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野沢尚 NOZAWA HISASHI 既読書籍

003 ふたたびの恋 
002 恋愛時代(上)(下) 001 破線のマリス
読書感想は2010年頃以降から書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


野沢 尚(1960年5月7日〜2004年6月28日)愛知県名古屋市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。テレビドラマの脚本で高い評価を受ける一方、推理小説にも幅を広げた。北野武の映画監督デビュー作の脚本を手掛けたことでも知られている。1998年『眠れる森』『結婚前夜』で第17回向田邦子賞受賞。(Wikipediaより引用 2022年)


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003 ふたたびの恋
(文春文庫)


人気脚本家としても脚光を浴びていた著者ですが、2004年に自殺して亡くなりました。その亡くなる1年前の2003年に単行本が発刊され、2006年に文庫化された3編+αの中編小説集です。

昨年読んだ著者の1996年の作品「恋愛時代」はお互いに好意をもったままだけど、別れてしまった男女の切ない恋愛がテーマでしたが、脚本家らしく映像がすぐ目に浮かびそうなわかりやすいストーリー展開がなかなか面白く読めました。それだけに44歳という作家としてはまだ若手の部類で自ら世を去ったのは残念でなりません。

この小説の1編の主人公としても出てきますが、テレビドラマの脚本家として、売れだすと次々と仕事が舞い込んでくる反面、一度視聴率が取れなくなると一気に仕事を失ったり、あるいは自分の作家、脚本家としてのプライドやこだわりと、作品監督やプロデューサー、果ては出演者との意見の食い違いなど、心の葛藤や多くのストレスがあったのではないかと思われます。

一つめの作品はテレビドラマ脚本家が主人公で、弟子だった女性と関係を持つようになり、その女性が若手脚本家として成功して独り立ちするようになった頃、自分は視聴率が取れなくなり自然と別れ、ひとりすさんだ生活をしていたところ、偶然同じリゾートホテルに泊まることになる「ふたたび恋」、二つめは高校生の息子の同級生に淡い「恋」をしてしまう中年女性が主人公の「恋のきずな」、そして三つめは最愛のひとり息子を交通事故で亡くし、その後妻とも別れ、アル中になり仕事にも身が入らなくなった料理人が立ち直るきっかけとなるのは?という「さようならを言う恋」。

中でも最後の「さようならを言う恋」は現実的には起こりそうもないことですが、別れた妻や雇ってくれたお弁当屋の経営者と言った主人公をとりまく人達がすごく「いい人」ばかりで、人生捨てたモンじゃないとほっこりさせてくれます。男から見た女の理想像でしょうかね。

収録されている+αの「陽は沈み、陽は昇る」は、未完に終わった中編小説の詳細なプロットです。プロットとはいえ読むと十分に内容や場面がわかり、ぜひ完成版を読んでみたかったなと思わせるものでした。許されるのなら同じ脚本家で小説を書いている高野和明氏に「共著」としてそれを完成してもらいたいものです。

そういうのはチャンドラー、マイケル・クライトン、伊藤計劃などの未完の原稿を、別の作家が完成させたという例はいくつもあります。

3月前半の読書と感想、書評 2014/3/19(水)

002 恋愛時代(上)(下)
(幻冬舎文庫)

著者の野沢尚氏は元々テレビや映画の脚本家として頭角を現し、その後小説を書き始めた方です。プロの作家からするとシナリオライターに人の機微を深く掘り下げた本格的な小説が書けるものかといいたいところでしょうけど、当然書けちゃうわけですね。ただ惜しむらくはこの著者は2004年に自殺してしまい、もう新しい作品を読むことができません。

この「恋愛時代」は1996年に初出の長編小説で、2001年にタイトルに惹かれて読んだ「破線のマリス 」(初出1997年、文庫版は2000年刊)よりも前に書かれた作品です。

ストーリーは、2年前に離婚して別々の生活をおくっている男性と女性の二人の主人公が、心の中に今でも様々な葛藤を抱えつつ、日常の生活の中では一緒に食事をしたり、カラオケに行ったりと仲良くしています。しかしある時喧嘩になってお互いに再婚相手を探して紹介するということになり、それを互いに実行していくというコミカルな中にも男女間の深い心理状態をうまく描いているなかなかの作品です。

まぁ、互いにムキになり結婚相手を探すという辺りで、最終的に落ち着く先は読めてしまいましたが、主人公以外の登場人物がそれぞれに魅力があり、それが映像として見せるためのドラマ脚本家としての最大の腕の見せ所だったのかなぁと思いつつ、後半へ突入していきます。

小説では主人公二人が交代で語っていくスタイルをとっていますが、互いの心理描写がやや冗長で、どうでもいい部分が長々とあり、中だるみというか途中で退屈する場面もあります。それを救っているのは先にも書いた主人公二人に恋をする脇役達です。

脇役といっても、引退も近い女子プロレスラー、中学時代の同級生、名門ホテルチェーングループ総裁の跡取り息子、離婚協議中の大学教授など、様々なタレントで、これはドラマにすると絵になります。

二人の主人公のように、こんなに周りからモテモテの人生だったらなにも苦労はしないのにと思わなくもないですが、やはり最終的には人気アイドルタレントを使った映像化を視野に入れた作品だったのかも知れません。

しかし現在のところこの作品の映像化は2006年に韓国でテレビシリーズとしてドラマ化されただけで(日本国内でも放送されました)、国内では制作されていません。

あとこの小説の中で男性主人公(書店の店長)が勤める本は、それなりに面白いことを巻末の解説で池上冬樹氏も保証しています。

小説の中で登場してくる小説とは、

マイクルコナリー「ラスト・コヨーテ
宮本輝「ここに地終わり海始まる
ロバート・ジェームズ・ウォラー「マディソン郡の橋
ローレンス・ブロック「八百万の死にざま
ジョン・ダニング「死の蔵書
リチャード・ニーリー「心ひき裂かれて
桐野夏生「ファイアボール・ブルース
ベン・ホーガン「モダン・ゴルフ
サガン「ある微笑
ピート・ハミル「愛しい女
原田康子「挽歌
ジャック・フィニイ「ゲイルズバーグの春を愛す
遠藤周作「わたしが・棄てた・女
村上春樹「ノルウェイの森

の14作品で、半数はすでに読んでいますが、あと残りをメモしておいて今後読んでみようと思っています。こうして今まで喰わず嫌いだった新しいジャンルや著者の本を増やしていくのはなかなか効率がいいです。

10月前半の読書と感想、書評 2013/10/16(水)



001 破線のマリス (講談社文庫)
2001/06/01読了

「BOOK」データベースより
首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑤子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!?事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。



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