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原田マハ HARADA MAHA 既読書籍

005 暗幕のゲルニカ
004 カフーを待ちわびて  003 奇跡の人 The Miracle Worker
002 楽園のカンヴァス 001 本日は、お日柄もよく


1962年生まれ、東京都出身。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術専修卒業。馬里邑美術館、伊藤忠商事、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館に勤務後、2002年にフリーのキュレーターとして独立。2003年にカルチャーライターとして執筆活動を開始し、2005年には共著で『ソウルジョブ』上梓。同年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞、特典として映画化される。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞。兄は、同じく小説家の原田宗典。(Wikipediaより引用 2022年)


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005 暗幕のゲルニカ(新潮文庫)

2016年に単行本、2018年に文庫化された国際サスペンス小説で、主人公はニューヨークにあるMoMA(Museum of Modern Art)、NY近代美術館でキュレーターとして働く架空の日本人女性と、もうひとり1930年代後半、フランスに住んでいたスペインの画家ピカソのモデルであり、愛人でもあったカメラマンを本業とするフランス人のドラ・マールという実在した女性の二人です。

物語は、1930年代、第2次世界大戦が始まり、やがてパリにもその戦火が及ぼうとしている中と、現代の二つの時代が交互に描かれます。

その1930年後半頃のパリではピカソが住まい兼アトリエを構えていましたが、スペイン共和国政府から、1937年に開催されるパリ万博のスペイン館の目玉として巨大な絵を描いて欲しいと頼まれます。

その後、フランコ総統が率いる反乱軍とフランコに協力しているヒトラーが率いるドイツ軍がスペインの都市ゲルニカを無差別爆撃し、市民を巻き込んだ破壊をおこないますが、ピカソはパリでそれを知り、戦争の醜さを伝えるため、空爆でメチャクチャになったゲルニカの模様を抽象画として描いたのが大作ゲルニカです。

そのゲルニカの制作過程を、ピカソはドラに写真で残すことを許可し、それは現在でも見ることができます。

ゲルニカは現在スペインのレイナソフィア王妃芸術センターに保管されていますが、その絵をピカソ本人が監修し忠実に再現したタスペトリーが国連安全保障理事会の廊下に飾られています。

言うまでもなくゲルニカはピカソが放った反戦思想を象徴する絵画ですが、9.11後にアメリカが報復のためタリバンを支援するアフガニスタンを空爆する記者向けの発表をおこなう際に、そのゲルニカに暗幕がかけられるという事態が起きます。

そうした反戦画を覆うという暴挙に抗議するため、ニューヨークのMoMAでピカソ展を開きその目玉として隠されたゲルニカの本物をスペインから運び込み展示しようとするのがもうひとつの現代の話しです。

特に1930年代の話では、ほぼ実在していた人物が登場し、歴史を垣間見るような気分に浸れます。

なかなかの大作ですが、面白いだけにスイスイ読めて、様々な妨害やテロ組織との対決など、エンタメ用のサスペンスもたっぷりで「日本版ダ・ヴィンチ・コード」のような感じです。ハリウッド予算で映画化できると面白そうなのですけどね。

★★★

6月後半の読書と感想、書評 2023/7/1(土)

004 カフーを待ちわびて (宝島社文庫)
著者の実質的なデビュー作で、2006年に単行本、2008年に文庫化されています。2009年には玉山鉄二やマイコが出演した映画も作られています。

著者の作品では、今回の作品よりずっと後に書かれた「奇跡の人 The Miracle Worker」や「楽園のカンヴァス」など3作品を読んでいますが、それらが硬派?な小説に対し、こちらはメロメロなラブロマンス小説というのに最初は違和感がありました。

タイトルの「カフー」は読む前までは、著者の専門分野の美術に関係ある人の名前?とか勝手に思っていましたが、全然違いました。沖縄の方言で「カフー」は、「果報」とか「幸せ」とかいう意味なんですね。

舞台は沖縄県にある架空の小島、与那喜島で、そこにずっと住み、亡き祖母の後を継いで実家兼雑貨屋を営んでいる地元独身男性が主人公です。

その主人公の元に、「お嫁さんにしてください」と手紙が来ます。イタズラかなにかかと思っていたら、若い綺麗な女性が訪ねてきて一波乱が起きるというストーリー。

主人公の父親は昔に事故で亡くなり、母親は祖母との折り合いが悪く失踪、その祖母も亡くなり、ひとりお墓を守って淡々とした日々を送っていますが、リゾート開発の地上げ問題が関わってきます。

果たして、手紙を送ってきた女性は主人公とどのように関わってくるのか?ってことですが、やはり女性作家さんらしく、なにかと女性側に都合良く(女性読者を意識して?)できていて、夢見る乙女達を虜にしたことでしょう。

例えば、離婚して出戻ってきても、また不倫から堕胎したことがある身の上でも、仕事がバリバリできるわけでも家事ができるわけでもなくても、こうした若い女性がのどかな島の初婚の素直な男性のところへいけばドキドキしてもらえ、チヤホヤされて、上を下への大歓迎されるというような。

なにかこのなにも知らない男性主人公が、「いい人」全開で、なにかバカにされているようで気の毒に思いました。

それはともかく、こうしたラブストーリーは、ハーレクインを見るまでもなくやはり女性が好むもので、王子様に、汚れた服を着た貧しい女中見習いが見初められるような、そういうストーリーが好きなのでしょう。

★★☆

10月前半の読書と感想、書評 2020/10/14(水)

003 奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)
2014年に単行本、2018年に文庫化された長編小説で、元祖「奇跡の人」である三重苦の障害を克服したヘレンケラーと家庭教師のアニー・サリバンの二人の関係をモチーフにしています。

著者の作品は割と最近に「本日は、お日柄もよく」と、「楽園のカンヴァス」を読んでいます。どちらも良い小説でした。まだ多くの未読作品があるので、これから少しずつ読んでいきたいと思っています。

本書はヘレンケラーと同様、病気のために見えない、聞こえない、喋れないの三重苦で、家族からも隔離されていた少女の元に、弱視ながらアメリカに留学して様々な知識を身につけた家庭教師となる女性、そして東北の津軽で生まれたときから目が見えず、三味線と歌で生活をする少女が主要な登場人物です。

その三味線弾きの少女には、後に初の重要無形文化財(人間国宝)に指定される狼野キワの若い頃の姿として登場させています。

詳しくは読んでもらうとして、東北の津軽の重苦しい雰囲気の中で、家庭教師の下で1歩1歩、手の付けられない野獣と同じ少女が、ひとりの人間として成長していく姿にうたれます。

5年前に東北へ旅行したとき「津軽藩ねぷた村」で津軽三味線を初めて生で聞くことができました。その演奏の善し悪しがわかるほどの能力はないのですが、激しい三味線の音には感動したことを思い出します。

小説としての出来ですが、これはおそらくなにかの雑誌で連載されていたのでしょうか、よくわかりませんが、同じ話しが何度も繰り返され、起きた事象があとで再度説明され、ちょっとしつこいかなと。

連載小説なら、途中から読む人のために、前に起きたことを繰り返すのもわかりますが、その場合は、単行本化する際に、繰り返される部分はカットするなど編集すべきです。

そうした重なる部分を編集して省略すれば、おそらく全体のページ数は全420ページの3/4ぐらいで済みそうです。

長い小説の場合、そうした無駄に思える部分があちこちにあるのは、ちょっと残念な気持ちになります。

★★☆

7月後半の読書と感想、書評 2020/8/1(土)

002 楽園のカンヴァス (新潮文庫)
2012年に単行本、2014年に文庫化された長編ミステリー小説です。著者自身が美術品のキュレーターで、数多くの著書には美術品のネタやうんちくが散りばめられていますが、昨年読んだ「本日は、お日柄もよく」は、そうした美術品とは関係がなく、コミカルな内容で、スピーチライターというお仕事小説でした。

この作品は画家としては不遇な人生を歩んでいた老アンリ・ルソー(1844年〜1910年)と、新進気鋭のパブロ・ピカソ(1881年〜1973年)が、パリの街で偶然交錯し、お互いに影響し合ったとされる話しと、その後に遺された作品がモチーフとして使われています。

ストーリーは大原美術館で監視員として勤めている女性が主人公で、ある日、ニューヨーク近代博物館(MoMA)からルソーの代表的な作品「夢」を貸し出すのなら、その主人公の女性(フランスから帰国するまではルソーの研究者)を交渉の相手にして欲しいと要求が出されます。

そして話しは主人公がパリで美術作品の研究者として働いていた時代へ飛び、謎が多い著名な世界的コレクターから、手に入れたルソーの作品の真贋鑑定をして欲しいと頼まれ、MoMAのアシスタントキュレーターとともに、ルソーのことが書かれた古い日記を読み解きながら、鑑定を進めていくことになります。

その結果についてはここでは明かせませんが、日記に出てくる人物と、謎のコレクターの関係など、最後はあっと言わせる展開がお見事です。

倉敷にある大原美術館へは40年ほど前の学生時代に一度行きましたが、その時は有名なエル・グレコばかりに意識がいっていて、他の作品はチラ見ぐらいしかしてなく、この小説にも登場するアンリ・ルソーの作品や、モネ、ゴーギャンと言った世界的に貴重な名画を、今度ゆっくりと鑑賞するために行きたくなりました。

★★★

1月前半の読書と感想、書評 2018/1/17(水)

001 本日は、お日柄もよく (徳間文庫)
2006年に「カフーを待ちわびて」でデビューした著者の2010年発表の小説です。

私はこの著者の作品を読むのはこれが初めてですが、すでに2012年の作品で山本周五郎賞を受賞、直木賞にもノミネートされて評価の高い「楽園のカンヴァス」はもう手に入れてます。

著者は現在はフリーの美術品キュレーターの仕事をしつつ執筆ということのようですが、当然にそうした美術工芸品等をテーマにした作品が上記の「楽園のカンヴァス」など多そうです。

今回の作品はそうしたキュレーターの仕事とは関係がなく、スピーチライターという珍しい職業がテーマです。

スピーチライターというと有名なのはアメリカ大統領(候補)が演説をする際に、心に響くメッセージをちりばめて演説を聴いた人に感動を与えるスピーチ原稿を作成する人というのでしょうか、日本においても政治家や著名企業のトップなど、専門のスピーチライターを置いているケースがあるようです。

一種ゴーストライターと同様、裏方に徹する仕事ですから、作家やコピーライターのように陽の目を見ることはまずありません。

主人公は製菓会社のOLで、友人の結婚式に出席しますが、そこで人の退屈なスピーチ中に大きな失態をしてしまいます。その式場で知り合った伝説のスピーチライターに出会い、感動を与えるスピーチを教わっていくことになります。

幼なじみで憧れていた男性が親の遺志を継いで代議士に立候補することとなり、勤めていた会社を辞めて、本気でスピーチライターとして転身していくという女性の転職立身出世物語というべきものでしょうか。ま、話し的にはライトな小説ですから大甘で現実感はまったく感じられませんが、、、

最近は「お仕事小説」というジャンルができるぐらい、こうしたあまり陽があたらず知られていない職業を紹介して興味を引いてもらうという作品が次々と出てきています。ニーズもあり、また興味を持ってもらいたいという要望もあったりして取材もしやすいのでしょう。

今なら最高に人手が不足している介護業界や保育業界において、キツイ、汚い、給料安いの3Kを打ち破り、夢のシンデレラになれるような素敵なお仕事小説を待ちわびていることでしょう。

「お仕事小説」で有名なところでは、「和菓子のアン(和菓子屋)」坂木司、「あぽやん (旅行会社空港カウンター)」新野剛志、「神去なあなあ日常(林業)」「舟を編む(出版社編集部)」三浦しをん、「県庁おもてなし課(役所観光課)」「空飛ぶ広報室(自衛隊広報室)」有川浩、「鎮火報(消防署員)」日月恩などがあります。そのほか、作家や銀行員、医者、警察官を主人公にした小説は星の数ほどあります。

これからも人手不足の折、こうしたお仕事小説でブレークするなら、有名な作家さんにお金を出してでも「書いて欲しい!」っていう業界団体などが出てきても不思議ではありませんね。まずは人材不足の介護業界、保育業界、建設労働者組合、飲食店従業員組合、旅館業界などからやってみてはどうでしょう。

★☆☆

6月前半の読書と感想、書評 2017/6/14(水)


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