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中島義道 NAKAJIMA YOSHIMICHI 既読書籍

人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ 人生に生きる価値はない
「人間嫌い」のルール 私の嫌いな10の言葉
「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの

読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。



006 人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ (ちくま文庫)
1997年に初版が出た後、新潮と筑摩から文庫版が出ましたが私が購入したのは2008年刊の筑摩書房版文庫です。これが書かれたのはまだ20世紀の1996年頃で、当時は電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科教授という肩書きでした(2009年に退任)。

サブタイトルにあるように、哲学の考えを元にした中高年以降の生き方について著者の考え、過去の哲学者などが残した言葉などを紹介した新書っぽい内容の文庫です。

したがって、本文にもありますが、この本の想定対象年齢は40代から50代前半ぐらいで、もうガツガツと野心を持って出世競争をしたくない中高年者という感じで、すでにそこから大きく超えてしまった私にはちょっと遅かった?とも思いますが、ようやく手に入れたので、しっかり読みました。

著者の書籍は「人生に生きる価値はない」(2009年)、「「人間嫌い」のルール」(2007年)、「私の嫌いな10の人びと」(2006年)、「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」(2000年)、「<対話>のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの」(1997年)の5作を読んできましたが、本書が一番著者の専門の哲学に寄った作品です。

内容は、、、、、えぇ、哲学的というか、哲学です。

哲学の本の感想を簡潔に書けと?そ、それは、丁重にお断りしますデス。

著者の専門でもあるカントはもちろん、セネカ、スピノザ、ルソー、ヴァレリー、陶淵明、永井荷風、兼好法師など多くの先達が残した文章や生き方から「半隠遁生活のススメ」を引用しています。

閑職に左遷されてガックリしている方、ライバルに先を越され投げやりになっている人、そしてちょっと変わった知的好奇心を満たしたい方にはうってつけの本です。

9月前半の読書と感想、書評 2020/9/16(水)
★★☆
005 人生に生きる価値はない (新潮文庫)
元大学教授でカント研究など哲学者の著者の作品は好きで、過去には「対話のない社会」(1997年)、「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」(2004年)、「私の嫌いな10の人びと」(2006年)、「「人間嫌い」のルール」(2007年)を読んでいます。

このエッセイ集は2009年に単行本、2011年に文庫本が出ています。ちょうど、国立大学の教授職を定年で退官される直前に書かれたものです。

とにかく、行動と言論が独創的でかつ過激な方で、団塊世代の中でも突出しているなーと感じますが、言っていることは決して間違ってはなく、考えさせられる内容です。

でも時々は、話題から外れ、うるさ型オヤジの愚痴っぽい話しも顔を出し、相変わらずの内容ですが、最初にこの著者の本を読むと、ちょっと引いてしまうかも知れません。

本文中に「まもなく国立大学を定年で去るので、その前に準備として哲学塾を開講すべく有料で始めた」というのがあり、「公務員の副業って認められているんだっけ?」「当然なんらかの許可を得ているのだろう」と思って先を読み進めると、やはり大学の事務局から兼業規程のクレームがつきました。

自分からそんな恥ずかしいことを書いているので、悪気があったわけではないのでしょうけど、「そんな基本的なことも知らずにやっていたのか?」と、専門の学問に対して頭は素晴らしく良いのかもしれないけど、世知に疎い学者先生というのを知って笑ってしまいました。

国立の大学教授が書籍を出し印税収入を得たり、講演会で謝礼をもらったりするのは、副収入という扱いで副業ではないというのが通説ですが、学校とは別に塾を開き、お金を取れば立派な副業(事業)となるでしょう。その線引きは微妙な感じもしますけど。

この著者が毎度必ず著書に書く「街中や電車内での放送騒音」について、普段通勤で乗る電車でもまったく同感で、過剰すぎる大きなお世話的案内や注意・警告などの改善は進むどころか、年々ひどくなるばかりです。

少し古い記事ですが、下記に著者が詳しく書いています。

日本で「お節介な注意放送」が流れる根本理由(東洋経済ONLINE)

それ以外にも、電車内で化粧する女性について、著者が過激な対応が書かれています。私は、お化粧は放送と違って、見ないようにすれば見なくて済むので別に気にはなりませんけど、不必要にがなり立てる車内放送は、イヤホンを耳に突っ込んで、大きな音で音楽でも流さないと聞こえなくできませんからいつもつらく感じています。

どこまでタイトルに沿った話しかという疑問はありますが、総じて著者の哲学論、個人的な思考法、胸のすく発言などを期待して読む分には面白いと思います。が、逆に読んでいると腹が立ってくる人もいそうで、単なる哲学本という位置づけではありません。念のため。

3月後半の読書と感想、書評 2020/4/1(水)
★★☆
004 「人間嫌い」のルール (PHP新書)
この哲学者で今年70才になる元大学教授の言いたい放題は結構好きで、何冊か読んでいます。この新書は2007年刊ですから東京電気通信大学で教鞭を執っている時期で、ちょうど60才になった頃に書かれたのではないかと推察します。

著者の作品をいくつか読んできて思ったのは、著者はある意味純粋の人で、「嫌のことは嫌」「やりたくないことはやらない」「家族であっても距離を置きたい」となんでもハッキリと口に出せる人で、昔の芸術家などにはよくみられたタイプです。

ただそれって現代では「わがまま」「自己中」「気遣いできない人」「愛のない可哀想な人」などと軽蔑、あるいは同情されそうな感じですが、それを承知した上でできるってことはそれはまた凄いなって思うわけです。自分に自信がなければとてもできることじゃありません。

この本では「人間嫌い」になるにしてもいくつかのルールがあることを示し、それらのルールも守れず中途半端で怠惰なだけの「人間嫌い」になるぐらいなら、世間の迷惑だからやめておけ!って言っているような内容です。

3月後半の読書と感想、書評 2015/4/1(水)
003 私の嫌いな10の言葉 (新潮文庫)
過去には「「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの」「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」(いずれもタイトルが長い)の2冊を読んでいます。舌鋒鋭く、社会への批判や、気持ちよくマイノリティな持論を展開する、元電気通信大学教授、人呼んで「戦う哲学者」の作品です。

実は買うつもりのリストには入っていなかったのですが、チラッと下に書いた目次を見てしまったのが運の尽き、すぐに買ってしまいました。

その目次には、下記のような「嫌いな10の人びとの特徴」が記されていました。

(1)笑顔の絶えない人
(2)常に感謝の気持ちを忘れない人
(3)みんなの喜ぶ顔が見たい人
(4)いつも前向きに生きている人
(5)自分の仕事に「誇り」をもっている人
(6)「けじめ」を大切にする人
(7)喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
(8)物事をはっきり言わない人
(9)「おれ、バカだから」と言う人
(10)「わが人生に悔いはない」と思っている人

奇をてらったタイトルで人の関心を集めようとする安っぽいジャーナリストや評論家とは違い、それぞれの内容について自身の考え方をひとつひとつ真剣に丁寧に説明されています。それらからわかったことは、著者はやっぱり変わり者だという点と、正直者であるということ。

もちろん、これらのことがすべて無条件に嫌っていると断言しているわけではなく、「自分はこういう人をこう思う」「自分の考え方はこうなのです」という自己主張です。それがまた面白くてついつい頷いてしまったり、逆に「そりゃーあんたがわがままなだけでしょう」って毒づいたりして楽しめます。

しかし著者のように、こうした自己主張の強さを前面に出して生きていくには、今の世の中は決して寛容ではなく、息が詰まってしまう気がしますが、そんなことはいちいち、気にしてはいけないのでしょうね。

この著者の講演を聴きに来た人の中に、あまりの内容にショックを受け、精神に異常をきたした人がいるとも書かれていましたので、さもありなんとニヤリとしたりします。著者ほどは知性も教養も思慮深くもありませんが、天の邪鬼で、人と違った価値観を大事にする私も、人間関係においては著者と比較的同類に近いのかも知れません。

8月後半の読書と感想、書評 2014/9/3(水)
002 「対話」のない社会―思いやりと優しさが圧殺するもの (PHP新書)
「闘う哲学者」として有名な著者はいわゆる昭和時代の頑固オヤジとも共通するところがあり、好き嫌いが激しく、筋の通らないことが頑として認めず、上司であろうが有名人であろうが、間違っていると思うことはズバッと指摘をして嫌われるというなかなか現代社会には珍しい大学教授です。

以前「どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか?」を読みましたが、世の中の常識というまやかしにとらわれていて、自分の考えを持つということをほとんど捨ててしまった自分の脳天をポカリと張られたような気がする作品で印象深いものがあります。

この本でも序盤に授業中に私語をする学生の話し、私語が止んでも今度は死語となってしまう感性などについて、誤解を恐れずズバズバとわかりやすく教育論を展開されています。

特に日本中にはびこっているマナーの告知や標語(ポスターや放送)にはかなりの枚数を割いて不快感を表し疑問を投げかけています。

確かにどこの役所にもバカのひとつ覚えみたく交通安全や障がい者へのいたわり、不法投棄の防止、ルールを守って安全な暮らしを的な言葉が氾濫しています。

私は特に駅や車内での不要な放送が多すぎるといつも憤っています。若い人のように大きな耳栓(え?違う)をしようかと思っています。

一方では、駐輪禁止の大きな看板の周辺には大量の放置自転車があり、電車の優先席付近で携帯電話の使用を禁止する警告があちこちにベタベタ貼られ、さらに車内放送でも繰り返し注意喚起しているにもかかわらず、優先席でなにはばかることなく携帯電話を使っている人が多くいるのが今の日本の現状です。

外国では車内で電話使うのは当たり前という声も聞きますが、なにもそうだからと言ってルールを無視して真似しなくても。

著者は、それらの原因のひとつには、子供の頃から、無意味で退屈な校長先生や会社に入ってからは社長や上司の訓辞を聞かされ、さして意味のない注意喚起ポスターを毎日眺め、館内、車内で放送を聞かされているうちに、人の話や注意を真面目に聞くという感覚が麻痺し、人が自分に話をしているときでも、自分は関係のないことをしても平気という習性になってしまっていると。

そして「思いやり」や「優しさ」を押しつけることで、人との対決を避け、結局は対話をさせない風土が根付いてしまっていると著者は言っています。

それは「思いやり」や「優しさ」という美名の元に相手を傷つけないよう配慮して沈黙する社会ではなく、言葉を尽くして相手と対立し最終的には責任を引き受ける社会で、他者の異質性を尊重する社会を目指すべきではないかと言っています。

さらに、対話を望まない人は、それも自由であるものの、そうした行動は同時に他人の言葉も封じていることとなり、他人の叫びを聞かない(聞こえない)耳を作ってしまい、それを圧殺し、対話を求める人に対して加害者であると結論づけています。

様々なエピソードが面白く(調布市内の無法自転車置き場の話しや交差点に置かれている「守ろうよ 私の好きな 街だから」という立て看板などに対するクレーム)よくここまで言うなと思いますが、話しはストレートでブレがなく快活です。

6月後半の読書と感想、書評 2013/7/3(水)
001 どうせ死んでしまうのに、なぜいま死んではいけないのか? (角川文庫)
1946年生まれの元大学教授でもあり哲学者中島義道氏の名前はよく知られた方で、著書も多いのですが、どうも「哲学」書と言うことでとっつきにくくて今まで手が出ませんでした。

その著書にも真面目な哲学研究書もあれば、中には「私の嫌いな10の人びと」「人生に生きる価値はない」「きみはなぜ生きているのか?」「善人ほど悪い奴はいない ニーチェの人間学」などユニークな著書が多いのも特徴です。中でも有名になった著書として「人生を「半分」降りる―哲学的生き方のすすめ」や「さようなら、ドラえもん 子どものためのテツガク教室」など売れるのを意識した釣りタイトル書もあります。

この著者ユニークなのは「人間の食べる物の九割は食べられない大偏食家」「すべてのスポーツは恐ろしく、車の免許ももっておらず、自転車もうまく乗れず、ボートも漕げず、釘も打てない」「六歳の頃からいつも死に脅えている」「他人を病的に羨み、病的に軽蔑する」「協調性はまったくなく、気味の悪いほどナルシストである」「異常なほどの虚栄心の持ち主」と開けっぴろげに自己分析をするのがいかにも哲学をやっている人だなぁって感じます。

哲学でもっともよく議論されるのが「ヒトはなぜ生きるのか?」「ヒトはどう死ぬべきか?」「ヒトはどこから来てどこへいこうとしているのか?」など根源的な問題です。

この著者の作品のタイトルにもそのようなことが想像できるものが多く見られますが、そういう分野を専攻でもしようと思わない限り、なかなかリフレッシュのために読みたくなるものではありません。

しかし年齢を重ね、親や友人などの死に直面することが増えて行くにつれ、徐々に死生観を持つようになり、若く輝いていたときとは違う感情や思想が頭の中を支配していきます。

若い頃に読むときっと著者の毒気に当たってしまうかもしれませんが、もはや世の中のことは概ね知り尽くしてきたので、幸いにもそういうことにはならず、「なるほどなぁ」「そういう見方もあったか」と感心するばかりです。

本文の最後に、自殺した元教え子の葬儀に行った際、その母親から「そういう毒を撒き散らさないで」とののしられたようなことが書かれていましたが、純粋培養されてきた人にとっては薬にも毒にもなるような危険をはらんでいそうです。

12月後半の読書 2013/1/3(木)


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