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島田雅彦 SHIMADA MASAHIKO 既読書籍

005 カオスの娘
004 彼岸先生 003 カタストロフ・マニア
002 退廃姉妹   001 自由死刑


1961年東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシア語学科卒業。大学在学中の1983年『海燕』掲載の『優しいサヨクのための嬉遊曲』でデビュー、芥川龍之介賞の候補となる。1984年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞受賞。1992年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞を受賞。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞を受賞、2008年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。代表作に『夢遊王国のための音楽』(1984年)、『彼岸先生』(1992年)、『忘れられた帝国』(1995年)、『無限カノン』3部作(2000年 - 2003年)、『カオスの娘』(2007年)、『虚人の星』(2015年)など。(Wikipediaより引用 2022年)


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005 カオスの娘(集英社文庫)

2007年に単行本、2012年に文庫化された長編スピリチュアルミステリー小説です。スピリチュアルというかファンタジー&ホラーとも言えますが、誘拐された女子高生が監禁され乱暴の限りを尽くされるなど、読んでいて良い気分にはなれません。

主人公は、祖母から予言者のシャーマンの素質を引き継いで、網走の原野で修行を積みその才能を開花させていく若い男性。

もうひとりの主人公が女子高生で、ある日、男に誘拐され佐世保のマンションの一室に監禁され抵抗できないよう肉体的、精神的に追い詰められていきます。これがタイトルの「カオスの娘」を指しているのでしょう。

この女性が、やがて誘拐犯自身が企んだ自殺に巻き込まれ、精神が壊れ記憶喪失になり、次々と迫ってくる男達を殺していくことになります。

シャーマンの男性が、殺人を繰り返していく若い女性の居場所を探し、どうやって記憶喪失を治し、精神状態を正していくかというストーリーですが、悪人ばかりではなく、孫のためにシャーマンの極意を伝え引き継いで亡くなる老婆や、女性を助けるために命をかける第三者、連続殺人事件を調べ核心に迫るものの、真相を知ってそれ以上の追求を手放す刑事など、登場人物達が魅力的です。

著者の小説は過去4作品を読みましたが、今までとはまったく毛色の違う内容で、ちょっと意外な感じがしました。当時、新境地を切り開いた作品なのかも知れません。

★★☆

1月前半の読書と感想、書評 2024/1/13(土)

004 彼岸先生(新潮文庫)
1992年に発刊後、1995年に文庫化された長編小説で、一部自伝的?な内容を含んでいそうな気がします。

主人公は、大学生で多摩川近くの川崎市に姉と二人で住んでいて、そして主人公が師事することになる小説家の先生が多摩川を挟んで東京(たぶん世田谷区)に住んでいます。

川(多摩川)の向こう側に住んでいるので、主人公が変人の小説家先生を「彼岸先生」と名付けたことがタイトルになっています。

その学生の主人公と、波瀾万丈な生き方をしている作家先生との関係を中心に、主人公の姉や恋人、作家の妻や愛人、友人など多くの登場人物がおり、それらが揃いも揃ってなにか曰く付きという人物なのが面白いです。

個人的には、人生において師事したと思った人はいませんでしたが、こういう小説を読むと、例え反面教師になっても自分とは大きく価値観や思想がなにもかも違っていながらも気の合う先輩や師匠がいる人生もきっと面白そうだと思いました。

しかし小説家など芸術家というのは、一般人からするとどうにもとっつきにくそうで、なに言っているのかよくわからないことがありそうで、私には無理だなぁというのが実感です。

本著の小説家の先生も、美しく理解のある妻がいながら、複数の愛人がいたり、週休4日(つまり執筆するのは週3日)を決めていて、外泊するのも日常茶飯事というなかなか一般人には理解できない豪快な人です。

この小説が書かれたのは平成の時代ですが、以前読んだ著者のたいへん面白かった小説「退廃姉妹」(2005年)の舞台だった昭和の戦後間もない時代だったらそうした桁外れの芸術家は数多いただろうなと思った次第です。

★★☆

8月前半の読書と感想、書評 2023/8/19(土)

003 カタストロフ・マニア(新潮文庫)
2017年に単行本、2020年に文庫化された予言的なSF小説です。

予言的と書いたのは、その中に出てきた世界中を襲った殺人新型ウイルスの出現と非常事態宣言などは、まだコロナ禍の2年前に書かれた本著で見事に予言をしていたからです。

さらにこの小説では、太陽フレアの爆発により電磁波が発生し地球上の電気通信がすべて異常をきたし使えなくなり、電気が使えなくなると、水道のポンプも動かなくなりインフラが壊滅、原発も冷却できずにメルトダウンし、東京も放射能に侵されていきます。

その太陽フレアの爆発で太陽コロナのプラズマ噴出などの話も出てきますが、太陽コロナと、2019年12月に発生し始めたコロナウイルスとも直接は関係ないですが、コロナという名称が妙に合致していて予言的と言えます。

小説で描かれる時代と舞台は2036年、今から13年後の関東です。

主人公はある医療薬の治験モニターになり、治験中に人工冬眠で眠らされていましたが、目が覚めたら周囲には誰もいなくなっているという異常事態に遭遇します。人工冬眠技術は現在もすでに実用化まで来ていて火星有人探査時に飛行士に施されるという話があります。

その眠らされているあいだに、太陽フレアの爆発で都市機能が完全に失われ、さらに新型ウイルスの流行で、都市部はガラリと変わってしまい、主人公はそうした絶望状態の中でどう生き抜くのか!?という感じ。

昔から無人島への漂流物語とか、ひとり取り残されて生き抜くというスタイルの小説が好きですから、この小説もたいへん面白く読めました。

そう言えば小松左京著の「復活の日」(1964年)とも似ています。あれは核戦争と殺人ウイルスの二重苦でした。主人公はたまたま南極の昭和基地にいて低温に弱いウイルスには罹りませんが、アメリカの核ミサイルが地震に反応して自動発射されると、ソ連の自動反撃核ミサイルが南極にも飛んでくる?ということで、アメリカの核ミサイルの発射を無効化するため生き延びていたアメリカの原子力潜水艦に乗り込みアメリカへ渡るという話でした。

そうした悲劇的な話ですが、主人公が軽く明るく前向きなので、読んでいても暗さはあまり感じません。

著者の小説は12年前に現代の若者を描いた「自由死刑」を、昨年には戦後のドサクサ時代を描いた「退廃姉妹」を読んでいて、そちらもとっても面白かったですが、今回のこの作品とは全く趣の違う内容で、同じ作家さんが書いたと思えないほどでした。有能というか万能な方です。

★★★

2月後半の読書と感想、書評 2023/3/1(水)

002 退廃姉妹 (文春文庫)
1983年に短篇集「優しいサヨクのための嬉遊曲」でメジャーデビューした著者の2005年(文庫は2008年)の作品です。著者の作品は2011年に「自由死刑」(1999年刊)を読んでいます。

この作品は、太平洋戦争直前から始まり、母親は戦争前に亡くなっていて父親が映画会社に勤務、目黒にある家に住む比較的上流社会の姉妹の物語です。

戦争中は周囲の家が焼夷弾で焼けていく中で、奇跡的に人も家も無傷のままで終戦を迎えます。

ところが父親が戦犯容疑で捕らえられ、まだ女学校の生徒だった姉妹は、住む家こそあるものの、生きていくために苦労を強いられます。

行動的な妹が、銀座で米兵相手の娼婦と仲良くなり、食べていくため自宅で米兵相手の売春宿を開くことを姉に提案し、認めさせます。妹は娼婦として、姉は賄いなどの役割分担です。

奥手の姉は、戦争中に知り合い、その後学徒出陣で戦地へ行った慶応の大学生の帰りをひたすら待ち続けます。

そのような戦後の大変な時期の話しが盛りだくさん詰まっていて、決して暗いばかりではなく、姉妹の恋愛ドラマも挟まれて、父親の無罪釈放や、再婚など明るい前向きな話しも加わり、読んでいてなにか日本の庶民達の近代史を垣間見るような感じです。

結局、タイトルにある「退廃」は、姉は闇市にどっぷりつかった上、戦争中の復讐のために元上官を惨殺して逃亡中の恋人と心中一歩手前までいき、妹は娼婦の身ながら米兵と恋仲になりやがて別れが来たときに自殺を図るというそれぞれに退廃した生き方をせざるを得なかったことから来ているものと思われます。

★★☆

2月後半の読書と感想、書評 2022/3/2(水)

001 自由死刑 (集英社文庫)
主人公は30過ぎの独身男性。わずかばかりの貯金を引き出して、1週間後に自殺をするため、残された日々を(主人公なりに)有意義に過ごそうとしています。その1週間の物語です。

なぜ自殺をするのか?世を儚んでというわけでもなく、ただ思いつきでとしか言いようがない流れですが、毎日平均で80人以上の自殺者(はっきりと自殺と判明しているものだけなので、実態はもっと多いはず)が出ているの、たいした理由がなくとも自殺する人がいても全然不思議ではありません。

島田雅彦氏の小説は過去に読んだことあったかなぁと思って調べてみると、島田一男氏、島田荘司氏の小説は読んでいましたが、島田雅彦氏の小説はこれが初めてでした。

最後はどうなるのか?とドキドキしながら読み進んでいきますが、途中であこがれの元アイドルとの逢瀬や元カノとの出会いなど、退屈することのない濃縮された1週間があっという間に過ぎていきます。最後は、読んでのお楽しみです。

島田氏は今年50歳、多くの小説やエッセイ等を出しておられますが、いまいち書店で見た記憶に残っているものはなく、地味と言えば地味、ツウ好みと言えばそうなのでしょう。

この自由自殺を原作にしてテレビドラマが作られたことがありますが、一気に有名になるためにはやはり著名タレントを使って映画化がされ、大掛かりな本と映画の同時キャンペーンでもおこなわないと厳しいのでしょう。言うは易くで有力なプロデューサーや監督の目にとまらなければなりませんからたいへんです。

11月後半の読書 2011/12/4(日)


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