。希望。命の実感。そのすべてを奪われ、赦されることもない男がたどる、壮絶な人生。

妹は女優として成長し、刑期を終えた次郎も独立して窯を開く。暗い過去ゆえに兄妹を名乗れないながらも家族の絆が深まる中、次郎は中国宋代の青磁・汝窯に魅入られる。「雨上がりの空の色」と称される幻の器を自らの手で蘇らせたいという激情はどこへ向かうのか。戦後昭和という時代を描ききった意欲的長編。

001 暗鬼 (文春文庫)
1997/04/08読了

「BOOK」データベースより
両親、弟妹、祖父母に曾祖母。今時珍しい大家族に嫁いだ法子を待っていたのは、何不自由ない暮らしと温かい家族の歓待だった。しかしある日、近所で起きた心中事件に彼らが関係しているという疑惑を抱いた法子は、一見理想的な家族を前に疑心の闇にはまっていく。やがて暴かれる、呪われた家族の真実とは。




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