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今野 敏 KONNO BIN 既読書籍

006 キンモクセイ 005 とせい
004 ビート 警視庁強行犯係・樋口顕 003 朱夏 警視庁強行犯係・樋口顕
002 リオ 警視庁強行犯係・樋口顕 001 隠蔽捜査

読書感想は2010年頃以降から書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


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1955年北海道生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業。大学在学中の1978年に『怪物が街にやってくる』で第4回問題小説新人賞を受賞しデビュー。1979年同大卒業後、東芝EMI入社。1981年に東芝EMIを退社し小説家に専念。長年の空手の経験から武道や格闘技の描写に優れる。裏社会や登場人物の心理描写も特徴的で、上品でポジティブな作風から女性のファンも多い。ジャンルとしては警察小説、SF、バイオレンス、アクション、伝奇、オカルトといった分野の作品が多い。(Wikipediaより引用 2022年)

006 キンモクセイ(朝日文庫)

キンモクセイ
2018年に単行本が出版された本著は、著者のデビュー作からなんと199作品目ということです。それにしても多作な作家さんです。

しかし過去に読んだ作品からは手抜きや使い回しって感じのものはなく、本著もかなりの力作と思いました。

シリーズ物が多い中で、本作品は単独のもので、主人公は警察庁警備局警備企画課所属のキャリア採用の官僚です。警備局とは主に公安事案を扱うので戦前で言えば特高のような組織に当たります。

そんな中で、法務省官僚が何者かに射殺され、その対処を指示されながらも、なにかの力が働きすぐに解散となり、なにか裏がありそうだと先輩官僚や、同期で他の省にいる官僚仲間達と調べ始めます。

そこで出てきたのがタイトルにもなっている「キンモクセイ」というワードで、そのワードに込められた秘密を知ったことで法務官僚は殺されたのではとわかってきます。

しかしこうした官僚達が今の日本を動かしていることは頭では理解していても、こうして例え小説とは言え内輪の話を読むと複雑な気持ちになってきます。

それは決して「主権たる国民のため」というよりも、省益や利権、自己保身、エリート意識(プライド)など、下々の庶民には遠い世界で自分たちに都合良く国を動かしているに過ぎないのかな?ということです。

本著でも触れられていますが、恣意的な運用が可能な「特定秘密保護法」や「改正組織犯罪処罰法」「共謀罪」などは、平和で何も起きていないときには無視できるものでも、それこそなにか国に非常事態が起きたり、政治家や官僚にまずいことが発生して隠したいときには、これらの法律が国民の行動や声を封鎖する威力を発揮することになります。

フィクションとは言え、なにか国民の知らないところで政治家や官僚の都合が良いように法律が変わっていくという不気味さを感じられる小説でした。

★★☆

8月後半の読書と感想、書評 2024/8/31(土)

005 とせい (中公文庫)

著者は大学在学中の1978年に作家デビュー、その後はサラリーマン生活を送るもすぐに辞めて作家と、大学時代から始めた空手に専念というちょっと変わった経歴の持ち主です。著書の多くは警察事件ものですが、サイキックやSF的な小説もあります。

著者の作品で私が過去に読んだ4冊「隠蔽捜査」「朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕―」「ビート 警視庁強行犯係・樋口顕」「リオ―警視庁強行犯係・樋口顕」はいずれも警察小説です。

今回のこの小説は警察モノではなく、タイトルからもわかるようにヤクザ稼業を描いたもので、ストーリーはひょんなことからつぶれかかっている総合出版社の経営をすることになった弱小ヤクザ組織が、獅子奮迅の働きで出版社を蘇らせていくという、ま、ありきたりと言えばそのような内容です。

ヤクザが介護ヘルパーとして老人ホームで働いたり、ヤクザのイメージアップのために広告代理店が関わったりするコメディタッチのこの手の小説がすでにあり、こうした内容はもはや珍しくもありませんが、確かに出版社とヤクザ稼業とは案外相性がよいのかも知れません。

つまり週刊誌グラビアに使う元有名アイドルの「脱がせ屋」、関西のヤクザ同士の抗争裏話、ブラックな芸能プロ所属のタレントへのインタビューなど、出版社が望むものをヤクザがコネと脅しを使って紹介することで、うまく手に入れられそうです。素人っぽいちょっと安易な考えではありますが。

小説では、他に出版社の再生と並行して、本来のヤクザ稼業である技術力はあるけど需要が減少して運転資金を闇金から借りていた倒産間際の町工場の高利貸しトラブル解決や、同業者がフロント企業を通じて合法的なしのぎ稼業の販売ノルマに汲々している姿など、コミカルに書かれています。

なお、この「とせい」の続編?と言える「阿岐本組任侠シリーズ」として「任侠学園」(2007年)、「任侠病院」(2011年)がすでに発刊されています。タイトルを見ればすぐにピンときますが、この作品と同様、ヤクザが学校や病院の経営を立て直すっていう感じなのだろうと思います。

6月前半の読書と感想、書評 2015/6/17(水)

004 ビート―警視庁強行犯係・樋口顕―(新潮文庫)
2008/09/21読了

「BOOK」データベースより
警視庁捜査二課・島崎洋平は震えていた。自分と長男を脅していた銀行員の富岡を殺したのは、次男の英次ではないか、という疑惑を抱いたからだ。ダンスに熱中し、家族と折り合いの悪い息子ではあったが、富岡と接触していたのは事実だ。捜査本部で共にこの事件を追っていた樋口顕は、やがて島崎の覗く深淵に気付く。捜査官と家庭人の狭間で苦悩する男たちを描いた、本格警察小説。

003 朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕―(新潮文庫)
2008/09/18読了

「BOOK」データベースより
あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと捜し出してくれるはずだ―。その誠実さで数々の事件を解決してきた刑事。彼を支えてきた妻。二つの視点から、真相を浮かび上がらせる、本格警察小説。

002 リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
2008/08/24読了

「BOOK」データベースより
「彼女が容疑者だとは、思えない」警視庁捜査一課強行犯第三係を率いる樋口警部補は、荻窪で起きた殺人事件を追っていた。デートクラブオーナーが殺害され、現場から逃げ去る美少女が目撃される。第二、第三の殺人が都内で起こり、そこにも彼女の姿が。捜査本部は、少女=リオが犯人であろうという説に傾く。しかし、樋口の刑事の直感は、“否”と告げた。名手が描く本格警察小説。

001 隠蔽捜査(新潮文庫)
2008/03/16読了

「BOOK」データベースより
竜崎伸也は、警察官僚である。現在は警察庁長官官房でマスコミ対策を担っている。その朴念仁ぶりに、周囲は“変人”という称号を与えた。だが彼はこう考えていた。エリートは、国家を守るため、身を捧げるべきだ。私はそれに従って生きているにすぎない、と。組織を揺るがす連続殺人事件に、竜崎は真正面から対決してゆく。警察小説の歴史を変えた、吉川英治文学新人賞受賞作。



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