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読書感想INDEX

内田康夫 UCHIDA YASUO 既読書籍

011 逃げろ光彦 内田康夫と5人の女たち
010 津軽殺人事件 009 恐山殺人事件
008 秋田殺人事件 007 遠野殺人事件
006 十三の冥府(上)(下)  005 鄙の記憶
004 熊野古道殺人事件 003 靖国への帰還
002 はちまん(上)(下) 001 氷雪の殺人

読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。

浅見光彦シリーズドラマにはまる 2015/7/8(水)


1934年〜2018年東京都出身。東洋大学文学部国文学科中退。日本テレビジョン、一光社でCMアニメの制作スタッフとして働く。のちコピーライター、CM製作会社の社長を経験。1980年に第一作『死者の木霊』を、翌年1981年に第二作『本因坊殺人事件』を栄光出版社よりそれぞれ自費出版した。この初期2作のうち『死者の木霊』が朝日新聞の読書欄にて紹介されて話題となり、第三作となる『後鳥羽伝説殺人事件』が1982年廣済堂出版より発刊されて商業ベースのデビュー作となる。同作はその後シリーズ化され114作まで続く『浅見光彦』シリーズの第一作でもある。(Wikipediaより引用 2022年)


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011 逃げろ光彦 内田康夫と5人の女たち (講談社文庫)
2005年に単行本、2008年文庫化された短編集で、シリーズ主人公「速見光彦」が登場するのはその5編中1編のみです。これらの短編小説は書き下ろし作品の「逃げろ光彦」以外は「問題小説」というちょっとアレ系の雑誌に掲載されていた作品ですので、著者の作品としては珍しい濡れ場シーンが入っているのがご愛敬です。

収録されているのは「逃げろ光彦」「飼う女」「交歓殺人」「埋もれ火」「濡れていた紐」の5編ですが、それぞれに笑う女、泣く女、悲しむ女、怒る女、殺す女の5人の女がテーマになっています。

著者自身あとがきで自身が書いていますが、著者の作品で短編というのは珍しく、やはりあまり短編を書くのが好きではないということです。

しかしいつも読み慣れた長編とは違い、短編もなかなかと思える出来で、これはこれで十分に楽しめます。できれば全部が浅見光彦が登場する短編というのがあれば、それも悪くはないかなと思いますけどね。

★☆☆

1月後半の読書と感想、書評 2016/2/3(水)

010 津軽殺人事件 (徳間文庫)
この小説は浅見光彦シリーズでは26作品目、1988年に刊行された小説で、現在すでにシリーズ120作品を超える中では、古い作品となります。

読んでいると太宰の生家で観光地となっている明治時代の建築物「斜陽館」は、この本が執筆された当時、民間業者が旅館として使っていて、せっかく趣きがある住居用洋館が観光客用の喫茶店とかに改装され、小説の中で憂いていましたが、その後1996年に町が買い取り、現在は五所川原市太宰治記念館「斜陽館」として運営されるようになり、また建物っが2004年には国の重要文化財としても認定されて、元の姿に戻されています。

そのように小説が書かれた時と現在では30年近い開きがあるので、町の風景もだいぶんと変わってきていると思われます。

この小説を原作としたテレビドラマは以前見たことがあり、概ねのストーリーは知った上で読みました。

テレビドラマでは、ロケ地は別としてストーリーは割と忠実に原作を再現して作られていますので、ドラマを見てから小説を読むと、その場面場面にその時の映像が思い浮かびます。

あらすじは、ある男性が東京のホテルの部屋で服毒して死亡しているのが発見されます。その男性は弘前で古書店を経営していて、太宰が描いた絵があると聞いて東京まで商談にやってきたとのこと。ヒロインはその亡くなった男の娘で、司法試験を目指して東京に住む女性です。

男性のポケットには太宰の詩が書かれた紙で、紛失してた手帳から破り取った紙のようで、それがダイイングメッセージではないかと光彦が推測します。

光彦は東京の刑事と、亡くなった男性の娘とつきあっているという大学時代の同級生に頼まれ、真相を突き止めるため青森へ向かいます。すると今度は青森でも次々と殺人が起きることになります。

内容は、津軽殺人事件というよりは、太宰殺人事件というべきもので、太宰と関係の深い場所や話しが所々に出てきて、興味のある人には応えられないかもしれません。

また小説では2時間ドラマでは伝えきれない詳細な描写や歴史的な背景なども書かれていて、地元の人なら当然のようなことでも、その他の人が読むと変わった風景だとか奇習を知ることができて、それも楽しいですね。

★★☆

8月前半の読書と感想、書評 2015/8/19(水)

009 恐山殺人事件 「浅見光彦」シリーズ (角川文庫)
津軽殺人事件」にこの「恐山殺人事件」と殺人案内ツアーとなってしまいましたが、理由はご想像の通り、この夏休みに東北、特に今まで行ったことがなかった青森を中心にグルリと回ってきたので、先に知識を入れておこうと読んだものでした。

他に青森が舞台になっている同、速見光彦シリーズでは「十三の冥府」がありますが、こちらは過去に読んでいます。

これらの三つの小説に登場した場所からは、十和田湖、奥入瀬、新郷村ピラミッド、八戸蕪島、恐山、津軽藩ねぶた村、五所川原立佞武多の館、十三湖などへ寄ってきました。小説を読むまでは、恐山以外はほとんどなにも知らない場所でした。

恐山は子供の頃に見た映画で、気味悪いイタコがいて、怖い場所ってイメージがあるぐらいです。

さてこの小説は、タイトル通り、その恐山が舞台ですが、まずは東京で連続殺人が起きるところから始まります。

そして殺されたひとりの祖母が先祖代々引き継いできた恐山のイタコで、殺される前からその孫には「北の方角から地中深くをよくないものが殺しにやって来る」と警告を与えていました。

たまたま殺されたひとりから、光彦に手紙が送られていたことから、趣味の探偵ゴッコに乗り出します。また光彦と大学の同級生の中にイタコの娘がいたことも関係します。

ちょっと科学では証明ができない霊的な出来事も発生したりと、タイトル通りに少しオカルティックなところもありますが、事件は主として東京で展開し、最後のクライマックスで十和田湖が少し出てくるぐらいで観光案内にはあまりならないかな。

★☆☆

8月前半の読書と感想、書評 2015/8/19(水)

008 秋田殺人事件 (角川文庫)
テレビドラマでもお馴染みのルポライター「浅見光彦シリーズ」の作品で、初出は2002年、文庫は2004年発刊です。

あとがきに書かれていますが、著者は東京(北区西ヶ原)で生まれ、その後戦争中に疎開や父親の仕事(医者)の関係で、静岡(沼津)や長野へ転居し、その後、秋田の無医村へ移ったそうです。そのため著者にとって秋田は第4の故郷だということです。

その影響もあって土地勘があると言うことで「「横山大観」殺人事件」「本因坊殺人事件 」など秋田を舞台にした作品が他にもあるようです。

この小説では、現実に起きた事件で、秋田県が県内の木材産業活性化のため第3セクター「秋住」を設立して事業をおこなっていたところ、そこを利用した資金の不正流用や汚職、欠陥住宅等の問題が次々と起き、結局は倒産してしまうという不祥事をモデルとしています。ま、よくある猿知恵役人主導事業の失敗と、それを食い物にした悪徳事業家と、お金のニオイに群がる政治家、役人という、いつものよくある構図でしょうか。

その秋田県を揺るがした大事件に絡め、その関係者が次々と亡くなり、捜査はなぜかおざなりにされ、自殺として片付けられていたことを、ひょんなことから新たに副知事となった官僚の臨時秘書となった浅見光彦が、それらが殺人だったことを暴いていきます。

もっと秋田の風光明媚な観光地などが登場するのかと思っていましたが、そういうものはほとんどなく、登場するのは県庁と、県警、所轄署とその関係者の自宅ばかりで、当初思っていたような観光ガイドブックにはなりません。

唯一観光地として見るべきものがあるとすれば、日本で数少ない産油地がある秋田市内の八橋(やばせ)油田の情景が小説にも登場します。

地中から石油を汲み出す恐竜のような形をしたユニット型ポンプが住宅地の中にいくつもあり、今でもせっせと稼働しているというのに驚きました。今では国内でこの地中から汲み出す姿を見られるのは、この秋田と新潟だけと言います。

この場所、著者が子供の頃に父親の仕事で秋田に住んだのは、父親が当時景気の良かった油田開発会社に請われてそこの専属医に就職したためだと後で知りました。きっと著者は子供の頃にこのポンプを初めて目の当たりにし、驚き、そして感動したことでしょう。

(参考)八橋油田

8月前半の読書と感想、書評 2014/8/13(水)

007 遠野殺人事件 (光文社文庫)
著者の作品の中では比較的珍しく、シリーズものではない独立した推理小説です。発刊は古く最初はカッパ・ノベルスで1983年(31年前!)で、文庫版の発刊は1987年です。

ところで、読書が秋田の次は遠野(岩手)って、なにか考えあってのこと?

そう、夏休みに東北へ旅行しようと思い、それに関係する小説をいくつか買ってきて読んでいたのです。でも結局は今回は秋田や岩手ではなく福島と山形を中心に回ることになり、その思惑は外れてしまいました。

事件は東京で働くOL(1980年代の小説ですから)が、夏休みの旅行先の遠野にある観光の名所「五百羅漢」で何者かによって殺されます。

その捜査に当たる遠野署のベテラン刑事が本書の主人公で、亡くなった女性にその旅行に誘われていたものの、婚約者の実家へ挨拶へ行くことになり、断った同僚女性がヒロインです。

こちらは上記の「秋田殺人事件」とは違い、遠野の観光地、五百羅漢や曲り家、カッパ淵などが少しですが登場してきます。

昨年、柳田国男著「遠野物語」(1910年)を苦労して読み、遠野の伝承や伝統については少しは知識がありましたが、現代の観光地化された姿は、この小説を読んで初めて知ました。

この夏休みでは結局行くことはかないませんでしたが、機会があれば美しい遠野をじっくり回ってみたいなと思える小説です。

8月前半の読書と感想、書評 2014/8/13(水)

006 十三の冥府(上)(下) (光文社文庫)
いったい何作品あるのかわからないほど数多くある浅見光彦シリーズのひとつで、この作品もすでに2008年にテレビドラマ化がされています。

この浅見光彦シリーズの楽しみは、紀行もの小説の体をとっていますが、ちょっと切り口を変えて日本各地の歴史や伝承に絡めたミステリーが楽しめるということです。

その多くは有名な誰でも知っている観光地ばかりではなく、日本地図でしか知らないようなところもあり、読んでいるといつかは行ってみたいなと思わせるものです。

今回は青森が舞台です。青森といえば、私はまだ未踏の地で、ありきたりに、いつかは奥入瀬渓流、恐山、竜飛岬などに行ってみたいなとぼんやりと思っていましたが、この「十三の冥府」を読み、面白そうなところがいっぱいあるので、もっとジックリと各地を回ってみたいなという気になりました。

例えばシジミ料理が美味しい十三湖、ウミネコ繁殖地で有名な蕪島、ちょっとマニアックな戸来(へらい)のキリストの墓などなど。主人公も食べる十三湖のシジミラーメンはぜひ食べたいものです。

それはさておき、旅行ルポライター浅見光彦が行く先には不可解な死や殺人が起こり、傲慢無礼な刑事が登場しと水戸黄門のようなワンパターンですが、それでもはまってしまうとなかなか抜け出せないのもやっぱり黄門様と同じです。

こうした紀行ものとミステリーがうまくマッチした小説がテレビ2時間ドラマ(実質90分)には最適なのでしょう。見る方も読むだけではわからない当地の美しい風景も楽しめます。

今回のミステリーの謎は、細かなところでは違っていましたが、なんとなく中盤でわかってしまいました。ただ年齢も近く、顔もそっくりよく似た人同士が偶然知り合い、それを使ったアリバイのトリックというのは、ちょっと無理があるなぁって思わなくもない。それなら時々見かけますがまだそっくりな双子が身代わりになるトリックのほうが現実的でしょう。

タイトルの「十三の冥府」はこの事件に関連して亡くなった人の数や、事件の鍵となる人が住む十三湖、そして忌み数である13をうまくかけたようです。

3月後半の読書 2013/4/6(土)

005 鄙の記憶 (角川文庫)
お馴染みの浅見光彦シリーズのミステリー小説で、文庫は2006年に発刊されています。この浅見光彦シリーズというのは、小説ですでに119話、それ以外に紀行文・随筆まであり、探偵小説界のゴルゴ13と言ってもいいかもしれません。

面白いのはこれだけの小説(原作)であればテレビに映画に引っ張りだこかと思いますが、テレビでは「火曜サスペンス」を始め数多く原作となっているものの、映画で製作されたのは「天河伝説殺人事件」ぐらいです。

テレビドラマになると、そのキー局によって主役の浅見光彦を演じる役者が違い、ある時は国広富之だったり、水谷豊だったり、沢村一樹だったりします。内容が映画よりも2時間ドラマ(実質90分間)向きなのでしょうかね。

あまりよく知らない人のために書いておくと、主人公の浅見光彦はフリーのルポライターで、普段は旅行雑誌に記事を書いたり、政治家の提灯記事を書いたりしていますが、なにか事件が起きると冴えわたる嗅覚を生かし、次々と難題を解き明かしていくという素人探偵です。

また事件は日本各地で起き、一種、観光案内というか紀行もの小説とも言えます。多くの場合は人に頼まれ、仕方なく事件に首を突っ込むことになりますが、いつも現地の警察から余計なことをするなと反発を受けます。

そして後になって、実の兄が全国の警察署を統括している警察庁の刑事局長だということが判明し、警察の態度がコロッと一変するというのもいつものオチというか流れです。

この作品はまず最初に静岡にある寸又峡(すまたきょう)で起きた自殺か事故か事件かよくわからない遺体が発見されるところからスタートし、その後、舞台が秋田県の大曲へと移っていきます。

途中まで準主役かなと思っていた、定年間近の地方の新聞社通信部員もやがて死体で発見され、その通信部員と寸又峡で捜査を共にした浅見光彦が乗り出していくことになります。

この本を読んで静岡と言えば伊豆半島や清水、浜名湖など海岸線へはよく行くものの、大井川鐵道沿線や寸又峡の南アルプス直下の地域には今まで縁がなく行く機会がなかったので、今度折を見て行ってみたくなりました。

ちなみにこの小説の中でも会話に出てきますが、寸又峡で起きた戦後史に残る大事件として、1968年に起きた金嬉老事件があります。55歳以上の人なら誰もが知っている事件で、猟銃で脅し人質をとり旅館に88時間立てこもった劇場型凶悪犯罪のハシリとなった事件です。

その籠城の舞台となったふじみや旅館はその後長く営業していましたが、ここ最近の不況が影響したのか観光客減少で昨年1月に廃業したようです。

1月後半の読書 2013/2/6(水)

004 熊野古道殺人事件 (中公文庫)
2012/06/14読了

「BOOK」データベースより
友人である大学教授が、作家・内田康夫に相談を持ちかける。観音浄土での往生を願い小船で沖に出る「補陀落渡海」の再現を、助手らが計画しているという。馬鹿げた行為だと批判する内田だったが、浅見光彦を運転手に紀伊半島へ向かうことになり―。名探偵と「軽井沢のセンセ」による迷コンビが、南紀山中を舞台に名推理を繰り広げる!

2021/10/8再読

文庫あとがきで知りましたが、この浅見光彦シリーズの長編ミステリーは、主人公が違う短篇2篇を組み合わせ、さらに新たに取材をした時に考えついたことを加えた特殊なものということです。

実はこの文庫は、テレビで浅見光彦シリーズのドラマを見て興味を持ち、2012年に一度読んでいましたが、なぜか感想を書いてなく、あらためて読んでみました。

1991年にノベルスとして初出ということですから、30年前のことで、文庫化されたのは1995年です。浅見光彦シリーズの長編としては75番目ということになります。

シリーズの特徴でもある「ご当地紀行小説」のひとつですが、今回はタイトルでもわかるように、巡礼者が今も多い熊野古道や、古い時代におこなわれていた宗教行事、補陀落渡海(ふだらくとかい)、人形供養の淡嶋神社、女の怖い情念を描いた安珍・清姫伝説など、紀州和歌山の見所が詰め込まれています。

登場人物はちょっとややこしく、主人公の浅見光彦、ワトソン役の作家内田康夫、その内田の旧友で大学教授とその妻、その教授の下で助手を務める男とその妻、研究室の学生達、あとはいつもの地元警察官などです。

そう言えば、シリーズにはつきものの、浅見光彦に好意を寄せる美しいヒロインがこの小説に限っては出てきません。

その代わり、いつもは裏方の作家内田康夫氏が光彦よりも先に事件の不可解な謎を知ったり、光彦の愛車ソアラを運転して大事故に遭うなど大活躍します。

熊野詣と言えば常道の熊野三山(新宮市の熊野速玉大社、田辺市の熊野本宮大社、那智勝浦町の熊野那智大社)が小説の舞台としては全然出てきませんが、これらは当たり前過ぎてわざと外したのかな?と思います。

近いうちに、熊野詣をしたい気持ちになりました。

★★☆

10月後半の読書と感想、書評 2021/10/30(土)

003 靖国への帰還 (講談社文庫)
太平洋戦争当時と現代とがタイムスリップで結ばれるというのは、荻原浩著「僕たちの戦争」や、今井雅之著「THE WINDS OF GOD」、北村薫著「リセット」、アメリカ映画で「ファイナル・カウントダウン」などがあり、コミックやアニメでは私も全巻読破した「ジパング」などが有名です。

この「靖国への帰還」も、昭和19年の太平洋戦争末期に、海軍の戦闘機乗りだった主人公が、B-29の迎撃中に負傷して厚木飛行場へ戻ってくるとき、雲の中でタイムスリップが起き、米軍と自衛隊が共同使用している現代の厚木基地へ着陸してしまいます。

内田康夫氏は浅見光彦シリーズなど現代のミステリーものが多い作家さんですが、このようなエンタテーメント系のファンタジーロマン小説は珍しいのではないでしょうか。

夜間戦闘機月光のパイロットだった主人公が突然現代に現れたことで、政治やマスコミの報道合戦などに巻き込まれることになります。そして「死ねば靖国で会おう」と誓い、多くの仲間達が奉られている靖国神社の立場が戦中と戦後で大きく変わってしまったことに主人公は大いに失望してしまいます。

靖国問題とはA級戦犯合祀による近隣諸国の反発と、政治と宗教の政教分離の二つの問題です。

靖国神社への思い入れが強い著者の思想も多少は入っているのか、かなりのページがそれに費やされますが、本来ならそのような世界的に見るとローカルで小さな問題よりも、世界初で唯一現存するタイムスリップ経験者の存在という、物理科学、歴史、医学、哲学、宗教、軍事、宇宙工学、精神世界などでの問題や話題のほうが大きく、物理学や宗教観を一変させてしまいかねない世界的な大きな出来事でしょう。

この作品でも触れられていますが、昔の伝説などには「浦島太郎」のようなタイムスリップを匂わせるようなものが世界各地にありますが、科学的に証明ができない人の存在というのがどうなるのか、おそらく宇宙からやってきたエイリアンよりも大問題になりそうです。

最後のクライマックスでは、現代に有効な飛行操縦免許を持っているはずのない主人公が、なぜか公式な行事で、自分の愛機だったとはいえ、現代の空を自分で操縦桿を握って飛べるかなど、絶対にあり得そうもなく不可解なことが多く、ちょっとそれらの展開が突飛すぎて残念でした。ま、このような小説に、そのようなリアリティを求めるのもなんなのですが。

1月上旬の読書 2012/1/18(水)

002 はちまん(上)(下)(角川文庫)
著者の内田康夫氏についてはwikipediaに「西村京太郎、山村美紗とともに、旅情ミステリー作家の代表的人物として知られる。代表作に『浅見光彦シリーズ』『岡部警部シリーズ』『信濃のコロンボシリーズ』など。」とあります。

御歳76歳で、1981年に第1作を上梓されているので今年で作家歴30年というベテラン作家さんです。私は7年ぐらい前に「氷雪の殺人」を読んだきりです。

今回は、そのタイトルにひかれ、全国にその名のつく神社が数多くあり、自宅の近所にもある八幡神社のことについて、多少雑学のネタになるかなと思って読み始めました。

さすがに紀行小説の名手だけあって、長野、秋田、熊本、高知、呉の街が次々と出てきます。

その立役者には主人公の女性カメラマンとその婚約者、そして内田氏の小説には欠かせない、謎解きの名手で数々のミステリーで主人公となっているルポライターの浅見光彦が全国を駆けめぐります。

また実在する八幡神社も、有名な宇佐、石清水、鶴岡の八幡宮ではなく、地方にある無名の八幡神社が次々と登場してきます。

物語の途中で、政治家と土建屋が結託する場面がありますが、そこだけはなにか唐突すぎて多少違和感があります。しかし巨悪の犯罪が絡むストーリー展開上やむを得ないのでしょう。

八幡神社の歴史や謂われ、神仏習合、日本人の歴史認識から文科省管轄のサッカーくじ問題などまで含め、雑学を知るためにも十分に楽しめる小説です。

登場する実在の八幡神社(リンク先は公式サイトがない場合、個人または企業サイトです)

小内八幡神社(長野県中野市)
亀山神社(亀山八幡宮)(広島県呉市)
久礼八幡宮(高知県中土佐町)
千田聖母八幡宮(熊本県山鹿市)

9月前半の読書 2011/9/19(月)

001 氷雪の殺人 (文春文庫)
2004/04/28読了

「BOOK」データベースより
利尻山登山道で男性の凍死体が発見された。被害者は富沢春之。通信機メーカーの技術者だった。警察が自殺として処理しようとする中、浅見光彦は同地出身の北海道沖縄開発庁長官・秋元より、兄・陽一郎を通じて真相究明の依頼を受ける。被害者が遺した「プロメテウスの火矢は氷雪を溶かさない」という言葉と1枚のCD。国防を巡る巨悪に、光彦と陽一郎はどう立ち向かうのか。日本人が喪った「覚悟」を真摯に問う社会派ミステリー。


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