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奥泉光 OKUIZUMI HIKARU 既読書籍

004 雪の階(上)(下) 003 ノヴァーリスの引用
002 シューマンの指  001 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活


1956年生まれ。山形県東田川郡三川町出身。国際基督教大学 (ICU) 教養学部人文科学科卒。同大学院修士課程修了(博士課程中退)。1986年、すばる文学賞に応募した「地の鳥天の魚群」が最終候補になり、後に「すばる」に掲載され小説家としてデビュー。1994年『石の来歴』により芥川賞受賞。1999年近畿大学助教授に就任(現、文芸学部教授)。(Wikipediaより引用 2023年)


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004 雪の階(上)(下)(中公文庫)

雪の階2018年に単行本、2020年に文庫化された長編小説で、2018年に毎日出版文化賞と柴田錬三郎賞受賞を受賞しています。

小説の舞台は太平洋戦争前の軍部が勢力を増してきていた日本です。そして主人公は父親が貴族院の議員を務める伯爵の娘で女子学習院へ通うお嬢様です。

当時の政治は欧州を席巻しつつあった勢いのあるドイツと同盟を結ぶべきだという強硬派と、英米とは経済格差があり敵に回すべきではないという穏健派で二分していましたが、すでに中国へ進出していた軍部の実権が強まってきます。

一見すると、そうした戦争前の暗くて貧しいイメージがありますが、華族の世界はまだ華やかで、戦争という悲壮感はまったくありません。

そういえば、こうした戦前の華族の世界を舞台としていた小説では、柳広司氏の小説や、北村薫氏の小説などにもありましたが、農民に代表される一般庶民の自由がなく耐乏の生活ではなく煌びやかな世界です。

その侯爵の娘の友人が富士山山麓の青木ヶ原で若い軍人と心中しているのが発見されます。

しかしその相手や、亡くなる直前に主人公宛に出されたはがきなどから、これは心中に偽装された殺人ではないかと疑い、子供の頃の遊び相手でカメラマンとして活躍している女性に相談しながら真相を突き止めようとします。

宗教や政治、そして軍部と、様々な要素が絡み合って複雑な様相を呈してきますが、序盤の緻密で繊細な展開から、中盤から後半のやや大雑把に思える展開へ変わっていくのがやや気になるところですが、クライマックスを別の目的を持って計画されていたとする2.26事件へと持っていくところはさすがです。

★★☆

4月後半の読書と感想、書評 2024/5/4(土)

003 ノヴァーリスの引用(創元推理文庫)

1993年に単行本、2003年に集英社文庫、2015年には創元推理文庫として出版されています。

読んでいて遅くなるからと家に連絡をするとき、テレフォンカードや公衆電話を使うシーンがあり、あれ?って思って小説の初出を調べると1993年で、まだ携帯電話が一般には普及していない頃と納得がいきました。

タイトルのノヴァーリスとは、18世紀のドイツ・ロマン主義の詩人、小説家で、自らの体験を元にした「神秘主義」の作品が有名です。

大学時代に仲間だった男性4人が恩師の葬儀で久しぶりに出会い、その後の流れで食事をしながら10数年前の大学生時代に謎の死を遂げた同級生の話題へつながっていきます。

その同級生が書いた研究論文の中で書かれていた言葉が「ノヴァーリスの引用」だったことで、死の理由と論文の迷宮に入っていくことになります。

とにかく一般人には言葉が難しくて、なかなか意味をとらえきれません。アフォリズム、マニ教、グノーシス思想、霊肉二元論、マルキストなどが会話にポンポン出てきて、いちいち調べるか、読み飛ばすかしなくてはなりません。

作品としては大きくはミステリーだと思いますが、その中にはホラー要素もあり、真夜中に読んでいてちょっとビビりました。

★★☆

7月後半の読書と感想、書評 2023/8/2(水)

002 シューマンの指(講談社文庫)

2010年に書き下ろし小説として発刊された小説ですが、この2010年は講談社創業100年とシューマン生誕200年の年ということもあるそうです。

著者の作品は5月にコミカルでライトノベル的な「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」を読んでいますが、本当に同じ作家さんの作品なの?と思うぐらいにその文体、構成、ジャンルが違っています。

著者自身もフルート奏者として音楽に馴染みがあるとは言え、それにしてもクラシック音楽についてのうんちくや批評がてんこ盛りで、逆にちょっと鼻につくぐらいです。

例えばこういう部分があります。

「ロマン派音楽の特徴の一つはその物語性にある。これはオペラに期限を持つので、その意味では、バロックこそが最も物語的だといいうるし、古典派にも当然ながら物語性は色濃く刻印されている。だが、ロマン派以前の音楽が、どこかで神話の輝きを帯びた叙事詩的な性格を備えていたのに対して、ロマン派は、近代文学と同様、個人の感情や内面の葛藤を物語の軸に据えるところに特色がある。だからこそロマン派音楽は、演奏者や聴き手の「感情移入」を容易に許す。物語が感情を揺さぶり、心から溢れ出す感情が物語を産み出す−。」

こうしたクラシック音楽に関する解説や説明が随所に出てきて、また登場人物にも語らせます。

内容は、ネタバレするので書けませんが、何重にも張り巡らされた主人公の語りで進められていき、最後には関係者から驚愕の事実が喚起されそれが事実なのかどうかは不明のままで終わります。つまり読者がどう考えるかを試される結末でしょう。

基本はミステリー小説のジャンルに入るのでしょうけど、読んでいると普通の青春小説、または音楽やピアニストの世界をかいま見る職業小説、あるいはシューマンを中心としたクラッシック界のうんちく本ともとらえることができそうです。

ドラマや映画化なども今のところなく、世間ではあまり話題にはなっていませんが、なかなか面白かったですよ。そのうち誰かの目に留まり、映画化されそうな気もします。

★★★

10月後半の読書の感想、書評 2016/11/2(水)

001 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活(文春文庫)

現役近畿大学教授でありながら作家との二足のわらじを履いている著者の2011年単行本、2013年には文庫化されています。またシリーズ化され続編の「黄色い水着の謎 桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活2」もすでに発刊されています。

著者の作品を読むのは今回が初めてですが、過去の作品には1994年に芥川賞を受賞した「石の来歴」や、2009年には「神器―軍艦「橿原」殺人事件 (新潮文庫)」で野間文芸賞受賞、2014年に「東京自叙伝」で谷崎潤一郎賞受賞など、数々の賞を受賞されている人気作家さんです。

そしてこの作品は2012年に「妄想捜査~桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」としてテレ朝系の連続ドラマになり、その時の主人公は佐藤隆太、その他桜庭ななみ、倉科カナなどが出演しています。

自らが大学教授と言うことで、舞台は勝手知ったる大学の職場風景ですが、ジャンルは推理小説で、本書には「呪われた研究室」、「盗まれた手紙」、「森娘の秘密」の連作中編3作品が収められています。

主人公が自ら降りかかる難問を次々解決していくよくある話しかと思っていたら、思いっきり裏切られて、主人公に降りかかる謎や難問を、教え子の文芸サークルに所属する女生徒が解決をしてくれるという珍しいパターンで、意外性があってその点は面白いですね。

ただ、ドタバタコメディ的な要素が多く、推理小説としてはそれなりに面白いのですが、その周囲というか設定があまりにもふざけすぎていて、ホームレス女子大生とか、准教授の手取り給料が10万円とか、千葉の田舎の偏差値の低い大学を笑いものにしているとか、ちょっとどうかなと思いますね。

★☆☆

6月前半の読書と感想、書評 2016/6/15(水)



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