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渡辺淳一 WATANABE JUNICHI 既読書籍
006 | 野わけ | 005 | 光と影 |
004 | 孤舟 | 003 | エ・アロール |
002 | 病める岸 | 001 | 夜に忍びこむもの |
1933年(昭和8年)〜2014年(平成26年)北海道出身。1958年札幌医科大学医学部卒業。同講師、医学博士。医業と並行して、1965年「死化粧」で新潮同人雑誌賞を受賞。1970年、37歳の時に総理大臣寺内正毅をモデルとしたとされる『光と影』で第63回直木賞を受賞。医療現場を舞台とした社会派小説や伝記小説、恋愛小説を数多く手がけて人気を博した。その後、『化身』『うたかた』『失楽園』『愛の流刑地』など濃密な性描写の恋愛小説で、特に1980年代から90年代にかけて一大ブームを巻き起こした。エッセイも多く、『鈍感力』も流行語になった。(Wikipediaより引用 2022年) |
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006 | 野わけ(文春文庫) |
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舞台は京都の医療機関で、同施設で血液検査員として勤める主人公の独身女性と、妻帯者の上司との恋愛という定番ストーリーです。 デートの場所は南禅寺近くのラブホテルや、ドライブは大原を過ぎて途中越えで琵琶湖大橋といった1970年代のこれまた定番デートスポットです。 今でこそ、小説やドラマの中で男女の恋愛や不倫関係はほとんど読者や視聴者に与えるインパクトはないでしょうけど、この頃(1970年代)だと、まだ一般的には気軽に扱えるほどのものではなかったでしょう。 さらに、妻帯者の不倫相手の義弟とお見合いをしたりしている主人公よりさらにぶっ飛んでいる妹から、男をじらす恋愛のテクニックを伝授されるとか、舞台となっている閉鎖的な古都京都と対照的で、20年は先へ行っていそうな先進的な内容に驚きました。さすが女性誌non-noだけのことがあります。 その平凡パンチの女性版として1971年に登場した雑誌non-noですが、長引く紙媒体不況の中で今でもあるのかなぁ?と思って調べてみると、月1回発行(2010年頃までは月2回発行)で現在も健在です。 ★★☆ 10月後半の読書と感想、書評 2024/11/2(土) |
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005 | 光と影(文春文庫) |
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1970年(昭和45年)、著者が37歳の時に直木賞を受賞した短篇集作品で、これ以降、本業の医者から作家活動へと重心が移っていくことになる記念碑的作品です。 解説にも書かれていましたが、医者でありながら小説を書いている作家さんは国内はもとより世界中に多いですが、その中でも整形外科医と作家の二足のわらじをはいている方はほとんどいません。 なぜ整形外科医と作家活動が両立しにくいのか?については本当のことはわかりませんが、派手な出血を日常的に見たり、緊急外科手術の必要性から、精神的になかなか落ち着いた作家活動がしにくいのかな?と思ったりしますが、真実は不明です。 本著には「光と影」「宣告」「猿の抵抗」「薔薇連想」の4篇が収録されていますが、いずれも医療に関係する医者でしか書けないと思われる秀逸の作品集です。 その中でも直木賞を受賞した「光と影」は、明治初期、西南戦争で右腕に同じような銃創を受けた同期の二人の将校の運命が手術の先か後かで大きく変わってしまうという物語です。 主人公は将校のひとりで先に手術をおこない、その時代では普通だった腕の切断手術がおこなわれ、続いて二人目の手術の時には軍医の気まぐれで「実験で腕を残す」手術がおこなわれます。 結果的には、腕を切った将校は廃兵となり陸軍を辞め市井で働きますが、自分よりもすべての点で劣っていたもうひとりが腕が残されたおかげで陸軍に留まることができ、その後順調に出世していくのを見るという悲哀を味合うことになります。 人の運命が、カルテの上か下の差で決まってしまうという「光と影」にせつなくて儚い話しです。 他の作品も視点や時代はそれぞれ違いますが、著名な絵画家に最後の作品を描けるように余命を告げるべきか悩む医者、学生向けの症例としてまるで実験動物の猿のように扱われる患者、男に知った上で梅毒を感染させられた俳優の卵が考える復讐と悪意など、それぞれ印象深い作品でした。 ★★★ 8月後半の読書と感想、書評 2023/9/2(土) |
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004 | 孤舟 (集英社文庫) | 2010年単行本刊、2013年に文庫版刊の定年後の男の悲哀と希望を描いた長編小説です。 医者として長く勤務されていたので、直木賞受賞作となった「光と影」など医療や病院に関係する小説や、「失楽園」など官能的な大人の恋愛小説で人気だった筆者に、このような定年後の男の惨めな姿をコミカルに描く小説があったとは知りませんでした。 著者は4年前に亡くなっていますが、この小説の団塊世代の主人公よりもずっと前の世代に生きた人で、この小説を書くにあたっては、様々な後輩達から定年後の話しを聞いて、それがこの小説のネタになっているものと思われます。 主人公は大手広告代理店で、執行役員まで上り詰めたものの、60歳になり大阪の子会社の社長へ転出を言い渡されますが、今さら転勤する気はなく、それを断り、会社を辞めてしまった団塊世代の男性です。 「男は仕事、女は家庭」という昭和時代の典型がモデルとなっていて、いかにもありそうな、そして定年後に起きそうなことが次々と予定調和的に起きます。 映画「家族はつらいよ」でも団塊世代の男性が主人公で、まったく似たような展開ですので、こうした団塊世代の男性は一種定型パターン化され、思い込みというかステレオタイプばかりでちょっとその点が気になります。 それにしても、この世代の平均図と言うとオーバーかもしれませんが、この主人公は二子多摩川(東京都世田谷区)にあるローンを終えた100平米もある豪華マンションに住み、60歳から企業年金がたっぷりともらえ、その他にも貯蓄した退職金もあって、仕事を辞めてから半分に減らされたものの、毎月5万円のお小遣いでは不満と言う主人公の設定は、これから60歳を迎えようとする人達にとってはなんとも羨ましい限りです。 さらにこの主人公、妻がプチ家出したことに乗じて、入会金5万円のデートクラブに入会し、1回デートするたびに2万円と、デートの費用を全部負担という、まったく贅沢三昧の生活です。 映画「家族はつらいよ」でも、団塊世代の主人公は横浜の住宅街にある大きな1戸建てに商社勤めの長男夫婦、孫達と住み、長男以外の子供達もそれぞれ結婚し、時々実家に帰ってくるという仲の良い家族がモデルとなっています。 それらが団塊世代の定年後の象徴だと言われると、そんなものかなとも、ちょっと違うんじゃないかとも思えてきますが、両者とも面白おかしく多少の波風は立ちますが、なんとも優雅な定年後です。 定年後、仕事を辞めた途端に毎日朝起きてから「なにやろうか」と悩むことが書かれてますが、よほど仕事一筋で趣味はなく、友達もいないという人でなければ、そうはならないかな。 それよりもお金がないので、なにもできず、どこにもいけず、家でジッと引きこもりって人がこれからは増えていきそう。 ただ、今まで、なんでも他人が代わりにやってくれていたことを、自分で(自分も)やらなければ進まないということはあり、そうしたことの中でも家事(料理や掃除、ペットの世話、近所付き合いなど)の習得だけでもしばらくは忙しく過ごせそうです。 ★★☆ 11月前半の読書と感想、書評 2018/11/14(水) |
003 | エ・アロール それがどうしたの (角川文庫) | 2006/05/14読了 「BOOK」データベースより 東京・銀座の瀟洒な施設「ヴィラ・エ・アロール」。「エ・アロール」とは、フランス語で「それがどうしたの」という意味。そこの経営者である来栖の「仕事や世間から解放された人々に、楽しく気ままに暮らしてもらおう」という方針から、施設には自由な雰囲気が溢れ、三角関係などの恋愛問題が絶えず起きるが…。「老い」の既成概念を打ち壊し、新たな生き方を示唆する衝撃作。 |
002 | 病める岸 (講談社文庫 ) | 1998/04/02読了 美しいチフス菌の毒に魅せられ生体実験を行う医師、異型輸血による死がもたらした父子の真相、オリンピック候補の女子スケート選手が、実は男ではないかと疑念を持たれる事件等、いずれも何等かの病気か、病的状態で悩む人たちを主人公にし、私たちのおかれている今日的状況を描破した力作6編を収録。 |
001 | 夜に忍びこむもの (文春文庫) | 1997/10/28読了 「BOOK」データベースより 42歳の実業家・滝沢秀樹は、不倫関係にある向井東子から、突然妊娠を告げられる。うろたえる秀樹をしりめに、平然と出産の準備をすすめる東子。抜きさしならない事態にあせる秀樹は、東子の後を追ううちに、思いもよらなかった事実を知る―。すれ違う男と女の思惑が、現代の病巣をあぶりだす、傑作ロマン。 |
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