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読書感想INDEX

五木寛之 ITSUKI HIROYUKI 既読書籍

052 捨てない生きかた 051 蓮如−われ深き淵より−
050 新老人の思想 049 親鸞 完結篇(上)(下)
048 健康という病 047 下山の思想
046 親鸞 激動篇(上)(下) 045 親鸞(上)(下)
044 青春の門 第七部 挑戦篇 043 不安の力
042 奇妙な味の物語 041 大河の一滴
040 風花の人 039 哀愁のパルティータ
038 異国の街角で 037 ガウディの夏
036 雨の日には車をみがいて 035 燃える秋
034 風の王国 033 さかしまに
032 メルセデスの伝説 031 ヤヌスの首
030 真夜中の珈琲屋で 029 日ノ影村の一族
028 青春の門 第六部 再起編(上)(下) 027 青春の門 第五部 望郷編(上)(下)
026 野火子 025 地図のない旅
024 青春の門 第四部 堕落編(上)(下) 023 ヒットラーの遺産
022 白夜草紙 021 戒厳令の夜1・2
020 狼のブルース 019 涙の河をふり返れ
018 恋歌 017 蒼ざめた馬を見よ
016 風に吹かれて 015 ソフィアの秋
014 変奏曲 013 さらばモスクワ愚連隊
012 青春の門 第三部 放浪編(上)(下) 011 デラシネの旗
010 青春の門 第二部 自立編(上)(下) 009 樹氷
008 モルダウの重き流れに 007 第三演出室
006 私刑の夏 005 ゴキブリの歌
004 夜のドンキホーテ 003 青春の門 第一部 筑豊篇(上)(下)
002 内灘夫人 001 にっぽん三銃士2
読書感想は2010年頃以降に書くようになりました。それ以前に読んだ本の感想はありません。


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1932年福岡県生まれ。生後まもなく、日本統治時代の朝鮮に渡り、終戦後福岡へ引き揚げ。1952年に早稲田大学第一文学部露文科に入学。1957年に学費未納で早稲田大学を抹籍された。大学抹籍以降、創芸プロ社でラジオの番組作りなどいくつかの仕事を経て、業界紙『交通ジャーナル』編集長を務めるかたわら、知人の音楽家加藤磐郎の紹介で三芸社でジングルのヴァース(CMソングの詞部分)の仕事を始める。CM音楽の賞であるABC賞を何度か受賞。1966年デビュー作の『さらばモスクワ愚連隊』により第6回小説現代新人賞を受賞。1967年に『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞を受賞。(Wikipediaより引用 2022年)

052 捨てない生きかた(マガジンハウス新書)

捨てない生きかた
2022年に出版されたエッセイをまとめた新書です。テーマは、若い人を中心に流行っている断捨離やシンプルライフのブームに対し、思い出が詰まったガラクタに囲まれて生活する楽しさや心の充実感を知ってもらいたいという著者独自の考え方です。

確かに高齢になるほど昔の物不足の記憶や、家庭でも学校でも教え込まれて身体に染みついている「モノは大事に長く使う」という思想があります。

前期とは言え高齢者に入っている私も、子供の頃からの習性で、買い物をしたときにもらった大きな紙袋や、通販で送ってきた外箱の段ボール箱などなかなか捨てられません。あとは購入した書籍を捨てたり売ったりすることもできず、部屋には3千冊を超える書籍が山になっています。

したがって、この「捨てない生き方」は、概ね60代以上の、まだ日本が貧しい時代を経験してきた人にとっては普通の考え方で、そのうまい理由付けを著者がいろいろとしてくれているわけです。

したがって、この思想は私にとってはよく理解ができるし、実際に実践している生き方でもあります。

しかし効率的で合理的な生き方や、コスパ重視が尊重される今の風潮の中で生きている若い人達には、こうした過去の役に立たない遺物を大事にするという考え方や、使わないモノを長く所有していることの意義についてなかなか賛同は得られなさそうです。

その辺りはやはり世代間格差があるように思えるのと、家電一つとっても昔のように修理すれば30年50年が普通に使えたものが、今はそれこそ耐久性や満足できる性能が期待できるのは5年とか10年ぐらいで、海外生産でブラックボックス化されていて修理もできない製品が多く「捨てざるを得ない生き方」となっています。

「5年で陳腐化するなら借りれば良いか」ってことです。

あとは、著者のようにガラクタでもいっぱいためておける広い家に住んでいるとそれが可能でも、地方から都会に出てきて狭い住居に住んでいると、やはり「捨てざるを得ない生き方」を選ぶことになります。これは所得格差の問題でもありそうです。

★★☆

9月前半の読書と感想、書評 2024/9/21(土)

051 蓮如−われ深き淵より−(中公文庫)

蓮如日本の仏教の布教で欠かせない平安時代末期から鎌倉時代初期に活躍した浄土宗の法然とその弟子で新たな宗派浄土真宗を作った鎌倉時代前半から中期にかけて活躍した親鸞が有名です。

そしてその親鸞の時代から200年後に親鸞聖人の教えと浄土真宗の総本山本願寺を継いで8代目の法主になったのがこの本の主人公で室町時代に生きた蓮如(1415年〜1499年)です。

著者には親鸞をテーマにした小説があり、その続編とも言えるものですが、今回の作品は小説という形ではなく戯曲、つまり劇のシナリオのような形態となっています。

小説ばかり読んでいるので、この戯曲スタイルにしばらくは違和感がありますが、慣れてくると、誰の発言か、どのようなバックグラウンドかなどがよくわかり、これもアリだと納得です。

最近の小説、特にミステリーなどは、犯人捜しを難しくするためかやたらと登場人物が必要以上に多い上に、その親族や関係者が次々と出てきて、誰が誰だかわからなくなったり、誰の発言なのか不明だったりしますが、シナリオならそうした煩わしさから解放されます。

法然や親鸞は比較的学校でも習っていて知っていますが、蓮如に関してはあまり一般的ではありません。法然や親鸞のように始祖や開祖ではなく、中興の祖という位置づけなので、仕方がないのかも知れません。

こうして読みやすい小説(戯曲)にしてもらえると、肩肘張ることはなく、自然体でスッと入ってくるので楽しく読めました。それにしても蓮如上人絶倫極まりなし(5人の妻と27人の子)です。

★★☆

4月後半の読書と感想、書評 2024/5/4(土)

050 新老人の思想(幻冬舎新書)

日刊ゲンダイに連載していたエッセイの中から高齢化と死生観についてのテーマでまとめた新書で、2013年に発刊されました。執筆当時、著者は81歳で、ちょうど日本人男性の平均寿命と同じでした。出版時から10年が経ち2023年現在90歳の著者はご健在です。

タイトルの「新老人」とは、20歳ぐらいまでの若者を第1階級、生産年齢を第2階級、そしてそれ以降の高齢者は第3階級と分けて、その第3階級の人達の多く、一般市井の老人を新老人としています。

その新老人が国民の3〜4割を占めるようになっていくこれからの日本の数十年は、世界でも大いに注目される実験場となっています。

というのは、マスメディアでよく出てくる高齢者は、「百歳過ぎてもこんなに元気!」「90歳で現役で仕事」など、特殊な極めて珍しいケースばかりを登場させることに著者自身違和感を感じています。

実態は100歳を超える高齢者のうちおよそ8割は認知症に罹っていたり、寝たきりの状態だったりするので、そうした標準的な高齢者の実態は滅多に報道されることはありません。

なので、新老人は自然に委ねて年齢に応じた生き方、死に方をしたほうが良いという提案です。

また、年金や医療費補助など社会保障の制度が、若者が高齢者を支えるという昭和の考え方から早く脱し、各階級ごとに支え合う仕組みを作らなければ持ちこたえられないのは自明の理で、そのためにも新老人達は子供や孫世代に頼るのではなく、自分で自分の健康、生活、生死を選択しなければならないと主張します。

著者自身当時81歳で、、すでに裕福な上に、まだ小説を書き、エッセイを書き、各地の講演会に出掛けるなど、かなり活発な活動をされていて、一般的な年金だけで暮らしている81歳とは異なるような気がしますが、それはともかく、もう年金に頼った老後というのは期待できないという話しはかなり真実味があります。

お金のある老人は、なにをしてもいいけれど、そうでなければ、若い人に迷惑や負担をかけないよう、健康に気をつけて質素につつましく老人らしく暮らしていくことを勧められているようです。

お金もないのに、暴走老人と呼ばれる横柄で暴力的な高齢者が増えてきている事への反感かも知れません。

★★★

3月後半の読書と感想、書評 2023/4/1(土)

049 親鸞 完結篇(上)(下)(講談社文庫)
2010年に「親鸞」、2012年に「親鸞 激動篇」が出版され、三部作最後のこの作品が2014年(文庫は2016年)に発刊されました。元々は東京新聞や中日新聞、京都新聞など多くの地方紙で連載されてきた小説です。

過去に前2作は読んでいます。

浄土真宗の宗祖、親鸞聖人が主役の小説で、これは伝記ではなく小説なのでエンタメ性がかなり盛られているようですが、大きな流れとしては判明している限りにおいて人生をなぞってはいるようです。

この完結編の時代背景は13世紀中盤、鎌倉時代の京都で、前作の激動篇では、誰でも念仏を唱えれば浄土へいけるという専修念仏に対し、比叡山や奈良の古寺勢力からの反発があり、民衆を惑わすと後鳥羽上皇から法然らとともに地方へ流罪となり、越後、そして東国(茨城)へと地元の名士達の協力を得ながら布教を継続していきます。

この完結篇では、60才を超えた親鸞が、東国から再び京都へと戻ってきます。そして90才で入滅するまでの様々な出来事が描かれています。

親鸞がまだ若い時に京都で知り合った多くの人達が再登場します。親鸞を慕うものもあれば、敵視するものもあり、様々な思惑が交錯し、さらに身内の長男までもが反発して東国へと旅立ってしまいます。

しかしこの時代に90才まで生きるというのは、もうそれだけで常人ではなく奇蹟の人でしょう。鎌倉時代の平均寿命は24才ということで、これは出産時や子供の頃に亡くなる子が多かったことからそうなりますが、それでも70才を超えて健在なのは極めて珍しいことでしょう。

昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に出てきた源頼朝は51才、主人公の2代目執権北条義時は61才、その息子3代目北条泰時は59才、姉の北条政子は68才で亡くなっています。

過去には親鸞を主人公にした小説やそれを原作とした映画がいくつか作られています。この五木親鸞もいつかは映画化されるかも知れません。

★★☆

1月後半の読書と感想、書評 2023/2/1(水)

048 健康という病 (幻冬舎新書)
2017年に発刊されたエッセイ集で、日刊ゲンダイで連載していたものをまとめたものです。

発刊当時、著者は85歳、男性の平均寿命は80歳ぐらいですから、すでに長生きの部類で、健康について書く権利というか言葉に重みがありそうです。軽い記事が多い日刊ゲンダイですけれども。

この無茶苦茶な生活を送っていそうな作家さんと、健康とは結びつかないと思っていましたが、それはご自身でもよく理解されていることがわかります。

しかし病院へ大学へ入学するときにレントゲンを撮影して以来、一度も通院したことがなく、80過ぎまでの60数年間レントゲン撮影もしたことがない、健康診断も一度も受けたことがないというのには「本当に文明人?」とか思ってしまいます。

しかしとうとう、左足に違和感と痛みを感じて、自由に歩き回れなくなり、やむなくレントゲン撮影をして診断を受けたところ「変形性股関節症」と診断されたそうです。

私は40代前半から変形性股関節症に悩まされ、50代後半で末期と診断されたことで人工股関節置換手術をおこないましたが、80歳を超えた著者が、今さらそうした大きな手術はされないのでしょう。

でももしまだあと10年は健康で歩きたいなら、人工股関節を入れるのは痛みから完全に開放されるので気持ちも明るく前向きになって良いかも。

変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1) 2016/6/11(土)

その他、80歳過ぎとしては比較的健康を維持されていますが、それでも頻尿や偏頭痛など様々な症状をもっていて、それらについて自分の考え方や対処策などが書かれています。

ここで触れられている健康問題については、「これが良い」「いや、こっちのほうが正しい」「実は恐ろしい」など情報が錯綜していて、医療や療法の常識も時代で変わっていくこともあり、何を信じて良いのかわからなくなるときがあります。

要は人が100人いれば100通りの療法があるので、自分自身でなにが最適解かをよく考えて、他人の意見に惑わされないことが重要ということでしょう。

★★☆

2月前半の読書と感想、書評 2021/2/17(水)

047 下山の思想 (幻冬舎新書)
東北震災直後の2011年に発刊されたエッセイで、震災後にいくらか書き直し?したような感じの内容となっています。

内容としては、栄華を極めた80年代から90年代に対し、いま日本が置かれている位置は、登山で言うなら下山しているところであり、その下山の方法こそが重要であるという話しです。

御歳83歳の著者は、少年時代に徹底的に破壊された敗戦を、青年時代には左翼運動にまみれた学生運動を、そして若いときに高度成長とバブルを経験しているだけに、今のバブル崩壊や東北地震、それに続く原発事故で大きく傷ついた日本を見るとそのような感想をもたれるのは仕方がないでしょうけど、今の若者にとってその下っていく思想は受け入れられるか?というと、ちょっと違うかなと。

つまり高齢者から見て自ら体験してきた日本の栄枯盛衰であり、同世代を生きてきた人にとっては間違いなく、同意し頷ける考え方に違いないでしょう。

一方では昭和時代よりもはるかに拡大していったグローバリズムや、日本人の多くが成長著しいアジアの各国へ出掛けていって仕事をするなんて、今の高齢者には考えもつかなかったことが起きています。

そうした、これからの日本と新しい日本人の生き方について、もっと著者の考え方を知りたかったというのが本音で、何度も何度も同じ話しが繰り返される文章をみて、この著者も寄る年波には勝てないのかぁと少し残念な気持ちがしました。せめて編集者が気をつけてアドバイスや修正をすればいいのでしょうけど、大家の文章に赤を入れるだけの勇気がある編集者もいなくなったと言うことでしょうか。

★☆☆

6月後半の読書と感想、書評 2016/6/29(水)

046 親鸞 激動篇(上)(下) (講談社文庫)
私も今年の5月に読んだ「親鸞」(上)(下)の続編で、2012年発刊の作品です。現在ではすでにこの激動編のあとの「親鸞 完結篇」が単行本で出ています。

著者もすでに82歳、失礼ながらいつ絶筆されても不思議ではないご高齢ですから、無事にこの長編小説「親鸞」が完結したことを編集者はホッと胸をなで下ろしていることでしょう。あとは「青春の門 」がまだ完結していませんが、大丈夫なのでしょうかね。

この激動編も、前作同様に鎌倉時代初期に実在した僧侶親鸞を主人公にしたエンタメ小説で、決してお堅い歴史書、研究本ではありません。前作では京都で法然上人とともに元々は貴族や公家達のものだった仏教を広く庶民に広めたかどで、法然は四国へ、親鸞は越後へ流刑となりましたが、この激動編は、ようやくその刑の期間が終わり、妻の恵信と二人で平和に日々生活をおくっているところから始まります。

親鸞像この夏に新潟へ行ったときに道ばたに見えた巨大な親鸞像は、どうしてこんなところに?って思いましたが、越後は妻の恵信の故郷であると同時に、親鸞にとっても第2の故郷でもあったのですね。

小説では、越後の守護代と郡司の間に利権争いから領地騒動が起き、それに巻き込まれることになる親鸞は、河川の利権を一手に握る外道院という桁外れの僧侶とその弟子達の協力を得ながら、本来の仏教のあり方を考えつつ説いていきます。

そして妻の恵信との間に子供が出来たとき、「本当に安住していて喜んでいるのか?」という心の中の声に気がつき、このままこの越後で暮らしていくことに疑問を感じ、妻や子を連れて新たな布教活動のため関東へ旅立つことになります。

旅立つきっかけとなったのは子供の頃に鴨川河原で知り合った破戒僧で、今は立派な武将になっている男の誘いなどがあり、また法然上人のところで修業時代に知り合った領主などの誘いがあったからです。

関東は今の茨城県、筑波山が見える場所に住まい、武将や領主の支援の元で布教活動をおこなっていきます。しかし地域地域にはそれまでの宗教があり、新しく入ってくる仏教に反発する者もいて、命を狙われることも。危機一髪の時にはまたまた京都にいた頃の知り合いが突然現れて救ってくれたりと、エンタメ性が満開です。

そして、いよいよ関東を出て、京の都に上る決心をするところでこの激動編は終わります。

12月前半の読書と感想、書評 2014/12/17(水)

045 親鸞(上)(下) (講談社文庫)
2010年に単行本が、2011年に文庫本が発刊されました。上下巻で750ページの長編小説で、すでにこの続編「親鸞 激動篇(上)(下)」も発刊されています。さらにその後「親鸞 完結篇」まで続くそうです。五木寛之おん歳81歳、まだまだ続きそうな「青春の門」もそうですが、大丈夫なのか?

先に述べておくと、この実在した歴史上有名な僧侶をタイトルにした歴史小説は、その多くの部分はフィクションで、根拠に乏しい話しがかなり含まれています。それは著者が小説として創造したもので、仏教や親鸞の研究をしようという人や、真面目に学ぶために読むものではなく、歴史小説の場合はほとんどそうなのですが、エンタテーメントとして読むのが正しそうです。

親鸞は平安末期〜鎌倉時代に生きて、師匠の法然上人とともに仏教を日本の各地に広めると同時に、自ら法然上人の浄土宗を元にしてもっと先へと進めた浄土真宗の開祖で、中学校の教科書などにも出てくるほどの有名人ですが、自伝的な記録がほとんどなく、その生涯についてはあまり知られていません。

ちなみに現在の日本の宗派ごとの仏教信徒(門徒)数は、この親鸞が広めた浄土真宗(本願寺派と大谷派の合計)がもっとも多いとのことです(2位は曹洞宗、3位に浄土宗)。そういやうちの実家もそうだったかも。

親鸞はまだ子供の頃に父親が家族を捨てて出家してしまい、母親は病死、仕方なく兄弟はバラバラになり親戚に預けられます。長男だった親鸞は比較的まだ恵まれた叔父の家に預けられ育てられますが、まだ幼い兄弟が下にいるので、9歳の時にお寺へ預けられ、やがて出家することになります。

親鸞が幼少の頃(1180年頃)に住んでいた京都は、後白河法皇が治める平安末期で源氏と平家の戦乱と、度重なる飢饉のため荒廃していて、京の都ですら餓死者が道のあちこちに放置されているようなひどい状態です。余談ですがこの時代を描いたSF時代映画「五条霊戦記 GOJOE」(2000年)はなかなか秀逸でしたのでぜひご覧ください。

そうした中で、親鸞はふとしたことから町の底辺に住むの男達と縁ができ、その後の人生にも大きな役割を果たすことになります。

比叡山(延暦寺)は最澄が開いたとされる名門中の名門の寺社で、親鸞は幸いそこで修行を積むことがかないますが、上流家庭の子弟でないことで出世はかなわず、また僧侶の生活の乱れにもヘキヘキし、修行も途中のまま山を下ります。そして同じく比叡山で修行を積み、現在は袂をわかち、庶民から武士まで幅広く布教をして人気を集めている法然に影響を受けることになります。

法然も親鸞も今風に言えば、苦学して三流大学から財務省へ入省したものの、東大派閥に嫌気がさし数年で辞め、その後ベンチャー企業を立ち上げて成功したみたいな感じでしょうか。

しかし仏教を高貴な人達だけではなく、広く大衆に布教していこうとする法然やその弟子の思想が、古くからの既得権益者だった仏教界から危険視され、やがて当時の政権や比叡山など権力者によって排除されていくことになります。

この小説では親鸞の子供時代から、比叡山での修行、そして山を下りてから六角堂の百日参籠後に法然の元へ通い、その後弟子となり、やがては京の都から越後へと流される34歳までの半生をエンタテーメント性たっぷりで描かれたものです。

たいへん面白かったので続編の「親鸞 激動篇(上)(下)」も買ってこなくっちゃ。

5月前半の読書と感想、書評 2014/5/17(土)

044 青春の門 第七部 挑戦篇 (講談社文庫)
団塊世代の人ならほぼすべての人が、そうでない人も50代以上なら読んだか映画を観たかで知っている人が多い「青春の門」は、1969年に初出の「第1部 筑豊篇」から始まり、「第2部 自立篇」「第3部 放浪篇」「第4部 堕落篇」「第5部 望郷篇」「第6部 再起篇」「第7部 挑戦篇」と続く、同氏の自伝的ライフワークと言える超長編小説で、まだまだ完結しそうもありません。

五木寛之氏もすでに78歳。いつなにが起きても不思議ではない年齢に達していますので、このまま完結を見ることなく終わってしまうのでしょうか。もしかすると、本当はすでに完結編まで書き終わっていて、自分の死後に順次刊行するような密かな作戦ができているのかも知れません。ま遅筆と1カ月間ぐらい平気で風呂に入らない風呂嫌いで有名な五木氏ですからそれはないと思われますが。

この第7部挑戦編は、前編第6部再起編が1981年に文庫化されて以来、なんと30年ぶりの文庫の続編の登場となります。さすがに30年前の再起編がどんな展開だったかはすっかり忘れてしまっていますが、あえて読み直しはしないで、この挑戦編を読みました。

物語の舞台は北海道にある江差町です。江差と言っても江差追分は知っていても北海道のどこにあるのかまで知っている人は少ないのではないでしょうか。私も恥ずかしながら調べるまでは知りませんでした。函館から日本海側へ出て少し上へ行ったところで、奥尻島へのフェリーが発着している場所と言えばわかりやすいかも知れません。

江差も明治・大正の頃は小樽と同様ニシン漁が盛んな漁港で、すごく活気があったと言うことですが、昭和に入ってからはその面影は消えていきます。小説では1960年〜1961年の貧しくわびしい漁村として描かれていますが、この小説により観光客誘致の町おこしなんてものがおこなわれているのでしょうか。小説の舞台にもなっている鴎島がミニ原宿化してたりするとガックシするでしょうけれど。

それはさておき、主人公伊吹信介はここでも女子高生にモテモテです。60年代の学園紛争真っ只中でもあり、まもなく始まろうとしている高度経済成長に向けて、貧しい中でも必死にもがきながら飛び出す機会を狙っている主人公が、過去に登場した様々な人物と函館で巡り会い、やがて次編のナホトカからシベリヤ鉄道でユーラシア横断する「青年は荒野を目指す」旅の次編へとつながっていきます。ただし、こちらは途中まで週刊誌に連載されていましたが、現在は休筆中となっているそうです。

6月前半の読書 2011/6/15(水)

043 不安の力 (集英社文庫)
2005/09/07読了

「BOOK」データベースより
不景気、失業、政治への不信感、将来の不安、失われていく若さ、外からは見えない「こころの病気」…今の時代不安を抱かない人はいない。しかし、不安を感じることこそ正常ではないかと著者は説く。不安を受け入れることで、不安は希望になり、人を支えていく大事な力にもなる。今、誰もが抱える身近な不安をテーマに、不安を友として生きていく智恵を著者一流の論点で語りおろした希望の書。

042 奇妙な味の物語 (角川文庫)
2003/12/01読了

「BOOK」データベースより
車を愛し、車から愛されすぎた美貌の夫人の悲劇。自著の返本の山にうもれて窒息死するベストセラー作家。SEXを試み、ポルシェを走らせ、大人の快楽を駆け足で味わってしまう9歳の少年――。ユーモラスで残酷でピュアな香り高い17の物語。心の奥底にひそむ悪魔的快感をよびおこす、傑作ホラー短編集。

041 大河の一滴 (幻冬舎文庫)
1999/04/26読了

「BOOK」データベースより
なんとか前向きに生きたいと思う。しかし、プラス思考はそう続かない。頑張ることにはもう疲れてしまった―。そういう人々へむけて、著者は静かに語ろうとする。「いまこそ、人生は苦しみと絶望の連続だと、あきらめることからはじめよう」「傷みや苦痛を敵視して闘うのはよそう。ブッダも親鸞も、究極のマイナス思考から出発したのだ」と。この一冊をひもとくことで、すべての読者の心に真の勇気と生きる希望がわいてくる感動の大ロングセラー、ついに文庫で登場。

040 風花のひと (講談社文庫)
1997/12/09読了

「BOOK」データベースより
わたしと結婚にしたいなら、あの女と寝てみせて──奈見子が提案した。一介の自動車セールスマンでは納まらない裕也の野望に火がつき、世界がぐるっと廻りはじめる。奈見子は地方財界の大物の1人娘、あの女は金沢そのもののような由佳。風花舞う街に若い野心がたぎり、新旧の愛が息づくハード・ロマネスク。

039 哀愁のパルティータ (集英社文庫)
1991/10/30読了

「BOOK」データベースより
リスボンの酒場に流れるファドの調べ。広告代理店勤務の森谷と新進作曲家水品は、魅惑的なアレイラの歌う〈宿命〉に激しく惹きつけられる…。“一つの貴重な幻想”の実現化を夢みる男たちを描く「暗いはしけ」ほか「遥かなるカミニト」「スペインの墓標」「ローマ午前零時」の3篇を収録。南欧・南米を舞台に展開する情熱と哀愁の組曲。

038 異国の街角で (集英社文庫)
1991/10/25読了

037 ガウディの夏 (角川文庫)
1991/03/10

「BOOK」データベースより
CFプロデューサー峰井透は、オーディションで知り合った新人シンガー水科杏子とともに、他人の気配を強く感じる奇妙な一夜をホテルで過ごした…。その数日後、女優の宮森陽子は峰井を誘い出し、杏子との密会が情報機関にファイルされたことを彼に告げた。そして、宮森自身、また超大物女優原江智子さえも、情報ファイルの刻印をうたれた者たちであったル峰井は陰に、プライベートの情報操作により、人々を不安と絶望に陥いれる謎の人物・岸矢吾郎の存在を知り、愛と自由を求め敢然と立ちむかっていった―。激しく加速度を増した情報社会における現代人の恐怖と苦悩を描いた衝撃の現未来小説の誕生。

036 雨の日には車をみがいて (集英社文庫)
1990/10/01読了

「BOOK」データベースより
ビートルズが東京へやって来た日、放送作家の卵だったぼくは、1台のオンボロ車、シムカ1000を手に入れたが、その代償のように1人の女友達を失う。(第1話「たそがれ色のシムカ」)アルファ・ロメオ、ボルボ122S、BMW2000CS、ポルシェ911S…。それぞれの車に素敵な女性との出逢いと別れをからめて、リリカルに描く青春恋愛小説の名作。

035 燃える秋 (角川文庫)
1989/06/10

「BOOK」データベースより
〈心と身体のほかに、もう一つの大切ななにかがある〉初老の画廊主との陰湿な性の誘感、祇園祭の夜に出逢った青年との純粋な愛すらも、デザイナー桐生亜希の安住の場ではなかった。そんな折り展覧会場で見かけた一枚のペルシャ絨毬。その奥深い美しさに魅了され、亜希は、なかにを求め、ひとりペルシャに旅立つ。女性の“愛”と“義”をテーマに様々な岐路、門出に立つ人々に贈る名作大長編ロマン。

034 風の王国 (新潮文庫)
1987/04/25

「BOOK」データベースより
闇にねむる仁徳陵へ密やかに寄りつどう異形の遍路たち。そして、霧にけむる二上山をはやてのように駆けぬける謎の女…。脈々と世を忍びつづけた風の一族は、何ゆえに姿を現したのか?メルセデス300GDを駆って、出生にまつわる謎を追う速見卓の前に、暴かれていく現代国家の暗部。彼が行く手に視るものは異族の幻影か、禁断の神話か…。現代の語り部が放つ戦慄のロマン。

033 さかしまに (文春文庫)
1986/09/25

「BOOK」データベースより
昭和10年代の前衛俳壇に一瞬の光芒を曳いた鬼才・葛根灯痩は、なぜ“正史”から抹殺され歴史の闇に消えたのか?大戦を背景にした思想の暗黒時代を生きる知識人の苦悩をサスペンス・タッチで描く表題作と、短篇「女ともだち」、単行本未収録の異色のショートショート連作「深夜物語」12話を収載する。

032 メルセデスの伝説 (講談社文庫)
1985/11/29

「BOOK」データベースより
狂気の天才ヒトラーが日本へ贈った悪魔的名車、グロツサー。伝説の霧に包まれる未曽有のスーパーカーを追って美しき女性TVプロデューサー島本理江の野心は燃える。その仕事に運命的にかかわることになった鳥井貢の追跡は、白銀のメルセデスに隠された父親の死というもう1つの謎に突きあたる。昭和史の闇に挑んだ作者渾身のスーパーロマン。

031 ヤヌスの首 (文春文庫)
1985/10/30

「BOOK」データベースより
紀州の秘境、竜神村の旧家に眠るアール・デコ美術の膨大なコレクション。世界中のコレクターが狙うラリックの幻の名作の追跡を依頼されたアルバイト学生は、セクシーな謎のブルガリア娘とともに双面のヤヌス像を追って、秘境竜神村から退廃の国際都市、ロスからインドへと飛ぶ。青春知的冒険小説。

030 真夜中の珈琲屋で (ESSAY BOOKS 8 流されゆく日々)
1983/10/03

029 日ノ影村の一族 (1981年) (文春文庫)
1981/10/25

028 青春の門 第六部 再起篇(上)(下)(講談社)
1981/04/15

「BOOK」データベースより
ぬくぬくと居心地のいい冬眠の季節はもう終りだ。人生の目的を見つける過程が青春なら、信介は、いまやそのただなかにいる。若さに賭けて、再会した織江とともに未知の芸能の世界へ踏みこんでゆく。いま信介の新天地への出発!混純とした現代をいちずに生きる若者の魂が熱い共感を呼んで、大河ロマンいよいよ第6部。

027 青春の門(第五部)望郷篇(講談社文庫)
1980/05/15

「BOOK」データベースより
屈辱感にさいなまれながら、なつかしい筑豊に帰った信介。だが、そこに待っていたのは塙組の没落と、恩人竜五郎の死だった。さらば筑豊、さらば香春岳…。孤独だが、自由の身となった信介は、ふたたび新しい旅に立とうとする。青春の苦悩と息遣いを雄大なスケールで描く大河ロマン第五部。

026 野火子 (講談社文庫)
1978/05/30

「BOOK」データベースより
生まれ育った故郷を後にし、未知の世界へ挑戦する決意を秘めて上京した野火子―華麗な変身にとまどいつつ、富裕なマヤに連れられて都会の“秘密の快楽”に触れ、さらに香港からヨーロッパへ。そこでの奇妙な人と歴史との出会い、冒険…。そして半年がたち、野火子は、いま人生とは?幸福とは?深く重い発見を手にして、新しい道へと歩みだす。慈愛をこめて描く五木ロマン。

025 地図のない旅 (新潮文庫)
1978/03/10

私はこれまで、「風に吹かれて」「ゴキブリの歌」と、二冊の雑文集を出してきた。この「地図のない旅」は、その二冊に比べて、前が陰なら後が陽、あるいは前が鬱なら後が躁という感じである。それだけ原寸大の自分の姿が透けて見えるような気がするのだがどうであろうか。(作者のことばより)

024 青春の門(第四部)堕落篇(講談社文庫)
1978/02/15

「BOOK」データベースより
人間は生き、人間は堕ちる―春浅い北海道をあとに上京した信介の、重く澱んだ倦怠の日々。歌手を目ざす織江は去り、学友たちは政治運動に春青を賭ける。訣別の哀しみと、熱い屈辱感のなか、降りつのる雨に濡れながら、信介は限りない虚無を見つめていた。苛酷な運命に翻弄される青春の苦悩を描く大河ロマン第四部。

023 ヒットラーの遺産(講談社文庫)
1977/07/15

ヒットラーが最後の夢を托した幻の秘密兵器とは?マスコミ世界の暗部を遊弋する二人の男が嗅ぎつけた奇怪な噂、謎の追及と共に浮かび上る現代史の深い亀裂を描く表題作。異国の夜、ファドの調べを背に、長い尾を曳いて消えた二つの星の物語「暗いはしけ」。他に「暑い長い夏」「怨念コマソン館」「双面のヤヌス」を収録。

022 白夜草紙 (文春文庫 い 1-11)
1977/06/25

若き革命家、流行歌手、知的傍観者たちが、都会の片隅のスナック、街なかの雑踏にくりひろげる70年代へのレクイエム。現代の虚無と倦怠の根をまさぐる長篇ロマン!

021 戒厳令の夜 上巻 /下巻(新潮文庫)
1977/05/31読了

「BOOK」データベースより
映画雑誌社に勤める江間は、出張時に博多のバーで、「伝説中の幻の絵」といわれるパブロ・ロペスの作品を見かける。なぜここに? 大学で美術史を専攻した江間の血が騒ぐ。江間は福岡の大物国士に相談し、日本への流入経路について探索をはじめる。スペイン内乱にはじまり、ナチスのパリ占領、GHQの日本統治、さらに政界の疑獄事件へとつながっていく手がかり。舞台は筑豊からチリへ。壮大なスケールの歴史ロマン。

020 狼のブルース (講談社文庫)
1976/08/15

「BOOK」データベースより
一匹狼の事件屋黒澤竜介のもとへ「KHKの大晦日の東西歌合戦をつぶしてくれ」と保守党議員南郷義明から依頼があった……。マンモス・ネットワーク体制に挑む竜介の野心と怒りを追って展開する狂詩曲。

019 涙の河をふり返れ (文春文庫)
1976/06/25

「BOOK」データベースより
大学の研究室時代の知人・黒木と、私は3年ぶりの再会を果たす。彼は歌謡曲の大スター・水沢忍のマネージャーで、3年前は社会心理学者である私に、水沢のマスコミへの売り込みについて相談に来たのだった。今回は、彼女の人気に退潮の兆しがあるので早急に手を打ちたいという相談。私は、水沢の魅力である「不幸の味」を忘れかけているのではないかと指摘する。「不幸をプレゼントしなければ」と、黒木は納得して去っていった。

018 恋歌 (講談社文庫)
1976/04/05

「BOOK」データベースより
夜を持たぬ夫婦の愛の証しとは?自由な女の孤独とは?男女の愛という、最も日常的な行為の背景にも、不思議な影がある。戦争の傷あとに悩む冬子、背徳と官能の淵をさまよう直子、新しい青春を夢みる亜由美──ひたすらな3人の女性の生き方のなかに、現代の愛の可能性を問う意欲的長編ロマン。

017 蒼ざめた馬を見よ (文春文庫)
1976/02/25

「BOOK」データベースより
ソ連の老作家が書いた痛烈な体制批判の小説。その入手を命じられた元新聞記者・鷹野は、本人に会い原稿を運び出すことに成功する。出版された作品は、全世界でベストセラーとなり、ソ連は窮地に立った。ところが、その裏には驚くべき陰謀が…。直木賞受賞の表題作など全5篇を収めた、初期の代表的傑作集。

016 風に吹かれて (角川文庫)
1976/02/14読了

「BOOK」データベースより
時代をこえて読みつがれる累計部数460万部突破の超ロングセラーエッセイが装いも新たに登場!色あせぬ“青春”の煌めきがここにある。

時代の風のなかにこそ青春があり、暮らしがあり、夢がある。ユーモアとペーソスあふれる文章で綴る第一エッセイ。刊行以来四半世紀、世代を越えて読み継がれる永遠のベストセラー。(村上 龍)

015 ソフイアの秋 (講談社文庫)
1976/02/14読了

「BOOK」データベースより
美術批評家を目指して、ぼくは東京の私大に通っていた。といっても授業にはろくに出ず、近所の喫茶店に入り浸るありさまだが。そんなとき、高校時代の旧友・筑波から、彼がブルガリア旅行で見かけたという「イコン」の話を聞く。ソフィアの村でイコンの束が捨ておかれていたらしい。イコンとはロシアに伝わる聖像画で、中世のものなら何百万円もする。喫茶店の店主に費用を捻出してもらい、ぼくと筑波はソフィアへ向かった。

014 変奏曲 (新潮文庫 )
1976/02/12読了

「BOOK」データベースより
青春の夢破れ、今は裕福な貿易商の妻である女。相変わらず革命のロマンを追い続ける男。雨のそぼ降るパリのカフェで十数年ぶりに再会した。

013 さらばモスクワ愚連隊 (角川文庫)
1975/11/15

「BOOK」データベースより
興行関係に従事していた私は、大学時代の友人からソ連にジャズ・バンドを送り込む仕事を依頼される。それを引き受けた私は下調べにモスクワを訪れ、ミーシャという地元の不良少年と出会う。私は元ブルースピアニスト。場末の飲み屋でミーシャと一緒に演奏することになり、私と仲間の演奏に彼のトランペットが加わって、みごとな調べを奏でる。彼の才能に惹かれ、ジャズメンになることを勧めるが、興行は突然中止になり……。

012 青春の門(第三部)放浪篇(講談社文庫)
1975/06/04

「BOOK」データベースより
末知の世界を求めて東京を旅立った伊吹信介。演劇への志に結ばれた仲間とともに冬の海峡を越えた信介は、いま函館に。若者のまえに立ちはだかる巨大な港の暴力。北国の街に青春の意味を模索する放浪の群像。彼らにはいったい何ができるのか?ひたむきに人生の意味を問い、圧倒的な共感を呼びおこす大河ロマン第三部。

011 デラシネの旗 (文春文庫)
1975/02/25

日本の全共闘と同時進行だったフランスの五月革命を描いた小説

010 青春の門(第二部)自立篇(講談社文庫)
1975/02/04

「BOOK」データベースより
筑豊の山河を後に、1人上京した伊吹信介。大学入学第1日目の失望、そして次々に開かれていく東京という未知の世界の扉。苦しい日々のなかの熱い友情と異性への想い。信介はいま青春のただなかにいる。だが、自らの命を賭ける夢は依然として見いだせない。青年のみずみずしい魂の昂揚と愛をヒューマンに描く大河ロマン第2部

009 樹氷 (文春文庫)
1974/11/01

「BOOK」データベースより
白銀の樹氷原にたたずむ孤独の群像──プロ、アマ入り乱れるスキー界を背景に、凍てついた女の愛と男らのそれぞれの野心の交錯を鮮かに描いた著者会心の長篇小説

008 モルダウの重き流れに
1974/07/20

「BOOK」データベースより
私は取材でチェコにいた。大手広告代理店の嘱託カメラマンとして。前年に起きた「ソ連侵攻」の傷跡を目にしながら、市原という旧友とチェコの自由化をめぐる談義に花を咲かせた。プラハに入って3日目、ダンス・ホールのようなクラブに入り、そこで見つけた美しい娘を写真のモデルにしようと目論む。するとそばにいた青年が通訳を買って出た。私は青年の申し出を受け入れ、彼らと店を出ることにするが、二人の正体は……。

007 第三演出室
1974/04/20

Q新聞の矢来慎吾はテレビ欄担当記者としてもう三年もRテレビに出入りしていた。矢来には気になることがあった。旧知のディレクターの辰巳が「第三演出室」に異動になるという噂を聞いたのだ。第三演出室とは、磨り減って使い物にならなくなったディレクターたちが集められる「放送界の収容所」のような所。折しもRテレビでは、組合闘争でストが計画され、辰巳たち第三演出室の人間が巻き込まれようとしていた。

006 私刑の夏 (講談社文庫)
1974/04/20

1946年8月、北鮮の大同江近くのH市に結城はいた。終戦後、満州から引き上げる途中に足止めをくらい、たくさんの引き揚げ民とともに倉庫に押し込められていたのだ。結城は200人あまりのグループのリーダーだったが、1年近くも待たされたいまは40人に減っている。ある日、ソ連軍にも通じる伝説の日本人・星賀という男に出会い、結城は南鮮への脱出計画を練る。ソ連軍の軍用トラック11台を駆って、計画は実行に移されたが……。

005 ゴキブリの歌 (角川文庫)
1974/03/10読了

「BOOK」データベースより
雑文は、日々の生活の報告書にして、作家の内面を映す鏡。メロンパンを愛し、原稿の締切に追われ、トイレの大改造に取り組み、異邦人だった少年時代を想い…。軽妙な文章で描かれた、原寸大の五木寛之と、時代の素顔。達意のユーモアに頬をゆるめ、三枚目的な作家の言動に笑いながら、気がつけば耳の奥で時代の歌が鳴り響いている―。1970年代初頭の世相と自身を活写した、第二エッセイ。

004 夜のドンキホーテ (角川文庫)
1973/10/05

「BOOK」データベースより
東山正剛先生、生涯を子弟教育に捧げて齢72、純情熱血の九州男児である。ふとしたことから手にした週刊誌のヌード写真、エロ記事の氾濫に憂国の情勃然として、一身をもって世の退廃を改めんと、ラ・マンチャならぬ、地元博多をいで立った! スラップスティックな展開の中に、鋭い文明批判を込めた傑作ユーモア小説。

003 青春の門 第一部 筑豊篇 (講談社文庫)
1973/07/20

「BOOK」データベースより
誰もが一度は通りすぎる、そしてただ一度しか通ることの許されない青春の門。熱い血のたぎる筑豊の地に生を享けた伊吹信介。目覚めゆく少年の愛と性、そして人生への希望と旅立ち…。ひたむきな青春の遍歴を雄大な構想で描き、世代を超えて読みつがれる不滅の大河ロマン第1部。

002 内灘夫人
1973/04/20

001 にっぽん三銃士(上)(下) (新潮文庫)
1971/07/10



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