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新田次郎 NITTA JIRO 既読書籍

005 武田信玄 山の巻
004 武田信玄 火の巻 003 武田信玄 林の巻
002 武田信玄 風の巻 001 八甲田山死の彷徨



新田次郎、本名:藤原寛人、長野県生まれ(1912年〜1980年)は、日本の小説家、気象学者。無線電信講習所(現在の電気通信大学)卒業。1945年新京にてソ連軍の捕虜となり、中国共産党軍にて一年間抑留生活を送る。帰国後気象庁職員として富士山気象レーダー建設などに携わる傍らで作家活動を行い、『八甲田山死の彷徨』など山岳小説の分野を拓く]。1956年『強力伝』で直木賞、1974年『武田信玄』等で吉川英治文学賞受賞。(Wikipediaより引用 2022年)


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005 武田信玄 山の巻 (文春文庫)
1969〜1973年に月刊誌の「歴史読本」に連載された長編大河小説で、1969年から1973年にかけて単行本、その後文庫化されています。この作品は、中井貫一主演の1988年放送NHK大河ドラマ「武田信玄」の原作になっています。見ていませんが。

文庫版で、風の巻546ページ、林の巻463ページ、火の巻426ページ、山の巻543ページの計1,978ページと結構なボリュームがあります。

四つの巻だてには意味はなく、信玄の若い頃から、亡くなってから3年経った後の葬儀までのほぼ一生の話しを4分割しているだけです。

最後のあとがきに、「毎月30枚ずつ、百回まで書き続けた」とありましたが、原稿用紙?で合計3000枚ということになります。

また100ヶ月というと8年と少しです。上記雑誌に掲載されていたのは4年間ですので、2ヶ月分60枚ずつ毎月掲載、最初に掲載される4年前から書きためてスタートということなのかな?よくわかりません。

武田信玄を書いた資料と言えば、江戸時代に編纂された甲陽軍鑑が有名ですが、それを参考にしながらも,他の諸々の資料も合わせて独自の世界観を展開しています。

例えば甲陽軍鑑では武田信玄の軍師(参謀)として登場し、それが一般的には定着している山本勘助は、この小説では武田家と今川家の二重諜報員、つまり忍びの親玉的な役割で、織田信長が今川義元を破った桶狭間の戦いでは、駿河を狙う武田陣営に協力するため、今川義元の動きを織田側に流すなど活躍します。

武田信玄像武田信玄というと、甲府駅前にあるこの銅像のイメージが強いです。恰幅が良く、太めで強そうなイメージです。

小説の中では、行動的で広大な甲府から信州、北関東、そして駿河や三河へとよく移動し、そのことごとくで戦略を練り、敵を打ち破っていきますが、若いときに労咳(肺結核)に罹り、その後52歳で亡くなるまでこの病に悩まされ続けます。

また最近の研究では死因は癌ではないかとも言われています。

癌はもちろん、当時労咳も治療法がない不治の病で、小説では、病が出てくると食欲が落ち、いつも青白い病的な顔色していたと書かれていますので、ちょっと上の銅像のイメージとは違ってきます。

甲州のあちこちに「信玄の隠れ湯」というのがありますが、それらは信玄の労咳を癒やし(当時の治療法は安静にしているしかなかった)、激しいストレスなどを解消するために作られたりしたものかも知れません。

それはともかく、20歳のときに父親の暴政に苦しむ家臣達の勧めで父親を引退させて駿河に追い出し、諏訪地方から始まり、信州中心部(松本、長野)へ侵略を進めていきます。謙信との戦いで有名な川中島は今の長野市南部の犀川と千曲川に挟まれた場所です。

そうした戦いの合間には、京都から来た公家の娘の正室とは別に、次々と側室を持ち、艶福家全開モードに入っていきます。大衆小説らしく、そうした側室との閨の話しも盛んに出てきます。

最初の側室から労咳を移され、その後、跡継ぎの勝頼を産む、最愛の側室には信玄から労咳を移し亡くします。そうした想像でしょうけどプライベートな架空の話しがてんこ盛りです。

また、財政政策のため、金山開発に積極的で、敵対した兵士やその家族を捕虜にして、男は過酷な金山の労働者、女はその労働者の遊び女や賄い婦などにされるという話しが10数回出てきます。よほどその話しが気に入っていたのでしょう。

四巻のそれぞれ巻末には、物語が展開する地図や城や砦の位置が書かれていて、イメージしやすくなっています。せっかくだから城や砦の想像図も書いておけばもっとイメージしやすくて良かったかも。それはムック版にお任せかな。

信玄は戦国時代最強と言われる武将ですが、その半生は隣国の信州を統一するため、越後の上杉謙信との5度の戦いや、強力な隣国で関東を支配していた北条氏や、現在の静岡県、駿河を支配していた今川氏などとの深謀遠慮、そして新興勢力の織田信長や徳川家康との対立など、周囲の強国に囲まれて常に脅威があった甲府という地域出身だったことが最大の不運でした。

終わってみれば将軍に要請されても、一度も上洛することができなかった地方の一大名ということです。ライバルの上杉謙信は何度か上洛し、天皇や将軍に拝謁しています。

つまり、時代はそれまでの農業と鉱山開発より、もっとお金になる交易や商売、優秀な武器や技術を得るため外国と交流するためには広大な海(港)へつながる安全な領土が必要でしたが、信玄が早くに治めた甲府や信州、北関東にはそれがありません。

あるいは、最初に信州へ攻め入るのではなく、早々に遠江や三河、尾張を攻めていれば、もっと早く西上しての上洛と全国統一への道が開けていたかも知れません。

そこで、遅ればせながら、織田信長に敗れて弱体化していた今川家が支配する駿河を攻めますが、その地域は同じく駿河を手に入れたい相模の北条家と三河の徳川・織田連合に挟まれていて、決して安全な領土とはなりません。

駿河をどうにか手に入れ、次に上洛する途上で障害になる三河の徳川家康を攻めた時には、信玄はすでに高齢で労咳の病も進み、結局、徳川家康を三方ヶ原の戦いで徹底的にやっつけたものの、その後、東海道を上って上洛することがかなわず、亡くなってしまいます。

信玄の代名詞でもある軍旗に描かれた「風林火山」は、孫子の兵法の中の「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」から来ていますが、もしその中に、「真っ先に得るべきは海の道」と入っていれば、違った歴史になっていたかもです。

3月前半の読書と感想、書評 2021/3/17(水)

004 武田信玄 火の巻 (文春文庫)
003 武田信玄 林の巻 (文春文庫)
002 武田信玄 風の巻 (文春文庫)
001 八甲田山死の彷徨(新潮文庫)
1902年の明治時代に実際に起きた「八甲田雪中行軍遭難事件」を題材にした小説で、1971年に単行本、1978年に文庫化されました。

私も映画館へ見に行った高倉健主演の1977年公開の映画「八甲田山」の原作として有名ですが、映像では描ききれない著者の想いが詰まった山岳小説として読みました。

山岳小説を書かせると右に出る者はいないと言われた著者だけあって、雪山での壮絶なシーンはもちろん、その雪山へ行軍する二つの部隊をうまく対比していて、その事前の予行演習や装備、組織や上官との関係などが細かく書かれていて興味深いです。

あらすじは、日露戦争が始まりそうになってきた社会情勢で、日本陸軍としても冬山の装備や部隊の展開などが重要視されてきて、青森と弘前の二つの部隊に冬の八甲田山を踏破する命令(表向きは任意だが実質的には命令)が下され、それぞれ逆方向から八甲田山に登り、途中ですれ違うという計画になります。

雪山行軍の経験があり、慎重な弘前歩兵第三十一連隊が先に出発し、それを聞いて天候が悪い中、案内人も雇わず慌てて出発した経験の少ない青森歩兵第五連隊が八甲田山に足を踏み入れたとたん猛吹雪に遭ってしまい部隊が全滅してしまいます。

一方の弘前隊は常に地元の案内人を立てて、慎重に進むことで、予定通り八甲田山を無事に踏破し、ただ1人だけ足をくじいたために引き帰らせた他は、予定通りに行軍して、弘前へ戻ってきます。

暴風雪と深い雪で行く手をさえぎられる青森隊の悲惨な状況は、映像で見ることでその迫力が倍加します。

小説ではそうした現場の迫力ではなく、それぞれの立場に立った人間物語として読むことができます。それにしても想像を絶する物語です。

昨年夏、八甲田山のすぐ近く、奥入瀬まで旅行で行きましたが、もしこの小説を先に読んでいれば、八甲田山麓の供養塔がある場所へ寄っていただろうなと感慨深げに読みました。

★★★

9月前半の読書と感想、書評 2016/9/14(水)



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